(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0016】
この発明は、好ましくは、単一粒子検出(SPS)法、例えば、単一粒子光学的検出(SPOS)法を用いて、出発濃厚粒子懸濁液の比較的迅速かつ効率的な粒度分析(PSA)を実施するため、出発濃厚粒子懸濁液に適用すべき希釈度を最適化する新しい新規な方法と装置を目的としている。特に、この新しい方法は、分析すべき各試料に対する希釈ファクタの迅速な、事実上リアルタイムの最適化を行って、試料の希釈とその後の分析を行うのに必要な全時間を短縮することができる。この発明に基づいた自動希釈システムは、混合チャンバ内のまたは混合チャンバから出る流体流を最適の定常状態(平衡)粒子濃度に到達させるため、濃厚試料懸濁液を混合チャンバ内に注入し始めた後、短時間で希釈ファクタを最適化することができ、前記最適の定常状態の粒子濃度は、適当なSPS型センサを使用して、濃厚試料懸濁液注入後、直ちに分析できる。
【0017】
上記のように、この発明を説明するには、光遮断または光散乱または光遮断と光散乱の組合せ(Wells他の米国特許願に記載されているように)の物理学的原理に基づいた粒度を分析するSPOS法に焦点を当てることが便利である。SPOSセンサを通過する流体流中の粒子濃度は、流体懸濁液の単位容積当たりの、粒子の全数、または所定の粒度範囲内の粒子の数として表すことができる。一般に、粒子濃度は、一方では、希釈剤流体中のバックグランド汚染物が原因の誤った粒子計数または所定の粒度範囲の粒子が不十分であることが原因の統計的変動を凌ぐために十分に大きくなければならないが、一方では、有意な粒子の合致、すなわち、二つ以上の粒子がほぼ同時にSPOSセンサの「視野容積」に入って、得られるPSDにひずみを起こす可能性がある合致を避けるために十分小さくなければならない。
【0018】
濃厚「試料流体」(粒子懸濁液)を、混合チャンバ内で適当な希釈剤流体液と連続的に混合することによって、前記試料流体を希釈する従来技術を、詳細に再検討することは、有用である。この定常状態の「混合流(mixed-flow)」法は、この発明の出発点である。混合チャンバの流体内容物は、流体懸濁液の単位容積当たりの粒子の全数または所定の粒度の範囲内の粒子の数として表される粒子濃度が、理想的に、混合チャンバ全体にわたって常に均一であるように、連続的にかつ効率的に混合される。混合チャンバ内に連続的に注入される「試料流体」は、所定の組成と粒度分布(PSD)の粒子の出発濃度懸濁液であり、その懸濁化流体は、典型的には、水またはある種の有機液体またはこれら液体の混合物である。混合チャンバ中に連続的に注入される第二流体は、比較的粒子を含有していない希釈剤で構成されており、出発試料懸濁液を希釈するのに使用したくなるかも知れない。混合チャンバを出る流体/粒子混合物の全てもしくは一部は、希釈された出力流中の個々の粒子に応答して、PSDを得ることができるように処理され得る信号を発生するように設計された適切なセンサを通って、適度な速度で流動させる。希釈の機構の簡略化した線図を
図1に示す。一般に、合致の起こる可能性を最小限にして、PSAの試験結果の質を最適化するため、出発懸濁液の粒子濃度は下げなければならない。
【0019】
流量の保存により、混合チャンバMCを出る希釈された粒子懸濁液の流量Fは、管12と10のそれぞれを通って混合チャンバに入る、希釈剤と濃厚粒子懸濁液の二つの個々の流量F
DとF
Sの合計に等しい。したがって、
(数1) F=F
D+F
S・・・(数1)
となる。
【0020】
混合チャンバMC内に残っているか、またはポート11を通って混合チャンバMCから出る粒子懸濁液は、混合チャンバMCに管10を通って入る元の粒子懸濁液より濃度が低く、その希釈度は、混合チャンバMC内が定常状態の平衡状態に到達して、粒子濃度がほぼ一定になったときの、管11を通過する出力流体の(容積)流量F対出発濃厚粒子懸濁液の(容積)流量F
Sの比率に等しい希釈ファクタDFは、
(数2) DF=F/F
S=1+F
D/F
S
で表される。
【0021】
比較的高い濃度の試料懸濁液が関連する多くの重要な用途の場合、望ましい希釈ファクタDFは、比較的高く、すなわち、DF>>1なので、F
D>>F
Sである。このような場合、混合チャンバMCを出る希釈された粒子懸濁液の流量Fは、混合チャンバに入る希釈剤流体の流量にほぼ等しく、すなわち、F≒F
Dである。この場合、DF≒F
D/F
Sである。
【0022】
上記数式2は、混合チャンバ内の粒子濃度が定常状態の平衡に到達するのに十分な時間が経過したときに成立する。混合チャンバ内に容積Vの清浄で粒子を含有していない希釈剤がすでに入っていてかつまた新鮮な希釈剤が混合チャンバ中に定常流量F
Dで流入していると想定して、試料懸濁液が混合チャンバ内に流入し始める(t=0と定義される)と直ちに、混合チャンバを出る流体流の粒子濃度(この場合C(t)と定義する)は、時間tの経過とともに単調に増大する。混合チャンバ内で理想的な混合がなされていると想定すると、出力粒子濃度C(t)は、
(数3) C(t)=(C
0/DF)[1−e
(-t/τ
)]
で表される。ここに、C
0は、混合チャンバ中に注入される出発試料懸濁液の粒子濃度であり、流体懸濁液の単位容積当たりの粒子全数または所定の粒度範囲内の粒子数で表される。パラメータτは、指数時定数であり通常、混合チャンバの「減衰時間(decay time)」または「滞留時間」と呼ばれている。τの値は、混合チャンバ内の(ここでは出力流体流内の)粒子濃度がその最終平衡値C
0/DFに近づく速度を表し、
(数4) τ=V/F
で表される。
【0023】
上記数式4において、Vは、混合プロセスに参画する混合チャンバ内の流体(粒子を含む)の全容積であり、Fは、定常状態条件下で混合チャンバに入る試料懸濁液と希釈剤流体の合計流量であり、数式1で表される。試料の注入を開始後、時間tの経過に伴うC(t)の挙動(希釈剤流体が流動していると想定する)を
図2に示す。実用上興味ある殆どの場合は、比較的大きな希釈ファクタDF>>1が必要である。このような場合、F
DはF
Sよりはるかに大きいので、τはV/F
Dにほぼ等しい。
【0024】
数式3に示すように、濃厚試料懸濁液を最初に注入した後、混合チャンバ内の粒子濃度、したがって混合チャンバを出る出力流体流の粒子濃度が、C
0/DFで示されるほぼ一定の平衡値に到達するには、時間が経過しなければならない。この時間は、混合チャンバの特性「滞留」時間τ(新しく注入された粒子が、出力流体流中に出る前に混合チャンバ内に滞留する平均時間の尺度である)をかなり超えるはずである。例えば、理想的流体混合を想定して、全経過時間3τの後、出力流体流中の粒子濃度は(C
0/DF)(1−e
-3)=0.95C
0/DFで表され、すなわち理論的定常状態値の95%である。あるいは、経過時間5τの後、出力流体の粒子濃度は0.993C
0/DFに等しく、最終値からの隔たりは1%より少ない。
【0025】
混合チャンバを出る希釈された粒子懸濁液のPSDの詳細な「形」f
OUT(d)対dは、理想的なランダム混合プロセスを想定して、混合チャンバ内に注入される出発試懸濁液のPSDの形、f
IN(d)対d(dは平均粒経である)に正確に類似していなければならない。具体的に述べると、下記数式5で表される。
(数5) f
OUT(d)=(1/DF)f
IN(d)
上記数式5中、f
IN(d)とf
OUT(d)の両者は、流体/粒子懸濁液の単位容積当りの、直経がdの粒子の数、すなわちdを中心とした非常に小さい範囲△d内にある粒子の数を表す。すなわち、希釈された粒子懸濁液のPSDは、希釈試料についての、粒子直径の各「チャネル」もしくはインタバル△d内の液体の単位容積当り粒子絶対数の測定値が元の試料懸濁液の単位容積当りの粒子絶対数に対して単純に1/DFの係数で減じられることを除き、理想的には出発試料のPSDと同一である筈である。
【0026】
この混合流希釈法には、注目すべき二つの特性がある。第一に、その性質から、その方法は、濃厚試料懸濁液と新鮮な希釈剤をそれぞれの定常流量で混合チャンバに送達できる限り、希釈された試料懸濁液を連続ペースで製造できる「定常状態」方法である。その希釈ファクタは、獲得したいPSDの特徴が与えられたならば、PSA測定(例えば、SPOS)に適当な粒子濃度を得るため調節されると仮定する(「最適の」適当な濃度の定義は、後に考察する)。利用可能な時間および所望のPSDの結果の種類と質によって、所望するだけ、多量の出発試料懸濁液を、すなわち所望するだけ多数の、所定の粒度範囲内にある試料粒子を、自由に希釈し測定する。必要なことの全ては、濃厚試料懸濁液を、混合チャンバ内に、ある選択された流量F
Sで連続的に注入し、かつ濾過された希釈剤流体を別の選択された流量F
Dで連続的に注入することによって、希釈システムを、定常状態ペースで連続的に作動させることである。
【0027】
試料の混合流希釈法の第二の重要な特性がある。すなわち、この特性によって、例えば広範囲のクラスの粒度分布の特定の重要な特徴を分析するのに非常に有効な、新型の自動希釈システムが可能になる。この発明は、特定のかつ独特の制御機構を使用し、希釈ファクタDFを迅速にかつ自動的に調節して、粒度の分析測定を迅速かつ効率的に最適化することを提案するものである。これは、例えば、以下に説明するように、SPOS−PSAシステムを使用して、全粒子集団の比較的小さい画分だけ(すなわち最大直径だけ)を検出し分析する「殆どサブミクロンの」エマルジョンと分散液のPSDの特定部分を探究したいとき、特に重要であることが分かる。
【0028】
