(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
特定の一実施形態においては、シールリングの形成方法は、押出ロッドを加熱するステップと、押出ロッドを曲げるステップと、押出ロッドの端部を接合して半完成リングを形成するステップと、半完成リングをアニールするステップとを含む。半完成リングは、機械加工またはさらなる処理によって、シールリング、バックアップリング、またはその他のシール手段を形成することができ、本明細書においては一括してシールリングと呼んでいる。一例においては、押出ロッドの端部を接合するステップは、端部を溶融させ、端部を互いに押し付けることによって、押出ロッドの端部を溶着するステップを含む。特に、押出ロッドを加熱するステップは、ガラス転移温度より高温までロッドを加熱するステップを含む。たとえば、押出ロッドは、0.65〜0.999の範囲内の熱指数まで加熱することができる。さらなる一例においては、半完成リングは、ガラス転移温度よりも高い温度で少なくとも2時間アニールされる。
【0010】
別の代表的な一実施形態においては、シールリングは、ASTM D638試験規格による溶着部破断時伸びが少なくとも5%である押出熱可塑性材料を含む。シールリングは、少なくとも1.5メートルの円周を有する。たとえば、シールリングは少なくとも1.3メートルの直径を有することができる。一例においては、シールリングは少なくとも1つの溶着部を含む。特定の一例においては、押出熱可塑性材料は、100℃を超えるガラス転移温度を有する熱可塑性材料を含む。さらなる一例においては、押出熱可塑性材料は、0.45以下の摩擦係数を有する。さらに、熱可塑性材料は、少なくとも3100psi(21.4MPa)の降伏引張強度を有することができる。
【0011】
図1中に示されるように、シールリング100は、熱可塑性ロッド102を含むことができる。一例においては、熱可塑性ロッドは、溶解押出ロッドなどの押出熱可塑性ロッドである。特に、押出熱可塑性ロッドは、ペースト押出されたものではない。あるいは、ロッド102は圧縮成形ロッドであってよい。熱可塑性ロッド102の端部は、溶着部104において接合することができる。
図2中に示される別の一実施形態においては、シールリング200は熱可塑性ロッド202および204を含むことができる。熱可塑性ロッド202および204は、それらの端部で溶着部206および208において接合することができる。本明細書に記載の方法は、1つの曲げられたロッドから形成されるシールリングに関して一般的に説明するが、本発明の方法は、2つ以上の熱可塑性ロッド、たとえば、2、3、4またはそれを超える数の押出ロッドから形成されるシールリングに拡張することができる。
【0012】
図3は、シールリングを形成するための代表的な方法300の図である。この方法は、302に示されるように押出熱可塑性ロッドを加熱するステップを含む。あるいは、ロッドは圧縮成形ロッドであってもよい。熱可塑性ロッドは、エンジニアリング熱可塑性ポリマーまたは高性能熱可塑性ポリマーなどの熱可塑性材料から形成することができる。たとえば、熱可塑性材料は、ポリケトン、ポリアラミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアミドイミド、超高分子量ポリエチレン、熱可塑性フルオロポリマー、ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、液晶ポリマー、またはそれらのあらゆる組み合わせなどのポリマーを含むことができる。一例においては、熱可塑性材料は、ポリケトン、ポリアラミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、フルオロポリマー、ポリベンゾイミダゾール、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。特定の一例においては、熱可塑性材料は、ポリケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせなどのポリマーを含む。さらなる一例においては、熱可塑性材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせなどのポリケトンを含む。熱可塑性フルオロポリマーの一例としては、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのターポリマー(THV)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、またはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。代表的な液晶ポリマーとしては、XYDAR(登録商標)(Amoco)、VECTRA(登録商標)(Hoechst Celanese)、SUMIKOSUPER(商標)またはEKONOL(商標)(住友化学)、DuPont HX(商標)またはDuPont ZENITE(商標)(E.I.DuPont de Nemours)、RODRUN(商標)(ユニチカ)、GRANLAR(商標)(Grandmont)の商品名で市販されるもの、あるいはそれらのあらゆる組み合わせなどの芳香族ポリエステルポリマーが挙げられる。さらなる例においては、熱可塑性ポリマーは超高分子量ポリエチレンであってよい。超高分子量ポリエチレンは、ガラス転移温度が約−160℃であるにもかかわらずこの方法に使用することができる。
【0013】
熱可塑性材料は、固体潤滑剤、セラミックまたは無機フィラー、ポリマーフィラー、繊維フィラー、金属粒子フィラー、または塩類、あるいはそれらのあらゆる組み合わせなどのフィラーを含むこともできる。代表的な固体潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒鉛、グラフェン、膨張黒鉛、窒化ホウ素、タルク、フッ化カルシウム、フッ化セリウム、またはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。代表的なセラミックまたは無機物としては、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、フッ化カルシウム、窒化ホウ素、マイカ、ウォラストナイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、カーボンブラック、顔料、またはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。代表的なポリマーフィラーとしては、ポリイミド、Ekonol(登録商標)ポリエステルなどの液晶ポリマー、ポリベンゾイミダゾール、ポリテトラフルオロエチレン、前述のいずれかの熱可塑性ポリマー、またはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。代表的な繊維としては、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリアラミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、バサルト繊維、黒鉛繊維、セラミック繊維、またはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。代表的な金属としては、青銅、銅、ステンレス鋼、またはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。代表的な塩としては、硫酸塩、硫化物、リン酸塩、またはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。
