(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記評価部は、前記応答の要求の電文を送信してから前記応答の電文が一定の時間以内に受信できないことが第1の閾値回数を超えて続けて検出すれば、前記無線通信回線の通信性能は前記第1の条件を満たさないとの評価を行う請求項1に記載の切替システム。
前記切替部は、前記評価部による評価により前記無線通信回線の通信性能が第2の条件を満たせば、前記端末の前記サーバとの通信に使用する回線を前記無線通信回線に切り替える請求項1または2に記載の切替システム。
前記評価部は、前記無線通信回線の通信性能は前記第1の条件を満たさないとの評価を行った後、応答の要求の電文を送信してから応答の電文を一定の時間以内に受信することが第2の閾値回数を超えて続けて検出すれば、前記無線通信回線の通信性能は前記第2の条件を満たすとの評価を行う請求項3に記載の切替システム。
前記切替部は、前記評価部による評価により前記無線通信回線の通信性能が前記第1の条件を満たさなければ、前記無線通信回線に接続される無線LANルータに前記端末のデフォルトゲートウェイとなるルータとの通信を停止させ、前記ルータのルーティング情報を前記端末が前記サーバと有線回線を使用して通信するルーティング情報に変更させる請求項1から請求項4のいずれか一に記載の切替システム。
前記切替部は、前記評価部による評価により前記無線通信回線の通信性能が第2の条件を満たせば、前記無線LANルータに前記ルータとの通信を開始させ、前記ルータのルーティング情報を前記端末が前記サーバと前記無線通信回線を使用して通信するルーティング情報に変更させる、請求項5に記載の切替システム。
前記切替部は、前記評価部による評価により前記無線通信回線の通信性能が前記第1の条件を満たさなければ、前記端末のデフォルトゲートウェイとなるルータのルーティング情報を前記端末が前記サーバと有線回線を使用して通信するルーティング情報に変更させる請求項1から請求項4のいずれか一に記載の切替システム。
前記切替部は、前記評価部による評価により前記無線通信回線の通信性能が第2の条件を満たせば、前記ルータのルーティング情報を前記端末が前記サーバと前記無線通信回線を使用して通信するルーティング情報に変更させる請求項7に記載の切替システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願発明を実施するための形態について、複数の実施形態により説明する。なお、本願発明は、以下に説明する複数の実施形態に限定されることはなく、種々の変形を加えて実施することもできる。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本願発明の実施形態1に係る通信システムの機能ブロック図を示す。
図1に示すように、通信システム100は、端末システム101とサーバシステム102とを有する。端末システム101とサーバシステム102とは、アクセスポイント103を介して通信を行うことができる。
【0012】
端末システム101とサーバシステム102とが通信を行う場合、端末システム101とサーバシステム102とは、第1に、基地局104を介する無線通信回線105を用いることができ、さらに基地局104とアクセスポイント103とを接続する通信回線を用い、アクセスポイント103を介して通信を行うことができる。無線通信回線105としては、移動体無線通信回線を用いることができる。代表的な例としては、携帯電話の通信用に提供される通信回線を挙げることができる。また、基地局104とアクセスポイント103との間の通信回線としては、例えば、専用線を用いる通信回線を用いることができる。また、基地局104とアクセスポイント103との間に、別のアクセスポイントが存在し、基地局と別のアクセスポイントとの間は、無線通信回線105のサービスを提供する移動通信事業者が使用する回線を用い、別のアクセスポイントとアクセスポイント103との間は、専用線を使用する回線を用いることもできる。このように、基地局104とアクセスポイント103とを介して、端末システム101とサーバシステム102とが通信を行う通信回線を第1の通信回線という。
【0013】
また、端末システム101とサーバシステム102とが通信を行う場合、端末システム101とサーバシステム102とは、第2に、通信回線106を用いることができる。この場合、通信回線106は、無線通信回線105とは異なる通信回線である。例えば、光ファイバーや銅線ケーブルを用いる有線通信であり、代表的な例としては、固定電話が接続される有線回線であり、より具体的には、ISDN(Integrated Services Digital Network)回線である。ISDNは、基本速度インターフェース(Basic Rate Interface)の1データチャネルあたり最大で64Kbpsの通信速度のサービスを提供し、移動体無線通信回線の通信速度よりも一般的には低い。しかしISDNの通信速度は事実上保証されており、また、信頼性が高く、専用線を敷設するよりも安価である。通信回線106を第2の通信回線という場合がある。なお、通信回線106は、無線通信回線105のサービスを提供する事業者とは異なる事業者により提供される無線通信回線であってもよい。例えば、無線通信回線105よりも通信速度が劣るが、通信費用を安価に提供する事業者により提供される無線通信回線であってもよい。
