特許第6055733号(P6055733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055733
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   F24C1/00 340A
   F24C1/00 370P
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-155673(P2013-155673)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-25617(P2015-25617A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】平野 明彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 克幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英二
(72)【発明者】
【氏名】熊切 義朗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 晃央
(72)【発明者】
【氏名】陶山 朗
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−027273(JP,A)
【文献】 特開2012−229836(JP,A)
【文献】 特開平08−010160(JP,A)
【文献】 特開2010−261654(JP,A)
【文献】 特開昭57−195832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収容する調理庫と、
前記調理庫内を加熱するヒータと、
前記調理庫内の空気を対流させるファン装置と、
前記調理庫内に蒸気を供給する蒸気発生装置と、
前記調理庫内の温度を検出する庫内温度センサと
前記庫内温度センサの検出温度に基づいて前記調理庫内の温度が所定温度となるように前記ヒータの作動を制御するとともに、前記ファン装置と前記蒸気発生装置とを作動させることによって蒸気を含んだ熱風を対流させて前記調理庫内の食材を加熱調理する調理プログラムを有した制御装置とを備えた加熱調理器であって、
前記ファン装置はファンモータにより回転するファンを前記調理庫の一側壁に離間して設け、前記ファンには前記調理庫の一側壁側に該一側壁との間を負圧化する裏羽根を有するようにするとともに、前記ファンモータの駆動周波数または入力電力を可変に駆動する駆動回路により前記ファンの回転速度を変更可能としたものであり、
前記調理庫の一側壁にて前記ファンと対向する位置に形成した外気導入口に連通接続して、前記ファンを回転させたときに前記裏羽根により前記調理庫内に外気を負圧吸引するための外気導入通路と、
前記外気導入通路に設けられて、開度を変えることで該外気導入通路を通過する風量を調整する風量調整弁とを備え、
前記制御装置は前記調理プログラムを実行したときに前記風量調整弁の開度の制御と前記蒸気発生装置の作動の制御をして前記調理庫内に導入する外気と蒸気によって前記調理庫内を設定した蒸気量となるように制御したものであり、
前記ファンの回転速度の異なる前記調理プログラムを実行したときに、前記調理庫内に導入される外気の風量が変わるのを防ぐように前記風量調整弁の開度を調整するように制御したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項に記載の加熱調理器において、
前記風量調整弁はバルブモータにより回転して前記外気導入通路の開度を変えるようにしたものであり、前記風量調整弁の回転方向を一方向のみに回転させて開度を変えるようにしたことを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータ、ファン装置及び蒸気発生装置を作動させることによって、蒸気を含んだ熱風を対流させて調理庫内の食材を加熱調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、スチームコンベクションオーブン等の加熱調理器が開示されている。この加熱調理器は、食材を収容する調理庫と、調理庫内を加熱するヒータと、調理庫内の空気を対流させるファン装置と、調理庫内に蒸気を供給する蒸気発生装置と、調理庫内の温度を検出する庫内温度センサとを備えており、庫内温度センサの検出温度に基づいて調理庫内の温度を所定温度となるようにヒータの作動を制御するとともに、ファン装置と蒸気発生装置とを作動させることによって蒸気を含んだ熱風を対流させて調理庫内の食材を加熱調理するものである。
