(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055820
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】内圧指示器を備えた真空太陽熱パネル
(51)【国際特許分類】
F24J 2/20 20060101AFI20161219BHJP
G01L 21/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
F24J2/20 A
G01L21/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-513072(P2014-513072)
(86)(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公表番号】特表2014-520242(P2014-520242A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】EP2012002126
(87)【国際公開番号】WO2012163483
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】11168174.8
(32)【優先日】2011年5月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513164602
【氏名又は名称】ティーブイピー ソラー エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】パルミエリ ビットリオ
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/003653(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0126499(US,A1)
【文献】
特開昭58−064721(JP,A)
【文献】
特開昭48−082363(JP,A)
【文献】
特表2007−518957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 2/20
G01L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空太陽熱パネル(1)であって、
太陽放射に対して透明な前面プレート(11)と、前記前面プレート(11)の支持構造(12)とを少なくとも有する、気密外囲器(10)と、
前記気密外囲器(10)内に封入された熱吸収手段と、
前記気密外囲器(10)内部の真空状態を維持するための主ゲッタ手段と、
を備え、
更に、前記前面プレート(11)の内側に堆積された反応性物質からなる圧力標示スポット(13)を備え、前記反応性物質は、前記気密外囲器内の圧力が閾値を超えると前記気密外囲器の外部から感知可能な反応を受け、
前記前面プレートの内側に隣接して、容器(14)が前記支持構造(12)に堅固に取り付けられ、前記容器(14)はフラッシングの前に前記反応性物質を含む様に予め処理されていることを特徴とする、真空太陽熱パネル。
【請求項2】
前記前面プレート(11)上の前記圧力標示スポット(13)は、最大で10cm2の面積を有する、請求項1に記載の真空太陽熱パネル(1)。
【請求項3】
前記圧力標示スポット(13)の面積は、1cm2〜3cm2の間である、請求項2に記載の真空太陽熱パネル(1)。
【請求項4】
前記圧力標示スポット(13)の面積は、最大でも前記前面プレート(11)の全透明面積の1%である、請求項1〜3の一項に記載の真空太陽熱パネル(1)。
【請求項5】
前記圧力標示スポット(13)を形成する反応性物質の量は、1〜5mgの間である、請求項1〜4の一項に記載の真空太陽熱パネル(1)。
【請求項6】
前記圧力標示スポット(13)を形成する反応性物質は、元素状バリウムである、請求項1〜5の一項に記載の真空太陽熱パネル(1)。
【請求項7】
前記主ゲッタ手段は非蒸発性ゲッタからなる、請求項1〜6の一項に記載の真空太陽熱パネル(1)。
【請求項8】
前記容器(14)は前記前面プレート(11)の内側から1〜3mmの間の距離に配置されている、請求項1に記載の真空太陽熱パネル(1)。
【請求項9】
前記支持構造(12)は、背面プレート(12a)と、前記背面プレート(12a)を前記前面プレート(11)に接続する複数の垂直材(12b)とを備え、前記容器(14)は前記垂直材(12b)の1つに堅固に取り付けられている、請求項1〜8の一項に記載の真空太陽熱パネル(1)。
【請求項10】
前記容器(14)はリング形である、請求項1〜9の一項に記載の真空太陽熱パネル(1)。
【請求項11】
前記前面プレート(11)は実質的に平坦である、請求項1〜10の一項に記載の真空太陽熱パネル(1)。
【請求項12】
請求項1〜11の一項に記載の真空太陽熱パネル(1)を製造する方法であって、
太陽放射に対して透明な少なくとも前面プレート(11)と、前記前面プレート(11)の支持構造(12)とを有する、気密外囲器(10)を提供するステップと、
前記気密外囲器(10)内に封入された熱吸収手段を提供するステップと、
前記気密外囲器(10)内部の真空状態を維持するための主ゲッタ手段を提供するステップを含み、
更に、前記前面プレート(11)の内側に反応性物質を堆積して、前記気密外囲器内の圧力が閾値を超えると前記気密外囲器(11)の外部から感知可能な反応を受ける圧力標示スポット(13)を形成するステップを含み、
前記前面プレート(11)の内側に反応性物質を堆積する前記ステップが、
前記前面プレート(11)の内側に隣接する前記支持構造(12)へ所与量の前記反応性物質を含む容器(14)を取付けするステップと、