粒径の各インタバルもしくは「チャネル」△dで計算される粒子の全数に基づいて、許容可能な統計的正確さを有する正確なPSD情報を得ることができることと矛盾しないで、粒子懸濁液の希釈とその後の測定のための全時間を減らすことは、不可欠なことではないにしても、有利なことが多い。試料を希釈し分析するのに必要な全時間を減らすことは、多数のバッチの試料が関連する実験室の用途にとって明らかに有利である。しかし、このことは、オンラインプロセスの監視を含む用途にとって非常に重要になる。連続混合流希釈法は、この発明の出発点を構成しているが、最適の希釈ファクタDFを計算して適用し、かつまた所望により、粒子の計数/粒度のデータを早期に獲得中、リアルタイムで構築できるPSDの特定の特徴を検査することによってどの位の量の試料を分析すべきかを確定するため、PSA装置に、希釈プロセス開始後直ちにダイナミックな決定をさせる。この性能は、例えば、測定と分析に利用可能な試料物質の全量が典型的に制限されていて、希釈システムの混合チャンバ中に最初に導入された量に等しい、Nicoli他の米国特許第4,794,806号に記載されているような他の試料希釈法とは対照的である。
【0029】
希釈ファクタDFの調節は、典型的には、混合チャンバに注入する濃厚試料懸濁液の流量F
Sを変え、一方、混合チャンバに注入する新鮮希釈剤の流量F
Dを一定に保持することによって達成される。(あるいは、通常あまり望ましくないが、DFの値は、流量F
Sを一定に保持しながら流量F
Dを変えることによって調節することができ、またはこれら両方の流量は、F
D/F
Sの比率を所望の値にする方式で調節できる。)第一に、DF値を調節できるということは、DF値を「最適」値にまたはそのような値の範囲内に設定して、すなわち、得られる粒子濃度がPSA測定のために「最適」になるようにすることができることである。希釈された粒子の濃度は、非常に特別な意味でSPOS式測定に対して「最適」であるといわれる。SPOSセンサが最も効率的に作動できる濃度すなわち、正確さと分解能が最大のPSDの試験結果を生成する信号が得られ、最小限の分析時間しか必要としない濃度が一般に選択される。SPOS式PSA測定の場合、考慮すべき最も重要な因子は、そのセンサの「一致」の限度または濃度である。この量は、主として、センサの光学上のおよび信号処理の設計に基づいており、そして第二に、試料の基本的なPSDの特性に基づいている。
【0030】
例を挙げると、有益であろう。代表的な市販の光遮断センサ(Model LE400-1.3、Particle Sizing Systems、米国カリフォルニア州サンタバーバラ)は、流動セル(貫流セル)の断面の寸法が(約)400μm×100μmである。厚みが約35μm(1/e
2インテンシティポイント(intensity point)によって定義される)の薄い「シート」状のレーザ光が、流動チャネルを直角に横断する。センサに生成した照射の薄い「スラブ」は、活性検出ゾーンすなわち「視野容積」を定義し、容積△Vは400μm×1000μm×35μmすなわち1.4×10
-5cm
3に等しい。希釈液−粒子懸濁液は、前記流動チャネルを、典型的には、流量1〜2ml/secで通過して、粒子を、瞬間的に、視野容積を通過させる。各粒子の通過によって出力信号パルスが生じ、その大きさは、粒子の粒度(および程度は小さいが、組成)ならびに利用される検出原理(すなわち、光の遮断、光の散乱またはそれらの組合せ)とセンサ設計の詳細によって決まる。
【0031】
SPOS法を利用する大部分のPSAの用途の場合、粒子の「合致」すなわち、二つ以上の粒子がセンサの活性検出ゾーンを同時に通過することを回避したくなる。この要求は、もちろん、そのパルスの高さ分布および対応する計算されたPSDのひずみが生じる可能性を減らすように設計される。上記例の場合、粒子は、懸濁化液全体にわたって「理想的」に分布しているならば、距離的に(かつ到達の時間的に)等間隔に活性検出ゾーンに到達するであろう。粒子は、そのとき、その濃度が1/△Vまたは約70,000/mlを越えなかったならば、検出ゾーンを個々に通過するであろう。この理想的な(非現実的な)想定を利用して、各視野容積は、単一の粒子によって「占められている」ということができる。
【0032】
実際に、粒子は、もちろん、懸濁化液全体にわたってランダムに位置しているので、検出ゾーン内に合致が起こって、信号パルスの高さにその何分の一かのひずみが生じる可能性が大きく増大する。したがって、粒子が合致する確率を減らすために、試料懸濁液の試験に使用する濃度を著しく下げることが必要である。目安として、上記計算された濃度(1/△V)の1/10まで低下させれば、通常これらの問題を軽減するのに十分であるとみなされる。これは、合致現象の近似頻度を信号パルスの全数の1%未満まで減らす。上記例を利用して、これは、示唆される濃度限度が約7,000粒子/mlであることを表している。この推定は、寸法が活性検出ゾーンの幅より著しく小さい小粒子(上記例では35μmと想定される)に当てはまる。活性検出ゾーンの厚みより大きい粒子の場合、合致の頻度が1%のレベル未満であるような濃度は、粒度が増大するにつれて低下する。
【0033】
最後に、SPOS式測定に用いるため本願で説明している希釈システムが採用できる最終粒子濃度には下側の限度が理論的にないことが分かるであろう。任意に低い粒子濃度においては、粒子の合致が起こって、得られるPSDにひずみが生じる確率は殆どないぐらいに低い。しかし、実際には、非常に大きな希釈ファクタDFを選択するこのような保守的な(conservative)手法には、二つの明らかな大きな欠点がある(すなわち、センサの公称の合致の限度がいうよりもはるかに低い)。第一に、希釈剤中に自然に存在している汚染粒子の濃度が非常に低いことを保証するために、希釈剤を徹底的に濾過する必要がある。さもないと、得られるPSDは、出発試料を表しておらず、代わりに、試料でなくむしろ希釈剤中の不要粒子の存在によって著しく歪む。
【0034】
第二に、いずれの場合も、得られるPSDの適当な正確さ/再現精度を達成するため、測定時間をおそらく大きく増大する必要がある。さもないと、粒子直径の与えられた範囲で計数するのに利用できる粒子の数が単に不適当であることにより、いくつかの直径「チャネル」における粒子計数値が一つの測定と次の測定とで統計的に変動して、そのばらつきが許容できないほど大きいことが分かるであろう。
【0035】
実用上興味ある殆どの用途の場合、必要でなくても、希釈ファクタFDを「最適化」して、希釈された試料懸濁液の最終粒子濃度を、先に述べたようなセンサの合致限度未満であるが、不十分な試料粒子のため、希釈剤の不純物または統計的変動からもたらされる、得られるPSDの許容できないレベルの雑音/ひずみをまねくほど低くない濃度にすることが賢明である。典型的には、これらの考慮によって、最終粒子濃度をセンサの公称合致限度の20%〜80%の範囲で選択することになる。上記の例を利用すると、それは、1400〜5600粒子/mlの濃度に等価である。しかし、PSA測定の感度をPSD中の小部分である最大粒子(そのPSDの「テール」を構成している)まで高める必要があるような特別の用途では、使用する粒子の濃度を、上記レベルを十分に越える値まで増大することが、推奨されるかまたは必要であることが屡々ある。この点については、後に、より十分に考察する。
【0036】
SPOS測定法に用いる希釈ファクタF
Dの最適化には、試料懸濁液の注入流量F
S(または、代わりに、希釈剤の流量F
D)を制御するため、特別の制御「信号」を用いることによって達成される。DFの最適値は、SPOSセンサの特別の要件(すなわち、そのセンサの合致限度)および場合によっては、希釈されて分析される試料のPSDの特別の特性に基づいている(後に考察する)。希釈ファクタDFの許容可能で/最適の値を決定するのに使用される制御信号は、SPOSセンサによって検出される粒子の計数レート(count rate)、および場合によっては、パルスの計数/高さの情報から生成するPSDの特別な詳細部分から誘導される。粒度の特定の範囲にわたって、粒子の計数レート、または同等に、対応する粒子濃度をこのように特別に使用して、PSA測定開始時の希釈ファクタを決定することは、この発明の基礎を形成する新しい新規な方法を構成している。有効な「帰還」制御信号は、混合チャンバを出る出力流またはその内部流体/粒子の内容の全てまたは一部をサンブリングできるSPOSセンサが提供するパルス出力信号を適切に処理することによって得られる。この方法は、貴重な属性を提供する。すなわち、自動希釈システムに導入される新しい試料各々に対する希釈ファクタを自動的にかつ迅速にほぼリアルタイムペースで調節する性能を提供する。
【0037】
いくつもの滞留時間τが経過した後、混合チャンバ内またはその流体出力において効率的に到達する平衡粒子濃度は、以下に説明するように、出発試料の希釈を開始してから比較的短い時間のうちに、十分合理的に推定できる。これは、希釈ファクタDFの値の早期の「中間(mid-course)」修正を、比較的短い時間が経過した後に実施できるので、DFの値を、時間を調節するため、恐らく、はるかに小さな値または大きな値に再調節して、外の方法の場合よりははるかに速く、DFの最終の最適値に「ゼロイン(zero in)」することができる。代わりの「力任せ」法(「brute-force」approach)は、DFの試行値を「推測し」、出力粒子濃度がほぼ平衡に到達するのを待ち、DF値を再調節し、平衡が再び達成されるまで同様の時間待ち、そして場合によっては、試料懸濁液の適切な希釈度に到達するため、この一連の操作を繰り返すことからなる方法である。希釈ファクタDFをトライアルアンドエラー法で選定するこの単純な反復方法に伴う欠点は、その明白な時間がかかる性質とは別に、典型的なSPOS式センサからの出力信号応答が、一旦、粒子濃度が合致限度を実質上越えると、粒子濃度に対して著しく非線形になることである。測定されたパルスレートは、より高い頻度の粒子合致(より高い頻度で隣接信号パルスが併合する結果となる)の作用のため、ある濃度範囲における粒子濃度が増大すると、実際に減少することがある。したがって、SPOSセンサのパルス出力に対する、試料の希釈の増減の効果を観察することによる、希釈ファクタDFを設定する単純なトライアルアンドエラー手法は、時間が掛かるとともに極めて入り組んだやり方であることが分かる。