【0014】
代表的な一実施形態においては、ロッドは押出複合材料から形成することができる。たとえば、複合材料は、熱可塑性材料のマトリックスとフィラーとから形成することができる。特定の一例においては、フィラーは固体潤滑剤である。別の一例においては、フィラーはフルオロポリマーを含む。さらなる一例においては、フィラーは、固体潤滑剤とフルオロポリマーとの組み合わせを含む。一実施形態においては、複合材料は、PEEKなどのポリケトンマトリックスを含み、固体潤滑剤フィラーを含む。別の代表的な一実施形態においては、複合材料は、PEEKなどのポリケトンマトリックスを含み、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維またはそれらのあらゆる組み合わせから選択することができる炭素フィラーを含む。
【0015】
さらなる一実施形態においては、ロッドは、部分的に複合材料から形成され、部分的に無充填材料から形成されてもよい。
図8中に示されるように、ロッド900は、複合材料から形成された中央部分902を含むことができ、無充填ポリマーから形成された端部部分904および906を含むことができる。たとえば、中央部分902は、PTFEが充填されたPEEK材料などの充填剤入りポリマーであってよく、端部部分は904および906はニートPEEKなどの無充填ポリマーから形成することができる。特定の一実施形態においては、
図8のロッド900などのロッドは、長手方向軸に沿って組成が変化する押出材料から形成することができる。たとえば、
図9は、複合部分1002と無充填部分1004とを含む押出材料1000の図である。一例においては、押出材料1000は、無充填部分1004において切断して、
図8のロッド900などのロッドを形成することができる。特定の一例においては、押出材料1000は、1つのダイから2種類の材料を押し出し、向かい合わせとなるように2種類の材料の押出速度を変化させることによって形成することができる。
【0016】
一例においては、押出ロッドを加熱するステップは、ロッドの熱可塑性材料のガラス転移温度よりも高温に押出ロッドを加熱するステップを含む。特に、熱可塑性ロッドはガラス転移温度よりも高いが熱可塑性材料の融点よりも低い温度に加熱することができる。たとえば、押出熱可塑性ロッドは、0.60〜0.999の範囲内の熱指数に加熱することができる。熱指数は、材料が加熱される温度を融点で割った比である。さらなる一例においては、熱指数は0.70〜0.999の範囲内、たとえば0.8〜0.999の範囲内、さらには0.9〜0.99の範囲内であってよい。
【0017】
一例においては、熱可塑性材料は、少なくとも250℃の融点を有する。たとえば、熱可塑性材料は、少なくとも300℃、たとえば少なくとも320℃の融点を有することができる。さらに、熱可塑性材料は、少なくとも100℃、たとえば少なくとも125℃、さらには少なくとも145℃のガラス転移温度を有することができる。これの例外は超高分子量ポリエチレンであり、これはガラス転移温度が−160℃であり、融点が135℃である。
【0018】
図3に戻ると、加熱した後、304に示されるように、押出熱可塑性ロッドが曲げられる。たとえば、熱可塑性ロッドがガラス転移温度よりも高い温度にあるときに、ロッドを所望の形状に曲げることができる。一例においては、3本ローラーシステムの間でロッドが使用される。別の一例においては、ロッドを曲げて、金型中に入れることができる。さらなる一例においては、ロッドを円形金型に固定して、その金型を回転させることによって曲げることができる。熱可塑性ロッドを曲げるための代表的な機構の1つを
図5に示しており、以下により詳細に説明する。
【0019】
特定の一例においては、ロッドは直線状のロッドである。さらに、ロッドは円形断面または多角形断面などの断面を有することができる。一例においては、断面は、少なくとも4つの辺を有する多角形などの多角形断面である。特に、多角形は長方形または正方形であってよい。加熱し曲げるための別の方法の1つとして、押出ロッドを弓形部分の形に押し出し、弓形部分の端部を接合してシーリング手段を形成することができる。別の方法の1つにおいては、押出シートまたは圧縮成形シートなどの材料のシートから弓形部分を切り取り、その弓形部分の端部を接合することができる。
【0020】
曲げた後、
図3の306に示されるようにロッドの端部が接合される。たとえば、ロッドの第1および第2の端部を互いに接合することができる。別の一例においては、ロッドの端部を、もう1つのまたはその他のロッドのそれぞれの端部に接合することができる。ロッドの端部は、ホットメルト溶着、射出成形、接着剤、超音波溶着、またはそれらのあらゆる組み合わせによって接合することができる。特定の一例においては、ロッドの端部は、ホットメルト溶着によって接合される。たとえば、ホットメルト溶着は、ロッドの端部に熱源を使用して、端部に近接するロッド部分を溶融させ、溶融させた後、端部を互いに押し付けることを含むことができる。このような一例においては、ロッドの端部は溶融するが、ロッド全体は溶融しない。
【0021】
接合した後、押出ロッドから半完成リングが形成される。この半完成リングは、308で示されるようにアニールすることができる。一例においては、半完成リングは、熱可塑性材料のガラス転移温度よりも高温でアニールされる。半完成リングは、少なくとも2時間アニールすることができる。半完成リングは、さらに機械加工または処理することによって、シールリングを形成することができる。
【0022】
さらなる一実施形態において、
図4は、402に示されるように押出ロッドの加熱を含む代表的な方法400を示している。たとえば、押出ロッドは、PEEKなどの熱可塑性材料を含むことができる。ロッドは直線状ロッドであってよい。一例においては、PEEKは約343℃の融点を有することができる。押出ロッドは、200℃〜342℃の範囲内の温度に加熱することができる。特定の一例においては、押出ロッドは熱風炉中で加熱される。
【0023】
加熱後、404に示されるように押出ロッドを曲げることができる。たとえば、熱可塑性ロッドが、ガラス転移温度よりも高い温度、好ましくは0.6〜0.999の範囲内の熱指数を有する温度にあるときに、ロッドが曲げられる。特定の一例においては、ロッドは、
図5中に示される機械などの成形機中に挿入し、所望の形状に曲げることができる。
【0024】
たとえば、
