【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者によって為されたテストは、以下に示すように、最適な製品を得るために、一連の方法パラメータを必要とすることが分かる。本発明は、Co/金属酸化物/ZnS混合物を製造する方法、該Co/金属酸化物/ZnS混合物それ自体、また機械的及び/又は光学的特性を向上させるために、プラスチック中に、顔料としてそれを使用することに関わり、ここで、金属酸化物はSiO
2, TiO
2, Al
2O
3 又はそれらの混合物から選択されるものである。
【0011】
望ましくはコバルトを含まない硫化亜鉛は、全体として低コバルト含有量を保持するために、出発物質としてZnSを使用する。ここで、使用された硫化亜鉛は乾燥済みの又は新たに製造された硫化亜鉛である。代表的な製造方法はWO2008-065208に述べられている。使用した硫化亜鉛の粒子サイズは、全般的に5 nm から 5 μmであり、好ましくは、10 nm から 5 μm, 特に100 nm から 1μmである。
【0012】
これらのZnS粒子に基づいて、好ましくは硫酸コバルト、クエン酸コバルト又は酸化コバルト又は、それらの混合物であるコバルト塩の注入を、次のステップで行うことが出来る。コバルト原子が、SiO
2 層, TiO
2 層 又は Al
2O
3 層などの金属酸化層によりZnS粒子上でシールドされることから、この実施例は都合がよい。最初に、金属酸化物の前駆物質で無機後処理を行い、次のステップでコバルト塩の注入を行うか、金属酸化物の前駆物質とコバルト塩の表面処理を同時に行うことも可能である。
【0013】
いずれにせよ十分なUV抵抗を達成するためには、コバルト塩の量は、最終製品でCo
2+の濃度が1から150ppmの間に、好ましくは、5から120ppm、特に好ましくは、20から100ppmの間である。
【0014】
更に、pH値は表面処理の間、アルカリの範囲を保つ必要があり、SiO
2の前駆物質として水ガラスを使用した場合、表面処理は水酸化ナトリウムなどのアルカリの追加の必要は無いが、除外されるわけではない。
【0015】
無機性の表面処理は好ましくは、本発明による硫化亜鉛の乾燥前に行われる。このために、硫化亜鉛濾過ケークが水媒体中に再分散され、一つ以上の上記した表面処理試薬を追加することで、後処理がなされる。表面処理は、顔料の無機性の表面処理に関する従来技術に基づいて行われる。上で既に述べたひき続く工程がなされる。
【0016】
硫化亜鉛の無機性の表面処理は、例えば水性懸濁液中で行う。反応温度は、ここでは60°Cを超えないようにすることが望ましい。懸濁液のpH値は、例えばNaOHを使用して、9以上の範囲の値にpH値をセットする。
【0017】
活発な攪拌の下、表面処理薬品(無機化合物)、好ましくは水溶性無機化合物又はシリコン、チタン、アルミニウム及び/又はコバルトなどの金属の塩を加える。pH値及び表面処理薬品の量は、表面処理薬品が水に十分溶解出来るように選択される・
【0018】
ZnS懸濁液は、表面処理薬品が懸濁液中で均一に分散されるように、好ましくは少なくとも5分間、強力に攪拌される。次のステップでは、懸濁液のpH値は低下する。ここで、活発な攪拌のもとで、pH値をゆっくりと低下させることが重要であることが判明した。pH値は特に好ましくは10から90分以内に、5から8までの値へ低下させることが望ましく、6.5から7.5の範囲の中性点付近の値が望ましい。
【0019】
本発明によると、120分までの、特には90分までの熟成期間、好ましくは1時間の熟成期間が必要である。ここでの温度は60°Cを超えないことが望ましい。そして、水性懸濁液は流され、乾燥される。例えば、本発明により表面が変化した硫化亜鉛は、スプレードライ、フリーズドライ及び/又は粉砕乾燥により乾燥される。乾燥方法により、その後の乾燥粉の粉砕及び/又は篩いが必要になる。粉砕は公知の方法で行うことができる。
【0020】
原理的には、硫化亜鉛の無機性の表面処理は、多様な塩又は化合物の水溶液の形の金属酸化物前駆化合物による処理によって、本発明に基づいて行うことができる。
【0021】
本発明による超微細硫化亜鉛の無機性の表面変化は、以下の分子を含んでいる化合物から構成することができる。即ち、コバルト、シリコン、アルミニウム、チタン化合物及び/又は、塩である。例には、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、硫化チタニル(titanyl sulphate)及び硫酸コバルトが含まれる。
【0022】
無機性の“スリーブ”内にコバルトをより好ましく固定化するためには、表面処理されたZnSは、240分までの期間、特に好ましくは15分から90分の間、400°Cから1000°C、特に好ましくは500°Cから800°Cの温度範囲で、不活性雰囲気中でアニールされる。こうして、酸化前駆化合物は酸化物に確実に変換され、Co/金属酸化物/ZnSが形成される。
【0023】
従って、本発明は、ZnSを芯に持ち、該芯の周囲をコーティングする金属酸化物を有するCo/金属酸化物/ZnS複合粒子に関し、該コーティングはコバルトを含有し、金属酸化物はSiO
2, Al
2O
3, TiO
2又はそれらの混合物から選択されるものである。ここで、コバルトの含有とは、Co
