【実施例】
【0048】
[実施例1]
〔アディポネクチンは、末梢血リンパ球(PBL)の経内皮細胞移動を抑制する〕
内皮細胞を、低血清培地中で培養し、アディポネクチンの非存在下でTNF-α/IFN-γで24時間刺激した。PBLを単離して、0.0001〜15μg/mlのアディポネクチンで1時間処理した。
【0049】
結果を
図1に示す。(a)の部分は、静的接着アッセイにおいてアディポネクチンによってPBL遊出が有意にかつ用量依存的に減少したことを示し、(b)の部分は、アディポネクチンが、線形回帰により決定されるEC50が0.94μg/mlであることを示し、(c)の部分は、アディポネクチンが、フローベースの接着アッセイにおいてもPBL移動を抑制することにおいて同等に有効であったことを示す。データは、少なくとも3回の独立した実験を表すものであり、t検定、一元配置ANOVA、およびダネットの多重比較ポストテストを用いて解析された。*p≦0.01、**p≦0.001、***p≦0.0001。
【0050】
〔コンパウンドCを用いたAMPKの阻害は、PBLの移動を回復させる〕
内皮細胞を、低血清培地中で培養し、TNF-α/IFN-γで24時間刺激した。コンパウンドCを10μg/mlにて30分間 PBLに加えた後、アディポネクチンを15μg/mlにて1時間加えた。アディポネクチン処理は、遊出の減少を誘導し、これはコンパウンドCの存在下では正常な対照レベルまで回復された。結果は
図2に示されており、そこではデータは3回の実験を表すものであって、一元配置ANOVAおよびダネットの多重比較ポストテストを用いて解析された。**p≦0.001、***p≦0.0001。
【0051】
〔T1D患者からのPBLは、経内皮細胞移動に対するアディポネクチンの抑制作用から解放される〕
内皮細胞を、低血清培地中で培養し、アディポネクチンの非存在下でTNF-α/IFN-γで24時間刺激した。結果を
図3に示す。a)の部分は、T1DにおいてPBL遊出に対するアディポネクチン媒介性抑制が消失していることを示し、b)の部分は、アディポネクチン処理による遊出のパーセンテージを未処理PBLの遊出のパーセンテージで割ることによって抑制のパーセンテージが計算されたことを示す。HC(健常者対照)群についてはn= 13であり、T1D群についてはn=12である。データは、t検定および一元配置ANOVA、ならびにボンフェローニの多重比較ポストテストを用いて解析された。***p≦0.0001。
【0052】
〔T1D の患者において、PBL上のアディポネクチン受容体の発現が低下する〕
アディポネクチン受容体AR1またはAR2を発現するPBLの頻度を、健康被験者または疾患被験者の各々について決定し、それぞれ
図4a)および4b)に示している。データは、平均±SEMとして表され、t検定、またはデータがコルモゴロフ・スミルノフ正規性検定を通らない場合にはマン・ホイットニーt検定を用いて解析した。
【0053】
〔T1D被験者または健常者対照被験者におけるアディポネクチン受容体の発現は、アディポネクチンによるリンパ球移動の抑制と相関する〕
図5a)は、AR1の発現とリンパ球移動の抑制との間の相関を示し、
図5b)は、AR2の発現とリンパ球移動の抑制との間の相関を示す。相関は、線形回帰分析を用いて決定された。
【0054】
〔異なる白血球サブセット上のアディポネクチン受容体の発現〕
図6a)およびb)は、異なる細胞型上のAR1(
図6a)およびAR2(
図6b)の発現を示す。データは平均±SEMであり、7人の健常者対照を表す。データは、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの多重比較ポストホックテストを用いて解析された。***p≦0.0001。
【0055】
〔B細胞はT細胞移動のアディポネクチン誘導抑制を媒介する〕
図7a)は、PBLからB細胞(Bs)を枯渇させるとPBLの移動が消失し、単離T細胞にB細胞を加え戻すと回復することを示す。
