特許第6055542号(P6055542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6055542コバルトを含み、金属酸化物のコーティングを持った、ZnS粒子の製造方法、それにより得られる製造物、該製造物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055542
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】コバルトを含み、金属酸化物のコーティングを持った、ZnS粒子の製造方法、それにより得られる製造物、該製造物の使用
(51)【国際特許分類】
   C01G 9/08 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   C01G9/08
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-516463(P2015-516463)
(86)(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公表番号】特表2015-523311(P2015-523311A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】DE2013100202
(87)【国際公開番号】WO2013185753
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2015年8月13日
(31)【優先権主張番号】102012105034.1
(32)【優先日】2012年6月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508359734
【氏名又は名称】ザハトレーベン ケミー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】ローエ、 マルクス
(72)【発明者】
【氏名】クレッチマー、 マティアス
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−212474(JP,A)
【文献】 特開平09−067567(JP,A)
【文献】 特開昭62−081482(JP,A)
【文献】 特開平10−121039(JP,A)
【文献】 特開平06−041526(JP,A)
【文献】 特表2010−510953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZnSの芯及び、該芯を取り囲む金属酸化物のコーティングを有し、
前記コーティングは、コバルトの含有量が、複合物粒子の全体重量を基準にして、1から150ppmであり、
前記金属酸化物は、SiO2, TiO2, Al2O3又はそれらの混合物から選択されたものである、
ことを特長とする、Co/金属酸化物/ZnS複合物粒子。
【請求項2】
ZnSの芯及び前記芯を取り囲む前記金属酸化物のコーティングを有し、
前記芯は、コバルトを含まない、
ことを特長とする、請求項1記載の複合物粒子。
【請求項3】
コバルトの含有量は前記複合物粒子の全体重量を基準にして、5から120ppmである、
ことを特長とする、請求項1又は2記載の複合物粒子。
【請求項4】
前記金属酸化物コーティングの量は、前記複合物粒子の全体重量を基準にして、金属酸化物が0.1から10重量%である、
ことを特長とする、請求項1又は2又は3記載の複合物粒子。
【請求項5】
前記金属酸化物コーティングの量は、Al2O3が前記複合物粒子の全体重量を基準にして、0.5から5重量%である、
ことを特長とする、請求項4記載の複合物粒子。
【請求項6】
前記金属酸化物コーティングの量は、SiO2が前記複合物粒子の全体重量を基準にして、0.5から3重量%である、
ことを特長とする、請求項4記載の複合物粒子。
【請求項7】
前記金属酸化物コーティングの量は、TiO2が前記複合物粒子の全体重量を基準にして、0.5から3重量%である、
ことを特長とする、請求項4記載の複合物粒子。
【請求項8】
粒子の大きさは、10nmから5μmである、
