【実施例】
【0013】
実施例に係る椅子につき、
図1から
図9を参照して説明する。
図1に示されるように椅子1は、左右方向に所定間隔離間して複数配置される支持体2と、隣接する支持体2同士の間に架設される背板3及び座板4と、から主に構成されており、例えば大学の講堂や劇場、映画館やコンサートホールなどにおいて、前後方向に複数配置することで多くの使用者が着座することができるようになっている。尚、複数配置される支持体2のうち、左右方向の両端に位置するものを末端支持体21,21’として説明する。
【0014】
先ず、支持体2について説明すると、
図2に示されるように、支持体2は、床面に固定される脚体5と、脚体5の左右両端に組み付けられ背板3を支持する背支持ブラケット6,7と、背支持ブラケット6,7の上端に取付けられる本発明の肘掛け部としての肘木8と、から構成されている。
【0015】
図2に示されるように、脚体5は、下端部にボルト等で床面に固定するための取付部5aと、取付部5aから上方に向けて立設される平面視略矩形状の支柱部5bと、支柱部5bの両側面に設けられ座板4を枢支する枢支部5c,5cと、枢支部5c,5cに取付けられた座板4を支持する支持部5g,5gと、を備えている。尚、座板4の取付けについては後述にて説明する。
【0016】
背支持ブラケット6,7は、それぞれ、脚体5の側面に沿う本体部6a,7aと、本体部6a,7aに連続して脚体5の前面に沿って屈曲する前曲部6b,7bと、本体部6a,7aに連続しており背板3側に前曲部6b,7bの延設方向と対抗方向に延設される背曲部6c,7cと、を備えている。本体部6a,7aは、その外側面が化粧面として施され、また支柱部5bの上端よりも上方に突出し、前縁と上縁とに架けて弧状に形成された上端部6g,7gを有している。この前曲部6b,7bは、連続形成された背支持ブラケット6,7の前端側を屈曲させることで形成されている。また、本体部6aは、前曲部7bの厚み分、本体部7aよりも前後方向に長く形成されている。
【0017】
図2ないし
図4(a)に示されるように、この背支持ブラケット6,7は、前曲部6b及び支柱部5bが前曲部7bを挟み込んだ状態で支柱部5bの上端側を左右方向から狭圧し、前曲部6b,7bを支柱部5bの前面にボルトねじ10で締結することで、脚体5に組み付けられている。また、本体部6a,7aを固定するために図示しないボルト等で支柱部5bに固定する。尚、本体部6a,7aの左右方向にボルト等が突出しないように、本体部6a,7aに設けられるボルト孔は座繰り加工されていてもよい。このように、背支持ブラケット6,7は、脚体5の前面に沿って屈曲する前曲部6b,7bを備えているため、前曲部6b,7bがリブ状の形状となって構造上の強度が高まっており、支柱部5bの前面に対して強固に締結できるようになっている。
【0018】
図3に示されるように、背支持ブラケット6,7が脚体5に組み付けられた状態において、背支持ブラケット7の前曲部7bの端面7hは、背支持ブラケット6に被覆されており、外部に露出する背支持ブラケット6,7と脚体5との段差が減少している。
【0019】
更に、背支持ブラケット6,7は、支柱部5bの前面にボルトねじ10で締結されているため、着座者側にボルトねじ10が露出することを回避されている。尚、特に図示しないが前述したように本体部6aが前曲部7bの厚み分、本体部7aよりも前後方向に長く形成されているため、背支持ブラケット6の背曲部6cは、背支持ブラケット7の背曲部7cと左右方向に面一になるように構成されている。
【0020】
図2、
図4(b)、及び
図5に示されるように、肘木8は、両側面が本体部6a,7aの上端部6g,7gの形状に切欠いて形成される切欠き部8a,8aを有しており、肘木8と本体部6a,7aとは、切欠き部8a,8aに上端部6g,7gを嵌合させた状態で挿入ネジ11及び受けネジ12によって締結されている(
図5参照)。すなわち、背支持ブラケット6,7の上端部6g,7gが肘木8によって塞がれている。尚、この肘木は、予め支柱部の上端に固着されてもよいし、支柱部と一体形成されていてもよい。
【0021】
また、
図2及び
図4(b)に示されるように、肘木8は、本発明の被覆部としてのフロントパネル9を有している。より詳しくは、このフロントパネル9は、上端部に上方に向けて突出する突起部9aと、下端部に設けられる固定部9bと、背面に凹設される凹溝9cと、を備えている。このフロントパネル9は、肘木8の前端に上下方向を向いて設けられた凹部8bに突起部9aが嵌合されて接続されている。そして、フロントパネル9は、背支持ブラケット6,7が組み付けられた支柱部5bの前面を凹溝9cに内嵌した状態で固定部9bに挿入されたボルト等で支柱部5bの前面に固定設置されている。