【0014】
第1の通信回線において特徴的な点の一つは、無線通信回線105を使用する端末装置(あるいは端末という場合がある。)が端末システム101に備えられている点である。また、第2の通信回線において特徴的な点の一つは、通信回線106を使用する端末装置が端末システム101に備えられている点であり、第1の通信回線とは異なる通信回線である点である。
【0015】
端末システム101は、
図1においては、1または複数の端末111、112、113と、LANスイッチ114と、第1ルータ115と、第2ルータ117と、切替装置116とを有する。
【0016】
1または複数の端末111、112、113は、サーバシステム102と通信を行うための装置である。例えば、サーバシステム102に撮影画像を送信する監視カメラであったり、サーバシステム102に売上データを送信し店舗に備えられているPOS(Point of Sale system)端末であったり、銀行などの金融機関のサーバシステム102と通信を行い、金融機関の支店やコンビニエンスストアあるいは無人店舗に備えられるATM(Automatic Teller Machine)やCD(Cash Dispenser)であったり、サーバシステム102に天候などの測候データを送信する測候装置などであったりすることができる。
【0017】
LANスイッチ114は、いわゆるリピータであり、1または複数の端末111、112、113が送信する通信データ(電文あるいはパケット)を第1ルータ115、第2ルータ117に中継したり、第1ルータ115、第2ルータ117が複数の端末111、112、113に向けて送信する通信データを1または複数の端末111、112、113に中継したりする。また、複数の端末111、112、113の間の通信データの中継を行う。また、LANスイッチ114の具体的な例としては、L2スイッチを挙げることができる。
【0018】
第1ルータ115は、インターフェースとして少なくともA1およびA2を有し、それぞれのインターフェースにより受信された通信データを、通信データの宛て先(destination)に応じて、適切なインターフェースから送信する。Destinationに応じて、適切なインターフェースから送信するためには、ルーティングテーブルに格納されているルーティング情報が参照されることが通常である。本実施形態においては、通常時においては、第1ルータ115のルーティング情報は、基本的には、A1により受信された通信データをA2から送信し、A2により受信された通信データをA1から送信するように設定されている。A1は、LANスイッチ114に接続され、A2は、無線通信回線105に接続されている。これにより、通常時においては、端末111、112、113とサーバシステム102とは、無線通信回線105を使用して通信を行うことができる。しかし、後述するように、無線通信回線105の通信性能が悪化したことが切替装置116により検出されると、第1ルータ115のルーティング情報は、A1により受信された通信データをA1から第2ルータに向けて送信するように変更される。これにより、第2ルータ117を介して、端末111、112、113とサーバシステム102とは、通信回線106を使用して通信を行うことができる。なお、通信性能の悪化には、通信回線に障害が発生し、通信回線を用いて通信ができない状態も含む。
【0019】
なお、第1ルータ115は、基地局104との無線通信回線105による通信が確立していない状態において、A2から通信データを送信する場合には、基地局104との無線通信回線105による通信を確立させてから、A2から通信データを送信する。例えば、A2にIPアドレスなどのネットワークアドレスが設定されていない場合には、基地局104などとの所定のプロトコルによる通信を行い、A2に設定するネットワークアドレスを設定する。
【0020】
切替装置116は、端末111、112、113がサーバシステム102のサーバと通信をするために使用する回線を切り替えるための装置である。切替装置116は、端末111、112、113がサーバシステム102のサーバと通信をするために使用する回線を、無線通信回線105と通信回線106とのいずれかに切り替えるための処理を行う。具体的には、応答装置121と無線通信回線105を介して通信を行い、無線通信回線105の通信性能を評価し、評価の結果に応じて、切り替えを行う。
図1においては、切替装置116は、第1ルータ115に直接接続されているが、LANスイッチ114に接続されていてもよい。また、第1ルータ115を介さずに、無線通信回線105を使用して応答装置121と通信を行ってもよい。詳細については、後述する。
【0021】
