(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055547
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】膨張した熱可塑性マイクロスフェアを調製するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B01J 13/02 20060101AFI20161219BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20161219BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20161219BHJP
C08J 9/00 20060101ALI20161219BHJP
C08J 9/228 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
B01J13/02
C08J5/00CER
B29C35/02
C08J9/00
C08J9/228
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-530368(P2015-530368)
(86)(22)【出願日】2013年9月4日
(65)【公表番号】特表2015-535726(P2015-535726A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】EP2013068218
(87)【国際公開番号】WO2014037361
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2015年3月26日
(31)【優先権主張番号】12183419.6
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/697,997
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】スヴェドベリ,ラーズ−オロフ
(72)【発明者】
【氏名】エイジデン,パー
【審査官】
岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03257103(US,A)
【文献】
特開昭59−142122(JP,A)
【文献】
特表2006−511360(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02189711(GB,A)
【文献】
特開2000−190394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/02
B29C 35/02
C08J 5/00
C08J 9/00
C08J 9/228
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤を封入するポリマーシェルを含む熱膨張性熱可塑性マイクロスフェアから、膨張した熱可塑性マイクロスフェアを調製する方法であって、
前記マイクロスフェアの膨張をもたらすために、伸縮性容器(2)内で前記膨張性マイクロスフェアを加熱する工程、および、前記伸縮性容器(2)からガスを回収する工程を含み、
前記伸縮性容器(2)が、ガスに対して不透過性の材料から形成されている、
方法。
【請求項2】
ガスが、フィルタを備える導管(4)を通って、前記伸縮性容器(2)から回収される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記膨張中に、前記熱膨張性マイクロスフェアを振とうする工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
振とうが、前記マイクロスフェアの膨張中に、前記伸縮性容器(2)を回転させることにより行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱膨張性マイクロスフェアが、前記マイクロスフェアの凝集を防止するために、分散剤と予め混合されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記分散剤が、二酸化ケイ素または二酸化チタンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
完全に膨張した後に、ガスが、マイクロスフェアを前記フィルタから除去するために、前記フィルタを吹き抜けられる、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の膨張した熱可塑性マイクロスフェアを調製するための膨張装置(1)であって、
ガスに対して不透過性の材料から形成された伸縮性容器(2)および、前記マイクロスフェアの膨張をもたらすために前記伸縮性容器(2)中の前記熱膨張性熱可塑性マイクロスフェアを加熱するための手段(3)、ならびに、前記伸縮性容器(2)からガスを回収するための手段(4)を含む、
装置。
【請求項9】
