(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空気調和の対象空間に面する開口部を有して前記空気調和対象空間の床に配設され、供給される調和空気を前記開口部から空気調和対象空間に吹出す吹出口装置を多数備える空気調和システムにおいて、
空気調和対象空間の床上に、人の座る座席が多数設けられると共に、空気調和の単位領域が複数設定され、
当該単位領域は、複数の座席を含む床上の所定範囲とされて、空気調和対象となる全ての座席がいずれかの単位領域内に入るように設定されてなり、
前記吹出口装置が、調和空気の吹出し範囲に一又は複数の座席を含んで前記単位領域ごとに複数配設され、一単位領域内の全ての座席がいずれかの吹出口装置の吹出し範囲に位置するようにされてなり、
略箱状体として空気調和対象空間の床下に複数配設され、前記各単位領域ごとに各吹出口装置にそれぞれ接続され、供給された調和空気を各単位領域ごとに各吹出口装置に分配する床下チャンバと、
複数分岐して前記各床下チャンバと接続され、調和空気を各床下チャンバに供給するダクトと、
各床下チャンバとダクトの間に介在させて単位領域ごとにそれぞれ配設され、ダクトから床下チャンバへ向かう調和空気の流量をあらかじめ設定された値に調整する複数の流量調整部と、
前記ダクトの端部に接続され、調和空気をダクトを通じ各床下チャンバに向けて送給する空気調和装置と、
人の存在の有無を検出可能として前記各単位領域ごとに複数配設され、検出範囲に一又は複数の座席を含み、且つ一単位領域内の全ての座席がいずれかの検出範囲に含まれる配置とされる人感センサと、
前記各単位領域ごとの各人感センサの検出情報を入力され、単位領域におけるいずれかの人感センサで人の存在を検出した場合は、単位領域ごとの前記流量調整部が床下チャンバに向かう調和空気流量を所定の設定流量とし、また、単位領域におけるいずれの人感センサでも人の存在を検出できない場合は、単位領域ごとの流量調整部が床下チャンバに向かう調和空気流量を0又は所定の最小流量とするように、流量調整部の作動制御を行う制御部とを備え、
当該制御部による制御で、人感センサで人の存在を検出した場合に、前記流量調整部の床下チャンバに向かう調和空気流量として与えられる前記設定流量が、前記床下チャンバに接続された各吹出口装置から吹出される調和空気を、いずれも床上所定高さ範囲まで到達させられる所定流量であることを
特徴とする空気調和システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の吹出口装置は前記各特許文献に示される構成となっており、こうした吹出口に対しては、一又は複数設けた空気調和装置で集中的に生じさせた調和空気を、床下空間やダクトを通じて床面の各吹出口に分配、供給する手法が一般的に採用されている。ただし、座席への人の在席状況が場合によって異なるなど、空気調和に係る条件の変化に対して、床に多数設けられる吹出口ごとの細かい吹出制御は、技術的にもコスト的にも難しいことから従来行われておらず、吹出口周囲の座席に人が全く在席していない場合でも、吹出口からの調和空気の吹出しは変わることなく行われていた。このように、本来人が存在する箇所にのみ空気調和を行えば十分であるにもかかわらず、人が存在しない座席部分に対しそのまま調和空気の吹出しがなされていたことから、空気調和における無駄なエネルギー消費は依然大きく、空気調和のコスト削減を十分には実現できていない、という課題を有していた。
【0005】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、大空間における床面近くの居住域を複数の領域に分けて管理し、領域ごとの人の存在の有無を検出して、人が存在する領域の吹出口にのみ調和空気の供給を行い、必要な箇所での空気調和状態を確保しつつ、空気調和系統全体での省エネルギー化を図れると共に、空気調和用の設備を簡略化でき、コストを抑制できる空気調和システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気調和システムは、空気調和の対象空間に面する開口部を有して前記空気調和対象空間の床に配設され、供給される調和空気を前記開口部から空気調和対象空間に吹出す吹出口装置を多数備える空気調和システムにおいて、空気調和対象空間の床上に、人の座る座席が多数設けられると共に、空気調和の単位領域が複数設定され、当該単位領域は、複数の座席を含む床上の所定範囲とされて、空気調和対象となる全ての座席がいずれかの単位領域内に入るように設定されてなり、前記吹出口装置が、調和空気の吹出し範囲に一又は複数の座席を含んで前記単位領域ごとに複数配設され、一単位領域内の全ての座席がいずれかの吹出口装置の吹出し範囲に位置するようにされてなり、略箱状体として空気調和対象空間の床