(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055846
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】排気ガスターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
F02B39/00 T
F02B39/00 H
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-554766(P2014-554766)
(86)(22)【出願日】2013年1月22日
(65)【公表番号】特表2015-505013(P2015-505013A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】US2013022446
(87)【国際公開番号】WO2013112424
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2015年9月11日
(31)【優先権主張番号】102012001570.4
(32)【優先日】2012年1月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィオ・コッホ
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−153569(JP,A)
【文献】
特開2010−193644(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/129404(WO,A2)
【文献】
実開平01−162046(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサ(2)を備え、
タービン(3)を備え、
軸方向の変位及び捻れに対抗して固定された軸受カートリッジ(5)が配置される軸受ハウジング(4)を備え、かつ
前記軸受ハウジング(4)内の軸方向の変位及び捻れの両方に対抗して前記軸受カートリッジ(5)を固定する単一の固定要素(6)であって、前記固定要素(6)が、互いに合流する挿入凹部(8)と保持凹部(9)とを有し、前記挿入凹部(8)と前記保持凹部(9)とが互いに合流して閉じた構造を形成する、単一の固定要素(6)を備える、排気ガスターボチャージャ(1)において、
前記挿入凹部(8)が前記保持凹部(9)の直径(D9)よりも大きい直径(D8)を有し、取り付け方向視で、前記保持凹部(9)が前記挿入凹部(8)の下方に配置されるように、前記固定要素(6)はキーホール原理に基づき形成されていることを特徴とする、排気ガスターボチャージャ(1)。
【請求項2】
ラッチ突起部(10)が前記保持凹部(9)に配置される請求項1に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項3】
前記軸受カートリッジ(5)が、形状、寸法決め及び位置決めに関して前記ラッチ突起部(10)に整合されるラッチ凹部(11)を有する請求項2に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項4】
前記固定要素(6)が、少なくとも1つの捻れ防止ねじ(14、15)の通過のために少なくとも1つの穿孔穴(12、13)を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項5】
前記固定要素(6)が、組立状態で前記軸受ハウジング(4)の1つまたは複数の関連の穿孔穴と相互作用する1つまたは複数の捻れ防止ピンを有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項6】
軸受カートリッジ(5)を排気ガスターボチャージャ(1)の軸受ハウジング(4)に組み立てるための方法であって、
固定要素(6)の挿入凹部(8)が前記軸受カートリッジ(5)に押圧されるステップと、
前記固定要素(6)のラッチ突起部(10)を前記軸受カートリッジ(5)の前記ラッチ凹部(11)に挿入すると同時に、前記軸受カートリッジ(5)の溝(20)の底部領域が、キーホール原理に基づき形成された前記固定要素(6)の保持凹部(9)に挿入されるステップであって、前記保持凹部(9)の直径(D9)が、前記挿入凹部(8)の直径(D8)よりも小さく、取り付け方向視で、前記保持凹部(9)が前記挿入凹部(8)の下方に配置されるステップと、
前記軸受カートリッジ(5)と前記固定要素(6)とから構成された予め組み立てられたユニットを前記軸受ハウジング(4)に挿入するステップと、
捻れ防止手段(14、15)を前記固定要素(6)と前記軸受ハウジング(4)との間に取り付けるか又は導入するステップと、
