(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可塑化シリンダが、前記溶融樹脂と前記加圧流体とを混合する高圧混練ゾーンと、前記加圧流体が混合された前記溶融樹脂からガス化した前記加圧流体を排気する前記ベントが形成された減圧ゾーンとを有し、
更に、前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとの間に設けられ、前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとの連通を遮断するシール機構を備える請求項8又は9に記載の成形装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加圧二酸化炭素等の加圧流体を用いた成形方法では、加圧流体が可塑剤として働き溶融樹脂の粘度が低下するため、ベントアップが特に問題となる。しかし、加圧流体を用いた成形方法では、ベント近傍は揮発成分(ガス成分)を含む加圧流体と溶融樹脂により充満されている。したがって、ベント近傍に高圧対応のガラス窓等を設けても、ガラス窓はガス成分に汚染されて透明性を維持できず、ガラス窓から光学的にベントアップした樹脂を検知することは困難である。また、加圧流体を用いた成形方法では、可塑化シリンダ内部を加圧状態として成形を行っているため、ベントアップが生じてベントを塞いだ樹脂を取り除くためには、一旦、可塑化シリンダ内を大気開放する必要がある。そのため、ベントアップは、安定した連続成形の支障となっていた。
【0007】
更に、特許文献2に開示される内部にシール機構が設けられる可塑化シリンダでは、加圧二酸化炭素を導入する際、シール機構により、高圧混練ゾーンと、原料樹脂が供給される可塑化ゾーン及びベントを有する減圧ゾーンとの連通が遮断される。これにより、各ゾーン間における圧力及び溶融樹脂の流通が分断される。したがって、特許文献2に開示される可塑化シリンダにおいて、ベントアップを検出した場合に、可塑化シリンダ内における原料樹脂の送り量を減らす等の制御を行ったとしても、高圧混練ゾーンからベントを有する減圧ゾーンへ移動する溶融樹脂の量を十分に減少させることができず、ベントアップを根絶することは困難である。
【0008】
本発明の目的は、ベントを有する成形装置において、
ベントアップを検出するベントアップ検出機構を提供すること、ベントアップする溶融樹脂によりベントが閉塞されることを防止するベントアップ防止装置を提供すること、及び該ベントアップ防止装置を用いた成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従えば、
物理発泡剤として加圧流体を用いる発泡成形に用いられ、ベントが形成され、内部で
、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂
とし、前記溶融樹脂と前記加圧流体とを混合する可塑化シリンダにおいて、前記溶融樹脂のベントアップを検出するベントアップ検出機構であって、
前記ベントアップ検出機構は、前記可塑化シリンダの前記ベントに接続される本体と、前記本体内に
、移動可能に保持された検出ロッドである移動部材であって、前記検出ロッドの一方の端部が前記ベントに挿入され、他方の端部に永久磁石が設けられ、ベントアップする前記溶融樹脂が
前記一方の端部に接触することにより移動する
前記移動部材と、前記移動部材の
前記他方の端部に設けられた永久磁石の位置変位を非接触で検出する
磁気センサである検出部とを有し、前記移動部材の周囲の雰囲気が、
前記加圧流体によって大気圧以上に加圧されている加圧雰囲気であることを特徴とするベントアップ検出機構が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様に従えば、ベントアップ防止装置であって、第1の態様の前記ベントアップ検出機構と、前記本体内に配置され、前記ベントアップ検出機構からのベントアップ検出結果に基づいて、前記ベントアップする溶融樹脂を前記可塑化シリンダ内へ押し戻す押圧機構
とを有し、前記押圧機構が、前記溶融樹脂を前記可塑化シリンダ内へ押し戻すピストンを有し、前記溶融樹脂を前記可塑化シリンダ内へ押し戻すとき、前記ピストンの一部が前記ベントに挿入され
ることを特徴とするベントアップ防止装置が提供される。また、前記ピストンは、前記溶融樹脂を前記可塑化シリンダ内へ押し戻すとき、一部が前記ベントに挿入される円筒部を有し、前記円筒部の内部に前記移動部材が移動可能に保持されていてもよい。
【0012】
本発明の第3の態様に従えば、
発泡成形体の製造方法であって、ガス成分を外部に排出するベントが形成された可塑化シリンダ内で、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とすることと、
前記溶融樹脂に、物理発泡剤として加圧流体を混合することと、前記溶融樹脂からガス成分
として、ガス化した一部の加圧流体を分離し、分離した前記ガス成分を前記ベントから可塑化シリンダの外部に排出することと、ベントアップ検出機構を用いて
、前記溶融樹脂のベントアップを検出することと、前記ガス成分を分離した溶融樹脂を
発泡させ、且つ所望の形状に成形することを含み、前記ベントアップ検出機構は、前記可塑化シリンダの前記ベントに接続される本体と、前記本体内に