【0038】
上記の考察から、希釈された粒子濃度の最終定常状態(平衡)値の推定が、迅速に、希釈プロセスを開始した後、直ちに実施できることが明らかである。混合チャンバへの濃厚試料懸濁液の最初の注入(t=0)に続いて、粒子は、数式3に理想的に示すように、濃度C(t)が増大するにつれて、出力流体中に出現し始める。時間に対する粒子濃度の瞬間増加率R(t)は、C(t)の時間による導関数、すなわちdC(t)/dtで表され、数式3から計算すると、
(数6) R(t)=dC(t)/dt=(C
0/DF)(1/τ)e
(-t/τ
)
となる。ここに、先に考察したように、F
D>>F
Sの場合、τ=V/F≒V/F
Dである。
【0039】
明らかに、粒子濃度の増加率の最大値は、t=0において、すなわち、濃厚試料懸濁液の注入を開始したほぼ直後に、生じる。この最大の増加率をR
MAX(0)と定義すると、理想的には、
(数7) R
MAX(0)=(C
0/DF)/τ=(C
0/DF)(F/V)
で表される。
【0040】
この関係によって、混合チャンバ内に滞留し該チャンバからでる希釈された試料懸濁液の粒子濃度がほぼ平衡に達してほぼ一定になったことを保証するため十分長い時間(すなわち約2τ−3τ)待ったと想定して、その速続希釈システムによって達成される筈である最終濃度C
0/DFを容易に推定できる。最終平衡濃度C
0/DFについて数式7を解くと、
(数8) C
0/DF=τR
MAK(0)=(V/F)R
MAX(0)
が得られる。
【0041】
τは、一定値のVと既知の値のF(F
D>>F
Sの場合、F
Dにほぼ等しい)から既知であるので、C
0/DFを迅速に推定するために残っているのはR
MAX(0)の測定だけである。実際にこの測定は、適切に短い時間間隔Δtおよび対応する流体容積ΔV(FΔtで与えられる)について、すべての粒子(当該用途および粒度分析の所望のモードによって、SPOS式センサによってアクセス可能な全粒度範囲、またはある特定の粒度範囲において)を計数することによって容易に達成される。この場合、Δtは統計的に有意な数の粒子の測定を確実に行うため十分長い、しかしτより有意に短い、例えばτ/3もしくはτ/5であるように選択される。この測定は、出発濃厚試料懸濁液の最初の注入に続いて行われ、実際に、粒子の計数のため、信号パルスの最初の有意な増大がセンサ出力に現れた時に始まる。最初の最大増加率R
MAX(0)は、次いで、ΔC/Δtの比を計算することによって推定できる。なお、ΔCは、混合チャンバを出て、SPOSセンサを通過する液体懸濁液の単位容積当たりの計数された粒子の数に等しい。
【0042】
次に、推定された最終粒子濃度C
0/DFのこの情報を利用して、センサの技術的仕様と要件および特定の測定用途とPSDの形(以下に考察する)によって規定される要求に従って、液体懸濁液の最終粒子濃度を最適化するため、希釈ファクタDFを、上下に調節することができる。原則として、上記推定を行い、続いて希釈ファクタDFを調節する(典型的には、出発試料懸濁液の注入量F
Sを調節することによって行う)のに必要な時間は、τより有意に短く、いずれにしても、出力粒子濃度が定常状態の平衡に達しほぼ一定になるのに必要な時間よりはるかに短い。
【0043】
この発明は、特に、粒度のSPOSによる分析法とともに用いる場合、以下にさらに考察するように、広範囲の粒子懸濁液と粒子分散液の質に直接関連するPSDのいくつかの特徴を確認するのに非常に有用である。これらの物質は、「多分散性(polydispersity)」(粒度の範囲)と複雑度(complexity)(すなわち形)が大きく変化するPSDを有している。この発明の自動希釈システムの重要な特徴は、希釈プロセスの予備段階中に、集団重み付けPSDまたは数重み付けPSDから得られる情報に基づいて、試料の最適希釈度を確立できることである。
【0044】
この発明は、希釈された懸濁液の特定の流量に対し、SPOS式センサから得られる粒子計数率(粒子数/秒)または、代わりに粒子直径の特定の範囲に対する粒子濃度(粒子数/ml)に基づいて出発濃厚試料懸濁液の希釈度を最適化できる。なお、選択される粒度の範囲は、当該試料の用途または種類によって決まる。この情報を使用して、希釈ファクタDFを調節することにより希釈システムに作用させるため(例えば、試料注入流量F
S)利用される適当な「制御信号」を発生させる。この意味で、ここに提案された方法は、「負帰還」の原理を有効に利用している。出発試料の希釈の程度は、先に考察したように、SPOS式センサの合致濃度限度に左右される。しかし、希釈ファクタの最適値の選択は、PSDの迅速な予備的測定によって確認される試料の基本的PSDのいくつかの特徴によって左右される。システムの希釈ファクタの最適値を確定するのに用いられるPSDの重要な特徴は、時には他の(SPS式でない)粒度検出法も含む他の種類の測定法を使ってもアクセスできないことが多い。このことは、この発明の重要な利点である。
【0045】
粒子を計数し粒度を検出するSPOS法を含む一つ以上の粒度分析方法を用いて濃厚試料を自動希釈することに基づいたこの発明の理解をさらに高めるため、SPOS法に集中し、かつPSAの用途を二つの広い範畴に分けることが有用である。第一の範畴は、大部分の粒子(粒子全部とはいわないまでも)が、SPOSセンサがカバーする粒度の範囲内に入っている試料で構成されている。第二の範畴は、大部分の粒子が、SPOSセンサの測定可能な最小直径(ここでは、d
MINと呼称する)未満である試料で構成されている。
【0046】
図3に図式的に例示した(3例)第一の場合、試料中の粒子の大部分は、d
MINより大きい。したがって、
図3にd
0として示す分析のための出発「しきい値」直径を試料中の大部分の粒子より小さく選択するならば、SPOS法を利用して全PSDを分析することができる。次に、粒子の計数と粒度のデータを、全ての粒子直径d≧d
0について、先に記載したように集めることができる。
【0047】
この第一の広い範畴の用途に入る三つの代表的な数重み付けPSDを
図3に示す。曲線「A」は、単純な「単一モード」のPSDであり、広範囲の用途でしばしば出会う曲線に類似している。この曲線は、無視できる一部の粒子数が直径目盛りの粗大端部または微小端部を占めているという意味で、「理想的」である。「良」質の試料は、曲線「A」に似たPSDを有していることが多く、特徴づけるため、二つのパラメータ、すなわち、数重み付けまたは容積重み付けで平均直径と標準偏差(半値幅)しか必要としない。
【0048】
図3の曲線「B」で表されるPSDは、分布の大直径の「テール」を画成する大きな「異常」粒子を多数含有している点で曲線「A」のPSDと異なっている。このテール領域中の粒子は、典型的に、より小さな「一次」粒子の凝集体であるか、または粉末の場合不十分な摩砕もしくは粉砕でもたらされもしくは水中油のエマルジョンの場合不完全な均一化でもたらされる大きすぎる一次粒子(二つのプロセスだけを挙げた)である。興味がある量は、通常、PSDのテールすなわちd>d
1(
図3)の場合のPSDのテールに関連する粒子の容積画分であり、この場合、d
1はPSDのピークまたは平均直径より適当に大きく選択され、選択される正確な値は、PSDの詳細な形および手元の用途の性質によって決まる。この容積画分は、これら粒子を含有する製品の質または安定性と強い相関関係があることが多い。
【0049】
最後に、曲線「C」で表されるPSDは、数重み付けまたは集団重み付けベースで直径が非常に小さい粒子の追加の比較的大きい画分を含有している点で、「A」と異なっている。この「微小部分」は、容積重み付けPSDに対して小さなまたは無視さえできる影響を有しているであろう。したがって、この微小部分は、粒子の数よりむしろ粒子の容積に対して感度のある分析法による検出を逃れることが多い。しかし、これら微小部分の存在は、これら粒子に基づいた最終製品の物理学的および/または化学的特性に有意に影響することが多い。
【0050】
図3に示すPSDのいずれの場合についても、先に概説した混合流体希釈法に基づいた自動システムに対する適当な希釈ファクタDFの選択は、比較的簡単である。SPOS法を利用して下にあるPSDの大部分を「捕らえ」たい場合、PSA測定のために、比較的低いしきい値直径d
oを選択しなければならない。この場合、センサは、センサを通過するほぼ全ての直径の粒子に応答する。自動希釈システムは、典型的には試料注入流量F
Sを調節することによって、希釈ファクタDFを変え、その結果、粒度範囲のほぼ全体にわたる粒子の最終濃度は、利用されるSPOSセンサの合致濃度限度またはその一部分に等しい(ほぼ)予め設定された値に到達する。最終濃度を合致限度に対してどの位低くするべきか予め規定する程度は、測定されたPSDのひずみとアーチファクトを、より優れた統計的正確さを犠牲にしてどの位最小限にしたいかによって決まる。粒子合致が原因のPSDの真に無視可能なひずみを有する保守的なPSA測定法が所望の場合は、自動希釈システムによって達成すべき「最適」の最終粒子濃度として、センサの公式の合致限度より実質的に小さい値、例えば、前記合致限度の濃度の50%、25%または10%の値にさえ選択することができる。
