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特許6055523信頼性のある書き込み能力および消去を有する磁気記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055523
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】信頼性のある書き込み能力および消去を有する磁気記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/738 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   G11B5/738
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-160098(P2015-160098)
(22)【出願日】2015年8月14日
(62)【分割の表示】特願2012-525688(P2012-525688)の分割
【原出願日】2010年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-228275(P2015-228275A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2015年8月26日
(31)【優先権主張番号】12/544,091
(32)【優先日】2009年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Seagate Technology LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノーラン,トーマス・ピィ
(72)【発明者】
【氏名】バルク,ボグダン・エフ
(72)【発明者】
【氏名】タン,リ
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0217074(US,A1)
【文献】 特開2004−118894(JP,A)
【文献】 特開2006−018876(JP,A)
【文献】 特開2008−072014(JP,A)
【文献】 特開2001−250223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/738
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体であって、
第1の磁気厚み(Bst)を有する第1の軟磁気層を備え、前記第1の軟磁気層は低透磁率領域と高透磁率領域とを有し、
第2の磁気厚みを有する第2の軟磁気層を備え、前記第2の磁気厚みは、前記第1の磁気厚みと異なるとともに、前記低透磁率領域の磁気厚みと等しく、
前記第1の軟磁気層と前記第2の軟磁気層との間に配置された第1の結合層を備え、前記第1の結合層は、前記第1の軟磁気層と前記第2の軟磁気層とを反強磁性的に結合するように構成され、
前記第1及び第2の軟磁気層の少なくとも一つは非晶質材料を含む、媒体。
【請求項2】
前記低透磁率領域は、前記高透磁率領域の上に積層される、請求項1に記載の媒体。
【請求項3】
前記第2の軟磁気層は、前記第1及び第2の軟磁気層の全厚みの37.5%以下の厚みを有する、請求項2に記載の媒体。
【請求項4】
前記高透磁率領域は、前記低透磁率領域の上に積層される、請求項1に記載の媒体。
【請求項5】
前記第1の軟磁気層は、前記第1及び第2の軟磁気層の全厚みの56.25%より大きく62.5%以下の厚みを有する、請求項4に記載の媒体。
【請求項6】
前記低透磁率領域と前記第2の軟磁気層とはそれぞれ、前記第1の結合層に隣接して配置される、請求項2〜5のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項7】
前記第1の軟磁気層と前記第2の軟磁気層とは等しくない厚みを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項8】
前記第1の軟磁気層と前記第2の軟磁気層とは等しい磁気モーメントを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項9】
前記第1及び第2の軟磁気層は非晶質材料を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項10】
前記第1の結合層はルテニウムを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項11】
第3の磁気厚みを有する第3の軟磁気層をさらに備え、前記第3の磁気厚みは、前記第1の磁気厚み及び前記第2の磁気厚みの1つまたは両者と異なる大きさを有し、
前記第3の軟磁気層と前記第1の軟磁気層との間に配置された非磁性スペーサ層をさらに備える、請求項1に記載の媒体。