下に複数配設され、前記各単位領域ごとに各吹出口装置にそれぞれ接続され、供給された調和空気を各単位領域ごとに各吹出口装置に分配する床下チャンバと、複数分岐して前記各床下チャンバと接続され、調和空気を各床下チャンバに供給するダクトと、各床下チャンバとダクトの間に介在させて単位領域ごとにそれぞれ配設され、ダクトから床下チャンバへ向かう調和空気の流量をあらかじめ設定された値に調整する複数の流量調整部と、前記ダクトの端部に接続され、調和空気をダクトを通じ各床下チャンバに向けて送給する空気調和装置と、人の存在の有無を検出可能として前記各単位領域ごとに複数配設され、検出範囲に一又は複数の座席を含み、且つ一単位領域内の全ての座席がいずれかの検出範囲に含まれる配置とされる人感センサと、前記各単位領域ごとの各人感センサの検出情報を入力され、単位領域におけるいずれかの人感センサで人の存在を検出した場合は、単位領域ごとの前記流量調整部が床下チャンバに向かう調和空気流量を所定の設定流量とし、また、単位領域におけるいずれの人感センサでも人の存在を検出できない場合は、単位領域ごとの流量調整部が床下チャンバに向かう調和空気流量を0又は所定の最小流量とするように、流量調整部の作動制御を行う制御部とを備え、当該制御部による制御で、人感センサで人の存在を検出した場合に、前記流量調整部の床下チャンバに向かう調和空気流量として与えられる前記設定流量が、前記床下チャンバに接続された各吹出口装置から吹出される調和空気を、いずれも床上所定高さ範囲まで到達させられる所定流量であるものである。
【0007】
このように本発明によれば、空気調和対象空間に設定した各単位領域に対応する床下チャンバに対し、空気調和装置の調和空気をダクトを介して送込むようにすると共に、このダクトと床下チャンバ吹出口との間に流量調整部を配設し、また、単位領域に複数設けた人感センサで単位領域の各座席における人の存在の有無を検出し、人感センサで人の存在を検出した場合には、流量調整部を十分な所定量の調和空気が床下チャンバ側へ通過する状態とする一方、人の存在が検出できない状況では、流量調整部を調和空気の床下チャンバ側への通過を抑制する状態として、床下チャンバから各吹出口を通じての調和空気の吹出しを単位領域における人の存在状況に応じた最適な状態とすることにより、大規模な空気調和対象空間における居住域への空気調和を実行するにあたり、各単位領域ごとに座席における人の存在を検出できない場合には、調和空気の供給を抑えて、空気調和対象空間の必要のない領域に調和空気を吹出さないこととなり、空気調和に係るエネルギー消費の無駄を小さくし、簡略な制御構成ながら効率よくシステムを運用でき、空気調和に係るコストの抑制が図れる。
【0008】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記制御部の制御に基づく各単位領域の流量調整部の流量調整内容を、管理者の認識可能な状態で報知する報知手段を備え、前記制御部が、管理者の所定の操作入力を受けて、流量調整部に対し前記人感センサの検出結果に基づく流量調整状態を変更する制御を実行可能とされるものである。
【0009】
このように本発明によれば、人感センサの検出に対応した制御に基づく流量調整部の流量調整内容を、報知手段による報知で管理者が認識でき、こうした流量調整内容を必要に応じ確認した上で、管理者が制御部に対し操作を行うと、制御部は流量調整部に対し流量調整状態を変更する制御指令を行い、これに応じて流量調整部が作動して流量調整を実行することにより、報知手段からの報知内容と実際の空気調和状態との照合で、管理者は各単位領域ごとに人感センサでの検出や流量調整部の流量調整にかかる作動が適切になされているか否かを判別でき、各部の異常を速やかに見つけて対応できる。加えて、空気調和対象空間に人が入る所定時間前からの空気調和対象空間居住域の予熱や予冷としての暖房や冷房を、座席に人が存在しない状況でも、管理者の操作に基づいて確実に強制実行させることができ、また、空気調和対象空間の各単位領域に人が存在している場合に調和空気吹出しを緊急停止すべき状況が生じた際にも、管理者の操作に基づいて流量調整部を確実に空気吹出し停止状態に移行させられる。
【0010】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記流量調整部、人感センサ、及び制御部が、それぞれ通信手段を備え、前記制御部が、複数の流量調整部の作動制御をまとめて行うものとされ、前記各単位領域の各人感センサからの検出情報が、前記通信手段間の無線通信を経て制御部に入力されると共に、制御部からの制御指令情報が通信手段間の無線通信を経て各流量調整部に伝えられ、制御指令情報に基づいて流量調整部が作動するものである。
【0011】