【0003】
この加熱調理器のファン装置は、ファンを調理庫の左側壁に離間して設けたものであり、ファンには調理庫の左側壁側に左側壁との間を負圧化する裏羽根を有している。また、調理庫の左側壁にはファンと対向する位置に外気導入口が形成されており、この外気導入口にはファンを回転させたときに調理庫内に外気を負圧吸引するための外気導入通路が連通接続されている。外気導入通路には通路を開閉する外気導入弁が設けられている。
【0004】
調理庫内の蒸気濃度を高く(例えば90〜100%)設定して加熱調理するときには、外気導入弁を閉止して外気を導入せずに蒸気発生装置を作動させている。調理庫内の蒸気濃度を低く(例えば0%)設定して加熱調理するときには、蒸気発生装置を作動させずに外気導入弁を開放して乾燥した外気を導入している。調理庫内の蒸気濃度を中程度(例えば40%)に設定して加熱調理するときには、外気導入弁を開放して外気を導入しつつ、蒸気発生装置を作動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−027273号公報
【特許文献2】特開2012−229836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2の加熱調理器では、調理庫内の食材の調理方法に応じて設定した蒸気濃度となるように、外気導入弁を開放または閉止するとともに、蒸気発生装置の作動を制御している。外気導入通路は調理庫内の蒸気濃度を0%とすることができるように多量の外気を導入可能な径であるため、調理庫内の蒸気濃度を中程度に設定して外気を導入したときには、調理庫内には外気導入通路から過剰な外気が導入されることになっていた。蒸気発生装置により蒸気を供給しながら調理庫内に過剰な外気を導入すると、調理庫内に供給された蒸気が外気によって排気経路から押し出されるように排出され、蒸気発生装置によって供給した蒸気のエネルギーロスとなっていた。また、調理庫内の設定した蒸気濃度に応じて外気導入弁を開放または閉止させるだけであるので、調理庫内に導入する外気の風量を細かく調整することができず、調理庫内の蒸気濃度を細かく設定することができなかった。本発明は、調理庫内から無駄に蒸気が排出されないようにするとともに、調理庫内の蒸気濃度を細かく設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、食材を収容する調理庫と、調理庫内を加熱するヒータと、調理庫内の空気を対流させるファン装置と、調理庫内に蒸気を供給する蒸気発生装置と、調理庫内の温度を検出する庫内温度センサと、庫内温度センサの検出温度に基づいて調理庫内の温度が所定温度となるようにヒータの作動を制御するとともに、ファン装置と蒸気発生装置とを作動させることによって蒸気を含んだ熱風を対流させて調理庫内の食材を加熱調理する調理プログラムを有した制御装置とを備えた加熱調理器であって、ファン装置はファンモータにより回転するファンを調理庫の一側壁に離間して設け、ファンには調理庫の一側壁側に該一側壁との間を負圧化する裏羽根を有するようにするとともに、ファンモータの駆動周波数または入力電力を可変に駆動する駆動回路によりファンの回転速度を変更可能としたものであり、調理庫の一側壁にてファンと対向する位置に形成した外気導入口に連通接続して、ファンを回転させたときに裏羽根により調理庫内に外気を負圧吸引するための外気導入通路と、外気導入通路に設けられて、開度を変えることで該外気導入通路を通過する風量を調整する風量調整弁とを備え、制御装置は調理プログラムを実行したときに風量調整弁の開度の制御と蒸気発生装置の作動の制御をして調理庫内に導入する外気と蒸気によって調理庫内を設定した蒸気量となるように制御したものであり、ファンの回転速度の異なる調理プログラムを実行したときに、調理庫内に導入される外気の風量が変わるのを防ぐように風量調整弁の開度を調整するように制御したことを特徴とする加熱調理器を提供するものである。