移動可能に保持された検出ロッドである移動部材であって、前記検出ロッドの一方の端部が前記ベントに挿入され、他方の端部に永久磁石が設けられた前記移動部材と、前記移動部材の
前記他方の端部に設けられた永久磁石の位置変位を非接触で検出する
磁気センサである検出部とを有し、前記移動部材の周囲の雰囲気が、加圧流体によって大気圧以上に加圧されている加圧雰囲気であり、前記溶融樹脂のベントアップを検出することが、ベントアップする前記溶融樹脂が前記移動部材
の前記一方の端部に接触することにより、前記移動部材が移動することと、前記検出部が、前記移動部材の
前記他方の端部に設けられた永久磁石の位置変位を非接触で検出することとを含む
発泡成形体の製造方法が提供される。
【0013】
前記加圧流体が、加圧窒素又は加圧二酸化炭素であってもよく、前記溶融樹脂を発泡させ、発泡成形体を製造してもよい。
【0014】
本発明の第4の態様に従えば、
発泡成形体を製造する成形装置であって、ガス成分を外部に排出するベントが形成され、スクリュを回転自在に内設し、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂と
し、前記溶融樹脂と物理発泡剤として加圧流体とを混合する可塑化シリンダと、
前記可塑化シリンダに、前記加圧流体を供給する加圧流体供給装置と、前記ベントに接続される請求項
1又は2に記載の前記ベントアップ検出機構を備える成形装置が提供される。
また、本態様の成形体を製造する成形装置は、前記ベントに接続される第2の態様のベントアップ防止装置を備える成形装置であってもよい。
【0015】
本態様の前記可塑化シリンダが、前記溶融樹脂と前記加圧流体とを混合する高圧混練ゾーンと、前記加圧流体が混合された前記溶融樹脂からガス化した加圧流体を排気する前記ベントが形成された減圧ゾーンとを有し、更に、前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとの間に設けられ、前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとの連通を遮断するシール機構を備えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の
ベントアップ検出機構は、ガス成分を外部に排出するベントが形成された可塑化シリンダに取り付けられ、ベントアップする溶融樹脂を検知
する。また、本発明のベントアップ防止装置は、ベントアップ検出機構によりベントアップを検出し、溶融樹脂を可塑化シリンダ内に機械的に押し戻すことにより、ベントアップする溶融樹脂によりベントが閉塞されることを防止又は抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
本実施形態のベントアップ防止装置は、熱可塑性樹脂の成形装置の可塑化シリンダに接続して用いられる。可塑化シリンダとしては、射出成形機、押出成形機、発泡射出成形機等に用いられる汎用の可塑化シリンダを用いることができるが、ガス成分を外部に排出するベントが形成されており、本実施形態のベントアップ防止装置はそのベントに接続される。本実施形態のベントアップ防止装置は、可塑化シリンダと別個体であってもよいし、可塑化シリンダと一体に形成されてもよい。
【0019】
本実施形態のベントアップ防止装置は、ベントより溶融樹脂が漏れ出ること、即ち溶融樹脂がベントアップすることを検出するベントアップ検出機構と、前記ベントより漏れ出る溶融樹脂(ベントアップする溶融樹脂)を前記可塑化シリンダ内へ押し戻す押圧機構を有する。「ベントアップ」とは、成形装置の可塑化シリンダにおいて、熱可塑性樹脂の含有するガス成分を排出する排出口(ベント)からガス成分と共に溶融した熱可塑性樹脂(溶融樹脂)が漏れ出る現象である。本願明細書において、ベントアップは、溶融樹脂が完全に可塑化シリンダの外部に漏れ出ることのみならず、例えば、可塑化シリンダの内部から漏れ出て、溶融樹脂がベント内に侵入する現象も含む。
図2(b)には、可塑化シリンダ210の内部から漏れ出て、ベント203内に侵入するベントアップする溶融樹脂70aが示される。
【0020】
ベントアップは、溶融樹脂の粘度が低い場合、得に問題となる。例えば、一般に非強化樹脂と称される無機フィラーを含有しない樹脂は、強化樹脂(無機フィラーを含有する樹脂)と比較して、可塑化溶融時の粘度が低くベントアップを生じ易い。また、溶融樹脂に加圧二酸化炭素等の加圧流体を含有させる発泡成形等の場合も、加圧流体が可塑剤として働くため溶融樹脂の粘度が低下する。したがって、本実施形態のベントアップ防止装置は、非強化樹脂や加圧流体を用いる成形方法において特に有効に機能する。
【0021】
