特許第6055743号(P6055743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055743
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】キー使用可否切替システム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20161219BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20161219BHJP
【FI】
   E05B49/00 K
   B60R25/24
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-189287(P2013-189287)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-55107(P2015-55107A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西本 圭吾
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−119757(JP,A)
【文献】 特開2012−239021(JP,A)
【文献】 特開2009−275427(JP,A)
【文献】 特開2011−59931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00− 85/28
B60R 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キーは、当該電子キーにおいて有効無効の切り替え動作を実行する第1登録部と、
キー操作対象は、当該キー操作対象において前記電子キーの有効無効の切り替え動作を実行する第2登録部を備え、
前記第1登録部は、前記第2登録部との間の電子キーシステムの通信網を用いた通信により、前記電子キーの動作状態を、キー使用が可で節電モードがオフとなった有効状態と、キー使用が不可で節電モードがオンとなった無効状態とに切り替え可能であり、
当該第1登録部は、前記電子キーが無効から有効へ切り替えられるときの前段の状態として、前記電子キーの動作状態を、キー使用は不可に維持されるものの節電モードはオフされた無効準備状態に切り替え可能であり、当該無効準備状態のときに有効切替条件が揃えば、前記電子キーを有効状態に切り替える
ことを特徴とするキー使用可否切替システム。
【請求項2】
少なくとも電話機能を有する携帯端末にキーIDが登録されることにより、当該携帯端末がキーとして使用可能になっている
ことを特徴とする請求項1に記載のキー使用可否切替システム。
【請求項3】
前記第2登録部は、前記携帯端末とのID照合の成立を条件に、前記電子キーの有効無効の切り替え動作を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載のキー使用可否切替システム。
【請求項4】
前記電子キーは、電波送信時に操作する操作部を備え、
前記第1登録部は、無効状態のとき、前記電子キーにおいて前記操作部が操作されると、一定時間、前記電子キーを無効準備状態にする
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のキー使用可否切替システム。
【請求項5】
前記電子キーシステムは、前記キー操作対象からの通信を契機に、狭域無線により前記電子キーの正当性を確認するキー操作フリーシステムであり、
前記第1登録部は、前記キー操作フリーシステムの通信を通じ、前記第2登録部から受信した有効無効の切替命令に基づき、前記電子キーの動作状態を切り替える
