特許第6055891号(P6055891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6055891-聴覚感度調整装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055891
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】聴覚感度調整装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 11/00 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   A61F11/00 325
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-208542(P2015-208542)
(22)【出願日】2015年10月23日
(62)【分割の表示】特願2013-216040(P2013-216040)の分割
【原出願日】2013年10月17日
(65)【公開番号】特開2016-34561(P2016-34561A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2016年10月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313013139
【氏名又は名称】熊川 陽介
(74)【代理人】
【識別番号】100155158
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 仁
(72)【発明者】
【氏名】熊川 陽介
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−189398(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3164048(JP,U)
【文献】 特開平09−037396(JP,A)
【文献】 実開昭58−168799(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/100121(WO,A2)
【文献】 独国特許発明第476991(DE,C3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 11/00
G10K 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人又は動物の耳殻を引っ張り、捻り又は揺動する耳殻作用手段と、
音の発信源を特定する特定手段と、
前記特定手段で特定した発信源の方向に耳殻の表面が向くように前記耳殻作用手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする聴覚感度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人又は動物の聴覚感度を調整する装置に係り、特に、任意の方向に対する集中力や注意力を高めるのに好適な聴覚感度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人は、耳殻により外界の音を集音し外耳道を介して鼓膜に伝達することにより音を知覚している。人の聴覚は集中力や注意力に影響を与え、集音効果を高めるなどして聴覚感度を高めれば、人の集中力や注意力が高まることが知られている(特許文献1)。また、前方からの声を効率よく集音できるヘッドホン型集音器も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−266729号公報
【特許文献2】特開2012−83374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術にあっては、前方からの音及び自身の声が側部遮蔽板で反響し耳に集音される構成となっているので(同文献〔0020〕)、前方からの音及び自身の声しか集音することができない。また、特許文献2記載の技術にあっては、前方からの音が耳カバーで反響し耳に集音される構成となっているので(同文献〔0009〕)、前方からの音しか集音することができない。例えば、後方からの音に対する聴覚感度を高めれば、後方に対する集中力や注意力が高まる。左方からの音、右方からの音、上方からの音、下方からの音、その他の方向からの音についても同様であるが、特許文献1、2記載の技術にあってはいずれも、特定の方向(前方等)からの音に対する集音効果を高める技術であるので、任意の方向に対する集中力や注意力を高めることが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、任意の方向に対する集中力や注意力を高めるのに好適な聴覚感度調整装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の聴覚感度調整装置は、人又は動物の聴覚感度を調整する聴覚感度調整装置であって、人又は動物の耳殻を把持する耳殻把持手段と、前記耳殻把持手段で把持された耳殻を伸長方向に引っ張る耳殻引張手段と、前記耳殻把持手段で把持された耳殻を捻り又は揺動する耳殻動作手段とを備える。