【0008】
上記のように構成した加熱調理器においては、ファン装置はファンモータにより回転するファンを調理庫の一側壁に離間して設け、ファンには調理庫の一側壁側に該一側壁との間を負圧化する裏羽根を有するようにするとともに、ファンモータの駆動周波数または入力電力を可変に駆動する駆動回路によりファンの回転速度を変更可能としたものであり、調理庫の一側壁にてファンと対向する位置に形成した外気導入口に連通接続して、ファンを回転させたときに裏羽根により調理庫内に外気を負圧吸引するための外気導入通路と、外気導入通路に設けられて、開度を変えることで該外気導入通路を通過する風量を調整する風量調整弁とを備え、制御装置は調理プログラムを実行したときに風量調整弁の開度の制御と蒸気発生装置の作動の制御をして調理庫内に導入する外気と蒸気によって調理庫内を設定した蒸気量となるように制御したので、外気導入通路から調理庫内に導入する外気は風量調整弁によって設定した蒸気濃度に適した風量に調整されることになり、蒸気発生装置によって調理庫内に供給された蒸気が調理庫の排気経路から不必要に排出されないようになって、エネルギーのロスとなるのを防ぐことができた。また、設定した蒸気濃度に応じて風量調整弁の開度を変えるようにして調理庫内に導入する外気の風量を変えるようしたことで、調理庫内の蒸気濃度を細かく設定することができ、蒸気濃度を変えた様々な調理に対応できるようになった。さらに、ファンの回転速度の異なる調理プログラムを実行したときに、調理庫内に導入される外気の風量が変わるのを防ぐように風量調整弁の開度を調整するように制御したため、ファンの回転速度の異なる調理プログラムを実行したときであっても、設定した蒸気濃度に応じた風量の外気を調理庫内に導入することができた。
【0010】
上記のように構成した加熱調理器においては、風量調整弁はバルブモータにより回転して開度を変えるようにしたものであり、風量調整弁の回転方向を一方向のみに回転させて外気導入通路の開度を変えるようにするのが好ましく、このようにしたときには、風量調整弁の周部の密閉部と外気導入経路との間で風量調整弁の捩れによるバックラッシュに起因して風量調整弁の開度が変わるのを防ぐことができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の加熱調理器の概略図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3】ファンを裏側から見た斜視図である
図4】外気導入筒及び風量調整弁を示す分解斜視図である。
図5】制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による加熱調理器の一実施形態を図面を用いて説明する。図1に示したように、加熱調理器10は、ハウジング11内に食材を収容する調理庫12を備えている。図1及び図2に示したように、調理庫12内には調理庫12内を加熱するヒータ21が設けられている。ヒータ21はシーズヒータ等の周知の電気式ヒータであり、調理庫12の左側壁に大きな環状に屈曲されて取り付けられている。調理庫12内には調理庫12内の温度を検出する庫内温度センサ22が設けられている。
【0013】
図1及び図2に示したように、調理庫12には空気を対流させるファン装置23が設けられている。ファン装置23はハウジング11内にて調理庫12の左側壁の外側に固定したファンモータ23aと、調理庫12の左側壁を貫通させたファンモータ23aの出力軸に固定したファン23bとを備えている。ファン23bはシロッコファン等の遠心ファンである。ファン23bは、環状に屈曲形成したヒータ21の内側に配置され、調理庫12の左側壁(一側壁)に少しの隙間を設けるように離間してファンモータ23aの出力軸に取り付けられている。図3に示したように、ファン23bの調理庫12の左側壁と対向する側には左側壁側に突出する裏羽根23cが設けられており、裏羽根23cは調理庫12の左側壁との間を負圧化するものである。
【0014】
