(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伸縮袋体は、前記角部に、前記その他の部位よりも径方向外方にさらに突出する突出部を備え、上記突出部の肉厚を、前記その他の部位の肉厚より小さくしていることを特徴とする請求項1に記載の噴射容器。
前記伸縮袋体は、その長軸方向の前記中央部を、その外周にリングを取り付けた構造によって、前記中央部の両端側の肉厚に比べて大きな肉厚としていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の噴射容器。
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の噴射容器の内部に配置され、少なくとも気体もしくは液体を含む封入物を充填可能で、かつ上記封入物の出入りに伴い弾性的に伸縮可能な一方を開口した袋体であって、
その長軸方向における中央部の肉厚が当該中央部の両端側の肉厚に比べて大きく、
少なくとも上記両端側において、上記袋体の短軸方向に平行な断面を、3以上の角部を有する多角形に構成しており、
上記両端側の上記断面において、上記角部の肉厚を、上記角部を除くその他の部位の肉厚より小さく形成しており、
上記袋体の上記開口から上記封入物を充填すると、上記両端側が上記中央部より膨張しやすく、かつ上記両端側の上記断面において上記角部が上記その他の部位より膨張しやすいことを特徴とする伸縮袋体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示される噴射容器には、次のような問題がある。
図9は、特許文献1に開示される噴射容器と同様の構造を持つ従来から公知の噴射容器であって、封入物の充填前(9A)および充填後(9B)の各状態を示す。噴射容器100は、封入物101を充填するための容器本体102の中に、伸縮性の袋体(伸縮袋体)103を収縮状態で格納する(9Aを参照)。伸縮袋体103は、容器本体102の上方に開口部104を固定し、容器本体102の空間とは連通していない。噴射容器100の上部に配置されるアクチュエーター105の噴射口106から伸縮袋体103の内部に向けて封入物101を高圧充填すると、伸縮袋体103は、容器本体102の内部で膨らむ(9Bを参照)。なお、伸縮袋体103の膨張を阻害しないように、容器本体102の一部に孔107を設け、容器本体102の内部を外部と連通させておく方が好ましい。
【0005】
図9(9B)の状態において、伸縮袋体103は、破線で示す仮想ラインのようにほぼ等方的に膨張しようとするため、容器本体2の側壁に対して大きな力Fを及ぼす。このため、特定部への圧力集中を防止すべく、容器本体2の形状を円筒形状にせざるを得なくなる。しかも、容器本体2内において、膨張した伸縮袋体103の占有領域以外の領域が大きいため、容器本体の内容積に対する封入物の占める容積比率が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、容器本体の形状を多角形状とすることができ、かつ容器本体の内容積に対する封入物の占める容積比率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一形態は、少なくとも気体もしくは液体を含む封入物を噴射可能な噴射容器であって、封入物を充填するための袋体であってその封入物の出入りに伴い弾性的に伸縮可能な一方を開口した伸縮袋体と、その伸縮袋体の外側を覆うと共に、伸縮袋体の内部空間の外方に別の内部空間を形成する容器本体とを備え、伸縮袋体では、その長軸方向における中央部の肉厚が当該中央部の両端側の肉厚に比べて大きく、少なくとも両端側において、伸縮袋体の短軸方向に平行な断面を、3以上の角部を有する多角形に構成しており、両端側の断面において、角部の肉厚を、その角部を除くその他の部位の肉厚より小さく形成しており、伸縮袋体の開口から封入物を充填すると、両端側が中央部より膨張しやすく、かつ両端側の断面において角部がその他の部位より膨張しやすく、また、容器本体には、伸縮袋体の短軸方向に平行な断面の径方向外側において、膨張した伸縮袋体のそれぞれの角部と対向する容器角部を備えた多角筒の部分を有する噴射容器である。
【0008】