【請求項12】
前記第3の軟磁気層は、前記第1の軟磁気層と前記第2の軟磁気層のそれぞれより高い透磁率を有する、請求項11に記載の媒体。
【請求項13】
第4の磁気厚みを有する第4の軟磁気層をさらに備え、前記第4の磁気厚みは、前記第3の磁気厚みと異なる大きさを有し、
前記第3の軟磁気層と前記第4の軟磁気層との間に配置されるとともに、前記第3の軟磁気層と前記第4の軟磁気層とを反強磁性的に結合する第2の結合層をさらに備える、請求項11に記載の媒体。
【請求項14】
前記第3及び第4の軟磁気層は、前記第1の軟磁気層及び前記第2の軟磁気層のそれぞれよりも低い透磁率を有する、請求項13に記載の媒体。
【請求項15】
前記第2の軟磁気層は、前記低透磁率領域と同じ厚みを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項16】
前記第1の軟磁気層は、前記第2の軟磁気層よりも高い透磁率を有する、請求項1〜10、15のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項17】
前記第1の軟磁気層と前記第2の軟磁気層と前記第1の結合層との上に積層される種層と、
前記種層の上に積層される中間層と、
前記中間層の上を覆う磁気記録層とをさらに備える、請求項1〜16のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項18】
前記磁気記録層は、硬磁気的な垂直記録層である、請求項17に記載の媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、一般に磁気記録媒体に関し、より特定的には記録媒体の書き込み能力を高め、かつ意図しない消去を減らす方法および媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
磁気記憶媒体は様々な用途、より特定的には、データ/情報の記憶および検索の用途、ならびに音声および画像信号の記憶のためにコンピュータ産業において幅広く使用される。ディスク駆動記憶システムは、磁気ディスク媒体の同心トラック上に記録されるデジタル情報を記憶する。少なくとも1つのディスクがスピンドルに回転可能に搭載され、ディスク内での磁気転移の方式で記憶することができる情報は、読み取り/書き込みヘッドまたは変換器を使用してアクセスされる。駆動制御部は、通常はホストシステムから受け取った命令に基づいてディスク駆動システムを制御するために使用される。駆動制御部は、ディスクドライブを制御して磁気ディスクからの情報を記憶および検索させる。磁気媒体の面記憶密度、すなわちビット密度を高めるための試みが継続して行なわれている。
【0003】
さまざまな図の全体において同じ構成要素が同一の参照符号で表わされる図面を参照すると、図1は、本発明が有用である典型的なディスク駆動データ記憶システムおよびディスク記録媒体の斜視図、ならびに長手磁気記録と垂直磁気記録との違いを示すディスクの断面図である。図1はディスクの片面を示しているが、磁気記録層は通常は図1の非磁性アルミニウム基板の両面にスパッタにより生成されている。また、図1はアルミニウム基板を示しているが、代替の実施例では、ガラス、ガラスセラミック、アルミニウム/NiP、金属合金、プラスチック/ポリマー材料、セラミック、ガラスポリマー、複合材料、または他の非磁性材料からなる基板が含まれる。
【0004】
微粒子の多結晶磁性合金層が活性記録媒体層としての機能を果たす磁性薄膜媒体は、磁性材料の粒子の磁区の磁場配向に応じて、一般に「長手」または「垂直」に分類される。長手媒体(多くの場合、「従来の」媒体とも呼ばれる)においては、ディスクに対してヘッドが移動する方向に対して平行と逆平行との間でビットの磁化が切り換わる。長手媒体と比較して(熱的安定性の制限を受けることなく)高密度な記録を行なうために垂直磁気記録媒体が開発されている。薄膜垂直磁気記録媒体は、基板と垂直磁気異方性(Hk)を有する磁気層とを備える。長手記録の場合のようにディスクの面内に磁化が横の方向にあるのではなく、垂直媒体においては、ディスクの磁化がディスクの面に対して縦方向にある。ビットは、上方向または下方向を向いた磁化の領域として表わされる(デジタルデータの1と0に対応する)。
【0005】
垂直媒体技術は長手媒体よりも高い面密度受容能力を提供する一方、磁性粒子間での強力な横方向の交換結合の存在によって制限される従来の垂直磁気記録と比較してさらに面密度を高めるために、粒子垂直磁気記録媒体の開発が行なわれている。粒構造は、酸化物を粒界に分離することによって良好に粒子を隔離し、これにより、粒子間の磁気分離が向上し、媒体の信号対雑音比(SNR)が高められる。粒子垂直磁気層は、磁性粒子を分離するための酸化物、窒化物、または炭化物のような誘電材料を有する粒界により分離された柱状磁性粒子を含む。約2オングストロームから約30オングストロームの厚みを有する粒界により、磁性粒子間の磁気相互作用が実質的に減少する。