このように本発明によれば、各単位領域の人感センサから出力される検出情報を無線通信で制御部に送信し、さらに検出情報に基づく制御部の制御指令が流量調整部に無線通信で送信されて、各流量調整部の作動制御が実行されることにより、必要最小限の制御部で各単位領域ごとの調和空気の吹出し状態をまとめて調整できると共に、制御部と各単位領域との距離が大きくなる場合でも、制御部に対し、単位領域に対応する人感センサや流量調整部との通信のための配線等を行わずに済み、こうした通信線等を設置する手間とコストを省略できる。
【0012】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記座席が、椅子状とされて、空気調和対象空間の床上に、左右方向に複数隣接状態で並べた列を、さらに前後に所定間隔で略平行に並べる複数列配置として設けられ、前記吹出口装置は、座席下方の床位置に配設され、調和空気の吹出し対象を、吹出口上側の座席に対し後列側に位置する複数の座席とされ、前記人感センサが、前記調和空気の吹出し対象となる前記後列側の複数の座席を少なくとも見通せる前記吹出口装置上の所定位置に配置されるものである。
【0013】
このように本発明によれば、複数列に並べられた椅子状の座席の下側に吹出口装置が配設され、この吹出口装置と一体に人感センサを配設し、且つ、人感センサの検出範囲が、吹出口装置からの調和空気が向かう座席を含むように人感センサを配置して、座席における人の存在を検出するようにすることにより、人感センサで存在を検出された人の座る座席に対して、前方の吹出口装置から調和空気を確実に到達させて空気調和を行えることとなり、各座席における人の存在検出と空気調和をその座席からは見えにくい位置より、人に意識させることなく正確に実行できる。
【0014】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記各単位領域ごとに、単位領域内の環境に係る所定の情報を検出し取得する所定のセンサを備え、前記制御部が、前記センサの検出情報を入力され、センサ及び人感センサの各検出情報に基づいて、前記流量調整部の調和空気流量を前記設定流量とするか、又は、0もしくは所定の最小流量とするか、を決定し、当該決定に基づいて流量調整部の作動制御を行うものである。
【0015】
このように本発明によれば、人感センサとは別のセンサを各単位領域ごとに設置し、センサから出力される情報を制御部で受取り、センサからの情報に基づく制御部の制御指令が流量調整部に送られて、各流量調整部が作動して流量調整を実行することにより、人の存在の有無に加えて、単位領域の状況に対応して調和空気の流量調整を行って、その時点で最適な空気調和状態を得ることができる。
【0016】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記制御部が、前記人感センサの検出情報の入力を受け、人の存在検出の有無に基づいて前記流量調整部の調和空気流量を維持又は変更する制御を所定の時間間隔で実行すると共に、当該制御の間隔を、空気調和対象空間の使用形態に基づいて既知となっている、空気調和対象空間における人の行動に係る状況の変化、に合わせて変更調整するものである。
【0017】
このように本発明によれば、制御部が人感センサから出力される検出情報を受取り、人感センサからの検出情報に基づいて必要に応じて流量調整部に流量調整を行わせる制御が、所定時間おきに行われて、人の存在状況の変化に対応して所定時間おきに流量調整状態が更新されていく中で、制御部は空気調和対象空間における状況変化に対応させて、人感センサの検出に基づく制御の間隔を変えていくことにより、例えば、人が外から空気調和対象空間に入って座席に着く状況から、人が座席にしばらく在席してじっとしているような状況へ移行する場合には、人感センサからの検出情報に基づいて流量調整を行わせる制御の間隔を長くするなど、人の存在の変化が生じにくい状態に対応して、制御の精度を維持しつつ制御の頻度を減らすようにして、制御における消費電力を抑えられるなど、制御のためのコストを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る空気調和システムを前記
図1ないし
図5に基づいて説明する。本実施形態においては、多目的ホール等の大空間となる空気調和対象空間の床90上に、人の座る座席85が多数設けられると共に、空気調和の単位領域80が複数設定され、これら単位領域80に対し、一括して調和空気を送り出す空気調和装置50により集中的に空気調和が行われる状況で、各単位領域80に対する調和空気の供給制御を行う例を説明する。
【0020】