2+の含有を意味するものである。
【0024】
こうした複合粒子は、ZnSの芯と該芯の周囲をコーティングする金属酸化物を有し、該芯はコバルトを含まない。粒子をアニールする際に、コバルトを含有する金属酸化物から、その層の下に配置された芯の層にCo
2+が拡散し得るが、芯は実質的にコバルトを含まない状態のまま残る。
【0025】
ここで、複合粒子の全体重量を基準にして、複合粒子は、コバルトを1から150ppm含有し、金属酸化物のコーティングは、複合粒子の全体重量をベースに、0.1から10重量%の量、特に0.5から5重量%とすることが出来る。
【0026】
金属酸化物のコーティングは、複合粒子の全体重量をベースに、0.5から5重量%の量のAl
2O
3を含有することができる。
【0027】
別の金属酸化物のコーティングは、複合粒子の全体重量をベースに、0.5から3重量%の量、特に1から2.5重量%の量のSiO
2を含有することが出来る。
【0028】
更に別の金属酸化物のコーティングは、複合粒子の全体重量をベースに、0.5から3重量%の量、特に1から2.5重量%の量のTiO
2を含有することが出来る。
【0029】
ここで複合粒子は、10nmから5μm、特に100nmから1μmの粒径を有する。
【0030】
本発明は、Co/金属酸化物/ZnS複合粒子を製造する方法に関わり、金属酸化物は、SiO
2, Al
2O
3, TiO
2 又はそれらの混合物から選択され、前記方法は、以下のステップを有する。
a. Zn粒子をCo塩の溶液で処理してZnS粒子にCo
2+コーティング層を形成する;
b. ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、硫化チタニル(titanyl sulphate)又はそれらの混合物などの金属酸化物の前駆化合物のアルカリ溶液を加える、前記金属はSi, Ti, Al又はそれらの複数から選択されたものである、
c. 懸濁液のpH値をpH5から8の範囲に低下させ、任意的に120分までの熟成期間を追加しても良い、
d、 濾過され、好ましくは乾燥された粒子は、400°Cから1000°C、特に500°Cから1000°Cの温度範囲で、焼成するが、その後任意的に粒子を粉砕及び/又は篩ってもよい。
【0031】
ZnS粒子のCo塩溶液での処理とSiO
2, TiO
2 及び/又は Al
2O
3前駆化合物のアルカリ溶液の追加は、ワンステップでも行うことが出来る。a及びbのステップの順番は入れ替えることもできる。いずれの場合も、ZnS粒子は水溶液中に、又は乾燥粉として存在する。焼成される金属酸化物又はその混合物を生成する化合物は、金属酸化物の前駆化合物として言及されている。例として、ケイ酸アルカリ、アルミン酸アルカリ、チタン酸アルカリ、それらの水酸化物又は水化物を含み、状況により、硫酸アルミニウムがあり、それらは単独又は混合して使用することが出来る。
【0032】
本発明によると、従来技術によるZnS材料中のCo
2+として300−350ppmに匹敵する、約20から100ppmのコバルトを含有する異なる複合材料を組み合わせることができる。コバルトの含有量は、従来技術の粒子のコバルト含有量の約5−28%となる。
【0033】
本発明は、また、ZnSの芯と該芯の周りを囲む、SiO
2, TiO
2, Al
2O
3 又はそれらの混合物から選択されたコーティングを有するCo/金属酸化物/ZnS複合粒子に関し、前記コーティングは、Co
2+を含有する。コバルトの含まれないZnSから発して、ZnS芯と該芯を取り囲む金属酸化物のコーティングを有する複合粒子の提供が可能となり、芯にはコバルトが含まれない。この場合、コバルトを含有しない芯が意味することは、製造方法の過程において、もし、必要ならば、例えば、アニーリングの途中で熱拡散の結果として、コバルトを外側から芯に拡散することが出来るということである。そして、コバルトは、数nmの外側の層に存在することが出来るのである。
【0034】
本発明によれば、十分なUV耐性を得るためには、それぞれ複合粒子の全重量を基準にして、コバルト含有量は一般的に1から150ppm、好ましくは5から120ppm、特に好ましくは20から100ppmの範囲となる。ここで、SiO
2コーティングなどのMOコーティングは、複合粒子の全重量に対して、0.1から10重量%の量として存在している。また、Co/金属酸化物/ZnS複合粒子の粒子サイズは、10nmから5μmである。
【0035】
本発明は、成形材料の顔料としてCo/SiO
2/ZnS複合粒子を使用することを奨励する。特に、無機及び/又は有機ポリマー内に、また特に、グラスファイバーで補強されたプラスチック及びそれらから作られた品物などに、そして、塗料、染料、繊維、紙、グラウド、シール材、接着剤、セラミック、エナメル、吸着剤、イオン交換材、研磨剤、磨き粉、冷却潤滑剤、冷却潤滑剤濃縮液、耐火製品、固いコンクリート材料、医療材料、化粧品に使用すること、更に、材料の機械的及び/又は光学的な特性を改良するために、例えば、熱硬化性材料及び熱可塑性材料の堅さ、柔軟性、衝撃強さ、耐光性などであり、また、熱安定性のために、熱硬化性材料、熱可塑性材料及び弾性体に使用することがよい。
【0036】
本発明を以下の例及び図面に基づいて説明する。