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のキー使用可否切替システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーの使用可否を切り替えるキー使用可否切替システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から周知のように、多くの車両には、電子キーから無線により電子キーIDを車両に無線送信して、電子キーとのID照合を行う電子キーシステムが搭載されている(特許文献1等参照)。この種の電子キーシステムには、車両送信機からリクエストを定期的に送信し、このリクエストに対する応答として電子キーが送信してきた電子キーIDを、車両においてID照合(スマート照合)するキー操作フリーシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−262915号公報
【特許文献2】特開2009−269542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車内に貸出キー(バレーキー)を搭載し、第三者(ホテルマン等)に車両を貸すとき、貸出キーを第三者に貸与することで車両を制限下で使用させる貸出キー車両操作システム(バレーキーシステム)が周知である(特許文献2等参照)。特許文献2は、車両とメインキーとのID照合が成立する状況下において、車両に搭載されている貸出キーが取り出されると、貸出キーが自動的に使用許可され、かつ車両が機能制限モードに移行される。これにより、第三者に車両を貸し出した際の不正操作が防止される。
【0005】
近年、例えば高機能携帯電話等の端末を電子キーとして使用可能とすることにより、キー携帯の煩わしさを解消することが検討されている。この場合、これまでメインキーの位置付けで使用されていた電子キーの取り扱いが問題となってくるが、この電子キーを貸出キーとして使用することも想定される。電子キーを貸出キーとして使用する場合、車両を貸し出すときにのみ使用するので、使用しない間、電子キーを起動させておくのは、電池寿命の点から無駄である。
【0006】
そこで、電子キーの動作状態を有効及び無効のいずれかに切り替えることを可能とするキー使用可否切替システムが検討されている。このシステムの一例としては、例えば高機能携帯電話との近距離無線によって電子キーの有効/無効を切り替える例が想定される。しかし、この場合、電子キーに近距離無線機能を新たに設ける必要があり、電子キーの構成が複雑化する問題があった。よって、電子キーの有効無効を切り替え可能とするにあたり、電子キーの構成を簡素なまま、かつ不都合なく有効無効を切り替えることを可能とする技術が要望されていた。
【0007】
本発明の目的は、電子キーの有効無効を切り替え可能とするにあたり、電子キーの構成を簡素のまま維持でき、かつ有効から無効への切り替えも不都合なく実施することができるキー使用可否切替システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するキー使用可否切替システムとして、電子キーは、当該電子キーにおいて有効無効の切り替え動作を実行する第1登録部と、キー操作対象は、当該キー操作対象において前記電子キーの有効無効の切り替え動作を実行する第2登録部を備え、前記第1登録部は、前記第2登録部との間の電子キーシステムの通信網を用いた通信により、前記電子キーの動作状態を、キー使用が可で節電モードがオフとなった有効状態と、キー使用が不可で節電モードがオンとなった無効状態とに切り替え可能であり、当該第1登録部は、前記電子キーが無効から有効へ切り替えられるときの前段の状態として、前記電子キーの動作状態を、キー使用は不可に維持されるものの節電モードはオフされた無効準備状態に切り替え可能であり、当該無効準備状態のときに有効切替条件が揃えば、前記電子キーを有効状態に切り替える。
【0009】
本構成によれば、電子キーの有効無効の切り替えを、電子キーシステムの通信網を使用して実行することが可能であるので、電子キーの有効無効を切り替え可能とするにあたり、電子キーに新たな機能を別途設ける必要がない。このため、電子キーの構成が簡素のまま維持される。また、電子キーを無効状態から有効状態に切り替えるとき、電子キーを無効準備状態に一旦入れて、電子キーの節電モードを解除しておき、その状態で有効状態に切り替える。よって、有効状態に切り替えるときに電子キーにおいて必要となる電源がオンされた状態となるので、電子キーを有効状態から不都合なく無効状態に切り替えることが可能となる。
【0010】