前記各図において本実施形態に係る空気調和システムは、空気調和対象空間の床90に多数配設されて調和空気を吹出す吹出口装置10と、空気調和対象空間に設定される複数の単位領域80ごとに床下に配設されて、各吹出口装置10にそれぞれ接続される略箱状の床下チャンバ20と、複数分岐して各床下チャンバ20と接続されるダクト30と、各床下チャンバ20とダクト30の間に介在させて単位領域ごとに配設される前記流量調整部としての複数の定風量調整部40と、ダクト30端部に接続され、調和空気をダクトを通じ各床下チャンバ20に向けて送給する空気調和装置50と、人の存在の有無を検出可能として前記各単位領域80ごとに複数配設される人感センサ60と、各単位領域ごとの各人感センサ60の検出情報を入力されて各定風量調整部40の制御を行う前記制御部としての空気量制御部70とを備える構成である。
【0021】
本実施形態の例における空気調和対象空間の床90上には、人の座る座席85が左右に並んで列をなし、且つこの座席85の列が前後に複数並ぶようにして、多数の座席が設けられる。そして、空気調和対象空間の床90は、空間のホール等としての使用目的の関係上、空間の後方に至るほど座席位置を高くしてステージ等のある前方への見通しをよくする階段状に形成され、座席85の上下位置を、横方向に隣接するものとは同じとする一方、前後方向に隣接するものとは一部を除いてずれる状態としている。
【0022】
空気調和の単位領域80は、複数の座席85を含む床90上の所定範囲とされて、空気調和対象となる全ての座席85がいずれかの単位領域内に入るようにそれぞれ設定される。具体的には、単位領域80は並んだ座席85における前後二列分の所定数を含むよう設定されるが、各単位領域に含まれる座席数は全て同一とはなっておらず、座席数は複数通り設定されている。
【0023】
前記吹出口装置10は、調和空気の吹出し範囲に一又は複数の座席85を含んで前記単位領域80ごとに複数配設され、一単位領域内の全ての座席85がいずれかの吹出口装置10の吹出し範囲に位置するようにされる構成である。吹出口装置10の構造自体は公知の床吹出口装置であり、詳細な説明を省略する。
この吹出口装置10は、座席85下方の床位置に配設され、調和空気の吹出し対象を、吹出口上側の座席85に対し後列側に位置する複数の座席とされる。
【0024】
前記床下チャンバ20は、各単位領域80ごとに配設される複数の吹出口装置10に接続される略箱状体として、空気調和対象空間における単位領域80近くの床下に複数配設され、供給された調和空気を各吹出口装置10に分配するものである。この床下チャンバ20に対する各吹出口装置10の接続位置関係に伴い、そのままでは各吹出口装置10に分配される調和空気の量が偏る場合、各吹出口装置10ごとに流量調整用のダンパを設けて調和空気の流量を調整し、調和空気の各吹出口装置10への分配が適切となるようにするのが望ましい。
【0025】
前記ダクト30は、空気調和対象空間の床下に複数分岐した管路として配設され、複数分岐した端部を定風量調整部40を介して各床下チャンバ20と接続され、調和空気を各床下チャンバ20に供給するものである。
【0026】
このダクト30で、空気調和装置50から導入した調和空気を、各単位領域80に対応する床下チャンバ20まで到達させることで、床下チャンバ20を経た調和空気が吹出口装置10から単位領域80に吹出して空気調和を行えることとなる。
【0027】
前記定風量調整部40は、前記流量調整部として、床下の各床下チャンバ20とダクト30との間に介在させて単位領域80ごとにそれぞれ対応させて配設され、ダクト30から床下チャンバ20へ向かう調和空気の流量をあらかじめ設定された値に調整するものである。この定風量調整部40は、通過風速を検出するセンサや、開度を調整するダンパを内蔵して、ダクトの静圧が変化してもあらかじめ設定された風量(流量)を維持するよう調整制御を行う公知の装置であり、詳細な説明を省略する。
【0028】
この定風量調整部40が、各単位領域80の床下チャンバ20とダクト30間にそれぞれ介設され、空気量制御部70からの制御指令を受けて、床下チャンバ20内へ向う調和空気の流量を、あらかじめ設定された最大流量と、0又は最小流量とのいずれかに切替え調整する作動を実行することとなる。なお、定風量調整部40は、人感センサ60で人の存在を検出した場合における空気量制御部70による制御で、調和空気流量として与えられる最大流量としては、接続されている床下チャンバ20に通じた各吹出口装置10から吹出される調和空気を、いずれも居住域(タスク域)である床上所定高さ範囲まで到達させられる流量、をあらかじめ設定されている。
【0029】
例えば、各単位領域80において床下チャンバ20に接続される複数の吹出口装置10が設置される場合、単位領域内の座席85に人が在席しているのに伴って、定風量調整部40が最大流量となっている状態から、在席している人がいない状況に至ると、床下チャンバ20と連通する定風量調整部40が、空気量制御部70による制御で、床下チャンバ20内へ向う調和空気の流量を0又は最小流量とし、床下チャンバ20を経て吹出口装置10から単位領域80へ調和空気が吹出されるのを抑える。