さらに、前記熱膨張性マイクロスフェアを振とうするための手段(5)を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記振とうするための手段(5)が、回転手段または撹拌手段である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記加熱するための手段(3)が、オーブンである、請求項8から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記伸縮性容器(2)が、バッグである、請求項8から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記伸縮性容器(2)が、ポリアミドまたはポリエチレンテレフタレートから形成されている、請求項8から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記ガスを回収するための手段(4)が、フィルタを備える導管である、請求項8から13のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張した熱可塑性マイクロスフェアを製造する方法およびこのような熱膨張性マイクロスフェアを膨張させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張性熱可塑性マイクロスフェアは、当分野において公知であり、例えば、米国特許第3615972号明細書、欧州特許第486080号明細書、欧州特許第566367号明細書および欧州特許第1067151号明細書に詳細に記載されている。このようなマイクロスフェアでは、発泡剤が、熱可塑性シェル内に封入される。加熱に基づいて、発泡剤が蒸発し、内部圧力を向上させ、同時に、シェル軟化剤として、通常、その直径の2から5倍の、マイクロスフェアの顕著な膨張をもたらす。
【0003】
熱可塑性マイクロスフェアは、未膨張のものまたは予め膨張したものとして、種々の用途に使用され得る。予め膨張したマイクロスフェアの用途例は、ドライスフェア用の溶媒系樹脂、例えば、ポリエステル、および、ウェットスフェア用の水系塗工系、例えば、塗料である。しかしながら、予め膨張したマイクロスフェアの輸送は、著しいスペースを必要とし、その理由のために、マイクロスフェアは、多くの場合、未膨張の状態で、エンドユーザに輸送され、現地で膨張させられる。
【0004】
国際公開第2004/056549号パンフレットには、膨張した熱可塑性マイクロスフェアの現地での調製に有用な方法および装置が開示されている。膨張性マイクロスフェアは、中空体により封入された回転供給手段および1つまたはそれ以上のスクレーパを備える膨張装置内に充填される。方法および膨張装置は、十分機能するが、著しいスペースを必要とし、比較的複雑な設備を必要とする。
【0005】
米国特許第3257103号には、蒸気透過性ふるい素子の容器中でポリスチレンビーズを膨張させるための方法および装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3615972号明細書
【特許文献2】欧州特許第486080号明細書
【特許文献3】欧州特許第566367号明細書
【特許文献4】欧州特許第1067151号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/056549号パンフレット
【特許文献6】米国特許第3257103号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、広いスペースを必要としない比較的単純な設備で、操作が容易であることにより、膨張したマイクロスフェアが使用される現場での使用に適しており、顕著な輸送体積を抑える、膨張した熱可塑性マイクロスフェアを調製する方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、膨張した熱可塑性マイクロスフェアを調製する方法であって、最小の凝集作用を提供し、膨張したマイクロスフェアの所望の密度を提供するために、特に、狭い密度分布を取得するために、マイクロスフェアの膨張度合いが容易に制御され得る方法を提供することである。タイミングおよび温度サイクルを制御するのが容易であり、マイクロスフェアに対する添加剤、例えば、その表面に付着される添加剤の添加を制御可能なバッチ法を提供することも目的である。本発明のさらなる目的は、膨張した熱可塑性マイクロスフェアを調製するための膨張装置を提供することである。装置は、上記された方法に適している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づいて、発泡剤を封入するポリマーシェルを含む熱膨張性熱可塑性マイクロスフェアから、膨張した熱可塑性マイクロスフェアを調製する方法により、上記された目的を達成可能であることが驚くべきことに見出された。方法は、前記マイクロスフェアの膨張をもたらすために、伸縮性容器内で膨張性マイクロスフェアを加熱する工程、および、前記伸縮性容器からガスを回収する工程を含む。好ましくは、伸縮性容器は、ガスに対して不透過性の材料から形成されている。
【0009】
本発明は、さらに、ガスに対して不透過性の材料から形成された伸縮性容器、および、前記マイクロスフェアの膨張をもたらすため伸縮性容器中の熱膨張性熱可塑性マイクロスフェアを加熱するための手段、ならびに、前記伸縮性容器からガスを回収するための手段を含む、膨張した熱可塑性マイクロスフェアを調製するための膨張装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に基づく膨張装置の実例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