第2ルータ117は、インターフェースとしてA3およびA4を有し、それぞれのインターフェースにより受信された通信データを、通信データの宛て先に応じて、適切なインターフェースから送信する。第2ルータ117のルーティング情報は、基本的には、A3により受信された通信データをA4から送信し、A4により受信された通信データをA3に送信するように設定されている。A3は、LANスイッチ114に接続され、A4は、通信回線106に接続されている。これにより、無線通信回線105の通信性能が悪化していることが切替装置116により検出されると、第1ルータ115は、A1により受信される通信データをA3に送信する。また、第2ルータ117は、A3により受信される通信データを、A4から送信し、A4により受信される通信データは、A3から送信する。これにより、端末111、112、113とサーバシステム102とは、通信回線106を使用して通信を行うことができる。
【0022】
なお、第2ルータ117は、通信回線106による通信が確立していない状態において、A4から通信データを送信する場合には、通信回線106による通信を確立させてから、A4から通信データを送信する。例えば、通信回線106がISDNなどの電話回線であれば、A4に接続されているモデムによりダイアルアップを行い、アクセスポイント103との通信を確立させてから、A4にネットワークアドレスを設定し、A4から通信データを送信する。
【0023】
なお、A2に設定されるネットワークアドレスと、A4に設定されるネットワークアドレスとは異なることが望ましい。もし、A2に設定されるネットワークアドレスと、A4に設定されるネットワークアドレスとが同じになると、サーバシステム102から端末システム101を宛て先とする通信データを送信する場合、アクセスポイント103などにおいて、無線通信回線105の通信性能を監視し、アクセスポイント103などに格納されているルーティング情報の変更をする必要が発生する。つまり、アクセスポイント103においても、無線通信回線105の通信性能を監視する必要が発生する。もし、この監視の結果と切替装置116による通信性能の監視の結果とに齟齬が発生すると、端末システム101とサーバシステム102との通信が不能となる場合が発生し得る。しかし、A2に設定されるネットワークアドレスと、A4に設定されるネットワークアドレスとを異ならせれば、アクセスポイント103などに格納されているルーティング情報の変更をする必要がなくなり、アクセスポイント103において無線通信回線105の通信性能を監視する必要がなくなる。これにより、より低いコストにより、高い信頼性を有する通信システム100を実現することができる。
【0024】
アクセスポイント103は、端末システム101とサーバシステム102との通信を中継する。アクセスポイント103は、端末システム101側にインターフェースB2、B3を備え、それぞれが第1ルータ115、第2ルータ117との通信データの送受信を行う。また、アクセスポイント103は、サーバシステム102側にインターフェースB4を備え、サーバシステム102のインターフェースB5との通信データの送受信を行う。なお、アクセスポイント103は、
図1においては、一台の装置であるとして示されるが、複数の装置から構成されていてもよく、例えば、異なる装置がそれぞれインターフェースB2、B3を有していてもよい。また、インターフェースB4は、実際には、複数のインターフェースにより構成されていてもよい。
【0025】
応答装置121は、切替装置116が送信した通信データ(応答の要求の通信データという)を受信すると、切替装置に応答の通信データの返信を行う。応答装置121は、インターフェースB1を備える。また、
図1においては、B1は、基地局104とアクセスポイント103との間に接続されている。ただし、本発明は、これに限定されるものではなく、応答装置121は、基地局104またはアクセスポイント103に直接接続されていたり、あるいは、サーバシステム102に接続されていたりしてもよい。応答装置121についての特徴の一つは、無線通信回線105を介して切替装置116と通信を行う点である。これにより、無線通信回線105の通信性能を評価することができる。
【0026】
なお、サーバシステム102は、1または複数のサーバにより構成されるシステムである。端末111、112、113はサーバシステムを構成する1または複数のサーバと、以下に説明するように無線通信回線105と通信回線106とのいずれかを使用して通信を行うことができる。
【0027】
図2(A)および
図2(B)は、ルーティング情報の一例を示す。
【0028】
図2(A)は、端末システム101とサーバシステム102とが、無線通信回線105を介して通信を行う場合の、端末111、112および113、第1ルータ115ならびに第2ルータ117のルーティング情報を示す。端末111、112および113のルーティング情報は、「* via A1」となっている。「*」はいかなるネットワークアドレスにマッチするワイルドカードであり、「A1」は、第1ルータ115のインターフェースA1である。したがって、「* via A1」は、いかなるネットワークアドレス宛の通信データは、A1に送信することを表わす。すなわち、A1は、端末11、112および113のデフォルトゲートウェイとなっている。
【0029】
第1ルータ115のルーティング情報は、「B5 via A2」、「B1 via A2」となっている。これにより、サーバシステム102の備えるB5を宛て先とする通信データは、A2から送信し、応答装置121を宛て先とする通信データもA2から送信することを表わす。したがって、第1ルータ115は、端末111、112および113からサーバシステム102を宛て先とする通信データを受信すると、A2から送信を行い、切替装置116から応答装置121を宛て先とする通信データを受信すると、A2から送信を行う。
