特許第6055721号(P6055721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055721
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】粉体物性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/00 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   G01N11/00 D
   G01N11/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-115231(P2013-115231)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-235027(P2014-235027A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】513137639
【氏名又は名称】フルード工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(74)【代理人】
【識別番号】100182040
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 英世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一大
(72)【発明者】
【氏名】原島 崇
(72)【発明者】
【氏名】澤▲邉▼ 竜也
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05847294(US,A)
【文献】 特開2005−164468(JP,A)
【文献】 実開昭59−158018(JP,U)
【文献】 特開2008−026232(JP,A)
【文献】 特開昭62−180747(JP,A)
【文献】 特開平05−178677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00−13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を収容する、一端が開口した有底円筒状の容器と、前記容器に着脱可能に取り付けられる蓋体とを備え、
前記蓋体は、透明材料からなり、周縁には角度目盛が付されていて、中心には鉛直方向を指示する指針が回動可能に取付けられており、
前記容器に試料粉体を充填して前記蓋体を閉め、前記指針の角度が0°の状態で試料粉体の上面が水平になるように調整した後、前記容器を回動させて前記試料粉体の上面が傾斜して崩れ始めるときの前記指針の角度を読み取ることにより、前記試料粉体の安息角が求められるように構成されていることを特徴とする粉体物性測定装置。
【請求項2】
前記容器は、かさ密度を測定する容器を兼ねており、前記容器に試料粉体をすり切り状態に充填して測定した重量からかさ密度を求める図表を備えている請求項1記載の粉体物性測定装置。
【請求項3】
前記蓋体は、透明材料からなる2重壁構造をなし、前記2重壁構造の間は外部に対して封止された内部空間をなし、前記指針は、前記内部空間に配置されている請求項1又は2記載の粉体物性測定装置。
【請求項4】
前記蓋体の前記容器との当接部分、又は、前記容器の前記蓋体との当接部分に、前記蓋体と前記容器とを気密的にシールする弾性シール部材が配置されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の粉体物性測定装置。
【請求項5】
前記容器の底壁周縁に、環状のリブが設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体物性測定装置。
【請求項6】
更に、前記容器に試料粉体を充填してすり切り状態にするためのすり切り板と、前記試料粉体を充填した容器の重量を測定するはかりとを備えている請求項2記載の粉体物性測定装置。
【請求項7】
更に、前記試料粉体の粒径を測定するための顕微鏡を備えている請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉体物性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料粉体の安息角等の物性を測定する粉体物性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体の貯槽や輸送等のバルクハンドリングを行う際には、粉体の、安息角、かさ密度、粒子径等の粉体物性を把握する必要がある。
【0003】
粉体物性の一つである安息角とは、粉体を堆積させたときに、堆積した粉体の表面と水平面とのなす角度の最大値のことである。安息角は、粉体の種類、含水量等の条件を等しくした場合、同一の値を示す。安息角が小さいほどその粉体の流動性が高いと言える。
【0004】
安息角の測定方法の一つとして、傾斜法による測定方法がある。傾斜法では、円筒容器に粉体を注入し、円筒容器を円周方向にゆっくりと傾けていき、表面に滑りが生じたときの、水平面と粉体が形成する平面とのなす角度を、安息角として測定する。
【0005】
傾斜法による安息角の測定には、例えば特許文献1に記載されるように、カメラ等の撮影装置により容器内の粉体の状況を撮影し、撮影画像から、水平面と、粉体が形成する平面とのなす角度を測定することにより行われている。
【0006】