【0030】
このように、人が存在しない単位領域の定風量調整部40は、床下チャンバへ向う調和空気の流量を0又は最小流量とするのに対し、人が存在する他の単位領域の床下チャンバ20に通じる定風量調整部40の方は、床下チャンバ20へ向う調和空気の流量を最大流量としており、この調和空気の流入する床下チャンバ20に連通する吹出口装置10からのみ調和空気が吹出される。空調系統全体としては、人がいなくなった単位領域80の床下チャンバ20へ向う調和空気の流量が最大流量から0又は最小流量に調整された分、空気調和対象空間への調和空気供給量が減らされた状態となる。
【0031】
各定風量調整部40は、所定の作動用通信手段41と接続され、こうした通信手段を介した空気量制御部70との間の無線通信により制御指令情報の信号を受取り、空気量制御部70の制御下で流量調整に係る作動を実行する。なお、作動用通信手段41は、人感センサ60に接続されるデータ送信用通信手段61と空気量制御部70に接続される制御用通信手段71との間の通信において、中継局としての役割を果たすようにしてもよい。
【0032】
前記空気調和装置50は、ダクト30の端部に接続され、調和空気をダクト30を通じ各床下チャンバ20に向けて送給するものである。
この空気調和装置50は、空気調和対象空間を有する建物における各単位領域80から離れた所定箇所に配設され、外部から取り入れた新しい空気又は室内空間から還流させた空気の温度を調整して調和空気とし、この調和空気を接続されているダクト30で送給するものである。空気調和装置そのものは公知の機構であり、詳細な説明を省略する。
【0033】
また、空気調和装置50は、所定の制御指令に基づいて調和空気供給に係る作動を開始又は停止させる他、ダクト30内の所定箇所に配設された圧力センサ51の、ダクト内圧力の検出に伴って出力した信号を受取り、この信号から判別できるダクト内圧力の大きさに基づいて空気供給能力を増減変化させ、ダクト30を通じた各床下チャンバ20への調和空気の送給量を調整する仕組みである。
【0034】
各単位領域80に対応する定風量調整部40が、単位領域80における人の不在に基づいて最小流量状態又は閉止状態(流量0の状態)に切り替わると、ダクト内圧力は大きくなり、逆に定風量調整部40が、単位領域80における人の存在に基づいて最大流量状態に切り替わると、ダクト内圧力は小さくなる。
【0035】
定風量調整部40が最小流量状態又は閉止状態の場合には、空気調和装置50側では調和空気の送給能力は小さくても済み、逆に定風量調整部40が最大流量状態の場合には、空気調和装置50側では調和空気の送給能力を大きくする必要があることから、この定風量調整部40の変化に対応したダクト内圧力の変化を圧力センサ51で検出し、このダクト内圧力に基づいて空気調和装置50で空気供給能力を調整制御することとなる。こうして、空気調和装置50における空気供給に係る制御と、人の存在の有無に基づく定風量調整部40の流量調整に係る制御とが互いに独立し、連係のための調整等の追加の制御を要しない、極めて簡略な制御機構ながら、定風量調整部40の状態に空気調和装置50の作動を適切に対応させられ、無駄なく調和空気を送給でき、調和空気供給に係る過剰なエネルギー消費を防止できる。
【0036】
前記人感センサ60は、人の存在の有無を検出可能として前記各単位領域80ごとに複数配設され、検出範囲に一又は複数の座席85を含み、且つ一単位領域内の全ての座席85が複数のセンサのいずれかの検出範囲に含まれる配置とされるものである。
この人感センサ60は、人の動きに伴う入射赤外線の変化を検出して電気信号を出力する公知の焦電型の人体検出用センサであり、詳細な説明を省略する。
【0037】
人感センサ60は、各単位領域80における一部の吹出口装置10上に、検出部分を上方に向けて、単位領域80におけるセンサ検出範囲が、横方向に並んだ複数の座席85を含む適切な大きさで得られ、且つセンサ検出範囲が互いに近接しながらも重ならないようにして複数配設される。具体的には、各単位領域80における床上で横方向に一列に並んだ座席85の一つおきに、吹出口装置10が座席下に位置するようにして複数配置される中、これらの吹出口装置10のうち、一つおきの吹出口装置10に、後列側の複数の座席85を見通せる配置として人感センサ60が配設されることとなる。人感センサ60の検出範囲は、この人感センサの配設される吹出口装置10の上側の座席が含まれる列の後側の列をなす複数の座席で、吹出口装置の調和空気吹出しの対象とされるものを含んだものとなっている。
【0038】