図5は、代表的な成形機500の図である。成形機500は、軸503のまわりで回転する円形金型502を含む。円形金型502の円周の周囲には、物品506をはめこむための溝504が存在する。特に、物品506は、クランプ508によって溝の中に留めることができる。さらに、成形機500は、円形金型502の円周の周囲に分布する1組のローラー510を含むことができる。ローラー510の軸は、軌道512またはガイドロッドを移動するトラックに取り付けることができる。したがって、ローラー510は、円形金型502と係合することができるし、円形金型502から外れて離れることもできる。
【0025】
使用中、クランプ508が、物品506を円形金型502に固定する。円形金型502が回転し、クランプ508は円形金型502とともに回転して、物品506は、円形金型502の円周の周囲に引き寄せられて溝504の中に入る。クランプ508がローラー510を通過するときに、ローラー510が物品506および円形金型502と係合し、それによって、物品506に半径方向の力が加わる。したがって、物品506は、シールリングの形成に使用可能な弓形部分構造に成形される。さらなる一例においては、円形金型502は、伝導熱によって物品506を加熱することができる。別の一例においては、曲げるステップは、オーブンなどの熱環境中で行うことができる。
【0026】
図4に戻ると、曲げられた押出ロッドは、406に示されるように、冷却することができる。たとえば、曲げられた押出ロッドは、ガラス転移温度よりも低温に冷却することができる。特に、曲げられた押出ロッドは室温付近の温度まで冷却することができる。一例においては、曲げられたロッドは、強制対流を使用して冷却される。続いて、曲げられたロッドを金型から取り外すことができる。
【0027】
一例においては、曲げた後の半径方向厚さとなる押出ロッドの断面の厚さは、曲げられた押出ロッドの弓形部分によって画定される円の外径の1/5未満すなわち20%未満とすることができる。たとえば、曲げられたロッドによって画定される弓形部分を含む円の外径は、ロッドの半径方向厚さの少なくとも5倍、たとえば半径方向厚さの少なくとも10倍、さらには半径方向厚さの少なくとも20倍とすることができる。特定の一実施形態においては、半径方向厚さは少なくとも1インチ、たとえば少なくとも2インチである。
【0028】
押出ロッドの断面は、円形または多角形であってよい。特に、多角形は少なくとも3つの辺、たとえば少なくとも4つの辺を有することができる。一例においては、多角形は4つの辺を有する断面、たとえば長方形または正方形である。特定の一例においては、ロッドの断面積は少なくとも1平方インチ、たとえば少なくとも2平方インチ、さらには少なくとも3平方インチである。さらに、断面積は50平方インチを超えなくてもよい。
【0029】
ロッドの端部の接合の準備において、408に示されるように、場合によりロッドを乾燥させることができる。たとえば、ロッドは100℃を超える温度に加熱することができる。特定の一例においては、ロッドは、少なくとも約110℃、たとえば少なくとも130℃、さらには少なくとも約145℃の温度に、少なくとも1時間、たとえば少なくとも2時間、さらには3時間以上加熱することができる。あるいは、ロッドは、高温状態であるが、ガラス転移温度より低温である金型から取り外すことができる。ロッドが高温状態にあるとき、後述の溶融溶着法などによって端部を接合することができ、これによって、さらなる乾燥ステップを行わずに乾燥状態にロッドが維持される。
【0030】
乾燥後、押出ロッドの端部を、溶融溶着などによって接合することができる。一例においては、410に示されるように、ロッドの端部を溶融させ、互いに押し付けて、412に示されるように、半完成リングを形成する。一例においては、熱源を使用して端部を溶融させる。たとえば、熱源は、両方の端部が熱源に接触し伝導によって溶融する接触熱源であってよい。一例においては、接触熱源は加熱された平坦な板である。別の一例においては、熱源は、放射熱源または伝導熱源などの非接触熱源であってよい。あるいは、端部は、マイクロ波技術などの高周波技術、誘導技術、レーザー技術、またはそれらのあらゆる組み合わせなどの技術を使用して接合することができる。
【0031】
図10および
図6は、代表的な熱溶着装置の図である。たとえば、
図10に示されるように、熱溶着装置600は、曲げられた熱可塑性ロッドのそれぞれの端部606および608を固定するための1組の固定具602および604を含むことができる。固定具602および604は、レール610および612に沿った経路中に導くことで、端部606および608を互いに対して移動させることができる。駆動機構614および616によって、固定具602および604をレール610および612に沿って移動させることができる。一例においては、駆動機構614および616は、端部606および608に加えられる力を制御するためにロードセルが取り付けられたサーボモーターであってよい。あるいは、駆動機構614および616は、液圧式、電気化学式、誘導式、空気式、またはその他の駆動装置であってよい。さらに、溶着装置600は、位置620においてリングの外径まで延在するアーム622を含むことができる。アーム622は、たとえば、卵子形(ovular)または卵形ではなく円形を形成するようにリングの外径を束縛することができる。たとえば、アーム622は、リングの半径の中心に向かう力などの半径方向の力をリングに加えることができる。あるいは、円形のリング、卵子形(ovular)のリング、または卵形のリングなどの所望の形状を形成するのに、リングの直径を束縛するために、2つ以上のアームを使用することができる。
【0032】
熱溶着装置600は、加熱装置618をも含むことができる。使用中には、加熱装置618は、端部606および608の経路中を移動することができる。接触加熱装置の場合、端部606および608を移動させ、加熱装置618の両側と接触させて、端部606および608を溶融させることができる。別の一例においては、加熱装置618は非接触加熱装置であってよい。代表的な非接触加熱装置の1つを
図6に示す。たとえば、非接触加熱装置700は、放射熱源または伝導熱源などの熱源702を含むことができる。一実施形態においては、熱源702は、プレート708によって端部606および608から離されている。端部は、プレート708の近傍に配置され加熱されることで、端部606および608の溶融部分と未溶融部分との間に平坦な界面を有する溶融領域を形成する。一例においては、プレート708は、開口部や空洞を含まない。図示される実施形態においては、非接触加熱装置700は、場合により空洞または開口部704を含むことができる。場合により、加熱装置700は、空洞または開口部704の周囲に縁706を含むことができる。空洞または開口部704と類似の空洞または開口部を、加熱装置700の反対側の面上に配置することができる。あるいは、空洞または開口部を有する2つ以上の熱源を使用して、端部606および608を溶融させることができる。
【0033】
使用中には、端部606および608は、プレート708の近傍に配置することができるし、加熱装置700の空洞または開口部704が存在する場合にはその中に挿入することもできる。端部606および608は熱源702とは接触しない。たとえば、端部606および608は、熱源702から5mm未満、たとえば熱源702から2mm以下、さらには1mm以下の位置に配置することができる。溶融後、端部606および608は、空洞または開口部704が存在する場合にはそこから引き離される。加熱装置618はロッド606および608の経路から外され、ロッド606および608は、駆動機構614および616によって動かされた固定具602および604によって、互いに押し付けられる。溶着プロセス中にリングの外径を束縛するためにアームを使用することができる。