【0022】
これによれば、
図3に示されるように、肘木8に接続されたフロントパネル9が支柱部5bの前面にボルトねじ10で締結された背支持ブラケット6,7の締結箇所を被覆するようになっている。すなわち、肘木8及びフロントパネル9によって、背支持ブラケット6,7の上端部6g,7g及び支柱部5bの前面がいずれも塞がれている。尚、このフロントパネルは、肘木に対して固着されていても構わない。
【0023】
次に、末端支持体21,21’について説明する。尚、この末端支持体21,21’は、略同一形状を成すため、末端支持体21についてのみ説明する。
【0024】
図6に示されるように、末端支持体21は、脚体51、背支持ブラケット7、及び末端支持体21の末端側に取付けられるサイドパネル61と、から構成されている。この脚体51の支柱部51bは、支柱部51bにおけるサイドパネル61との反対側の面に枢支部5c及び支持部5gを備えている。更に、支柱部51bは、サイドパネル61側の通路を照らす図示しない誘導灯を取付けるための取付孔部13が左右方向に貫通して形成されている。また、
図7(a)に示されるように、背支持ブラケット7は、前曲部7bが支柱部51bの前面にボルトねじ10で締結することで、脚体51の上端側に組み付けられている。
【0025】
図6に示されるように、サイドパネル61は、脚体51の側面に沿うパネル部61aと、パネル部61aの上端部から背支持ブラケット7の上端部7gに向けて延設される肘掛け部61bと、肘掛け部61bの前端から下方に向けて延設される被覆部61cと、パネル部61aに設けられ取付孔部13と連通する連通孔61dと、を備えている。また、サイドパネル61の外面側には、前後方向に複数配置された椅子1の列番を示す表示部14が設けられている(
図1参照)。
【0026】
すなわち、
図7(b)に示されるように、背支持ブラケット7の上端部7gが肘掛け部61bによって塞がれているとともに、支柱部51bの前面に締結された背支持ブラケット7の締結箇所が被覆部61cによって塞がれている。尚、サイドパネル61は、パネル部61a,肘掛け部61b,被覆部61c,及び連通孔61dが一体形成されていたが、これに限られず、サイドパネルを別個の部材で形成し、後から組み立てるようにしてもよい。
【0027】
次いで、隣接する支持体2同士の間に背板3及び座板4を架設する作業について説明する。尚、ここでは、末端支持体21と末端支持体21に隣接する支持体2との間に背板3及び座板4を架設する態様について説明する。更に尚、この背板3には、上端面に図示しない席番を表示する席番プレートが取付けられている。
【0028】
図8(a)に示されるように、背板3は、背板3を末端支持体21及び支持体2の間に背面側から配置し、前面側から背曲部6c,7cを介してボルト等を緊締することで末端支持体21及び支持体2の間に架設される。このとき、前述したように、背支持ブラケット6の背曲部6cは、背支持ブラケット7の背曲部7cと左右方向に面一になるように構成されているため、背板3が架設される位置が前後方向にバラつくことがなく、椅子1の美観を損なわない。
【0029】
そして
図8(b)に示されるように、背板3の前面に背曲部6c,7cを被覆するように背凭れ用クッション3aを取付ける。このように背凭れ用クッション3aが背曲部6c,7cを被覆するため、背曲部6c,7cと背板3との段差、及びボルト等が外部に露出しないようになる。
【0030】
その後、
図9(a)に示されるように、末端支持体21及び支持体2の間に座板4を架設する。座板4の上面には、着座用クッション4aが取付けられており、着座用クッション4aは、両端部から左右方向に突出する軸部4b、4bを備えている。この座板4は、軸部4b、4bを末端支持体21及び支持体2の各枢支部5cに取付けることにより、末端支持体21及び支持体2の間に対して回動自在に枢支されるようになり、略垂直方向を向く座板4の収容位置と略水平方向を向く着座位置とに適宜変位できるようになる。
【0031】
図9(b)に示されるように、座板4が前記着座位置に変位されると、座板4の下面が支持部5gに支持されるようになり、座板4がそれ以上下方に向けて回動しないようになる。したがって、着座者が座板4に着座した際には、座板4が略水平方向を向く着座位置に保持される。このように、末端支持体21及び支持体2の間に座板4が架設されると、背支持ブラケット6,7の下端部が座板4の着座用クッション4aによって被覆され、外方に露出しないようになっている。そして、上記の作業工程と同様の工程で隣接する支持体2同士の間に背板3及び座板4を架設することで椅子1が形成される。
