【実施例1】
【0020】
図1〜4において本発明に係る長円運動装置1は巻線装置2に応用されている。該巻線装置2は、ノズル配置用の横長矩形状開口部3が中央部に設けられてなる横長矩形板状を呈する基台5(
図3)の前面側に、矩形板状を呈する可動部材6が所要間隔を置いて重なるように配設されており(
図1、
図3)、該可動部材6をXY面7内で長円運動(
図4に一点鎖線8で示す長円運動)させることにより、
図5に示すように、モータにおけるステータコア9のティース部10に、銅線やアルミ線等の線材4を巻線してコイルを形成するものであって、
図3〜4に示すように、該可動部材6をX方向F1で往復運動させるX方向往復運動装置11と、前記可動部材6をY方向F2で往復運動させるY方向往復運動装置12を具えている。そして該X方向往復運動装置11は、該可動部材6のX方向F1での往復移動量を調整可能とされており、又該Y方向往復運動装置12は、該可動部材6のY方向F2での往復移動量を調整可能となされている。なお本実施例においては、前記巻線装置2の全体構成を説明する各図において、前記XY面を垂直面と言い(共に符号は7)、前記X方向を左右方向と言い(共に符号はF1)、前記Y方向を上下方向と言う(共に符号はF2)こともある。
【0021】
前記X方向往復運動装置11は、
図4、
図6〜8に示すように、前記XY面7と直交する軸線L1(
図7)回りに回転でき且つカム曲線部14(
図8)が設けられてなるカム部材13と、該カム部材13の該カム曲線部15に係合し得るカムフォロア部16(
図8)が設けられてなる揺動部材17とを具えている。
【0022】
前記カム部材13は、本実施例においては
図6〜9に示すように、垂直面(XY面)7と直交する軸線L1(
図7)回りに回転し得る異形円板状を呈し、その連続したカム外周面15aが前記カム曲線部15を構成している。より具体的には
図8に示すように、上下方向F2で見た一方の端部側(
図8においては下端側)18aの左右方向F1の幅が比較的大きく形成されると共に、上下方向F2で見た他方の端部側(
図8においては上端側)18bの左右方向F1の幅が比較的小さく形成されてなる、左右対称の異形円板状を呈している。なお該カム部材13の前記軸線L1(
図7)回りの回転方向は、前記巻線の巻き方向に合わせて設定されるものであり、
図4において時計回りでも反時計回りでもよい。
【0023】
前記揺動部材17は、本実施例においては
図6〜8に示すように、上下方向F2で見た一端側19で前記基台5に枢着部20にて枢着され、該枢着部20を中心に前記垂直面7内で揺動可能となされている。そして
図6〜8に示すように、該上下方向F2で見た他端側21にアーム22の一端部23が枢着されて一端枢着部25が設けられ、該一端枢着部25を中心に該アーム22が前記垂直面7内で揺動可能となされており、該アーム22の他端部26にX方向作動部27が設けられている。
【0024】
前記揺動部材17は本実施例においては
図8に示すように、上下方向F2に長い平板状に構成されており、その厚さは、異形円板状を呈する前記カム部材13の厚さに略等しい。そして、該揺動部材17の両端側(前記一端側19と前記他端側21)は山形状平板部29,30として形成され、該揺動部材17の中央部分31に、前記カム部材13を収容させ得る角丸正方形状のカム開口部32が設けられている。該カム開口部32には
図8に示すように、前記カム部材13が収容状態で保持されている。そして、該カム開口部32の左右のカム内面16a,16bが、前記カム外周面15aとしての前記カム曲線部15に係合し得る前記カムフォロア部16とされている。なお、
図7〜8に符号33,33で示されている前後の保持片は、該カム開口部32の前後の上側部分35,35を横切るように設けられて該カム部材13が該カム開口部32から脱落するのを防止している。
【0025】
そして、前記他端側の山形状平板部30に前記一端枢着部25(
図6)が設けられており、該一端枢着部25の中心25aと前記枢着部20の中心20aとを結ぶ直線を垂直線159(
図11(A))に合致させたとき、
図11(A)に示すように、前記正方形状のカム開口部32の左右対向する前記カム内面16a,16bは垂直面を呈する。
【0026】
又前記アーム22は
図6〜8に示すように、一方向に延長する長方形板状を呈しており、その一端部23で前記一端枢着部25(