前記キー使用可否切替えシステムにおいて、少なくとも電話機能を有する携帯端末にキーIDが登録されることにより、当該携帯端末がキーとして使用可能になっていることが好ましい。この構成によれば、常時所持する携帯端末をキーとして使用することが可能となるので、利便性の向上に一層有利となる。
【0011】
前記キー使用可否切替えシステムにおいて、前記第2登録部は、前記携帯端末とのID照合の成立を条件に、前記電子キーの有効無効の切り替え動作を実行することが好ましい。この構成によれば、電子キー及び携帯端末の間で電子キーシステムのID照合が成立しないと、電子キーの有効無効を切り替えることができないので、有効無効の切り替えのセキュリティ性を確保することが可能となる。
【0012】
前記キー使用可否切替えシステムにおいて、前記電子キーは、電波送信時に操作する操作部を備え、前記第1登録部は、無効状態のとき、前記電子キーにおいて前記操作部が操作されると、一定時間、前記電子キーを無効準備状態にすることが好ましい。この構成によれば、電子キーが無効状態のとき、電子キーに設けられた操作部を操作するという分かり易い操作によって、電子キーを無効準備状態に切り替えることが可能となる。
【0013】
前記キー使用可否切替えシステムにおいて、前記電子キーシステムは、前記キー操作対象からの通信を契機に、狭域無線により前記電子キーの正当性を確認するキー操作フリーシステムであり、前記第1登録部は、前記キー操作フリーシステムの通信を通じ、前記第2登録部から受信した有効無効の切替命令に基づき、前記電子キーの動作状態を切り替えることが好ましい。この構成によれば、キー操作フリーシステムの通信網を利用して、セキュリティ性よく電子キーの有効無効を切り替えることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子キーの有効無効を切り替え可能とするにあたり、電子キーの構成を簡素のまま維持でき、かつ有効から無効への切り替えも不都合なく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態のキー使用可否切替システムの構成図。
図2】電子キーを無効状態に切り替えるときのフロー図。
図3】電子キーを有効状態に切り替えるときのフロー図。
図4】電子キーの動作状態の切り替わり遷移図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、キー使用可否切替システムの一実施形態を図1図4に従って説明する。
[無線照合システムの構成]
図1に示すように、キー操作対象(以降、車両1と記す)は、電波の送受信が可能なキー端末2の正当性を無線通信により照合可能な無線照合システム3を備える。例えば、無線照合システム3は、キー端末2が携帯端末2aである携帯端末キーシステム3aと、キー端末2が電子キー2bである電子キーシステム3bとを備えることが好ましい。
【0017】
携帯端末キーシステム3aは、例えばブルートゥース(R)や近距離無線等を用いた認証システムであるとよい。近距離無線には、例えばNFC(Near Field Communication)がある。携帯端末2aは、例えば高機能携帯電話等であることが好ましく、メインキー位置付けのキーであるとよい。以降、携帯端末キーシステム3aのID照合を「携帯端末照合」と記し、その通知を「携帯端末照合通信」と記す。
【0018】
電子キーシステム3bは、例えば車両1からの通信を契機に狭域無線(通信距離:数m)により電子キー2bの正当性を判定するキー操作フリーシステムと、電子キー2bからの通信を契機に狭域無線により電子キー2bの正当性を判定するワイヤレスキーシステムとを備えることが好ましい。電子キー2bは、例えばキー機能のみを有するキー専用の端末である。以降、キー操作フリーシステムのID照合を「スマート照合」と記し、その通信を「スマート通信」と記し、ワイヤレスキーシステムのID照合を「ワイヤレス照合」と記し、その通信を「ワイヤレス通信」と記す。
【0019】
例えば、電子キー2bは、サブキー位置付けのキーであるとよく、例えば車両1の貸出時に第三者等に渡す貸出キー(バレーキー)であることが好ましい。この場合、電子キーシステムは、ID照合成立時において車両1を制限状態下で使用することが許可されるバレーキーシステムであるとよい。
【0020】