本実施形態のベントアップ検出機構は、任意の機構を用いることができ、例えば、光学的な変化を検出する光学的検出機構、高温の溶融樹脂の温度を検出する温度検出機構を用いえるが、ベントアップする溶融樹脂を機械的に検出する機械的検出機構が検出感度が高いため好ましい。機械的検出機構は、例えば、ベントに対向して配置され、ベントから漏れ出る樹脂(ベントアップする樹脂)が接触することによりその位置が変位する移動部材と、移動部材の位置変位を検出する検出部を備える。機械的検知機構に用いる移動部材は、それが接触する溶融樹脂の温度や粘度、周囲の圧力の影響を受けず、溶融樹脂が接触することによりスムーズに移動して位置変位を生じることが好ましい。また、移動部材が位置変位することにより、ベントアップ検出機構内の圧力が部分的に変化すると、ベントアップの検出感度が低下する虞があるため、移動部材の位置変位によってベントアップ検出機構の周囲の圧力は変化しないことが好ましい。したがって、移動部材は周囲の部品と干渉しないように配置され、無負荷で容易に移動可能な状態であることが好ましい。また、移動部材の位置変位を検出する検出部(検出センサ)は高圧下で安定に機能することが困難なため、大気圧下で移動部材の位置変位を非接触で検出する機構であることが好ましい。更に、移動部材は、その一部がベントに挿入されて、ベント内に配置されてもよい。移動部材がベント内に位置されることで、ベント内に侵入した溶融樹脂を速やかに検出でき、ベントアップ初期の段階で溶融樹脂を可塑化シリンダ内に押し戻すことができる。これにより、ベントアップした溶融樹脂が固化してベントを塞ぐことを未然に防止できる。
【0022】
本実施形態の押圧機構は、ベントより漏れ出る溶融樹脂を可塑化シリンダ内へ機械的に押し戻す機構であれば任意の機構を用いることができ、例えば、ピストンのように上下方向に移動する機構を用いてもよい。また、押圧機構を駆動させる機構は任意であり、エアシリンダ、カム、圧電アクチュエータ等の汎用の駆動機構を用いることができる。本実施形態は、ベントアップする溶融樹脂を機械的に可塑化シリンダ内へ押し戻すため、確実にベントアップを抑制又は防止することができる。
【0023】
ベントアップ検出機構は、ベントアップする溶融樹脂を検出するとベントアップ検出信号(検出結果)を発信し、押圧機構はベントアップ検出信号に基づいて溶融樹脂を可塑化シリンダ内へ押し戻す動作を開始する。ベントアップ検出信号(ベントアップ検出結果)に基づいて押圧機構を駆動させるため、本実施形態では効率よくベントアップを抑制又は防止できる。ベントアップ検出信号に基づいて、どのように押圧機構を駆動するかは任意であり、例えば、ベントアップ検出信号が発信された後、所定時間経過後に押圧機構が溶融樹脂押し戻し動作を開始するように、タイマー制御を行ってもよい。
【0024】
以下に、
図1及び
図2(a)〜(f)に示す本実施形態のベントアップ防止装置300について説明する。以下の説明において、
図2(a)〜(f)に示す矢印Yで示す方向を「上方向」、矢印Y′で示す方向を「下方向」と記載する。
【0025】
ベントアップ防止装置300は、成形装置1000の可塑化シリンダ210上部に設けられたベント203に、挿入部30aを挿入することにより接続される本体30を有し、本体30内部には、ベント203より漏れ出る溶融樹脂(ベントアップする樹脂)70a(
図2(b)参照)を検出するベントアップ検出機構310と、ベントより漏れ出る溶融樹脂70aを可塑化シリンダ210内へ押し戻す押圧機構320を備える。
【0026】
ベントアップ検出機構310は機械的検出機構であり、ベントから漏れ出る溶融樹脂70aが接触することによりその位置が上下方向に変位する(移動する)検出ロッド31(移動部材)と、本体30に固定され、検出ロッド31の位置変位を検出する磁気センサ33(検出部)を有する。検出ロッド31は、一方の先端31a(下方向の端部)がベント203に挿入されて、ベント203内の中心に配置され、他方の端部(上方向の端部)に永久磁石32を有する。検出ロッド31は、ベントから漏れ出る溶融樹脂70aが先端31aに接触することにより、その位置が上下方向に変位し、それに伴い永久磁石32の位置も上下方向に変位する。磁気センサ33は、永久磁石32の僅かな位置変位を高精度で検出できる。検出ロッド31は、周囲にシール材等を必要とせず、周囲の部品に干渉されずに無負荷で後述する円筒形の押出しピストン35内に保持されているため、ベントアップする溶融樹脂の樹脂圧力が低くても容易に上下方向に移動できる。更に、ベントアップ防止装置300は、検出ロッド31の上部に、検出ロッド31を下方向へ押し下げるピストン34を備える。
【0027】
押圧機構320は、ベントより漏れ出る溶融樹脂70aを可塑化シリンダ210内へ押し戻す押し戻しピストン35を有する。押し戻しピストン35は、溶融樹脂を可塑化シリンダ内に押し戻すときに、ベント203に挿入される円筒部35bを有し、上述した検出ロッド31は、この円筒部35b内に挿入され、上下方向に移動可能に保持される。円筒部35bの外側面には、先端35aから延びる溝(スリット)35cが形成されており、ベント203から排出されるガス成分は溝35cを通過して可塑化シリンダ210の外部に排出される。尚、本実施形態のベントアップ防止装置300において、押し戻しピストン35及び上述のピストン34は、圧縮空気によって上下方向に駆動される、所謂、エアシリンダのピストンである。したがって、ベントアップ防止装置300には、これらのピストン駆動のための圧縮空気の供給路及び排出路、多数のエアシール、電磁弁が設けられているが、図(a)〜(f)ではそれらは省略している。
【0028】
