特許第6055825号(P6055825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055825
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】膝関節形成用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   A61B17/56
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-521804(P2014-521804)
(86)(22)【出願日】2012年7月19日
(65)【公表番号】特表2014-524815(P2014-524815A)
(43)【公表日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】US2012047479
(87)【国際公開番号】WO2013013094
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】61/509,355
(32)【優先日】2011年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502427840
【氏名又は名称】ジンマー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】ジョディ エル.クレイプール
(72)【発明者】
【氏名】ジョシン サハデバン
(72)【発明者】
【氏名】シッディ ビナヤク
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン イー.スタンプ
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2001/085038(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0256527(US,A1)
【文献】 特開2004−237064(JP,A)
【文献】 特開平8−229058(JP,A)
【文献】 特開平11−113940(JP,A)
【文献】 特表2001−517135(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/036694(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0293868(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/023399(WO,A1)
【文献】 特表2010−540123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
A61B 17/56 ― 17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脛骨及び大腿骨を含む膝関節において使用される膝関節形成用器具であって、
脛骨に当接して載置されるべく構成された脛骨用構成要素と、大腿骨に当接して載置されるべく構成された大腿骨用構成要素とを含む張設工具であって、上記大腿骨用構成要素は上記脛骨用構成要素に対して移動可能に連結されて、脛骨及び大腿骨を離間させることにより膝関節を張設下に置くという張設工具と、
上記張設工具に対して着脱自在に連結された第1測定器であって、大腿骨の一部に接触することで該大腿骨に対して切断案内器を位置決めする少なくともひとつの第1参照インディケータを含むという第1測定器と、
上記第1測定器とは異なるタイプであると共に上記張設工具に対して着脱自在に連結された第2測定器であって、大腿骨の一部に接触することで該大腿骨に対して切断案内器を位置決めする少なくともひとつの第2参照インディケータを含むという第2測定器と、を備え
前記第1測定器は、該第1測定器が前記張設工具に対して連結されたときに、前記大腿骨用構成要素と共に前記脛骨用構成要素に対して回動又は平行移動する、
膝関節形成用器具。
【請求項2】
前記第1測定器は、
前記張設工具の前記脛骨用構成要素に対し、平行移動及び回動する測定式切除型測定器と、
上記張設工具の上記脛骨用構成要素に対し、回動せずに、平行移動する軟部組織平衡化型測定器と、
上記張設工具の上記脛骨用構成要素に対し、空間内で固定される純粋間隔型測定器と、の内のひとつの測定器である、請求項1記載の器具。
【請求項3】
前記張設工具の前記大腿骨用構成要素は、該張設工具の前記脛骨用構成要素に対して平行移動及び回動する、請求項1又は2に記載の器具。
【請求項4】
前記第1測定器は、前記張設工具の第1箇所に対して着脱自在に連結され、且つ、前記第2測定器は、上記第1箇所とは異なる上記張設工具の第2箇所に対して着脱自在に連結される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の器具。
【請求項5】
前記第1測定器は、
大腿骨の後側表面に接触すべく構成された第一後側参照構成要素と、
大腿骨の前側表面に接触すべく構成された第一前側参照構成要素であって、大腿骨の関節丘に対して移動すべく上記第一後側参照構成要素に対して移動可能に連結された本体と、該本体から横方向に延在して大腿骨の前側皮質に接触する延長部とを含むという第一前側参照構成要素と、
上記後側参照構成要素と上記第一前側参照構成要素との間の第一寸法測定用目盛とを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の器具。
【請求項6】
前記第2測定器が前記張設工具に対して連結されたときに前記大腿骨用構成要素が該第2測定器と前記脛骨用構成要素とに対して回動する如く、上記第2測定器が上記張設工具に対して連結されたときに、該第2測定器は上記脛骨用構成要素に対して回動可能に固定される、請求項1〜のいずれか一項に記載の器具。
【請求項7】
前記第2測定器が前記張設工具に対して連結されたとき、該第2測定器は前記大腿骨用構成要素と共に前記脛骨用構成要素に対して平行移動する、請求項1〜のいずれか一項に記載の器具。
【請求項8】
前記第2測定器は、
基部構成要素と、
大腿骨の前側表面に接触すべく構成された第二前側参照構成要素であって、大腿骨の関節丘に対して移動すべく上記基部構成要素に対して移動可能に連結された本体と、該本体から横方向に延在して大腿骨の前側皮質に接触する延長部とを含むという第二前側参照構成要素と、
上記基部構成要素と上記第二前側参照構成要素との間の第二寸法測定用目盛とを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の器具。
【請求項9】
前記第1測定器及び第2測定器の各々とは異なる共に前記張設工具に対して着脱自在に連結される第3測定器であって、大腿骨の一部に接触することで該大腿骨に対して切断案内器を位置決めする少なくともひとつの第3参照インディケータを含むという第3測定器を更に備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の器具。
【請求項10】
前記第3測定器が前記張設工具に対して連結されたときに前記大腿骨用構成要素が該第3測定器と前記脛骨用構成要素とに対して回動及び平行移動する如く、上記第3測定器が上記張設工具に対して連結されたときに、該第3測定器は上記脛骨用構成要素に対して空間内で固定される、請求項記載の器具。
【請求項11】
前記第3測定器は、該第3測定器が前側参照構成要素を欠如する如く、水平に延在せずに、前記脛骨用構成要素から前記大腿骨用構成要素に亙り垂直に延在し、該第3測定器は、該第3測定器が前記張設工具に対して連結されたときに上記大腿骨用構成要素上で屈曲状態及び伸展状態において大腿骨を収容する、請求項又は10に記載の器具。