図6)が設けられ、該アーム22の他端部26の前面37で、円筒軸39としての前記X方向作動部27が設けられている。
【0027】
又
図4、
図6〜7に示すように、前記Y方向(上下方向)F2で移動でき且つ位置保持手段40(
図4)によって所要の移動状態で保持される如くなされた移動部材41に、前記アーム22の、前記一端枢着部25と前記X方向作動部27との間の所要部位42(
図7)が枢着されて中間枢着部43が構成されている。そして前記アーム22は、該中間枢着部43を支点として揺動でき、該移動部材41を前記上下方向で移動させることによって該中間枢着部43と前記一端枢着部25との間の距離を可変となされている。
【0028】
前記移動部材41の上下移動と、前記位置保持手段40による所要の移動状態での保持は、
図4に示す移動制御装置45によって行われる。該移動制御装置45は、本実施例においては
図4、
図6に示すように、前記基台5の左右の側方部位に設けられている。左の側方部位に設けられているものに代表させて説明すれば、該移動制御装置45は、前記基台5の左側部46(
図6)に設けられ且つ、該左側部46の上面部47に駆動軸49を上下方向にして配設された例えばサーボモータ50aとしての数値制御モータ50と、該駆動軸49に連結され且つ軸線L2(
図4)が上下方向である駆動ネジ軸51と、該駆動ネジ軸51が螺合でき且つ前記移動部材41の基端部分52に設けられたナット部材53を具える。該サーボモータ50aで該駆動ネジ軸51を正逆回転させると、前記移動部材41を上下方向で所要に移動させることができる。そして該サーボモータ50aを停止させると、該ナット部材53と該駆動ネジ軸51との係合部が前記位置保持手段40として機能し、前記移動部材41が所要の移動状態で保持されることとなる。
【0029】
前記移動部材41は
図6、
図8〜10に示すように、前記基端部分52に、前記アーム22に向けて突出する三角形板状の支持板部55が設けられ、その先端支持部56には、前記アーム22を密接状態に嵌め入れることのできるスライド部材57(
図6)が、垂直面(XY面)7内で正逆回転可能に枢軸59を介して取り付けられ、前記中間枢着部43が構成されている。
【0030】
該スライド部材57は、
図4、
図6〜10に示すように、前記アーム22を嵌め入れるための嵌合溝60が設けられたコ字状部材61を具える。該コ字状部材61は、基板部62の前面63の左右対向側で立壁部65,65が突設されて該嵌合溝60が構成されており、該嵌合溝60に前記アーム22の長さ方向で見た所要長さ部分(前記一端枢着部25と前記X方向作動部27との間の所要長さ部分)を密接に嵌め入れた状態で、
図10に示すように、該アーム22の前面37が該両立壁部65,65の先端面66,66と面一状態を呈する如くなされている。そして該アーム22を該嵌合溝60に嵌め入れた後に、該嵌合溝60が矩形板状の蓋片67で覆われ、該蓋片67の両側部分69,69が前記立壁部65,65の該先端面66,66にビス68で固定され、これによってアーム22が、前記嵌合溝60と前記蓋片67とからなる挿通孔70に密接に挿通された状態となされる。
【0031】
又
図9〜10に示すように、前記基板部62の後面71の中心部で、前記支持部材55の前記先端支持部56に設けられた軸受孔72に挿通される前記枢軸59(
図6〜7、
図9〜10)が突設されている。該枢軸59を該軸受孔72に挿入させ且つ、該軸受孔72に挿入されてなる枢軸先端部分73の端面75(
図9〜10)に座金76を介して抜け止め板77をビス79で固定することによって、前記挿通孔70に前記アーム22が挿通された状態で、前記コ字状部材61が該枢軸59の軸線L3(
図10)回りに正逆回転できる。かかる構成を有するスライド部材57によって前記中間枢着部43が構成されている。
【0032】
前記スライド部材57は、前記移動部材41を上下移動させると、前記アーム22をその長さ方向でスライドできる。これにより、前記したように、前記中間枢着部43と前記一端枢着部25との間の距離を可変となし得、該移動部材41の移動位置に応じて、前記中間枢着部43の位置を前記アーム22の長さ方向での所要部位に設定でき、その状態を保持できる。
【0033】
又、前記挿通孔70に前記アーム22が挿通された状態で、前記コ字状部材61が、前記移動部材41の前記先端支持部56に対して前記軸線L3(