車両1は、携帯端末2aの正当性を認証する第1照合ECU4と、電子キー2bの正当性を認証する第2照合ECU5と、車載電装品の電源を管理するボディECU6と、エンジン8の動作を制御するエンジンECU7とを備える。これらは、車内の通信線9を通じて電気接続されている。第1照合ECU4のメモリ10には、携帯端末キーシステム3aの照合で用いる第1キーIDが書き込み保存されている。第2照合ECU5のメモリ11には、電子キーシステム3bの照合で使用する第2キーIDが書き込み保存されている。通信線9は、例えばCAN(Controller Area Network)が好ましい。
【0021】
車両1は、携帯端末2aと双方向の通信が可能な無線アンテナ12と、車外の電子キー2bに電波を送信可能な車外送信アンテナ13と、車内の電子キー2bに電波を送信可能な車内送信アンテナ14と、電子キー2bから送信された電波を受信可能な受信アンテナ15とを備えることが好ましい。無線アンテナ12は、第1照合ECU4に電気接続される。車外送信アンテナ13、車内送信アンテナ14及び受信アンテナ15は、第2照合ECU5に電気接続される。無線アンテナ12の通信は、例えばブルートゥース(R)や近距離無線等が好ましい。車外送信アンテナ13及び車内送信アンテナ14は、LF(Low Frequency)帯の電波を送信可能であることが好ましい。受信アンテナ15は、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能であることが好ましい。
【0022】
ボディECU6は、車両ドアの施解錠を切り替えるドアロック機構16の動作を制御する。第2照合ECU5には、車両1の電源状態(例えば、IGオフ、ACCオン、IGオン、エンジンスタート)を切り替える際に操作するエンジンスイッチ17が接続されている。エンジンスイッチ17は、運転席に配設された例えばプッシュモーメンタリ式スイッチが好ましい。
【0023】
携帯端末2aは、携帯端末2aの動作を制御するコントローラ18と、画面をタッチ操作可能なタッチパネル19と、第1照合ECU4と双方向の通信が可能な無線アンテナ20とを備えることが好ましい。コントローラ18のメモリ21には、第1照合ECU4に書き込まれたものと同様の第1キーIDが書き込み保存されている。
【0024】
電子キー2bは、電子キー2bの動作を制御するキー制御部22と、ワイヤレス通信で車両1を作動させる際に操作する操作部23と、電子キー2bで電波を受信可能とする受信部24と、電子キー2bから電波を送信可能とする送信部25とを備える。キー制御部22のメモリ26には、第2照合ECU5に書き込まれたものと同様の第2キーIDが書き込み保存されている。操作部23は、例えば車両ドアの施錠ボタンや解錠ボタン等であることが好ましい。受信部24は、例えばLF帯の電波を受信可能であることが好ましい。送信部25は、例えばUHF帯の電波を送信可能であることが好ましい。
【0025】
[無線照合システムの動作]
携帯端末2aで車両1を操作するとき、携帯端末2aの無線アンテナ20から第1キーID信号Sid1を送信させ、これを車両1の無線アンテナ12に受信させることにより、携帯端末照合通信を確立させる。第1キーID信号Sid1は、携帯端末2aに登録された第1キーIDを少なくとも含む信号である。第1照合ECU4は、携帯端末2aから送信された第1キーID信号Sid1を無線アンテナ12で受信すると、第1キーID信号Sid1内の第1キーIDの正当性を確認する。第1照合ECU4は、携帯端末2aの第1キーIDと、メモリ10に登録された第1キーIDとが一致することを確認すると、携帯端末照合を成立とし、車載機器の作動を許可又は実行する。
【0026】
なお、車外に位置する携帯端末2aとの間で携帯端末照合が成立すれば、車両ドアの施解錠が許可又は実行される。また、車内に位置する携帯端末2aとの間で携帯端末照合が成立すれば、エンジンスイッチ17による車両電源遷移操作(エンジン始動操作等)が許可される。
【0027】