軸受ハウジングカバー(7)を前記軸受ハウジング(4)に締結するステップと、
を含む方法。
【請求項7】
使用する前記捻れ防止手段が、前記軸受ハウジング(4)の関連のねじ付き凹部内にねじ留めされる少なくとも1つのねじ(14、15)である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記固定要素(6)の1つまたは複数の要素が、前記捻れ防止手段として前記軸受ハウジング(4)の1つまたは複数の関連の穿孔穴に挿入される請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記軸受ハウジングカバーが前記捻れ防止手段として利用される請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記軸受ハウジングカバーが、位置決め補助及び捻れ防止手段として利用される請求項6に記載の方法。
【請求項11】
別個の後板が、位置決め補助及び捻れ防止手段として利用される請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の排気ガスターボチャージャ、かつ、軸受カートリッジを排気ガスターボチャージャの軸受ハウジングに組み立てるための請求項7に記載の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チャージャシャフトを取り付けるために、一般的なタイプの排気ガスターボチャージャは、軸受カートリッジ又は軸受インサートとも称される軸受ユニットを有する。このタイプのカートリッジは、平軸受システムにおいて、及び、転がり軸受に取り付けられたシステムのために、の両方に使用することができる。
【0003】
固定要素は、軸受カートリッジを軸受ハウジング内の所定位置に保持するために使用され、カートリッジの軸方向の変位に対抗して位置保持すること、及び軸受ハウジングの捻れに対抗してカートリッジを保持することは、例えば軸受カートリッジの端部に配置された別個の固定要素によって実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対照的に、本発明の目的は、請求項1の前提部に示したタイプの排気ガスターボチャージャ、同様に、組立の単純化を可能にし、かつ組立をより費用効果的にする、軸受カートリッジをこのような排気ガスターボチャージャの軸受ハウジングに組み立てるための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の特徴によって、及び請求項7に記載の特徴によって達成される。本発明による排気ガスターボチャージャの固定要素は、いわゆる「キーホール原理」に基づき形成され、この原理により、軸方向の変位及び捻れの両方に対抗して軸受カートリッジを固定する単一の固定要素のみを軸受ハウジングに設けることが可能になる。
【0006】
単純化した組立に加えて、これにより、部品数の低減がもたらされ、かつ軸方向及び円周方向の位置決めの統合の可能性がもたらされる。
【0007】
従属請求項は、本発明のある有利な発展形態を含む。
【0008】
ラッチ突起部が固定要素に設けられ、軸受カートリッジの対応するラッチ凹部と相互作用し、ひいては、カートリッジと固定要素との間の捻れ防止手段を形成する。
【0009】
軸受ハウジングに対する捻れに対抗して固定要素を固定するために、軸受ハウジングカバーが予張力付与要素として利用される。このために、雄ねじを軸受ハウジングカバーに設け、したがって、カートリッジに予張力を付与することが可能である。代わりに、1つまたは複数の凹部を固定要素に設けることが可能であり、この凹部を通して、軸受ハウジング内にねじ留めされる捻れ防止ねじを案内することができる。さらに、凹部の代わりに、1つまたは複数の要素を固定要素に形成することが可能であり、次に、これらの要素が軸受ハウジング内に設けられ、このことにより、直接の位置割当及び捻れ防止がもたらされるであろう。この場合も、軸受ハウジングカバーは予張力付与要素として使用される。さらに、軸受ハウジングカバーは、位置決め補助及び捻れ防止手段として利用することができる。この点に関し、軸受ハウジング内及び固定要素内の穿孔穴又はねじ付き穿孔穴と相互作用するねじ又は控えボルトを設けることが好ましい。
【0010】
最後に、位置決め補助及び捻れ防止手段として別個の後板を利用することが考えられる。この点に関しても、軸受ハウジング内及び固定要素内の穿孔穴又はねじ付き穿孔穴と相互作用するねじ又は控えボルトを設けることができる。
【0011】
請求項7〜9は、本発明による方法を規定している。
【0012】
本発明のさらなる詳細、利点及び特徴は、図面を参照して例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による排気ガスターボチャージャの単純化した概略図である。