この人感センサ60は、所定のデータ送信用通信手段61と接続され、こうした通信手段を介した空気量制御部70との間の無線通信により検出情報の信号を送信し、この検出情報の信号が空気量制御部70に入力されることで、空気量制御部70で単位領域ごとに座席85に存在する人の有無に応じた制御が行えるようにしている。なお、人が座席85に座った後、立つなどの動きを生じることなく座ったまましばらく動かない状態となっても、人感センサは人の微動を検出可能であることから、座った状態でも厳密には静止状態となっていない人のわずかな動きに基づき、座席上の人の存在を検出できる仕組みである。
【0039】
データ送信用通信手段61では、人感センサ60が人の検出を継続する中、座席85における人の存在、すなわち人の在席の有無を示す検出情報の信号を、空気量制御部70に向けて所定時間間隔(例えば、2分に一回)で断続的に送信することとなる。
【0040】
前記空気量制御部70は、各単位領域80ごとの各人感センサ60の検出情報を入力され、単位領域におけるいずれかの人感センサで人の存在を検出した場合は、検出された単位領域80ごとの定風量調整部40が床下チャンバ20に向かう調和空気流量を所定の最大流量とし、また、単位領域80におけるいずれの人感センサでも人の存在を検出できない場合は、単位領域80ごとの定風量調整部40が床下チャンバに向かう調和空気流量を0又は所定の最小流量とするように、各定風量調整部40の制御を行う構成である。
【0041】
この空気量制御部70は、全ての単位領域に対応するものが唯一設けられ、全ての定風量調整部40の作動制御をまとめて行うものとされる。詳細には、空気量制御部70は、各単位領域における各人感センサ60の検出情報の信号を制御用通信手段71を介して受取り、各検出情報の信号から、それぞれの人感センサ60の検出範囲における人の存在の有無を識別し、その結果に基づいて、各単位領域の定風量調整部40に向け、制御用通信手段71を介して、調和空気流量を最大流量とするか、流量を0又は最小流量とする制御指令の信号を送信する。
【0042】
そして、空気量制御部70は、制御用通信手段71を通じて、人感センサ60の検出情報の入力を受け、人の存在検出の有無に基づいて定風量調整部40の調和空気流量を維持又は変更する制御を前記送信間隔に合わせた所定の時間間隔(例えば、2分に一回)で実行している。すなわち、この制御の間隔で、空気量制御部70により各単位領域80における空気調和の状態が更新されることとなる。なお、空気調和対象空間の使用形態、本実施形態ではホールとしての使用、に基づいて既知となっている、演目の開演時間以降など、人の移動のある状況から人が座席85からほとんど動かない状況への移行に合わせて、人感センサ60側からの信号送信とこれに基づく空気量制御部70での定風量調整部40の制御実行の頻度を少なくする、すなわち、前記送信や制御実行の時間間隔をより長いもの(例えば、10分に一回)に変えるようにすることもできる。
【0043】
こうした空気量制御部70と合わせて、空気量制御部70の制御に基づく各単位領域80の定風量調整部40の流量調整内容を表示して、管理者に認識可能とする前記報知手段としての表示部72が設けられる。この表示部72の表示内容と、実際の空気調和状態とを照合することで、管理者は各単位領域ごとに人感センサ60での検出や定風量調整部40の流量調整にかかる作動が適切になされているか否かを判別できる。そして、管理者は、表示と実際の状況が異なる形で現れた各部の異常を速やかに見つけて対応できることとなる。
【0044】
この他、空気量制御部70は、管理者の操作入力を受付ける入力手段(図示を省略)を備えており、この入力手段による管理者の所定の操作入力を受けて、定風量調整部40に対し人感センサ60の検出結果に基づく流量調整状態を変更する制御を実行可能とされる構成である。
【0045】
具体的には、人感センサ60の検出に対応した制御に基づく定風量調整部40での流量調整内容を表示部72の表示で認識している管理者が、何らかの理由に基づいて流量調整状態を現状から変更したい場合に、空気量制御部70に対し所定の操作を行うと、空気量制御部70は定風量調整部40に対し流量調整状態を変更する制御指令を行い、これに応じて定風量調整部40が作動して流量調整を実行することとなる。
【0046】
例えば、空気調和対象空間に人が入る所定時間前からの、空気調和対象空間居住域の予熱や予冷としての暖房や冷房を行いたい場合に、座席85に人が存在しない状況で通常は人感センサ60の検出に基づいて定風量調整部40での調和空気流量を0又は所定の最小流量とする制御がなされている中、管理者が空気量制御部70に対し操作を行うことで、空気量制御部70が定風量調整部40に対し流量調整状態を変更する作動制御を実行し、定風量調整部40は流量調整として調和空気流量を所定の最大流量とする。こうして、各単位領域における吹出口装置から調和空気が吹出されて、座席85に人が存在しない状況での暖房又は冷房が実現することとなる。