本発明の別の形態は、さらに、伸縮袋体には、その角部に、その他の部位よりも径方向外方にさらに突出する突出部を備え、その突出部の肉厚を、その他の部位の肉厚より小さくしている噴射容器である。
【0009】
本発明の別の形態は、さらに、伸縮袋体の突出部は、長軸方向において、中央部から両端側にそれぞれ分離形成されている噴射容器である。
【0010】
本発明の別の形態は、また、伸縮袋体において、その長軸方向の中央部を、その外周にリングを取り付けた構造によって、中央部の両端側の肉厚に比べて大きな肉厚としている噴射容器である。
【0011】
本発明の別の形態は、また、伸縮袋体を、主にシリコーンゴムにて構成している噴射容器である。
【0012】
本発明の別の形態は、また、伸縮袋体には、その内部に芯材を備える噴射容器である。
【0013】
本発明の別の形態は、また、芯材に、伸縮袋体の内外に封入物を出し入れするための流路を形成している噴射容器である。
【0014】
本発明の一形態は、上述のいずれかの噴射容器の内部に配置され、少なくとも気体もしくは液体を含む封入物を充填可能で、かつ封入物の出入りに伴い弾性的に伸縮可能な一方を開口した袋体であって、その長軸方向における中央部の肉厚が中央部の両端側の肉厚に比べて大きく、少なくとも両端側において、袋体の短軸方向に平行な断面を、3以上の角部を有する多角形に構成しており、両端側の断面において、角部の肉厚を、その角部を除くその他の部位の肉厚より小さく形成しており、袋体の開口から封入物を充填すると、両端側が中央部より膨張しやすく、かつ両端側の断面において角部がその他の部位より膨張しやすく構成された伸縮袋体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、容器本体の形状を多角形状とすることができ、かつ容器本体の内容積に対する封入物の占める容積比率を高めることのできる噴射容器を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る噴射容器およびそれに備える伸縮袋体の各実施形態について説明する。以下、噴射容器の各実施形態の中で、伸縮袋体の各実施形態も説明する。
【0018】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係る噴射容器の斜視図(1A)および面Sによって噴射容器の容器本体をその高さ方向に切断した際の同噴射容器の一部断面斜視図(1B)を示す。
【0019】
この実施形態に係る噴射容器1は、少なくとも気体もしくは液体を含む封入物を充填し、後述のアクチュエーター5につながるバルブを開けることにより、充填されていた封入物を外部に噴射できる容器である。封入物としては、気体のみ、液体のみ、気体と液体の混合物、気体と固体の混合物、液体と固体の混合物、気体と液体と固体の混合物のいずれかであれば特に制限無く、消火剤、防虫剤、殺虫剤、塗料、消臭剤、潤滑剤(例えば、防錆用のもの)、人体用消臭剤、制汗剤、医薬品、シェービングクリーム、ボディソープ、化粧料、食用油、液体調味料、頭髪用品、香水などを例示できる。噴射容器1は、略四角柱形状の外形を持つ容器本体2と、その天面側を覆う蓋部材3とを備える。この実施形態では、容器本体2は略四角柱形状の外形を持つが、例えば、三角柱、あるいは五角以上の多角形の底面を持つ多角柱であっても良い。容器本体2は、樹脂(ゴムも含むように広義に解釈する)、ガラス、金属などの如何なる材料から構成されていても良いが、後述のように、直接、高圧の気体と接することがないため、必ずしも高い耐圧性を要しない。よって、容器本体2は、SUSなどの剛性の高い金属で構成される必要は無く、樹脂、あるいは金属であっても薄肉のアルミニウムなどの材料にて好適に構成される。
【0020】
蓋部材3は、好適に、容器本体2側に窪む凹部を有し、その凹部の略中央部に、上方に向かって突出する突出部4を有する。突出部4は、その上方に、容器本体2側に向かって押し込み可能なアクチュエーター5を備える。アクチュエーター5は、その底部にバルブを有しており、そのバルブが突出部4の天面に形成された開口部を開閉できるように、突出部4の内部に挿入する形態にて突出部4の上部に配置されている。アクチュエーター5は、その上方の側面に形成される噴射口6を備える。噴射口6は、アクチュエーター5の内部から突出部4の内部を経て、容器本体2の内部に配置された後述の伸縮袋体10の内部へとつながっている。