【0030】
第2ルータ117のルーティング情報は、「B5 via A4」となっている。これにより、もし、第2ルータ117がサーバシステム102の備えるB5を宛て先とする通信データを受信した場合には、A4から送信を行うことになる。ただし、端末システム101とサーバシステム102とが、無線通信回線105を介して通信を行っている場合には、このようなことは通常は発生しないのが好ましい。例えば、無線通信回線105の通信性能が良好である場合、無線通信回線105による通信速度が通信回線106より大きい場合には、大きい通信速度により通信が行える。
【0031】
なお、通信性能が良好である、あるいは悪化していない(不芳ではない)とは、通信性能が一定の条件を満たす場合であると言い換えることができる。以下に説明するように、切替装置116が応答装置121に応答の要求を送信してから、応答装置121から応答の要求に対する応答が受信できず、または、受信できたとしても受信までの所要時間が定められた値を超えることを、一定の条件を満たさないことと定義することができる。また、切替装置116が応答装置121に応答の要求を複数回、順次、送信してから、応答装置121から応答の要求に対する応答が受信されるまでの複数回の所要時間それぞれが定められた値を超えることを一定の条件を満たさないことと定義することができる。
【0032】
図2(B)は、端末システム101とサーバシステム102とが、通信回線106を介して通信を行う場合の、端末111、112および113、第1ルータ115ならびに第2ルータ117のルーティング情報を示す。端末111、112および113ならびに第2ルータ117のルーティング情報は、
図2(A)と同じである。
【0033】
しかし、第1ルータ115のルーティング情報は、
図2(A)においては「B5 via A2」となっていたのが、「B5 via A3」となっている。これにより、端末111、112および113のいずれかがサーバシステム102のB5宛ての通信データを送信すると、一端、A1により受信され、第1ルータ115は、A1からA3に送信することになる。A3がB5を宛て先とする通信データを受信すると、A4から送信する。したがって、端末111、112および113のいずれかがサーバシステム102のB5を宛て先とする通信データを送信すると、通信回線106を介して通信が行われることになる。しかし、
図2(B)においても、
図2(A)と同様に「B1 via A2」のルーティング情報があるので、切替装置116が応答装置121へ送信する通信データは、依然として、A2から送信され、無線通信回線105が使用されて応答装置121へ送信される(ただし、無線通信回線105に障害が発生し、無線通信回線105が使用不能になると、切替装置116が応答装置121へ送信する通信データはロスト状態となる)。
【0034】
したがって、無線通信回線105の通信性能が良好であれば、第1ルータ115に「B5 via A2」のルーティング情報を設定し、無線通信回線105の通信性能が悪化したり、使用不能となったりすれば、第1ルータ115に、「B5 via A2」のルーティング情報に代えて「B5 via A3」のルーティング情報を設定する。これにより、無線通信回線105の通信性能が悪化したり、使用不能となったりしても、端末システム101とサーバシステム102とは、通信回線106を介して、通信を行うことができる。
【0035】
なお、
図2(A)および
図2(B)に示すルーティング情報は、端末111、112および113からサーバシステム102に向けて通信データが送信される場合に使用されるルーティング情報であり、サーバシステム101から端末111、112および113へ向けて通信データが送信される場合に使用されるルーティング情報は省略してある。
【0036】
図3(A)および
図3(B)それぞれは、端末111、112および113、第1ルータ11ならびに第2ルータ117のルーティング情報が
図2(A)および
図2(B)に示す情報である場合の通信のシーケンス図を示す。
【0037】
図3(A)を参照すると、ステップS201において、切替装置116が応答装置121に対して応答の要求を送信すると、応答の応急は、第1ルータ115により受信される。ステップS202において、第1ルータ115は、無線通信回線105を介して基地局104へ応答の要求を送信する。ステップS203において、基地局104から、応答の要求が応答装置121へ送信される。
【0038】
ステップS204において、応答装置121は、応答の要求に対する応答を返信する。この応答は、基地局104に受信される。ステップS205において、基地局104は、応答を、無線通信回線105を介して第1ルータ115に送信する。ステップS206において、第1ルータ115は、切替装置116へ応答を送信する。ステップS201における応答の要求に対するステップS206における応答が、所定時間内に切替装置116が受信できれば、切替装置116は、無線通信回線105の通信性能が良好であると判断する。そこで、第1ルータ115に、「B5 via A2」のルーティング情報が設定される。この設定は、例えば切替装置116が行うことができる。