【請求項12】
当該器具は、当該切断案内器を大腿骨上に支持すべく寸法設定かつ離間された複数の支持体を含む切断案内器を更に備え、
前記第1測定器は複数の第1参照インディケータを含むと共に、前記第2測定器は複数の第2参照インディケータを含み、且つ、
上記第1測定器の上記複数の第1参照インディケータ及び上記第2測定器の上記複数の第2参照インディケータの少なくとも一方は、大腿骨に対して上記切断案内器の複数の支持体を位置決めすべく寸法設定かつ離間される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の器具。
【請求項13】
前記張設工具は、前記脛骨用構成要素に対する前記大腿骨用構成要素の平行移動距離を測定する距離測定手段と、前記脛骨用構成要素に対する前記大腿骨用構成要素の回動角を測定する角度測定手段とを更に含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
本出願は、2011年7月19日に出願された米国仮特許出願第61/509,355号の優先権を主張するものであり、その開示内容は言及したことによりその全体が本明細書中に明示的に援用される。
本開示内容は、膝関節形成術に関する。更に詳細には、本開示内容は、膝関節形成処置の間に使用される器具、及び、それを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全膝関節形成(TKA)処置においては、患者の大腿骨遠位部が切除され且つ人工大腿骨インプラントにより置き換えられると共に、患者の脛骨近位部が切除され且つ人工脛骨インプラントにより置き換えられる。上記人工大腿骨インプラントは上記人工脛骨インプラントと咬合することで、関節運動を復元する。
【0003】
TKA処置の後においては、多くの要因が関節運動に影響する。関節運動に対しては、人工インプラントの各々のサイズ及び形状が影響を与える。これに加え、関節運動に対しては、対応する骨組織切除の設定箇所及び配向により決定されるという各人工インプラントの設定箇所及び配向が影響を与える。関節運動に対しては、周囲の軟部組織の張り又は緩みもまた、影響を与える。たとえば、周囲の側副靭帯が張り過ぎているなら、関節運動は制限され得るが、周囲の側副靭帯が弛緩し過ぎているなら、不適切な大腿骨回動又は大腿骨離昇が生じ得る。同様に、関節運動に対しては、関節の回りの軟部組織のバランスが影響を与える。
【0004】
習用的に、TKA用の器具及び処置に対しては、種々の手術理念が影響を与えてきた。たとえば、第1の「測定式切除(measured resection)」の理念は、生来の関節軸心及び軟部組織を保存し乍ら、骨組織切除を重視する。第2の「軟部組織平衡化(soft tissue balancing)」の理念は、骨組織を保存し乍ら、軟部組織の改変を重視している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,156,853号
【発明の概要】
【0006】
本発明は、代表的なTKA器具及び処置を提供する。上記器具は、患者の脛骨及び大腿骨を伸展状態及び屈曲状態の両方において離間させて、膝関節を張設下に置くと共に、それらの骨間の間隔及び角度を測定する。上記器具は種々のモジュール式付属具を含む。該付属具は、TKA処置の全体に亙り使用の融通性を提供する。たとえば、上記器具は、患者の膝関節を切除し又は別様に処理する前に生来の膝関節を評価してTKA処置を計画すべく、ならびに、患者の膝関節を切除し又は別様に処理した後にTKA処置を評価及び/又は更に計画すべく、使用され得る。各付属具はまた、個々の各ユーザが、自身の手術理念及び特定の患者の要件に対処する付属具を選択することも許容する。各付属具はまた、ユーザが、一方の付属具の可能的な帰結を別の付属具の可能的な帰結と比較することなどにより、単一回の手術処置に対して複数の手術理念を取入れることも許容する。
【0007】
本発明の実施例に依れば、患者の膝関節において使用される膝関節形成用器具が提供される。膝関節は、脛骨及び大腿骨を含む。上記器具は、張設工具、第1測定器、及び、該第1測定器とは異なる第2測定器を含み得る。上記張設工具は、脛骨に当接して載置されるべく構成された脛骨用構成要素と、大腿骨に当接して載置されるべく構成された大腿骨用構成要素とを含み、上記大腿骨用構成要素は上記脛骨用構成要素に対して移動可能に連結されて、脛骨及び大腿骨を離間させることにより患者の膝関節を張設下に置く。上記第1測定器は上記張設工具に対して着脱自在に連結され、該第1測定器は、大腿骨を参照することで該大腿骨に対して切断案内器を位置決めする少なくともひとつの第1参照インディケータを含む。上記第2測定器は、上記第1測定器とは異なると共に、上記張設工具に対して着脱自在に連結され、該第2測定器は、大腿骨を参照することで該大腿骨に対して切断案内器を位置決めする少なくともひとつの第2参照インディケータを含む。
【0008】
本発明の別実施例に依れば、患者の膝関節において使用される膝関節形成用器具が提供される。膝関節は、脛骨及び大腿骨を含む。上記器具は、張設工具、切断案内器、及び、測定器を含み得る。上記張設工具は、脛骨に当接して載置されるべく構成された脛骨用構成要素と、大腿骨に当接して載置されるべく構成された大腿骨用構成要素とを含み、上記大腿骨用構成要素は上記脛骨用構成要素に対して移動可能に連結されて、脛骨及び大腿骨を離間させることにより患者の膝関節を張設下に置く。上記切断案内器は、上記張設工具に対して着脱自在に連結される。上記測定器は、上記張設工具に対して着脱自在に連結されて、上記切断案内器を大腿骨に対して位置決めする。
【0009】
本発明の更なる別実施例に依れば、患者の膝関節に対する膝関節形成方法が提供される。膝関節は、脛骨及び大腿骨を含む。該方法は、張設工具を用い、脛骨及び大腿骨を離間させることにより患者の膝関節を張設下に置く段階と、第1測定器は第2測定器とは異なるという第1測定器及び第2測定器の内の一方を選択する段階と、選択された上記測定器を上記張設工具に対して連結する段階と、選択された上記測定器を用いて、大腿骨に対して切断案内器を位置決めする段階とを含み得る。
【0010】
本発明の実施例の以下の説明を添付図面と併せて参照することにより、本開示内容の上述の及び他の特徴及び利点、及び、それらを達成する手法は更に明らかとなり、且つ、本発明自体が更に良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、基部と、下側の脛骨用構成要素と、上側の大腿骨用構成要素と、中間アームとを含む、本開示内容の代表的な張設器具の斜視図である。
図2図2は、図1の器具の頂部平面図である。
図3A図3Aは、図1の器具の前面図である。
図3B図3Bは、図3Aと同様であるが、上記器具の基部、下側の脛骨用構成要素及び上側の大腿骨用構成要素は取り外されて中間アームのシャフトを示す前面図である。
図4A図4Aは、図1の器具の後面図であり、該器具に結合された上側の大腿骨用構成要素を示している。
図4B図4Bは、図4Aと同様であるが、器具からの取り外しのために回動された上側の大腿骨用構成要素を示す後面図である。
図5A図5Aは、第1の弧状の大腿骨用プレートを備えた図1の器具の斜視図である。
図5B図5Bは、第2の平坦な大腿骨用プレートを備えた図1の器具の斜視図である。
図6図6は、第1の測定式切除型の測定器を備えた図1の器具の斜視図である。
図7図7は、第2の軟部組織平衡化型の測定器を備えた図1の器具の斜視図である。
図8図8は、第3の純粋間隔型の測定器を備えた図1の器具の斜視図である。
