(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、併せて詳しく後述してある実施例を参照すると明確になると考える。しかし、本発明は以下で開示する実施例に限定されるものではなく、相違する多様な形態で具現でき、単に本実施例は本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。明細書全体に亘って同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0012】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0013】
(ガラス繊維ボード)
本発明は、ガラス繊維と無機バインダーを含むガラス繊維ボードを提供する。本発明が含むガラス繊維は、真空断熱材の芯材用として使用されるものであれば制約なく全て使用できるが、特に、公害がなく、生産が容易な標準化されたガラス繊維を用いることが好ましい。このようなガラス繊維としては、グラスウール、セラミックファイバー、ロックウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、炭化珪素繊維等がある。このとき、前記ガラス繊維ウールは、真空断熱材の形によって、四角形、円形等の形態にガラス綿生地を裁断して使用できる。
【0014】
前記ガラス繊維は、4μmないし6μmの平均直径を有するものを使用することが好ましい。前記ガラス繊維の平均直径が4μm未満の場合、マイクロファイバーの範疇に入って製造単価が非常に高くなり、人体に有害になり得、6μmを超える場合は、ガラス繊維自体の接触面が多くなって初期熱伝導率が高く表れ得る。よって、ガラス繊維の平均直径が6μm未満であることが、無機バインダーを共に含む真空断熱材用芯材の製造の効率性の面で妥当である。
【0015】
本発明のガラス繊維ボードは、真空状態で有機物の揮発によって真空度が低くなり使用が不可能な有機バインダーに比べて、無機バインダーを使用するため、真空断熱材用芯材が含む無機バインダー含量が高くなると、強度および圧縮率は優れたものになるため、最適な熱伝導率値を有する適正密度に到達し得る。
【0016】
前記ガラス繊維ボードは、優れた長期耐久性の確保が可能な材料が含まれており、ガラス繊維ボード、シート又はペーパー製品形態を用いることができる。さらに、長期耐久性を増進させるための材料としては、ヒュームドシリカパウダー、シリカパウダー、パーライトパウダー及びエアロジェルパウダーがあり、このうち一つ以上を含んで構成できる。
【0017】
本発明で記述した前記ガラス繊維ボードは、ガラス繊維および無機バインダーを含み、前記無機バインダーはアルミニウムホスフェートを含むことを特徴とする。
【0018】
このとき、前記アルミニウムホスフェートは、アルミニウム前駆体とリン前駆体で形成されることを特徴とする。前記アルミニウム前駆体は、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムナイトレート、アルミニウムアセテート又はアルミニウムハライドから選ばれた1種以上で、前記リン前駆体は、リン酸塩(H
3PO
4)、モノアンモニウムホスフェート(NH
4H
2PO
4)、ジアンモニウムホスフェート((NH
4)
2HPO
4)、トリエチルホスフィン((C
2H
5)
3P)又はトリメチルホスフィン((CH
3)
3P)から選ばれた1種以上であることを特徴とする。
【0019】
また、前記アルミニウム前駆体の粒子の大きさは、既存の常用的なゾル(sol)形態のシリカ及びアルミナの粒子形態である無機バインダーより粒子の大きさを小さく保つことにより、リン酸の重合反応によって緻密なバインディング効果を奏することができる。
【0020】
そのため、粒子の大きさが20nmないし50nmである従来のアルミニウム前駆体とは異なり、粒子の大きさが10nm以下である前駆体を含むことにより、ガラス繊維により均一に付着するという長所を有し得る。既存の粒子の大きさを有するアルミニウム前駆体による製造された無機バインダーの場合、乾燥中のバインダーの偏り現象によってバインダー分散のムラが誘発されるという問題点がある。
【0021】