【0039】
したがって、ステップS207において、端末111、112および113のいずれかがサーバシステム102を宛て先とする通信データである送信データを第1ルータ115に送信すれば、ステップS208において、第1ルータ115は、送信データを、無線通信回線105を介して基地局104に送信する。ステップS209において、基地局104は、サーバシステム102に向けて、送信データを送信する。
【0040】
サーバシステム102が、送信データを受信すると、ステップS210において、送信データに対する返信データである通信データを基地局104に向けて送信する。基地局104が返信データを受信すると、ステップS211において、無線通信回線105を介して、第1ルータ115に送信する。第1ルータ115が返信データを受信すると、ステップS212において、第1ルータ115は、返信データを端末111、112および113のいずれかに送信する。
【0041】
一方、
図3(B)は、無線通信回線105の通信性能が悪化した場合のシーケンス図である。ステップS213において、切替装置116が応答の要求を第1ルータ115に送信する。第1ルータ115は、受信した要求を「B1 via A2」のルーティング情報に従って、基地局104に送信しようとする。しかし、ここで、無線通信回線105の通信性能が悪化し、要求に対する応答が応答装置121に受信されず、または、所定の時間以内に応答装置121からの応答が切替装置116により受信されなければ、第1ルータ115に「B5 via A3」のルーティング情報が設定される。
【0042】
したがって、ステップS214において、端末111、112および113のいずれかがサーバシステム102宛ての送信データを第1ルータ115に送信すれば、ステップS215において、第1ルータ115は、送信データを第2ルータ117へ送信する。ステップS216において、第2ルータは、送信データを、通信回線106を介して、サーバシステム102に向けて送信する。
【0043】
サーバシステム102が、送信データを受信し、返信データをステップS217において送信すると、通信回線106を介して、第2ルータ117に送信される。第2ルータ117は、ステップS218において、第1ルータ115に返信データを送信し、第1ルータ115は、ステップS219において、返信データを端末111、112および113のいずれかに送信する(あるいは、第2ルータ117は、端末111、112および113のいずれかに直接送信せずに、返信データを第1ルータ115に送信することもできる。)。
【0044】
また、無線通信回線105の通信性能が良好になれば、切替装置116からの要求に対する応答が応答装置121より所定の時間内に受信できることが検出される。そこで、第1ルータ115に「B5 via A3」のルーティング情報に代えて、「B5 via A2」を設定する。
【0045】
したがって、端末111、112、113は、サーバシステム102のサーバと無線通信回線105と通信回線106とのいずれかを使用して通信を行うことができる。
【0046】
図4Aは、切替装置116の機能ブロック図を示す。切替装置116は、発信部401と、受信部402と、評価部403と、切替部404とを有する。
【0047】
発信部401は、応答装置121に向けて応答の要求の通信データ(以後、応答の要求と略記する場合がある。)を発信し送信する。応答の要求は、無線通信回線105を使用して、応答装置121に送信される。この応答の要求は、具体的には、B1のIPアドレスを宛て先とするICMP(Internet Control Message Protocol)のecho requestとすることができる。ICMPは、インターネットにおける基本的なプロトコルであるため、インターネットに接続できる機器であれば通常処理することができる。このため、応答の要求の通信データをICMPに基づくものにすることにより、応答装置121を特殊な装置とする必要がなくなる。
【0048】
発信部401は、一定の時間間隔で複数の応答の要求を送信してもよい。例えば、2秒おきに応答の要求を送信する。また、通信性能の良好なときは、応答の要求の送信間隔を大きくし、通信性能が良好な状態から良好でない状態に変化し始めると、例えば、応答の要求の送信から応答の受信までの時間が長くなりはじめると、応答の要求の送信間隔を小さくするように、送信間隔を変化させてもよい。これにより、通信性能の良好なときに、応答の要求と応答との送受信により、無線通信回線105の帯域を圧迫することを防止することができる。
【0049】
受信部402は、発信部401が応答装置121に向けて送信した応答の要求に対する応答の通信データ(以後、応答と略記する場合がある。)を受信する。
図1においては、応答装置121に向けて送信した応答の要求に対する応答は、無線通信回線105を介して受信される。ただし、応答の要求と応答とのすくなくともいずれか一方が、無線通信回線105を使用して送信されればよい。例えば、応答の要求は、無線通信回線105を使用して切替装置116から応答装置121へ送信され、応答は、図示しない第3の回線を使用して応答装置121から切替装置116へ送信されてもよい。もちろん、応答の要求と応答との両方が無線通信回線105を使用して送信されるようになっていてもよい。