図2に示したように、調理庫12の左側壁にはファン23bと対向する位置に外気導入口12aが形成されており、外気導入口12aには調理庫12内に外気を導入するための外気導入筒(外気導入通路)24が連通接続されている。図2及び図4に示したように、この外気導入筒24には開度を変えることで外気導入筒24を通過する風量を調整する風量調整弁25が設けられている。図4に示したように、風量調整弁25はバタフライ弁よりなり、外気導入筒24内に回転可能に取り付けた円板状の弁体25aの角度を変えることにより開度を調整し、外気導入筒24内を通過する風量を調整するものである。外気導入筒24には風量調整弁25を回転させるバルブモータ26が設けられている。バルブモータ26はステッピングモータであり、風量調整弁25の弁体25aを外気導入筒24の軸線方向と直交する方向回りに角度調整可能に回転させて、風量調整弁25の開度を調整している。また、風量調整弁25の弁体25aの周部にはゴム等の密閉部25a−1が設けられており、風量調整弁25を同じ角度に回転させたときでも、回転方向が異なると、弁体25aの密閉部25a−1の捩れ方が異なり、風量調整弁25の開度が変わることがある。そのために、バルブモータ26は風量調整弁25の弁体25aの回転方向を一方向のみに回転させるようにして、風量調整弁25の弁体25aの密閉部25a−1が外気導入筒24との間で捩れ方が変わることによるバックラッシュに起因して風量調整弁25の開度が変わるのを防いでいる。
【0015】
図1に示したように、調理庫12の底壁には排気口12bが形成されており、排気口12bには排気通路の一部を構成する排気管27が連通接続されている。図1及び図2示したように、排気管27は後述する蒸気発生装置20の排水タンク32に接続されており、排水タンク32には調理庫12の排気の温度を検出する排気温度センサ28が設けられている。
【0016】
ハウジング11の左側部には調理庫12内に蒸気を供給する蒸気発生装置30が設けられている。蒸気発生装置30は所定の水位の水を貯えた蒸気発生容器31に導電性部材よりなる金属製の複数の加熱棒を収容し、蒸気発生容器31の外周に巻回した誘導加熱コイルに高周波電流を供給することで磁界を発生させ、この磁界により加熱棒に渦電流が流れるときの電気抵抗によって発生するジュール熱で蒸気発生容器31内の水を加熱し、蒸気を発生させるものである。蒸気発生容器31は上述した排水タンク32に立設している。また、蒸気発生容器31の側部には水位を検知するための水位検知容器33を備えており、水位検知容器33の下部が蒸気発生容器31に連通接続されている。水位検知容器33内にはフロートスイッチが収容されており、蒸気発生容器31内の水位はこのフロートスイッチの検出水位に基づいて所定の水位となるように制御されている。
【0017】
加熱調理器10は、図5に示したように、ヒータ21、庫内温度センサ22、ファンモータ23a、バルブモータ26、排気温度センサ28及び蒸気発生装置30に接続された制御装置40を備えている。制御装置40は、マイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。また、制御装置40は、ヒータ21,ファンモータ23a及び蒸気発生装置30に各々接続された駆動回路41〜43を備えている。駆動回路41は位相制御回路であり、電圧の位相を変えることでヒータ21の入力電力を変えるものである。駆動回路42はインバータ回路であり、ファンモータ23aに供給する電力の駆動周波数を可変に駆動してファンモータ23aの回転速度(回転数)を変えるものである。駆動回路43はインバータ回路であり、動作周波数を変えることにより蒸気発生装置30の蒸気量を変えるものである。制御装置40は、各駆動回路41〜43によりヒータ21の出力,ファンモータ23aの回転速度及び蒸気発生装置30の蒸気量を可変制御している。なお、駆動回路41〜43は、位相制御回路またはインバータ回路を用いたが、他の回路(例えば位相制御回路、インバータ回路以外にPMW回路等)を用いてヒータ21の出力,ファンモータ23aの回転速度及び蒸気発生装置30の蒸気量を可変制御してもよい。
【0018】
制御装置40は、RAMに調理庫内の食材を加熱調理する各種調理プログラムを有している。制御装置40は、調理プログラムを実行したときに、庫内温度センサ22の検出温度に基づいて調理庫12内の温度が所定温度となるようにヒータ21の作動を制御するとともに、ファン装置23(ファンモータ23a)と蒸気発生装置30とを作動させることによって蒸気を含んだ熱風を対流させている。各調理プログラムには食材の調理に適した温度が設定されており、制御装置40は調理庫12内を設定温度とするために、庫内温度センサ22の検出温度に基づいて駆動回路41によりヒータ21の出力を可変制御している。