図9)回りに正逆回転できることから、前記アーム22は、前記スライド部材57が構成する前記中間枢着部43(前記枢軸59)を支点として垂直面7内で揺動できる。
【0034】
図4、
図6は、前記移動部材41の前記上下方向での移動によって、前記中間枢着部43を前記アーム22の長さ方向の略中央部に位置させた状態を示している。以下の説明においては、該位置を第1位置P1という。又、該中間枢着部43が該第1位置P1よりも上方向に移動することを上方向に移動するといい、該中間枢着部43が該第1位置P1よりも下方向に移動することを下方向に移動するという。
【0035】
然して、前記カム部材13がその軸線L1回りに時計回りに回転すると、前記カム内面16a,16bとしての前記カムフォロア部16が、前記カム部材13の前記カム外周面15aとしての前記カム曲線部15に接した状態に係合することによって、
図11(A)に示すように、前記揺動部材17が、前記枢着部20を中心に垂直面7内で矢印Fで示すように揺動する。そして、前記アーム22が前記移動部材41の前記先端支持部56(
図9)に枢着されており、前記中間枢着部43を支点として該アーム22が揺動可能であるため、前記揺動部材17の前記他端側21の揺動に伴って、該アーム22が前記中間枢着部43を支点として揺動でき、これによって、前記X方向作動部27が垂直面7内で揺動できる。
図11(A)は、前記アーム22の軸線L2が垂直状態を呈し、
図11(B)は、該軸線L2が右に傾いた状態を示し、
図11(C)は、該軸線L2が左に傾いた状態を示している。
【0036】
該X方向作動部27の揺動の振幅は、前記中間枢着部43の前記アーム22の長さ方向での位置を前記サーボモータ50aの数値制御により変更することによって所要に調整でき、前記位置保持手段40の位置保持作用によってその調整状態を保持できる。該中間枢着部43を前記一端枢着部25に近づけるほど該X方向作動部27の揺動の振幅は大きくなり、該中間枢着部43を該X方向作動部27に近づけるほど該X方向作動部27の揺動の振幅は小さくなる。
図12は、該中間枢着部43を、
図11に示す第1位置P1から前記一端枢着部25により近づけた状態を示しており、該位置を第2位置P2という。該中間枢着部43が該第2位置P2にある状態で、前記カム部材13をその軸線L1回りに例えば時計回りに回転させると、該カム部材13の回転に伴う、該中間枢着部43を支点としての該アーム22の揺動により、前記X方向作動部27のX方向で見た振幅は前記第1位置P1における場合に比して大きくなる。
図12(A)は、前記アーム22の軸線L2が垂直状態を呈し、
図12(B)は、該軸線L2が右に傾いた状態を示し、
図12(C)は、該軸線L2が左に傾いた状態を示している。
【0037】
図13は、該中間枢着部43を、
図11に示す第1位置P1から前記X方向作動部27により近づけた状態を示しており、該位置を第3位置P3という。前記中間枢着部43が該第3位置P3にある状態で、前記カム部材13をその軸線L1回りに例えば時計回りに回転させると、該カム部材13の回転に伴う、該中間枢着部43を支点としての該アーム22の揺動により、前記X方向作動部27のX方向で見た振幅は前記第1位置P1における場合に比して小さくなる。
図13(A)は、前記アーム22の軸線L2が垂直状態を呈し、
図13(B)は、該軸線L2が右に傾いた状態を示し、
図13(C)は、該軸線L2が左に傾いた状態を示している。
【0038】
かかる中間枢着部43の位置設定は、前記カム部材13が停止した状態で行うことができる他、これが回転している状態で行うこともできる。
【0039】
前記Y方向往復運動装置12は
図3、
図6、
図7、
図14、
図15に示すように、中心軸線L5(
図7)回りに垂直面(XY面)7内で回転し得る円板体83の前面部85の所要部位にY方向作動部86が設けられている。該円板体83は、本実施例においては
図6〜7、
図14〜15に示すように、相互に重なり合う第1の円板体87と第2の円板体89とを具える。該第1の円板体87は
図7、
図14〜15に示すように、垂直円板状を呈し、その後面中央部90で駆動軸91が突設されており、該駆動軸91の軸線L6が前記中心軸線L5と合致している。そして該第1の円板体87には、
図14に示すように、前記駆動軸91が突設されている基端側から外周縁側に向けて径が大きくなる渦巻き溝部92が設けられている。
【0040】
又、前記第2の円板体89は
図6〜7、