伸縮性容器は、好ましくは、溶解または破壊されることなく、膨張中の温度、好ましくは少なくとも100℃まで、最も好ましくは少なくとも150℃まで、および特に少なくとも200℃の温度に耐え得る材料から形成される。有用な材料としては、ポリマー材料、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)または、類似の特性を有する他の種類の材料があげられる。「伸縮性」の用語は、破壊されることなく、曲げられるか、または、伸縮し得るものを意味する。
【0012】
「伸縮性容器」の用語は、バッグ、サックまたはそれに何か相当するものを意味する。
【0013】
本願明細書で使用する時、「ガスに対して不透過性の材料」の用語は、材料からのイソブタンの拡散量が、150℃の温度およびイソブタンの分圧における0.5barの圧力差において、1分および1m
2あたりに4gのイソブタン未満であることを意味する。好ましくは、これらの条件での拡散量は、1分および1m
2あたりに3g未満であり、最も好ましくは、1分および1m
2あたりに2g未満である。
【0014】
方法および膨張装置は、膨張した熱可塑性マイクロスフェアのバッチ法による製造を可能にし、その膨張中のタイミングおよび温度を調節することにより容易に制御され得る。
【0015】
本発明に基づく方法および膨張装置は、本願明細書において規定された全ての公知の種類の膨張性熱可塑性マイクロスフェア、例えば、商標Expancel(登録商標)で市販されているものに使用され得る。有用な膨張性マイクロスフェアは、例えば、米国特許第3615972号明細書、米国特許第3945956号明細書、米国特許第4287308号明細書、米国特許第5536756号明細書、米国特許第6235800号明細書、米国特許第6235394号明細書および米国特許第6509384号明細書、米国特許第6617363号明細書および米国特許第6984347号明細書、米国特許出願公開第2004/0176486号明細書および2005/0079352号明細書、欧州特許第486080号明細書、欧州特許第1230975号明細書、欧州特許第1288272号明細書、欧州特許第1598405号明細書、欧州特許第1811007号明細書および欧州特許第1964903号、国際公開第2002/096635号パンフレット、国際公開第2004/072160号パンフレット、国際公開第2007/091960号パンフレット、国際公開第2007/091961号パンフレットおよび国際公開第2007/142593号パンフレットならびに特開1987−286534号公報および特開2005−272633号公報の文献に記載されている。
【0016】
適切な膨張性熱可塑性マイクロスフェアは、典型的には、種々のエチレン性不飽和モノマーを重合することにより取得可能なポリマーまたはコポリマーから形成された熱可塑性シェルを有する。モノマーは、ニトリル含有モノマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルファ−クロロアクリロニトリル、アルファ−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリルもしくはクロトニトリル;アクリル酸エステル、例えば、メチルアクリレートもしくはエチルアクリレート;メタクリル酸エステル、例えば、メチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートもしくはエチルメタクリレート;ハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニル;ハロゲン化ビニリデン、例えば、塩化ビニリデン;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル;スチレン、例えば、スチレン、ハロゲン化スチレンもしくはアルファ−メチルスチレン;ジエン、例えば、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレン;または、他の種類のモノマー、例えば、ビニルピリジンであり得る。上記されたモノマーの任意の混合物も使用され得る。
【0017】
ポリマーシェル用のモノマーが、架橋性の他官能モノマー、例えば、1つまたはそれ以上のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイロキシグリコールモノアクリレート、トリアクリルホルマールまたはトリアリルイソシアネート、トリアリルイソシアヌレート等も含むのが望ましい場合もある。存在する場合、このような架橋性モノマーは、ポリマーシェル用のモノマーの総量の、好ましくは0.1から1wt%、最も好ましくは0.2から0.5wt%を構成する。好ましくは、ポリマーシェルは、マイクロスフェア合計の、60から95wt%、最も好ましくは75から85wt%を構成する。
【0018】
通常、そのガラス転移点(T
g)に対応するポリマーシェルの軟化点は、好ましくは、50から250℃または100から230℃の範囲内である。
【0019】
マイクロスフェア中のポリマーシェルにより封入される発泡剤は、通常、熱可塑性ポリマーシェルの軟化点より高くない沸点を有する液体である。膨張剤または噴射剤とも呼ばれる発泡剤は、少なくとも1つの炭化水素、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタンおよびイソオクタンまたはそれらの任意の混合物であり得る。また、他の炭化水素種、例えば、石油エーテルおよび塩化もしくはフッ化炭化水素、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロフルオロメタン等が使用され得る。特に好ましい発泡剤は、少なくとも1つのイソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、イソドデカンおよびそれらの混合物を含む。発泡剤は、適切に、マイクロスフェアの5から40重量%を構成する。
