(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する本発明が適用された実施の形態に記載の電力変換装置およびこの装置を使用したシステムは、製品化のために解決することが望ましい色々な課題を解決している。これら実施の形態が解決している色々な課題の一つに、上述の発明が解決しようとする課題の欄に記載した電力変換装置内部の配線接続距離を短くすることに係る課題があり、また上述の発明の効果の欄に記載した電力変換装置内部の配線接続距離を短くする効果に止まらず、上記課題や効果以外に色々な課題を解決し、色々な効果を達成することができる。
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、ハイブリッド自動車(以下「HEV」と記述する)の制御ブロックを示す図である。
【0011】
エンジンEGNおよびモータジェネレータMG1は車両の走行用トルクを発生する。また、モータジェネレータMG1は回転トルクを発生するだけでなく、モータジェネレータMG1に外部から加えられる機械エネルギーを電力に変換する機能を有する。
【0012】
エンジンEGNの出力側の出力トルクは動力分配機構TSMを介してモータジェネレータMG1に伝達され、動力分配機構TSMからの回転トルクあるいはモータジェネレータMG1が発生する回転トルクは、トランスミッションTMおよびデファレンシャルギアDEFを介して車輪に伝達される。一方、回生制動の運転時には、車輪から回転トルクがモータジェネレータMG1に伝達され、供給されてきた回転トルクに基づいて交流電力を発生する。発生した交流電力は後述するように電力変換装置200により直流電力に変換され、高圧用のバッテリ136を充電し、充電された電力は再び走行エネルギーとして使用される。
【0013】
次に電力変換装置200について説明する。インバータ回路140は、バッテリ136と直流コネクタ138を介して電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ回路140との相互において電力の授受が行われる。モータジェネレータMG1をモータとして動作させる場合には、インバータ回路140は直流コネクタ138を介してバッテリ136から供給された直流電力に基づき交流電力を発生し、交流コネクタ188を介してモータジェネレータMG1に供給する。モータジェネレータMG1とインバータ回路140からなる構成は電動発電ユニットとして動作する。
【0014】
なお、電力変換装置200は、インバータ回路140に供給される直流電力を平滑化するためのコンデンサモジュール500を備えている。
【0015】
電力変換装置200は、上位の制御装置から指令を受けたりあるいは上位の制御装置に状態を表すデータを送信したりするための通信用のコネクタ21を備えている。電力変換装置200は、コネクタ21から入力される指令に基づいて制御回路172でモータジェネレータMG1の制御量を演算し、さらにモータとして運転するか発電機として運転するかを演算し、演算結果に基づいて制御パルスを発生し、その制御パルスをドライバ回路174へ供給する。ドライバ回路174は、供給された制御パルスに基づいて、インバータ回路140を制御するための駆動パルスを発生する。
【0016】
図2は、インバータ装置200の構成を説明する回路ブロック図である。なお、
図2では半導体素子として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを使用しており、以下略してIGBTと記す。上アームとして動作するIGBT328及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166とで、上下アームの直列回路150が構成される。インバータ回路140は、この直列回路150を、出力しようとする交流電力のU相、V相、W相の3相に対応して備えている。
【0017】
これらの3相は、この実施の形態では走行用モータに対応するモータジェネレータMG1の電機子巻線の3相の各相巻線に対応している。3相のそれぞれの上下アームの直列回路150は、直列回路の中点部分である中間電極169から交流電流を出力する。この中間電極169は、交流端子159及び交流コネクタ188を通して、モータジェネレータMG1への交流電力線である交流バスバ802と接続される。
【0018】
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は、正極端子157を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506に電気的に接続されている。また、下アームのIGBT330のエミッタ電極は、負極端子158を介してコンデンサモジュール500の負極側のコンデンサ端子504に電気的に接続されている。
【0019】