図7b)は、ナチュラルキラー細胞(NKs)の移動はアディポネクチンによって影響されず、NKsをT細胞に添加してもT細胞の移動は制御されないことを示す。データは平均±SEMであり、少なくとも3回の独立した実験を表す。データは、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの多重比較ポストテストを用いて解析された。**p≦0.001、***p≦0.0001。
【0056】
〔B細胞はペプチドの分泌を通してPBL遊出を制御する〕
B細胞を単離して、15μg/mlのアディポネクチンの存在下または非存在下でインキュベートした。1時間後に上清(Sup)を採取してBs-ve PBLに添加したところ、PBL遊出のアディポネクチン抑制が有意に回復した。いくつかの実験では、B細胞は、B細胞分泌の阻害剤であるブレフェルジンA(BrefA)で処理された。これらの上清はT細胞の移動を制御することができなかった。このことは
図8に示されているが、そのデータは平均±SEMとして示され、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの多重比較ポストテストを用いて解析された3つの独立した実験を表す。***p<0.001、ns=非有意。
【0057】
本ペプチドの配列を決定し、それを
図9において14.3.3タンパク質の異なるアイソフォームとともに示している。上記表1も参照。
【0058】
〔B細胞上清由来および合成バージョンペプチドのMS/MS親イオンm/z 774.88の比較〕
m/z 774.88イオンは、解析プロトコールのフラグメンテーション産物であり、一般的にMS/MSを使用した同定のためにのみ使用されるが、比較のための重要なパラメータになり得る。
【0059】
B細胞上清由来およびペプチド解析の合成バージョンの親イオンm/z 774.88の質量分析プロファイルの比較が
図10に示されており、これは同一の質量:電荷比を明らかにしている。これにより配列同一性が確認され、このペプチドは分泌前に翻訳後修飾を受けないことが示された。
【0060】
〔本ペプチドはインビトロで内皮細胞を通したT細胞移動を抑制する〕
アディポネクチン(陽性対照として、15μg/ml)または0.001〜10ng/mlの濃度のペプチドでPBLを処理し、スクランブル化ペプチドを陰性対照として使用した(10ng/mlで使用)。本ペプチドの特異性を実証するために、その他の生活性ペプチドも使用した(すなわち、10ng/mlの破傷風トキソイドペプチド(TTp)および10ng/mlのプロインスリン(PI))。結果を
図11に示す。
図11 a)は、PBL遊出は本ペプチドの存在下では用量依存的に減少したが、スクランブル化ペプチド対照、TTp対照、またはPI対照の存在下では減少しなかったことを示している。
図11b)は、非線形回帰分析を用いて本ペプチドのEC50(18.6pM)を算出したことを示す。データは3回の独立した実験を表し、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの多重比較ポストテストを用いて解析された。*p≦0.01、**p≦0.001、***p≦0.0001。
【0061】
〔野生型マウス、または本ペプチドの存在下もしくは非存在下のB細胞ノックアウトマウスの炎症腹膜におけるT細胞の絶対数〕
本ペプチドもしくはスクランブル化ペプチドの有りまたは無しでザイモサン(または対照としてのPBS)を48時間注入した後に、腹膜から白血球を採取した。T細胞はCD3の発現により同定した。本ペプチドまたはスクランブル化ペプチドは、300μg/マウスの最終濃度にて注射した。結果を
図12に示すが、そこでは、各群についてデータは平均であり、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの多重比較ポストテストを用いて解析された。*p≦0.01。
【0062】
[実施例2]
この実施例は、さらなる実験を行った結果を示すものであり、従って実施例1を補足する。
【0063】
〔末梢血リンパ球(PBL)の経内皮細胞移動に対するアディポネクチン(AQ)の作用〕