車外送信アンテナ13が車外にリクエスト信号SrqをLF送信して車両周囲に車外通信エリアを形成するとき、電子キー2bが車外通信エリアに進入してリクエスト信号Srqを受信すると、電子キー2bは車外におけるスマート通信(車外スマート通信)を開始して、第2キーID信号Sid2を車両1にUHF送信する。具体的には、車外送信アンテナ13から定期送信されるウェイク信号を電子キー2bが受信すると、電子キー2bが起動してアックを返信し、続く通信課程において、車両コード照合、チャレンジレスポンス認証、電子キーID照合等の各種照合を実行する。車両コード照合は、車両1の固有IDである車両コードを車両1から電子キー2bに送信し、電子キー2bに車両コードの正当性を確認させる照合である。チャレンジレスポンス認証は、送信の度に毎回変わるチャレンジコードを車両1から電子キー2bに送信し、電子キー2bにおいてチャレンジコードを電子キー2bの暗号鍵に通してレスポンスコードを演算させて、これを車両1に返信させ、車両1において同様に演算したレスポンスコードにより、電子キー2bのレスポンスコードの正当性を確認する照合である。電子キーID照合は、電子キー2bに登録された電子キーIDを電子キー2bから車両1に送信して、車両1において電子キーIDの正当性を確認する照合である。第2照合ECU5は、これら照合が成立することを確認すると、車外のスマート照合(車外スマート照合)が成立したと判断し、ボディECU6による車両ドアの施解錠を許可又は実行する。
【0028】
電子キー2bが車内に進入すると、車外送信アンテナ13に代わり、今度は車内送信アンテナ14がリクエスト信号Srqの送信を開始する。第2照合ECU5は、車内通信エリアに進入した電子キー2bとの間で、車外と同様のスマート照合(車内スマート照合)を行い、この照合が成立すれば、運転席に配設されたエンジンスイッチ17による電源遷移操作(エンジン始動操作)を許可する。
【0029】
電子キー2bの操作部23が操作されたとき、電子キー2bの送信部25からワイヤレス信号SwlがUHF送信される。ワイヤレス信号Swlは、例えば操作コマンドと、第2キーIDとを含む信号である。第2照合ECU5は、ワイヤレス信号Swlを受信アンテナ15で受信すると、ワイヤレス信号Swl内の第2キーIDの正当性を確認し、第2キーIDが正当であると確認できると、同一信号内のコマンドに従い作動する。例えば、操作部23として解錠ボタンが操作されると、車両ドアが解錠される。
【0030】
電子キーシステム3bがバレーキーシステムの場合、スマート照合やワイヤレス照合によってID照合を成立することができても、使用制限がかけられた条件下でのみ、車両1を使用することが可能である。例えば、車両1の使用制限には、エンジン8の始動回数、走行可能距離、走行可能時間、ラッゲージドアの開操作、グローブボックスの開操作、カーナビゲーションシステムの使用許可などがある。
【0031】
[キー使用可否切替システムの構成]
電子キー2bは、電子キーシステム3bの通信網を使用したキー使用可否切替システム27により、動作状態を有効無効に切り替えることが可能である。本例のキー使用可否切替システム27は、電子キー2b及び車両1の間のスマート通信を使用して、電子キー2bの動作状態を有効状態又は無効状態に切り替える。有効状態は、キー使用が可で節電モードがオフの状態を言う。無効状態は、キー使用が不可で節電モードがオンの状態をいう。例えば、節電モードは、キー制御部22のマイクロコンピュータの他、通信ICのAFE(Analog Front End)の電源がオフされる状態を言う。
【0032】
キー使用可否切替システム27は、電子キー2bにおいて電子キー2bの有効無効の切り替え動作を実行する第1登録部28と、車両1において電子キー2bの有効無効の切り替え動作を実行する第2登録部29とを備える。第1登録部28は、電子キー2bのキー制御部22に設けられることが好ましい。第2登録部29は、第2照合ECU5に設けられることが好ましい。キー使用可否切替システム27は、携帯端末2aにおいて電子キー2bの有効無効の切り替え動作を実行する第3登録部30を備えるとよい。第3登録部30は、携帯端末2aのコントローラ18に設けられることが好ましい。
【0033】
第1登録部28は、電子キー2bが無効状態のとき、電子キー2bにおいて無効準備切替操作が実行されると、電子キー2bを無効に切り替わる前の前段の状態として無効準備状態に切り替える。無効準備状態は、例えばキー使用が不可で維持されるものの節電モードはオフされた状態を言う。無効準備切替操作は、例えば電子キー2bが無効状態をとっているときに操作部23を操作する態様が好ましい。電子キー2bの有効状態への切り替えは、電子キー2bを無効準備状態に一旦入れてから、有効切替操作を行なうことにより実行可能である。