【0034】
図4に戻ると、押出ロッドの端部は、少なくとも50psiの圧力で互いに押し付けることができる。たとえば、圧力は、少なくとも75psi、たとえば少なくとも100psiであってよい。特定の一実施形態においては、非接触熱源および望ましい圧力を使用することで、所望の強度および耐久性を有し空隙を実質的に有さない溶着部が得られる。たとえば、ロッドの端部の間から材料の一部が押し出されるのに十分な力で、端部が互いに押し付けられる。一例においては、ロッドの両端の十分な部分を溶融させ、ロッド断面1平方インチ当たりロッドの少なくとも1/8インチに相当する材料を押し出すのに十分な力で、ロッドの端部が互いに押し付けられる。たとえば、端部を互いに押し付けることで、ロッド断面1平方インチ当たりロッドの少なくとも1/4インチが押し出されてよく、たとえばロッド断面1平方インチ当たり少なくとも1/2インチが押し出される。溶着中に周囲環境より溶融物を高い圧力に維持することによって、空隙を減少させることができる。より高い圧力を維持するための別の方法としては、真空環境中で溶着することによって周囲圧力を下げること、または溶融した端部が互いに押し付けられるときに溶融した端部の間から溶融材料が押し出される性質を束縛することが挙げられる。特に、このような方法によって、0.4mmを超える最長寸法を有する空隙がない溶着部として定義される無空隙溶着部が得られる。
【0035】
溶着後、414に示されるように、半完成リングをアニールすることができる。たとえば、半完成リング押出熱可塑性材料のガラス転移温度よりも高温で、少なくとも2時間、たとえば少なくとも4時間、さらには少なくとも6時間アニールすることができる。特定の一例においては、半完成リングは、たとえば、100℃を超える温度、たとえば120℃を超える温度で、少なくとも1時間、たとえば少なくとも2時間乾燥させることができる。この温度を、5℃/時〜15℃/時の範囲内、たとえば8℃/時〜12℃/時の範囲内の速度で、アニール温度まで変化させることができる。特に、アニール温度は、融点を超えない限りは、ガラス転移温度の少なくとも1.2倍、たとえばガラス転移温度の少なくとも1.5倍、さらにはガラス転移温度の少なくとも1.7倍であってよい。アニール温度に到達した後、その温度を少なくとも2時間、たとえば少なくとも4時間、少なくとも6時間、さらには8時間以上維持することができる。次にリングは、制御された速度、たとえば5℃/時〜15℃/時の範囲内、たとえば8℃/時〜12℃/時の速度で、ガラス転移温度未満の温度まで冷却することができる。次に半完成リングを室温まで冷却することができる。一例においては、オーブンを停止して室温に到達するまで、リングがオーブン中に放置される。
【0036】
416に示されるように、アニールした後の外面から、バリまたは溶融物流をトリミングことができる。たとえば、溶着部のバリまたは溶融物流は、半完成リングから研磨または切断することができる。あるいは、バリまたは溶融物流は、アニール前に研磨または切断することができる。さらに、半完成リングを機械加工してシールリングを形成することができる。
【0037】
さらに、
図4の方法は、端部を接合する前にロッドの端部をトリミングするステップを含むことができる。たとえば、曲げられたロッドは、均一な弓形部分に切断し、その弓形部分を別の弓形部分とともに使用してシールリングを形成することができる。
図7は、ロッドを切断するための代表的なテンプレート800の図である。一例においては、テンプレート800は、ロッドを固定するための固定具802を含む。固定具802は、取付台808に固定することができる。さらに、テンプレート800は、切断溝804を含むことができ、これに沿って切断を行うことができる。場合により、テンプレート800は、間隔を開けた溝806またはガイドを含むことができ、その上に切断機構を固定して、切断溝804によるまっすぐな切断を確実にすることができる。使用するときには、曲げられたロッドを固定具802の中に配置することができる。のこぎりまたは回転砥石車などの切断機構を切断溝804によって案内することで、均一な弓形部分および弓形部分に対する均一な端部を形成することができる。
【0038】
その結果、所望の性質を有するシールリングを、エンジニアリング熱可塑性樹脂から形成することができる。特に、このような方法によって形成されたシールリングは、円周および直径が大きいことに加えて所望の機械的性質を有することができる。たとえば、上記方法は、少なくとも0.62メートル、たとえば少なくとも1.0メートル、少なくとも1.5メートル、少なくとも2.0メートル、少なくとも4.1メートル、少なくとも4.5メートル、さらには少なくとも4.8メートルの円周を有するシールリングの形成に特に有用である。特定の一実施形態においては、本発明の方法を使用して、少なくとも0.2メートルの直径を有するシールリングを熱可塑性材料から形成することができる。たとえば、シールリングは、少なくとも0.47メートル、たとえば少なくとも1.0メートル、少なくとも1.3メートル、少なくとも1.45メートル、さらには少なくとも1.55メートルの直径を有することができる。さらに、または別の一実施形態においては、シールリングは3.0メートル以下の直径を有することができる。
【0039】
シールリングは、所望の性質を有するエンジニアリング熱可塑性材料から形成することができる。たとえば、熱可塑性ロッドを、エンジニアリング熱可塑性ポリマーまたは高性能熱可塑性ポリマーなどの熱可塑性材料から形成することができる。たとえば、熱可塑性材料としては、ポリケトン、ポリアラミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアミドイミド、超高分子量ポリエチレン、熱可塑性フルオロポリマー、ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、液晶ポリマー、またはそれらのあらゆる組み合わせなどのポリマーを挙げることができる。一例においては、熱可塑性材料としては、ポリケトン、ポリアラミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、フルオロポリマー、ポリベンゾイミダゾール、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせが挙げられる。特定の一例においては、熱可塑性材料としては、ポリケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせなどのポリマーが挙げられる。さらなる一例においては、熱可塑性材料としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせなどのポリケトンが挙げられる。