図14〜15に示すように、垂直板状を呈する円板状受板93の後面中央部で、前記駆動軸91を挿通させ得るネジ筒部96が突設されており、該円板状受板93の外周縁部で、前方に向け突出する円環状突条部97が一連に設けられている。そして
図7、
図15に示すように、該円板状受板93と該円環状突条部97とが形成する円形状凹部99に前記第1の円板体87が嵌め入れられた状態となり、この状態で、該第1の円板体87の前面100は前記円環状突条部97の前面101から後方に稍控えた状態となっている。そして該第2の円板体89の前面部には、
図6、
図15に示すように、左右2分割された略半円板状を呈する左右のカバー板102,102が、直線状を呈する端面103,103間に所要間隔を置いて且つ前記円環状突条部97の前面101(
図14)に周縁部105が当接する状態で、前記第1の円板体87を覆うように取り付けられ、該周縁部105で前記円環状突条部97にビス104で固定されている。そして該左右のカバー板102,102間には、
図15に示すように、前側が幅狭で且つ後側が幅広の摺動溝106が設けられている。
【0041】
該摺動溝106には、
図6、
図15に示すように、長方形板状を呈する基部107の前面でその長手中央線に沿って直線状突状部109が設けられてなる摺動部材110が嵌合状態に装着されている。該基部107の左右部分111,111は前記摺動溝106の幅広溝部112の左右部分に密接に嵌め入れられると共に、該直線状突状部109の左右側面113,113は該摺動溝106の幅狭溝部115の前記両端面103,103に当接して、該摺動部材110が該摺動溝106に装着されている。そして
図7、
図14に示すように、前記基部107の後面には、前記渦巻き溝部92に密接に嵌め入れられるガイド軸116が突設されている。又
図15に示すように、前記直線状突状部109の前面117の上端側部位には前記Y方向作動部86が設けられている。該Y方向作動部86は、前記可動部材6をY方向(上下方向)F2で移動させるものであり、本実施例においては円筒軸119を以て構成されている。
【0042】
図6〜7において、前記第2の円板体89を停止状態にして前記第1の円板体87を時計回り又は反時計回りに回転させると、前記渦巻き溝部92(
図14)に案内されて前記摺動部材110が前記中心軸線L5(
図7)に近づく方向に或いは該中心軸線L5から離れる方向に移動でき、これによって前記Y方向作動部86が、前記中心軸線L5に近づく方向に或いは該中心軸線L5から離れる方向に移動できることとなる。
図4、
図6は、前記Y方向作動部86を前記円板体83の外周縁側に移動させた状態を示しており、この場合における摺動部材110の位置を外側位置P4(
図6(A))という。又
図6(B)は、前記Y方向作動部86を前記円板体83の中心側に移動させた状態を示しており、この場合における摺動部材110の位置を内側位置P5という。
【0043】
そして、前記渦巻き溝部92に密接に嵌め入れられている前記ガイド軸116(
図7)が該渦巻き溝部92の所要位置に固定状態となることによって、該Y方向作動部86が所要位置で保持される。このように保持された状態で前記駆動軸91を回転させると前記円板体83が回転する。
【0044】
本実施例においては
図3〜4に示すように、前記構成を有するX方向往復運動装置11の一対を前記垂直面7内において対角位置に配設すると共に、前記Y方向往復運動装置12の一対を、前記垂直面7内において対角位置に配設し、左右方向F1で見て、該X方向往復運動装置11とY方向往復運動装置12とが隣り合う。これによって、長円運動装置1がバランスよく安定状態で稼働できる。
【0045】
又
図2、
図7に示すように、前記X方向往復運動装置11を構成する前記カム部材13をその軸線L1回りに回転させる回転軸121,121と、前記Y方向往復運動装置12を構成する前記円板体83をその中心軸線L5回りに回転させる回転軸122,122(前記ネジ筒部材96,96)が前記基台5の後面123(
図2)で後方に突設されている。そして、該回転軸121,121の夫々の前側部分には、駆動プーリ114が固設されると共に、その後側部分にはアイドラー118が設けられている。又、前記回転軸122,122の夫々には駆動プーリ125が固設されると共に、前記駆動軸91,91の夫々には駆動プーリ127が固設されている。
【0046】
又
図2、