【0021】
噴射容器1は、容器本体2の内部に配置されると共に上記封入物を充填するための袋体であって、封入物の出入りに伴い弾性的に伸縮可能な伸縮袋体10を備える。伸縮袋体10は、一方を開口した袋であって、その開口部分を蓋部材3側に固定して、容器本体2の内部空間7に吊り下げられた状態で配置されている。容器本体2と伸縮袋体10とは、別々の空間を形成しており、互いにつながっていない。
【0022】
伸縮袋体10は、袋本体11と、複数個の突出部14とを備える。突出部14は、容器本体2の角部(「容器角部」という)8と対向するように、伸縮袋体10の短軸方向に平行な断面の円周上に配置されており、伸縮袋体10の角部を構成する。また、突出部14は、伸縮袋体10の長軸方向(この実施形態では、噴射容器1の長さ方向と同じ方向)の中央部12の両側に、それぞれ分離して形成されている。このように、この実施形態では、伸縮袋体10の短軸方向に平行な断面の円周上に4個の突出部14を備え、かつ長軸方向の中央部12の両側に各4個の突出部14を合計2組備える。したがって、伸縮袋体10は、合計8個の突出部14を備える。突出部14は、その内部を伸縮袋体10の内部空間に連接させた中空形状に構成されている。また、突出部14は、好適には、楕円柱を縦方向に2分割して、その開口面側を伸縮袋体10の内部に連通させるように構成される。ただし、突出部は、半球の開口面側、あるいは直方体を縦分割した開口面側を、それぞれ伸縮袋体10の内部に連通させるように構成されていても良い。
【0023】
伸縮袋体10は、伸縮性に富む樹脂材料、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴムあるいはスチレンブタジエンゴム等の熱硬化性エラストマー、ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系あるいはフッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等などから構成される。また、伸縮袋体10は、封入物と接触しても容易に変性しないように、耐酸性若しくは耐アルカリ性、耐油性、耐溶剤性等の高い樹脂材料にて構成されるのが好ましく、例えば、フッ素系のゴムから好適に構成される。ただし、伸縮袋体10の内部表面に、フッ素コーティングを施し、伸縮袋体10自体の主材には、フッ素系のゴムよりも耐変性の低い材料、例えば、シリコーンゴムを用いても良い。また、封入物の化学的作用が弱いなどの場合には、弾力性に富むシリコーンゴムを伸縮袋体10の材料に用いるのが好ましい。
【0024】
容器本体2は、その底部に、外部と連通する2個の貫通孔21を備える。このため、伸縮袋体10の内部に封入物を充填するに伴い、伸縮袋体10が膨張しても、容器本体2の内部空間7の圧力が上昇して、伸縮袋体10の膨張の妨げになるという問題は生じない。なお、貫通孔21の個数あるいは配置箇所は問わない。また、容器本体2に貫通孔21を形成せずに、蓋部材3に貫通孔を形成し、容器本体2の内部空間7と外部とをつなげるようにしても良い。さらには、容器本体2に貫通孔21を設けずに、その内部空間7が多少加圧された状態になるようにしても良い。
【0025】
図2は、
図1に示す噴射容器の蓋部材とそれに接続された伸縮袋体とを抜き出した斜視図、および伸縮袋体の長軸方向の2箇所を短軸方向に輪切りにしたときの各端面の端面図を示す。
【0026】
伸縮袋体10は、突出部14の存在を除くと、上方に開口部を有し、下方に湾曲状に突出した閉塞部を有する略円筒形状の袋体である。伸縮袋体10に封入物を充填した際に、容器本体2の内部空間7に沿うように多角柱状に膨張させる必要から、その肉厚を均等にせず、部位によって変えている。
図2中のラインAにより伸縮袋体10の短軸方向に平行な面で輪切りにした端面は、伸縮袋体10の長軸方向の中央部12から上側13の領域の突出部14の位置にて切ったときの端面である。この実施形態では、該中央部12から下側13の領域の突出部14の位置で同様に切っても、同じ端面となる。一方、