更に、本体30には外部に通じる排出配管36が接続され、排出配管36には圧力計37及び背圧弁38が設けられる。本体30の内部は密閉系であり、ベント203から排出されるガス成分は、まず、押圧機構320の円筒部35bに形成された溝35cを通って本体30内へ移動し、次に、本体30に接続される排出配管36を介して、本体30の外部に排出される。したがって、ベントアップ防止装置300は、本体30内部の圧力を背圧弁38の設定圧力に制御することができ、更に、可塑化シリンダ210内のベント203近傍の圧力も背圧弁38の設定圧力に制御できる。これにより、ベントアップ防止装置300は、溶融樹脂のベントアップを防止すると共に、溶融樹脂から排出されるガス成分量を調整できる。
【0029】
特に、溶融樹脂に物理発泡剤として加圧流体を含有させる発泡成形にベントアップ防止装置300を用いる場合、成形前に余剰な物理発泡剤がベント203から排出されるが、ベントアップ防止装置300は、本体30内部の圧力を調整することにより、溶融樹脂内の物理発泡剤の圧力及び濃度を安定化させることができる。発泡成形にベントアップ防止装置300を用いる場合、ベントアップ防止装置300の内の雰囲気、即ち、ベントアップ検出機構及び押圧機構の周囲の雰囲気は、物理発泡剤を接触混練するときに到達する最高圧力以下で、且つ大気圧以上に制御することが好ましく、1〜10MPaの圧力に制御することが特に好ましい。大気圧以上の加圧状態とすることで、溶融樹脂の急減圧による急激な体積膨張も抑制でき、ベントアップの抑制にも貢献できる。
【0030】
次に、
図2(a)〜(f)に示す、本実施形態のベントアップ防止装置300を用いたベントアップ防止方法について説明する。
【0031】
まず、
図2(a)に示すように、可塑化シリンダ内の溶融樹脂70がベントアップしていない状態では、検出ロッド31の先端31aの上下方向における位置は、定位置Aである。本実施形態では、ベントアップが生じていない
図2(a)の状態においても、押し戻しピストン35の先端35aはベント203内に位置しているが、溶融樹脂から分離したガス成分は、円筒部35bに形成された溝35cを介して、常にベント203の外へ排出可能である。
【0032】
図2(b)に示すように、溶融樹脂70がベント203内に侵入すると、ベントアップする溶融樹脂70aが検出ロッド31の先端31aに接触し、先端31aを定位置Aから上方向へ移動させる。これに伴い、検出ロッド31の上部に設けられた永久磁石32も上方向に移動し、磁気センサ33は永久磁石32の位置変位を非接触で検出する。
【0033】
検出ロッド31の先端31aが定位置Aから所定距離、上方向へ移動したことを磁気センサ33が検出したとき、ベントアップ検出機構310は溶融樹脂のベントアップが生じたと判断し、ベントアップ検出信号を発信する。ベントアップ検出信号が発信されると、押圧機構320は押し戻しピストン35の駆動を開始する。本実施形態では、押し戻しピストン35の駆動を行うための圧縮空気の流入流出を制御する電磁弁(不図示)の開閉が行われる。これにより、
図2(c)に示すように、押し戻しピストン35は下方向に移動を開始する。押し戻しピストン35は、その先端35aが定位置Aに位置するまで下方向へ移動し、ベントアップする溶融樹脂70aを可塑化シリンダ210内へ押し戻す。
【0034】
その後、
図2(d)に示すように、検出ロッド31の上部に設けられたピストン34を下方向へ駆動し、検出ロッド31の先端31aを定位置Aまで押し下げる。ピストン34により、所定時間、検出ロッド31に下向きの圧力を加えた後、
図2(e)に示すように、ピストン34を上方向へ退避させる。これにより、検出ロッド31は、その先端31aが定位置Aに位置し且つ無負荷の状態となる。その後、
図2(f)に示すように押し戻しピストン35は上方向に移動し、
図2(a)に示す可塑化シリンダ内の溶融樹脂70がベントアップしていない状態(初期状態)に戻る。
【0035】
但し、
図2(e)に示す状態、即ち、検出ロッド31の先端31a及び押し戻しピストン35の先端35aが定位置Aに位置した状態において、再び溶融樹脂70がベント203内に侵入して、ベントアップ検出機構310がベントアップ検出信号を発信した場合には、押し戻しピストン35の駆動を開始する信号(押し戻しピストン35を下方向へ移動させる信号)が再入力されるため、押し戻しピストン34は上方向へ移動することなく、定位置Aに留まり、溶融樹脂のベントアップを抑制又は防止し続ける。
【0036】
以上、
図1及び
図2(a)〜(f)に示す本実施形態のベントアップ防止装置300について説明したが、本実施形態は本発明の好適な形態の例であり、本発明は、これに限定されない。例えば、本実施形態では、ベント203から排出されるガス成分が通過する溝35cを押し戻しピストン35の円筒部35b外側面に形成したが、ガス成分が通過する溝を円筒部35bが挿入される本体30の挿入部30aの内側面に形成してもよいし、また、形成しなくてもよい。ガス成分が通過する溝を形成しない場合、ガス成分排出スピードは低下するが、円筒部35bと挿入部30aとの間の隙間(クリアランス)からガス成分を排出することが可能である。また、本実施形態では、円筒形の押し戻しピストン35(押圧機構320)の内部に、検出ロッド31(ベントアップ検出機構310の移動部材)が挿入された構造であるが、反対に、円筒形の移動部材の内部にロッド状の押圧機構が挿入された構造であってもよい。また、本実施形態では、
図2(c)に示すように、押し戻しピストン35を下方向へ移動させてベントアップする溶融樹脂を可塑化シリンダ内へ押し戻した後、