ドライバ回路174は、各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための駆動パルスを各相のIGBT328やIGBT330に供給する。IGBT328やIGBT330は、ドライバ回路174からの駆動パルスに基づき、導通あるいは遮断動作を行い、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、この変換された電力はモータジェネレータMG1に供給される。
【0020】
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えている。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えている。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極155との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極165との間に電気的に接続されている。
【0021】
スイッチング用パワー半導体素子としては金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(以下略してMOSFETと記す)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。スイッチング用パワー半導体素子としては、IGBTは直流電圧が比較的高い場合に適していて、MOSFETは直流電圧が比較的低い場合に適している。
【0022】
コンデンサモジュール500は、正極側のコンデンサ端子506と負極側のコンデンサ端子504と正極側の電源端子509と負極側の電源端子508とを備えている。バッテリ136からの高電圧の直流電力は、直流コネクタ138を介して、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508に供給され、コンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506および負極側のコンデンサ端子504から、インバータ回路140へ供給される。
【0023】
一方、交流電力からインバータ回路140によって変換された直流電力は、正極側のコンデンサ端子506や負極側のコンデンサ端子504からコンデンサモジュール500に供給され、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508から直流コネクタ138を介してバッテリ136に供給され、バッテリ136に蓄積される。
【0024】
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンへの入力情報としては、モータジェネレータMG1に対して要求される目標トルク値、直列回路150からモータジェネレータMG1に供給される電流値、及びモータジェネレータMG1の回転子の磁極位置がある。
【0025】
上位の制御装置からコネクタ21を介して受けた制御信号は、インターフェースケーブル102を経由し、DCDCコンバータ100へ配信される。また、直流コネクタ138を介して受けた直流電圧は、コンデンサモジュール500のDCDC端子510を経由し、DCDCコンバータ100に配信される。
【0026】
また第1基板710は、ドライバ回路174と、制御回路172と、電流センサ180を実装している。
【0027】
図3は、電力変換装置200の外観を示す斜視図である。
図4は、電力変換装置200のケース10の内部構成を説明するために、電力変換装置200を分解した斜視図である。
【0028】
本実施形態に係る電力変換装置200は、直流コネクタ138と、交流コネクタ188と、LV(Low Voltage)コネクタ910とを備える。LVコネクタ910は、前記直流コネクタ138とは異なる直流電圧であるとともにDCDCコンバータ100で降圧された直流電圧を伝達する。直流コネクタ138、交流コネクタ188及びLVコネクタ910は、ケース10の所定の平面10aに配置される。なお平面10aは、本実施形態においてはケース10の上面に対応する。つまり組立作業者が、車両のボンネットの開口側から平面10aを見ることができるように、平面10aは配置される。これにより、電力変換装置200を車両取付け後、直流コネクタ138、交流コネクタ188及びLVコネクタ910を容易に接続することができ、作業性の向上が望める。
【0029】
図4に示されるように、コンデンサモジュール500は、ケース10内の上部に配置される。インバータ回路140を構成する複数の第1パワー半導体モジュール300a〜300cは、ケース10の一方の側面側に配置される。第1パワー半導体モジュール300a〜300cは、コンデンサモジュール500に対して略垂直に配置される。DCDCコンバータ100は、ケース10の他方の側面側に配置される。
【0030】
本実施形態においては、第1基板710は、制御回路172、ドライブ回路174、電流センサ180及びコネクタ21を搭載する。なお、制御回路172や電流センサ180やコネクタ21を第1基板710に搭載することは必須ではなく、搭載スペース等に応じて、これらの部品を第1基板710から分離してもよい。第1基板710は、その実装面が第1パワー半導体モジュール300a〜300cに対して平行になるように配置される。