【0050】
発信部401が応答の要求を送信すると、送信時刻の情報を受信部402に伝達し、受信部402は、応答の要求を受信すると、応答の要求を受信した時刻および伝達された送信時刻の情報から、応答の要求が送信された時刻から応答の要求を受信した時刻を算出し、評価部403に伝達することができる。また、受信部402が、所定の時間内に応答の要求を受信できなければ、タイムアウトした旨の情報を評価部403に伝達することもできる。
【0051】
所定の時間の長さとしては、発信部401の応答の要求の送信間隔の長さ以下とすることができる。例えば、発信部401が2秒おきに応答の要求を送信する場合には、所定の時間を2.0秒または1.9秒などとすることができる。また、逆に定義すると、発信部401の応答の要求の送信間隔の長さを所定の時間の長さ以上とすることもできる。
【0052】
評価部403は、受信部402から伝達される情報に基づいて、無線通信回線105の通信性能を評価する。例えば、応答の要求に対して応答が受信されず、または、応答の要求の送信から応答が受信されるまでの時間が所定の時間内でなければ、無線通信回線105の通信性能が一定の条件を満たさないと評価する。また、そうでなければ、無線通信回線105の通信性能は一定の条件を満たすと評価する。無線通信回線105の通信性能が一定の条件を満たさない場合を、無線通信回線105の通信性能は良好でない(不芳である)とし、無線通信回線105の通信性能が一定の条件を満たす場合を、無線通信回線105の通信性能は良好であるとすることができる。評価部403の評価の結果は、切替部404に伝達される。
【0053】
切替部404は、評価部403から伝達される評価の結果に応じて、端末111、112、113がサーバシステム102のサーバとの通信に使用する回線を無線通信回線105と通信回線106とのいずれ選択を行い、必要な設定を行い、回線の切り替えを行う。すなわち、評価部403により、無線通信回線106の通信性能が良好であると評価されれば、無線通信回線106を選択し、無線通信回線106を使用するように切り替える。また、無線通信回線106の通信性能が良好でないと評価されれば、通信回線106を選択し、通信回線106を使用するように切り替える。この切り替えは、例えば、第1ルータ115のルーティング情報を変更して設定する。端末111、112、113が無線通信回線105を使用してサーバシステム102のサーバと通信をおこなうルーティング情報が第1ルータ115に設定されている状態で、評価部403から伝達される評価が、通信性能は良好でない評価であるとする。このとき、切替部404は、端末111、112、113とサーバシステム102のサーバとの通信に使用する回線として通信回線106を使用するように、第1ルータ115のルーティング情報を設定する。また、端末111、112、113が通信回線106を使用してサーバシステム102のサーバと通信を行うルーティング情報が第1ルータ115に設定されている状態で、評価部403から伝達される評価が、通信性能が良好である評価であるとする。このとき、切替部404は、端末111、112、113とサーバシステム102のサーバとの通信に使用する回線として無線通信回線105を使用するように、第1ルータ115のルーティング情報を変更して設定する。このように、切替部404は、無線通信回線105の通信性能が良好であれば、無線通信回線105が使用されるように、また、無線通信回線105の通信性能が良好でなくなれば、通信回線106が使用されるように制御を行う。
【0054】
なお、評価部403は、発信部401から応答の要求が送信される都度、応答の要求に対する応答が所定の時間内に受信されるかどうかにより、通信性能の評価を行うと、無線通信回線105と通信回線106との選択が短時間で切り替わることが繰り返され、端末システム101とサーバシステム102との通信が不安定にあることがある。そこで、評価部403は、発信部401からの応答の要求に対する応答が所定の時間内に受信されないことが所定の回数続けて発生した場合に、無線通信回線105の通信性能が良好でないと評価する。例えば7回続けて、応答の要求に対する応答が所定の時間内に受信されないことが発生した場合に、無線通信回線105の通信性能が良好でないと評価する。この場合、発信部401が2秒間隔で応答の要求を送信していれば、無線通信回線105の通信性能が現実に悪化してから14秒以上経過してから、無線通信回線105から通信回線106に切り替わることになる。無線通信回線105の通信性能が現実に悪化してからどれだけの時間が経過してから無線通信回線105から通信回線106に切り替わるかは、通信システム100の目的などを勘案して決定する。
【0055】