図2(d)に示すように検出ロッド31を下方向へ移動させるが、押し戻しピストン35と検出ロッド31とを同時に下方向へ移動させてもよい。更に、本実施形態では、ベントアップ検出機構310及び押圧機構320の周囲の雰囲気を加圧状態に制御するが、背圧弁38を開放して周囲の雰囲気を大気圧としてもよい。また、ベントアップ防止装置300の駆動は、図示しない制御装置によって制御されてもよい。この場合、ベントアップ検出機構310がベントアップ検出信号を発信すると、制御装置がベントアップ検出信号に基づき押圧機構320等を駆動する。ベントアップ防止装置300自体が制御装置を備えていてもよいし、また、ベントアップ防止装置300が取り付けられる成形装置を制御する制御装置がベントアップ防止装置300を制御してもよい。
【0037】
[第2の実施形態]
本実施形態では、上述したベントアップ防止装置300を用いた成形体の製造方法について、
図3を参照しながら説明する。まず、
図1に示す、ガス成分を外部に排出するベント203にベントアップ防止装置300が接続した可塑化シリンダ210内で、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする(ステップS1)。可塑化シリンダとしては、スクリュを回転自在に内設し、バンドヒータ等の加熱手段を備える汎用の可塑化シリンダを用いることができる。
【0038】
本実施形態に用いる熱可塑性樹脂は任意であり、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ナイロン等のポリアミド、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテーテルエーテルケトン、ABS系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。また、ガラス繊維、タルク、カーボン繊維等、各種無機フィラー等を混練させることもできる。一般に非強化樹脂と称される無機フィラーを含有しない樹脂は、強化樹脂(無機フィラーを含有する樹脂)と比較して、可塑化溶融時の粘度が低くベントアップを生じ易い。したがって、ベントアップを抑制する本実施形態の成形方法は、非強化樹脂を用いた成形方法として有効である。
【0039】
また、本実施形態では、予備乾燥を行っていない熱可塑性樹脂を用いることもできる。吸水した未乾燥の樹脂をそのまま成形すると、成形体の外観が著しく悪くなるため、従来の成形体の製造方法では、原料となる熱可塑性樹脂の水分を取り除くために予備乾燥が行われる。例えば、ポリカーボネートの場合、約120℃で8時間程度の予備乾燥が必要である。本実施形態では、溶融樹脂中の水分もガス成分としてベントから排出除去できるため、原料となる熱可塑性樹脂の予備乾燥が不要となり、低コストで且つ効率的に樹脂成形体を製造できる。
【0040】
本実施形態では、可塑化シリンダに加圧窒素又は加圧二酸化炭素等の加圧流体を導入して、溶融樹脂と加圧二酸化炭素を混合する。本実施形態では、加圧流体を物理発泡剤として用い発泡成形を行う。加圧流体の可塑化シリンダへの導入圧力及び温度は、加圧流体の種類によっても適切な条件は異なり、任意であるが、密度が高く安定であることから液体状態もしくは超臨界状態が好ましい。加圧窒素又は加圧二酸化炭素を加圧流体として用いる場合には、圧力は3〜25MPa、温度は10℃〜100℃であることが好ましい。圧力が3MPa以上であれば安定して可塑化シリンダ210へ導入でき、25MPa以下であれば装置への負荷が小さくなる。また、温度が10℃〜100℃の範囲であれば、系内での加圧流体の制御が容易となる。尚、本実施形態において加圧流体として用いる加圧窒素及び加圧二酸化炭素は、可塑化シリンダ210内で瞬時に高温になり圧力も変動する。よって、上述の加圧流体の状態、温度及び圧力は、加圧シリンダ210に導入する前の安定な状態の加圧流体の状態、圧力及び温度の値である。
【0041】
加圧流体を調製する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を使用できる。例えば、シリンジポンプなどの加圧手段により液体状態の加圧流体を加圧して調製できる。また、本実施形態では、溶融樹脂の成形前に、溶融樹脂中の加圧流体をベントから排出し、溶融樹脂中の加圧流体濃度を調整できる。したがって、可塑化シリンダへの導入の段階で加圧流体の導入量を厳密に制御しなくてもよい。
【0042】
加圧流体を可塑化シリンダへ供給する方法は任意の方法を使用できる。例えば、加圧流体を可塑化シリンダに間欠的に導入してもよいし、連続的に導入してもよい。また、加圧流体の導入は、安定な送液が行えるシリンジポンプを利用し、導入量を制御してもよい。
【0043】
次に、前記溶融樹脂からガス成分を分離し、ベントから可塑化シリンダの外部に排出する(ステップS2)。ガス成分とは、熱可塑性樹脂が含有する未反応モノマー、溶剤、水分等の低分子の揮発性成分である。これらは、熱可塑性樹脂が加熱され可塑化溶融状態となることで、ガス成分(気体)となり溶融樹脂から分離し、ベントから可塑化シリンダの外部へ排出される。ガス成分を溶融樹脂の成形前に取り除くことにより、製造される成形体の耐性等を向上させることができる。また、溶融樹脂中の水分もベントから排出除去できるため、原料となる熱可塑性樹脂の予備乾燥が不要となり、低コスト且つ効率的に成形体を製造できる。
【0044】