図2中のラインBにより伸縮袋体10の短軸方向に平行な面で輪切りにした端面は、伸縮袋体10の長軸方向の中央部12の位置にて切ったときの端面である。伸縮袋体10の内部空間17は、封入物の充填によって膨張し、封入物の噴射によって収縮する空間である。
【0027】
ラインAで切ったときの端面から明らかなように、突出部14の薄皮16の肉厚t1は、突出部14同士の間にあるその他の部位18の薄皮15の肉厚t2より小さい。また、ラインBで切ったときの端面から明らかなように、伸縮袋体10の長軸方向の中央に位置する中央部12の端面は、上記肉厚t2より大きな肉厚t3の皮19からなる略円殻形状を備える。このため、封入物を伸縮袋体10の内部空間17に充填していくと、最も薄い肉厚(肉厚: t1)を持つ突出部14が優先的に膨張し、次に薄い肉厚(肉厚: t2)を持つその他の部位18が膨張し、最も厚い肉厚(肉厚: t3)を持つ中央部12が最も膨張しない状況で、伸縮袋体10が膨張していく。このような肉厚の設計によって、中央部12の上下方向両側にある上側13および下側13(以後、「両端側13」ともいう)が中央部12より膨張しやすく、かつ伸縮袋体10の短軸方向に平行な断面において突出部14がその他の部位18より膨張しやすいため、伸縮袋体10の角に存在する突出部14の形態は維持されやすく、かつ長軸方向の中央に位置する中央部12の膨張が抑えられる。この結果、伸縮袋体10は、膨張したときに、四角柱に近い形状になる。なお、伸縮袋体10が膨張したときに突出部14を維持できるように、突出部14を、その他の部位18よりも同一平面内の径方向外側に突出するように形成するのが好ましい。
【0028】
この実施形態では、突出部14の薄皮16をほぼ均等な肉厚t1で構成し、その他の部位18の薄皮15もほぼ均等な肉厚t2で構成し、さらに中央部12の皮19をほぼ均等な肉厚t3で構成している。しかし、薄皮16、薄皮15および皮19は、それぞれ、均等な厚さであることを要しない。すなわち、突出部14の薄皮16は、その突出部14の位置によって異なる厚さを有するものでも良い。同様に、その他の部位18の薄皮15および中央部12の皮19は、それぞれ、それらの位置によって異なる厚さを有するものでも良い。このように、薄皮16、薄皮15および皮19がそれぞれ場所によって厚さが異なる場合には、突出部14の薄皮16の平均厚さを、肉厚t1と定義する。同様に、その他の部位18の薄皮15の平均厚さを肉厚t2と、中央部12の皮19の平均厚さを肉厚t3と、それぞれ定義する。かかる定義によれば、部分的に、薄皮16が薄皮15より厚い箇所、薄皮15が皮19より厚い箇所、薄皮16が皮19より厚い箇所が存在していても、平均厚さで、薄皮16<薄皮15<皮19が成立していれば良い。
【0029】
図3は、
図1(1B)の噴射容器の伸縮袋体中に封入物を充填した状態の一部断面斜視図を示す。
図4は、
図1の噴射容器の伸縮袋体に封入物を充填した際において、噴射容器の底面を取り除いて底側から見た状態の変化(4A)、
図2のラインAで切ったときの端面の変化(4B)および
図2のラインBで切ったときの端面の変化(4C)を、それぞれ示す。
【0030】
図4(4A)に示すように、伸縮袋体10の開口部25は、外方向に拡げられて、蓋部材3の裏面に接着されている。ただし、伸縮袋体10の固定方法は、これに限定されない。例えば、開口部25を拡げることなく筒形状のままで蓋部材3の裏面の環状凹部に挿入して固定しても良い。伸縮袋体10の内部に封入物(以後、「封入物22」と称する)を充填すると、伸縮袋体10は、容器本体2の内部空間7内で膨張して、
図3および
図4(4A)に示す状態になる。
図4(4A)において注目すべき特徴は、伸縮袋体10が膨張すると、その短軸方向に平行な面において、角部を構成する4個の突出部14が容器本体2の内側の容器角部8に近接する状態となる点である。このような膨張を実現すると、容器本体2の内部空間7を有効に利用でき、容器本体の内部空間7内において、伸縮袋体10以外の余計な空間を少なくできる。
【0031】