【0006】
垂直媒体は、多くのコンピュータ関連の記録用途において長手媒体に取って代わってお
り、長手媒体の能力をはるかに超える面記録密度をかつてないほどに高める傾向が続いている。しかし、垂直媒体および垂直記録技術は、様々な面において長手媒体および長手記録技術ほど発展はしていない。
【0007】
記録密度の増加が続くにつれ、1ビット当たりの磁性粒子の数を類似の値に維持するために、より小さい粒構造を作る必要がある。しかし、より小さい粒構造はより容易に消去されることから、熱的安定性を維持するためにより高い異方性が必要となり、書き込み能力が低下する。垂直記録が直面する主要な問題の一つに、意図しない消去、より特定的にはサイドトラック消去(STE)がある。記録ヘッドによって記録トラックに効果的に書き込みができる一方で、隣接するトラックが漂遊磁界または熱的安定性の制限によって消去されることを回避することができる記録媒体を作ることはますます困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
概要
垂直磁気記録媒体の書き込み能力を向上させ、意図しない消去を減らすための方法および媒体構造がここに記載される。一実施例において、垂直磁気記録媒体は、基板と、基板の上に位置する上積層とを備える。積層は、軟磁気的な下地層を含む。下地層は、積層順に、第一層と、反強磁性結合層である第二層と、第三層とを有する積層構造である。第一層は、高透磁率領域と、その上に低透磁率領域とを有する。第三層は、低い透磁率を有する。第一層と第三層は等しくない磁気モーメントを有して不均衡であり、かつ反強磁的に結合されている。高透磁率領域は、低透磁率領域よりも高い透磁率を有している。これらおよび他のさまざまな特徴や利点は、以下の詳細な説明に照らして明らかとなる。
【0009】
図面の簡単な説明
本発明の前述の局面および多くの付随する利点は、以下の添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明が有用となる典型的なディスク駆動データ記憶システムおよびディスク記録媒体の斜視図、ならびに長手磁気記録と垂直磁気記録との違いを示すディスクの断面図である。
図2図1のディスク駆動データ記憶システムに使用することができる、従来の粒子垂直磁気記録媒体の一部および単極の交換器ヘッドを有する検索システムを示す簡略断面図である。
図3】近年の設計による、軟下地層構造を有する垂直磁気記録媒体の一部を示す簡略断面図である。
図4】本発明の実施例による、最下領域に低い透磁率を有する不均衡で反強磁的に結合された軟下地層構造を含む垂直磁気記録媒体の一部を示す簡略断面図である。
図5】本発明の他の実施例による、最上領域に高い透磁率を有する不均衡で反強磁的に結合された軟下地層構造を含む垂直記録媒体の一部を示す簡略断面図である。
図6】本発明の他の実施例による、不均衡で反強磁的に結合された五層の軟下地層構造を有する垂直磁気記録媒体の一部を示す簡略断面図である。
図7】本発明の他の実施例による、不均衡で反強磁的に結合された七層の軟下地層構造を有する垂直磁気記録媒体の一部を示す簡略断面図である。
図8】20nmの単層軟下地層のヒステリシス曲線を示すグラフ図である。
図9】二つの10nmの反強磁的に結合された層のヒステリシス曲線を示すグラフ図である。
図10】いずれも同じ磁気モーメント(B)値を有する、10nmの軟下地層と反強磁的に結合した30nmの軟下地層のヒステリシス曲線を示すグラフ図である。
図11】本発明の他の実施例による、最上領域に低い透磁率を有する不均衡で反強磁的に結合された軟下地層構造を含む垂直磁気記録媒体の一部を示す簡略断面図である。
図12】記録計量のリバースオーバーライト(ROW)を示し、軟下地層の最上領域の厚みと比較した書き込みの容易さを示すグラフ図である。
図13】記録計量の隣接トラックへの干渉(ATI)を示し、軟下地層の最上領域の厚みと比較した隣接トラックの消去の容易さを示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
具体的な構成を参照して、例示的な実施例が記載される。当業者なら、添付の請求の範囲内においてさまざまな変更や変形ができることを理解するであろう。よく知られた構成要素、装置、部品、方法、処理工程などについては、発明の不明瞭化を避けるために、詳細には述べられない。
【0012】
垂直記録媒体(磁気層における垂直異方性(Hk)と磁気層の面に対して垂直方向に形成される磁化とを有する記録媒体)は、長手媒体に付随する熱的安定性の制限を受けることなく非常に高いビット密度を実現するとして、長手媒体より優れていることが知られている。垂直磁気記録媒体おいては、適切な基板の上に設けられた典型的には磁性材料の層である磁気媒体の表面に対して垂直方向に、残留または残り磁化が形成される。非常に高いまたは超高の線記録密度は、「単極の」磁気変換器または「ヘッド」とそのような垂直磁気媒体を利用することにより得られる。典型的に、垂直記録媒体は多結晶CoCr酸化物または多結晶CoPt酸化物を含む膜によって作られる。多結晶膜においてCoが豊富な領域は強磁性であり、多結晶膜においてCrまたは酸化物が豊富な領域は非磁性である。隣接する強磁性多結晶粒子の領域間での磁気相互作用は、その間の非磁性領域により弱められる。