本実施形態では、溶融樹脂に加圧流体を混合するため、余剰な加圧流体もガス成分として溶融樹脂から分離され、ベント203から可塑化シリンダ210外に排出される。また、ベントアップ防止装置300の背圧弁38により、ベントアップ検出機構及び押圧機構の周囲の雰囲気を加圧状態に制御することが好ましい。これにより、溶融樹脂内の加圧二酸化炭素の圧力と濃度を安定化させることができる。ベントアップ検出機構及び押圧機構の周囲の雰囲気は、加圧流体(物理発泡剤)を接触混練するときに到達する最高圧力以下で、且つ大気圧以上の加圧状態に制御することが好ましく、1〜10MPaの圧力に制御することが特に好ましい。
【0045】
溶融樹脂に加圧流体が混錬されると樹脂粘度が低下した状態になり、更に、排気のため減圧されることで樹脂が体積膨張してベントアップが生じ易い。上述したように、溶融樹脂のベントアップが生じると、ベントアップ防止装置300のベントアップ検出機構310がそれを検出し(ステップS3)、ベントアップ検出信号を発信する。そして、ベントアップ検出信号に基づいて、押圧機構320が駆動し、ベントより漏れ出る溶融樹脂70aを可塑化シリンダ210内へ押し戻す(ステップS4)。これにより、ベントアップした溶融樹脂がベントを閉塞することを防止又は抑制でき、溶融樹脂の連続成形を円滑に行うことができる。
【0046】
ガス成分が溶融樹脂から分離された後、溶融樹脂を可塑化シリンダ210の先端部から射出又は押出し、所望の形状に成形する(ステップS5)。本実施形態では、所定の内部形状を有する金型内に溶融樹脂を射出充填し、物理発泡剤を含む溶融樹脂を急減圧して発泡セルが形成された成形体(発泡成形体)を製造する。
【0047】
以上、
図3に示す本実施形態の成形体の製造方法について説明したが、本実施形態は本発明の好適な形態の例であり、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は溶融樹脂に加圧流体を混合して発泡成形体を行ったが、非発泡成形体を製造してもよいし、溶融樹脂には加圧流体を混合しなくてもよい。また、本実施例では、ベントアップ防止装置300の背圧弁38により、ベントアップ検出機構及び押圧機構の周囲の雰囲気を加圧状態に制御するが、背圧弁38を開放して雰囲気を大気圧としてもよい。
【0048】
また、機能性材料を加圧流体に溶解し、加圧流体と共に可塑化シリンダへ導入し、溶融樹脂と混合してもよい。これにより、機能性材料を含有する成形体を製造できる。機能性材料としては、加圧流体に溶解又は分散でき、得られる成形体に所定の機能を付与できるものであれば特に制限されない。このような機能性材料としては、例えば、有機金属錯体、金属アルコキシド等の無機粒子或いはその前駆体、炭素繊維、ガラス繊維等の無機フィラー或いはその修飾化合物、各種樹脂のアロイ化を促進させるための相溶化剤、界面活性剤、染料、ナノカーボン、帯電防止剤、難燃材料などが挙げられる。加圧流体中の機能性材料の濃度は、使用する機能性材料の種類、目的とする成形体の機能を考慮して適宜選択することができ、特に制限されないが、溶融樹脂への浸透性や混合高圧流体中の機能性材料の凝集を考慮すれば、好ましくは飽和溶解度以下である。特に高温になる成形装置の可塑化シリンダ内では急激に加圧流体の密度が低下するので、機能性材料の濃度は、飽和溶解度の1〜50%程度が好ましい。
【0049】
以下、本発明を実施例に基づき更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
[実施例1]
本実施例では、熱可塑性樹脂として、無機フィラーを含有しない非強化ナイロン(東レ製、アミランCM1017)を用い、物理発泡剤として加圧窒素を用いて発泡成形体を製造した。尚、本実施例で用いた非強化ナイロンは、約100℃で約4時間の予備乾燥を行った。
【0051】
[成形装置]
図1に示す本実施例に用いた成形装置1000について説明する。成形装置1000は、可塑化シリンダ210及びベントアップ防止装置300を有する混練装置200と、物理発泡剤を可塑化シリンダ210に供給する物理発泡剤供給装置100と、金型252が設けられた型締めユニット250と、物理発泡剤供給装置100、混練装置200、及び型締めユニット250を動作制御する制御装置(不図示)を備える。また、混練装置200には、ノズル先端29にエアシリンダ27の駆動により開閉するシャットオフバルブ26が設けられ、可塑化シリンダ210の内部を高圧に保持できる。ノズル先端29には、金型が密着し、金型が形成するキャビティ内に、ノズル先端29から溶融樹脂が射出充填される。
【0052】
図1に示す混練装置200は、可塑化シリンダ210と、可塑化シリンダ210内に回転及び進退自在に配設されたスクリュ20と、可塑化シリンダ210内に配置される上流側シール機構S1及び下流側シール機構S2と、可塑化シリンダ210に接続する上述したベントアップ防止装置300を備える。本実施形態では、可塑化シリンダ210内において、可塑化溶融された溶融樹脂は、
図1における右手から左手に向かって流動する。したがって、本実施形態の可塑化シリンダ210の内部においては、
図1における右手を「上流」又は「後方」、左手を「下流」又は「前方」と定義する。
【0053】