伸縮袋体10の上記のような膨張を実現する上で重要な伸縮袋体10の構成は、容器角部8に対向する位置に形成される突出部14と、その突出部14の薄皮16をそれと同一面内にあるその他の部位18の薄皮15より薄くする構成と、伸縮袋体10の長軸方向の中央部分(中央部12)の皮19を中央部12によって分離された両端側13に比べて厚くする構成である。さらには、突出部14を中央部12の両端側13によって分離形成していることも、伸縮袋体10を、容器本体2の内部空間7の形態に沿うように四角柱形状に膨張させるのに有効である。ただし、突出部14の少なくとも一部を中央部12に架かるように配置しても良い。その場合、中央部12の平均厚さがその両端側13の平均厚さより大きくなれば良い。
【0032】
図4(4B)に示すように、伸縮袋体10の内部に封入物22を充填していくと、突出部14の薄皮16は、矢印Gに示すように、突出部14と同一面内にあるその他の部位18の薄皮15よりも優先的に外方向に膨張していく。すなわち、その他の部位18の薄皮15は、上記薄皮16よりも厚いので、矢印Hに示すように、突出部14に比較すると外方向に膨張しにくい。伸縮袋体10の突出部14とその他の部位18とを同じ肉厚にするならば、伸縮袋体10はほぼ円形の端面形状に膨張していくため、その他の部位18が容器本体2の内壁に先に接触し、容器本体2の内壁が圧力を受けて変形する恐れがあり、かつ容器角部8と突出部14との間に大きな隙間が残りやすい。しかし、この実施形態では、薄皮16を薄皮15より薄くしているので(t1<t2)、容器角部8と突出部14とが接触若しくは接触に近い状態にまで、伸縮袋体10を膨張させることができる。
【0033】
さらに、伸縮袋体10の中央部12の皮19をその両端側13よりも厚くし、中央部12の過度の膨張を抑えている。
図4(4C)に示すように、中央部12の皮19は、矢印Iに示すように、外方向の力を受けても、両端側13の突出部14やその他の部位18に比べて膨張しにくい。この結果、中央部12が容器本体2の内壁に先に接触しにくい状況を生じせしめ、伸縮袋体10の上下両端が容器本体2の内部空間7の上下両端の領域内で、余計な空間を形成することなく膨張できる。
【0034】
図5は、
図2に示す伸縮袋体の変形例の斜視図を示す。
【0035】
伸縮袋体10は、その長軸方向の中央部12の皮19を両端側13のそれより厚くするのに代えて、中央部12の外周にリング26を取り付ける構造を有する。この結果、中央部12の肉厚が両端側13の肉厚に比べて大きくなり、中央部12の膨張を両端側13に比べて抑制することができる。
【0036】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る伸縮袋体およびそれを備える噴射容器について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0037】
図6は、
図1の面Sと同じ面によって第二実施形態に係る噴射容器の容器本体をその高さ方向に切断した際の同噴射容器の一部断面斜視図、および伸縮袋体の長軸方向の4箇所を短軸方向に輪切りにしたときの各端面の端面図を示す。
【0038】
第二実施形態に係る噴射容器1aは、第一実施形態に係る噴射容器1に備える伸縮袋体10と異なる構造を持つ伸縮袋体10aを備え、それ以外の構成では噴射容器1と同一である。伸縮袋体10aは、その長軸方向の中央部12、中央部12の上方をさらに分割した上方分割部27および中央部12の下方をさらに分割した下方分割部28の3箇所の皮19の肉厚t3を、それら以外の位置の肉厚より大きくしている。突出部14aは、中央部12、上方分割部27および下方分割部28によって長軸方向を分割された4領域に備えられている。また、伸縮袋体10aは、当該4領域のそれぞれにおいて、伸縮袋体10aの短軸方向に平行な面の周囲に沿って容器角部8に対向する位置に合計4個の突出部14aを備える。したがって、突出部14aの総数は、16個である。
【0039】
突出部14aの位置で伸縮袋体10aをその短軸方向に平行な面でラインAのように輪切りにすると、その端面では、突出部14aの薄皮16の肉厚t1は、突出部14a以外の同平面内のその他の部位18の薄皮15の肉厚t2より小さい。一方、中央部12、上方分割部27および下方分割部28の位置で伸縮袋体10aをその短軸方向に平行な面でラインBのように輪切りにすると、その端面では、皮19の肉厚t3は、ラインAで輪切りにした端面の肉厚(t1,t2)よりも大きい。このように、肉厚を大きくする長軸方向の位置は、中央部12のみに限定されず、中央部12を含む限り、上方分割部27、下方分割部28などの他の位置を含めても良い。