図13を参照。内皮細胞を低血清培地中で培養し、アディポネクチンの非存在下で、TNF-α/IFN-γで24時間刺激した。PBLを単離して、0.0001〜15μg/mlのアディポネクチンで1時間処理した。(a)の部分は、静的接着アッセイにおいてPBL遊出がアディポネクチンにより有意にかつ用量依存的に減少したこと、および、アディポネクチンは線形回帰により決定されるEC50が約40nMであることを示している。(b)の部分は、アディポネクチンが、フローベースの接着アッセイにおいても、PBL移動を抑制することに関して同等に効果的であったことを示している。(c)の部分は、アディポネクチンが、異なる組織、例えばHUVEC(臍帯)、HSEC(肝臓類洞内皮細胞)、およびDMEC(真皮微小血管上皮)から単離された上皮細胞に対して有効であるが、HSAVEC(伏在静脈)からのものに対しては有効ではないことを示している。(d)の部分においては、AMPキナーゼ阻害剤であるコンパウンドCを10μg/mlにて30分間 PBLに添加された後、アディポネクチンを15μg/mlにて1時間添加した。AMPKは、アディポネクチン受容体シグナル伝達のために必要とされるシグナル伝達アダプターである。アディポネクチン処理は、遊出の減少を誘導したが、これはコンパウンドCの存在下では正常な対照レベルまで回復された。これらのデータは、アディポネクチンが、PBL上に発現されるその受容体に対する作用を通じて、リンパ球の遊出を制御する強い能力を有することを示している。データは、少なくとも3回の独立した実験をまとめたものであり、t検定、一元配置ANOVA、およびダネットの多重比較ポストテストを用いて解析された。**p≦0.01、***p≦0.001。
【0064】
〔T細胞はアディポネクチン受容体を有さない〕
前の実験の最も単純な解釈は、T細胞がAqの直接的制御下にあるということである。しかしながら、T細胞は適切な受容体を欠いている。しかしながら、他の白血球はAdipo- R1/2を有しており、単球およびB細胞はどちらも高いレベルの発現を示す。
【0065】
AdipoR1およびAdipoR2の両方のアディポネクチン受容体の発現を、ウサギ抗ヒトアディポネクチン受容体1および2抗体(フェニックスペプタイズ社)を使用したフローサイトメトリーによりPBMCに関して測定した。PBMC亜集団の汎用マーカー(垂直軸)に対して、アディポネクチン受容体発現を水平軸上に示す。AdipoR1およびAdipoR2は単球(CD14+)およびB細胞(CD19+)上に高度に発現されているが、T細胞(CD3+)上においては非常に低いレベルで発現されている。このことは、アディポネクチンはT細胞移動を直接的には制御し得ないことを示している。
【0066】
〔B細胞はT細胞輸送のアディポネクチン媒介性抑制のために必要である〕
図14を参照。内皮細胞を低血清培地中で培養し、アディポネクチンの非存在下で、TNF-α/IFN-γで24時間刺激した。ビーズによるポジティブ選択を用いたB細胞の除去後、および、ビーズによるネガティブ選択を用いて単離したB細胞による再構成後に、アディポネクチン(15μg/ml)の存在下または非存在下でPBL遊出を測定した。アディポネクチン処理B細胞、またはタンパク質分泌を遮断するためにブレフェルジンAで処理したB細胞からの上清を、PBLに添加した。
【0067】
末梢血リンパ球調製物からのB細胞の除去は、この応答を完全に阻害した。これは、やはりリンパ球移動を効果的に抑制する、アディポネクチンで刺激されたB細胞からの上清を使用して再構成することができるが、この効果は、B細胞分泌の阻害剤であるブレフェルジンAの存在下で上清が調製された場合には消失した。これらのデータは、B細胞から放出される可溶性メディエーターが必要とされることを示している。
【0068】
データは少なくとも3回の独立した実験をまとめたものであり、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの多重比較ポストテストを用いて解析された。*p≦0.05、***p≦0.001。