ことを特長とする、請求項1乃至7のうち、いずれか1項記載の複合物粒子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項記載のCo/金属酸化物/ZnS複合物粒子の製造方法であって、前記金属酸化物はSiO2, Al2O3, TiO2又はそれらの混合物から選択されており、前記製造方法は、以下のステップから構成される。
a.ZnS粒子をCo塩溶液で処理して、ZnS粒子にCo2+含有層をつける:
b.金属酸化物の先駆化合物又はそれらの混合物のアルカリ溶液を加える:
c.懸濁液のpH値を、pH5から8の範囲に低下させ、任意的に120分までの熟成時間を追加する:
d.濾過した粒子を、400°Cから1000°Cの温度範囲で焼成し、その後、任意的に前記粒子を粉砕及び/又は篩い分けする。
【請求項10】
コバルト塩溶液でのZnS粒子の処理と金属酸化物の先駆化合物のアルカリ溶液の追加は、一つのステップで行われることを特長とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ステップaとbの順番は、入れ替わることを特長とする、請求項9記載の方法。
【請求項12】
ZnS粒子は、水溶液中に、又は乾燥粉体として存在する、請求項9乃至11のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至8のうちいずれか1項記載のCo/金属酸化物/ZnS複合物粒子を成形材料の顔料として使用する方法であって、成形物は前記成形材料から作られ、また前記Co/金属酸化物/ZnS複合物粒子を、リトポン、塗料、染料、繊維、紙、グラウト及びシール材、接着剤、セラミックス、エナメル、吸着剤、イオン交換材、研磨材及び光沢材、冷却潤滑剤及び冷却潤滑濃縮剤、耐火製品、コンクリート製品、医療品及び化粧品で顔料として使用する方法。
【請求項14】
請求項1から8のうちいずれか1項記載のCo/金属酸化物/ZnS複合物粒子を、材料の機械的及び/又は光学的特性、例えば、熱硬化性材料及び熱可塑性物の固さ、曲げ強さ、衝撃強さ、耐光性、を改良するために使用する方法。
【請求項15】
請求項1から8のうちいずれか1項記載のCo/金属酸化物/ZnS複合物粒子を、熱硬化性材料、熱可塑性物、エラストマーの熱安定性のために使用する方法。
【請求項16】
請求項1から8のうちいずれか1項記載のCo/金属酸化物/ZnS複合物粒子を含んだ、材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コバルト2+を含み、SiO、TiO2, Al2O3又はそれらの混合物から選択された金属酸化物からなるコーティングを持ったZnS粒子を製造する方法に関わり、これにより得られるCo/金属酸化物の複合物粒子、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化亜鉛は顔料に良く使用される。硫化亜鉛は約3程度の低いモース硬度を有し、その高い屈折率(n〜2.73)により、例えばリトポン等の白い顔料に使用されている。カドミウム顔料では、硫化亜鉛は色調を変化されるために使用される。銅、銀、マンガン又はアルミニウムを注入した硫化亜鉛は蛍光材として使用されている。
【0003】
光の影響によって生じる硫化亜鉛のグレーイングを避けるために、コバルト塩が硫化亜鉛に添加される。光と水の存在による硫化亜鉛のクレーィングは、光分解反応であり、硫化亜鉛の表面に生じる。亜鉛元素が離脱すると、コバルト無添加の硫化亜鉛にこのグレーイングが生じる。コバルトを添加すると、反対に、耐光性の硫化亜鉛となる。従来、硫化亜鉛は300−350ppmのCo2+を含んでいる。REACH委員会の命令による長期間の努力により、コバルト含有化合物は、毒性の無い化合物にますます代替えされなければならない。REACH規則では、250ppm(=160ppmのCo2+)のCoSを含むコバルト含有化合物は個別に明示する必要がある。
【0004】
SiOで処理された一連の硫化亜鉛は、それまでも知られていた。こうした例としては、CN101177551, JP2005171316, JP11335823 及び EP1380670が挙げられる。しかしながら、これらで開示された材料はZnS と SiO2 の混合物か又は、SiO2 でコーテイングされたZnSである。
【0005】
従来技術で知られているように、粒子中のコバルト濃度と材料の耐光性との間には関連がある。Co2+が190ppm未満のコバルトの量で、光感応形の製品が生まれる。