【0013】
高密度垂直記録媒体は、熱的安定性を確保し、耐消去性を有し、最新のヘッド設計と併せて効果的に機能するための十分に高い異方性、ヘッドによる書き込みを可能にするための十分に低いスイッチング磁界、磁気粒子間またはクラスタ間の短い相関長を維持するための十分に低い横方向の交換結合、狭いスイッチング磁界分布(SFD)を維持するための十分に高い横方向の交換結合、熱的安定性および最低限のSFDを維持するための粒子間の磁性の均一性などを含む磁性を慎重に均衡化させる必要がある。
【0014】
記録密度が増加し続けるにつれ、ビット内の磁性粒子の数を類似の値に維持するために、より小さい粒構造を作る必要がある。より小さい粒構造はより容易に消去され、熱的安定性を維持するためにより高い異方性を必要とし、書き込み能力を低下させる。漂遊磁場または熱的安定性の限界によって隣接するトラックが消去されることを避けつつ、記録ヘッドによって効果的に記録トラックに書き込むことができる記録媒体を作ることはますます難しくなる。
【0015】
以下でより詳細に述べるように、垂直磁気記録媒体は通常、硬磁気記録層と、非磁性中間層と、軟磁性下地層(SUL)とを含む。一般に、SULは磁束の伝導度を増加させる高い透磁率(μ)および多量の磁束の伝導を可能とする高い磁気モーメント(Bs)を有
する。SULは媒体記録層を通じてヘッドの主極から磁束を伝え、ヘッドのリターンポールへ磁束を戻すことを助け、媒体の書き込み能力を向上させる。しかし、併せて起こる症状として、書き込み能力の向上が記録トラックだけでなく隣接するトラックにも同様に及ぶので、隣接トラックが消去され得ることになる。
【0016】
ここで、垂直磁気記録媒体において、書き込み能力を向上させ、意図しない消去を減らすための方法および媒体構造について述べる。明細書本文および請求項に記載の磁気記録
記録媒体の特徴は、ロープロファイルディスク駆動記憶システムを含むディスク駆動記憶システムで利用することができると理解される。本発明は、磁気モーメント(Bs)およ
び磁気異方性(Hk)のようなバルクSUL材料特性とは無関係に、SUL薄層構造内の可変透磁率を制御するための改良された方法を提供する。異なる透磁率および磁気厚み(B*t)の値を含む層を有するSUL構造により、部分的に、記録トラックへの書き込みを容易にする能力と、オフトラック(トラック間および隣接するトラック)を消去し難くする性能の改良された組合せを有する媒体が実現される。
【0017】
図2を参照すると、図1のディスク駆動データ記憶システムに使用することのできる従来の粒子垂直磁気記録媒体の一部および単極変換器ヘッドを有する検索システムの簡略断面図が示される。縦方向に配向された磁気媒体210を利用した従来の垂直記録システム200が示されている。積層は、非磁性基板212、すなわちガラス、アルミニウム(Al)またはAl系合金と、任意の接着層214とを有する。任意の接着層は、基板の表面に設けられる場合、一般にTi、Ti系合金、Ta、Ta系合金、Cr、Cr系合金のような金属または金属合金などからなる約200オングストロームより薄い薄層を含む。任意の接着層の上に、(磁気記録層222と比較して)比較的厚い「軟」磁気的な透磁率を有する下地層216、すなわちNiFe合金(パーマロイ)または容易に磁化および消磁される材料からなる約1kOeより低い保磁力を有する磁気層が積層される。軟磁気的な下地層(SUL)216は、ヘッドから発する磁束を硬磁気的な垂直記録層を通して案内し、書き込み能力を向上させる役割を持つ。下地層216の上には、任意の種層218および少なくとも1つの非磁性中間層220が積層される。種層218が設けられる場合、一般に種層218はCu、Ag、Pt、Ni、もしくはAuの合金のようなFCC材料、またはTa、TaW、CrTa、Ti、TiN、TiW、もしくはTiCrのような非結晶もしくは微粒子材料からなる約100オングストロームより小さい厚みを有する層を含む。
【0018】
比較的薄い介在層または中間層220は、典型的に約50から約300オングストロームの厚みを有する層または非磁性材料の層を含む。中間積層は、一般に硬磁気的な垂直記録層222に隣接して、Ru、TiCr、RuCr/CoCrPtのようなhcp素材の中間層を少なくとも1つ有する。中間層の役割は、良好な媒体性能を得るためには重要である。具体的には、垂直磁気記録媒体において中間層は、
1.主記録層の結晶包囲を制御し、
2.主記録層の粒度および粒度分布を制御し、
3.硬磁気的な記録層と軟磁気的な記録層との間の交換結合を破壊し、