【0034】
次に、図2図4を用いて、キー使用可否切替システム27の動作を説明する。
[電子キー2bの無効切替操作]
図2に示すように、ステップ101において、ユーザは、電子キー2bを無効状態に切り替えるにあたり、携帯端末2aを操作して、携帯端末2aに無効切替要求を入力する。
【0035】
ステップ102において、第3登録部30は、携帯端末2aに無効切替要求が入力されると、無効切替要求をトリガとする携帯端末照合を開始する。つまり、携帯端末2aから車両1に第1キーIDが送信され、無効切り替え操作時、いまユーザの手元にある携帯端末2aの正当性が第1照合ECU4によって確認される。無効切替要求をトリガとする携帯端末照合が成立すると、第1照合ECU4から無効切替の開始要求が第2照合ECU5に出力される。
【0036】
ステップ103において、第2登録部29は、第1照合ECU4から無効切替の開始要求を入力して、無効切替要求をトリガとする携帯端末照合が成立することを確認する。
ステップ104において、第2登録部29は、無効切替要求をトリガとする携帯端末照合が成立することを確認すると、電子キー2bとスマート通信を開始する。つまり、電子キー2b及び車両1の間でスマート照合が開始され、いま無効化しようとしている電子キー2bの正当性が確認される。
【0037】
ステップ105において、第2登録部29は、いま通信相手の電子キー2bが正規キーであれば、スマート照合の成立を確認する。
ステップ106において、第2登録部29は、スマート照合の成立を確認できると、スマート通信の通信課程の中で、無効化命令S1を電子キー2bに送信する。無効化命令S1は、電子キー2bに無効状態なることを指示する信号である。
【0038】
ステップ107において、第1登録部28は、車両1からスマート通信経由で無効化命令S1を受信すると、電子キー2bの動作状態を有効状態から無効状態に切り替える。このとき、電子キー2bは、無効化命令を受信すると、無効準備状態に一旦入り、一定時間経過後、無効状態に切り替わる動作をとってもよい。また、電子キー2bは、無効化命令を受信したとき、無効準備状態に入ることなく、直ちに無効状態に切り替わってもよい。
【0039】
このように、電子キー2bが無効状態に切り替えられると、電子キー2bは使用が不可となる。このため、電子キー2bが不正に操作されずに済むので、車両盗難等に対するセキュリティ性が確保される。また、電子キー2bは節電モードをとることから、電源の長寿命化も可能となる。
【0040】
[電子キー2bの有効切替操作]
図3に示すように、ステップ201において、ユーザは、無効状態の電子キー2bにおいて操作部23を操作する。
【0041】
ステップ202において、第1登録部28は、無効状態の電子キー2bにおいて操作部23が操作されたことを検出すると、電子キー2bの動作状態を、一定時間、無効準備状態に切り替える。つまり、電子キー2bが無効状態で操作部23が操作されると、一定時間、節電モードのみが解除される。これにより、キー制御部22のマイクロコンピュータや通信IC等に電源が投入され、有効状態への切り替わり動作が可能にされる。
【0042】
ステップ203において、ユーザは、電子キー2bが無効準備状態をとっている間に、携帯端末2aを操作して、携帯端末2aに有効切替要求を入力する。
ステップ204において、第3登録部30は、携帯端末2aに有効切替要求が入力されると、有効切替要求をトリガとする携帯端末照合を開始する。つまり、携帯端末2aから車両1に第1キーIDが送信され、有効切り替え操作時、いまユーザの手元にある携帯端末2aの正当性が第1照合ECU4によって確認される。有効切替要求をトリガとする携帯端末照合が成立すると、第1照合ECU4から有効切替の開始要求が第2照合ECU5に出力される。
【0043】
ステップ205において、第2登録部29は、第1照合ECU4から有効切替の開始要求を入力して、有効切替要求をトリガとする携帯端末照合が成立することを確認する。