【
図2】
図1に示した排気ガスターボチャージャの軸受ハウジングの僅かに単純化した概略斜視図である。
【
図4A-F】本発明による組立方法の組立ステップの順序を説明するための軸受カートリッジ及び固定要素、同様に軸受ハウジングの図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、タービン3及びコンプレッサ2を有する本発明によるターボチャージャ1を示している。説明を単純化するために、コンプレッサハウジングもタービンハウジングも示されていないが、これらの部分は、本発明の原理を説明するために必要でないからである。
【0015】
チャージャ又はロータシャフト16を取り付けるために、コンプレッサ2とタービン3との間に軸受ハウジング4が設けられ、この軸受ハウジングに、ロータシャフト16用の軸受カートリッジ5が配置される。軸受カートリッジ5は、この点に関して、平軸受装置及び転がり軸受装置の両方として形成されることができる。
【0016】
軸受ハウジング4内の捻れとともに、軸方向の変位にも対抗して軸受カートリッジ5を固定するために、固定要素6が設けられ、これは軸受ハウジング4に組み立てられる状態で
図2に示されている。このために、固定要素6は軸受カートリッジ5を囲み、捻れ防止手段によって軸受ハウジング4に対して固定され、捻れ防止手段は、図示した例示的な実施形態では、固定要素6の2つの関連の穿孔穴12と13(これらは
図3に見ることができる)に挿入される2つの捻れ防止ねじ14と15を備える。
【0017】
このために、固定要素6は、2つの拡大した本体部分18と19が両側に設けられる環状本体17を有し、特に
図3から詳細に明らかなように、この本体部分に穿孔穴12と13が配置される。
【0018】
関連の直径D
8を有する挿入凹部8及び関連の直径D
9を有する保持凹部9も、本体17に配置される。
図3に示したように、挿入凹部8及び保持凹部9は、
図3に破線円5で示した軸受カートリッジを受容できるために互いに合流する。
【0019】
さらに、
図3は、
図3に選択した図面によれば、ラッチ突起部10が保持凹部9の底部に設けられ、カートリッジ5の例えば
図4Bに見ることができるラッチ凹部11と相互作用することを示しており、相互作用は、例えば、組立状態を示している
図2から生じる。
【0020】
最後に、
図3は、直径D
8が直径D
9よりも大きく、これにより「キーホール原理」が付与されることを示している。
【0021】
本発明による方法の組立ステップは、さらに、
図4A〜
図4Fの概要から分かる。
【0022】
上述の方法で形成される軸受カートリッジ5及び固定要素6を設けた後に、最初に、固定要素6の大きな挿入凹部8が軸受カートリッジ5に押圧される。このことは、
図4a及び
図4bの概要から現れる。
【0023】
次に、
図4C及び
図4Dに選択した図面によれば、軸受カートリッジ5が下方に移動され、この結果、軸受カートリッジは溝20の底部領域を有する比較的小さな保持凹部9内に係合するが、底部領域は
図4A〜
図4Cに見ることができない。特に、
図4C及び
図4Dの概要は、ラッチ突起部10がこの場合軸受カートリッジの関連のラッチ凹部11内に係合し、したがって、固定要素6に対する捻れに対抗して軸受カートリッジ5を固定することを示している。
【0024】
軸受カートリッジ5及び固定要素6から成るこのように予め組み立てられたユニットは、
図4Eの図面によれば、次に軸受ハウジング4に挿入される。捻れを防止するために、
図2に見えるねじ14と15とのねじ接続が行われ、これらのねじは、凹部12と13を通って到達し、軸受ハウジング4内にねじ留めすることができる。この代わりとして、1つまたは複数の要素を固定要素に一体化して設けることが可能であり、次に、これらの要素は、軸受ハウジング4の相応して形成された1つまたは複数の凹部内に係合するが、このことは、図には代替方法として示されていない。
【0025】
最後に、軸受ハウジングカバー7が軸受ハウジング4に締結され、システム全体を軸受ハウジング4の所定位置に軸方向に保持する。
【0026】
上述の開示に加えて、上述の開示を補完するために、特に固定要素6の成形に関して、
図1〜
図4Fの本発明の例示的な図面が参照される。
【符号の説明】
【0027】
1 排気ガスターボチャージャ
2 コンプレッサ
3 タービン
4 軸受ハウジング
5 軸受カートリッジ
6 固定要素
7 軸受ハウジングカバー
8 挿入凹部
9 保持凹部
10 ラッチ突起部
11 ラッチ凹部
12、13 穿孔穴
14、15 捻れ防止ねじ
16 ロータシャフト
17 本体
18、19 拡大本体領域
20 カートリッジ5の溝
D8 係合リセス8の直径
D9 保持凹部9の直径