4.主記録層の隣接する粒子間を物理的に分離する
役割を有し、この特徴は、後者が低温高ガス圧スパッタ処理、および/または反応性スパッタ処理により形成され、隣接する粒子間の境界においてCo酸化物またはCr酸化物のような酸化物が発生する場合に特定的に望ましく、重要である。
【0019】
中間層220の上を覆うのは、膜面に対して垂直な磁化容易軸を有する少なくとも1つの比較的薄い硬磁気的な垂直記録層222が積層される。磁気的に「硬い」記録層には、一般に垂直な異方性を有し、約3から8kOeの比較的高い保磁力を有するコバルト系合金(すなわち、CoCrPtBのようなCo−Cr合金)が用いられる。硬磁気的な垂直記録層222は、一般にCr、Fe、Ta、Ni、Mo、Pt、W、Cr、Ru、Ti、Si、O、V、Nb、Ge、B、Pdを含むグループの中から選択される1つまたは複数の構成要素を有し、約10から約25nmの厚みを有するコバルト合金の層を含む。
【0020】
積層は、硬磁気的な層222の上に形成される、たとえばダイヤモンド状炭素(DLC)からなる保護オーバーコート層224により完成する。保護オーバーコート224は、磁気記録層222を腐食から保護し、ディスクと読み込み/書き込みヘッドとの間の摩擦
力を減少させる。さらに、保護オーバーコート224の摩擦および摩耗を軽減させることでヘッドとディスクのインターフェイスのトライボロジー性能を向上させるために、たとえばペルフルオロポリエーテル(PFPE)材料からなる潤滑剤226の薄膜を保護オーバーコート224の表面に塗布してもよい。
【0021】
磁束Φの経路を示す矢印で表わされるように、磁束Φは磁気変換器ヘッド202の主書き込み極204から発出し、主極204の下方領域で縦方向に配向された少なくとも1つの硬磁気的な記録層222に入って通過し、軟磁気的な中間層(SUL)216に入って所定距離を進み、そこから出て変換器ヘッド202の補助極206の下方領域内の硬磁気的な記録層222を通過する。変換器ヘッド202を通過した後の垂直磁気媒体210の移動方向は、媒体210の上方の矢印230により図面内に示される。
【0022】
続いて図2を参照すると、垂直線232は、積層構成媒体210の多結晶層220および222の粒界を示す。硬磁気的な主記録層222は中間層220の上に形成され、粒度分布により表わされる異なる幅(水平方向に計測)を有し得る各多結晶層の粒子は、一般に垂直に置かれる、すなわち、垂直に相関または整列される。
【0023】
現在採用されている磁気記録媒体を分類する方法は、粒子を物理的かつ磁気的に分離して媒体性能特性を向上させるために、どのような方法で記録層の磁性粒子が互いに離されるか、すなわち分離されるかをもとにしている。この分類方法によれば、Co系合金(すなわち、CoCr合金)の磁気記録層を有する磁気媒体は、(1)Cr原子が層の粒界へ拡散することにより磁気層の粒子の分離が起こり、Crが豊富な粒界が形成され、磁気層の形成(堆積)時にこの拡散処理で媒体基板を加熱する必要がある第一タイプと、(2)隣接する磁性粒子間の境界で酸化物、窒化物、および/または炭化物が形成されることにより粒子の分離が起こり、いわゆる「粒子」媒体が形成され、Co系合金の磁気層のスパッタ堆積時に不活性ガス(すなわち、Ar)雰囲気に酸素、窒素、および/または炭素原子を含む少量の活性ガス(すなわち、O、N、COなど)を導入することにより酸化物、窒化物、および/または炭化物が形成される第二タイプの2つの異なるタイプに分類される。実施例においては、磁気記録媒体の両タイプを使用することができる。
【0024】
図3を参照すると、近年の設計による軟下地層構造を含む垂直磁気記録媒体300の一部の簡略断面図が示されている。この近年使用されている構造の下地層は、単層SUL設計と比較して透磁率が低く、均衡で反強磁的に結合された(AFC)層を有して設計される。SUL304とSUL308とは、ルテニウム(またはルテニウム合金)層306を介してAFC結合されており、記録層320はSULの上方に位置する。これらの近年使用されている設計を有するSULは、一般に磁束の伝導性を高めるための十分に高い透磁率(μ)および多量の磁束を伝導できるようにするための高い磁気モーメント(B)を有する。したがって、SULは磁束の方向付けを助け、媒体の書き込み能力を向上させる。しかし、併せて起こる症状として、書き込み能力の向上が記録トラックだけでなく隣接するトラックにも同様に及ぶので、隣接するトラックが消去され得ることになる。
【0025】
図4は、本発明の実施例による、最下領域に低い透磁率を有する不均衡で反強磁的に結合された軟下地層構造を含む垂直磁気記録媒体400の一部を示す簡略断面図である。
【0026】
媒体の書き込み能力の向上に対するSULの有効性は、一般にSULの透磁率、磁気モーメント、厚み、および運ばれる磁束(ヘッドにより供給される)の量に依存する。SULの薄層が(高い透磁率または磁気伝導性を有して)有効に運ぶことのできる磁束は、飽和磁気誘電と層の厚みとの積であるBtである。Btより大きい更なる磁束は、SUL内を真空または非磁性材料(μ=1)よりも優先的に運ばれない。非常に薄いまたは低い磁気モーメント(B)の層は効率的に少量の磁束を運ぶことができるが、大きい量の