図16に示すように、前記基台5の中央部の上下に位置させてアイドラー129とアイドラー130が配設されると共に、該下のアイドラー130の一側方の稍下側に位置させてアイドラー131が配設されている。そして
図16に示すように、該下のアイドラー130の下方に、モータ軸132に連結された駆動プーリ133が配設されると共に、前記アイドラー131の下方にアイドラー135が設けられている。
【0047】
又、前記アイドラー130,131間(前記駆動プーリ133と前記アイドラー135との間)の上下方向中間部に、上部アイドラー136と下部アイドラー137が昇降基板139に回転自在に設けられている。そして、該昇降基板139は、前記モータ軸132を停止させた状態で、図示しない昇降手段によって所要に昇降せしめられる。
【0048】
そして
図16に示すように、前記駆動プーリ125,114,125,114、前記上下のアイドラー129,130にタイミングベルト140を巻装する。又
図16に示すように、前記アイドラー118、前記駆動プーリ127、前記アイドラー118、前記アイドラー131、前記駆動プーリ127にタイミングベルト141を巻装する。又
図16に示すように、前記駆動プーリ133、前記下部アイドラー137、前記アイドラー135、前記アイドラー131、前記上部アイドラー136、前記アイドラー130に駆動タイミングベルト142を巻装する。
【0049】
然して前記モータを稼働させると、駆動ベルト142の周回を介する該タイミングベルト140の周回によって全ての回転軸121,122,121,122が同期して回転駆動せしめられる。これによって、対角位置にあるX方向往復運動装置11,11と、対角位置にあるY方向往復運動装置12,12は、夫々同一の往復運動を行う。
【0050】
前記昇降基板139を上方に移動させると、
図16において、前記アイドラー135の回転を伴い前記アイドラー131が反時計回りに回転する。それに伴い前記タイミングベルト141が反時計回りに所要量周回する。これによって、前記回転軸122が停止した状態で(即ち、前記第2の円板体89が停止した状態で)前記駆動軸91が反時計回りに回転せしめられる。即ち、前記第1の円板体87が強制回転せしめられる。なお、前記タイミングベルト141が周回する際、前記アイドラー118,118が回転するが前記回転軸121は回転しない。これらの結果、前記摺動部材110が前記中心軸線L5に近づく方向に移動できる。
【0051】
逆に前記昇降基板139を下方に移動させると、
図16において、前記アイドラー135の回転を伴い前記アイドラー131が時計回りに回転する。それに伴い前記タイミングベルト141が時計回りに所要量周回する。これによって、前記回転軸122が停止した状態で前記駆動軸91が時計回りに回転せしめられる。これらの結果、前記摺動部材110が前記中心軸線L5から離れる方向に移動できる。
【0052】
前記可動部材6は、
図1に示すように、その中央部分に、線材4を先端から繰り出す3個のノズル143,143,143が左右方向に間隔を置いて並置されている。又
図1、
図3に示すように、前記X方向往復運動装置11,11に対応させて、上下方向に長いX方向ガイド孔145が設けられると共に、前記Y方向往復運動装置12に対応させて、左右方向に長いY方向ガイド孔146が設けられており、該X方向ガイド孔145と該Y方向ガイド孔146には、夫々、これらの長さ方向に摺動し得る環状ベアリング147が設けられている。そして、前記X方向往復運動装置11を構成する前記アーム22の前面で突設された前記X方向作動部(円筒軸)27が、ニードルベアリングを介して前記環状ベアリング147で支持されている。又、前記Y方向往復運動装置12を構成する前記摺動部材110の前面で突設された前記Y方向作動部(円筒軸)86が、ニードルベアリングを介して前記環状ベアリング147で支持されている。
【0053】
従って該可動部材6は、対角位置にある前記X方向往復運動装置11,11の前記カム部材13の回転に伴う前記X方向作動部27,27の左右動によって、左右方向で移動できる。該左右方向の移動は、前記アーム22の揺動運動に伴う動きのうちのX方向の成分を利用して行われる。又該可動部材6は、対角位置にある前記Y方向往復運動装置12,12の前記円板体83,83の回転に伴う前記Y方向作動部86,86の回転運動のうちのY方向成分を利用して上下方向で移動できる。