【0006】
AT 235438Bでは、シリコン又はリンのイソポリ酸水溶液中で懸濁された硫化亜鉛顔料を開示している。この懸濁液はアルカリ土類塩化物及び/又はアルミニウム塩化物の混合溶液と凝集し、包まれた顔料は、濾過され、洗浄され、乾燥、破砕される。ここで凝集した溶液は、追加的に、少なくとも一つの金属鉄、コバルト、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、セリウム、及びレアアース金属、特に塩化物又は硝酸塩を、顔料に対して少なくとも0.03重量%、特に0.05−0.5重量%の割合で含む形で使用される。
【0007】
こうしたCo2+が190ppm未満の少ないコバルトの含有量で、同時にクレーィング耐性をもつZnS製品は、従来は知られていない。ここで、こうしたタイプのグレーィング耐性を有する硫化亜鉛の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者は、耐光性に悪影響を与えないで、硫化亜鉛のコバルト含有量を減らす問題を考察してきており、発明者は、コバルト含有量を減らすことが出来るように、硫化亜鉛が、光分解が生じる特に粒子表面において、最適な特性を持つ必要を発見した。発明者はコバルトの大部分は硫化亜鉛の表面にのみ結合してることを発見した。そして硫化亜鉛粒子の内部のコバルト原子は、硫化亜鉛の光安定化作用になんら寄与しておらず、粒子の表面のコバルト原子だけがグレーイングを防止することに寄与することが出来ることを発見した。光分解のメカニズムとコバルトの役割が従来、議論されてきたが、光分解過程でコバルトの酸化レベルが部分的に変化することが現在、考えられている。
【0009】
発明者は、硫化亜鉛粒子の表面を、硫酸コバルトなどの少量のコバルト塩と組み合わせたSiO2, TiO2, Al2O3又はそれらの混合物で改変処理して、光安定性を有する硫化亜鉛が得られることを発見した。こうしてCo2+の形でのコバルトとSiO2, TiO2 及び/又はAl2O3等の無機の後処理成分が、低Co2+が要求されるような粒子の表面に強固に固定される。本発明による方法は、図1に3つの実施例として模式的に示す。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者によって為されたテストは、以下に示すように、最適な製品を得るために、一連の方法パラメータを必要とすることが分かる。本発明は、Co/金属酸化物/ZnS混合物を製造する方法、該Co/金属酸化物/ZnS混合物それ自体、また機械的及び/又は光学的特性を向上させるために、プラスチック中に、顔料としてそれを使用することに関わり、ここで、金属酸化物はSiO2, TiO2, Al2O3 又はそれらの混合物から選択されるものである。
【0011】
望ましくはコバルトを含まない硫化亜鉛は、全体として低コバルト含有量を保持するために、出発物質としてZnSを使用する。ここで、使用された硫化亜鉛は乾燥済みの又は新たに製造された硫化亜鉛である。代表的な製造方法はWO2008-065208に述べられている。使用した硫化亜鉛の粒子サイズは、全般的に5 nm から 5 μmであり、好ましくは、10 nm から 5 μm, 特に100 nm から 1μmである。
【0012】
これらのZnS粒子に基づいて、好ましくは硫酸コバルト、クエン酸コバルト又は酸化コバルト又は、それらの混合物であるコバルト塩の注入を、次のステップで行うことが出来る。コバルト原子が、SiO2 層, TiO2 層 又は Al2O3 層などの金属酸化層によりZnS粒子上でシールドされることから、この実施例は都合がよい。最初に、金属酸化物の前駆物質で無機後処理を行い、次のステップでコバルト塩の注入を行うか、金属酸化物の前駆物質とコバルト塩の表面処理を同時に行うことも可能である。
【0013】
いずれにせよ十分なUV抵抗を達成するためには、コバルト塩の量は、最終製品でCo2+の濃度が1から150ppmの間に、好ましくは、5から120ppm、特に好ましくは、20から100ppmの間である。
【0014】
更に、pH値は表面処理の間、アルカリの範囲を保つ必要があり、SiO2の前駆物質として水ガラスを使用した場合、表面処理は水酸化ナトリウムなどのアルカリの追加の必要は無いが、除外されるわけではない。
【0015】