更に、図示しないが、可塑化シリンダ210の上流側の後端部には、スクリュ20を回転させる回転モータなどの回転駆動手段と、スクリュ20を前後進させるためのボールネジ及びそれを駆動させるモータなどの移動手段とが接続されている。なお、本実施形態の混練装置200は、従来公知の混練装置の構成と同様に、可塑化シリンダ210の後方側から見た場合に、スクリュ20を反時計回りに回転させると溶融樹脂を前方(ノズル部側)に送る正回転をし、時計回りに回転させると逆回転するように構成されている。
【0054】
可塑化シリンダ210の上部側面には、上流側から順に、熱可塑性樹脂を可塑化シリンダ210に供給するための樹脂供給口201、物理発泡剤を可塑化シリンダ210内に導入するための導入口202、及び可塑化シリンダ210内からガス化した物理発泡剤を排気するためのベント203が形成されている。これらの樹脂供給口201、及び導入口202にはそれぞれ、樹脂供給用ホッパ211、及び物理発泡剤の導入バルブ212が配設されており、ベント203には、ベントアップ防止装置300が接続されている。また導入バルブ212は、混練装置200の外に設けられる、物理発泡剤供給装置100と接続される。
【0055】
可塑化シリンダ210の外壁面には、バンドヒータ(図示せず)が配設されており、これにより可塑化シリンダ210が加熱されて、熱可塑性樹脂が可塑化される。さらに、可塑化シリンダ210の下部側面の導入口202と対向する位置及びベント203に対向する位置にはそれぞれ、圧力及び温度をモニターする図示しないセンサが設けられている。
【0056】
このような構造の混練装置200では、樹脂供給口201から可塑化シリンダ210内に熱可塑性樹脂が供給され、熱可塑性樹脂がバンドヒータによって可塑化されて溶融樹脂となり、スクリュ20が正回転することにより下流に送られる。そして、導入口202近傍まで送られた溶融樹脂は、導入された物理発泡剤と高圧下、接触混練される。次いで、物理発泡剤と接触混練された溶融樹脂の樹脂内圧を、物理発泡剤を接触混練するときに到達する最高圧力以下に、溶融樹脂の雰囲気の圧力を調整して低下させることにより、ガス化した一部の物理発泡剤が溶融樹脂から分離し、ベント203からこのガス化した物理発泡剤が排気される。そして、さらに前方に送られた溶融樹脂はスクリュ20の先端部に押し出され、溶融樹脂の圧力がスクリュ20に対する反力となり、該反力でスクリュ20が後退することにより計量が行われる。これにより、可塑化シリンダ210内では、上流側から順に、熱可塑性樹脂を可塑化して溶融樹脂とする可塑化ゾーン21、溶融樹脂と導入口202から導入される物理発泡剤とを高圧下、接触混練する高圧混練ゾーン22、及び物理発泡剤と接触混練した溶融樹脂の樹脂内圧を低下させることにより、溶融樹脂から一部分離された物理発泡剤をベント203から排気する減圧ゾーン23が形成される。なお、溶融樹脂と物理発泡剤との接触混練を効率的に行うため、可塑化シリンダ210に導入口202及びベント203をそれぞれ複数設け、可塑化シリンダ210内に高圧混練ゾーン22及び減圧ゾーン23をそれぞれ複数形成してもよい。この場合、複数のベント203に、複数のベントアップ防止装置300をそれぞれ接続してもよい。
【0057】
図1に示すように、上記可塑化ゾーン21、高圧混練ゾーン22、及び減圧ゾーン23の間にはそれぞれ、これらのゾーン21、22、23の連通状態を一時的に遮断する上流側シール機構S1及び下流側シール機構S2が配設されている。これにより、例えば、物理発泡剤を高圧混練ゾーン22に導入する際には、機械的に高圧混練ゾーン22の上流側及び下流側がシールされ、確実に高圧混練ゾーン22と隣接するゾーン21、23とを遮断できる。この結果、高圧混練ゾーン22の圧力は高圧に維持されるので、物理発泡剤を溶融樹脂に効果的に浸透可能となる。上流側シール機構S1及び下流側シール機構S2は、ゾーン21、22、23の連通を遮断するものであれば、種々のものを利用できるが、スクリュ20の回転状態に応じてこれらのゾーンの連通を遮断するものが好ましく、本実施形態では、上述の特許文献2(国際公開第2012/120637号)に開示される上流側シール機構S1及び下流側シール機構S2を用いた。上流側シール機構S1及び下流側シール機構S2は、スクリュ20の逆回転により、ゾーン21、22、23の連通を遮断することができ、スクリュ20の正回転、回転の停止、又は逆回転の回転数の低下のいずれかにより、ゾーン21、22、23を連通することができる。
【0058】
物理発泡剤供給装置100は、並列に接続された、3つの圧力14MPaの窒素ボンベ10を含み、減圧弁11及び圧力計12、更に圧力計13、背圧弁14、圧力計15を介して、可塑化シリンダ210の物理発泡剤の導入バルブ212に接続される。
【0059】
[成形体の製造]
以上説明した
図1に示す成形装置1000を用いて発泡成形体を製造した。まず、物理発泡剤供給装置の窒素ボンベ10の排出バルブを開放し、可塑化シリンダ210内に物理発泡剤を導入する導入バルブ212までの系内を加圧した。このとき、まず、減圧弁11にて圧力計12の表示が9MPaになるように窒素の圧力を調整し、更に、圧力計13の表示が8.5MPaになるように背圧弁14により窒素圧力を調整した。
【0060】
一方、混練装置200において、樹脂供給用ホッパ211から熱可塑性樹脂を供給し、可塑化ゾーン21の外壁面に設けられたバンドヒータ(不図示)により可塑化ゾーン21を加熱し、スクリュ20を正回転させた。これにより、該熱可塑性樹脂を加熱、混練し、溶融樹脂とした。本実施例では、溶融樹脂の温度が200〜220℃となるように可塑化シリンダ210の可塑化ゾーン21を加熱した。