図9図9は、大腿骨切断案内器を備えた図1の器具の斜視図である。
図10A図10Aは、伸展状態に在る膝関節の前方正面図である。
図10B図10Bは、屈曲状態に在る膝関節の前方正面図である。
図11A図11Aは、伸展状態に在る膝関節内に位置された、図5Bの第2の平坦な大腿骨用プレートを含む器具の斜視図である。
図11B図11Bは、屈曲状態に在る膝関節内に位置された、図5Bの第2の平坦な大腿骨用プレートを含む器具の斜視図である。
図12図12は、屈曲状態に在る膝関節内に位置された、図6の第1の測定式切除型の測定器を含む器具の斜視図である。
図13図13は、屈曲状態に在る膝関節内に位置された、図7の第2の軟部組織平衡化型の測定器を含む器具の斜視図である。
図14図14は、屈曲状態に在る膝関節内に位置された、図8の第3の純粋間隔型の測定器を含む器具の斜視図である。
図15図15は、屈曲状態に在る膝関節内に位置された、図9の大腿骨切断案内器を含む器具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
幾つかの図を通し、対応する参照符号は対応する部材を表す。本明細書中に示された例示的内容は、本発明の好適実施例を例示するものであると共に、斯かる例示的内容は、如何なる意味でも本発明の有効範囲を制限すると解釈されるべきでない。
【0013】
図1及び図2を参照すると、患者の脛骨及び大腿骨を離間させると共に、それらの間の関節間隔及び関節角度を測定するための張設器具10が提供される。器具10は、基部12と、下側の脛骨用パドルすなわち構成要素14と、上側の大腿骨用パドルすなわち構成要素16と、脛骨用構成要素14を大腿骨用構成要素16に対して連結する中間アーム18とを含む。図2に示された如く、脛骨用構成要素14及び大腿骨用構成要素16は、基部12から例示的にオフセットされることで、患者の膝蓋骨に対処している。器具10に関する付加的な情報は、言及したことによりその開示内容全体が本明細書中に明示的に援用される特許文献1中に見出され得る。
【0014】
大腿骨用構成要素16は、アーム18を介して脛骨用構成要素14に対し、図3Aに示された如く矢印V、V’に沿い垂直に平行移動すべく構成される。器具10は、矢印Vに沿い大腿骨用構成要素16を脛骨用構成要素14から離間して移動させることにより開かれ得ると共に、該器具10は、矢印V’に沿い大腿骨用構成要素16を脛骨用構成要素14に向けて移動させることにより閉じられ得る。図3Aに示された如く、アーム18は、基部12を貫通して垂直に平行移動するシャフト20を含む。大腿骨用構成要素16は、基部12に対するアーム18との一体的な移動のために、該アームに対して連結される。シャフト20は基部12に対してキー止めされることで、基部12における該シャフト20の回転が阻止され乍ら、基部12を貫通する該シャフト20の垂直平行移動が許容され得る。
【0015】
脛骨用構成要素14に対して大腿骨用構成要素16を選択的に平行移動させる駆動手段が配備される。図3Bの例示的な駆動手段は、基部12内におけるピニオン・ギヤ22であって、シャフト20上の線形ラック24と協働するというピニオン・ギヤ22を含んでいる。使用に際し、ギヤ22を旋回させるべく六角刑の駆動器もしくは別の適切な工具が使用され、且つ、ギヤ22はラック24と噛合することで、ラック24を矢印V、V’に沿い垂直に駆動する。器具10を矢印Vに沿い開くとき、上記工具は、所定の張力であって、器具10の更なる開きに対する患者の膝関節からの軟部組織の抵抗をユーザが検出したときに生じ得るという所定の張力に患者の膝関節が到達するまで、回転され得る。一定の実施例において、器具10は開かれることで、患者の膝関節に対して約40ポンド、約60ポンド、約80ポンド以上の負荷を掛け得るが、該負荷は、医師の選択肢、患者の周囲軟部組織、及び、他の要因に依存して変更され得る。上記工具は、該工具の所定回転トルクが達成されるまで、器具10を開く上でトルク制限され得、その場合、該工具の上記所定回転トルクは、患者の膝関節の所定張力に対応すべく選択され得ることも本開示内容の有効範囲内である。
【0016】
脛骨用構成要素14に対して所定位置に大腿骨用構成要素16を保持すべく、繋止手段も配備される。図3Bの例示的な繋止手段は、アクチュエータ端部42と爪端部44とを有するスプリング付勢式レバー40を含んでいる。例示的な繋止手段はまた、レバー40の爪端部44と相互作用するシャフト20上の線形ラチェット46も含んでいる。図3Bに示された如く、ラチェット46及びラック24は夫々、シャフト20の各側に配置される。上記繋止手段は器具10が自由に開かれることを許容し得るが、該繋止手段は、レバー40がユーザにより操作されるまで、器具10が閉じられることを阻止し得る。図3Bの例示的実施例において、爪44は、器具10を開くときには矢印Vに沿うラチェット46の垂直な上方移動を許容するが、器具10を閉じるときには矢印V’に沿うラチェット46の垂直な下方移動に抗する。レバー40のアクチュエータ端部42がユーザにより内方に押圧されたとき、レバー40の爪端部44はラチェット46から離脱することにより、器具10を閉じるべく矢印V’に沿うラチェット46の垂直な下方移動を許容する。上記にて援用された特許文献1には、別の適切なラチェット機構が記述されている。上記繋止手段はまた、たとえば、デテント機構、又は、別の適切な繋止機構を含み得る。
【0017】
矢印V、V’に沿う脛骨用構成要素14と大腿骨用構成要素16との間の距離もしくは間隔Gを測定すべく、距離測定手段が配備される。例示的な距離測定手段は、アーム18上にて対応する各値を有する距離目盛26と、基部12上のポインタ28とを含んでいる。アーム18のシャフト20が矢印V、V’に沿い基部12に対して平行移動するにつれ、距離目盛26は基部12上のポインタ28に対して移動する。間隔Gは、ポインタ28の頂端部と整列された距離目盛26からの値を読取ることにより決定され得る。
【0018】
大腿骨用構成要素16が脛骨用構成要素14に対して垂直に平行移動することに加え、該大腿骨用構成要素16は、脛骨用構成要素14に対して回動する様にも構成される。更に詳細には、大腿骨用構成要素16が矢印V、V’に沿いアーム18を介して脛骨用構成要素14に対して垂直に平行移動することに加え、該大腿骨用構成要素16は、軸心Aの回りにおいてアーム18及び脛骨用構成要素14に対して回動する様にも構成される。図2に示された如く、回転軸心Aに沿いアーム18から大腿骨用構成要素16内へと、支柱30が延在する。大腿骨用構成要素16は、該支柱30及び回転軸心Aの回りにて回動すべく構成される。本開示内容の好適実施例に依れば、図1に示された如く、大腿骨用構成要素16の回転軸心Aは、該大腿骨用構成要素16の平行移動軸心V、V’に対して直交している。
【0019】
回転軸心Aの回りにおける脛骨用構成要素14と大腿骨用構成要素16との間の角度αを測定すべく、角度測定手段が配備される。図1の例示的な角度測定手段は、対応する各値を有するアーム18上の目盛プレート32を含み、その場合に該目盛プレート32は弧状スロット34を画成する。例示的な角度測定手段はまた、大腿骨用構成要素16上のポインタ36も含む。大腿骨用構成要素16が軸心Aの回りでアーム18に対して回動するにつれ、ポインタ36は目盛プレート32の弧状スロット34に沿いもしくはそれを貫通して移動する。角度αは、ポインタ36の近傍となる目盛プレート32からの値を読取ることにより決定され得る。大腿骨用構成要素16が脛骨用構成要素14に対して平行に配向されたとき、ポインタ36は、0度の角度αに対応すべくスロット34において中心に位置され得る。他方、大腿骨用構成要素16がこの平行配向から逸脱するとき、ポインタ36はスロット34に沿い、0度より大きい正の角度α、又は、0度より小さい負の角度αへと移動し得る。以下において更に論じられる如く、角度αは、患者の膝関節の内反/外反角度、及び/又は、患者の膝関節の内方/外方回動を示し得る。