【0007】
このような構成であれば、耳殻把持手段により耳殻を把持し、耳殻引張手段により、把持された耳殻が伸長方向に引っ張られる。また、耳殻動作手段により、把持された耳殻が捻れ又は揺動する。すなわち、耳殻動作手段により耳殻を動かすことにより、任意の方向からの音に対する聴覚感度を高めることができる。例えば、後方からの音に対する聴覚感度を高めるには、耳殻の表面が後方を向くように耳殻を動かせばよい。
【0008】
ここで、「聴覚感度を調整」とは、本発明により耳殻を動かすことにより人又は動物が音を知覚する度合いを調整することをいい、人又は動物が本来備える聴覚機能を調整するものではない。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、発明1の聴覚感度調整装置によれば、耳殻動作手段により耳殻を動かすことにより、任意の方向からの音に対する聴覚感度を高めることができるので、従来に比して、任意の方向に対する集中力や注意力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】聴覚感度調整装置100を装着した状態を示す斜視図である。
図2】聴覚感度調整装置100を上方からみた水平方向の断面図である。
図3】グラブパーツ32a、32bを下方からみた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1乃至図3は、本実施の形態を示す図である。
【0012】
まず、本実施の形態に係る聴覚感度調整装置100の構成を説明する。
図1は、聴覚感度調整装置100を装着した状態を示す斜視図である。図2は、聴覚感度調整装置100を上方からみた水平方向の断面図である。図3は、グラブパーツ32a、32bを下方からみた平面図である。
【0013】
聴覚感度調整装置100は、図1及び図2に示すように、椀型に形成されたハウジング10と、ハウジング10の台座となるクッション部材20と、人の耳殻50を把持する耳殻把持部30とを有して構成されている。
【0014】
ハウジング10は、外界からの音が透過しやすい部材で構成されている。又は、外界からの音が透過するように1又は複数の小孔や窓をハウジング10に形成してもよい。
【0015】
クッション部材20は、クッション等の弾性部材からなり、ハウジング10の底部に沿って環状に形成されている。クッション部材20は、複数のバネ22を介してハウジング10の底部に取り付けられている。バネ22は、耳殻把持部30で把持された耳殻50を伸長方向に引っ張る付勢力を与える。
【0016】
耳殻把持部30は、基体38と、耳殻50を把持する一対のグラブパーツ32a、32bとを有して構成されている。
【0017】
グラブパーツ32aは、伸長方向にL字状に形成されているのに対し、グラブパーツ32bは、グラブパーツ32aと対称に伸長方向に逆L字状に形成されている。グラブパーツ32a、32bは、グラブパーツ32aの末端34aがグラブパーツ32bの先端(耳殻50を把持する側の端部)と対向するように、及び、グラブパーツ32bの末端34bがグラブパーツ32aの先端(耳殻50を把持する側の端部)と対向するように、互いに交差して組み合わされている。グラブパーツ32aの末端34aの内側部と、グラブパーツ32bの末端34bの内側部との間には、バネ36が設けられている。バネ36は、グラブパーツ32a、32bの先端同士を接近させる付勢力、及び、グラブパーツ32a、32bの末端34a、34b同士を離間させる付勢力を与える。
【0018】
グラブパーツ32a、32b及びバネ36は、基体38に取り付けられており、グラブパーツ32aの末端34aが基体38の側方開口部から突出し、グラブパーツ32bの末端34bが基体38の反対側の側方開口部から突出している。基体38から突出したグラブパーツ32a、32bの末端34a、34bを装着者が押下することによりグラブパーツ32a、32bの先端が開き、グラブパーツ32a、32bの末端34a、34bの押下を解除することによりグラブパーツ32a、32bの先端がバネ36の付勢力により閉じられる。
【0019】
ハウジング10の頂部には、開口部が形成されている。一方、基体38の底部には、ハウジング10の頂部開口部よりもやや小径の筒状の軸部材40が形成され、軸部材40の先端には、ハウジング10の頂部開口部よりも大径のフランジが形成されている。軸部材40がハウジング10の頂部開口部に嵌め込まれることにより、耳殻把持部30がハウジング10に取り付けられる。そして、耳殻把持部30は、軸部材40のフランジによりハウジング10から外れないように係止されるとともに、軸部材40を軸としてハウジング10に対し回動可能となる。
【0020】
グラブパーツ32aの先端は、図3に示すように、人の親指を模した形状からなり、グラブパーツ32bの先端は、手を握ったときの人差し指(第1乃至第3関節を曲げ人差し指を丸め込んだ状態)を模した形状からなっている。グラブパーツ32aの先端が耳殻50の裏側から、グラブパーツ32bの先端が耳殻50の表側から、それぞれ耳殻50を挟むようにして、バネ36の付勢力によりグラブパーツ32a、32bが耳殻50を把持する。親指と握った人差し指との間で耳殻50を把持するので、人の手で把持しているような感覚を装着者に与え、装着の違和感を低減することができる。このような理由から、グラブパーツ32a、32bの先端は、人の指と同等の弾性を持たせるのが好ましい。