しかしながら、安息角の測定装置は、大がかりなものが多く、装置コストが嵩む問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−180747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、試料粉体の安息角等の粉体物性を、簡易な方法で測定できる粉体物性測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粉体物性測定装置は、粉体を収容する、一端が開口した有底円筒状の容器と、前記容器に着脱可能に取り付けられる蓋体とを備え、前記蓋体は、透明材料からなり、周縁には角度目盛が付されていて、中心には鉛直方向を指示する指針が回動可能に取付けられており、前記容器に試料粉体を充填して前記蓋体を閉め、前記指針の角度が0°の状態で試料粉体の上面が水平になるように調整した後、前記容器を回動させて前記試料粉体の上面が傾斜して崩れ始めるときの前記指針の角度を読み取ることにより、前記試料粉体の安息角が求められるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の粉体物性測定装置によれば、蓋体が透明材料からなり、その周縁には角度目盛が付されていて、中心には鉛直方向を指示する指針が回動可能に取付けられているので、容器に試料粉体を充填して蓋体を閉め、前記指針の角度が0°の状態で試料粉体の上面が水平になるように調整した後、容器を回動させて試料粉体の上面が傾斜して崩れ始めるときの指針の角度を読み取ることにより、試料粉体の安息角を測定できる。このように、特に複雑な装置を必要とすることなく、粉体の安息角を手軽かつ容易に測定することができる。
【0011】
本発明の粉体物性測定装置において、前記容器は、かさ密度を測定する容器を兼ねており、前記容器に試料粉体をすり切り状態に充填して測定した重量からかさ密度を求める図表を備えていることが好ましい。この態様によれば、容器に試料粉体をすり切り状態に充填してその重量を測定し、その重量を図表に照らし合わせることによって、試料粉体のかさ密度を容易に求めることができる。
【0012】
本発明の粉体物性測定装置において、前記蓋体は、透明材料からなる2重壁構造をなし、前記2重壁構造の間は外部に対して封止された内部空間をなし、前記指針は、前記内部空間に配置されていることが好ましい。この態様によれば、指針の損傷を防止できる。
【0013】
本発明の粉体物性測定装置において、前記蓋体の前記容器との当接部分、又は、前記容器の前記蓋体との当接部分に、前記蓋体と前記容器とを気密的にシールする弾性シール部材が配置されていることが好ましい。この態様によれば、蓋体と容器とを気密性よくシールでき、容器内に充填した試料粉体が、安息角の測定時に漏れるといったトラブルの発生を防止でき、耐久性も向上できる。
【0014】
本発明の粉体物性測定装置において、前記容器の底壁周縁に、環状のリブが設けられていることが好ましい。この態様によれば、環状のリブによって、底壁が上げ底となり、表面に傷等が付きにくくなる。このため、容器が透明性を有する樹脂材料からなる場合には、透明度を長期に亘って維持することができる。
【0015】
本発明の粉体物性測定装置において、更に、前記容器に試料粉体を充填してすり切り状態にするためのすり切り板と、前記試料粉体を充填した容器の重量を測定するはかりとを備えていることが好ましい。この態様によれば、他の機材を必要とすることなく、安息角の測定と、かさ密度の測定とを行うことができる。
【0016】
本発明の粉体物性測定装置において、更に、前記試料粉体の粒径を測定するための顕微鏡を備えていることが好ましい。この態様によれば、顕微鏡によって試料粉体の粒径を測定できるので、粉体の貯槽や輸送等の条件を設定するのに必要な粉体物性のほとんど全てを、この粉体物性測定装置によって測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粉体物性測定装置によれば、容器に試料粉体を充填して蓋体を閉め、指針の角度が0°の状態で試料粉体の上面が水平になるように調整した後、容器を回動させて試料粉体の上面が傾斜して崩れ始めるときの指針の角度を読み取ることにより、試料粉体の安息角を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の粉体物性測定装置の概略図である
図2】本発明の粉体物性測定装置の分解断面図である。
図3図1の粉体物性測定装置を用いた安息角の測定方法を示す説明図である。
図4】かさ密度の測定方法を示す説明図である。
図5】試料粉体の重量からかさ密度を測定するために用いる図表の説明図である。
図6】本発明の物性測定装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1,2に示すように、本発明の粉体物性測定装置は、一端が開口した有底円筒状の容器10と、容器10に着脱可能に取り付けられる蓋体20とを備える安息角測定器1を備えている。
【0020】
容器10の材質は、特に限定は無く、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート等の樹脂材料が好ましく用いられる。容器10を樹脂材料で構成することで、容器10を軽量にできる。ただし、容器10は、金属、ガラスなどで構成されていてもよい。容器10は、必ずしも透明である必要はないが、内部に充填した粉体試料の挙動を観測し易くなることから、透明性を有する樹脂材料からなることが好ましい。
【0021】
図2を併せて参照すると、容器10の底壁11の周縁には、環状のリブ12が設けられている。それによって、底壁11が上げ底となり、表面に傷等が付きにくくなるので、容器10が透明性を有する樹脂材料からなる場合には、透明度を長期に亘って維持することができる。