熱可塑性フルオロポリマーの一例としては、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのターポリマー(THV)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、またはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。代表的な液晶ポリマーとしては、XYDAR(登録商標)(Amoco)、VECTRA(登録商標)(Hoechst Celanese)、SUMIKOSUPER(商標)またはEKONOL(商標)(住友化学)、DuPont HX(商標)またはDuPont ZENITE(商標)(E.I.DuPont de Nemours)、RODRUN(商標)(ユニチカ)、GRANLAR(商標)(Grandmont)の商品名で市販されるもの、またはそれらのあらゆる組み合わせなどの芳香族ポリエステルポリマーが挙げられる。さらなる例においては、熱可塑性ポリマーは超高分子量ポリエチレンであってよい。さらに、シールリングは、熱可塑性材料と、フルオロポリマー、固体潤滑剤、またはそれらの組み合わせなどのフィラーとを含む複合材料から形成することができる。
【0040】
熱可塑性材料は、少なくとも250℃の融点を有することができる。たとえば、融点は少なくとも300℃、たとえば少なくとも320℃であってよい。さらに、熱可塑性材料は、望ましくは高いガラス転移温度を有することができ、たとえば少なくとも100℃のガラス転移温度を有することができる。たとえば、ガラス転移温度は少なくとも125℃、たとえば少なくとも145℃であってよい。
【0041】
さらなる一例においては、シールリングは0.45以下の摩擦係数を有することができる。たとえば、摩擦係数0.4以下、たとえば0.35以下、さらには0.3以下であってよい。特に、摩擦係数は0.2以下、たとえば0.1以下であってよい。
【0042】
さらに、熱可塑性材料は、所望の機械的性質を有することができる。たとえば、熱可塑性材料は、少なくとも3,100psi(21.4MPa)、たとえば少なくとも10,000psi(68.9MPa)、さらには少なくとも15,000psi(103MPa)の降伏引張強度を有することができる。さらなる一例においては、熱可塑性材料は、少なくとも100ksi(0.69GPa)、たとえば少なくとも750ksi(5.16GPa)、少なくとも850ksi(5.86GPa)、さらには少なくとも1000ksi(6.89GPa)の引張弾性率を有することができる。さらに、溶着した熱可塑性材料は、所望の溶着部破断時伸びを有することができる。たとえば、溶着部破断時伸びは、少なくとも5%、たとえば少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、さらには少なくとも30%であってよい。溶着部破断時伸びは、ASTM D638に準拠して、溶着したサンプルの引張試験を行うことによって求められる。溶着したサンプルは、アニールされる場合もあるし、されない場合もある。
【0043】
熱可塑性材料と熱可塑性材料中に分散させた少なくとも1種類のフルオロポリマーとを含む複合材料からシールが形成される一例においては、複合材料は、少なくとも3%の溶着部破断時伸びを有することができる。たとえば、溶着部破断時伸びは、少なくとも5%、たとえば少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも15%、さらには少なくとも18%であってよい。一例においては、溶着部引張強度は、少なくとも40MPa、たとえば少なくとも50MPa、少なくとも60MPa、さらには少なくとも70MPaである。特に、複合材料の溶着部引張強度は、無充填材料の溶着部引張強度の少なくとも50%、たとえば無充填材料の溶着部引張強度の少なくとも60%、さらには少なくとも70%である。
【0044】
図1および
図2と関連して説明したように、シールリングは溶着部を含むことができる。リングの大きさおよびリングの形成に使用される接合の数に依存するが、シールリングは、2つ以上の溶着部を含むことができ、たとえば2つの溶着部、さらには3つ以上の溶着部を含むことができる。
【0045】
アニール後に所望の性質を有する半完成リングを形成するため、板から切り取られた押出成形または圧縮成形熱可塑性樹脂の弓形部分を溶着させるために、代表的な溶着方法を使用することもできる。特にロッドの端部を加熱し、端部を互いに押し付ける方法を意味するために、本明細書においては溶着を使用しているが、別の接合技術を使用してロッドの端部を接合することもできる。たとえば、別の接合技術としては、端部を接合するための射出成形、超音波処理、誘導加熱、あるいはレーザーまたはマイクロ波技術などの照射技術を挙げることができる。溶着によって形成された接合端部を本明細書においては溶着部と呼び、溶着または別の接合技術によって形成された接合端部を本明細書においては接合部と呼ぶ。
【0046】
さらに、弓形部分または部分の溶着または接合を使用して、円形、卵子形(ovular)、多角形、または複雑な形状のシールを形成することができる。たとえば、シールは、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形、七角形、八角形、またはそれらのあらゆる組み合わせなどの多角形であってよい。多角形は、少なくとも4辺、たとえば少なくとも6辺、少なくとも8辺、さらには少なくとも10辺を有することができる。別の一例においては、複雑な形状は、8の字型、不規則な多角形、またはその他の複雑な形状であってよい。特に、これらの形状は閉じていてよい。あるいは、これらの形状は、開いていて、それらの長さに沿って1つ以上の切れ目を有することができる。
【0047】
上記方法の特定の実施形態は、従来技術に対して技術的な利点が得られる。廃棄物が減少するのと同時に、このような本発明の実施形態は、所望の機械的性質を有する大型の熱可塑性材料のシールリングを製造することも可能になる。特に、本発明の実施形態では、少なくとも1.5メートルの円周、または1.3メートルを超える最大直径を有し、所望の破断時伸び特定を有するシールリングが得られる。このような性質は、シールリングとしての耐久性および適合性の指標となる。さらに、このような方法によって、典型的にはより高いガラス転移温度および溶融温度を有し、特徴として高弾性率および高引張強度を有するエンジニアリング熱可塑性材料から形成されたシールリングが得られる。さらに、このような熱可塑性エンジニアリング熱可塑性材料は所望の摩擦係数を有する。
【0048】
特に、上記方法によって、所望の材料の押出ロッドから大きな円周のシールリングを形成することができる。シールリングを形成するための従来技術では、直径が制限されるか、使用される材料が制限される。押出シートからシールリングを切断することに基づく従来技術は、シール直径が制限されることが問題であり、機械方向および横方向における性質のばらつきがシールリングにも影響することも問題となる。典型的には、好適な熱可塑性樹脂から1メートルを超えるシートを押出成形することは困難である。従来の圧縮成形技術では、使用される材料が制限され、機械的性質が不十分となる。対照的に、本発明の方法では、様々な材料を使用できるリングが得られ、円周方向の性質が押出ロッドの機械方向の性質と関連し、所望の耐久性および機械的性質を有するシールリングが得られる。