【0021】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
装着者は、まず、グラブパーツ32a、32bの末端34a、34bを押下し、グラブパーツ32a、32bの先端が開いた状態で聴覚感度調整装置100を保持する。次いで、クッション部材20を耳殻50の側に向けて耳殻50を覆うようにして聴覚感度調整装置100を装着する。このとき、グラブパーツ32aの先端とグラブパーツ32bの先端との間に耳殻50が位置するように聴覚感度調整装置100を装着する。そして、グラブパーツ32a、32bの末端34a、34bの押下を解除すると、グラブパーツ32a、32bの先端がバネ36の付勢力により閉じられ、耳殻50は、グラブパーツ32a、32bで把持されるとともにバネ22の付勢力により伸長方向に引っ張られる。
【0022】
例えば、上方からの音に対する聴覚感度を高めるには、耳殻把持部30を反時計回りに回動させればよい。耳殻把持部30を反時計回りに回動すると、これに伴ってグラブパーツ32a、32bで把持された耳殻50が反時計回りに捻られ、耳殻50の表面がやや上方を向くので、上方からの音に対する聴覚感度が高まる。
【0023】
また、例えば、下方からの音に対する聴覚感度を高めるには、耳殻把持部30を時計回りに回動させればよい。耳殻把持部30を時計回りに回動すると、これに伴ってグラブパーツ32a、32bで把持された耳殻50が時計回りに捻られ、耳殻50の表面がやや下方を向くので、下方からの音に対する聴覚感度が高まる。
【0024】
このようにして、本実施の形態では、聴覚感度調整装置100は、耳殻50を把持するグラブパーツ32a、32bと、グラブパーツ32a、32bで把持された耳殻50を伸長方向に引っ張る力をグラブパーツ32a、32bに付与するバネ22と、グラブパーツ32a、32bで把持された耳殻50を捻るように回動する基体38とを備える。
【0025】
これにより、任意の方向からの音に対する聴覚感度を高めることができるので、従来に比して、任意の方向に対する集中力や注意力を高めることができる。
【0026】
本実施の形態において、バネ22は、発明1の耳殻引張手段に対応し、グラブパーツ32a、32bは、発明1の耳殻把持手段に対応し、基体38は、発明1の耳殻動作手段に対応している。
【0027】
〔他の変形例〕
なお、上記実施の形態においては、耳殻50を捻るように構成したが、これに限らず、耳殻50の付け根を支点として耳殻50を揺動するように構成することもできる。この場合、基体38を前後方向にスライドする機構(以下「スライド機構」という。)を設ければよい。また、耳殻50を捻り及び揺動する構成とすることもできる。この場合、基体38をハウジング10に対し回動可能とする機構及びスライド機構を設ければよい。なお、スライド機構の場合、前後方向に限らず上下方向その他任意の方向にスライドさせることができ、直線状に限らず曲線状にスライドさせることもできる。
【0028】
また、上記実施の形態及びその変形例においては、手動でグラブパーツ32a、32bの開閉を行うように構成したが、これに限らず、アクチュエーター等の駆動手段を用いてグラブパーツ32a、32bの開閉を自動に行うように構成することもできる。同様に、基体38の回動も手動ではなく、自動とすることができる。スライド機構の場合は、基体38のスライドも手動ではなく、自動とすることができる。このように自動化の機構を採用した場合、例えば、マイク等で外界の音を集音し、音の発信源を特定し、特定した発信源の方向に耳殻50の表面が向くように、基体38の回動又はスライドを制御する構成を採用することができる。
【0029】
また、上記実施の形態及びその変形例においては、グラブパーツ32a、32bで耳殻50を引っ張るように構成したが、これに限らず、グラブパーツ32a、32bとは別の部材で耳殻50を引っ張るように構成することもできる。すなわち、耳殻50を引っ張る直接の部材は、グラブパーツ32a、32b又はこれとは別の部材で構成することができる。
【0030】
また、上記実施の形態及びその変形例においては、グラブパーツ32a、32bで耳殻50を捻るように構成したが、これに限らず、グラブパーツ32a、32bとは別の部材で耳殻50を捻るように構成することもできる。耳殻50を揺動する構成についても同様である。すなわち、耳殻50を捻り又は揺動する直接の部材は、グラブパーツ32a、32b又はこれとは別の部材で構成することができる。
【0031】
また、上記実施の形態及びその変形例においては、人の耳殻50を把持する場合について本発明を適用したが、これに限らず、動物の耳殻を把持する場合について適用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
100…聴覚感度調整装置、 10…ハウジング、 20…クッション部材、 22…バネ、 30…耳殻把持部、 32a、32b…グラブパーツ、 34a、34b…グラブパーツの末端、 36…バネ、 38…基体、 40…軸部材、 50…耳殻
図1
図2
図3