【0020】
器具10は、一群のモジュール式付属具を含み、その各々が以下において更に記述される。器具10及び各付属具は、ひとつのキットにおいて併せて配備され得る。この様にして、医師もしくは別のユーザは、上記キットから所望の付属具を選択し、その第1の付属具を器具10に対して取付け得る。手術処置が進展するにつれ、ユーザは、上記キットから第2の付属具を選択し、該第2付属具を器具10に対して取付け得る。一定の実施例において、上記第1付属具は、上記第2付属具が器具10に対して取付けられるときに、所定位置に残置され得る。他の実施例において、上記第1付属具は、器具10から取り外されて、第2付属具に対処しても良い。以下に例証される如く、器具10上に所望のモジュール式付属具を選択的に受容かつ保持すべく、種々の異なる連結機構(たとえば、蟻継手など)及び繋止機構(たとえば、ボール・デテント)が使用され得る。
【0021】
上述の大腿骨用構成要素16は、器具10に対して着脱自在に連結される該器具10の第1のモジュール式付属具と見做され得る。上記で論じられた如く、大腿骨用構成要素16は、アーム18の支柱30の回りを回動すべく構成される。図4Aに示された如く、支柱30上には、該支柱30上に大腿骨用構成要素16を保持するタブもしくはキー50が配備され得る。大腿骨用構成要素16にはキー溝52が配備されることで、図4Bに示された如く、キー溝52がキー50と整列すべく回動されたときに、大腿骨用構成要素16の選択的な取外し及び交換が許容され得る。本開示内容の好適実施例に依れば、キー50及びキー溝52は、(たとえば0〜24°の)大腿骨用構成要素16の通常的な回動の間においてキー50はキー溝52からオフセットされたままとされて、使用の間における大腿骨用構成要素16の不都合な離脱に抗する如く、位置決めされる。大腿骨用構成要素16の取外しが所望されたとき、該大腿骨用構成要素16は、その通常的な動作範囲(たとえば、25°以上)を越えて手動的に回動されることで、キー溝52をキー50に整列させ得る。
【0022】
次に図5を参照すると、器具10の第2のモジュール式付属具は、大腿骨用プレート54として提供される。該大腿骨用プレート54は、咬合表面56を含んでいる。図5Aの例示的実施例において、大腿骨用プレート54の咬合表面56は凹状領域58を含むことで、患者の大腿骨の凸状の関節丘に対する接触及び/又は咬合を促進する。図5Bには、別の大腿骨用プレート54’が示される。図5Bの大腿骨用プレート54’は、該大腿骨用プレート54’が概略的に平坦な咬合表面56’を有することで、患者の大腿骨の平坦な切除表面との接触及び/又は咬合を促進することを除き、図5Aの大腿骨用プレート54と概略的に同様であり、同様の参照番号は同様の要素を表している。大腿骨用プレート54、54’は、スペーサとして使用されるべく、異なる形状及びサイズで配備され得る。
【0023】
大腿骨用プレート54は、該大腿骨用プレート54が、脛骨用構成要素14に対し、大腿骨用構成要素16と共に垂直に平行移動し且つ回動し得る如く、器具10の大腿骨用構成要素16に対して着脱自在に連結され得る。図5Aにおいて、大腿骨用プレート54は舌部60及び対応する溝62を介して大腿骨用構成要素16に対して取付けられ、その場合、大腿骨用プレート54上の各舌部60は、大腿骨用構成要素16における対応溝62を貫通して摺動すべく寸法設定される。大腿骨用プレート54と大腿骨用構成要素16との間には、他の連結機構も使用され得る。
【0024】
大腿骨用プレート54が大腿骨用構成要素16上の所定位置へと摺動するとき、該大腿骨用プレート54は、選択的に所定位置に保持もしくは繋止され得る。図5Aにおいて、大腿骨用プレート54は、該大腿骨用プレート54における各陥没部もしくは凹所64を、大腿骨用構成要素16上の対応繋止部66と整列させることにより、大腿骨用構成要素16上へと繋止され得る。各繋止部66は、たとえば、ボール・デテント、スプリング・ピン、又は、他の適切な繋止機構の形態であり得る。大腿骨用プレート54の取外しが所望されたとき、各繋止部66は、大腿骨用プレート54の凹所64から解除かつ解放され得る。本開示内容の好適実施例に依れば、各繋止部66は、連結機構の舌部60及び溝62に直交する方向に作用する。
【0025】
図6図8に関して以下において更に論じられる如く、器具10の付属具として、種々の測定器(sizer)が配備される。本開示内容の代表的な測定器は、全てのことを単一のデバイスを以て、患者の大腿骨を寸法測定し、適切に寸法設定された大腿骨切断案内器及び適切に寸法設定された人工大腿骨インプラントを特定し、且つ、選択された大腿骨切断案内器及び選択された大腿骨インプラントを患者の大腿骨に対して位置決めすべく構成される。上記各測定器は、たとえば、患者の大腿骨を寸法測定するひとつのデバイスと、大腿骨切断案内器を位置決めする別の個別的なデバイスとを含み得ることも本開示内容の有効範囲内である。
【0026】
次に図6を参照すると、器具10の第3のモジュール式付属具は、測定式切除型(MR型:measured resection type)測定器70として提供される。例示的なMR型測定器70は、後側脚部72を備えた後側参照構成要素71と、前側プローブもしくはスタイラス74を備えた調節可能な前側参照構成要素73とを含んでいる。前側参照構成要素73はまた、例示的には孔75である複数の遠位参照インディケータも含んでいる。各孔75は、各群が、0°、3°、及び、5°の内方/外方回動の如き、所望の角度の内方/外方回動に対応するという複数の群にて配置され得る。別実施例においては、MR型測定器70には骨組織係合ピンが配備され得、該ピンは、(たとえば各孔75間で)摺動することで、所望角度の内方/外方回動を選択し得る。
【0027】
前側参照構成要素73は、後側参照構成要素71に対して垂直に平行移動すべく構成される。結果として、前側参照構成要素73の前側プローブ74及び各遠位参照孔75は、後側参照構成要素71の後側脚部72に対し、垂直に平行移動する。調節可能な前側参照構成要素73と、後側参照構成要素71との間には、前側/後側(A/P)寸法測定用目盛76が配備され得る。更に詳細には、A/P寸法測定用目盛76は、調節可能な前側参照構成要素73の前側プローブ74と、後側参照構成要素71の後側脚部72との間に配備され得る。一定の実施例において、この測定値は、前側プローブ74と後側脚部72との間の離間距離に対応する構成要素サイズ(たとえば、サイズ12)である。他の実施例において、この測定値は、前側プローブ74と後側脚部72との間の垂直距離(たとえば60ミリメートル)である。A/P寸法測定用目盛76により伝えられる測定値は、前側プローブ74が後側脚部72から離間して移動するにつれて増大し、このことはまた、前側プローブ74と共に、各遠位参照孔75が後側脚部72から離間移動したことをユーザに伝える。以下において更に論じられる如く、垂直に移動することに加え、前側プローブ74はまた、後側参照構成要素71及び前側参照構成要素73に対して水平に移動することで、患者の大腿骨を参照すべく構成される。
【0028】