磁束を効率的に運ぶことはない。SULがBtより小さい少量の磁束を運ぶ際の効率性は、制御可能なパラメータμの値を変えることによりさまざまに変更することができる。μの値が高ければ、SULはより効率的に磁束を運び、書き込み能力をさらに向上させることができる。オントラック記録書き込み処理に伴う磁束の量は、隣接するトラックを部分的に消去する原因となる磁束よりも著しく大きい。したがって、実施例において、本発明は磁束が小さいときに透磁率が低くなるようにSULを設計することにより、消去に対する媒体の耐性を向上させる。
【0027】
本発明は、磁気モーメント(B)および磁気異方性(Hk)のようなバルクSUL材料の特性とは無関係に、SUL薄層構造内の可変の透磁率を制御するものである。記録トラックへの書き込みを容易にする能力と、オフトラック(トラック間、および隣接トラック)を消去し難くする能力との改良された組合せを有する媒体が、異なる透磁率および磁気厚み(B*t)を有するSUL構造により部分的に実現される。
【0028】
垂直磁気記録媒体400は、最下領域の透磁率が低く、最上領域の透磁率が高く、所定の厚みを有する不均衡で反強磁的に結合された三層のSUL構造を含む。示される例において、磁気記録媒体400は、基板(図示せず)と、基板の上に配置される上積層とを有する。積層は、基板の上に積層される順に、軟磁気的な下地層を有する。下地層は積層構造であって、積層される順に、第一層404と、反強磁性結合層である第二層406と、第三層(408Aおよび408B)とを有する。磁気記録層420、および種層や中間層を含む任意の他の層は、SULの上に配置される。第一層404は低い透磁率を有し、第三層は低透磁率領域408Aと、その上に積層される高透磁率領域408Bとを有する。第一層404と第三層(408Aおよび408B)とは不均衡(等しくない磁気モーメント)であり、反強磁的に結合されている。高透磁率領域408Bは、低透磁率領域408Aよりも高い透磁率を有する。
【0029】
高低の透磁率を有する層の厚みおよび積み重ねは、AFC結合SUL構造の単体に含まれる各SUL層の厚みにより制御される。不均衡なAFC構造のSUL特性は、単層と、最も薄いSUL層の層厚みを有する等厚層AFCSULと組合せることにある。より一般的には、大きいモーメントを有して低い透磁率の特性を示すSUL層の厚みは、その大きいモーメントを有する層と同じモーメントを有する層の厚みと等しい。より大きいモーメントを有する層の残りモーメントは、単層SULの層厚みと同等の透磁率を示す。
【0030】
一実施例においては、第一層404と第三層の低透磁率領域408Aとは同じ磁気厚み(Bt)を有する。磁気厚み(Bt)は磁気モーメント(B)と層厚み(t)との積に等しい。他の実施例において、第一層404および第三層408Aの低透磁率領域は同じ厚み(t)を有する。一例では、第一層404と第三層408Aの低透磁率領域はともに100より小さい透磁率(μ)と約2memu/cm未満の磁気厚み(Bt)とを有する。
【0031】
一例では、SUL(408A、408B)はモーメントBsを有し、SUL404はモーメントBsを有し、Bs>Bsであり、RuAFC結合層406の厚みは最適化されている。SUL404の厚みtは、低μAFC特性を有する。SUL408Aの厚みt′=Bs*(Bs/Bs)は、SUL404と同じ低μAFC特性を有する。SUL408Bの厚みt−t′は厚みt−t′を有するSUL材料の単層の高μ特性を有する。SULの高μ領域408Bは、AFC結合層406から最も遠い厚みt−t′の領域である。これにより、厚みがt+t′の低μ層と厚みがt−t′の高μ層とを有するデュアルμSUL構造を形成することができる。これらの層の厚み、透磁率、および相対位置は、各SUL層の厚みとBs、およびRu合金結合層の結合の強さを選択することにより、広範囲にわたって適宜調整する
ことができる。
【0032】
図5は、最上領域508に低い透磁率を有する不均衡で反強磁的に結合されたSUL構造を含む垂直磁気記録媒体500の一部を示す簡略断面図である。この不均衡なSUL設計により、垂直磁気記録媒体の書き込み能力が向上し、意図しない消去が減少する。この設計および図4に示された設計は、所望の書き込み能力および消去能力の調整のための透磁率のレベル分けを可能にする。この代替実施例において、第一層は高透磁率領域504Aとその上の低透磁率領域504Bとを有し、第三層508の透磁率は低い。第一層(504A、504B)および第三層508は不均衡(等しくない磁気モーメント)であり、AFC結合層506(すなわち、ルテニウムまたはルテニウム合金)を介して反強磁的に結合されている。第一層の低透磁率領域504Bおよび第三層508は、同じ磁気厚み(Bt)を有して設計されている。一実施例において、第一層の低透磁率領域および第三層はともに第一層の高透磁率領域の磁気厚み(Bt)よりも小さい磁気厚み(Bt)を有する。磁気厚み(Bt)は、磁気モーメント(B)と層厚み(t)との積に等しい。実施例において、第一層の低透磁率領域504Bおよび第三層508の厚み(t)は同じに設計されている。他の実施例では、第一層(504A、504B)および第三層508は、等しくない磁気厚み(Bt)を有する。