【0051】
あるいは、d≧d
1によって定義されるPSDのテール部分、すなわち、定義により、粒子の数が全粒度範囲にわたる試料内粒子の全数の内の小部分を表す部分の統計的正確さを改善するようにして、PSA測定を実行したいかも知れない。
図3に示す試料「A」と「B」の差を「増幅する」ため、SPOS測定法の出発しきい値直径を、全PSDの出発点より低い位置にあるd
oから、PSDのピークもしくは平均直径より有意に高い位置にあるd
1に増加させることができる。そして、計数および粒度測定のために利用できる、d
1より大きい粒子の絶対数を増やすため、センサの公式の濃度限度を十分に超えた最終試料濃度を選択することができる。しかし、この高い濃度のために、測定された分布の多くが高い直径にシフトしたことによる、得られるPSDの有意なひずみを予測しなければならない。直径がd
1を超えて大きくなっていくにつれて、粒子の数がいかに急激に減少していくかによって、d
1より大きい直径について計算されたPSDのひずみの程度は、試料「A」と「B」について達成されたPSDのテール部分の統計的正確さ、したがって分解能、が改善されることを条件に、比較的小さくしたがって許容できることもあるし、そうでないこともある。SPOSセンサの公式の合致限度より大きい最終粒子濃度については、測定されたPSDのひずみに対する粒子合致の効果を、
図4Aと4Bを参照して、以下により詳細に考察する。
【0052】
先に考察した第一の広い範畴に入る用途に対する「最適」希釈ファクタDFの選択について、実行すべき最後に重要なポイントがある。SPOS測定法は、PSDを構成するほぼ全ての粒子に対して感度があるから、最適DF値の決定は、測定可能な全粒度範囲にわたっての粒子の計数レート、または、等価的に、粒子濃度の他には希釈された試料懸濁液の特性を測定することによって達成できる。このような特性としては、例えば、希釈された試料懸濁液のある範囲の波長にわたっての光学的濁度または透過率がある。測定される特性は、当該懸濁液がある範囲の角度で生成する散乱光でもよい。あるいは、監視される量は、デンシトメータ(濃度計)から得られる、希釈された試料懸濁液の容積もしくは質量の画分でもよい。重要なポイントは、単に、試料物質の与えられたタイプと組成に対して、試料の全粒子濃度は、SPOS法を用いてアクセス可能な希釈された懸濁液の単位容積当りの粒子数より他には、種々の物理的パラメータから推測することができるという事実である。
【0053】
したがって、この発明の基礎を構成する自動希釈法は、
図3示すPSD(試料中の大部分または全ての粒子がSPOSセンサのアクセスできる最小直径より大きい)と類似のPSDを有する試料を分析するために、依然として有用ではあるが、そのような試料をSPOS法を利用してPSA分析して成功するのに必ずしも不可欠ではない。そのような試料のSPOS分析を確実に成功させる希釈ファクタDFの適当な値は、上記に提案されているようなSPOS法による粒子計数の他に、ある種の物理学的測定法からも得ることができる。唯一の要件は、このような代わりの測定法が、試料を構成する全粒度範囲の粒子に応答し、そしてその試料に対して、試料の自動希釈に続くSPOS測定法も応答することである。
【0054】
したがって、PSAの用途の第二の広い範畴を考察することによって、この発明に対する動機付けをよりよく理解でき、第二範畴のPSA用途に対して、自動希釈法をSPOS分析法と組み合わせて使用することは特に有用であり、場合によっては不可欠であることを理解できるであろう。この第二の範畴では、SPOS法を利用して分析される粒子の大部分は、利用されるSPOSセンサの測定可能な最小粒度より小さいと推定される。
【0055】
この考察を簡略化して、最も重要な用途に有用なSPOSセンサに対する最小の実用粒度限度が典型的には0.5〜1μm(ミクロン)の範囲内にあることを考慮するためには、これらの第二範畴の試料又は用途を「ほとんどサブミクロン」と呼ぶと便利である。これは、対象の試料懸濁液中の粒子の大部分が平均直径で1ミクロンより小さいことを意味する。
【0056】
これら「ほとんどサブミクロン」のPSDの意味は、超微細のコロイド分散液とコロイド懸濁液を使用する多くの重要な用途の場合、「良好な」製品と「不良の」製品との差は、特定の直径値を超えて存在する、試料の質量または容積の非常に小さいが重要な画分の存在の有無によって決定されることが多いということである。粒子の質量また容積のこの小さな画分は、典型的に、全PSDの平均直径(数重み付け平均または容積重み付け平均として表される)より有意に大きくて、実際に、
図3の「A」および「B」について考察したように、PSDの最も外側のテールを含む、平均直径より幾標準偏差も上に位置する粒度範囲内にある粒子で構成されている。「良好」試料と「不良」試料の差は、0.1%未満および時には0.01%未満の全粒子容積(もしくは質量)の内の小画分の差によって効果的に決定されることが多い。
【0057】
この点が
図4Aに図解されており、
図4Aは、PSDが非常に類似している二つの試料の異なる数重み付け粒度分布の簡略化した模式図を提供している。試料「B」のPSDは、試料「A」の対応するテールより直径がさらに少し外側に延びる大粒子のテールを有している。この簡略化した場合において、「A」はおそらく「良好」試料を表し、一方「B」は「不良」試料を表す。「B」における、より大きな直径の方へ外側にのびる試料容積(質量)の追加量は、問題の特定試料または用途によって、合体したエマルジョン液滴、凝集した固体粒子、不十分に摩砕された「一次粒子」などを示す。試料「B」を使用して製造された最終製品の性能と「質」は(いかように定義されても)、試料「A」を使って製造した同じ製品に比べて、少なくとも一つの点について欠陥があることが発見されることが多い。
【0058】
PSDの最も外側のテール内に存在するより大きな粒子の追加の画分(しかし、非常に小さい画分)が存在することによる全粒子容積のこのような小さな差は、一般に、粒度分析のために利用される各種の従来技術の「アンサンブル」法によって、再現性や信頼性はおろか、全く検出されることができない。これらの方法は、検出される「信号」が、非常に多数の粒子、すなわち全試料の代表的画分によって同時に生成される場合の測定値から近似のPSDを得るように設計されている。かような方法としては限定されないが、フラウンホーファ(「レーザ」)回折法、ミー光散乱法(フラウンホーファ回折法と組み合わせて使用することが多い)および光比濁分析法もしくはX線比濁分析法を用いる沈降法(重力単独下または遠心力の補助をうける)がある。
【0059】
これとは対照的に、SPOS法は、PSDの大直径のテールを画成する粒子の非常に小さい容積(もしくは質量)画分を詳細に試験するのに使用できる。SPOS法は0.5〜2ミクロンの範囲内にある出発しきい直径値d
0(
図4A)を用いて試料の「部分PSD」を測定するのに非常に有用なことが多い。この場合、d
oの選択は、試料のPSDおよび感度(検出可能な最小直径)、合致濃度限度、および場合によっては測定に使用されるSPOS式センサの他の特性によって決まる。
図4Aに例示されているようなPSDの大直径テールの比較的微妙な差に関連する試料の質の差は、粒度を分析するSPOS法を使用することによって、非常に容易にかつ正確に解決することができることが多い。この場合、出発しきい値d
oは、典型的に、PSDの数重み付け平均直径から比較的大きく上に位置している。このような場合のみ、PSA測定法は、数の小さな変化に対して最大限に敏感であるので、PSDと試料の質を終局的に決定する「外側」の粒子の容積画分に対して最大限に敏感である。この点は、
図4Bに図解してあり、
図4Bは、d
oより大きい粒子直径に関する試料「A」と「B」について想定される集団PSDの差を、拡大した形で示す。
【0060】
この状態は、
図3に示す状態と対照的であり、PSD「A」と「B」の「わずかに」異となるテールを有している。
図3に示す試料「A」と「B」のPSDのテール部分(d≧d
1)を測定する性能と、
図4Aと4Bに示す試料「A」と「B」のテール領域(d≧d
o)を定量する性能との間には、有意な差がある。前者の場合、出発しきい値直径d
1を、SPOSセンサの検出可能な最小直径d
MINよりはるかに大きい値まで容易に上げることができる(そしてd
oにおけるPSDの必須の開始もそうである)。このように、PSDを構成するd
1より小さい粒子の大部分を見かけ上「排除して」、最終粒子濃度を有意に増大し、テール領域(d≧d
1)の粒子カウント数を大きく増やすことができ、その結果、得られる部分PSDの統計的正確さが改善される。しかし、このような改善は、錯覚を起こしやすい。d≧d
1の場合に得られる部分PSDに、SPOSセンサが敏感な小粒度の粒子の多くの合致が原因で、強烈ではないまでもかなりのひずみが起こるであろう。したがって、実際に、希釈された試料懸濁液の濃度を比較的わずか増大して、d≧d
1の場合に得られる部分PSDの統計的正確さを改善できる。
【0061】
これとは対照的に、
図4Aと4Bに示す試料「A」と「B」の場合、試料中の粒子の大部分は、利用されるSPOSセンサの最小粒度下限d
MINより小さいと推定される。したがって、その出発しきい値直径d
oは、要件d
0≧d
MINに拘束される。この場合、d≧d