【0031】
上面側カバー3は、ケース10の上面方向の開口部を覆うようにボルトによって固定される。また第1側面カバー904は、第1パワー半導体モジュール300a〜300cが収納されている側の開口部を覆うようにボルトによって固定される。第1側面カバー904は、コネクタ21と対向する領域に、コネクタ21を貫通させるための貫通孔906を形成する。これにより、コネクタ21周りの配線を短くすることができるため、ノイズの影響を低減することができる。また弱電系であるコネクタ21が、強電系である直流コネクタ138や交流コネクタ188やLVコネクタ910が配置された面とは異なる面に配置されるため、ノイズの影響を低減することができる。
【0032】
第2側面カバー905は、DCDCコンバータ100が収納される側の開口部を覆うようにボルト固定される。
【0033】
図5は、
図4の理解を助けるための図であり、
図3の断面Aの矢印方向から見た断面図である。
【0034】
流路形成体19は、ケース10の中央部近傍であって、DCDCコンバータ100側に僅かに近づいて配置されるとともにケース10の下部側に配置される。また流路形成体19は、第1流路19aと第2流路19bを形成する。第1流路19aと第2流路19bは、第1パワー半導体モジュール300a〜300cとDCDCコンバータ100の配列方向Dに沿って並べて配置される。第1流路19aは、DCDCコンバータ100よりも第1パワー半導体モジュール300a〜300cに近くに配置されかつ第1パワー半導体モジュール300a〜300cと対向して配置される。第2流路19bは、第1パワー半導体モジュール300a〜300cよりもDCDCコンバータ100に近くに配置されかつDCDCコンバータ100と対向して形成される。
【0035】
第1パワー半導体モジュール300a〜300cは、第1流路19aと接するように配置される。また、DCDCコンバータ100は、第2流路19bと接するように配置される。つまり第1パワー半導体モジュール300a〜300cは、流路形成体19を挟んでDCDCコンバータ100と対向する位置に配置される。
【0036】
直流コネクタ138は、ケース10の所定の平面10a側に配置される。この所定の平面10aは、第1パワー半導体モジュール300a〜300cと流路形成体19とDCDCコンバータ100の配列方向Dに沿うように形成される。つまり所定の平面10aは、配列方向Dと平行に形成される。そしてコンデンサモジュール500は、ケース10の所定の平面10aと流路形成体19との間に配置されるとともに直流コネクタ138と接続される。
【0037】
これにより、コンデンサモジュール500と直流コネクタ138との配線が短くすることができるとともに、コンデンサモジュール500から出力される直流電力を伝達する配線も極めて短くすることができる。
【0038】
また、コンデンサモジュール500は、第1流路19aと、第2流路19bを跨ぐように配置される。
【0039】
これにより、本実施形態における電力変換装置200の主な発熱部品である、コンデンサモジュール500と、第1パワー半導体モジュール300a〜300cと、DCDCコンバータ100を冷媒によって冷却することが可能となり、耐久性能の向上が望める。
【0040】
さらに、ケース10に対して、第1パワー半導体モジュール300a〜300cと、コンデンサモジュール500と、DCDCコンバータ100を、それぞれ異なる3方向から組付ける構造となるため、組立性、分解性の向上が望める。
【0041】
また、第1パワー半導体モジュール300a〜300cと、DCDCコンバータ100は、それぞれ、ケース10の外部インターフェースが配置されている上面に隣接する長手方向の辺の、側面方向から組付けられるため、第1パワー半導体モジュール300a〜300cと交流コネクタ188との接続距離、及び、DCDCコンバータ100と、LVコネクタとの接続距離を短くすることが可能となる。
【0042】
よって、電力変換装置200内部の電気的接続距離を短くすることが可能となるため、装置の小型化、軽量化、耐ノイズ性能の向上が望める。
【0043】
ケース10は、第1パワー半導体モジュール300a〜300cを収納する第1凹部850を有する。第1凹部850は、底面を流路形成体19により形成されかつ側面の一部をコンデンサモジュール500を収納するための壁850aによって形成される。
【0044】
ケース10は、コンデンサモジュール500を収納する第2凹部851を有する。第2凹部851は、底面を流路形成体19及び壁850aにより形成されかつ側面の一部を第1基板710を収納するための壁851aによって形成される。
【0045】
壁851bは、コンデンサモジュール500を収納する空間とDCDCコンバータ100を収納する空間の双方を形成する。
【0046】