【0069】
〔B細胞から放出される14アミノ酸ペプチドがT細胞輸送を制御する〕
図15を参照。B細胞は、ネガティブ選択を用いて単離し、アディポネクチンとともに1時間インキュベートした。上清を回収して、C18カラムで精製して大きなサイズのタンパク質を除去し、質量分析器によって獲得した。AQ刺激B細胞からの上清の質量分析を用いたプロテオミクス解析により、SVTEQGAELSNEERという配列を有する14アミノ酸のペプチドが明らかとなった。これを、刊行された配列および予測されている配列のインシリコライブラリーと比較したところ、このペプチドは、単一のヒトタンパク質に対する正確な配列相同性を示し、すなわち14.3.3ゼータ/デルタ(14.3.3.ζδ)タンパク質の第28〜41アミノ酸を表し、このタンパク質はYWHAZ遺伝子の245アミノ酸産物である。このペプチドは、既知の免疫調節ペプチドのファミリーのいずれの構成員でもないし、それらのいずれかと関係していたり、配列類似性を有していたりもしない。質量分析による合成ペプチドの分析は、天然ペプチドと同一の質量:電荷比を示し(m/z=774.88)、このことは、B細胞由来の産物は放出に先立っていかなる形態の翻訳後修飾も受けていなかったことを実証している。これらのデータは、同定された14アミノ酸ペプチドが、アディポネクチン刺激下におけるB細胞から放出されるメディエーターであることを示している。
【0070】
〔PEPITEMはT細胞遊出を抑制する〕
図16を参照。内皮細胞を低血清培地中で培養し、アディポネクチンの非存在下で、TNF-α/IFN-γで24時間刺激した。PBLは、アディポネクチン(陽性対照として、15μg/ml)、または0.001〜10ng/mlの濃度の本ペプチドで処理し、スクランブル化ペプチドを陰性対照として使用した(10ng/ml)。本ペプチドの特異性を実証するために、その他の生活性ペプチドも使用した(すなわち、10ng/mlの破傷風トキソイドペプチド(TTp)および10ng/mlのプロインスリン(PI))。a)の部分は、PBL遊出が本ペプチドの存在下では用量依存的に減少したが、スクランブル化ペプチド対照、TTp対照、またはPI対照の存在下では減少しなかったことを示している。b)の部分は、非線形回帰分析を用いて本ペプチドのEC50(18.6pM)を算出したことを示す。これらのデータは、PEPITEMが、アディポネクチンと同様に、PBL遊出を抑制することができることを示している。データは少なくとも3回の独立した実験をまとめたものであり、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの多重比較ポストテストを用いて解析された。*p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001。
【0071】
〔PEPITEMは、T細胞移動を抑制し、かつ、抗炎症性調節性T細胞の徴集を促進する〕
図17を参照。内皮細胞を低血清培地中で培養し、アディポネクチンの非存在下で、TNF-α/IFN-γで24時間刺激した。PBLおよび異なるサブセットならびにPEPITEMを、異なる内皮細胞に添加し、遊出を測定した。異なるサブセットは、Treg、CD4+およびCD8+メモリーT 細胞ならびにナイーブT細胞についてのネガティブ選択を用いて単離した。ポジティブ選択を用いて異なる単球サブセットを単離した。
【0072】
(a)の部分は、PEPITEMが、異なる内皮細胞型において、アディポネクチンと同じパターンで、ECを通るT細胞移動を抑制することを示している。(b)の部分は、PEPITEMが、メモリーCD4+およびCD8+ T細胞の遊出を抑制することにおいて有効であるが、好中球または単球(CD16-およびCD16+のサブセットを含む)に対しては効果を有さないことを示している。この分析においては、ナイーブリンパ球は、内皮細胞単層に接着しないため、評価しなかった。(c)の部分は、調節性T細胞(Treg)(抗炎症性機能を有する)の移動の効率がPEPITEMによって上昇したことを示している。これらのデータは、PEPITEMが、メモリーT細胞およびTregの遊出を特異的に調節することができることを示している。