oの場合に得られる部分PSDの正確さに対する、d
oより小さい粒子の合致の作用は、
図3に関連して考察した実施例で経験した作用よりはるかに少なく重要であると考えられる。これら二つの場合の差を知るため、典型的なSPOSセンサの応答特性を簡単に見ておくことは、有用である。
【0062】
SPOSセンサが伝統的な光遮断(LE)モードで作動していると想定し、そして粒子の直径が光源の波長(典型的には、0.7〜0.8μm)より有意に大きいが、活性検出ゾーンまたは「視野容積」の厚み(典型的には、30〜50μm)より小さいと想定して、該センサの応答は、粒子直径についてほぼ二次式で表される。すなわち、活性検出ゾーンを通過する上記粒度範囲内の粒子が生成するパルスの高さ(電圧)は、粒度の増大につれて、ほぼ粒子直径の二乗で増大する。この挙動は、大直径のテールの場合、特に
図4Aと4Bに示される場合(この場合、出発しきい値直径d
o未満で存在している粒子の大部分が、個々のベースでは、センサに「見えない」)、PSDの測定に対する粒子合致の作用については、非常に有意でかつ好ましい成果である。LEタイプのセンサの二次式的応答(quadratic response)は、十分に大きい直径d
1を超えて非常に小さくかつ減少する傾向で存在している(
図4)、試料中の非常に大きい粒子の測定が、センサの活性検出ゾーンを同時に占める有意に一層小さい粒子が多数存在していることによって、ごくわずかしか影響されないことを意味する。実際に、約2〜3ミクロンより小さい粒子の場合、パルスの高さの粒子直径に対する依存関係は、二次式的より強く、粒度が減少するにつれて、直径の4乗、最終的には直径の6乗まで増大する。というのは、LEタイプのSPOSセンサにおける粒子による光の遮断は、幾何学的偏向(屈折)と異なり、光散乱の現象の方がより大きく原因となっていくからである。したがって、粒度が小さくなっていく粒子の合致の蓄積された効果は、希釈された試料中に存在する小粒子の数がはるかに大きくなっていくにもかかわらず、PSDの外側テール内に位置している「大」粒子について測定されたパルス高さに対する前記影響については、多くの場合、無視することができる。
【0063】
SPOS式センサから得られる粒子計数レート(または、既知の流体流量を用いて計数レートから誘導される粒子濃度)を監視することに基づいた、連続混合流希釈システムの自動帰還制御がなぜ特異的に有用であるか、今や明らかであろう。先に一般的な観点で考察して
図4Aと4Bに図解したような、通常出会う用途の場合、どのような値の希釈ファクタDFを採用すべきかは、おおよそでさえも前もって知ることができないことが多い。すなわち。その平均粒子濃度および、場合によっては、他の特性によって殆ど「同じ」と判断される二つの試料の場合でさえ、与えられた直径しきい値d
oより上にある粒子の数、したがって容積画分は、PSDの残りの部分(低直径)、実際に、二つの試料について大多数の粒子がほとんど同じでありながら、大きく変わる。このような場合、DFの許容可能なまたは最適の値は、試料懸濁液について追加の定量的情報(粒度には無関係)が与えられても、事前に、高い信頼性で推定することができない。
【0064】
この理由は、このような追加の情報が、一般に、PSDを構成する大部分の粒子の影響を受けて、当然のことながら、個々の分布の「テール」内に存在するPSDの比較的小さな差を反映することができないということである。与えられた試料に対して望ましいDF値を予測する場合、利用可能であろう(すなわち、測定された)が、通常は、限られた価値しかない情報としては、1)懸濁した粒子の全質量(濃度)、2)懸濁した粒子の全容積(濃度)、3)試料全体(一定のファクタで適切に希釈されている)の濁度(光学濃度)、4)試料全体(適切に希釈されている)によって、ある角度またはいくつかの角度の範囲で生じる散乱光のレベル、5)試料全体の単位容積当たりの粒子の全数(PSDのテール内に存在する大粒子の小画分によってごく僅かしか影響されない)、6)レーザ(フラウンホーファ)回折などの一つ以上のアンサンブル法によって測定された、PSD全体の平均直径(数重み付けまたは容積重み付けされている)、7)アンサンブル法で測定された、PSD全体の標準偏差または幅がある。
【0065】
代わりに、先に述べた自動希釈システムを使用して、低い直径しきい値d
oを利用して測定される粒子濃度(すなわち、すべてのd≧d
0について)がそのSPOSセンサの合致濃度限度未満であるように、希釈ファクタDFの適当なまたは最適の値を決定することができる。最終濃度を、自動希釈システムによって、前記合致限度にほぼ等しく調節するか、またはその80%、50%、25%もしくは10%にまでも調節するかは、得られる部分PSDのd
0より小さい粒子の合致の作用が原因の適度の大きさの歪みを使用者がどの程度許容できるかによって決まる。使用者は、合致によるPSDの無視できる歪みのみを許容できるかも知れず、したがって、先に示唆したように、合致限度の極一部分だけである最終粒子濃度を選択するかも知れない。先に述べたように、条件取捨の考量(tradeoff)は、測定されたPSD中の統計的ノイズのレベル(与えられた直径チャネル内の粒子カウント数の平方根で表される)であり、粒子濃度が低下するにつれて増大する。
【0066】
与えられた用途に対して、自動希釈システムがd≧d
0の場合の部分PSDの一連の比較的短い測定または「スナップショット(snapshots)」を行う方式の該自動希釈システムの制御アルゴリズムを設計することは有用であり、その各測定は所望の最終粒子濃度に対し異なる値(すなわち、d≧d
0の場合の粒子計数レートおよびSPOSセンサを通る流体流量から決定される値)を利用する。例えば、分析開始時に、当該システムは、希釈ファクタDFを調節して、d≧d
0の場合の最終粒子濃度がSPOSセンサの合致濃度限度にほぼ等しくするように、設計してもよい。次いで、粒子の計数と粒度のデータが、予め設定された比較的短い期間、すなわち得られる部分PSDに妥当な統計的正確さを達成するのに十分に長い期間、累算される。次いで、自動希釈システムは、試料懸濁液(濃度が分かっている)の既知の注入容積および希釈ファクタDFから得られる、測定されたPSDに含有されている粒子の全容積およびセンサを通過する全粒子容積の、前記容積が表す画分(すなわち、d<d
0について測定されない大部分の粒子を含む)を計算する(そして、メモリに記憶する)。この量は、測定された部分PSDに含まれている「容積画分」である。
【0067】
自動希釈システムは、次いで、d≧d
0の場合の低い最終粒子濃度、おそらくSPOSセンサの公式の合致濃度限定の50%に等しい濃度を使用して、この短い測定を繰り返すように設計することもできる。このようにして測定される部分PSDの得られる容積画分が最終「目標」濃度(すなわち、合致限度100%の濃度)に対する前の値(prior value)を用いて得られるものよりかなり小さいことがわかった場合、この優れものの(smart)制御システムは、最終粒子濃度が高すてた(すなわち、希釈ファクタが低すぎた)、そのため測定が粒子合致によって悪影響をうけたと結論する。このシーケンスは、次いで、さらに低い値の目標濃度、例えば、二つの内の別のファクタがそのセンサの合致限度の25%まで減じた最終目標濃度を利用して自動的に繰り返される。当該システムは、この新しい低濃度を利用して得られる部分PSDの容積画分をもう一度決定する。このように、このハイテクの制御システムは、最終試料濃度として許容可能な(近似的)最大値に容易にかつ組織的に到達することができ、この場合、粒子合致が原因で生じるd≧d
0についてのPSDの歪みが最小になり、一方、得られるPSDの統計的正確さは最大になる。これは、自動方式で、希釈試料懸濁液の「最適の」希釈ファクタDFおよび得られる最終粒子濃度を確立する。
【0068】
要約すると、これらの「ほとんどサブミクロン」の用途では、PSDの限定された部分の正確な測定を行うために、PSDの特に小さい部分(すなわち、d≧d
0の場合)の高分解能測定を行って、自動希釈システムが利用すべき希釈ファクタDFの最適/適当な値を決定しなければならない。
【0069】
以下に使用する用語「最適希釈ファクタ」および「希釈ファクタの最適/適当な値」は、SPOSセンサの粒子合致が原因で生じるd≧d
0についてのPSDの歪みが、最小限になるかまたは予め定められた許容可能な程度に保持され、しかも得られるPSDの統計的正確さが最大になる希釈ファクタを意味する。成句「最適粒子濃度」は、最適希釈ファクタを利用したとき得られる粒子濃度を意味する。ここで使用する用語「最小限になる」と「最大限になる」は、この発明の自動希釈システムを使用する特定の用途またはPSD、および利用される特定のSPOSセンサの特性に応じた意味になると解すべきである。自動希釈システムは、使用者が(例えば、ソフトウェア入力メニュによって)提供する情報から、SPOSセンサについて決定し、および特定の用途について適当な最大の許容可能な粒子濃度と得られるPSDの適当な許容可能の最小の統計的正確さとについて決定するため、使用者と対話を実施するようにプログラムされたCPU/制御器を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0071】
この発明の原理をいくつかの実施態様において実行する。第一の実施態様では、希釈剤吐出ポンプが、希釈剤流体の混合チャンバ内への流れを提供する。試料吐出ポンプは、濃厚試料懸濁液の流れを混合チャンバ内に注入し、その混合チャンバで、前記懸濁液が希釈液と電磁駆動の撹拌機によって混合される。希釈された試料懸濁液は、次いで瞬間粒子計数率(計数レート=単位時間当たりの数)が得られる出力を有するSPOSを通って流動する。その計数率から、回路手段が粒子濃度の最大増加率R