第1基板710は、第1パワー半導体モジュール300a〜300cを挟んで第1凹部850の底面と対向する位置に配置される。さらに第1基板710は、壁851aにより支持され、第1パワー半導体モジュール300a〜300cが収納された第1凹部850に蓋をするように取付けられる。
【0047】
これにより、第1基板710は壁850a又は壁851aを介して流路形成体19と熱的に接続することができ、第1基板710を冷却することができる。また、
図4に示されるように、第1パワー半導体モジュール300a〜300cと第1基板710との間に、電流センサ180を実装するためのスペースを確保することが容易に可能となる。よって、電力変換装置200内部のスペースを無駄なく有効的に活用することができるため、小型化、軽量化の向上が望める。
【0048】
第1凹部850と第2凹部851は、それぞれ収納する部品に応じて大きさが異なる。それにより、組立て作業時の誤組付けの判別が容易になり、誤組付け防止が可能になる。本実施形態においては、第1パワー半導体モジュール300a〜300c側の第1凹部850を第2凹部851よりも深く形成している。
【0049】
図6は、流路形成体19を説明するための図であり、
図3の断面Bの矢印方向から見た断面斜視図である。
【0050】
冷媒を流入するための入口配管13と、冷媒を流出するための出口配管14が、ケース10の同一側面上に配置される。流路形成体19は、第1パワー半導体モジュール300a〜300cが配置された方向に向かって形成された第1開口部19cと、DCDCコンバータ100が配置された方向に向かって形成された第2開口部19dとを形成する。
【0051】
第1開口部19cは、第1パワー半導体モジュール300a〜300cを搭載したベース板301により塞がれる。ベース板301は、第1流路19aを流れる冷媒と直接接触する。またベース板301は、第1パワー半導体モジュール300aと対向して形成されるフィン302aと、第1パワー半導体モジュール300bと対向して形成されるフィン302bと、第1パワー半導体モジュール300cと対向して形成されるフィン302cとを有する。
【0052】
冷媒は、矢印で示す流れ方向417の方向に、入口配管13を通って、ケース10の長手方向の辺に沿って形成された第1流路19a内を流れ方向418のように流れる。また、冷媒は、流れ方向421のように、ケース10の短手方向の辺に沿って形成された流路部を、流れ方向421のように流れ、折り返し流路を形成する。また、冷媒は、流れ方向422のように、ケース10の長手方向の辺に沿って形成された第2流路19b流れる。第2流路19bは第1流路19aと対向する位置に設けられる。さらに、冷媒は、流れ方向423のように、出口配管14を通って流出する。本実施形態では、冷媒としては水が最も適している。しかし水以外の空気等であっても利用できるので、以下冷媒と記す。
【0053】
また、第1流路19aと第2流路19bは、ケース10の長手方向の辺に沿って、互いに対向するように形成されているので、アルミ鍛造により製造しやすい構成になっている。
【0054】
図7を用いて、インバータ回路140に使用される第1パワー半導体モジュール300a〜300cの構成を説明する。第1パワー半導体モジュール300aにはU相の直列回路150が設けられ、第1パワー半導体モジュール300bにはV相の直列回路150が設けられ、第1パワー半導体モジュール300cにはW相の直列回路150が設けられている。上記第1パワー半導体モジュール300a〜300cはいずれも同じ構造であり、代表して第1パワー半導体モジュール300aの構造を説明する。
【0055】
なお
図7において、信号端子325Uは、
図2に開示したゲート電極154および信号用エミッタ電極155に対応し、信号端子325Lは、
図2に開示したゲート電極164およびエミッタ電極165に対応する。また、直流正極端子315Bは、
図2に開示した正極端子157と同一のものであり、直流負極端子319Bは、
図2に開示した負極端子158と同一のものである。また、交流端子320Bは、
図2に開示した交流端子159と同じものである。
【0056】
図7(a)は、本実施形態の第1パワー半導体モジュール300aの斜視図である。
図7(b)は、本実施形態の第1パワー半導体モジュール300aを断面Cの矢印方向から見た断面図を模式的に示した例である。
【0057】
図7(a)および
図7(b)に示すように、第1パワー半導体モジュール300aは、直列回路150を構成する半導体素子(IGBT328、IGBT330、ダイオード156、ダイオード166)を、一体モールド成形した樹脂部材350で覆ったものである。樹脂部材350は、例えば高Tgトランスファー樹脂等で構成され、かつ、つなぎ目の無い状態で一体に成形される。
【0058】
樹脂部材350の一つの側面からは、コンデンサモジュール500と接続する直流正極端子315Bおよび直流負極端子319Bと、モータと接続するためのU、V、W相の交流端子320Bが突出している。また、正極端子315B等が突出する側面と対向する側面からは、信号端子325Uおよび信号端子325Lが突出している。樹脂部材350の内部には、配線を含めた半導体モジュール部を有している。
【0059】