【0040】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態に係る伸縮袋体およびそれを備える噴射容器について説明する。第三実施形態において、第一実施形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0041】
図7は、第三実施形態に係る噴射容器に備える伸縮袋体の一部およびその内部構造の断面図(7A)およびその変形例の断面図(7B)をそれぞれ示す。
【0042】
図7(7A)に示す伸縮袋体10は、その内部に、芯材30を備える。芯材30は、封入物22が充填されていない状態において、伸縮袋体10の内部空間17の大部分を占め、突出部14の裏側の空間まで占めるように、伸縮袋体10の内部空間17と類似した形態を備える。この実施形態では、芯材30は、蓋部材3の裏面に固定され、伸縮袋体10内に挿入されているが、芯材30の固定方法は、これに限定されない。また、伸縮袋体10に封入物22が充填されていない状態において、芯材30の外表面と、伸縮袋体10の大部分の内表面との間には、隙間32が存在する。芯材30は、その内部に、伸縮袋体10の内部空間17と噴射容器1の外部とを連通可能な流路31を備える。封入物22を伸縮袋体10の内部空間17に充填する場合には、噴射口6(
図1を参照)から加圧して封入物22を流路31から伸縮袋体10内に送る。一方、伸縮袋体10内の封入物22を外部に噴射する場合には、伸縮袋体10の弾性収縮を利用して、封入物22を流路31から噴射口6へと送る。芯材30を伸縮袋体10の内部に挿入すると、伸縮袋体10が収縮を終えた際、芯材30の体積分だけ、封入物22の残留を低減できる。なお、流路31に代えて、芯材30の外表面に、封入物22の流路としての溝を形成することもできる。
【0043】
なお、隙間32は、必ずしも要しない。例えば、伸縮袋体10に封入物22を充填していない状態において、伸縮袋体10の内部空間17より少し大きめの体積を有する芯材30を用いても良い。その場合、封入物22の噴射を終えるまで、伸縮袋体10は収縮を継続しているので、封入物22の噴射力を最後まで持続できる。また、封入物22の噴射を終えた際には、伸縮袋体10が芯材30にほぼ密着するので、隙間32が存在しない分だけ、封入物22の残留をより低減できる。
【0044】
図7(7B)に示す伸縮袋体10は、
図7(7A)に示す伸縮袋体10の変形例であり、その内部に、突出部14の裏側の空間を占めずに外周面をほぼ平滑にした略円柱形状の芯材40を備える。伸縮袋体10に封入物22が充填されていない状態において、芯材40の外表面と、伸縮袋体10の大部分の内表面との間には、隙間42が存在する。また、芯材40の内部には、その長軸方向に貫通する流路41を備える、流路41は、伸縮袋体10の底部近傍まで達しているため、伸縮袋体10に残留する封入物22をより低減できる。流路41に代えて、芯材40の外表面に、封入物22の流路としての溝を形成することもできる。また、隙間42は、必須の構成ではなく、先に述べたように、伸縮袋体10に封入物22を充填していない状態において、伸縮袋体10の内部空間17より少し大きめの体積を有する芯材40を用い、突出部14の裏側以外に隙間42を生じないようにしても良い。
【0045】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態に係る伸縮袋体およびそれを備える噴射容器について説明する。第四実施形態において、第一実施形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0046】
図8は、第四実施形態に係る噴射容器の斜視図(8A)およびその噴射容器の伸縮袋体に封入物を充填した際において噴射容器の底面を取り除いて底側から見た状態の変化(8B)を、それぞれ示す。
【0047】
この実施形態に係る噴射容器1bは、第一実施形態に係る噴射容器1と異なり、略六角柱形状の容器本体2bと、封入物22を充填したときに容器本体2bの内部空間7b内で隙間を少なくするように膨張可能な伸縮袋体10bとを備える。伸縮袋体10bは、容器本体2bの容器角部8bに対向する位置に、突出部14bを備える。この結果、伸縮袋体10bは、その短軸方向に平行な面の周囲に、合計6個の突出部14bを備える。さらに、伸縮袋体10bは、第一実施形態に係る伸縮袋体10と同様、中央部12で分離された両端側13に、2組の突出部14bを備えている。したがって、伸縮袋体10bの突出部14bは、合計12個である。