MAX(0)を測定し、R
MAX(0)は、濃厚試料懸濁液を混合チャンバに注入を開始した直後、粒子濃度が混合チャンバ内で平衡に達するのに必要な時間よりはるかに短い時間における増加の率(レート)を示す。コンピュータ手段が、次いでR
MAX(0)から希釈された試料懸濁液の粒子濃度を確実に平衡に到達させるため待ったならば達成できる最終粒子濃度C
0/DFを計算する。
【0072】
C
0/DFの上記計算値を、先に考察した基準に従って、オペレータが選択した、使用されるSPOSセンサに対する望ましい最適粒子濃度と比較する。この比較から、所望の最適出力粒子濃度を達成するのに必要なDFの新しい値が決定され、そしてそのDFの新しい値を達成するために必要な新しい試料注入流量F
Sが計算される。次いで、試料吐出ポンプを制御して新しい流量F
Sを提供する制御信号が発せられる。濃厚試料懸濁液が、前記新しい流量F
Sで混合チャンバ内に連続して注入される。混合チャンバから出る流体の粒子濃度がほぼ平衡に到達した後、SPOSセンサからデータを集めて、粒度分析(PSA)を実施する。
【0073】
混合チャンバの滞留時間τを減らすため、第二の実施態様を使用することができる。この場合、希釈剤流体と濃厚試料懸濁液の流量は、所望の希釈ファクタを達成するのに適当な値を使用して実質的に増大している。第二実施態様では、希釈された試料懸濁液を全てSPOSセンサを通して導く代わりに、混合チャンバ内の希釈された試料懸濁液のごく一部だけが、その入力末端が混合チャンバ内に配置されている流動管を通してSPOSセンサに運ばれる。希釈された試料懸濁液の前記流動管を通る流れは、SPOSセンサの前または後に配置されてもよい希釈試料計量ポンプによって助けられる。混合チャンバを出る残りの希釈された試料懸濁液は、混合チャンバからドレーンに流れる。
【0074】
第三の実施態様は、試料懸濁液または希釈剤流体の流量が変化した後、希釈システムが平衡に到達するために必要な時間を減らすことが、典型的にできる。この第三実施態様では、前記撹拌される混合チャンバの代わりに、有効容積が小さい「スタティック」ミキサ(mixer)が使用される。濃厚試料懸濁液は、ポンプ輸送手段によって引き出されて、希釈剤流体の流動管中に注入され、そしてスタティックミキサは、試料懸濁液の注入点より下流に配置されている。このスタティックミキサは、直径が典型的に前記希釈剤流動管の大きさしかないので、このミキサの有効体積は、最初の二つの実施態様の攪拌される混合チャンバの典型的的な容積と比べると、著しく小さくなる。攪拌される混合チャンバの有効体積を大きく減らすことができるので、滞留時間τが著しく短くなる。したがって、試料懸濁液または希釈剤流体の注入流量が変化した後、出力粒子濃度が定常状態平衡に到達するのに、比較的短い時間しか必要でない。したがって、希釈ファクタDFがほとんど瞬間的に調節できるので、自動制御システムは、通常の負帰還の制御器を有するシステムとより一層類似している。
【0075】
何種類かの試料懸濁液は、ポンプ手段と接触すると、損傷を受ける(すなわち、そのPSDが変化する)ので、第三実施態様の変形として、濃厚試料懸濁液をポンプ手段から物理的に分離する手段を提供する。一対の弁が、単に一本の配管であってもよい捕獲貯槽(capture reservoir)を試料懸濁液で満たすのを制御する。前記ポンプ手段は、次いで希釈剤を捕獲貯槽の一方の端にポンプ輸送して、試料懸濁液を、捕獲貯槽の反対側の端から強制的に前記スタティックミキサのすぐ上流に配置されている希釈剤液体用流動管中に直接注入する。
【0076】
第四の実施態様では、二段階の希釈システムが利用される。濃厚試料懸濁液が、希釈剤流体とともに、第一予備希釈混合チャンバ中に注入され、その混合液は、制御された方式で第二混合チャンバに空けられる。第一混合チャンバ内の大量の予備希釈された試料懸濁液は、追加の希釈剤流体を、第一混合チャンバ中に、調節可能な流量で注入することによって、強制的に、第二混合チャンバに連続的に注入させる。希釈剤流体を、典型的には一定流量で、第二混合チャンバ中に連続的に注入して、前記予備希釈された試料懸濁液を、定常状態の方式でさらに希釈する。この二段階希釈法は、原理的に、一段階法で可能である全希釈ファクタより、はるかに大きい値の全希釈ファクタDFを達成することができる。
【0077】
第三と第四の実施態様の最も有用な特徴を組み合わせて、第五の好ましい実施態様を構成する。第五の実施態様は、第四実施態様から、二段階の希釈プロセスの使用によって希釈度を大きく増大することができるという思想を取り込んでいる。したがって、第五実施態様は、試料懸濁液を希釈剤流体で予備希釈するための予備希釈チャンバを使用する。しかし、第五実施態様は、第二段階として第二の攪拌混合チャンバを使用するのではなくて、第三実施態様で利用されている、平衡に到達するのに必要な時間を減らすという思想を採用している。すなわち、第五実施態様は、第二希釈段階に、有効体積が小さいスタティックミキサを使用する。希釈剤流体は、管内を流動し、第一混合チャンバからの予備希釈された試料懸濁液が、前記スタティックミキサの上流の前記管内に注入される。したがって、第五実施態様は、二段階の希釈による大きな希釈ファクタを得る可能性と、比較的小さい体積の混合装置すなわちスタティックミキサを使用することによってもたらされる平衡に到達するまでの時間が比較的短いという利点を有する。
【0078】
第五実施態様の変形として、二重に希釈された試料懸濁液に対し追加の(SPOS式ではない)検出装置を提供する。試料懸濁液中の全ての粒子のPSDの全体像を見るため、全PSDがほとんどサブミクロンであるのでDLSを測定するのに適切であると想定して、二重に希釈された試料懸濁液が、順次、スタティックミキサからSPOSセンサを通って第一分岐管へ、または動的光散乱(DLS)セルへの第二分岐管へ流入するのを、弁が制御する。DLS法は、希釈された試料懸濁液が静止している必要があるから、希釈された試料懸濁液はDLS内に一時保持され、光散乱のデータを集め、適切に処理されて、計算されたPSDを生じる。
【0079】
この発明の第一実施態様の簡略化模式図を
図5に示す。この実施態様は、恐らく、先に考察した連続混合流法を、最も単純にかつ最も簡単に実現した実施態様である。新鮮な希釈剤流体を、貯蔵タンク28から入口管29または供給パイプを通じて、可変速ポンプなどの適切な送達手段30によって引出し、出力管32を通り、随意のフィルタ34を通り、そして配管12を通って混合チャンバMCに送る。希釈剤液体の流量F
Dは、CPU/制御器54が発する制御信号B5に応答して、送達ポンプ30の出力流量を変えることによって、所望の値に調節される。
【0080】
別個に、容器20(例えば、ビーカ、貯蔵タンクまたは供給パイプ)に入っている利用可能な大量の出発濃厚試料(粒子)懸濁液22を、所望の流量F
Sで、適切な送達手段によって混合チャンバMC内に注入する。
図5に示す実施例では、送達手段がシリンジポンプSPである。希釈工程開始時に、CPU/制御器54が発する制御信号A5が、シリンジポンプSPに命令して、ある量の濃厚試料懸濁液20を、入口管24と入力ポートP1通して、適切な流量で、シリンジ中に引き入れる。シリンジポンプSPは、次いで制御信号A5によって指令されて、捕獲された濃厚粒子懸濁液を、出力ポートP2と配管10通して、所望の流量F
Sで、混合チャンバMC中に注入する。流量F
Sの値は、先に述べた(さらに以下に述べる)ように希釈ファクタDFの所望値によって選択される。測定が完了したならば、シリンジポンプSP内に残っている過剰の試料懸濁液+試料ソース22と入力ポートP1の間の配管24内にある試料懸濁液は、制御信号A5に応答して、シリンジポンプSPによって、出力ポートP3と配管26を通してドレーンにポンプ輸送することができる(または、出発ソースに戻して再循環させる)。
【0081】
混合チャンバMC内に連続的に流入させる濃厚試料懸濁液と新鮮な希釈剤流体は、典型的には、
図5に示すような巻線40と付属回路手段および磁気攪拌バー14を備えた可変速式電磁攪拌器、あるいは機械攪拌機(電動機、シャフトおよびプロペラ)を使用して攪拌される。上記攪拌装置は、混合チャンバMCの流体/粒子内容物の混合が効率的なランダム方式で行われ、その結果、粒子濃度(流体懸濁液の単位容積当りの全粒度の粒子の数または任意の与えられた粒度範囲の粒子の数で表される)が、いずれの時点でも混合チャンバMC全体を通してほぼ均一であるように設計されることが理想的である。流体の容量が保持される(一定である)ため、出力ポート42を通して混合チャンバMCを出る希釈された粒子懸濁液は、流動(圧力)平衡の状態に混合チャンバMC内が一旦到達したならば、個々の流量F
SとF
Dの合計に等しい流量Fを有する(数式1)。この希釈された懸濁液は、SPOS式センサ16と配管44を直接通過して、配管18と随意の弁V2を通してドレーンに送られる。なお、弁V2は、CPU/制御器54が発する制御信号D5によって電気式または空気圧式で駆動することができる。
【0082】
図5に示すように、「放出」弁V1を通り管38によってドレーンに接続されている、混合チャンバMCからの追加の出力ポート37があり、弁V1は、CPU/制御器54が発する制御信号C5によって駆動される。これによって、混合チャンバMCの残留空気を、希釈工程開始時に、任意にパージすることができる。新鮮な希釈剤流体を、通常の前記流量F