MR型測定器70は、該MR型測定器70が大腿骨用構成要素16と共に、脛骨用構成要素14に対して垂直に平行移動し且つ回動し得る如く、器具10の大腿骨用構成要素16に対して着脱自在に連結され得る。結果として、MR型測定器70における各遠位参照孔75もまた、脛骨用構成要素14に対して垂直に平行移動し且つ回動し得る。本開示内容の好適実施例に依れば、MR型測定器70は、上述の大腿骨用プレート54(図5A)と同一様式で、大腿骨用構成要素16上に取付けられ且つ選択的に繋止される。たとえば、MR型測定器70は、大腿骨用構成要素16の溝62内に受容される大腿骨用プレート54の舌部60と類似した舌部77を含み得る。同様に、MR型測定器70は、大腿骨用構成要素16の繋止部66を受容するための大腿骨用プレート54の凹所64と類似した(不図示の)凹所を含み得る。MR型測定器70と大腿骨用構成要素16との間には、他の連結機構及び繋止機構も使用され得る。
【0029】
次に図7を参照すると、器具10の第4のモジュール式付属具は、軟部組織平衡化型(STB型:soft tissue balancing type)測定器80として提供される。該STB型測定器80は、基部構成要素81と、前側プローブもしくはスタイラス84を備えた調節可能な前側参照構成要素83とを含む。前側参照構成要素83はまた、例示的には孔85である複数の遠位参照インディケータも含んでいる。
【0030】
前側参照構成要素83は、基部構成要素81に対して垂直に平行移動すべく構成される。結果として、前側参照構成要素83の前側プローブ84及び各遠位参照孔85もまた、基部構成要素81に対して垂直に平行移動する。調節可能な前側参照構成要素83と基部構成要素81との間には、前側/後側(A/P)寸法測定用目盛86が配備され得る。更に詳細には、A/P寸法測定用目盛86は、調節可能な前側参照構成要素83の前側プローブ84と、基部構成要素81との間に配備されることで、前側皮質と後側関節丘との間のA/P測定値を提供し得る。一定の実施例において、この測定値は、前側参照構成要素83の前側プローブ84と、基部構成要素81との間の離間距離に対応する構成要素サイズ(たとえば、サイズ12)である。他の実施例において、この測定値は、前側参照構成要素83の前側プローブ84と、基部構成要素81との間の垂直距離(たとえば60ミリメートル)である。A/P寸法測定用目盛86により伝えられる測定値は、前側プローブ84が基部構成要素81から離間して移動するにつれて増大し、このことはまた、前側プローブ84と共に、各遠位参照孔85が基部構成要素81から離間移動したことをユーザに伝える。以下において更に論じられる如く、垂直に移動することに加え、前側プローブ84はまた、基部構成要素81及び前側参照構成要素83に対して水平に移動することで、患者の大腿骨を参照すべく構成される。
【0031】
図7の例示的なSTB型測定器80は、各遠位参照孔85が前側プローブ84と共に基部構成要素81に対して垂直に平行移動するという前側参照測定器である。各遠位参照孔85が基部構成要素81に対して垂直方向に固定されると共に、前側プローブ84は各遠位参照孔85に対して垂直に平行移動することで、後側参照測定器を実現することも、本開示内容の有効範囲内である。
【0032】
STB型測定器80は、該STB型測定器80が、脛骨用構成要素14に対して回転的には固定され乍ら、該脛骨用構成要素14に対して垂直に平行移動し得る如く、器具10のアーム18に対して着脱自在に連結され得る。故に、脛骨用構成要素14に対して垂直に平行移動すると共に回動もするという上述のMR型測定器70(図6)とは異なり、STB型測定器80は、脛骨用構成要素14に対して回動せずに、該脛骨用構成要素14に対して垂直に平行移動し得る。図7の例示的実施例において、STB型測定器80は、舌部87と、対応する蟻継ぎ溝88とを介してアーム18に対して取付けられ、その場合、アーム18上の舌部87は、STB型測定器80における対応溝88内に摺動すべく寸法設定される。STB型測定器80とアーム18との間には、他の連結機構も使用され得る。
【0033】
STB型測定器80がアーム18上の所定位置へと摺動するとき、該STB型測定器80は、所定位置において選択的に保持もしくは繋止され得る。図7の例示的実施例において、STB型測定器80は、該STB型測定器80における(不図示の)各凹所を、アーム18における対応繋止部89と整列させることにより、アーム18上に繋止され得る。各繋止部89は、たとえば、ボール・デテント、スプリング・ピン、又は、他の適切な繋止機構の形態であり得る。STB型測定器80の取外しが所望されたとき、各繋止部89は、STB型測定器80の凹所から解除かつ解放され得る。本開示内容の好適実施例に依れば、各繋止部89は、連結機構の舌部87及び溝88に直交する方向に作用する。
【0034】
次に図8を参照すると、器具10の第5のモジュール式付属具は、純粋間隔型(PG型:pure gap type)測定器90として提供される。PG型測定器90は、例示的には孔95である複数の遠位参照インディケータを含む。対応する各孔95は、水平列96で配置される。一定の実施例において、各列96は構成要素サイズに対応し、脛骨用構成要素14に最も近い列96は、比較的に小さい構成要素サイズ(たとえばサイズ10)に対応し、且つ、脛骨用構成要素14から最も遠い列96は、比較的に大きい構成要素サイズ(たとえばサイズ20)に対応する。他の実施例において、各列96は、脛骨用構成要素14からの垂直距離に対応し、脛骨用構成要素14に最も近い列96は、比較的に小さい距離に対応し、且つ、脛骨用構成要素14から最も遠い列96は、比較的に大きい距離に対応する。この様にして、孔95の列96は、PG型測定器90のA/P寸法測定用目盛の役割を果たし得る。
【0035】
PG型測定器90は、該PG型測定器90が、脛骨用構成要素14に対して垂直方向にも回動可能にも固定されたままである如く、器具10の脛骨用構成要素14に対して着脱自在に連結され得る。故に、構成要素14に対して回動可能にも摺動可能にも連結された上述のMR型測定器70(図6)、及び、脛骨用構成要素14に対して摺動可能に連結された上述のSTB型測定器80(図7)とは異なり、PG型測定器90は、脛骨用構成要素14に対して固定的に連結される。図8の例示的実施例において、PG型測定器90は、該PG型測定器90上の(不図示の)摺動脚部を、脛骨用構成要素14における対応開口98内へと摺動させることにより、脛骨用構成要素14に対して取付けられる。PG型測定器90と脛骨用構成要素14との間には、他の連結機構も使用され得る。
【0036】
PG型測定器90が脛骨用構成要素14上の所定位置へと摺動するとき、該PG型測定器90は、所定位置において選択的に保持もしくは繋止され得る。たとえば、PG型測定器90は、該PG型測定器90の脚部における(不図示の)各凹所を、脛骨用構成要素14上の対応繋止部99と整列させることにより、脛骨用構成要素14の開口98上へと繋止され得る。各繋止部99は、たとえば、ボール・デテント、スプリング・ピン、又は、他の適切な繋止機構の形態であり得る。PG型測定器90の取外しが所望されたとき、各繋止部99は、PG型測定器90の脚部から解除かつ解放され得る。
【0037】
次に図9を参照すると、器具10の第6のモジュール式付属具は、大腿骨切断案内器100として提供される。切断案内器100は、例示的には、後側切断用スロット104a、後側面取り切断用スロット104b、前側面取り切断用スロット104c、及び、前側切断用スロット104dであるという複数の切断用スロットを画成する本体102を含んでいる。後側面取り切断用スロット104b及び前側面取り切断用スロット104cは、同一の開口から逆方向に延在し得る。切断案内器100の本体102は図9において4個の切断用スロットを含むことから、切断案内器100は、「フォー・イン・ワン(4-in-1)切断案内器」と称され得る。切断案内器100の本体102はまた、複数の固定孔106も画成する。ひとつの実例において、切断案内器100は、コネクタ片108を更に含む。該コネクタ片108は例示的に、突起110を介して本体102に対して着脱自在に連結されることにより、切断の間において本体102がコネクタ片108から分離されることを許容する。コネクタ片108が本体102と一体的に形成され得ることも本開示内容の有効範囲内である。