【0047】
逆に、空気調和対象空間の各単位領域に人が存在している場合に調和空気吹出しを緊急停止すべき状況が生じた際にも、管理者の操作に基づく空気量制御部70の制御で、定風量調整部40を確実に空気吹出し停止状態に移行させられる。
【0048】
次に、前記構成に基づく空気調和システムにおける空気調和の調整状態について説明する。前提として、空気調和装置50が起動しており、ダクト30を通じて調和空気を各床下チャンバ20側に送給しようとしているものとする。
【0049】
空気調和対象空間における所定の単位領域80において、いずれの座席85にも人が存在せず、いずれの人感センサ60においても人が検出されない状態にある場合、人感センサ60からの検出情報の信号が、データ送信用通信手段61を通じて空気量制御部70に向けて送信され、これを制御用通信手段71を介して空気量制御部70が受け取ることとなる。そして、検出結果に基づいて空気量制御部70で単位領域80に人が存在していないと認定され、空気量制御部70は、制御用通信手段71を通じて制御指令の信号を送信し、定風量調整部40を、床下チャンバ20にわずかな調和空気が導入される最小流量状態、又は、全く調和空気を導入されない流量0の状態とする。
【0050】
この状態では、床下チャンバ20から調和空気が吹出口装置10を通じて空気調和対象空間に導入されることはなく、人の存在しない単位領域80に対して調和空気がそのまま吹出されて空気調和が実行される状況を防止でき、他の人が存在する単位領域へのみ空気調和を行うことで、無駄なエネルギー消費を無くして効率よく空気調和を進められる。
【0051】
一方、空気調和対象空間の所定の単位領域80に人が存在している場合、具体的には、その単位領域80におけるいずれかの人感センサ60の検出範囲の座席85に人が存在している場合、人感センサ60により人の存在が検出され、人感センサ60からの検出情報の信号が、データ送信用通信手段61を通じて空気量制御部70へ向けて送信される。そして、制御用通信手段71を通じて検出情報を受信した空気量制御部70で単位領域80に人が存在していると認定され、空気量制御部70の制御で、この単位領域に対応する定風量調整部40は最大流量状態となって、調和空気を十分な流量で床下チャンバ20側へ通過させる。そして、その単位領域の座席上に存在する人全てに対応した空気調和を実現する十分な量の調和空気が、床下チャンバ20を経て各吹出口装置10から空気調和対象空間の居住域(タスク域)に導入される吹出し状態となる。
【0052】
より具体的には、階段状に配置された座席85のうち、吹出口装置10の上側の座席に対し後列側となる、所定数の座席に在席する人に対し、吹出口装置10から吹出された調和空気がドラフトを感じさせない程度の流速で到達することとなる。
【0053】
こうした空気量制御部70による制御で、所定の単位領域80に対応する定風量調整部40が最小流量状態又は閉止状態から最大流量状態に切替わる際には、その定風量調整部40を通じて単位領域80へ調和空気が新たに進行する分、ダクト30内の圧力が低下する変化を生じることとなり、このダクト内圧力の変化は圧力センサ51で検出され、圧力センサ51からの信号を受けた空気調和装置50は圧力低下を補う目的で調和空気の送給能力を大きくするように調整制御される。こうして、空気調和装置50から各単位領域80の床下チャンバ20に向けて十分な送給能力で調和空気が送られることとなり、新たに人の存在するようになった単位領域に対し、床下チャンバ20を経た適量の調和空気を吹出口装置10から吹出して確実に空気調和を行え、居住域(タスク域)の温度を座席に在席する人に対し良好な状態に維持できる。
【0054】
逆に、空気量制御部70による制御で、所定の単位領域80に対応する定風量調整部40が最大流量状態から最小流量状態又は閉止状態に切替わる際には、その定風量調整部40の対応する単位領域80に調和空気が進めなくなり、ダクトにおける調和空気の流れが滞る分、ダクト30内の圧力が大きくなる。こうした定風量調整部40の変化に基づくダクト内圧力の変化は圧力センサ51で検出され、圧力センサ51からの信号を受けた空気調和装置50は、過剰な圧力を下げる目的で、調和空気の送給能力を抑えるように調整制御される。これにより、最小流量状態又は閉止状態となった定風量調整部40と接続する床下チャンバ20以外の床下チャンバ20に向けて、空気調和装置50から過剰な送給能力をもって調和空気が送られることはなく、空気調和装置50の送給動作に係るエネルギー消費を抑えて、無駄なく適切に調和空気を他の領域に向け送給できる。
【0055】