Dでまたは便宜により大きい流量で、弁V1を開いて、混合チャンバMCが新鮮な希釈剤流体で完全に満たされるまで、混合チャンバMC中にポンプ輸送する。なお、過剰の希釈剤は、弁V1を通って管38によってドレーンに送ることができる。次に、V1を閉じて、混合流試料希釈工程を開始することができる。別の作動モードでは、混合チャンバMCに予め決められた容積Vの流体が入るまで、希釈剤流体を、弁V1を開いて、空の混合チャンバMC中にポンプ輸送する。なお、容積Vは、混合チャンバMCの物理的内容積より小さい。次に、弁V1を閉じ、その結果、空気の空間が、混合チャンバMC内の流体容積Vの上方に残る。次に、希釈工程を通常の方式で始めることができる。
【0083】
測定が完了した後、「アシステッドドレーン」ポンプ(「assisted-drain」pump)48などの流体送達手段を随意に使用して、弁V2を迂回させて、希釈された試料懸濁液および/または送達手段30によって供給される新鮮な希釈剤流体を、恐らくF
Dより高い流量F
Dで、混合チャンバMCから、SPOSセンサ16、配管44および配管46を通して直接引き出して、配管50を通してドレーンに送る。随意のポンプ48は、順次行われる試料の希釈と測定の間に、混合チャンバMC(弁V1を開いて)を迅速に空にして、混合チャンバMCを新鮮な希釈剤流体で洗い流すのに有用である。
【0084】
さきに考察したように、比較的大きな希釈ファクタDFを必要とする用途の場合、試料の流量F
Sは、希釈剤の流量F
Dよりはるかに小さい。このような場合、混合チャンバMCから管42を通って出て、次いでSPOSセンサ16を通過する流体の流量Fは、F
Dにほぼ等しい。SPOS式センサが、比較的限定された範囲の流体流量にしか、最適の感度と分解能を示さないことを認識していなければならない。SPOS式センサを通過する流体の全流量が有意に増加すると、一般に、該センサの性能、したがって、そのような希釈システムを利用するSPOS法に基づいた粒度分析器の得られる有効性が、混合チャンバMCを出る全流体流がSPOSセンサを通過させられると想定して、著しく低下すると予想される。以下に述べるこの発明の実施態様は、この要件を回避する。
【0085】
一般に、希釈剤の流量F
Dを一定に保持し、利用される特定のSPOSセンサにとって適当なまたは最適の値を選択することが通常好ましい。次に、希釈ファクタDF(数式2)を問題のPSA測定を行うために適当なまたは最適の値に調節するため、試料懸濁液の注入流量F
Sを制御システムによって変える。希釈剤の流量は、CPU/制御器54が発する適当な制御信号B5を使用することによって、所望の値に調節することができる。
【0086】
直径の範囲が(公称)0.5〜400ミクロンの粒子を計数し粒度を測定するように設計された光遮断と光散乱を組み合わせたSPOS式センサを利用してこの実施態様を典型的に実施する場合、希釈剤の流量F
Dを1ml/secに固定すると便利である。
図4Aと4Bに関連して先に考察したように、粒子直径の与えられた範囲内の分散粒子相の全容積または全質量の絶対画分の測定を必要とする用途に、上記のような自動希釈装置をPSA装置と組み合わせて使用したいことが多い。このような場合、測定されたPSDから計算することができるこの画分は、DFの計算値が間違っているのと同程度に間違っている。希釈ファクタDFは、数式2に示されているように、F
D/F
S比によって決まるので、F
Dの値の不確かさは、DFの値の不確かさを直接もたらす。したがって、利用される希釈剤送達ポンプのタイプと性能によって、フローゲージ(例えば、電子出力信号を発する)を送達ポンプ30と混合チャンバMCの間に取り付けて、流量F
Dを監視し、手動でまたは負帰還の原理の使用を含む自動手段で、前記フローゲージ由来の出力信号を使い希釈剤送達ポンプ30の出力流量を制御することができるようにすることが必要であるかまたは望ましい。
【0087】
プログラム式の可変速シリンジポンSPが、濃厚試料懸濁液を、与えられた調節可能な流量F
Sで混合チャンバMCに送達することができるいくつもの手段のうちの一つにすぎないことが分かるであろう。この重要な機能を実行するために使用できる別の装置としては、限定されないが蠕動ポンプ(可変速の可変電圧直流電動機またはディジタル制御ステッパモータによって駆動される)、可変速歯車ポンプおよび可変出力「計量」ポンプがある。この機能を実行するため選択されるポンプまたは流体計量装置のタイプにかかわらず、濃厚試料懸濁液の適度に安定した出力流を、広範囲のダイナミックレンジにわたって、電子(または空気圧)手段によって調節可能な流量で提供できなければならない。シリンジポンプを使用することは、濃厚試料懸濁液の非常に正確で再現性のある計量を必要としかつ場合によっては出力流量の大きなダイナミックレンジを必要とする用途に対して、適切である。
【0088】
例えば、ステッパモータの駆動機構を使って利用可能な送達容積増加分の非常に小さい「マイクロ」ステップで、注入時間を、数秒から600秒またはさらに長時間まで変えることができるシリンジポンプが利用可能である。例えば、そのようなプログラム式シリンジポンプ付きの1mlシリンジを使用する場合、例えば5〜500秒の範囲の全注入時間は、0.2〜0.002ml/秒の範囲の流量F
Sになる。さらに、1ml/秒に等しい固定された希釈剤流量F
Dを想定すると、上記数値は、6〜501の範囲内の希釈ファクタになり、すなわち、83.5:1のダイナミクレンジになる。前者の場合、混合チャンバMCを出て、前記センサを通過する希釈された試料懸濁液の流量Fは、1.2ml/秒であるが、後者の場合は、1.002ml/秒である。流量Fの約20%のこの変化は、パーセントベースで十分に小さいので、典型的に、与えられた粒度に対するSPOSセンサ16のアナログ出力信号を含有するパルスの大きさに有意な変化をもたらさない。すなわち、センサの応答、またはパルス高さ(電圧)対粒子直径の「校正曲線」は流量Fの上記範囲にわたって、最小限しか変化しないはずである。
【0089】
一般に、この発明の必須要素ならびに特にこの第一実施態様(および以下に考察するその後の実施態様)の設計の必須要素は、制御信号を使って、シリンジポンプSPの出力流量F
Sを、希釈とPSA測定のプロセスの開始時の両方で、およびその後、随意であるが、「リアルタイム」で調節することである。関連する制御信号A5は、ある種の「負帰還」制御を行うとみなすことができる。典型的に、その信号は、一組のディジタル値であり、直列または並列のフォーマットで、CPU/制御器の電子サブシステム54によって送達される。あるいは、信号A5は、シリンジポンプSPなどの試料送達手段の要件によって、変化するアナログの電圧または電流で構成されている。上記説明によれば、試料送達サブシステム(この場合、プログラム式シリンジポンプSP)の出力流量F
Sを決定するこの制御信号は、粒子計数率、または等価的には、SPOSセンサ16を通過する流体の単位容積当りの粒子濃度、の測定から得られる。
【0090】
瞬間粒子計数率(パルス数/秒)は、簡単な、周知の電子手段によって、SPOS型センサの出力信号から直接得ることができ、その出力信号は、典型的には、「ベースライン」電圧レベル(理論的にはゼロに近い)の上に重なる波高(ピーク電圧)が変わる個々に別個のパルスで構成されている。そのパルス高さは、理想的には、粒子直径が増大するにつれて単調に増大する。希釈ファクタDFの適当なまたは最適の値を決定するために、粒子計数率を、与えられた最小粒子直径に対応して、予め設定された「しきい」値より高いパルス振幅についての1秒当りのパルスの数とすることが多い。また、粒子計数率は、1秒当りのパルスの数から得られるが、粒子直径の所定の選択された範囲内に存在する粒子にのみ対応して、所定の第一しきい値より高くかつ所定の第二しきい値より小さい振幅を有するパルスについてのみ得られる。対応する粒子濃度(やはり、所定のしきい直径より大きいすべての粒子または所定の粒度範囲内の粒子のみの濃度)は、粒子計数率を流体流量Fで割り算することによって、適当な粒子計数率から得られることができる。この計算は、CPU/制御器サブシステム54または、中央制御コンピュータを使用して行うことができる。次に、この粒子濃度の値を使って、適当な制御信号(
図5のA5)を発生させて、濃厚試料懸濁液の混合チャンバMCへの容積注入量F
Sを上げるかまたは下げて、希釈ファクタDFを減らすかまたは増大し、先に定義したように、利用されるSPOS式センサに対し最適の粒子濃度を達成することができる。
【0091】
混合チャンバMC内に残っていて該チャンバMCから出る粒子濃度が定常状態の平衡状態に到達した後(約3τの時間が経過した後、但しτ=V/F)、PSAの測定が始まると、SPOSセンサ16と通過する全粒子の積分容積(total integrated particle volume)または、積分質量は、シリンジポンプSPによって混合チャンバMC中にポンプ輸送または注入されたものと理論的に同じである。一例として、油相(個々の液滴で構成されている)が懸濁液の容積の20%を占めている(すなわち0.2ml/ml)水中油型の出発エマルジョンを想定することができる。さらに、自動希釈システムが241という最適希釈ファクタDFに到達し(F
D=1ml/秒または60ml/minおよびF
S=0.25ml/minで)、そして平衡に達した後、PSA測定の全経過時間が2分間であると測定できる。したがって、これらの想定は、混合チャンバMCに送達され次にSPOSセンサ16を通過する出発試料懸濁液の容積が0.5mlに等しく、その内0.1mlが該センサを通過する油相(液滴)の全容積であることを意味する。
【0092】