【0020】
大気圧での発泡剤の沸点は、広い範囲内、好ましくは−20から200℃、最も好ましくは−20から150℃、および最も好ましくは、−20から100℃であり得る。
【0021】
熱膨張性熱可塑性マイクロスフェアは、その膨張をもたらすために加熱される。マイクロスフェアの膨張が開始する温度は、T
startと呼ばれる。一方、最大膨張が達成された温度は、T
maxと呼ばれる。両方とも、1分あたりに20℃の温度上昇速度で決定される。本発明に使用される熱膨張性マイクロスフェアは、適切に、60から200℃、好ましくは70から180℃、最も好ましくは80から150℃のT
startを有する。本発明に使用される熱膨張性マイクロスフェアは、適切に、50から300℃、好ましくは100から250℃、最も好ましくは120から200℃のT
maxを有する。
【0022】
膨張性マイクロスフェアは、ウェットサンプル上での、Malvern Mastersizer Hydro2000SM装置におけるレーザ光散乱により測定された場合、好ましくは1から500μm、より好ましくは5から100μm、最も好ましくは10から70μmの体積中位径を有する。T
startを上回る温度に加熱することにより、通常、マイクロスフェアを、その直径の2から5倍以上、好ましくは、その直径の3から5倍に膨張させることができる。
【0023】
本発明に基づいて、ガスが、好ましくは、マイクロスフェアの膨張中および/または同膨張後に、伸縮性容器から回収され、マイクロスフェアから漏出する発泡剤が、伸縮性容器中の空気と爆発性混合物を形成しないことが保証される。これは、大気圧以下または真空の使用により行われ得る。ガスは、好ましくは、ガスが通過するフィルタを備える導管を通って、伸縮性容器から回収されてもよい。これにより、マイクロスフェアがガスと共に回収されるのを防止する。
【0024】
好ましくは、伸縮性容器中のマイクロスフェアは、膨張中に、例えば、容器を回転させるか、または、容器中のマイクロスフェアを撹拌するか、または、それらの組み合わせにより振とうされる。
【0025】
膨張性マイクロスフェアは、好ましくは膨張前に、マイクロスフェアの凝集を防止する分散剤と予め混合されてもよい。最も好ましくは、膨張性マイクロスフェアは、膨張装置に入れられる前に、このような分散剤と予め混合されるが、それらは、膨張装置内で、分散剤と混合されてもよい。
【0026】
適切な分散剤は、好ましくは、微粒子の、通常、固体粒子の形式であり、1nmから1mm、好ましくは10nmから30μmの範囲の粒径を有する。分散剤の例は、無機物質、例えば、アルミニウム粉末、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、カオリン、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化チタン、二酸化チタン、酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ヒドロタルシト、マイカ、重晶石、ガラススフェア、フライアッシュ、微砂、鉱石繊維および一般的な補強繊維、ウォラストナイト、長石、珪藻土、パーライト、バーミキュライト、中空の石英ならびにセラミックスフェアである。有機化合物、特に十分高い軟化点を有するポリマー、および、セルロース、木粉、カーボンブラック、炭素繊維およびグラファイト繊維も使用され得る。好ましくは、分散剤は、酸化ケイ素、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)である。別の好ましい分散剤は、二酸化チタンである。分散剤は、その純粋な形態で使用されてもよいし、または、凝集防止効果を向上させるために、種々の方法で表面処理されてもよい。分散剤を表面処理する1つの方法は、疎水性にすることである。マイクロスフェアに添加される分散剤の重量比は、使用される分散剤により決まるが、多くの場合、適切に、1:1000から5:1、好ましくは1:500から1:1、さらにより好ましくは1:100から1:3、および最も好ましくは、1:25から1:5である。添加される分散剤の量は、マイクロスフェアの総重量に基づいて、通常1から20wt%、好ましくは2から10wt%の量であり得る。
【0027】
膨張したマイクロスフェアの密度は、適切な加熱温度および/またはマイクロスフェアが膨張装置に存在する間の時間の長さにより制御される。膨張中の膨張装置の温度は、適切に、T
startより高く、好ましくは、T
startより5から150℃高く、最も好ましくは、T
startより20から50℃高い。膨張装置におけるマイクロスフェアの平均滞留時間は、好ましくは、30秒から4時間、好ましくは1分から100分、最も好ましくは1分から20分である。
【0028】
ウェットおよびドライの熱膨張性マイクロスフェアは両方とも、本発明に基づく方法および装置に使用され得る。ただし、本発明は、低い含水量を有する熱膨張性マイクロスフェアに特に適している。適切に、熱膨張性マイクロスフェアは、50重量%より高い、好ましくは80重量%より高い、最も好ましくは97重量%より高い乾燥固形分を有する(乾燥固形分は、2−3gの未膨張Expancel(登録商標)マイクロスフェアを、50℃で90分間乾燥させた後に算出される。)。