また、無線通信回線105の通信性能が良好でないと評価された後、一回でも応答の要求に対する応答が所定の時間内に受信された場合に、無線通信回線105の通信性能が良好であると評価を行うと、実際には、無線通信回線105の通信性能が安定していない状態で通信回線106から無線通信回線105に切り替わることになり好ましくない場合がある。そこで、評価部403は、無線通信回線105の通信性能が良好でないと評価された後、発信部401からの応答の要求に対する応答が所定の時間内に受信されることが所定の回数続けて発生した場合に、無線通信回線105の通信性能が良好であると評価を行うようにしてもよい。例えば、14回続けて、応答の要求に対する応答が所定の時間内に受信されることが発生した場合に、無線通信回線105の通信性能が良好であると評価する。この場合、発信部401が2秒間隔で応答の要求を送信していれば、無線通信回線105の通信性能が現実に良好となってから28秒以上継続してから、通信回線106から無線通信回線105に切り替わることになる。無線通信回線105の通信性能が現実に良好となってからどれだけの時間が経過してから通信回線106から無線通信回線105に切り替わるかは、通信システム100の目的などを勘案して決定する。したがって、無線通信回線105の通信性能が所定の条件を満たさなくなり通信回線106に切り替わった後に、無線通信回線105の通信性能が所定の条件とは異なる条件を満たす場合に、通信回線106から無線通信回線105に切り替わるようになっていてもよい。
【0056】
なお、切替装置116は、発信部401と、受信部402と、評価部403と、切替部404とを全て有している必要はない。すなわち、発信部401と、受信部402と、評価部403と、切替部404とのいずれか一以上を含む装置を組み合わせて切替装置116とすることもできる。この場合、切替装置116は、複数の装置を組み合わせたシステムとして提供される。例えば、
図4Bに示すように、切替装置(システム)116は、通信装置400−1と、評価切替装置400−2とを備える。通信装置400−1は、発信部401と、受信部402とを備える。また、評価切替装置4002−は、評価部403と、切替部404とを備える。このため、切替装置(システム)116は、切替装置116と同様に動作し、切替装置116と置換することができる。この場合、評価切替装置400−2を本願発明の一実施形態に係る切替システムとすることができる。評価切替装置400−2を切替システムとする場合、評価切替装置400−2(切替システム)の評価部403は、無線通信回線を介して応答装置へ送信される応答の要求の電文に対して応答装置より返信される応答の電文の受信に関する情報に基づいて、前記無線通信回線の通信性能を評価すると定義することができる。
【0057】
図5は、切替装置116の処理のフローチャートである。ステップS501の処理として、発信部401が、応答の要求を送信する。また、発信部401は、受信部402に、応答の要求の送信時刻に関する情報を伝達することができる。ステップS502の処理として、受信部402が、タイムアウトせずに応答を受信したかどうかを判断する。すなわち、応答の要求が送信されてから、一定の時間内に応答が受信されたかどうかを判断する。この判断は、例えば受信部402が行う。もし、タイムアウトせずに応答を受信した場合には、ステップS503の処理として、変数tの値を0にして処理を終了する。また、タイムアウトせずに応答を受信できなかった場合には、ステップS504に処理を移行させ、変数tの値を例えば1増加させ、処理を終了する。なお、処理が終了すると、例えば所定の時間の長さの経過後に、再び、ステップS501の処理が開始されるようになっていてもよい。
【0058】
図6は、切替装置101の別の処理のフローチャートである。ステップS601の処理として、評価部403が、変数tの値を0とする。ステップS602の処理として、変数tの値が閾値を超えたかどうかを判断する。例えば、変数tの値が6を超え7以上となったかを判断する。変数tの値が閾値を超えたということは、タイムアウトせずに応答を受信できなかったことが閾値の値より大きい回数続けて発生しているということである。そこで、ステップS603の処理に移行し、切替部404に第1ルータ115のルーティングテーブルを書き換え、格納されているルーティング情報を変更する。例えば、「B5 via A2」を「B5 via A3」に変更する。
【0059】
ステップS604の処理として、変数tの値を0とし、ステップS605の処理として、所定時間のポーズをする。すなわち、ステップS606の処理への移行の前に一時的に
図6の処理を停止する。例えば、28秒間処理を停止する。この間に、
図5の処理が1回以上は実行されるようにする。その後、ステップS606の処理へ移行し、変数tの値が0であるかどうかを判断する。変数tの値が0であれば、無線通信回線105の通信性能が良好となったことを意味するので、ステップS607の処理に移行し、第1ルータ115のルーティングテーブルを復旧する。例えば、「B5 via A3」を「B5 via A2」に変更する。ステップS606において、変数tの値が0でなければ、無線通信回線105の通信性能が良好となっていないと判断し、ステップS604に戻る。
【0060】
以上のように、本実施形態においては、無線通信回線105の通信性能の評価に基づいて、無線通信回線105と通信回線106との選択が行われる。これにより、無線通信回線105の通信性能が良好なときに無線通信回線105の回線速度が通信回線106より高ければ、高速な通信が行え、無線通信回線105の通信性能が良好でなくても、通信回線106による通信が確保できる。また、通信性能の評価を切替装置116以外、例えばアクセスポイント103で行う必要もなくすることができる。