【0032】
以上説明したように、背支持ブラケット6,7の前端が脚体5の前端部まで延設され、脚体5の支柱部5bの前面に沿って屈曲する前曲部6b,7bとなっていることにより、外部に露出する背支持ブラケット6,7と脚体5との段差が減少している。更に、肘木8や肘掛け部61bにより、背支持ブラケット6,7の上端部6g,7gが塞がれている。そのため、着座者が背支持ブラケット6,7の端縁や脚体5との段差、或いはボルト等に接触して怪我をする虞を回避できる。更に、例えば
図8(a)に示される背支持ブラケット6,7の上端部6g,7gの後側に設けたボルトは、背凭れ用クッション3aで隠され(
図8(b)参照)、着座者から見え難い箇所に配置されているので、外観体裁が良く且つイタズラの虞を回避できる。尚、背支持ブラケット6,7の上端部6g,7gの前側及び上記した後側にボルトを設けず、背支持ブラケット6,7を脚体5の前面のみに組み付けてもよく、このようにすることで、背支持ブラケット6,7の美観が更に高まる。
【0033】
また、この背支持ブラケット6,7を化粧板として用いることで別部材の化粧板を用いる必要がなく、支持体2にかかる部品点数を減らし、着座者の有効寸法を確保できる。
【0034】
また、背支持ブラケット6,7は、支柱部5bの上端よりも上方に突出する上端部6g,7gを有しており、上端部6g,7gに肘木8を設置するため、支柱部5bの長さを長く設けなくても、上端部6g,7gの長さを調整して形成すればよく、脚体5にかかる種々の部材の大きさを平均化できる。
【0035】
また、背支持ブラケット6,7の前曲部6b,7bや上方に延設された上端部6g,7gを脚体5との組み付け部分として利用することで、着座者と接触することを防止できる。更に、背支持ブラケット6,7を支柱部5bの前面に締結することで、背板3に負荷される力がボルトねじ10の離脱方向にかかり難く、背支持ブラケット6,7が脚体5から離脱することを防止できる。
【0036】
また、前曲部6b,7bは、連続形成された背支持ブラケット6,7の前端側を屈曲させることで形成されており、構造上の強度が高められている。したがって、背曲部6c,7cに背板3を取付けた際に、前曲部6b,7bに対して大きなモーメントが生じても背板3を支持した状態を保つことができる。尚、前曲部は、背支持ブラケットの本体部に溶接等により設けられてもよい。
【0037】
また、一つの脚体5を、背支持ブラケット6,7の組み付けに共用することができるため、支持体2にかかる部品点数を少なくなり、着座者の有効寸法を確保できる。更に、隣接する支持体2の脚体5の間に背支持ブラケット6,7を介して背板3が取付けられているため、各背支持ブラケット6,7にそれぞれ負荷される左右方向の荷重モーメントを相殺できる。
【0038】
また、フロントパネル9が設けられた肘木8、及び被覆部61cが設けられた肘掛け部61bを脚体5に配設することで、背支持ブラケット6,7の上端部6g,7g及び支柱部5bの前面がいずれも塞がれているため、着座者が背支持ブラケット6,7の端縁や脚体5との段差、或いはボルト等に接触することがなく、安全性が更に向上するばかりか、美観を損なうことがない。
【0039】
尚、本発明に係る背支持ブラケットの変形例として、
図10に示されるように、背支持ブラケット6’の前曲部6b’は、端面6hが背支持ブラケット7の本体部7aの外周面と略面一となるように構成してもよい。これによれば、前曲部6b’の端面6hと背支持ブラケット7とに段差が形成されず、着座者に接触することがないため、特段のフロントパネルを用いず、部品点数を減らし、支持体2にかかるコストを抑えることができる。更に尚、本発明に係る背支持ブラケットの変形例として、特に図示しないが、脚体の左右に取り付けられる一対の背支持ブラケットの前曲部同士を、当該脚体の支柱部前面の略中央部にて突合せるとともに、これら前曲部の前面を略面一に形成することで、当該背支持ブラケット同士の段差を解消することができる。
【0040】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0041】
例えば、前記実施例では、支柱部5bが平面視略矩形状を成しており、背支持ブラケット6,7は、支柱部5bの形状に合わせて本体部6a,7aの前端側を略90度屈曲させて前曲部6b,7bを形成したが、例えば、支柱部の前面が先細のテーパ状を成し、当該テーパ状に合わせて前曲部が形成されてもよい。
【0042】
また、椅子1は、背板3及び座板4が複数設けられるものに限られず、一対の末端支持体に1組のみの背板及び座板が設けられ、単独で用いられてもよい。