【0038】
切断案内器100は、上述の大腿骨用構成要素16と類似した様式で、器具10のアーム18に上に着脱自在に連結され且つ選択的に繋止され得る。大腿骨用構成要素16及び切断案内器100は器具10に対して互換可能に接続され得ることから、(たとえば大腿骨用構成要素16などの)ひとつの付属具を取外して、(たとえば切断案内器100などの)別の付属具を取入れることが必要である。図9の例示的実施例においては、たとえば、切断案内器100のコネクタ片108は、大腿骨用構成要素16と同一様式で、アーム18の支柱30の回りに回動すべく寸法設定及び形状化される。故に、大腿骨用構成要素16と同様に、切断案内器100は、脛骨用構成要素14に対してシャフト20を介して垂直に平行移動し得ると共に、アーム18の支柱30の回りで脛骨用構成要素14に対して回動もし得る。切断案内器100のコネクタ片108はまた、大腿骨用構成要素16(図4B)のキー溝52と同様のキー溝112も含むことで、該キー溝112が支柱30上で回動されてキー50と整列されたときに、切断案内器100の取外し及び交換が許容され得る。
【0039】
切断案内器100が器具10に対して連結されたとき、ユーザは、大腿骨用構成要素16に関して上述されたのと同一の距離測定手段及び角度測定手段を参照し得る。たとえば、脛骨用構成要素14と切断案内器100との間の間隔Gを測定するために、ユーザは、シャフト20上の距離目盛26と、基部12上のポインタ28とを参照し得る。同様に、支柱30の回りにおける脛骨用構成要素14と切断案内器100との間の角度αを測定するために、ユーザは、アーム18上の目盛プレート32と、コネクタ片108上のポインタ114とを参照し得、コネクタ片108上の該ポインタ114は、大腿骨用構成要素16上のポインタ36(図2)と同様である。
【0040】
次に、図10A図15を参照し、器具10及びその付属具を使用する方法が記述される。以下の各段階の順序は、たとえば、医師の選択肢、患者の骨組織の品質、患者の周囲軟部組織の状態、使用される人工インプラントの種類、及び、他の要因に依存して、変更され得る。
【0041】
先ず、ユーザは、術前計画を実施し得る。該計画段階は、たとえば、患者の膝関節200のX線又は他の画像を撮る段階と、患者の要求内容に適合する人工インプラントを選択する段階とを包含し得る。
【0042】
次に、図10A及び図10Bに示された如く、ユーザは、患者の膝関節200の脛骨202及び大腿骨204を露出させる。該露出段階は、患者の皮膚を切開する段階と、患者の関節包を切開する段階と、骨棘を除去する段階とを包含し得る。
【0043】
今や、患者の膝関節200が露出されると、ユーザは器具10を使用し、患者の膝関節200の脛骨202及び大腿骨204を、所定の張力まで離間させ、且つ、脛骨202及び大腿骨204の所望の骨組織切除を計画して特定する。患者の膝関節200は伸展状態で張設されると(図10A)、ユーザは、当該切除面同士の間に所望の間隔G及び角度αを生成するという脛骨近位部切除面206及び大腿骨遠位部切除面208を計画して特定し得る。伸展時角度αは、内反/外反角度と称され得る。患者の膝関節200が屈曲状態で張設されると(図10B)、ユーザは、当該切除面同士の間に所望の間隔G及び角度αを生成するという脛骨近位部切除面206及び大腿骨後側部切除面210を計画して特定し得る。屈曲時角度αは、内方/外方回動角度と称され得る。脛骨202と大腿骨204との間の間隔G及び角度αは、たとえば、患者の年齢、患者の骨組織の品質、患者の周囲軟部組織の状態、使用される人工インプラントの種類、及び、他の要因に基づいて選択され得る。
【0044】
脛骨202及び大腿骨204は、適切な切断案内器を用いて切除され得る。たとえば、脛骨202に脛骨近位部切除面206を形成するためには、インディアナ州、ウォルソーのジンマー社から入手可能な最少侵襲手術(MIS)用脛骨切断案内器アセンブリが使用され得る。大腿骨204に大腿骨遠位部切除面208及び大腿骨後側部切除面210を形成するために、適切な切断案内器も使用され得る。
【0045】
骨組織切除を見積もることに加え、ユーザは、脛骨202と大腿骨204との間の間隔G及び角度αに影響を与える軟部組織の切除、解放、又は、他の軟部組織操作も見積もり得る。たとえば、医師が脛骨202と大腿骨204との間における0°の平衡化された角度αを望むなら、医師は、患者の膝関節200の一側(たとえば、中央側)における靱帯を、患者の膝関節200の他の側(たとえば、側方側)に対して解放し、又は、別様に弛緩させ得る。別の例として、もし医師が、脛骨202又は大腿骨204から更なる骨組織を切除せずに脛骨202と大腿骨204との間の大きな間隔Gを望むなら、医師は、患者の膝関節200の回りの靱帯を解放し、又は、別様に弛緩させ得る。
【0046】
本開示内容の好適実施例に依れば、膝関節200は、脛骨202と大腿骨204との間の間隔G及び角度αが、伸展状態(図10A)及び屈曲状態(図10B)において、同一、もしくは、実質的に同一である如く、調製される。この実施例においては、伸展状態及び屈曲状態において、脛骨202と大腿骨204との間に3次元的なスペースが維持され得る。たとえば、等しい厚みの遠位関節丘及び大腿骨関節丘を有する人工大腿骨インプラントを植設しつつある医師は、屈曲時間隔Gと同一である伸展時間隔Gを調製し得る一方、異なる厚みの遠位関節丘及び大腿骨関節丘を有する人工大腿骨インプラントを植設しつつある医師は、屈曲時間隔Gと厳密には同一でない伸展時間隔Gを調製し、異なる厚みを考慮し得る。脛骨近位部切除面206が、伸展状態(図10A)における大腿骨遠位部切除面208と、屈曲状態(図10B)における大腿骨後側部切除面210とに対して平行である如く、角度αが0°であるとき、脛骨202と大腿骨204との間の3次元的スペースは、伸展状態及び屈曲状態において、形状が矩形である。ユーザが、伸展時角度α(図10A)と屈曲時角度α(図10B)との間の差を、1°、2°、又は、3°の差の如く容認し得ることも本開示内容の有効範囲内である。
【0047】
器具10は、患者の膝関節200の脛骨202及び大腿骨204を所定の張力まで離間させるべく、且つ、それらの間の間隔G及び角度αを、伸展状態及び屈曲状態の両方において測定すべく使用され得る。膝関節200を切除し、又は、別様に処理する前に、器具10は、張設下に在る脛骨202と大腿骨204との間の自然な間隔G及び角度αを測定すべく使用され得る。同様に、器具10は、張設下に在る脛骨202と大腿骨204との間の所望の間隔G及び角度αを生成する、脛骨近位部切除面206、大腿骨遠位部切除面208、大腿骨後側部切除面210、及び/又は、一切の軟部組織切除面を計画もしくは特定するためにも使用され得る。膝関節200を切除し、又は、別様に処理した後、器具10は、張設下に在る脛骨202と大腿骨204との間の所望間隔G及び角度αを検証すべく使用され得る。故に、器具10及びその付属具は、膝関節200を切除しもしくは別様に処理する前に、及び/又は、その後に、使用され得る。
【0048】