図7(b)に示すように、半導体モジュール部は、絶縁基板334の上に上下アームのIGBT328、IGBT330、ダイオード156、ダイオード166等が設けられて、前述の樹脂部材350によって保護されている。絶縁基板334は、セラミック基板であっても良いし、さらに薄い絶縁シート、またはSiNであってもよい。
【0060】
直流正極端子315Bおよび直流負極端子319Bは、絶縁基板334上の回路配線パターン334kと接続するための接続端315k及び接続端319kを有する。また、接続端315k及び接続端319kは、回路配線パターン334kとの接合面を形成するために、その先端部が屈曲している。接続端315k及び接続端319kと回路配線パターン334kとは、はんだなどを介して接続されるか、もしくは直接金属同士を超音波溶接により接続される。
【0061】
絶縁基板334は、例えば金属ベース304の上にはんだ337aを介して固定される。はんだ337aは、ベタパターン334rと接合される。上アーム用のIGBT328と上アーム用のダイオード156及び下アーム用のIGBT330や下アーム用のダイオード166は、はんだ337bにより回路配線パターン334kに固定される。回路配線パターン334kと半導体素子との接続は、ボンディングワイヤ371により為される。
【0062】
図8は、第1パワー半導体モジュール300aの内部回路構成を示す回路図である。上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極は、導体板315を介して接続される。導体板315には直流正極端子315Bが接続されている。IGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極は、導体板318を介して接続される。IGBT328のゲート電極154には、3つの信号端子325Uが並列に接続されている。IGBT328の信号用エミッタ電極155には、信号端子336Uが接続されている。
【0063】
一方、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極としたアーム側のダイオード166のカソード電極は、導体板320を介して接続される。導体板320には交流端子320Bが接続されている。IGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極は、導体板319を介して接続される。導体板319には直流負極端子319Bが接続されている。IGBT330のゲート電極164には、3つの信号端子325Lが並列に接続されている。IGBT330の信号用エミッタ電極165には、信号端子336Lが接続されている。
【0064】
図9、
図10を用いて、本実施形態における電力変換装置200の電力の流れを説明する。
図9は、本実施形態における電力変換装置200の直流電力の流れを示した斜視図である。直流電力の流れに無関係な構成部品は省略されている。バッテリ136から供給された直流電力は、直流コネクタ138を介して、電力変換装置200へ入力される。
【0065】
直流コネクタ138から入力された直流電力は、コンデンサモジュール500を通って平滑化された後、第1パワー半導体モジュール300a〜300cへ直流電力を伝達するためのコンデンサ端子504および506と、DCDCコンバータ100へ直流電力を伝達するためのDCDC端子510へ供給される。なお、DCDCコンバータ100へ到達した後の電力の流れについては後述する。
【0066】
直流電力は、コンデンサ端子504および506を通過後、直流バスバ504aおよび506aを介して、第1パワー半導体モジュール300a〜300cの直流正極端子315Bおよび直流負極端子319Bから、第1パワー半導体モジュール300a〜300cのインバータ回路140へ入力される。
【0067】
直流バスバ504aと直流バスバ506aは、絶縁部材を介した積層状態で構成される。また直流バスバ504aと直流バスバ506aは、第1パワー半導体モジュール300a〜300cが配置され面や直流コネクタ138が配置された平面10aとは異なる平面10bに沿って配置される。平面10bは、入口配管13と出口配管14が配置された面と対向する。これにより、平面10bを有効に利用することができ、電力変換装置200の小型化に繋がる。また、直流バスバ504aと直流バスバ506aから放射される電磁ノイズから電力変換装置200内にある部品を保護することができる。
【0068】
図10は、本実施形態における電力変換装置200の交流電力の流れを示した斜視図である。交流電力の流れに無関係な構成部品は省略されている。
【0069】
インバータ回路140にて、交流へ変換された電力は、第1パワー半導体モジュール300a〜300cの交流端子320Bから、交流バスバ802を介して、交流コネクタ188へと伝達される。交流コネクタ188から出力されて交流電力は、モータジェネレータMG1へと伝えられ、車両の走行用トルクを発生する。
【0070】