【0048】
伸縮袋体10b内に封入物22を加圧充填すると、
図8(8B)に示すように、伸縮袋体10bは、弾性的に膨張する。突出部14bは、第一実施形態で説明した突出部14と同様、非常に小さな肉厚t1(<t2<t3)で形成されているので、容器角部8bに向けて優先的に膨らむ。この結果、伸縮袋体10bは、膨張した際にも6つの角を維持するので、容器本体2bの内部空間7b内をより占有でき、かつ容器本体2bの壁に与える圧力も低く抑えることができる。
【0049】
この実施形態に係る噴射容器1bの容器本体2bは略六角柱形状であるが、容器本体2bの形態を、略六角柱に代えて、略三角柱、略五角柱、略七角以上の多角柱としても良い。その場合、伸縮袋体10bの突出部14bも、容器角部に対向する位置に形成され、かつその薄皮16を非常に小さくして優先的に膨張できるようにすると良い。また、全ての突出部14bの薄皮16を均一にせず、その他の部位18の薄皮15より小さい限り、突出部14bによって肉厚を変えても良い(t1’,t1’’等)。例えば、容器本体2bを正六角柱ではない場合、対向する容器角部8bから最も離れた突出部14bの薄皮16の肉厚を最も小さくし、最も近い突出部14bの薄皮16の肉厚を最も大きくすることもできる。このような工夫によって、容器本体2bを正多角柱に限定せず、広く多角柱に形成しても容易に対応できる。
【0050】
<各実施形態の構成と作用>
各実施形態に係る噴射容器1,1a,1bは、少なくとも気体もしくは液体を含む封入物22を噴射可能であって、封入物22を充填するための袋体であって封入物22の出入りに伴い弾性的に伸縮可能な一方を開口した伸縮袋体10,10a,10bと、伸縮袋体10,10a,10bの外側を覆うと共に、伸縮袋体10,10a,10bの内部空間17の外方に別の内部空間7,7bを形成する容器本体2,2bとを備える。伸縮袋体10,10a,10bは、その長軸方向における中央部12の肉厚(t3)が中央部12の両端側13の肉厚に比べて大きく、少なくとも両端側13において、伸縮袋体10,10a,10bの短軸方向に平行な断面を、3以上の角部を有する多角形に構成しており、かつ両端側13の断面において、角部の肉厚(t1)を、角部を除くその他の部位18の肉厚(t2)より小さく形成している。すなわち、伸縮袋体10,10a,10bは、その開口から封入物22を充填すると、両端側13が中央部12より膨張しやすく、かつ両端側13の断面において角部がその他の部位18より膨張しやすくなる。また、容器本体2,2bは、伸縮袋体10,10a,10bの短軸方向に平行な断面の径方向外側において、膨張した伸縮袋体10,10a,10bのそれぞれの角部と対向する容器角部8,8bを備えた多角筒の部分を有する。
【0051】
このような構成によれば、伸縮袋体10,10a,10bの弾性を利用して封入物22の充填および噴射を実現し、高圧ガスなどを容器本体2,2bに充填する必要が無いため、容器本体2,2bは、高耐圧性を要求されず、多角筒(外形は、多角柱)の形状を備えるように設計できる。なお、容器本体2,2bの全体を多角筒にせず、例えば、容器本体2,2bの上部(噴射容器1,1a,1bの蓋部材3の直下など)に、細い円筒形状あるいは多角筒形状の首部を形成しても良い。すなわち、伸縮袋体10,10a,10bの導入によって、容器本体2,2bは、円筒形状に限定されることなく、その形状の自由度を高めることができる。また、伸縮袋体10,10a,10bは、封入物22を充填する際、長軸方向の中央部12の過度の膨張が抑制され、かつ短軸方向に平行な面において角部が容器角部8,8bに接触あるいは接触に近い状態になるまで、容器本体2,2bの壁に過度の内圧を与えず、容器本体2,2bの内部空間7,7bに近い多角形状に膨張できる。この結果、容器本体2,2bの内部空間7,7b内をより占有でき、容器本体2,2bの内容積に対する封入物22の占める容積比率を高めることができる。
【0052】