【0022】
蓋体20は、外壁21と内壁22とで構成された2重壁構造をなしている。
【0023】
外壁21及び内壁22は、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート等の透明性を有する樹脂材料や、ガラス等の透明材料で形成されている。
【0024】
内壁22の内側周縁には、角度目盛23が付されている。角度目盛23は、内壁22の内側周縁に、直接印刷されていてもよく、角度目盛23が印刷されたシート材などが貼着されていてもよい。また、内壁22の内側中心には、鉛直方向を指示する指針24が回動可能に取付けられている。すなわち、角度目盛23及び指針24は、外壁21及び内壁22により、外部に対して封止された空間25に配置されている。この実施形態の場合、指針24は、常時鉛直方向下方に向くように構成されているが、指針24の基部側に重り等を付けることにより、指針24が鉛直方向上方に向くようにしてもよい。その場合には、測定時、角度目盛23が上部にくるようにするのはいうまでもない。
【0025】
内壁22の外側には、容器10の開口部15に着脱可能にはまり込む形状の嵌合部26が形成されている。また、嵌合部26には、環状の凹溝が形成されており、該凹溝に環状の弾性シール部材27が配置されている。蓋体20の嵌合部26を容器10の開口15に挿入すると、弾性シール部材27が、蓋体20の嵌合部26と、容器10の内壁との間で潰れて、蓋体20と容器10とが気密的にシールされる。弾性シール部材27の材質は、特に限定は無いが、例えば、シリコンゴム、ウレタンゴム、天然ゴム等が好ましく採用される。
【0026】
なお、この実施形態では、蓋体20の容器との当接部分である、嵌合部26に弾性シール部材27が配置されているが、容器10の蓋体との当接部分に、弾性シール部材27が配置されていてもよい。
【0027】
次に、図1に示す安息角測定器1を用いた試料粉体の安息角の測定方法について説明する。
【0028】
まず、容器10から蓋体20を取り外し、容器10の内容積の1/3〜1/2程度の試料粉体を充填する。試料粉体を充填後、蓋体20を閉め、蓋体20に設けられた指針24が、角度目盛23の0°を指す状態で、タッピング、揺するなどして、試料粉体の上面が水平になるように調整する。そして、図3に示すように、容器10をゆっくりと回動させていき、試料粉体31の上面30が傾斜して崩れ始めた時点の、指針24が示す角度を読み取る。このようにして、試料粉体の安息角を測定できる。
【0029】
この実施形態では、角度目盛23及び指針24が、蓋体20の、外壁21と内壁22とで囲まれて封止された空間25に配置されているので、使用時や洗浄時などにおいて、角度目盛23や指針24の損傷を防止できる。
【0030】
また、容器10の底壁11の周縁には、環状のリブ12が設けられているので、底壁11に擦り傷等が付くことを防止できる。
【0031】
また、この安息角測定器1の容器10は、かさ密度を測定する容器としての機能を兼ねている。図4に示すように、容器10に試料粉体31を供給し、すり切り板32等を用いてすり切り状態して測定した重量から、かさ密度を求めることができる。
【0032】
かさ密度の測定は、容器10の内容積をVとし、容器10に充填した試料粉体の重量をWとしたとき、下式(1)より算出できる。
【0033】
かさ密度ρ=W/V ・・・(1)
なお、容器10に充填した試料粉体の重量は、容器10の試料粉体を充填した状態の重量から、容器10の重量(風体重量)を除算することで求めることができる。
【0034】
また、容器10の内容積は固定値であるため、例えば、図5に示すような、かさ密度と試料粉体の重量との関係を示す図表を用意しておくことにより、該図表を利用して試料粉体の重量からかさ密度を求めることができる。なお、この実施形態では、図表の下方の横軸には、容器10の重量を引いた試料のみの重量が記載されているが、この横軸に容器10の重量を含んだ重量を記載してもよい。
【0035】
図6には、本発明の粉体物性測定装置の更に好ましい例が示されて2いる。この実施形態では、安息角測定器1をなす容器10及び蓋体20と、容器10に試料粉体をすり切り状態に充填して測定した重量からかさ密度を求める図表(図6においては図示省略)の他に、容器10に試料粉体を充填してすり切り状態にするためのすり切り板32と、試料粉体を充填した容器10の重量を測定するはかり40と、試料粉体の粒径を測定するための顕微鏡50を備えている。
【0036】
はかり40としては、空の容器10を載せて、その状態を0点とする、0点表示できるものが好ましいが、通常のはかりであっても差し支えない。顕微鏡50は、既に市販されている公知のものを使用できるので、その詳しい説明は省略することにする。
【0037】
この粉体物性測定装置によれば、安息角測定器1によって安息角を測定できると共に、安息角測定器1の容器10と、すり切り板32と、はかり40とによってかさ密度を測定でき、更に、顕微鏡50によって試料粉体の粒径も測定できるので、粉体の貯槽や輸送等の条件を設定するのに必要な粉体物性のほとんど全てを、この粉体物性測定装置によって測定することが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
1:安息角測定器
10:容器
11:底壁
12:脚部
15:開口部
20:蓋体
21:外壁
22:内壁
23:角度目盛
24:指針
25:空間
26:嵌合部
27:弾性シール部材
32:すり切り板
40:はかり
50:顕微鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6