無機性の表面処理は好ましくは、本発明による硫化亜鉛の乾燥前に行われる。このために、硫化亜鉛濾過ケークが水媒体中に再分散され、一つ以上の上記した表面処理試薬を追加することで、後処理がなされる。表面処理は、顔料の無機性の表面処理に関する従来技術に基づいて行われる。上で既に述べたひき続く工程がなされる。
【0016】
硫化亜鉛の無機性の表面処理は、例えば水性懸濁液中で行う。反応温度は、ここでは60°Cを超えないようにすることが望ましい。懸濁液のpH値は、例えばNaOHを使用して、9以上の範囲の値にpH値をセットする。
【0017】
活発な攪拌の下、表面処理薬品(無機化合物)、好ましくは水溶性無機化合物又はシリコン、チタン、アルミニウム及び/又はコバルトなどの金属の塩を加える。pH値及び表面処理薬品の量は、表面処理薬品が水に十分溶解出来るように選択される・
【0018】
ZnS懸濁液は、表面処理薬品が懸濁液中で均一に分散されるように、好ましくは少なくとも5分間、強力に攪拌される。次のステップでは、懸濁液のpH値は低下する。ここで、活発な攪拌のもとで、pH値をゆっくりと低下させることが重要であることが判明した。pH値は特に好ましくは10から90分以内に、5から8までの値へ低下させることが望ましく、6.5から7.5の範囲の中性点付近の値が望ましい。
【0019】
本発明によると、120分までの、特には90分までの熟成期間、好ましくは1時間の熟成期間が必要である。ここでの温度は60°Cを超えないことが望ましい。そして、水性懸濁液は流され、乾燥される。例えば、本発明により表面が変化した硫化亜鉛は、スプレードライ、フリーズドライ及び/又は粉砕乾燥により乾燥される。乾燥方法により、その後の乾燥粉の粉砕及び/又は篩いが必要になる。粉砕は公知の方法で行うことができる。
【0020】
原理的には、硫化亜鉛の無機性の表面処理は、多様な塩又は化合物の水溶液の形の金属酸化物前駆化合物による処理によって、本発明に基づいて行うことができる。
【0021】
本発明による超微細硫化亜鉛の無機性の表面変化は、以下の分子を含んでいる化合物から構成することができる。即ち、コバルト、シリコン、アルミニウム、チタン化合物及び/又は、塩である。例には、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、硫化チタニル(titanyl sulphate)及び硫酸コバルトが含まれる。
【0022】
無機性の“スリーブ”内にコバルトをより好ましく固定化するためには、表面処理されたZnSは、240分までの期間、特に好ましくは15分から90分の間、400°Cから1000°C、特に好ましくは500°Cから800°Cの温度範囲で、不活性雰囲気中でアニールされる。こうして、酸化前駆化合物は酸化物に確実に変換され、Co/金属酸化物/ZnSが形成される。
【0023】
従って、本発明は、ZnSを芯に持ち、該芯の周囲をコーティングする金属酸化物を有するCo/金属酸化物/ZnS複合粒子に関し、該コーティングはコバルトを含有し、金属酸化物はSiO2, Al2O3, TiO2又はそれらの混合物から選択されるものである。ここで、コバルトの含有とは、Co2+の含有を意味するものである。
【0024】
こうした複合粒子は、ZnSの芯と該芯の周囲をコーティングする金属酸化物を有し、該芯はコバルトを含まない。粒子をアニールする際に、コバルトを含有する金属酸化物から、その層の下に配置された芯の層にCo2+が拡散し得るが、芯は実質的にコバルトを含まない状態のまま残る。
【0025】
ここで、複合粒子の全体重量を基準にして、複合粒子は、コバルトを1から150ppm含有し、金属酸化物のコーティングは、複合粒子の全体重量をベースに、0.1から10重量%の量、特に0.5から5重量%とすることが出来る。
【0026】
金属酸化物のコーティングは、複合粒子の全体重量をベースに、0.5から5重量%の量のAl2O3を含有することができる。
【0027】
別の金属酸化物のコーティングは、複合粒子の全体重量をベースに、0.5から3重量%の量、特に1から2.5重量%の量のSiO2を含有することが出来る。
【0028】
更に別の金属酸化物のコーティングは、複合粒子の全体重量をベースに、0.5から3重量%の量、特に1から2.5重量%の量のTiO2を含有することが出来る。
【0029】
ここで複合粒子は、10nmから5μm、特に100nmから1μmの粒径を有する。
【0030】