【0033】
上述のように、本発明の実施例によれば、SUL層の厚みおよび磁気厚みはさまざまに変更することができる。一例では、第一層の低透磁率領域504Bおよび第三層508はともに100より低い透磁率(μ)および2memu/cmより小さい磁気厚み(Bt)を有する。他の例では、下地層の全厚みは約400オングストロームであり、第三層508の厚みは約175オングストロームより小さい。さらに他の例では、第三層508の厚みは下地層の全厚みの約43.75%より小さい。さらに他の例では、第一層の低透磁率領域504Bおよび第三層508はともに100より低い透磁率(μ)を有し、第一層の高透磁率領域504Aは100より高い透磁率(μ)を有する。他の例では、第一層の低透磁率領域504Bおよび第三層508はともに50より低い透磁率(μ)を有し、第一層の高透磁率領域504Aは200より高い透磁率(μ)を有する。一例では、第一層の低透磁率領域504Bおよび第三層506はともに10nmより小さい厚みおよび1ナノウェーバーより小さい磁気厚み(Bt)を有する。
【0034】
非磁性スペーサにより分離されたAFC結合SUL構造と単層SULとを有する五層構造から、高透磁率層と低透磁率層とを有するSUL構造を構成することもできる。図6は、不均衡で反強磁的に結合された五層の軟下地層構造を含む垂直磁気記録媒体の一部を示す簡略断面図である。ここで、SUL層608は結合層610を介してSUL層612と反強磁的に結合されている。SUL層604は非磁性スペーサ606(すなわち、チタニウム)により分離されている。一例として、SUL層604は高い透磁率を有して設計され、AFC結合SUL層608および612は低い透磁率を有して設計されている。五層構造においては、さまざまな実施例で望まれるようにレベル分けができる、三つのレベルの透磁率を有してSUL構造を形成してもよい。たとえば、SUL層604はSUL層608および612よりも高い透磁率を有してもよい。これらのAFC結合SUL層は、比較的低い透磁率領域と高い透磁率領域を形成し、両方とも層604より低い透磁率を有して、上述のように不均衡な設計で形成されてもよい。五層構造によって、高、中、低の三つのレベルの透磁率や、高と低の二つのレベルの透磁率などの透磁率のレベル分けが可能となる。代替の実施例では、SUL層604と608とはAFC結合され、SUL層612は高透磁率層であり、層610がスペーサとなる。
【0035】
他の実施例では、異なるRu層の厚みを有し、非磁性スペーサにより分離された二つのAFC結合構造を有する七層構造から、高透磁率層と低透磁率層を有するSUL構造が構成される。図7は、不均衡で反強磁的に結合された七層の軟下地層構造を含む垂直磁気記
録媒体の一部を示す簡略断面図である。ここで、SUL層704は結合層706を介してSUL層708と反強磁的に結合される。SUL層712は、結合層714を介してSUL層716と反強磁的に結合される。SUL層708および712は、非磁性スペーサ710により分離される。一例として、AFC結合層704および708は低い透磁率を有して設計され、AFC結合SUL層712および716は高い透磁率を有して設計される。代替的に、AFCSULサブ構造704および708は二つのレベルの透磁率を有し、AFCSULサブ構造712および716は二つのレベルの透磁率を有し、合計で四つのレベルの透磁率を七層SUL積層に設ける。
【0036】
次に図8を見ると、20nm単層SULのヒステリシス曲線のグラフ図が示される。SULの透磁率は、振動試料磁力計(VSM)を利用するなどの方法でヒステリシス曲線から計ることができる。示されるように、印加された磁界または飽和保磁力H(Oe)はx軸上に描かれ、磁化m(emu)はy軸に描かれる。大きな磁界が印加され、試料20nm単層SUL材料が磁気飽和状態となる。試料SULの平均透磁率(μ)は、磁気飽和(Hsat)に到達した磁界でMsを割ったものである(すなわち、Ms/HSat)。描かれた点の傾斜はSUL材料の透磁率である。
【0037】
1000以上の高い単層透磁率値を有するSUL材料の透磁率は、AFC結合層の最適な厚みにより分離された二つのSUL層を有する反強磁的な結合(AFC)構造を形成することで、100より小さい値、または10の値にまで減らすことができる。
【0038】
図9は、二つの10nmの反強磁的に結合されたSUL層のヒステリシス曲線のグラフ図である。ここでも、印加された磁界または飽和保磁力H(Oe)はx軸上に描かれ、磁化m(emu)はy軸上に描かれる。描かれた点の傾斜は、SUL材料の透磁率である。