【0019】
また、各調理プログラムには、調理庫12内の温度だけでなく、食材の調理に適したファン23bの回転速度及び調理庫12内の蒸気濃度が設定されている。制御装置40は、ファン23bを設定した回転速度とするために、駆動回路42によりファンモータ23aの回転速度を制御している。制御装置40は、調理庫12内を設定した蒸気濃度とするために、バルブモータ26の作動を制御して風量調整弁25を設定した蒸気濃度に応じた開度にするとともに、庫内温度センサ22の検出温度と排気温度センサ28の検出温度の差に基づいて駆動回路43により蒸気発生装置30の蒸気量を制御している。
【0020】
調理庫12内を設定した蒸気濃度となるようにする制御を詳述すると、制御装置40は先ず設定した蒸気濃度に応じてバルブモータ26の作動を制御して風量調整弁25の弁体25aの角度、すなわち風量調整弁25の開度を変えている。調理庫12内の蒸気濃度を0%に設定したときには、風量調整弁25の弁体25aの角度を外気導入筒24の軸線方向(外気導入通路の通路方向)と平行とすることで、風量調整弁25の開度を100%として、外気導入筒24により調理庫12内に全開状態で外気を導入するようにしている。調理庫12内の蒸気濃度を20%としたときには、風量調整弁25の弁体25aの角度を外気導入筒24の軸線方向(外気導入通路の通路方向)から52°とすることで、風量調整弁25の開度を約20%とし、蒸気濃度を0%としたときと比べて外気の導入を抑えるようにしている。また、調理庫12内の蒸気濃度を40%としたときには、風量調整弁25の弁体25aの角度を外気導入筒24の軸線方向(外気導入通路の通路方向)から60°とすることで、風量調整弁25の開度を約15%とし、蒸気濃度を20%としたときと比べて外気の導入をさらに抑えるようにしている。また、調理庫12内の蒸気濃度を70%としたときには、風量調整弁25の弁体25aの角度を外気導入筒24の軸線方向(外気導入通路の通路方向)から67°とすることで、風量調整弁25の開度を約10%とし、蒸気濃度を40%としたときと比べて外気の導入をさらに抑えるようにしている。調理庫12内の蒸気濃度を90%または100%に設定したときには、風量調整弁25の弁体25aの角度を外気導入筒24の軸線方向(外気導入通路の通路方向)と垂直(90°)として、風量調整弁25の開度を0%とし、調理庫12内に外気を導入しないようにしている。
【0021】
このように設定した各蒸気濃度に応じてバルブモータ26の作動を制御して風量調整弁25の弁体25aの角度、すなわち風量調整弁25の開度を変えた状態にて、制御装置40は、設定した蒸気濃度となるように、庫内温度センサ22の検出温度と排気温度センサ28の検出温度の差から調理庫12内の蒸気が持っているエンタルピ、すなわち蒸気濃度を推測し、調理庫12の蒸気濃度が設定した蒸気濃度となるように蒸気発生装置30の作動を制御している。なお、調理庫12の蒸気濃度を0%に設定したときには、調理庫12内に蒸気が不要であるため、調理庫12の蒸気濃度を20%に設定したときには、食材を加熱したときに発生する蒸気によって調理庫12内の蒸気濃度を20%以上となるので、蒸気発生装置30を作動させていない。
【0022】
また、ファン23bの回転速度を遅くなるように制御したときには、制御装置40はファン23bの回転速度を変えたことに応じて調理庫12内に導入する風量が変わるのを防ぐように風量調整弁25の弁体25aの角度、すなわち風量調整弁25の開度を調整している。詳述すると、例えば、調理庫12内に収容した食材の調理方法に応じて、ファン23bの回転速度を通常の回転速度より50%に変更したときには、調理庫12の左側壁とファン23bとの間がファン23bを通常の回転速度で回転させたときよりも負圧化されにくくなり、外気導入筒24から調理庫12内に導入される外気も減少する。そのために、ファン23bの回転速度を遅くしたときには、外気導入筒24から調理庫12内に導入される外気が減少しないように、風量調整弁25の弁体25aの角度、すなわち風量調整弁25の開度を大きくするように制御している。