【0061】
スクリュ20を回転数100rpmで正回転することにより、溶融樹脂を可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22に流動させた。次に、溶融樹脂可塑化計量の途中において、スクリュ20の回転を一旦停止した後、スクリュ20を1秒間、逆回転させることで(回転数:50rpm)、上流側シール機構S1及び下流側シール機構S2によって、高圧混練ゾーン22と、減圧ゾーン23及び可塑化ゾーン21との連通を遮断した。更に、回転数10rpmの低速で5秒間逆回転を続け、その間に導入バルブ212を2秒開放し、可塑化シリンダ210内へ加圧窒素を導入した。加圧窒素導入時の高圧混練ゾーン22における図示しない圧力センサによる可塑化シリンダ21内部のモニター圧力は最高6MPaとなった。本実施例では、溶融樹脂を成形する前に、溶融樹脂から過剰な窒素を分離、排出するため、可塑化シリンダ210への導入量は厳密に制御する必要がない。そのため、可塑化シリンダ210への加圧窒素導入量の精密な制御は行なわず、過剰な量を可塑化シリンダ210へ導入した。
【0062】
高圧混練ゾーン22に導入された物理発泡剤を、高圧混練ゾーン22で溶融樹脂中に高圧状態で分散させた後、スクリュ20を正回転に戻し、溶融樹脂を減圧ゾーン23へ流動させた。
【0063】
減圧ゾーン23のベント203に取り付けられたベントアップ防止装置300において、背圧弁38を4MPaに設定した。これにより、ベントアップ検出機構310及び押圧機構320の周囲の雰囲気を4MPaの加圧状態とした。可塑化シリンダ210内の減圧ゾーン23における図示しない圧力センサによるモニター圧力も常時4MPaであった。
【0064】
減圧ゾーン23へ流動した溶融樹脂及び物理発泡剤は、減圧ゾーンの設定圧力、4MPaまで圧力が低下した。これにより、余剰な物理発泡剤(窒素)はガス化して溶融樹脂から分離した後、可塑化シリンダ210のベント203を経てベントアップ防止装置300の排出配管36より成形装置1000の外部へ排出された。
【0065】
減圧ゾーン23のベント203において、ガス成分の排出と共に溶融樹脂のベントアップが生じると、上述した方法により、ベントアップ防止装置300のベントアップ検出機構310がそれを検出し、ベントアップ検出信号を発信した。そして、ベントアップ検出信号に基づいて、押圧機構320が駆動し、ベントより漏れ出る溶融樹脂70aを可塑化シリンダ210内へ押し戻した。
【0066】
更に、スクリュ20を正回転にすることにより、余剰な物理発泡剤(ガス成分)が分離された溶融樹脂を可塑化シリンダ210の先端部に送り、溶融樹脂の可塑化計量を完了した。その後、シャットオフバルブ26を開放して、温度100℃に調整された金型252内に溶融樹脂を射出速度100mm/sで射出充填し、発泡成形体を得た。ソリッド(非発泡成形体)成形時の計量ストロークが80mmであるのに対し、本実施例では70mmの計量ストロークで射出充填し、保圧はかけなかった。本実施例で得られた発泡成形体には、セル径30μm〜50μmの微細なセルが形成されており、同材料から製造される非発泡成形体と比較して、比重が15%低減した。
【0067】
本実施例は、非強化樹脂及び加圧流体を用いたベントアップが生じ易い条件であるにもかかわらず、ベントアップ防止装置を用いることにより、ベントアップした溶融樹脂によるベントの閉塞を生じることなく、発泡成形体を製造することができた。また、本実施例では、物理発泡剤の導入量や圧力を制御していないにも関わらず、超臨界流体を用いた発泡成形法と同等の微細な発泡セルを有する発泡体が得られた。
【0068】
[
参考例]
本
参考例では、実施例1と同様の無機フィラーを含有しない非強化ナイロンを用い、
図1に示す成形装置1000を使用したが、非強化ナイロンの予備乾燥は行わず、また物理発泡剤を用いずに非発泡成形体を製造した。
【0069】
本
参考例では、物理発泡剤の可塑化シリンダへ210への供給は行わず、また、可塑化スクリュ20を逆回転することなく、一定回転数で正回転することにより熱可塑性樹脂の可塑化計量を行い、ソリッド(非発泡成形体)成形時の製造条件である80mmの計量ストロークで金型に射出充填し、非発泡成形体を製造した。また、ベントアップ防止装置300においては、背圧弁38を開放し、ベントアップ検出機構310及び押圧機構320の周囲の雰囲気を大気圧とした。これ以外は、実施例1と同様の方法により、ベントアップ防止装置300を用いて溶融樹脂のベントアップを抑制又は防止した。
【0070】
本
参考例では、ベントアップした溶融樹脂によりベントが閉塞されることなく成形体を製造することができた。また、本
参考例で得られた成形品は、外観特性に優れ、原料樹脂の予備乾燥を行っていないのにもかかわらず、水分残渣の影響は認められなかった。
【0071】
以上、実施形態
、実施例
及び参考例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態
、実施例
及び参考例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。