ステップ206において、第2登録部29は、有効切替要求をトリガとする携帯端末照合が成立することを確認すると、電子キー2bとスマート通信を開始する。つまり、無効化のときと同様に、電子キー2b及び車両1の間でスマート照合が開始され、いま有効化しようとしている電子キー2bの正当性が確認される。
【0044】
ステップ207において、第2登録部29は、いま通信相手の電子キー2bが正規キーであれば、スマート照合の成立を確認する。
ステップ208において、第2登録部29は、スマート照合の成立を確認できると、スマート通信の通信課程の中で、有効化命令S2を電子キー2bに送信する。有効化命令S2は、電子キー2bに有効状態になることを指示する信号である。
【0045】
ステップ209において、第1登録部28は、車両1からスマート通信経由で有効化命令S2を受信すると、電子キー2bが無効準備状態をとっていれば、電子キー2bの動作状態を無効準備状態から有効状態に切り替える。このとき、電子キー2bの節電モードはオフとなっているので、電子キー2bは自身の電源を基に、動作状態を有効状態に切り替える。よって、電子キー2bが作動可能となり、電子キー2bによって車両1を操作することが可能となる。
【0046】
図4に、電子キー2bの動作状態の切り替わり遷移を図示する。同図に示されるように、電子キー2bが有効状態のとき、車両1からスマート通信で無効化命令S1を受信すると、電子キー2bは無効状態に切り替えられる。また、電子キー2bが無効状態のとき、電子キー2bの操作部23が操作されると、一定時間、無効準備状態に入り、節電モードが解除される。このとき、車両1からスマート通信経由で有効化命令S2を電子キー2bに送信することにより、電子キー2bを無効状態に戻すことが可能となる。なお、電子キー2bを無効準備状態に切り替えた後、一定時間内に有効化命令S2が入力されなければ、一定時間経過後、無効状態に戻される。
【0047】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)電子キー2bの有効無効の切り替えは、電子キーシステム3bの通信網、すなわちキー操作フリーシステムのスマート通信を使用して実行することが可能である。これにより、既設の通信ハードを利用して電子キー2bの有効無効の切り替えが可能であるので、電子キー2bの有効無効を切り替えるにあたり、電子キー2bに新たな機能を別途設ける必要がない。このため、電子キー2bの構成を簡素のまま維持することができる。また、電子キー2bを無効状態から有効状態に切り替えるとき、電子キー2bを無効準備状態に一旦入れて、電子キー2bの節電モードを解除しておき、その状態で有効状態に切り替える。よって、有効状態に切り替えるときに電子キー2bにおいて必要となる電源がオンされた状態となるので、電子キー2bを有効状態から不都合なく無効状態に切り替えることもできる。
【0048】
(2)携帯端末2aは、少なくとも電話機能を有する端末(高機能携帯電話等)である。よって、常時所持する使用態様をとる携帯端末2aを車両1のキーとして使用することが可能となるので、利便性の向上に一層有利となる。
【0049】
(3)電子キー2bの有効無効を切り替えるにあたり、携帯端末2a及び車両1の間の携帯端末照合が成立することが条件にされている。よって、正規の携帯端末2aが手元にないと電子キー2bの有効無効を切り替えることができないので、電子キー2bの有効無効の切り替えのセキュリティ性を確保することができる。
【0050】
(4)電子キー2bの有効無効の切り替えは、電子キーシステム3bのID照合(スマート照合)の成立が条件にされている。よって、電子キーシステム3bのID照合が成立しないと、電子キー2bの有効無効を切り替えることができないので、有効無効の切り替えのセキュリティ性を確保することができる。
【0051】
(5)無効状態のときに電子キー2bの操作部23が操作されると、電子キー2bが無効準備状態に切り替えられる。よって、電子キー2bに設けられた操作部23を操作するという分かり易い操作によって、電子キー2bを無効準備状態に切り替えることができる。
【0052】
(6)電子キー2bの有効無効の切り替えに使用する電子キーシステム3bは、キー操作フリーシステムである。よって、セキュリティ性よく電子キー2bの有効無効を切り替えることができる。
【0053】