【0023】
上記のように構成した加熱調理器10の作動について説明する。調理庫12内に食材を収容し、操作パネルより蒸気を含んだ熱風を対流させて調理する調理プログラムを選択すると、制御装置40は、ヒータ21、ファンモータ23a、バルブモータ26及び蒸気発生装置30の作動を制御して、蒸気を含んだ熱風を対流させて調理庫12内に収容した食材を加熱調理する。具体的には、制御装置40は、庫内温度センサ22の検出温度に基づいて調理庫12内の温度が所定温度となるようにヒータ21の作動を制御するとともに、ファン装置23(ファンモータ23a)と蒸気発生装置30とを作動させることによって設定した濃度の蒸気を含む熱風を対流させている。このとき、制御装置40は、上述したように、調理プログラムにより設定した蒸気濃度に応じて、風量調整弁25の弁体25aの角度、すなわち風量調整弁25の開度を変えるように制御している。
【0024】
調理庫12内の蒸気濃度を0%に設定したときには、蒸気発生装置30を作動させずに、風量調整弁25の開度を100%とする。ファン23bを回転させることで、調理庫12の左側壁とファン23bとの間が負圧化され、調理庫12内には外気導入筒24から導入できる最大限の外気が導入される。調理庫12内に外気が導入されることで、調理庫12内の食材が加熱調理される際に発生する蒸気が調理庫12内の空気とともに排気管27から排出され、調理庫12内の蒸気濃度がほぼ0%となる。
【0025】
調理庫12内の蒸気濃度を20%に設定したときには、蒸気発生装置30を作動させずに、風量調整弁25の開度を約20%とする。風量調整弁25により開度を約20%としたことで、調理庫12内に風量調整弁25を全開としたときより少ない外気が導入され、調理庫12内の食材が加熱調理される際に発生する蒸気が調理庫12内の空気とともに排気管27から適度に排出され、調理庫12内の蒸気濃度がほぼ20%となる。
【0026】
調理庫12内の蒸気濃度を40%に設定したときには、蒸気発生装置30を作動させながら、風量調整弁25の開度を約15%とする。蒸気発生装置30を作動させることにより調理庫12内に蒸気を供給しつつ、風量調整弁25により開度を約15%として、調理庫12内の蒸気を含んだ空気を排気管27から一定流量で排気している。蒸気発生装置30は、庫内温度センサ22の検出温度と排気温度センサ28の検出温度の差に基づいて、駆動回路43により蒸気濃度が40%となるように制御されている。このとき、外気導入筒24から継続的に導入される外気と蒸気発生装置30から供給される蒸気とにより、調理庫12内の蒸気を含んだ空気が一定流量以上で排出されるので、排気温度センサ28により排気の温度を正確に検出できる。
【0027】
調理庫12内の蒸気濃度を70%に設定したときには、蒸気発生装置30を作動させながら、風量調整弁25の開度を約10%とする。蒸気発生装置30を作動させることにより調理庫12内に蒸気を供給しつつ、風量調整弁25により開度を約10%として、調理庫12内の蒸気を含んだ空気を排気管27から一定流量で排気している。蒸気発生装置30は、庫内温度センサ22の検出温度と排気温度センサ28の検出温度の差に基づいて、蒸気濃度が70%となるように制御されている。このとき、外気導入筒24から継続的に導入される外気と蒸気発生装置30から供給される蒸気とにより、調理庫12内の蒸気を含んだ空気が一定流量以上で排出されるので、排気温度センサ28により排気の温度を正確に検出できる。
【0028】
調理庫12内の蒸気濃度を90%または100%に設定したときには、蒸気発生装置30を作動させながら、風量調整弁25の開度を0%、すなわち閉止した状態とする。調理庫12内の蒸気濃度を90%または100%に設定していることにより、蒸気発生装置30をほぼ継続的に作動させて調理庫12内に蒸気を供給し、調理庫12内の空気は蒸気発生装置30から供給された蒸気によって排気管27から一定流量以上で排出される。蒸気発生装置30は、庫内温度センサ22の検出温度と排気温度センサ28の検出温度の差に基づいて、蒸気濃度が90%または100%となるように制御されている。このとき、蒸気発生装置30から継続的に供給される蒸気により、調理庫12内の蒸気を含んだ空気が一定流量以上で継続的に排出されるので、排気温度センサ28により排気の温度を正確に検出できる。
【0029】