【0049】
さらに、フルオロポリマーが充填された複合材料の特定の実施形態が、上記方法における使用に適応している。たとえば、特定のフルオロポリマーフィラーでは、シールリングを溶着して所望の溶着部破断時伸びを得ることができるが、一方、他の充填複合材料ではあまり望ましくない溶着部破断時伸びが得られる。
【実施例】
【0050】
実施例1
4つのPEEKロッドを、異なる温度(150℃、200℃、285℃、および310℃)に加熱し、鋼製ホイールの周囲で成形する。直径15.5インチの鋼製ホイールの周囲にしっかりと巻き付けたときの、34インチのロッドの2つの端部の間の距離として、加熱したPEEKロッドの成形性を測定する。表1は、この成形性を示している。
【0051】
【表1】
【0052】
150℃に加熱したロッドは硬すぎて成形できない。温度を上昇させると、PEEKロッドの成形性が増加する。約310℃で、PEEKロッドは比較的高い成形性を示す。
【0053】
実施例2
3つのPEEKロッドを310℃に加熱し、鋼製ホイールの周囲で成形する。中心温度が指定の温度に到達してから、得られた弓形部分をホイールから取り外す。冷却したPEEK弓形部分の緩和を測定して、スプリングバックを求める。表2に示されるように、PEEKのガラス転移温度より高温でホイールから取り外した場合に、PEEKロッドのスプリングバックが顕著になる。ガラス転移温度未満で取り外すと、PEEKの弓形部分は、ほぼ同じの比較的低いスプリングバックを示す。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例3
McMaster−Carrより入手可能な14本の4インチ×1インチ×1インチの押出PEEKバーを使用して、接触ホットプレート溶着によって7本の溶着バーを作製する。1つのサンプルは、溶着前に90℃で3時間乾燥させた後で作製する。残りのサンプルは、135℃〜190℃の範囲内の温度で2時間乾燥させたロッドから作製する。
【0056】
サンプルは、加熱装置を使用して385℃〜450℃の範囲内の温度にロッド端部を加熱し、100psiの圧力でロッド端部端部を互いに接触させることによって作製する。これらのサンプルは、引張試験用に機械加工する。さらに、一部のサンプルは、250℃の温度で4時間アニールする。得られたサンプルを、McMaster−Carrより入手可能な押出サンプル、およびEnsingerより入手可能な押出対照サンプルと比較する。表3は、サンプルの破断時伸び特性を示している。
【0057】
【表3】
【0058】
McMaster−Carrの押出PEEKは、Ensingerより入手可能な押出PEEKよりも低い破断時伸びを示す。溶着させたPEEKサンプルは、一般に、溶着していない基準サンプルよりも低い破断時伸びを示す。アニールしたサンプルは、アニールしていないサンプルよりも改善された破断時伸びを示す。
【0059】
破断時伸びの値を、溶着中のホットプレート温度および加熱時間の関数として評価すると、ホットプレート温度および加熱時間の両方が、機械的性能に影響を与えている。表4は、破断時伸び特性を示している。ホットプレート温度385℃および加熱時間20秒、40秒、および60秒でサンプルを比較すると、加熱時間40秒でアニールしたサンプルの場合13%の破断時伸びが得られた。60秒の加熱で類似の結果が得られた。
【0060】
【表4】
【0061】
温度の関数として、420℃のサンプルは、短時間加熱したサンプルでさえも望ましい破断時伸びを示している。20秒においては、ホットプレート温度420℃では、ホットプレート温度385℃および445℃の場合よりも高い破断時伸び値が得られる。したがって、十分に接合させるには385℃は低すぎると思われ、445℃は高温すぎて材料が分解している可能性がある。
【0062】
実施例4
Ensingerより入手可能な押出PEEKからサンプルを作製する。ホットプレート接触溶着およびホットプレート非接触溶着を使用して溶着を行う。押出PEEKバーは、150℃で2時間半乾燥させる。
【0063】
400℃〜420℃の範囲内の温度でホットプレートを使用して溶着を行う。接触溶着は、ロッド端部をホットプレートと40秒〜60秒の範囲内の時間接触させることを含む。非接触溶着は、500℃のホットプレートを使用して240秒の滞留時間で行う。加熱中、接触していないロッド端部は、プレートから1mm〜2mmに維持する。溶融後、端部を互いに押し付けてサンプルを作製する。
【0064】
ホットプレート接触サンプルは、約250℃の温度で4時間〜8時間の間でアニールする。表5は破断時伸びを示している。
【0065】
【表5】
【0066】
示される破断時伸びに基づくと、250℃で8時間アニールすると、所望の破断時伸び特性が得られると思われる。他のアニール時間および温度では、より低い破断時伸び値が得られた。
【0067】
実施例5
押出PEEKサンプルを溶着させる。サンプルを温度150℃で3時間乾燥させる。溶着は、420℃のプレート温度において40秒間行われる。端部は100psiの圧力で互いに押し付ける。すべての溶着部を、250℃で8時間アニールする。引張試験用にサンプルを機械加工する。表6は、平均破断時伸びおよび結果の分布を示している。
【0068】
【表6】
【0069】
実施例6
上記実施例に従って、EnsingerまたはQuadrantのいずれかより入手可能な押出PEEKを乾燥させたものからサンプルを作製する。サンプル端部を420℃で少なくとも40秒間加熱し、少なくとも40秒間互いに押し付ける。サンプルを、250℃の温度で8時間アニールする。機械的性質の試験用にサンプルを機械加工する。表7は、ASTM D638に従った手順におけるサンプルの破断時伸びを示している。
【0070】
【表7】
【0071】
実施例7
他の実施例と関連して行われる実験中、本出願人らは、早期の破壊が、溶着面付近の空隙の原因となりやすいことに気づいた。実施例5と類似の方法でサンプルを作製する。ロッドの溶融した端部を、少なくとも50psiの圧力で互いに押し付ける。ロッドが互いに押し付けられたときに、断面1平方インチ当たり少なくとも1/8インチのロッド長さに相当する量の材料が、ロッドの間から押し出される。CTスキャンによって、押し出された材料によって空隙が除去され、空隙の少ない接合が得られることが示されている。周囲圧力よりも高い圧力を溶融物内に維持する他の方法としては、真空環境中で溶着させることによって周囲圧力を下げること、または溶融した端部を互いに押し付けるときに、それらの間から溶融材料が押し出されるのを束縛することが挙げられる。
【0072】
実施例8
優れたシール特性を示す押出PEEKのグレードの1つは、15%のPTFEを含む。これは押出ロッドとして以下の性質を有する。
【0073】
【表8】
【0074】
25%のPTFEを充填したPEEK複合材料の押出ロッドも、許容される10%の破断時伸びおよび低い摩擦係数を有する。
【0075】
第3の複合材料は、10%のカーボンブラックが充填されたPEEKを含有する。これは望ましい破断時伸びを有しながら、静電気拡散性を有するPEEKが得られる。