本発明の無機バインダーを構成するアルミニウム前駆体およびリン前駆体で形成されたアルミニウムホスフェートは、P/Alの原子比が3ないし50であることが好ましく、このとき、P/Alの原子比はリンとアルミニウムのモル比を言う。
【0022】
前記アルミニウムホスフェートのP/Alの原子比が3未満の場合、アルミナの溶解度が非常に小さく、アルミニウムホスフェートの形成がスムーズでないおそれがあり、前記アルミニウムホスフェートのP/Alの原子比が50を超える場合は、リン酸が過量なためガラス繊維の表面が損傷して強度を弱化させ得、水分を持続的に吸着する性質を表し得る。
【0023】
前記アルミニウムホスフェートを含む無機バインダーは、ガラス繊維100重量部に対して、0.05重量部ないし10重量部を含むことを特徴とする。本発明のガラス繊維ボードは、前記アルミニウムホスフェート無機バインダーを少なく含むにもかかわらず、最適な熱伝導率値を維持でき、これによって高強度および高圧縮したガラス繊維ボードを製造することができる。前記アルミニウムホスフェートを含む無機バインダーがガラス繊維100重量部に対して0.05重量部未満の場合、バインダーの機能が弱化するおそれがあり、10重量部を超える場合は密度の増加によって熱伝導率が高くなるという点で問題がある。
【0024】
前記ガラス繊維ボードは、真空断熱材芯材用ガラス繊維ボードであり得る。ガラス繊維ボードは、断熱効果、施工性、耐火性等がある断熱材であって、前記ガラス繊維ボードはガラス繊維とアルミニウムホスフェートを含む無機バインダーを含み得、真空断熱材芯材用として使用されることにより、初期断熱性能に優れ、長期耐久性能が確保される真空断熱材用芯材および前記真空断熱材用芯材を含む真空断熱材を提供することができる。
【0025】
(ガラス繊維ボードの製造方法)
本発明のガラス繊維ボードの製造方法は、ガラス繊維を用いる方法を基本とし、ガラス繊維に無機バインダーを塗布するステップ、圧縮、乾燥するステップを含む。
【0026】
より具体的には、本発明は、(a)アルミニウムホスフェートを含む無機バインダー溶液を製造するステップ;(b)ガラス繊維にアルミニウムホスフェートを含む前記無機バインダー溶液を塗布するステップ;(c)アルミニウムホスフェートを含む前記無機バインダー溶液が塗布された前記ガラス繊維を圧縮するステップ;(d)圧縮された前記ガラス繊維を乾燥するステップを含むガラス繊維ボードの製造方法を含む。
【0027】
前記(a)ステップにおいて、アルミニウムホスフェートを含む無機バインダーは、アルミニウム前駆体とリン前駆体の反応により製造される。このとき、前記アルミニウム前駆体は、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムナイトレート、アルミニウムアセテート又はアルミニウムハライドから選ばれた1種以上であり、前記リン前駆体は、リン酸塩(H
3PO
4)、モノアンモニウムホスフェート(NH
4H
2PO
4)、ジアンモニウムホスフェート((NH
4)
2HPO
4)、トリエチルホスフィン((C
2H
5)
3P)又はトリメチルホスフィン((CH
3)
3P)から選ばれた1種以上になり得る。
【0028】
前記のアルミニウム前駆体中のアルミニウムヒドロキシド、リン前駆体中のリン酸塩を使用することが好ましいが、アルミニウム前駆体としてアルミニウムヒドロキシドを使用する場合は溶解度が低いため、150℃以上で熱処理するステップを含むことができる。
【0029】
本発明のアルミニウムホスフェートを含む無機バインダー溶液の製造ステップが含む前記熱処理ステップにおいて、150℃以上の熱処理が必要なため、常温で溶解度が高く常温で溶け得るアルミニウムナイトレート又はアルミニウムアセテートをさらに含むことができる。このとき、アルミニウムナイトレートの場合、硝酸ガスの発生の危険性があるため、アルミニウムアセテートを使用することがより好ましい。
【0030】
より具体的には、アルミニウムホスフェートを含む無機バインダー溶液の反応メカニズムは、常温で溶液内にリン酸イオンとアルミニウムイオン、酢酸が溶解されており、コーティング後の熱処理過程で150℃以上でリン酸の重合反応が起こりながらオリゴリン酸塩(oligo−phophate)又は多重リン酸塩(poly−phophate)を形成し、温度の変化に応じてAl(H
2PO
4)
3、AlH
2P
3O
10、Al(PO
3)
3、Al
2P
6O
18等の化合物が形成されながらバインダーの役割ができるようになる。