上記のように構成した加熱調理器10においては、調理庫12内の食材を加熱調理するときには、設定した蒸気濃度に応じて風量調整弁25の開度を変えるようにして調理庫12内に導入する外気の風量を変えるようしつつ、設定した蒸気濃度となるように蒸気発生装置30の作動を制御するようにした。これにより、外気導入筒24から調理庫12内に導入される外気は風量調整弁25によって設定した蒸気濃度に適した風量に調整されることになり、蒸気発生装置30から調理庫12に供給される蒸気が調理庫12の排気管27(排気経路)から不必要に排出されないようになって、エネルギーのロスを防ぐことができた。また、設定した蒸気濃度に応じて風量調整弁25の開度を変えるようにして、調理庫12内に導入する外気の風量を変えるようしたことで、調理庫12内の蒸気濃度をこの実施形態にあるように0,20,40,70,90,100%と細かく設定することができ、蒸気濃度を変えた様々な調理に対応できるようになった。なお、調理庫12内の蒸気濃度の設定は上述した各濃度に限られものでなく、食材の調理方法に応じて1%単位で変更可能としたものであってもよい。また、蒸気発生装置30の作動を制御するとともに、風量調整弁25を単に開閉制御することで調理庫12内を設定した蒸気濃度となるように制御したときには、蒸気発生装置30を作動させない状態で風量調整弁25を閉止させる状態となることがある。この状態では、調理庫12から空気が排出されずに、排気温度センサ28により排気の温度を正確に検出できないおそれがあった。この加熱調理器10では、上記の各蒸気濃度となるように風量調整弁25の開度と、蒸気発生装置30の作動を制御しているため、調理庫12内の空気が一定流量以上で継続的に排出され、排気温度センサ28により排気の温度を正確に検出できるようになった。
【0030】
また、この加熱調理器10においては、ファン23bは駆動回路43により回転速度を変更可能としており、ファン23bの回転速度を変えたことに応じて調理庫12内に導入する風量が変わるのを防ぐように風量調整弁25の開度を調整している。これにより、ファン23bの回転速度を変えて調理をしても、調理庫12から常に一定流量以上の空気を排出することができ、排気温度センサ28により排気の温度を正確に検出できるようになった。これにより、庫内温度センサ22の検出温度と排気温度センサ28の検出温度の差に基づく蒸気濃度の予測の精度が低下しないようになった。
【0031】
また、この加熱調理器10においては、風量調整弁25はバルブモータ26により回転して開度を変えるようにしたものであり、風量調整弁25の回転方向を一方向のみに回転させて開度を変えるようにした。このようにしたことにより、風量調整弁25の弁体25aの密閉部25a−1が外気導入筒24との間で捩れ方が変わることによるバックラッシュに起因して風量調整弁25の開度が変わるのを防いでいる。なお、バルブモータ26のバックラッシュに起因して風量調整弁25の開度が変わることも防ぐようにできた。
【0032】
上記の実施形態においては、調理庫12内の蒸気の設定濃度を20、40及び70%としたときに、風量調整弁25の開度を調整するようにしたが、本発明はこれに限られるものでなく、調理庫12内の蒸気の設定濃度を10〜80%の範囲で風量調整弁25の開度を調整してもよい。なお、調理庫内12内の蒸気の設定濃度を10%より低くしたときには、風量調整弁25の開度を100%、すなわち全開とし、調理庫内12内の蒸気の設定濃度を80%より高くしたときには、風量調整弁25の開度を0%、すなわち閉止すればよい。
【0033】
上記の実施形態においては、RAMに記憶した調理プログラムを実行したときに風量調整弁25の開度を調整する制御について記載したが、本発明はこれに限られるものでなく、操作パネルにより手動で調理庫12内の温度、ファン23bの回転速度及び蒸気濃度を設定したときにも、上述したように風量調整弁25の開度を調整する制御を行うものである。
【符号の説明】
【0034】
10…加熱調理器、12…調理庫、12a…外気導入口、21…ヒータ、22…庫内温度センサ、23…ファン装置、23a…ファンモータ、23b…ファン、23c…裏羽根、24…外気導入通路(外気導入筒)、25…風量調整弁、26…バルブモータ、30…蒸気発生装置、42…駆動回路。
図1
図2
図3
図4
図5