【0013】
具体的には、クエン酸回路は、クエン酸シンテターゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ、スクシニル−CoAシンテターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、フマラーゼ及びリンゴ酸デヒドロゲナーゼの8つの酵素が関与して構成されている。これら8酵素の酵素反応によって、1個のアセチル基が2分子のCO
2に酸化されるとともに、3分子のNADH、1分子のFADH
2、及び1分子のGTP(グアノシン三リン酸)又はATPが生産される。ここで生産された3分子のNADH及び1分子のFADH
2は、電子伝達系において11分子のATPの生産に寄与する。したがって、クエン酸回路が1回転することにより、合計12分子のATPが生産されることになる。
【実施例】
【0025】
次に、各試験例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(試験例1:クエン酸回路活性化剤によるクエン酸回路に関与する酵素の活性化に関する試験)
複数のddYマウス(6週齢、オス)を用意し、これらを5日間の予備飼育後に遊泳運動を行わせ、体重と遊泳時間が平均的となるように投与群1と対照群1との2群に群別し、これらを用いて本発明のクエン酸回路活性化剤のクエン酸回路活性化効果を検証した。投与群のddYマウスには、体重1kg当たり125mgとなる量のクエン酸を蒸留水500μlに溶解させたもの(実施例1)を、また、対照群のddYマウスには蒸留水500μl(比較例1)をそれぞれ定期的に経口投与した。投与スケジュールは、週6日間(月〜土)、1日1回、原則として16:00〜17:00の間とし、これを5週間継続した。また、各群のddYマウスには1週間毎に遊泳運動を行なわせた。遊泳運動は、体重の7%の錘を付け、頭部が水面下に5秒間沈むまで行った。
【0026】
投与5週目は、遊泳運動を行なわせることなく、各群のddYマウスの解剖を行なった。そして、各群のddYマウスにおける筋肉中のクエン酸シンテターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ及びリンゴ酸デヒドロゲナーゼの活性をそれぞれ測定した。
【0027】
クエン酸シンターゼ活性は、Srereらの方法により測定を行った。具体的には、筋肉ホモジネート液に1mM DTNB、10mM acetyl−CoAを含む0.1M Tris−HCl Bufferを加え、25℃の温水中に10分間静置し、温度平衡に達した後、10mM oxaloacetateを添加して反応を開始させた。反応開始後5分間にわたり分光光度計を用いて412nmの吸光度の変化を測定した。
【0028】
コハク酸デヒドロゲナーゼ活性は、Ackrellらの方法により測定を行った。具体的には、0.3M リン酸緩衝液、30mM EDTA、0.4M コハク酸、3%ウシ血清アルブミン、10mM フェリシアン化カリウムを加え、25℃の温水中に10分間静置した。筋肉ホモジネート液を加え、反応を開始させた。反応開始後10分間の455nmの吸光度の変化を測定した。
【0029】
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性は、Pattakらの方法により測定を行った。具体的には、筋肉ホモジネート液を500mM imidazole−HCl buffer pH 7.4で希釈した。その0.02mlをマイクロセルに取り、50mM imidazole−HCl buffer pH 7.4を加え、1.5mM NADHを加え、30℃で5分間静置後、412nmで吸光度を測定した。さらに、5mM oxaloacetateを加え、同様に1分間静置し、3分間の吸光度測定を行った。
【0030】
また、有意差検定については、実施例1を投与した投与群1と比較例1を投与した対照群1との比較について対応のあるt検定を実施した。それらの結果を
図1に示す。なお、
図1において、「*」は、t検定の結果がp<0.05であることを示す。
【0031】
図1に示す結果から、比較例1を投与した対照群1と比較して、実施例1を投与した投与群1では、クエン酸シンテターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ及びリンゴ酸デヒドロゲナーゼのいずれにおいても、その活性が高められる傾向にあることが確認された。とくに、クエン酸シンテターゼ及びコハク酸デヒドロゲナーゼの酵素活性については、比較例1を投与した場合と比較して実施例1を投与した場合に有意に高められることが確認された。
【0032】
上記結果から、クエン酸を摂取することによりクエン酸シンテターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ及びリンゴ酸デヒドロゲナーゼの活性が高められることが確認された。クエン酸シンテターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ及びリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、クエン酸回路に関与する酵素であるため、クエン酸を摂取することによりクエン酸回路全体の活性が高められるということができる。
【0033】
上述したとおり、クエン酸回路は生体内のエネルギー生産に寄与するシステムであることから、クエン酸回路が活性化されることによって、生体内においてより効率的にエネルギーが生産されるということが示唆される。これらの結果から、実施例1のクエン酸回路活性化剤は、生体内において効率的なエネルギー生産を促すという作用を発揮するものであるということができる。よって、生体内における効率的なエネルギー生産を促す生体機能促進剤として使用可能である。
【0034】
(試験例2:クエン酸回路活性化剤による運動持久力の向上に関する試験)
複数のddYマウス(4週齢、オス)を用意し、これらを7日間の予備飼育後に遊泳運動を行わせ、体重と遊泳時間が平均的となるように、投与群2、投与群3及び対照群2の3群に群別し、これらを用いて本発明のクエン酸回路活性化剤の運動持久力の向上効果を検証した。投与群2のddYマウスには、体重1kg当たり62.5mgとなる量のクエン酸を蒸留水500μlに溶解させたもの(実施例2)を、投与群3のddYマウスには、体重1kg当たり125mgとなる量のクエン酸を蒸留水500μlに溶解させたもの(実施例3)を、また、対照群2のddYマウスには蒸留水500μl(比較例2)をそれぞれ定期的に経口投与した。実施例2、3及び比較例2は、1日1回ずつ投与し、これを5週間継続した。また、1週間毎に遊泳運動を行い、遊泳持続時間を測定した。遊泳持続時間は、体重の10%の錘を付けた遊泳運動において、頭部が水面下に5秒間沈むまでの時間とした。
【0035】
また、有意差検定については、実施例2、3を投与した投与群2、3と比較例2を投与した対照群2との比較について対応のあるt検定を実施した。それらの結果を
図2に示す。なお、
図2において、「**」は、t検定の結果がp<0.01であることを示し、「***」は、t検定の結果がp<0.005であることを示す。
【0036】
図2の結果から、比較例2を投与した対照群2と比較して、実施例2、3を投与した投与群2、3では、遊泳持続時間が長くなることが確認された。とくに、実施例3を投与した投与群3の遊泳持続時間は、3週目以降、対照群2と比較して有意に長くなることが明らかになった。この運動持久力の向上は、クエン酸を摂取することにより、クエン酸回路が活性化されたことに起因するものであると考えられる。また、この結果はクエン酸が抗疲労作用を有することを示唆する。
【0037】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
○ クエン酸類を有効成分として含有し、クエン酸回路に関与する酵素を活性化させることを特徴とする酵素活性化剤。
【0038】
○ クエン酸類を有効成分として含有し、クエン酸シンテターゼを活性化させることを特徴とするクエン酸シンテターゼ活性化剤。
○ クエン酸類を有効成分として含有し、コハク酸デヒドロゲナーゼを活性化させることを特徴とするコハク酸デヒドロゲナーゼ活性化剤。
【0039】
○ クエン酸類を有効成分として含有し、リンゴ酸デヒドロゲナーゼを活性化させることを特徴とするリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性化剤。
○ 前記クエン酸類は柑橘類由来であることを特徴とするクエン酸回路活性化剤。
【0040】
○ 前記クエン酸回路活性化剤を有効成分として含有することを特徴とする飲料組成物。