脛骨202と大腿骨204との間の間隔G及び角度αを測定する器具10の用法は、たとえば、図11A及び図11Bを参照して更に記述される。図11Aにおいて、器具10は、伸展状態に在る患者の膝関節200と共に使用されている。脛骨202には脛骨近位部切除面206が既に形成され、且つ、大腿骨204には大腿骨遠位部切除面208が既に形成されていることから、器具10は、脛骨202と大腿骨204との間における切除済み間隔G及び切除済み角度αを検証すべく使用されている。器具10の脛骨用構成要素14は、脛骨近位部切除面206に当接して載置される。大腿骨用プレート54’(図5B)は、器具10の大腿骨用構成要素16に対して連結されると共に、大腿骨遠位部切除面208に当接して載置される。器具10の脛骨用構成要素14及び大腿骨用構成要素16は所定の張力まで開かれて脛骨202及び大腿骨204を離間させ乍ら、ユーザは、シャフト20上の距離目盛26及び基部12上のポインタ28を参照することにより、脛骨近位部切除面206と大腿骨遠位部切除面208との間の伸展時間隔Gを測定し得る。同様に、ユーザは、アーム18上の目盛プレート32及び大腿骨用構成要素16上のポインタ36を参照することにより、脛骨近位部切除面206と大腿骨遠位部切除面208との間の伸展時角度αを測定し得る。
【0049】
図11Bにおいて、器具10は、屈曲状態に在る患者の膝関節200と共に使用されている。脛骨202には脛骨近位部切除面206が既に形成され、且つ、大腿骨204には大腿骨後側部切除面210が既に形成されていることから、器具10は、脛骨202と大腿骨204との間における切除済み間隔G及び切除済み角度αを検証すべく使用されている。器具10の脛骨用構成要素14は、脛骨近位部切除面206に当接して載置される。大腿骨用プレート54’(図5B)は、器具10の大腿骨用構成要素16に対して連結されると共に、大腿骨後側部切除面210に当接して載置される。器具10の脛骨用構成要素14及び大腿骨用構成要素16は所定の張力まで開かれて脛骨202及び大腿骨204を離間させ乍ら、ユーザは、図11Bの屈曲時間隔Gが、図11Aの伸展時間隔Gと同一もしくは実質的に同一であることを検証し得る。同様に、ユーザは、図11Bの屈曲時角度αが、図11Aの伸展時角度αと同一もしくは実質的に同一であることを検証し得る。図11A及び図11Bは、大腿骨204における大腿骨遠位部切除面208及び大腿骨後側部切除面210を示しているが、器具10が使用されるに際し、大腿骨204には、(たとえば、面取り切断面及び前側切断面などの)他の切除面も存在し得る。
【0050】
必要であれば、患者の膝関節200は、脛骨202と大腿骨204との間の測定済み間隔G及び/又は測定済み角度αを調節すべく処理され得る。たとえば、ユーザが、図11Bの屈曲時間隔Gが図11Aの伸展時間隔Gと比較して小さすぎると判断したなら、該ユーザは、更に深い大腿骨後側部切除面210を切り出すことで、図11Bの屈曲時間隔Gを増大し得る。ユーザはまた、膝関節200の回りにおける軟部組織を平衡化させるべく、一切の必要な靱帯調節も行い得る。たとえば、ユーザは患者の後十字靭帯(PCL)を解放しても良く、このことは、伸展時間隔Gに対して屈曲時間隔Gを増大することが示されている。
【0051】
図11A及び図11Bは、器具10の切除後使用を描いており、器具10は、脛骨202及び大腿骨204の切除済みの骨組織表面に当接して位置されている。上記で論じられた如く、器具10は切除前にても使用され得、器具10は、脛骨202及び大腿骨204の生来の未切除の骨組織表面に当接して位置される。この切除前状態において、器具10は、張設下に在る生来の未切除の骨組織表面同士の間の切除前間隔G及び切除前角度αを伝える。ユーザは、計画された切除面に対して上記切除前の値を組み合わせることにより、切除後の値を予測し得る。たとえば、ユーザは、計画された切除深さを、対応する切除前間隔Gに加算することにより切除後間隔Gを見積もり得る。
【0052】
医師はまた、器具10を、患者の大腿骨204を寸法測定し、適切に寸法設定された大腿骨切断案内器(たとえば、図9の切断案内器100)を選択し、且つ、患者の大腿骨204に対する大腿骨切断案内器の設定箇所及び配向を決定するためにも使用し得る。上記大腿骨切断案内器の設定箇所及び配向は、次続的な各大腿骨切除面の設定箇所及び配向、及び、最終的には、大腿骨切断案内器に対応して適切に寸法設定された人工大腿骨インプラントの設定箇所及び配向を決定する。これらの段階は、以下において更に論じられる如く、器具10に対して所望の測定器を取付けることにより実施され得る。測定器の形式は、たとえば、医師の選択肢、患者の骨組織の品質、患者の周囲軟部組織の状態、使用される人工大腿骨インプラントの種類、及び、他の要因に依存して、変更され得る。
【0053】
図12において、MR型測定器70は、器具10に対して取付けられて示される(図6も参照)。患者の膝関節200を屈曲状態とし、器具10の脛骨用構成要素14は患者の脛骨202に当接して位置決めされ、MR型測定器70の後側脚部72は患者の未切断の大腿骨後側部204に当接して載置され、且つ、MR型測定器70の前側プローブ74は、患者の大腿骨前側皮質212に当接して載置される。この配置において、ユーザは、A/P寸法測定用目盛76を参照することにより、患者の大腿骨204を寸法測定すると共に、適切に寸法設定された切断案内器を選択し得る。ユーザはまた、MR型測定器70における一群の遠位参照孔75を、切断案内器の最終的な受容のために、患者の大腿骨204内への(不図示の)遠位固定孔をマーク付けしもしくは穿孔するための案内要素として使用し得る。MR型測定器70は、器具10の大腿骨用構成要素16との一体的な回動のために、該構成要素に対して連結されることから、大腿骨用構成要素16上の患者の大腿骨204の回動によれば、MR型測定器70における遠位参照孔75の回動も引き起こす。結果として、遠位参照孔75は、患者の大腿骨204が患者の脛骨202に対して回動するときに、該大腿骨の骨組織を追尾し、又は、それに追随する。この様にして、患者の大腿骨204の骨組織(すなわち、患者の大腿骨204の「測定された切除面」)は、遠位参照孔75の内方/外方回動に対し、ならびに、対応する大腿骨切断案内器及び対応する人工大腿骨インプラントの載置に対し、影響を与える。
【0054】
図13において、STB型測定器80は、器具10に対して取付けられて示される(図7も参照)。患者の膝関節200を屈曲状態とし、器具10の脛骨用構成要素14は患者の脛骨202に当接して位置決めされ、器具10の大腿骨用構成要素16は患者の未切断の大腿骨後側部204に当接して載置され、且つ、STB型測定器80の前側プローブ84は、患者の大腿骨前側皮質212に当接して載置される。図13は、患者の大腿骨後側部204に接触している器具10の大腿骨用構成要素16を示しているが、大腿骨用プレート54及び大腿骨用プレート54’の一方が、器具10の大腿骨用構成要素16に対して取付けられ、患者の大腿骨後側部204に対して直接的に接触する。この配置において、ユーザは、A/P寸法測定用目盛86を参照することにより、患者の大腿骨204を寸法測定すると共に、適切に寸法設定された切断案内器を選択し得る。ユーザはまた、STB型測定器80における遠位参照孔85を、切断案内器の最終的な受容のために、患者の大腿骨204内への(不図示の)遠位固定孔をマーク付けしもしくは穿孔するための案内要素として使用し得る。STB型測定器80は、器具10の脛骨用構成要素14に対して回動可能ではないことから、大腿骨用構成要素16上で患者の大腿骨204を回動しても、STB型測定器80は回動されない。結果として、膝関節200が張設下に在るときに、該関節の軟部組織が患者の大腿骨204を患者の脛骨202に対して回動させるとしても、遠位参照孔85は空間内で回動可能に固定されたままであり得る。この様にして、患者の大腿骨204の回りにおける「軟部組織平衡化」は、患者の大腿骨204に対する遠位参照孔85の内方/外方回動に対し、ならびに、対応する大腿骨切断案内器及び対応する人工大腿骨インプラントの載置に対し、影響を与える。
【0055】