(7)無効状態のときに電子キー2bの操作部23が操作されると、無効準備状態に一定時間入り、切り替え操作がなされずに一定時間が経過すると、電子キー2bは無効状態に戻される。よって、無効状態への戻し忘れを防止することができる。
【0054】
(8)電子キー2bが無効状態のとき、操作部23が操作されても、電子キー2bは無効準備状態に入るだけであり、車両1は作動しない。よって、ユーザは、操作部23を操作しても車両1が作動しないことをもって、電子キー2bが無効状態に入っていることを確認することができる。
【0055】
(9)無効状態のときに電子キー2bの操作部23が操作されて電子キー2bが無効状態となっても、一定時間経過後、無効状態に自動で戻される。よって、無効状態のときに操作部23が操作されても、節電モードの解除は一定時間のみであり、暫くすると節電モードがオンに復帰されるので、節電モードを解除したままにせずに済む。
【0056】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・電子キー2bが無効準備状態となったとき、例えば電子キー2bのLEDを点灯点滅させるなどして、その旨をユーザに通知してもよい。
【0057】
・第1照合ECU4及び第2照合ECU5は、一体のECUで構成されてもよい。
・有効無効の切り替えを開始するにあたり、ユーザに課す作業は携帯端末照合の成立に限定されない。例えば、携帯端末2aにパスワード等を入力し、これが正しいことを条件に、電子キー2bの有効無効の切り替えが許可されてもよい。
【0058】
・操作部23は、施解錠ボタンに限定されず、例えばパワースライドボタンやパニックボタンなど、他のボタンに変更可能である。また、操作部23は、例えば押しボタンやスライドボタンなど、種々の種類のものに変更することも可能である。
【0059】
・無効状態から無効準備状態への切り替えは、操作部23の操作をトリガとすることに限定されず、例えば電子キー2bを振るなど、他の操作態様に変更可能である。
・無効化命令S1や有効化命令S2は、携帯端末2aから入力されることに限定されない。例えば、車両1(カーナビゲーションシステム等)にその旨を入力することで、有効無効の切り替えの通信を開始してもよい。
【0060】
・有効無効の切り替え作業は、車内外を問わない。
・有効状態とは、電子キー2bを使用できる状態を言い、キー使用制限の有無は問わない。
【0061】
・無効状態とは、電子キー2bを使用できず、かつ節電モードに入っている状態であればよい。
・無効準備状態とは、無効状態から少なくとも節電モードが解除された状態であればよい。
【0062】
・無効準備状態に入った後、一定時間が経過しても、無効状態に自動復帰しない構成としてもよい。
・電子キー2bの有効無効をスマート通信で切り替えるとき、必ずしもスマート照合の成立を切り替えの条件としない。要は、電子キーシステム3bの通信ハードを使用していればよいこととする。
【0063】
・電子キーシステムは、キー操作フリーシステムに限らず、他の無線認証のシステムを適用可能である。
・携帯端末2aは、高機能携帯電話以外の種々の端末が適用可能である。また、携帯端末2aは、電子キーであってもよい。
【0064】
・キー操作対象は、車両1に限らず、他の機器や装置に変更可能である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0065】
(イ)電子キーの動作状態の切り替えに使用するキー使用可否切替方法において、前記電子キーは、キー操作対象との間の電子キーシステムの通信網を用いた通信により、自身の動作状態を、キー使用が可で節電モードがオフとなった有効状態と、キー使用が不可で節電モードがオンとなった無効状態とに切り替え可能であり、当該電子キーは、無効から有効へ切り替わるときの前段の状態として、キー使用は不可に維持されるものの節電モードはオフされた無効準備状態に切り替わり可能であり、当該無効準備状態のときに有効切替条件が揃えば、有効状態に切り替わることを特徴とするキー使用可否切替方法。
【符号の説明】
【0066】
1…キー操作対象の一例である車両、2a…携帯端末、2b…電子キー、3b…電子キーシステム、23…操作部、28…第1登録部、29…第2登録部、30…第3登録部、S1…切替命令の一例である無効化命令、S2…切替命令の一例である有効化命令。
図1
図2
図3
図4