【0061】
(実施形態2)
図7は、本願発明の実施形態2に係る通信システムの機能ブロック図を示す。実施形態1の機能ブロック図と
図7とを比較すると、本実施形態においては、第1ルータのA2が無線LANルータ701のインターフェースA5と接続され、無線LANルータ701のインターフェースA6が無線通信回線105を介して基地局104と通信が可能となっている。
【0062】
また、本実施形態においては、切替装置702は、無線LANルータ701を制御する。実施形態1においては、例えば切替装置116が、第1ルータのルーティング情報を変更していた。一方、本実施形態においては、切替装置702は、無線LANルータ701のA5を制御する。より詳細には、無線LANルータ701のA5の動作を停止(シャットダウン)したり、再開させたりする。加えて、本実施形態においては、第1ルータ115は、無線LANルータ701のA5との送受信が可能かどうかに応じて、ルーティング情報を書き換える機能を有することができる。
【0063】
図8は、本実施形態におけるルーティング情報を示し、無線通信回線105の通信性能が良好である場合のルーティング情報を示す。端末111、112および113のルーティング情報、第2ルータのルーティング情報は、実施形態1と同様である。本実施形態においては、「B5 via A2」のルーティング情報を有する。また、無線ルータ701は、「B5 via A6」、「B1 via A6」のルーティング情報を有する。これにより、第1ルータ115から無線LANルータ701がサーバシステム102を宛て先とする通信データを受信すると、A6により送信がされる。また、切替装置702からの応答の要求も、A6により送信がされる。
【0064】
本実施形態においては、第1ルータ115は、無線ルータ701と通信を行い、A5の送受信の動作が停止していないかどうかを判断する。例えば、第1ルータ115は、無線LANルータ701のA5に対して、ICMPのecho requestを送信し、それに対する応答があるかどうかを判断することによって、A5の送受信の動作が停止していないかどうかを判断する。すなわち、ICMPのecho requestに対する応答があれば、A5の送受信の動作が停止していないと判断する。また、一般に、ルータ同士は、Routing Information Protocolなどのプロトコルを用いてルーティング情報を交換することができるので、第1ルータ115は、無線LANルータ701とルーティング情報を交換することができるかどうかにより、A5の送受信の動作が停止していないかどうかを判断する。もし、第1ルータ701が、A5の送受信の動作が停止していると判断すると、「B5 via A2」のルーティング情報が、「B5 via A3」に変更される。また、A3の送受信の動作が停止している状態から、ICMPのecho requestに対する応答が得られたり、ルーティング情報の交換が可能となったりすれば、A5の送受信の動作が再開していると判断し、「B5 via A3」のルーティング情報を「B5 via A2」に変更する。
【0065】
図9は、本実施形態に係る切替装置702の処理のフローチャートである。なお、このフローチャートの前提として、切替装置702は、
図5のフローチャートの処理も実行するとする。
【0066】
ステップS901の処理として、変数tの値を0にする。ステップS902の処理として、変数tの値が閾値を超えたかどうかを判断する。もし、変数tの値が閾値を超えたと判断すると、ステップS903に処理を移行させ、切替部404は、A5の送受信を停止させる。次にステップS904の処理として、変数tの値を0として、ステップS905の処理として、所定時間のポーズを行う。ポーズ後に、ステップS906に処理を移行させ、変数tの値が0であれば、無線通信回線105の通信性能が良好になったと判断し、ステップS907の処理において、切替部404は、A5の送受信を再開させる。もし、ステップS906において、変数tの値が0でなければ、無線通信回線105の通信性能が良好ではないと判断し、ステップS904に処理を戻す。
【0067】
図10は、本実施形態における第1ルータ115の処理のフローチャートである。ステップS1001の処理として、無線LANルータのA5と通信が可能であるかどうかを判断する。もし、通信が可能でないと判断すると、ステップS1002に処理を移行させ、ルーティングテーブルを変更し、「B5 via A2」のルーティング情報を、「B5 via A3」に変更する。ステップS1003の処理において、無線LANルータのA5と通信が可能になるまで待ち、可能になれば、ステップS1004に処理を移行させ、ルーティングテーブルを復旧させる。
【0068】
本実施形態においては、第1ルータ115以外の切替装置702などが直接に第1ルータ115のルーティング情報を変更する必要がないので、第1ルータ115のルーティング情報を切替装置702などに記憶させる必要がない。このため、端末システム101におけるネットワークの構成の変更があった場合に、第1ルータ115以外の切替装置702などに記憶させているルーティング情報を変更せずに済む。これにより、実施形態1の効果に加えて、ネットワークの構成の変更に伴うルーティング情報の設定の変更がより簡単になる。