図14において、PG型測定器90は、器具10に対して取付けられて示される(図8も参照)。患者の膝関節200を屈曲状態とし、器具10の脛骨用構成要素14は患者の脛骨202に当接して位置決めされ、且つ、器具10の大腿骨用構成要素16は患者の未切断の大腿骨後側部204に当接して載置される。図14は、患者の大腿骨後側部204に接触している器具10の大腿骨用構成要素16を示しているが、大腿骨用プレート54及び大腿骨用プレート54’の一方が、器具10の大腿骨用構成要素16に対して取付けられ、患者の大腿骨後側部204に対して直接的に接触する。患者の膝関節200は、PG型測定器90と共に、伸展状態へと移動もされ得る。
【0056】
患者の大腿骨204のサイズと、患者の膝関節200が屈曲状態及び/又は伸展状態において張設されたときに生成された間隔Gとに基づき、ユーザは、PG型測定器90における適切な列96の遠位参照孔95を特定すると共に、対応する切断案内器を選択し得る。たとえば、大腿骨204に大腿骨遠位部切除面208を形成した後、ユーザは、患者の膝関節200が伸展状態において張設されたときに生成された伸展時間隔Gを測定し得る。次に、ユーザは、伸展状態と同じ張力まで、屈曲状態において患者の膝関節200を張設すると共に、先に測定された伸展時間隔Gに対応するPG型測定器90の遠位参照孔95の列96を選択し得る。次にユーザは、PG型測定器90において選択された遠位参照孔95を、切断案内器の最終的な受容のために患者の大腿骨204内へと(不図示の)遠位固定孔をマーク付けし又は穿孔するための案内要素として使用することにより、先に測定された伸展時間隔Gと同じ屈曲時間隔Gを生成する大腿骨後側部切除面210(図10B)に到達し得る。PG型測定器90は、器具10の脛骨用構成要素14に対して連結されることから、大腿骨用構成要素16上の患者の大腿骨204の回動もしくは平行移動により、PG型測定器90は回動も平行移動もされない。結果として、膝関節200が張設下に置かれたときに該関節の軟部組織が患者の脛骨202に対して患者の大腿骨204を回動もしくは平行移動させたとしても、遠位参照孔95は空間内で固定されたままであり得る。この様にして、患者の大腿骨204の回りにおける軟部組織は、患者の大腿骨204に対する遠位参照孔95の内方/外方回動に対し、ならびに、対応する大腿骨切断案内器及び対応する人工大腿骨インプラントの載置に対し、影響を与える。
【0057】
一定の実施例において、ユーザは、単一回の手術処置の間に器具10に対して1個より多い測定器70、80、90を互換可能に連結すると共に、その手術処置において各測定器70、80、90の可能的な帰結を比較し得る。たとえばユーザは、各測定器70、80、90に対する遠位参照孔75、85、95の計画された設定箇所及び配向を比較してから、所望の測定器70、80、90を継続し得る。
【0058】
器具10を用いて患者の大腿骨204に(不図示の)遠位固定孔をマーク付けし又は穿孔した後、ユーザは、図15における器具10を使用して、選択された切断案内器100の設定箇所及び配向を確認する。切断案内器100は例示的に、図9に関して上記で更に論じられた如く、コネクタ片108を介して器具10に対して連結される。この確認段階の間において、ユーザは、切断案内器100における固定孔106を、患者の大腿骨204の遠位部上に先にマーク付けされ又は先に穿孔された遠位固定孔に対し、目視により、又は、別様に整列させ得る。もし、たとえば、上記マークが患者の大腿骨204の遠位部上に描かれた(たとえば、円、十字形などの)記号の形態であるなら、切断案内器100における固定孔106は、上記記号に対して目視により整列されて該記号に重なり合わされ得る。もし、上記マークが、患者の大腿骨204の遠位部から延在するピンもしくは他の基準構造の形態であるなら、切断案内器100における固定孔106は、そのピン上に載置され得る。斯かる配置構成において、ユーザは、患者の大腿骨204に対する切断案内器100の設定箇所及び配向を検証し得る。更に詳細には、ユーザは、患者の大腿骨204に対する切断用スロット104a、104b、104c、104dの設定箇所及び配向を検証し得る。切断案内器100が器具10に対して取付けられたとき、ユーザは、器具10を使用して、脛骨202と大腿骨204との間の間隔G及び角度αも検証し得る。
【0059】
好適には、患者の骨組織を切断する前に、器具10は、ユーザが切断案内器100の設定箇所及び/又は配向を調節することを可能とする。たとえば、ひとつ以上の切断用スロット104a、104b、104c、104dに沿う患者の骨組織の幹茎部が不適切であるなら、ユーザは、上述の方法段階の幾つかもしくは全てを反復し、切断案内器100の設定箇所及び/又は配向を再見積もりして調節し得る。
【0060】
器具10を用いて図15における切断案内器100の設定箇所及び配向を確認した後、ユーザは、本体102からコネクタ片108を分離すると共に、本体102を患者の大腿骨204に対して固着し得る。本体102は、該本体102の固定孔106を貫通して患者の大腿骨204内へと、支持体(たとえば、ピン、釘、ネジ、又は、他のアンカなど)を駆動することにより、患者の大腿骨204に対して固着され得る。先の整列段階に基づき、上記アンカは、患者の大腿骨204において先にマーク付けされ又は先に穿孔された(不図示の)遠位固定孔内へと延在する。
【0061】
切断案内器100の本体102を患者の大腿骨204に対して固着し、ユーザは、切断案内器100における切断用スロット104a、104b、104c、104dの幾つか又は全てを通して(不図示の)揺動鋸もしくは別の適切な工具を引くことにより、骨組織を切断し得る。もし、大腿骨204に大腿骨後側部切除面210が予め形成されていたなら、切断案内器100の後側切断用スロット104aを使用することは不要であり得る。但し、医師は一般的に、大腿骨204に大腿骨遠位部切除面208を形成してから、選択された測定器70、80、90の帰結に基づき切断案内器100の切断用スロット104a、104b、104c、104dを用いて(大腿骨後側部切除面210を含む)大腿骨204の残りの切除面を形成する。
【0062】
次に、ユーザは、患者の切除された脛骨202及び大腿骨204に対して(不図示の)試行インプラントを一時的に固定すると共に、器具10を使用して、試行インプラントの設定箇所及び配向を確認し得る。たとえば、器具10の脛骨用構成要素14を脛骨用の試行インプラントに当接して位置決めし、且つ、器具10の大腿骨用構成要素16を大腿骨用の試行インプラントに当接して位置決めし、ユーザは、それらの間の間隔G及び角度αを器具10を用いて検証し得る。
【0063】
最後に、ユーザは、(不図示の)最終的な人工インプラントを、切除された患者の脛骨202及び大腿骨204に対して固着し得る。最終的な人工インプラントは、たとえば、アンカ及び/又は骨用セメントにより所定位置に固定され得る。再び、ユーザは器具10を使用し、最終的な人工インプラントの設定箇所及び配向を確認し得る。
【0064】
本発明は、代表的な設計態様を有するものとして記述されたが、本発明は、本開示内容の精神及び有効範囲内において更に改変され得る。故に本出願は、本発明の包括的原理を用いて、本発明の一切の変更例、用法、又は、適合化を網羅することが意図される。更に、本出願は、本発明が関連する業界における公知のもしくは通常的な実用的手法に含まれると共に、添付の各請求項の限定範囲内に収まる如き、本開示内容からの逸脱を包含することが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図4A-1】
図4A-2】
図4B-1】
図4B-2】
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15