【0054】
該可動部材6に付加される前記X方向の動きと前記Y方向の動きの合成によって、前記ノズル143に、前記ステータコア9の前記ティース部10に線材4を巻回させ得る長円運動を生じさせることができる。
【0055】
以下、この長円運動の態様を、場合を分けて説明する。第1の態様は、
図3〜4に示すように、前記左右のX方向往復運動装置11,11の前記中間枢着部43,43が、共に前記第1位置P1,P1にあり、前記左右のY方向往復運動装置12,12の前記摺動部材110,110が前記外側位置P4,P4にある場合に関するものである。
【0056】
該第1の態様を、前記X方向往復運動装置11の前記X方向作動部27のX方向での移動位置の変化を示す
図17(A)のX方向波形149と、前記Y方向往復運動装置12の前記Y方向作動部86のY方向での移動位置の変化を示す
図17(B)のY方向波形150と、該X方向波形149と該Y方向波形150を合成してなる
図17(C)の合成波形151に基づいて説明する。該合成波形151は、前記可動部材6に前記垂直面7内での長円運動を生じさせる波形である。該合成波形151は、
図17(C)に示すように、その両端側の部分が半円弧状波形152,153とされ、該両半円弧状波形152,153の向き合う端部155,156相互、向き合う端部157,159相互が直線状波形160,161で連結されてなる、上下に長い長円状を呈している。
【0057】
この合成波形151を時間の経過に従って説明する。説明の便宜上、一方の半円弧状波形152の突出端部162を出発点とし、該突出端部162での時刻をT1とし、該合成波形151を時計回りに見て、前記半円弧状波形152の一方の端部155における時刻をT2とし、該一方の端部155に一方の直線状波形160の一方の端部163が連なる。そして、該直線状波形160の他方の端部165における時刻をT3とする。該他方の端部165に、他方の半円弧状波形153の一方の端部156が連なる該他方の半円弧状波形153の突出端部166における時刻をT4とし、該他方の半円弧状波形153の他方の端部159における時刻をT5とする。該他方の端部159に、他方の直線状波形161の一方の端部167が連なり、該他方の直線状波形161の他方の端部169における時刻をT6とする。そして、該他方の端部169に前記半円弧状波形152の他方の端部157が連なる。
【0058】
そして前記X方向波形149と前記Y方向波形150における時刻T1〜T6は、前記合成波形151における夫々の端部における時刻T1〜T6に対応している。
【0059】
前記X方向波形149は、前記カム部材13が、前記揺動部材17に設けられている前記矩形状のカム開口部32の左右のカム内面16a,16bに接しながら前記軸線L1回りに時計回りに回転することによって形成される。即ち、該カム内面16a,16bとしての前記カムフォロア部16が、前記カム部材13の前記カム外周面15aとしての前記カム曲線部15に係合することによって形成される。
【0060】
前記カム部材13は、時刻T1においては、
図11(A)に示すように、左右対称の軸159が上下方向(Y方向)F2を向き、前記一方の端部側18aが下に位置し他方の端部側18bが上に位置する。
【0061】
この状態でカム部材13が、
図11において時計回りに回転すると、T1からT2の間は前記X方向作動部27が、時間の経過に比例して右方に移動する(
図11(A)の状態から
図11(B)の状態を呈するように移動する)。その後、T2とT3との間は、前記カム部材13が時計回りの回転を続けてはいても、該X方向作動部27は休止状態にあり、該X方向作動部27の左右方向での移動がゼロとなる。その後の時計回りの回転によって、該X方向作動部27は、T3とT4の間、T4とT5との間は、左右方向で見て左方向に移動する。そしてT5とT6との間は、前記カム部材13が時計回りの回転を続けてはいても前記X方向作動部27は休止状態にあり該X方向作動部27の左右方向での移動がゼロとなる。前記カム部材13のその後の時計回りの回転継続によって、前記X方向作動部27は、T6とT7との間は左右方向で見た右方に移動する。前記カム部材13が時計回りの回転を継続している間、このサイクルを繰り返すことになる。
【0062】