【0073】
データは、少なくとも3回の独立した実験をまとめたものであり、t検定および一元配置ANOVAならびにボンフェローニの多重比較ポストテストを用いて解析された。*p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001。
【0074】
〔PEPITEMは直接的にはT細胞移動を制御しない〕
図18を参照。内皮細胞(EC)を低血清培地中で培養し、アディポネクチンの非存在下で、TNF-α/IFN-γで24時間刺激した。PEPITEMをPBLとともに内皮細胞に加えるか、または、内皮細胞をPEPITEMで前処理して洗浄後にPBLを加えるか、または、PBLをPEPITEMで前処理して洗浄して内皮細胞に加えた。
【0075】
PBLをPEPITEMで処理して、この因子を洗い流した後に内皮上でのアッセイを行った場合には、リンパ球移動の効率は影響されなかった。しかしながら、内皮細胞をPEPITEMで前処理すると、リンパ球輸送の抑制がもたらされた。これらのデータは、PEPITEMが、内皮細胞を刺激してT細胞輸送を抑制する因子を放出させることにより働くことを示している。
【0076】
データは3回の独立した実験をまとめたものであり、対応のあるt検定を用いて解析した。*p≦0.05、**p≦0.01。
【0077】
〔内皮細胞によるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)合成の誘導がT細胞移動を抑制する〕
図19を参照。IFN-γ/TNF-α処理したHUVECを通したPBLまたはB細胞枯渇化PBLの遊出を、S1PRアンタゴニスト(W146、10μM)を用いてS1Pシグナル伝達を遮断した後に、アディポネクチン(15μg/ml)(a)またはPEPITEM(b)の存在下または非存在下において測定した。B細胞枯渇化PBLは、異なる濃度(0〜100μM)のS1Pで前処理され、IFN-γ/TNF-α処理HUVECを通した遊出を測定した(c)。SPHK1およびSPHK2のmRNA発現のレベルは、B細胞およびHUVEC(dの部分、n=2)からのRNAのリアルタイムPCRにより決定した。PEPITEM(10 ng/ml)の存在下、SPHK1特異的阻害剤(5μM)で前処理したIFN-γ/TNF-α処理HUVECを通したPBL遊出を測定した(e)。
【0078】
データは、T細胞上のS1P受容体の拮抗が、T細胞遊出に対するアディポネクチンおよびPEPITEMの抑制の喪失をもたらすことを示している(a、bの部分)。(c)の部分は、B細胞枯渇化T細胞へのS1Pの添加が、遊出の抑制を回復させることを示している。(d)の部分は、HUVECにおける S1Pキナーゼ1および2の高度な発現を示している(SPHK1および2)。(e)の部分は、SPHK1の阻害が、リンパ球をPEPITEMの抑制作用から解放することを示している。これらのデータは、PEPITEMが内皮細胞を刺激してS1Pを放出させ、それがリンパ球遊出を抑制することを示している。
【0079】
データは少なくとも3回の独立した実験をまとめたものであり、t検定および一元配置ANOVAならびにボンフェローニの多重比較ポストテストを用いて解析された。*p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001。
【0080】
〔S1Pはリンパ球インテグリンLFA-1の親和性を調節する〕