【0029】
本発明に基づく膨張装置は、上記規定された伸縮性容器を含む。熱膨張性マイクロスフェアを加熱するための手段は、オーブン、炉、温めたカップボードまたは加熱したキャビネットであり得る。その温度を上昇させる任意の他の種類の手段、例えば、容器が置かれた加熱された空間であることもできる。
【0030】
好ましくは、膨張装置は、さらに、伸縮性容器からガスを回収するための手段を含む。容器からガスを回収するためのこのような手段は、フィルタを備え、容器に接続された導管でもよい。前記手段は、次に、容器からのガスの回収を達成するために、減圧下または真空用の供給源に接続され得る。
【0031】
膨張装置は、さらに好ましくは、その膨張中に、熱膨張性マイクロスフェアを振とうするための手段を含む。振とうするための手段は、例えば、伸縮性容器を回転させることによる回転手段であり得る。例えば、伸縮性容器中のマグネティックスターラーまたは他の種類のスターラーにより、膨張性マイクロスフェアを撹拌することによる、撹拌手段であることもできる。
【0032】
回転手段の回転速度は、例えば、1から100rpm、好ましくは5から90rpm、最も好ましくは7から30rpmであり得る。
【0033】
図1は、本発明に基づく膨張装置の実例である。
【0034】
図1は、本発明の膨張装置1の実施形態を示す。ただし、本発明は、このような実施形態に限定されない。膨張性マイクロスフェアは、伸縮性容器2、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリアミド製のバッグ内に充填される。膨張性マイクロスフェアを含む伸縮性容器2は、その膨張をもたらすために、マイクロスフェアを加熱するための手段3内に挿入される。マイクロスフェアを加熱するための手段3は、炉または任意の相当する設備であり得る。マイクロスフェアは、所望の密度になるのに十分な温度に加熱される。正確な温度は、マイクロスフェアのグレードにより決まり、例えば、100から250℃または140から200℃であり得る。
【0035】
膨張装置1は、さらに、伸縮性容器2からガスを回収するための手段4を含む。この手段は、例えば、伸縮性容器に接続され、マイクロスフェアがガスと共に回収されるのを防止するフィルタ(図示せず)を備える導管4であり得る。導管4は、次に、伸縮性容器2からガスを回収するために、真空の供給源に接続され得る。マイクロスフェアの膨張中に、少量の発泡剤(例えば、イソブタン、イソペンタンおよび/または他の種類の炭化水素)が放出され得る。発泡剤は、伸縮性容器2中の爆発性混合物の形成リスクを引き起こし得る。容器からガスを回収することにより、このリスクが、顕著に低下される。
【0036】
膨張装置は、さらに、振とう手段5を含み得る。このような振とう手段は、膨張中にマイクロスフェアを含む伸縮性容器を回転させる回転手段であり得る。膨張中にマイクロスフェアを振とうすることにより、マイクロスフェアの凝集リスクが減少される。
【0037】
膨張の完了後、バッグに残った大部分のガスは回収される。ついで、少量の空気が、マイクロスフェアをフィルタから除去するために、伸縮性容器内に吹き込まれ得る。
【0038】
伸縮性バッグ2は、加熱手段から取り出され、ガスを回収するための手段4および振とう手段5から解放され、膨張したマイクロスフェアが使用されることを意図された任意の点にもたらされ得る。
【実施例】
【0039】
本発明は、下記実施例に関連してさらに記載されるであろう。ただし、下記実施例は、本発明の範囲を限定するのに解釈されてはならない。特に断らない限り、全ての部および割合は、重量部および重量パーセントを意味する。
【0040】
実施例1
膨張したマイクロスフェアを、
図1に示された装置において、下記手法に基づいて調製した。1.1kgのExpancel(登録商標)MI90 DUT80(15wt%の表面処理されたシリカと混合された膨張性マイクロスフェア)を、40μmの厚みを有するポリアミドの200リットルバッグ内に充填した。バッグをオーブンに入れ、フィルタを備える導管に、バッグ内に導管を挿入することにより接続した。容器を、適切な振とうを提供するために、膨張中に13rpmで回転させた。加熱および膨張を開始した時点で、ガスを、導管を通して回収した。152℃で6分後に、膨張を完了させ、バッグに残った大部分のガスを排気した。ついで、少量の空気を、膨張したマイクロスフェアをフィルタから除去するために、バッグ内に吹き込んだ。最後に、導管が接続されたバッグの部分を切断し、膨張したマイクロスフェアを含むバッグを、用途にもたらした。取得した混合物の密度は、15kg/m
3であった。
【0041】
実施例2
180gのExpancel(登録商標)461 DU40(膨張性マイクロスフェア)を829gのTiO
2と混合して均質な混合物を取得したこと以外は、実施例1に従った。混合物を、実施例1において規定したバッグに入れ、140℃で3.5分間膨張させた。膨張中の回転速度を、13rpmとした。取得した混合物の密度は、97kg/m
3であった。
【0042】
実施例3
500gのExpancel(登録商標)461 DU40(膨張性マイクロスフェア)を1500gのCaCO
3と混合して均質な混合物を取得したこと以外は、実施例1に従った。混合物を、実施例1において規定したバッグに入れ、140℃で3.5分間膨張させた。膨張中の回転速度を、13rpmとした。取得した混合物の密度は、113kg/m
3であった。