【0076】
実施例9
押出PEEKサンプルが溶着される。記載されるように、サンプルの1サブセットは150℃の温度で3時間乾燥させる。溶着は、420℃のプレート温度で40秒〜60秒の間の時間行う。端部を互いに押し付けられる。記載されるように、サンプルの1サブセットは250℃で8時間アニールする。引張試験用にサンプルを機械加工する。
【0077】
コンピュータートモグラフィー(CT)スキャンおよび超音波スキャンを使用してサンプルの試験を行う。CTスキャン、パラメーターとして150kV、50mA、30マイクロメートルボクセル、800画像、および時間1秒を使用して行う。超音波スキャンは、超音波NDTに50MHzの変換器周波数を使用して行う。
【0078】
スキャン技術による空隙検出の比較を表9に示している。示されているように、CTは、表面付近の空隙、および0.38mm未満の大きさの空隙を検出する。超音波スキャンは、表面付近の空隙、および0.38mm未満の大きさの空隙の検出にはあまり効果的ではない。通常、シールを機械加工することによって、表面付近の空隙は除去され、0.4mm未満の大きさの限定された数の空隙は、伸びおよび引張強度などの性能にわずかしか影響を与えない。
【0079】
【表9】
【0080】
上記サンプルと類似のサンプルについて伸びおよび引張特性の試験を行う。表10に示されるように、空隙がない平均サンプルは大きな伸びを示し、一方、超音波NDTにより検出可能な空隙を有するサンプルは、溶着部で破壊し、伸びは全くまたはほとんど示さない。
【0081】
【表10】
【0082】
表10に示されるように、サンプルの平均伸びは20%を大きく上回る。表面または表面下のいずれに空隙が存在しても、伸びは大きく低下する。
【0083】
一例においては、空隙の試験方法の1つは、CTスキャンなどの別のスキャン技術に対する比較試験に基づいて超音波スキャン装置の設定を決定することを含む。たとえば、種々の空隙の条件または種類を含む1組のサンプルについて、CT技術および超音波技術を使用してスキャンすることができる。サンプルの機械的性質、たとえば引張強度または伸びなどの性質を試験することで、何が性質に影響を与える重大欠陥または欠陥となるかを判断することが可能になる。重大欠陥の検出につながる超音波スキャン技術に望ましいパラメーターを決定することができるが、重大でない欠陥の検出にはあまり成功していない。
【0084】
特定の一実施形態においては、シールリングの形成方法は、ガラス転移温度よりも高い温度に熱可塑性ロッドを加熱するステップを含む。熱可塑性ロッドは、第1および第2の端部を有する。この方法は、ガラス転移温度よりも高い温度で熱可塑性ロッドを環状構造に曲げるステップと、熱可塑性ロッドの第1および第2の端部を接合して半完成リングを形成するステップと、半完成リングをアニールするステップとをさらに含む。
【0085】
一実施形態においては、シールリングの形成方法は、ガラス転移温度よりも高い温度に押出ロッドを加熱するステップを含む。押出ロッドは、第1および第2の端部を有する。この方法は、ガラス転移温度よりも高い温度で熱可塑性ロッドを環状構造に曲げるステップと、押出ロッドの第1および第2の端部を接合して半完成リングを形成するステップと、半完成リングをアニールするステップとをさらに含む。
【0086】
別の代表的な一実施形態においては、シールリングの形成方法は、押出ロッドの材料のガラス転移温度よりも高い温度に押出ロッドを加熱するステップを含む。押出ロッドは、第1および第2の端部を有する。この方法は、ガラス転移温度よりも高い温度で押出ロッドを曲げるステップと、曲げられた押出ロッドをガラス転移温度よりも低温まで冷却するステップと、押出ロッドの第1および第2の端部を溶融溶着して半完成リングを形成するステップと、半完成リングをアニールするステップとをさらに含む。
【0087】
さらなる代表的な一実施形態においては、シールリングの形成方法は、押出ロッドの材料のガラス転移温度よりも高く融点よりも低い温度に第1および第2の押出ロッドを加熱するステップを含む。押出ロッドは、第1および第2の端部を有する。この方法は、ガラス転移温度よりも高い温度で押出ロッドを曲げるステップと、第1および第2の押出ロッドの第1の端部と、第1および第2の押出ロッドの第2の端部とを接合して半完成リングを形成するステップと、半完成リングをアニールするステップとをさらに含む。
【0088】
さらなる代表的な一実施形態においては、シールリングの形成方法は、圧縮成形シートまたは押出シートから弓形部分を切断するステップを含む。弓形部分は、第1および第2の端部を含む。この方法は、第1および第2の弓形部分の第1の端部と、第1および第2の弓形部分の第2の端部とを接合して半完成リングを形成するステップと、半完成リングをアニールするステップとをさらに含む。
【0089】
さらなる一実施形態においては、装置は、円形金型の円周の周囲に配置された溝を含む円形金型を含む。円形金型は、中心点のまわりに回転する。この装置は、円形金型の溝の中に物品を固定するためのクランプをも含む。クランプは、円形金型の回転運動に追従するように構成される。この装置は、円形金型の円周の周囲に分布する複数のローラーをさらに含む。複数のローラーの各ローラーは、係合して、各ローラーの位置をクランプが通り過ぎた後に物品に半径方向の力が加わるように構成される。
【0090】
別の代表的な一実施形態においては、シールリングは、少なくとも5%の溶着部破断時伸びを有する熱可塑性材料を含む。このシールリングは少なくとも1.3メートルの直径を有する。
【0091】
さらなる代表的な一実施形態においては、シールリングは、溶着部を有し、少なくとも100℃のガラス転移温度を有する熱可塑性材料を含む。この熱可塑性材料は、少なくとも5%の溶着部破断時伸びを有する。シールリングは、少なくとも1.3メートルの直径を有する。シールリングは、0.45以下の摩擦係数を有する。
【0092】
さらなる一実施形態においては、シールリングは、少なくとも5%の溶着部破断時伸びを有する押出PEEK材料を含む。シールリングは、少なくとも1.3メートルの直径を有する。
【0093】
さらなる一実施形態においては、装置は、熱可塑性弓形部材の第1の端部と係合する第1の固定具と、熱可塑性弓形部材の第2の端部と係合する第2の固定具とを含む。第1および第2の固定具は、経路に沿って互いに相対的な動きで第1および第2の端部を移動させる。この装置は、熱源を含む加熱装置をも含む。加熱装置は、経路内を移動するように構成される。第1および第2の固定具は、熱源の近傍で熱源には接触させずに、第1および第2の端部を移動させる。第1および第2の端部は、少なくとも部分的に溶融する。第1および第2の固定具は、第1および第2の少なくとも部分的に溶融した端部が互いに接触するように移動させる。
【0094】
第1の実施形態においては、シールリングは、溶着部と、少なくとも3%の溶着部破断時伸びの熱可塑性材料とを含む。第1の実施形態の一例においては、シールリングは、少なくとも0.62メートルの円周、たとえば少なくとも1.5メートルの円周を有する。別の一例においては、シールリングは、少なくとも0.2メートル、たとえば1.3メートルの直径を有する。