伸縮袋体10,10a,10bは、その角部に、その他の部位18よりも径方向外方に突出する突出部14,14a,14bを備え、その肉厚(t1)を、突出部14,14a,14bと同じ断面における突出部14,14a,14b以外の肉厚(t2)より小さくしている。このように、伸縮袋体10,10a,10bの角部に、突出部14,14a,14bを形成すると、角部の肉厚を小さくした伸縮袋体10,10a,10bを製造しやすい。また、伸縮袋体10,10a,10bに封入物22を充填して膨張させた際に、角部を維持しやすい。
【0053】
また、突出部14,14a,14bは、伸縮袋体10,10a,10bの長軸方向において、中央部12から両端側13にそれぞれ分離形成されている。このため、突出部を、中央部12を跨ぐように形成する場合と比較して、伸縮袋体10,10a,10bの長軸方向の中央に位置する中央部12が過度に膨張することを、より抑制できる。
【0054】
伸縮袋体10の長軸方向の中央部12は、その外周にリング26を取り付けた構造によって、中央部12の両端側13の肉厚に比べて大きな肉厚とすることもできる。これによって、伸縮袋体10の中央部12を特別大きな肉厚に成形しなくても、リング26を中央部12に取り付けるだけで、簡易に、中央部12の過度の膨張を抑制できる。
【0055】
伸縮袋体10は、その内部に芯材30,40を備えることもでき、その場合、芯材30,40の体積分だけ、伸縮袋体10の内部空間17への封入物22の残留スペースを減らすことができる。したがって、封入物22の噴射終了までの噴射力の維持と残留の低減とを実現できる。特に、芯材30,40を、封入物22を充填していない自然な状態の伸縮袋体10の内部空間17より大きく構成すると、封入物22の噴射終了の際に、伸縮袋体10の内表面と芯材30,40の主要外表面とを密着させることができ、かつ伸縮袋体10が芯材30,40に圧力を与える状態になる。このため、封入物22の噴射終了までの噴射力をより高くでき、かつ封入物22の残留量をさらに低減できる。
【0056】
また、芯材30,40に、伸縮袋体10の内外に封入物22を出し入れするための流路31,41を形成すれば、芯材30,40を配置しても、封入物22の充填および噴射を容易に行うことができる。
【0057】
<その他の実施形態>
以上、本発明の伸縮袋体およびそれを備えた噴射容器の各実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に限定されず、種々の変形を施すことができる。
【0058】
上記各実施形態では、突出部14,14a,14bの位置で伸縮袋体10,10a,10bを短軸方向に平行に輪切りにしたときの端面では、薄皮16の肉厚t1を薄皮15の肉厚t2より小さくなるように、伸縮袋体10,10a,10bを成形している。しかし、中央部12の外側にリング26を取り付けて中央部12の膨張を抑制したのと同様、突出部14,14a,14bと同一面内のその他の部位18の外側に粘着シール、接着剤、塗料などを付け、薄皮15の肉厚を突出部14,14a,14bの肉厚t1より大きくするようにして、その他の部位18の膨張を抑制し、突出部14,14a,14bの膨張を優先的に生じせしめるようにしても良い。例えば、伸縮袋体10,10a,10bを均一な肉厚t1にて成形し、中央部にリング26を取り付け、両端側13の突出部14,14a,14bを除いて塗料を塗ることで、突出部14,14a,14bの肉厚をt1とし、その他の部位18の肉厚をt2とし、中央部12の肉厚をt3としても良い。また、容器角部8,8bは、先の尖った角に限定されることなく、先端を切断した端面、あるいは湾曲状の角部でも良い。
【0059】
本発明の各実施形態は、互いに組み合わせることのできる範囲で、各構成部を組み合わせることもできる。例えば、第二実施形態と第三実施形態とを組み合わせて、伸縮袋体10aの内部に芯材30若しくは芯材40を備えても良い。また、第三実施形態と第四実施形態とを組み合わせて、伸縮袋体10bの内部に芯材30若しくは芯材40を備えても良い。また、第一実施形態の変形例にて説明したリング26を、第二実施形態に係る伸縮袋体10aの中央部12、上方分割部27および下方分割部28に、第三実施形態に係る伸縮袋体10あるいは第四実施形態に係る伸縮袋体10bの各中央部12に、それぞれ取り付けても良い。