一方、前記Y方向波形150は前記円板体83の時計回りの回転によってサイン曲線を描き、前記T1においては上下方向F2で見て上方向での最大振幅を呈する。該円板体83が時計回りに回転を続けることにより、T1とT2との間は、前記Y方向作動部86が四分割円弧状を呈して下方に移動する。そしてT2とT3との間は、該Y方向作動部86が下方に直線状に移動する。又T3とT4との間は、下方に四分割円弧状を呈して移動し、T4とT5との間は、上方に四分割円弧状を呈して移動する。又、T5とT6との間は上方に直線状に移動し、T6とT7との間は、上方に四分割円弧状に移動する。前記円板体83が時計回りの回転を継続している間、このサイクルを繰り返す。
【0063】
これらのX方向波形149とY方向波形150の合成によって、前記可動部材6が上下に長い長円運動を繰り返すことになる。
【0064】
前記可動部材6が前記長円運動を行うと、
図5に示すように、各ノズル143,143,143から繰り出される線材4が前記ステータコア9の所要サイズの3個のティース部10,10,10に同時に巻回されることとなる。そして、3個のティース部10,10,10に対する巻線が完了した後、該3個のティース部10,10,10の横移動が行われ、新たな3個のティース部10,10,10に巻線が施され、これが所要回数繰り返されることにより、全てのティース部10に巻線が施されることとなる。
【0065】
前記X方向(左右方向)で見た振幅は、前記アーム22の長さ方向での中間枢着部43の所要位置設定による前記X方向作動部27の位置調整によって容易に変更できる。又、該長円運動の前記Y方向(上下方向)で見た振幅は、前記Y方向往復運動装置12における前記Y方向作動部86の位置調整によって容易に変更できる。このことを第2、第3の態様として説明する。
【0066】
第2の態様は、前記中間枢着部43を前記第2位置P2(
図12)とし、前記摺動部材110を前記外側位置P4(
図3〜4、
図6(A))として長円運動装置1を稼働させた場合である。この場合は、Y方向波形150は前記第1の態様におけると同一であるが、X方向波形149は、
図18(A)に示すように、X方向で見た振幅が前記第1の態様における場合よりも大きくなる。然して、該X方向波形149と前記Y方向波形150とを合成してなる長円運動の波形のX方向の幅は、
図18(C)に示すように、第1の態様におけるよりも大きくなる。なお時刻T1〜T7に関しての説明は、前記第1の態様における場合と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0067】
第3の態様は、前記中間枢着部43を前記第3位置P3(
図13)とし、前記摺動部材110を前記外側位置P4(
図6(A))として長円運動装置1を稼働させた場合である。この場合は、Y方向波形150は前記第1の態様におけると同一であるが、X方向波形149は、
図19(A)に示すように、X方向で見た振幅が前記第1の態様における場合よりも小さくなる。然して、該X方向波形149と前記Y方向波形150とを合成してなる長円運動の波形のX方向の幅は、
図19(C)に示すように、第1の態様におけるよりも小さくなる。なお時刻T1〜T7に関しての説明は、前記第1の態様における場合と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0068】
第4の態様は、前記中間枢着部43を前記第1位置P1とし、前記摺動部材110を前記内側位置P5(
図6(B))として長円運動装置1を稼働させた場合である。この場合は、X方向波形149は前記第1の態様におけると同一であるが、Y方向波形150は、
図20(B)に示すように、Y方向で見た振幅が前記第1の態様におけるよりも小さくなる。然して、該X方向波形149と前記Y方向波形150とを合成してなる長円運動の波形は、
図20(C)に示すように、第1の態様におけるよりも小さくなる。なお時刻T1〜T7に関しての説明は、前記第1の態様における場合と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0069】
その他、ステータコアのサイズに応じて、前記中間枢着部43の位置と前記摺動部材110の位置を所要に調整することにより、前記X方向作動部27と前記Y方向作動部86の夫々の振幅を所要に設定でき、これによって、可動部材6を介し、対象となるティース部のサイズに適した長円運動を前記ノズルに付与でき、該ティース部に対する巻線の巻き幅と巻き高さを所要に設定できる。