【0095】
さらなる一例においては、熱可塑性材料は、ポリケトン、ポリアラミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、熱可塑性フルオロポリマー、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。たとえば、熱可塑性材料は、ポリケトン、ポリアラミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、フルオロポリマー、ポリベンゾイミダゾール、液晶ポリマー、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。別の一例においては、熱可塑性材料は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリケトン材料である。さらなる一例においては、熱可塑性材料は超高分子量ポリエチレンを含む。
【0096】
特定の一例においては、シールリングは、0.45以下、たとえば0.35以下の摩擦係数を有する。熱可塑性材料は、少なくとも250℃、たとえば少なくとも300℃、さらには少なくとも320℃の融点を有することができる。熱可塑性材料は、少なくとも100℃、たとえば少なくとも125℃、さらには少なくとも145℃のガラス転移温度を有することができる。
【0097】
第1の実施形態のさらなる一例においては、熱可塑性材料は、少なくとも3100psi、たとえば少なくとも10000psi、さらには少なくとも15000psiの引張強度を有する。熱可塑性材料は、少なくとも100ksi、たとえば少なくとも750ksi、さらには少なくとも850ksiの引張弾性率を有することができる。
【0098】
第1の実施形態の別の一例においては、溶着部破断時伸びは、少なくとも5%、たとえば少なくとも10%、少なくとも15%、さらには少なくとも20%である。
【0099】
第1の実施例の一例においては、シールリングは、直径の20%以下の半径方向厚さを有する。さらに、シールリングは、少なくとも4つの辺を有する多角形などの多角形の断面を有することができる。
【0100】
さらなる一例においては、熱可塑性材料は、PTFEまたはカーボンブラックなどの固体潤滑剤フィラーを含むことができる。
【0101】
第2の実施形態においては、シールリングは、溶着部を有し、少なくとも100℃のガラス転移温度を有する熱可塑性材料を含む。溶着部を有する熱可塑性材料は、少なくとも3%の溶着部破断時伸びを有する。シールリングは、少なくとも0.62メートルの円周を有する。シールリングは、0.45以下の摩擦係数を有する。第2の実施形態の一例においては、摩擦係数は0.4以下、たとえば0.35以下である。
【0102】
第2の実施形態のさらなる一例においては、溶着部破断時伸びは少なくとも5%、たとえば少なくとも10%、少なくとも15%、さらには少なくとも20%である。熱可塑性材料は、少なくとも100ksiの引張弾性率を有することができる。一例においては、ガラス転移温度は少なくとも125℃、たとえば少なくとも145℃である。
【0103】
第3の実施形態においては、シールリングは、少なくとも3%の溶着部破断時伸びを有する押出PEEK材料を含む。シールリングは、少なくとも1.5メートルの円周を有する。第3の実施形態の一例においては、押出PEEK材料は、フィラーを含む複合材料である。たとえばフィラーは、PTFEなどの固体潤滑剤を含むことができる。別の一例においては、フィラーはセラミックまたは無機物を含む。さらなる一例においては、フィラーはカーボンブラックを含む。
【0104】
第3の実施形態のさらなる一例においては、溶着部破断時伸びは少なくとも5%、たとえば少なくとも10%、少なくとも15%、さらには少なくとも20%である。さらに、シールリングは溶着部をさらに含むことができる。
【0105】
第4の実施形態においては、シールリングは、接合部を有し、熱可塑性材料と固体潤滑剤とを含む複合材料を含む。接合部を有する複合材料は、少なくとも3%の溶着部破断時伸びを有する。シールリングは、0.45以下の摩擦係数を有する。
【0106】
一般的説明または実施例において上述した行為のすべてが必要なわけではなく、特定の行為の一部は必要ではない場合があり、前述した行為に加えて1つ以上のさらなる行為を行うこともできることに留意されたい。さらに、記載される行為の順序は、必ずしもそれらが実施される順序ではない。
【0107】
以上の明細書において、特定の実施形態を参照しながら本発明の概念を説明してきた。しかし、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更を行えることが理解されよう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味よりむしろ説明的であると見なされるべきであり、このようなすべての修正は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0108】
本明細書において使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなること」、「含む」、「含むこと」、「有する」、「有すること」、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことを意図している。たとえば、ある一連の特徴を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの特徴にのみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」は、包含的なまたはを意味するのであって、排他的なまたはを意味するのではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)Bが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
【0109】
また、本明細書に記載の要素および成分を説明するために「a」または「an」も使用されている。これは単に便宜的なものであり、本発明の一般的な意味を提供するために行われている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、明らかに他の意味となる場合を除けば、単数形は複数形をも含んでいる。
【0110】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、および問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴であるとして解釈すべきではない。
【0111】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることは、本明細書を読めば、当業者には理解できよう。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。さらに、ある範囲において記載される値への言及は、その範囲内にある個々のすべての値を含んでいる。