前記反応性物質が蒸発して前記前面プレート(11)の内面上に堆積して前記圧力標示スポット(13)を形成するように、前記反応性物質を誘導加熱により加熱するステップと、
を更に含む、方法。
【請求項13】
前記反応性物質は元素状バリウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記容器(14)内に配置される元素状バリウムの量は、1mg〜5mgの間である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内圧指示器を備えた真空太陽熱パネル、および関連するその真空太陽熱パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように真空太陽熱パネルは、少なくとも前面プレートが太陽放射に対して透明な気密外囲器を備える。パネルは、真空外囲器内に配置された熱吸収体と、伝熱流体を搬送するパイプとを備える。
【0003】
太陽放射はこのように前面プレートを通って真空外囲器に入り、熱吸収体で収集されて熱に変換される。変換された熱は次にパイプに流入する伝熱流体に伝達される。
【0004】
公知のタイプの真空太陽熱パネルは、例えば同一出願人による国際公開第2010/003653号として公開されたPCT出願に記載されている。
【0005】
この種の太陽熱パネルの特徴である外囲器内部が真空であることが、対流による熱損失を大幅に低減し、装置の高い効率をもたらす。最新の高真空パネルにおいては、対流損失を無視できるほど小さくするために内部圧力が10
−3Torr(1.33×10
−1Pa)未満に保たれる。
【0006】
長時間にわたりそのような高真空を維持するために、化学反応と吸着のいずれか又は両方により残留ガス分子を捕捉することのできるゲッタ材料が外囲器内部に封入される。そのような構成は通常ゲッタポンプとして知られている。
【0007】
しかし、ゲッタポンプが飽和するか、真空外囲器の気密封止が損傷するかのいずれか又は両方により、パネル内の圧力が次第に上昇し、圧力が10
−2Torr(1.33Pa)を超えて効率が急激に劣化することがある。
【0008】
そのような場合、損傷した真空パネルを交換し、熱機器の元の効率を回復するためには、臨界状態を可能な限り速やかに検出することが極めて重要である。しかし、パネルの目視検査では、もともとの高真空状態の部分的損傷の評価には不十分である。実際に、大気圧によって真空外囲器が変化して変形してゆくことを検出するのは非常に困難である。それは一般的にこの現象は圧力差に対して線形的であり、内圧が10Torr(1.33×10
3Pa)を超えて初めて感知しうるものだからである。これはパネル効率が受容限界以下に下がる値よりも3桁大きい値である。
【0009】
真空太陽熱パネルの内部圧力を検出し検証する公知の方法は、パネルそのものに高真空計を取り付けることである。しかし、そのような計器は高価であって、熱発生機器を構成する個々のパネルに計器を取り付けることは商業的には受け容れられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2010/003653号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の根本的な技術課題は、正確かつ費用効率の高い内圧指示器を有する真空太陽熱パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の技術課題に対する解決策は、太陽放射に対して透明な少なくとも前面プレートとその前面プレートの支持構造とを有する気密外囲器と、その気密外囲器内に封入された熱吸収手段と、真空外囲器内を高真空に維持するための主ゲッタ手段と、を備える真空太陽熱パネルであって、前面プレートの内側に堆積された反応性物質からなる圧力標示スポットを更に備えるタイプの真空太陽熱パネルによって提供される。この外囲器内の圧力が閾値を超えると、反応性物質が気密外囲器の外側から感知可能な反応をする。
【0013】
本発明の基本的な考えは、気密外囲器内部の真空状態の劣化を視覚的に検知するために、反応性物質でできたスポットを使用するというものである。
【0014】
有利には、そのような反応性物質は元素状バリウムであってよい。
【0015】
バリウムは真空外囲器に進入したガス分子と急速に反応し、圧力の上昇とともにバリウムスポットの大きさが減少し、最終的には銀色から白色に変化する。こうしてパネルの交換が必要なことを示す。
【0016】
バリウムは真空システムにおいてゲッタとして用いられることがあるが、その元素が本発明においては異なる目的、すなわち所定の閾値を超える内部圧力の上昇を検知することに使用されることに留意されたい。実際に前述したように、本発明による真空太陽熱パネルは、圧力標示スポットとは別に主ゲッタ手段を既に有している。
【0017】
このスポットはゲッタポンプの機能は果たさないので、その寸法を適切に制限してもよく、前面プレート上に反応性物質の大きな堆積物があるとその透明度が著しく下がり、結果としてパネル効率の劣化に繋がるので、このことは極めて重要である。
【0018】
同様の理由で、主ゲッタ手段もフラッシュタイプのものでないゲッタを使用することが望ましい。たとえば、主ゲッタ手段は、公知の非蒸発性のものであることが有利であろう。
【0019】
上記のように、圧力標示スポットはできるだけ小さく、できれば10cm
2以下として、太陽放射を遮蔽しないようにするべきである。
【0020】
同様の理由で、スポットの面積は最大でも前面プレートの全透明面積の1%とすべきである。
【0021】
更に、反応物質の量と圧力標示スポットの大きさとが、スポットの見え方を変化させる圧力の閾値を特定する。圧力標示スポットの面積は有利には、1cm
2〜3cm
2の間に保持され、その一方で反応性物質の全体量は有利には1〜5mgの間に保持されるべきである。そのような特性を持つバリウムのスポットは、内圧が臨界値の約10