【0031】
前記(b)ステップにおいて、ガラス繊維に前記無機バインダー溶液を塗布する場合、一般的にスプレー方法を用いることが好ましい。一般的にガラス繊維はガラス繊維ウール状態で存在するため、ガラス繊維ウールに前記無機バインダー溶液を塗布することもまた可能だが、この際、均一なバインダー塗布のためにはガラス繊維ウールが成形される直前にガラス繊維状態で本発明の無機バインダーを塗布することがより好ましい。
【0032】
これは、ガラス繊維がガラス繊維ウール状態で存在する場合、嵩が大きくなるため無機バインダーが内部に浸透し難く、均一な無機バインダーの浸透のために多量の溶媒が必要なのに比べ、ガラス繊維に直に無機バインダー溶液を塗布する場合、溶媒の使用が少なくてもガラス繊維の内部までバインダーの浸透が可能になり得るためである。
【0033】
特に、アルミニウムホスフェートを含む無機バインダーを用いる場合、ガラス繊維の表面にスプレー方式で少量のみを添加しても目標とする強度を確保でき、その結果、熱伝導率値が上昇することを事前に防げるようになる。
【0034】
このとき、バインダーが最大のガラス繊維の表面に均等に塗布されることが重要になる。この場合、製造工程上、必要に応じて多様な方法を試すことができるが、ガラス繊維ウールに無機バインダーを塗布する場合は、均一なバインディングのために過量の溶媒が必要になる。よって、前述の通り、ガラス繊維ウールが成形される直前のガラス繊維が射出されたときに無機バインダーを塗布することが、使用する溶媒が少なくて済むという点で有利である。
【0035】
前記(c)ステップにおいて、前記ガラス繊維を圧縮する際、圧縮圧力が2.0Kg/cm
2ないし2.4Kg/cm
2であることが好ましい。圧縮には、圧縮ロール、圧縮プレス等を用いることができる。前記圧縮圧力が2.0Kg/cm
2未満だと圧縮が十分にされないおそれがあり、2.4Kg/cm
2を超えるとガラス繊維の割れ現象が発生するという問題点がある。
【0036】
また、ガラス繊維ボードを製造する方法において、前記(d)ステップの乾燥温度は200℃ないし400℃が好ましく、乾燥時間は10分ないし20分にして行うことが好ましい。
【0037】
前記乾燥温度が200℃未満だと多重リン酸塩が十分に生成されないというおそれがあり、400℃を超えるとエネルギー費用が高くなる問題がある。また、前記乾燥時間が10分未満だと十分に乾燥されないおそれがあり、20分を超えると生産工程上の非効率性の問題がある。
【0038】
以下、本発明の次の実施例によってより詳しく説明する。但し、下記実施例は発明の概要を例示するものであるだけで、発明の範囲が実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示するものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
ここで記載していない内容は、本技術分野における熟練者であれば十分に技術的に類推できるもののため、その説明は省略する。
【0040】
<実施例1>
(1.アルミニウムホスフェート無機バインダーの製造)
蒸留水309.5gを230rpmで撹拌しながら5分に亘って1150g、85%リン酸塩を添加した。希釈されたリン酸溶液を500rpmで撹拌しながらアルミニウムアセテート粉末94.5gを6分に亘って添加した後、20分間撹拌してP/Alの原子比が20になるアルミニウムホスフェート無機バインダーを製造した。
【0041】
(2.ガラス繊維ボードおよび真空断熱材用芯材の製造)
平均直径4μm、質量50gのガラス繊維を準備した。また、水200gに前記の製造したアルミニウムホスフェート無機バインダーを2g入れて撹拌し、アルミニウムホスフェートを含む無機バインダー溶液を製造した。このとき、前記ガラス繊維に前記無機バインダー溶液を塗布し、2.0kg/cm
2の圧力で圧縮した後、200℃で20分間乾燥し、193×253×2mm(厚さ×幅×長さ)の大きさに切断してガラス繊維ボードを製造した。このとき、前記のガラス繊維ボードを1枚にして真空断熱材用芯材を製造した。
【0042】
<実施例2>
(1.アルミニウムホスフェート無機バインダーの製造)
蒸留水309.5gを230rpmで撹拌しながら5分に亘って1150g、85%リン酸塩を添加した。希釈されたリン酸溶液を500rpmで撹拌しながらアルミニウムアセテート粉末94.5gを6分に亘って添加した後、20分間撹拌し、P/Alの原子比が20になるアルミニウムホスフェート無機バインダーを製造した。