図20を参照。96ウェルプレートを50ug/mlの組換えICAMで4℃にて一晩コーティングした。PBS 4% BSAを用いて1時間室温にてプレートをブロッキングし、IP-10(10ng/ml)および/またはS1P(10uM)で処理したPBLを30分間添加した。剰余の未結合PBLを洗い流し、リンパ球インテグリンLFA-1(CD11a/CD18;αLβ2)の中間親和性部位についてはKIM127抗体(10ug/ml)を使用して、高親和性部位については抗体24(10ug/ml)を使用して、4℃にてPBLを標識した。平均蛍光強度(MFI)を使用して、メモリーT細胞について両方の親和性部位の発現を測定した。データは、IP-10刺激により増加した中間親和性部位および高親和性部位の両方の発現が、S1Pの存在下で下方調節されることを示している。このデータは、S1Pが、リンパ球遊出にとって重要であるインテグリンLFA-1の親和性を調節することにより、リンパ球遊出を制御することを示している。データは2つの独立した実験をまとめたものである。
【0081】
〔野生型マウス、または本ペプチドの存在下もしくは非存在下でのB細胞ノックアウトマウスの炎症腹膜におけるT細胞の絶対数〕
図21を参照。(a)の部分では、野生型マウスまたはB細胞ノックアウト(Jh-/-)BALB/cマウスに100ugのザイモサンを注射した。本ペプチドもしくはスクランブル化ペプチドを伴わせて、または伴わせないで、ザイモサン(または対照としてのPBS)を48時間注入した後に、腹膜から白血球を回収した。T細胞はCD3の発現により同定した。本ペプチドまたはスクランブル化ペプチドは、300μg/マウスという最終濃度にて注射された。その結果を(a)の部分に示しているが、そこでは、各群におけるデータは平均であり、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの多重比較ポストテストを用いて解析された。*p≦0.01。(b)の部分では、野生型マウスまたはB細胞ノックアウトC56BL/6マウスにネズミチフス菌(Salmonella typhirium)を注射した。5日後、肝臓を採取して、切片をT細胞について染色した。(b)の部分のデータは、肝臓切片における感染部位あたりのT細胞の数を示す。
【0082】
このデータは、マウスにおけるB細胞の不在が、ザイモサン誘導性炎症およびサルモネラ感染の際に、腹膜に、より高度なT細胞の徴集をもたらすことを示している。これは、PEPITEMによってザイモサン処置B細胞ノックアウトマウスにおいて低減されたが、スクランブル化対照によっては低減されなかった。これらのデータは、B細胞が、炎症部位においてPEPITEMを放出することによって、インビボの炎症の際にT細胞の徴集を制御するために重要となることを示している。
【0083】
〔1型糖尿病の患者においてアディポネクチン/PEPITEM経路は改変される〕
図22を参照。アディポネクチン受容体AR1またはAR2を発現するPBLの頻度を、フローサイトメトリーによって各々の健康被験者または疾患被験者について決定し、それぞれ(a)および(b)の部分に示している。データは平均±SEMとして表され、t検定、またはデータがコルモゴロフ・スミルノフ正規性検定を通らない場合にはマン・ホイットニーt検定を用いて解析した。内皮細胞を低血清培地中で培養し、アディポネクチンの非存在下で、TNF-α/IFN-γで24時間刺激した。健常者対照および1型糖尿病の患者からPBLを単離し、15μg/mlのアディポネクチンで1時間処理した。(c)の部分は、AdipoR2の発現とリンパ球移動の抑制との間の相関を示している。相関は線形回帰分析を用いて決定した。(d)の部分は、新たに診断された1型糖尿病患者に由来し、アディポネクチンまたはPEPITEMで前処理されたPBL(n=5)の遊出を示す。データはt検定を用いて解析した。**p<0.01。
【0084】
(a)および(b)の部分では、1型糖尿病の患者由来のPBLにおいて両方のアディポネクチン受容体(AdipoR1/2)の発現がより低いという結果が示され、(b)の部分では、AdipoR2の発現が低いほど、リンパ球遊出を抑制するアディポネクチンの能力がより低いことが示されており、(d)の部分では、それでもなおPEPITEMがリンパ球遊出を抑制することができた。
【0085】
1型糖尿病の患者由来のリンパ球は、アディポネクチン受容体の発現がより低いために、アディポネクチンの抑制作用から解放されているが、PEPITEMの外的添加によりそれが回復され得ることを、このデータは示している。