−2Torr(1.33Pa)に達すると、大きさと色の一方又は両方が変化する。
【0022】
本発明による真空太陽熱パネルは有利には、前面プレートの内側に隣接して、支持構造に堅固に取り付けられた反応性物質容器を備えている。この容器は製造段階で使用されて、反応性物質を昇華させる前に前もって含む様に処理される。
【0023】
好ましくはリング形をした容器が、前面プレートの内側から1〜3mmの間の距離に配置されてもよい。
【0024】
上記の容器は、所定内容量の反応性物質を有する、市販のフラッシュ式ゲッタであってもよい。
【0025】
支持構造は、背面プレートと、その背面プレートを前面プレートに結合する複数の垂直材とを備え、上記の容器はこの垂直材の1つに堅固に取り付けられていてもよい。
【0026】
好ましくは、真空太陽熱パネルの前面プレートは、実質的に平坦である。
【0027】
上記の技術課題はまた、太陽放射に対して透明な少なくとも前面プレートと前面プレートの支持構造とを有する気密外囲器を提供するステップと、その気密外囲器内に封入された熱吸収手段を提供するステップと、真空外囲器内部の真空状態を維持するための主ゲッタ手段を提供するステップと、その前面プレートの内側に反応性物質を堆積して外囲器内の圧力が閾値を超えると気密外囲器の外部から感知可能な反応をする圧力標示スポットを形成するステップとを有する空太陽熱パネルの製造方法によって解決される。
【0028】
有利には、前面プレートの内側に反応性物質を堆積するステップは更に、前面プレートの内側に隣接して反応性物質を入れた容器を支持構造へ取り付けるステップと、物質が蒸発して前面プレートの内面上に堆積して圧力標示スポットを形成するように反応性物質を誘導加熱により加熱するステップ(フラッシュステップ)、を含む。
【0029】
元素状バリウムを使用する場合、フラッシュ前に容器内に配置される物質の量は、好ましくは1mg〜5mgの間である。
【0030】
更なる特性および利点は、非制限的な例示を目的とした添付の図面を参照して、以下に述べる本発明の好適かつ非制限的な実施形態の詳細な説明に依り、より明確となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による真空太陽熱パネルの模式図である。
【
図2】
図1の真空太陽熱パネルの詳細を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面、特に
図1には、本発明による真空太陽熱パネルが示されており、全体が符号1で表されている。
【0033】
真空太陽熱パネル1は気密外囲器10を備え、この外囲器は、太陽放射に対して透明な前面プレート11と、前面プレート11を支持するための支持構造12とを備えている。
【0034】
支持構造12は、実質的に矩形の背面プレート12aと、その背面プレート12aの外縁から立ち上がっている側壁12cとを備えている。実質的に平坦な板ガラスである前面プレート11が、背面プレート12aと側壁12cで形成される箱状の構造に蓋をする。支持構造12が更に、背面プレート12aを前面プレートに接続する複数の垂直材12bを備えている。この垂直材12bの主な機能は、大気圧を受ける板ガラスを支えることである。
【0035】
周知の種類の熱吸収手段が気密外囲器内部に封入され、この吸収手段は気密外囲器10を横断するパイプに熱的に接続されている。簡単とするために熱吸収手段とパイプは図からは省略されている。
【0036】
非蒸発性のゲッタが、好ましくは熱吸収手段との良好な熱接触をした錠剤の形で、気密外囲器内に供給される。非蒸発性のゲッタ手段は、簡略化のために図では省略されている。非蒸発性のゲッタは、気密外囲器10内で作用する主たるゲッタ手段である。
【0037】
非蒸発性のゲッタはフラッシュゲッタの好適な代替品として選択されたが、それは、フラッシュゲッタは前面プレート11を構成する窓板ガラスの透明度を下げてしまい、それによって真空太陽熱パネル1の効率を低下させるからである。
【0038】
真空太陽熱パネル1は、前面プレート11上に提供された圧力標示スポット13を備えている。
【0039】
圧力標示スポット13は元素状バリウムの薄膜で構成され、次に述べるフラッシュ工程によって前面プレート11の内側の上に堆積されている。圧力標示スポット13は、ほぼ円形をしており、その面積は1cm
2〜3cm
2の間である。前面プレートの全透明面が1m
2であるとすると、圧力標示スポット13はその面の1%未満しか占有しない。
【0040】
圧力標示スポット13は気密外囲器内に高真空が維持されている限り、銀色をしているが、内圧が10
−2Torr(1.33Pa)より高くなるとすぐに寸法が減少して色が白くなり、問題が生じたことを視覚的に明示する。
【0041】
圧力標示スポット13は、支持構造12の垂直材12bの1つに隣接して堆積される。リング形の容器14が垂直材12bに堅固に取り付けられる。容器14は、圧力標示スポット13が堆積される位置の直下の、前面プレート11の内側から1mm〜3mmの間の距離に配置され、前面プレート11に向かって開放されている。
【0042】
そのような容器が、下に述べるように真空太陽熱パネル1の製造のフラッシュ工程において利用される。
【0043】
容器14に、以下に述べるフラッシュ工程を促進する周知の種類の他の化合物との組み合わせで、好適な量(1mg〜3mg)の元素状バリウムが充填される。気密外囲器10が真空排気され密封されると、誘導加熱によって容器14の温度が上昇させられて発熱反応が起きる。次に元素状バリウムが前面プレート11の内面上に蒸発し、圧力標示スポット13となる薄膜を形成する。
【0044】
明らかなように、以上述べた知見は、当業者が考え得る特定の要求に合致させることを目的とした多くの変更及び変形を受けることが可能であり、これらはすべて以下の特許請求の範囲で定義される本発明の保護範囲内にある。