【0043】
(2.ガラス繊維ボードおよび真空断熱材用芯材の製造)
平均直径4μm、質量100gのガラス繊維を準備した。また、水200gに前記の製造したアルミニウムホスフェート無機バインダーを1g入れて撹拌し、アルミニウムホスフェートを含む無機バインダー溶液を製造した。このとき、前記ガラス繊維に前記無機バインダー溶液を塗布し、2.4kg/cm
2の圧力で圧縮した後、400℃で10分間乾燥し、193×253×2mm(厚さ×幅×長さ)の大きさに切断してガラス繊維ボードを製造した。このとき、前記のガラス繊維ボードを2枚積層して真空断熱材用芯材を製造した。
【0044】
<比較例1>
190×250×50mm(厚さ×幅×長さ)の平均直径6μm、質量50gのガラス繊維ウールを準備した。このとき、前記ガラス繊維ウールを500℃で成形する熱圧着法を用いて真空断熱材用芯材を製造した。
【0045】
<比較例2>
前記比較例1のようなガラス繊維ウールを有機バインダーを用いた湿式法で真空断熱材用芯材を製造した。
【0046】
<実験例>真空断熱材の熱伝導率値の測定
前記実施例1、2および比較例1、2にかかる真空断熱材用芯材を、25×300×400mm(厚さ×幅×長さ)の大きさに製造した。次に、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)12μm、ナイロン(Nylon)フィルム25μm、Alホイル6μmおよび線形低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム50μmの構造に形成された外装封止体を形成した。次に、純度95%の生石灰(CaO)25gをパウチに入れて製造したゲッター2個を前記の製造された芯材の表面に挿入させた。
【0047】
次に、芯材を封止体に挿入した後、10Paの真空度状態で密封して本発明にかかる真空断熱材を製造した。
【0048】
前記の実施例1、2および比較例1、2にかかる前記真空断熱剤を70℃で14時間エージング(Aging)処理した後、85℃の恒温チャンバにそれぞれ入れ、10日間維持しながら、熱伝導率を測定した。このとき、熱伝導率の測定にはHC-074・300(エコー精機製造)熱伝導度測定器を使用し、その結果は下記表1の通りである。
【0049】
【表1】
【0050】
前記表1を参照すると分かるように、比較例1、2の熱伝導率は実施例1、2の熱伝導率に比べて高いことが分かった。より具体的には、前記比較例1で用いる熱圧着工法は、ガラス繊維ウールの変形温度(500℃)まで熱を加えてガラス繊維同士接着する方法であって、バインダーを使用してガラス繊維ウールの圧着を適用した実施例1、2の方が熱伝導率も少ないだけでなく、エネルギーおよび維持費用の面でも卓越した効果を有する。
【0051】
また、有機バインダーを使用して湿式法で真空断熱材用芯材を製造した比較例2の場合もまた、無機バインダーを使用してガラス繊維ウールの圧着を適用した実施例1、2の場合に比べて熱伝導率が大きいことが確認できることから、本発明のガラス繊維を適用した真空断熱材の方が最適な熱伝導率値を維持していることを確認した。
【0052】
<実験例>真空断熱材用芯材の屈曲強調および吸水率の測定
前記の実施例1、2および比較例1、2に従って製造された真空断熱材用芯材の物性中、屈曲強度と吸水率について測定し、その結果は下記表2の通りである。
【0053】
前記屈曲強度は、折り曲げに対する抵抗力を言うが、前記真空断熱材の芯材を機械的に繰り返し折り曲げ、何回目で切断されたかを測定して比較した。
【0054】
【表2】
【0055】
前記表2を参照すると、アルミニウムホスフェート無機バインダーを含む実施例1、2の場合、バインダーを含まない比較例1および有機バインダーを含む比較例2に比べて多少優れた屈曲強度を表し、実験結果を記載してはいないが、吸水率もまた実施例1、2の場合に若干より低いことを確認した。
【0056】
よって、本発明にかかるガラス繊維ボードは、ガラス繊維と共にアルミニウムホスフェート無機バインダーを添加することにより、優れた強度を確保したが、少ない含量の無機バインダーでガラス繊維を圧縮して高強度のガラス繊維ボードを得ようとする目的を達成することができた。