このように、本実施形態に係る空気調和システムにおいては、空気調和対象空間に設定した各単位領域80に対応する床下チャンバ20に対し、空気調和装置50の調和空気をダクト30を介して送込むようにすると共に、このダクト30と床下チャンバ20との間に定風量調整部40を配設し、また、単位領域80に複数設けた人感センサ60で単位領域80の各座席85における人の存在の有無を検出し、人感センサ60で人の存在を検出した場合には、定風量調整部40を十分な所定量の調和空気が床下チャンバ20側へ通過する状態とする一方、人の存在が検出できない状況では、定風量調整部40を調和空気の床下チャンバ20側への通過を抑制する状態として、床下チャンバ20を経た調和空気の各吹出口装置10からの吹出しを単位領域80における人の存在状況に応じた最適な状態とすることにより、大規模な空気調和対象空間における居住域への空気調和を実行するにあたり、各単位領域80ごとに座席85における人の存在を検出できない場合には、調和空気の供給を抑えて、空気調和対象空間の必要のない領域に調和空気を吹出さないこととなり、空気調和に係るエネルギー消費の無駄を小さくし、簡略な制御構成ながら効率よくシステムを運用でき、空気調和に係るコストの抑制が図れる。
【0056】
また、吹出し停止に係る定風量調整部40の流量切替えに伴うダクト内圧力の変化に対応して空気調和装置50を制御することで、調和空気流量の低減に合わせて空気調和装置の出力も抑えられ、空気調和に係るエネルギー消費を小さくすることができ、簡略な制御構成ながら効率よくシステムを運用でき、空気調和に係るコストの抑制が図れる。さらに、空気調和装置50の制御と、各単位領域80に対応する定風量調整部40の人の有無に基づく制御とを相互に接続、連係させて制御を行う必要が無く、独立させて運用できるため、制御系を簡略化でき、空気調和を行う基準となる単位領域の追加、削減も容易である。
【0057】
なお、前記実施形態に係る空気調和システムにおいては、定風量調整部40の調和空気流量切替えに係る作動を制御する空気量制御部70をシステム内に一つのみ設けて、各定風量調整部40の作動制御をまとめて実行する構成としているが、これに限らず、各単位領域ごとに空気量制御部を設けて、単位領域ごとに定風量調整部をその制御のみに対応した空気量制御部で作動制御する構成とすることもできる。
【0058】
この場合も、各単位領域における、各人感センサから空気量制御部への検出情報の送出や、空気量制御部から定風量調整部への制御指令の送出を、人感センサや空気量制御部、定風量調整部にそれぞれ併設した通信手段を介して無線通信で行うようにしてもよく、人感センサと空気量制御部とが離れた配置とされたり、これらが床下チャンバ等の壁を隔てて設けられている場合でも問題なく制御に係る通信が行える。
【0059】
また、前記実施形態に係る空気調和システムにおいては、単位領域80ごとの複数の人感センサ60により座席85における人の有無を検出し、得られた検出情報に基づいて空気量制御部70が定風量調整部40の制御を行う構成としているが、この他、各単位領域ごとに、単位領域内の環境に係る所定の情報、例えば、温度や湿度、二酸化炭素濃度など、を検出し取得する所定のセンサを人感センサとは別途備え、空気量制御部70で前記センサの検出情報も受取れるようにして、センサ及び人感センサの各検出情報に基づいて、空気量制御部70で定風量調整部40の調和空気流量を決定し、定風量調整部の作動制御を行う構成とすることもでき、センサで取得した単位領域の状況に適応した空気調和状態を得られることとなる。
【0060】
また、前記実施形態に係る空気調和システムにおいて、システムを適用する空気調和空間の床90は、空間の後方に至るほど座席位置を高くする階段状に形成される構成としているが、これに限らず、床を一様な高さの平面状に形成する構成とすることもでき、空気調和対象空間の使用形態に沿った各種床形状に対応できる。さらに、座席85についても、椅子状に限られるものではなく、人の座ることのできる形態及び大きさのものであればよく、例えば人が座る場所として定められた、床を単に区画したスペースのようなものでもかまわない。この場合、吹出口装置は座席上の人に調和空気を到達させられる形態として適宜設けることができる。
【0061】
また、前記実施形態に係る空気調和システムにおいては、流量調整部として、接続されるダクト10の静圧が変化してもあらかじめ設定された風量(流量)を維持するよう自動調整する公知の定風量調整部40を用い、空気量制御部70で定風量調整部40の設定を最大流量状態と最小流量状態又は閉止状態とのいずれかに切替える構成としているが、これに限らず、流量調整部としては、調和空気の流量を少なくとも最小流量状態又は閉止状態を含む複数段階に切替えられるものであればよく、人感センサ60による検出結果に基づく空気量制御部70の制御で、複数段階の調和空気供給状態を切替えて、前記実施形態同様、各単位領域への吹出しを人の存在に対応させて実行できる。