【0039】
図10は、いずれも同じ磁気モーメント(B)値を有する、10nmのSULと強磁的に結合された30nmのSULのヒステリシス曲線のグラフ図である。ここでも、印加された磁界または飽和保磁力H(Oe)はx軸上に描かれ、磁化m(emu)はy軸上に描かれる。描かれた点の傾斜は、SUL材料の透磁率である。図10の双μSUL構造の磁気特性は、図8の単層SULと図9のAFC構造とを重ね合わせることで構成される。SUL構造は、AFCSULの特性を有する20nmのSULと、単層SULの特性を有する20nmのSULとなる。この方法により、制御された製造方法によって所望の厚みを有する高μSUL材料を所望の低いμSUL材料の上または下に置くことができる。
【0040】
図11は、本発明の実施例による、最上領域に低い透磁率を有する不均衡で反強磁的に結合された軟下地層構造を含む垂直磁気記録媒体の一部を示す簡略断面図である。媒体構造は、基板804と、SUL構造(以下に記載)と、上に積層される種層812と、中間層814と、磁気記録層820とを有する。積層は、腐食から磁気記録層820を保護し、ディスクと読み込み/書き込みヘッドとの間の摩擦力を減少させるダイヤモンド状炭素(DLC)などからなる保護オーバーコート層820により完成する。保護オーバーコート824の摩擦および摩耗を軽減することでヘッドとディスクのインターフェースのトライボロジー性能を向上させるために、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)材料からなる潤滑剤(図示せず)の薄層を保護オーバーコート824の面に塗布してもよい。
【0041】
図11の実施例において、SUL構造は、磁気厚み(Bs*T)を有する第一軟磁気層810と、反強磁性結合層808と、磁気厚み(Bs*T)=(Bs*T)+(Bs’*T’)を有する第二軟磁気層(806A、806B)とを含む。磁気層(806A、806B)は、磁気厚み(2Bs*T)を有する低透磁率領域806Bと、磁気厚み(Bs’*T’)を有する高透磁率領域806Aとを含む。
【0042】
図11の他の実施例では、記録媒体SULはBs=Bsで設計され、磁気厚み(Bs*T)を有する第一軟磁気層810と、反強磁結合層808と、磁気厚みBsT=(Bs*(T+T’)を有する第二軟磁気層(806A、806B)とを含む。磁気層(806A、806B)は、磁気厚み2Bs*Tを有する低透磁率領域806Bと、磁気厚みBs*T’を有する高透磁率領域806Aとを含む。
【0043】
図12は、記録計量のリバースオーバーライト(ROW)を示し、軟下地層の最上領域の厚みと比較した書き込みの容易さを示すグラフ図である。
【0044】
データは、同じ材料及び全厚みを有する三つのSUL設計、すなわちi)約200オングストロームの最上SUL層の厚みを有する低μAFCSUL(図3に示すような設計)、ii)200オングストロームより大きい最上SUL層の厚みを有し、最上領域が高μであり最下領域が低μである設計(図4に示すような設計)、及びiii)200オングストロームより小さい最上SUL層の厚みを有し、最下領域が高μであり最上領域が低μである設計(図5に示すような設計)について表わす。
【0045】
図12においては、約25オングストロームから約175オングストロームの最上SULの厚みは、最上領域が低μであり最下領域が高μである設計を表わす。約200オングストロームの最上SULの厚みは、低μAFCSULを有する均衡のとれた設計を表わす。約225オングストロームから約375オングストロームの最上SULの厚みは、最上領域が高μであり最下領域が低μである設計を表わす。約0オングストロームから約400オングストロームの最上SULの厚みは、高い透磁率の単層SUL設計を表わす。
【0046】
ROWが大きい負の値であると、磁気記録媒体への書き込みが容易である。しかし、少量の消去磁束が通る記録ヘッドおよび記録層に最も近い領域のSULの透磁率を低下させているので、薄い最上SUL層(厚い最下SUL層)は意図しない消去(図13に示す)を最小化または回避させる。図13は、隣接トラック消去の容易さを示し、ATI(隣接トラック干渉)デルタBER(ビット誤り率)と最上領域の軟下地層の厚みとを対応させて示す。ATIが大きい正の値であれば、磁気記録媒体への書き込みが容易となる。最上領域が低μの設計(図5に示すようなもの)は、最上領域の高μに類似した書き込み容易性の向上と、低μの均衡なAFC設計に類似した消去の減少との良い組み合わせを示す。
【0047】
本発明の主旨および範囲内で、開示された実施例に対して変更および修正をすることができる。上述の実施および他の実施は以下の請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図10
図11
図12
図13
図9