本発明は、Co/金属酸化物/ZnS複合粒子を製造する方法に関わり、金属酸化物は、SiO2, Al2O3, TiO2 又はそれらの混合物から選択され、前記方法は、以下のステップを有する。
a. Zn粒子をCo塩の溶液で処理してZnS粒子にCo2+コーティング層を形成する;
b. ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、硫化チタニル(titanyl sulphate)又はそれらの混合物などの金属酸化物の前駆化合物のアルカリ溶液を加える、前記金属はSi, Ti, Al又はそれらの複数から選択されたものである、
c. 懸濁液のpH値をpH5から8の範囲に低下させ、任意的に120分までの熟成期間を追加しても良い、
d、 濾過され、好ましくは乾燥された粒子は、400°Cから1000°C、特に500°Cから1000°Cの温度範囲で、焼成するが、その後任意的に粒子を粉砕及び/又は篩ってもよい。
【0031】
ZnS粒子のCo塩溶液での処理とSiO2, TiO2 及び/又は Al2O3前駆化合物のアルカリ溶液の追加は、ワンステップでも行うことが出来る。a及びbのステップの順番は入れ替えることもできる。いずれの場合も、ZnS粒子は水溶液中に、又は乾燥粉として存在する。焼成される金属酸化物又はその混合物を生成する化合物は、金属酸化物の前駆化合物として言及されている。例として、ケイ酸アルカリ、アルミン酸アルカリ、チタン酸アルカリ、それらの水酸化物又は水化物を含み、状況により、硫酸アルミニウムがあり、それらは単独又は混合して使用することが出来る。
【0032】
本発明によると、従来技術によるZnS材料中のCo2+として300−350ppmに匹敵する、約20から100ppmのコバルトを含有する異なる複合材料を組み合わせることができる。コバルトの含有量は、従来技術の粒子のコバルト含有量の約5−28%となる。
【0033】
本発明は、また、ZnSの芯と該芯の周りを囲む、SiO2, TiO2, Al2O3 又はそれらの混合物から選択されたコーティングを有するCo/金属酸化物/ZnS複合粒子に関し、前記コーティングは、Co2+を含有する。コバルトの含まれないZnSから発して、ZnS芯と該芯を取り囲む金属酸化物のコーティングを有する複合粒子の提供が可能となり、芯にはコバルトが含まれない。この場合、コバルトを含有しない芯が意味することは、製造方法の過程において、もし、必要ならば、例えば、アニーリングの途中で熱拡散の結果として、コバルトを外側から芯に拡散することが出来るということである。そして、コバルトは、数nmの外側の層に存在することが出来るのである。
【0034】
本発明によれば、十分なUV耐性を得るためには、それぞれ複合粒子の全重量を基準にして、コバルト含有量は一般的に1から150ppm、好ましくは5から120ppm、特に好ましくは20から100ppmの範囲となる。ここで、SiO2コーティングなどのMOコーティングは、複合粒子の全重量に対して、0.1から10重量%の量として存在している。また、Co/金属酸化物/ZnS複合粒子の粒子サイズは、10nmから5μmである。
【0035】
本発明は、成形材料の顔料としてCo/SiO2/ZnS複合粒子を使用することを奨励する。特に、無機及び/又は有機ポリマー内に、また特に、グラスファイバーで補強されたプラスチック及びそれらから作られた品物などに、そして、塗料、染料、繊維、紙、グラウド、シール材、接着剤、セラミック、エナメル、吸着剤、イオン交換材、研磨剤、磨き粉、冷却潤滑剤、冷却潤滑剤濃縮液、耐火製品、固いコンクリート材料、医療材料、化粧品に使用すること、更に、材料の機械的及び/又は光学的な特性を改良するために、例えば、熱硬化性材料及び熱可塑性材料の堅さ、柔軟性、衝撃強さ、耐光性などであり、また、熱安定性のために、熱硬化性材料、熱可塑性材料及び弾性体に使用することがよい。
【0036】
本発明を以下の例及び図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、表面処理された硫化亜鉛の合成を示す模式図。
図2図2は、多様な硫化亜鉛耐光性を示す図。
図3図3は、本発明に基づいた粒子を使用して組み合わされた複合物と、従来技術の製品を使用して組み合わせた複合物との衝撃強さを比較した図。
図4図4は、ZnS複合物と比較試料の、衝撃強さ(明)と切り欠き衝撃強さ(暗を示す図。