なお、ここでは、バッテリ136に蓄えられた電力が、モータジェネレータMG1へ到達するまでの流れを例として示した。モータジェネレータMG1が、外部から加えられた機械エネルギーを電力に変換して、バッテリ136へ蓄える発電機として動作する場合は、上述の説明とは逆の流れで電力が伝えられるものとする。
【0071】
交流バスバ802は、第1パワー半導体モジュール300a〜300cが配置され面や直流コネクタ138が配置された平面10aとは異なる平面10bに沿って配置される。これにより、平面10bを有効に利用することができ、電力変換装置200の小型化に繋がる。また、交流バスバ802から放射される電磁ノイズから電力変換装置200内にある部品を保護することができる。
【0072】
図11、
図12は、コンデンサモジュール500を説明する図であり、
図11は、コンデンサモジュール500と直流コネクタ138を抜き出した分解斜視図である。
図12は、理解を助けるために、直流コネクタ138およびコンデンサモジュール500の樹脂部品を表示しない状態の斜視図である。
【0073】
コンデンサモジュール500は、コンデンサバスバ501と複数のコンデンサ素子500aおよびYコンデンサ40から形成される。複数のコンデンサ素子500aは、コンデンサバスバ501に並列接続されている。なお、コンデンサモジュール500は、1以上のコンデンサ素子500aで構成されている。
【0074】
Yコンデンサ40は、複数の端子を有するとともにそれら複数の端子のうち一つが電気的に接地されているコンデンサにより構成される。Yコンデンサ40はノイズ対策として設けられているものであり、複数のコンデンサ素子500aと並列に接続されている。
【0075】
コンデンサバスバ501には、複数のコンデンサ素子500aが接続される。コンデンサバスバ501は、正極バスバ501Pと、負極バスバ501Nとコンデンサバスバ樹脂501Mとから成る。本実施形態では、正極バスバ501Pと負極バスバ501Nを重ね合わせ、コンデンサバスバ樹脂501Mにて一体成形する構成としているが、正極バスバ501Pと負極バスバ501Nの間に絶縁シートを挟むように積層させる構成としてもよい。
【0076】
コンデンサバスバ樹脂501Mは、裏側に、コンデンサ素子500aの形に沿った形状を設けており、また、前述の第1凹部850の底部にも、コンデンサ素子500aの形に沿った形状が設けてある。
【0077】
複数のコンデンサ素子500aは、これらの、コンデンサバスバ樹脂501Mおよび第1凹部850底部に設けられた形状によって、コンデンサバスバ樹脂501Mと、第1凹部850の間に挟まれて固定される。
【0078】
正極バスバ501Pおよび負極バスバ501Nには、複数のコンデンサ素子500aの正極側および負極側の端子を貫通させるための穴が設けられており、コンデンサ素子500aの端子がバスバを貫通した状態で、溶接することによって、複数のコンデンサ素子500aと正極側バスバおよび負極側バスバとが接続される。
【0079】
直流コネクタ138は、一端は、バッテリ136へと繋がるコネクタと接続される端子を有しており、もう一端は、コンデンサモジュール500の正極側電源端子509および負極側電源端子508へと接続される。また、直流コネクタの中央部には、ノイズ対策としてXコンデンサ43が設けられている。
【0080】
次に、DCDCコンバータ100について説明する。
図13及び
図14は、DCDCコンバータ100の回路構成を示す図である。
【0081】
図13の例では、降圧及び昇圧を行う双方向DCDCコンバータ対応としている。そのために、1次側の降圧回路(HV回路)、2次側の昇圧回路(LV回路)は、ダイオード整流ではなく同期整流構成としている。また、HV/LV変換で高出力とするために、スイッチング素子に大電流部品を採用し、かつ、平滑コイルの大型化を図っている。
【0082】
具体的には、HV/LV側共に、リカバリーダイオードを持つMOSFETを利用したHブリッジ型・同期整流スイッチング回路構成(H1〜H4)とした。スイッチング制御にあっては、LC直列共振回路(Cr、Lr)を用いて高スイッチング周波数(100kHz)でゼロクロススイッチングさせ、変換効率を向上させて熱損失を低減するようにした。加えて、アクティブクランプ回路を設けて、降圧動作時の循環電流による損失を低減させ、ならびに、スイッチング時のサージ電圧発生を抑制してスイッチング素子の耐圧を低減させることで、回路部品の低耐圧化を図ることで装置を小型化している。
【0083】
さらに、LV側の高出力を確保するために、全波整流型の倍電流(カレントダブラー)方式とした。なお、高出力化にあたり、複数のスイッチング素子を並列同時作動させることで高出力を確保している。
図13の例では、SWA1〜SWA4、SWB1〜SWB4のように4素子並列とした。また、スイッチング回路および平滑リアクトルの小型リアクトル(L1、L2)を、対称性を持たせるように2回路並列配置とすることで高出力化している。このように、小型リアクトルを2回路配置とすることで、大型リアクトル1台を配置させる場合に比べて、DCDCコンバータ全体の小型化が可能となる。
【0084】
図13の回路構成図の下部に、降圧回路および昇圧回路用の駆動回路および動作検出回路、インバータ装置経由で上位の制御装置との通信機能を担う制御回路部を実装した第2基板711を示す。上位の制御装置との通信をインバータ装置経由とすることにより、インバータ装置とDCDCコンバータを一体化した構成、インバータ装置単体の構成の各場合でも、上位の制御装置との通信インターフェースは共通化が可能となる。
【0085】
図14の例では、1次側の降圧回路(HV回路)は、
図13の例と同様にフルブリッジとし、2次側のLV回路は、ダイオード整流構成としている。本実施形態においては、
図14の回路構成を採用している。
【0086】
図15は、DCDCコンバータ100における部品配置を説明する図であり、DCDCコンバータ100のみを表示した正面図である。
【0087】
図15に示すように、DCDCコンバータ100の回路部品は、金属製(例えば、アルミダイカスト製)のベース板37に取付けられている。具体的には、主トランス33、スイッチング素子H1〜H4が搭載された第2パワー半導体モジュール35、第2基板711、コンデンサ、サーミスタ等が載置されている。第2基板711には、インプットフィルタと、アウトプットフィルタと、マイコンと、トランスと、第1基板710と通信するインターフェースケーブル102を接続するコネクタ等が実装されている。主な発熱部品は、主トランス33、インダクタ素子34および第2パワー半導体モジュール35である。
【0088】
なお、
図14の回路図との対応を記載すると、主トランス33はトランスTrに、インダクタ素子34はカレントダブラーのリアクトルL1、L2にそれぞれ対応している。
【0089】
第2基板711は、ベース板37から上方に突出した複数の支持部材上に固定される。第2パワー半導体モジュール35においては、スイッチング素子H1〜H4は、パターンが形成された金属基板上に実装されており、金属基板の裏面側はベース板37の表面に密着するように固定されている。
【0090】
このように、本実施形態におけるDCDCコンバータ100の回路部品は、全て、ベース板37に取付けられるようになっており、DCDCコンバータ100を一つのモジュールとして、ケース10へ取付けることが可能となる。これにより、電力変換装置200の組立て作業性の向上が望める。
【0091】
図16は、DCDCコンバータ100部を分解した状態の斜視図である。
【0092】
DCDCコンバータ100のベース板37が、ケース10に収納された第2流路19bを塞ぐように、ケース10へ取付けられることにより、ベース板37は、冷却流路19の壁の一部を形成する。ケース10とベース板37の間には、シール部材409が設けられ気密性を保っている。
【0093】
またベース板37は、ケース10におけるDCDCコンバータ100の収納空間の底面に配置され、ベース板37の一部が第2流路19bと繋がる開口を塞いでいる。このベース板37における第2流路19bと対向する領域に、主トランス33、ダイオード913、チョークコイル911等の発熱部品が配置されている。これにより、これら発熱部品が第2流路19bに流れる冷媒によって効率良く冷却される。
【0094】
これにより、第2パワー半導体モジュール35内のMOSFETの温度上昇を抑えることができ、DCDCコンバータ100の性能を発揮しやすくする。また、主トランス33の巻線の温度上昇を抑えることができ、DCDCコンバータ100の性能を発揮しやすくなる。
【0095】
図17は、DCDCコンバータ100における電力の流れを示した図である。コンデンサモジュール500のDCDC端子510から供給された直流電力は、第2パワー半導体モジュール35に入力され、所定の電圧へ降圧される。ここで、第2パワー半導体モジュール35は、第2基板711とベース板37の間に配置されているため、本来であれば不可視であるが、理解を助けるために、第2パワー半導体モジュール35を表示している。第2パワー半導体モジュール35にて、降圧された電力は、コイル912を通過し、主トランス33へ至る。
【0096】
その後、主トランス33から出力された電力は、ダイオード913にて整流された後、チョークコイル911を介して、LVコネクタとの接続端子910aへ到達する。さらに、接続端子910aにて、LVコネクタ910とボルト固定されることによって、電力変換装置200の外部へ、DCDCコンバータ100で変換した電力を出力する。
【0097】
本実施形態では、前述の通り、DCDCコンバータ100をLVコネクタ910が配置されたケース10の上面と隣接する長手方向の側面方向から組付けられる。これにより、DCDCコンバータ100の接続端子910aとLVコネクタ910の接続距離を短くすることが可能となる。
【0098】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。例えば、上述した実施の形態では、PHEVあるいはEV等の車両に搭載される電力変換装置を例に説明したが、本発明はこれらに限らず建設機械等の車両に用いられる電力変換装置にも適用することができる。