図5図5は、Co/TiO2/複合物の耐光性を示す図。
図6】AT 235438Bに基づいて製造された複合物の耐光性に関する比較テストを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図中、数字で示される粒子は、以下のように合成された。ここで、MOは、SiO2, TiO2, Al2O3又はそれらの混合物を表す。
[1] 従来技術でのZnS(Co無し)
[2] 従来技術でのZnS(Co300ppm)
[3] Co/MO/ZnS複合物(Co60ppm)
[4] Co/MO/ZnS複合物(Co26ppm)
[5] MO/ZnS複合物(Co無し)
[6] PP-GF30ポリマー
[7] ポリマー+SiO2/ZnS 複合物 (1.2% SiO2)
[8] ポリマー+SiO2/ZnS 複合物 (6.7% SiO2)
[9] ポリマー+SiO2/ZnS 複合物 (2.8% Al2O3)
[10] ポリマー+従来技術でのZnS
[11] ポリマー+TiO2 (ルチル R 620 K)
[12] ポリマー+TiO2 (ルチル R DDI)
[13] Co/TiO2/ZnS 複合物 (0.5% TiO2, 60 ppm Co)
[14] Co/TiO2/ZnS 複合物 (1%% TiO2, 60 ppm Co)
[15] 900ppm CoでAT235438Bの方法により製造した合成物。
[16] 290ppm CoでAT235438Bの方法により製造した合成物。
【0039】
Co/SiO2/ZnS 複合物
Co/SiO2/ZnS 複合物は、図1の図式に示すように合成された。この目的のために、Co/SiO2/ZnS 複合物は二つのZnS本体からスタートして生成された。一方では、Coを含まない、ZnS粉は溶解器を用いて分散され、他方では、沈殿物からのコバルトを含まないZnS濾過ケークが使用された。開始物質の集中的な水への分散に次いで、硫酸コバルト及び/又は水ガラスが始めに懸濁液に加えられる(加えられた)。30分後、混合物が用いられていない場合には、他の成分は、従って、溶液中に滴下されて加えられた。水に溶かした硫酸を加えることで、pH値が6.5まで低下したところで、懸濁液は1時間攪拌され、固体を濾過して洗浄した。110°Cで12時間、乾燥棚で乾かした後、得られた粉をIKAミルを用いて、粉砕した。該材料のいくらかは、620°Cでアニールした。
【0040】
得られた複合物は、測色値、相対的な散乱能及びAl2O3, SiO2, TiO2、ナトリウム及びコバルトの化学分析により特長付けられる。更に、試料のREM及びTEM画像が記録され、粉体のディフラクトグラムが作成された。
【0041】
試料は、促進耐候試験、耐光性、衝撃強さ及び使用中の摩損性に関して、テストされた。
【0042】
図2に示すように、本発明による複合物粒子は、十分にコバルトの含有量が減っているにもかかわらず、従来の材料に比して、とても良好な耐光性を有した。
【0043】
実際的な例
本発明による製品の一つの応用分野として、グラスファイバー補強プラスチックに使用することががある。摩損性の試験及び衝撃強さの試験を、異なる組成の材料で行った。合成時に異なるpH値を通過した、二つのCo/SiO2/ZnS 複合物と、Al2O3/ZnS複合物がテストされた。結果を図3に示す。図からも分かるように、SiO2で表面が改変されることで、グラスファイバーに何らの否定的な影響も、グラスファイバー補強ポリプロピレン内に見いだせない。
【0044】
衝撃強さは、図4に示すように、非顔料性比較試料であるPP−GF30及びSachtolith HD-Sのレベルにまで、達している。
【0045】
本発明によるCo/SiO2/ZnS 複合物での、風化及び光分解試験では、より少ないコバルト(<100ppm)を含有する材料が、光に対して安定していることを示している。対称的に、SiO2/ZnS及びCo/ZnS複合物は、部分的にかなりの程度まで、白んでいる。試験により、ZnSの表面のコバルトが重要で有り、アニーリング行程の結果、コバルトがZnSの結晶格子内に導入されることが必要であることが分かる。吸光光度分析方法(相対的な散乱能、Lab)は、複合物が示す値は、従来技術による材料と比肩しうるものであることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6