連続希釈装置を、一般に、設計しなければならない。数式4から、この選好が、混合チャンバに対する小容積Vの選択または大きな含流量Fの選択またはその両者を意味することは明らかである。上記第二の条件は、事実上、希釈剤の流量F
Dが大きいことを意味する。というのは、上記のように実用上重要な場合はほとんど、DFの値が比較的大きいことが必要であると想定して、F
DがF
Sよりかなり大きいからである。しかし、DF自体の値は、数式2によって表されるように、F
Dの値に左右される。したがって、実際に、τを短くするため、一般に流量F
Dを一定に保つこと、あるいは混合チャンバMCの容積Vを減らすことを一般に選択する。また、混合チャンバの滞留時間を短くするために、混合チャンバMCを出てSPOSセンサ16を通過する希釈された粒子懸濁液の全流量Fを増大すること(希釈剤流体の流量F
Dを増大する結果として)は、一般に望ましくない。
【0093】
小さすぎる混合チャンバMCの容積値を選ぶことは、重大な欠点になることがある。すなわち、混合チャンバMCを出る流体流の粒子濃度が、許容できない大きな変動を起こす危険がある。このような変動は、新鮮な希釈剤と濃厚試料流体が、非常に小さい混合チャンバの容積に入るので、その混合が不十分であることが原因である。いずれにしろ、混合チャンバMCの流体内容物の理想的な混合を達成することが困難な場合が多い。混合プロセスの性質に影響する関連パラメータとしては、限定されないが、混合チャンバの容積と形態、撹拌速度、撹拌部材の形態、渦巻を生じさせるために使用される偏軸(off-axis)の「スポイラ」の介在/設計、カオス的混合、二つの入力流体のポート/インゼクタの設計と配置、および出力流体流のポートの設計と配置がある。
【0094】
したがって、混合チャンバMCを出る希釈された試料流体流の粒子濃度の変動の大きさを最小限にするため、一般に、混合チャンバMCの容積Vを増大して、上記望ましくない変動を「小さく」しなければならない。しかし、大きすぎる混合チャンバMCの容積の選択を避けなければならないことは、明らかである。Vの値が大きくなればなるほど、典型的にSPOS式センサが課する制限のため、これに対応して含流体の流量Fを増やすことができないことを想定して、滞留時間τが長くなる。したがって、容積Vが大きくなればなるほど、混合チャンバを出てセンサに入る流体流の粒子濃度が平衡に達するのに必要な時間が長くなる。
【0095】
その上に、大きすぎる容積Vの値を選ぶことに伴う別の欠点がある。与えられた試料を分析した後、混合チャンバMCは、希釈剤流体で洗い流して、存在している試料粒子の大部分を除いて、次の試料を有意に交差汚染する危険を減らす必要がある。この洗い流しプロセスは、清浄な希釈剤流体を混合チャンバMC中に、長時間、やはり典型的には少なくとも3τの時間送って、混合チャンバMC内に「古い」粒子が無視し得る数しか残っていないように、行われる。もちろん、時間τは、洗い流しプロセス中、混合チャンバMCに入る希釈剤流体の流量F
Dを瞬間的に増やすことによって、減らすことができる。しかし、この要因があるにもかかわらず、他の全ての要因が等しいので、混合チャンバMCの過剰に大きい容積を避けることが依然として望ましい。要約すると、容積Vに対して、最適の値は、上記二つの逆の要求の取捨を考量することによってのみ選択することができる。希釈システムの設計の変更については、この発明の別の実施態様に関連して、後に説明する。
【0096】
SPOS法を利用して粒度の分析を行う用途の場合、該センサを通過する流体流量Fとして25〜100ml/分の範囲を利用することが典型的に要求されている。例えば、60ml/分すなわち1ml/秒というセンサ流量を利用すると便利であることが多い。この場合、撹拌される混合チャンバに対する容積Vの優れた選択は、10〜25mlの範囲内にあり、このとき、対応する滞留時間τは10〜25秒になる。データ収集を開始する前に必須の平衡して安定した粒子濃度に達するため3τという経過時間を選択すると想定すると、対応する待ち時間は、35〜75秒になる。
【0097】
図5に示すこの発明の第一実施態様に従って設計された自動希釈システムの作動の典型的なサイクルを構成するステップを要約することは、有用である。
【0098】
1.システムの初期化を開始するに当って、ドレーンバルブV2は閉じたままで(そして任意にドレーン/洗い流しポンプ48を停止して)、制御信号C5によって、「放出」弁V1を開く。制御信号B5によって希釈剤送達ポンプ30を付勢することによって、混合チャンバMCを、十分な期間、流量F
Dと混合チャンバMC内の流体の望ましい作動容積とに基づいて、新鮮な希釈剤流体で満たす。過剰の希釈剤流体は、弁V1を通ってドレーンへ流出させる。次に、希釈剤送達ポンプ30を、制御信号B5によって停止させ、そして弁V1を制御信号C5によって閉じる。混合チャンバMCの初期化(すなわち充填)がここで完了する。
【0099】
2.混合チャンバMCとセンサ16の洗い流し/洗浄は、ドレーン弁V2を制御品号D5で開き、次いで希釈剤送達ポンプ30を制御信号B5で付勢することによって、達成される。信号B5は、希釈剤送達手段30の出力流量を、システムを洗い流すのに適当な値に調節するのにも利用され、この出力流量は、試料の希釈とPSAの測定を行うのに望ましい流量F
Dを、随意、超えてもよい。混合チャンバMCを出る流体の適当な粒子濃度は、バックグランドの粒子濃度が許容できる予め設定されたレベル未満まで低下したときに洗い流し工程を自動的に停止する「終点」を確認するため、洗い流し工程中、SPOSセンサ16の出力信号のパルス練返し数を監視することによって決定される。
【0100】
3.次に、試料を捕獲し送達するサブシステムを初期化する。制御信号A5で命令されると、シリンジポンプSPのシリンジに、新鮮な試料懸濁液22が配管24を通して充填される。次いで、シリンジポンプSPは制御信号A5によって命令されて、多量の試料懸濁液を配管10に注入して、満たすかまたは「呼び水する」。
【0101】
4.システムは、出発試料の自動希釈を開始する。ドレーン弁V2を、制御信号D5によって開く。制御信号B5を利用して、希釈剤送達ポンプ30を付勢することによって、希釈剤流体の混合チャンバMCへの送達を所望の固定流量F
Dで開始する。濃厚試料懸濁液の混合チャンバMCへの注入は、制御信号A5の指令に基づいて、シリンジポンプSPによって開始される。このアクションによって、希釈流体と試料懸濁液の混合と混合チャンバMCでの試料懸濁液の希釈が行われて、1+F
D/F
Sに等しい希釈ファクタDFに対する特定の出発(「試行」)値が確立する。
【0102】
5.混合チャンバMCを出てSPOSセンサ16を通って流れる希釈試料懸濁液の粒子濃度の初期(すなわち、最大)増加率R
MAX(0)を希釈工程の開始時に測定する。この値から、平衡濃度C
0/DFの適当な予測値が、CPU/制御器54で計算される。(数式8)。
【0103】
6.C
0/DFの計算値は、CPU/制御器54で、利用されるSPOSセンサに対する最適の望ましい粒子濃度と比較されるが、上記粒子濃度は、先に述べたように、オペレータが、自動希釈とPSAプロセスの開始時に、適切な入力手段で、問題の試料用途の場合のSPOSセンサの合致濃度限度および/またはPSDの詳細な構造に基づいて提供する粒子濃度である。この比較に基づいて、所望の粒子濃度を達成するのに必要なDFの新しい値がCPU/制御器54で決定される。DFのこの望ましい値のDFを達成するために必要な新しい試料注入流量F
SがCPU/制御器54で計算される。シリンジポンプSPに新しい出力流量F
Sを採用するように命令するのに必要な適当な制御信号A5が、CPU/制御器54からシリンジポンプSPに送信される。
【0104】
7.濃厚試料と新鮮な希釈剤が、それぞれの流量F
S(新しい流量)とF
Dで混合チャンバMC中に注入され続ける。混合チャンバMCを出てSPOSセンサ16を通過する流体の粒子濃度が必須の平衡に到達するために、約3τの遅延時間を経過させる。
【0105】
8.データをSPOSセンサ16から集めて、集団PSDを構成する直径「チャネル」データの統計的正確さの望ましいレベルを達成するため十分に長い時間、粒子直径の望ましい範囲にわたって、CPU/制御器54または外部コンピュータでPSDを作成する。
【0106】
9.混合チャンバMCを粒子濃度が許容可能な予め設定されたレベル未満に低下するまで、新鮮な希釈剤流体で洗い流して、システムの別の希釈/測定のサイクルに備える。
【0107】
上記考察で示したように、混合流希釈プロセスでより迅速な平衡を達成するため混合チャンバMCの滞留時間すなわち定着時間τを短くして、有効なPSA測定を行うのに必要な全時間を短くすることは有利である。また、原理的に、この目標は、混合チャンバMC内の流体容積Vを減らすか、または混合チャンバMCに入って出る流体の混合流量Fを増やすか、または両方によって達成できることを指摘しておく。第一の変更に実施に対しては、続いて以下に考察する。しかし、ここで流体流量Fを増やすことによって、希釈システムの応答時間τについての改良を検討することは価値がある。
【0108】
図5の第一実施態様の流体工学の設計の簡単な変化が、
図6Aに模式的に示すこの発明の第二実施態様の根拠になっている。
図6Aに示す流体工学システムの設計は、
図5に示す第一実施態様に利用されている設計と極めて類似していることは明らかである。第一実施態様と同様に、
図6Aに示す実施態様は、撹拌される混合チャンバMC、および試料懸濁液の各種の希釈を達成するため、新鮮な希釈剤流体と濃厚試料懸濁液を、それぞれの流量F
DとF
Sで混合チャンバMCに送達する独立した制御可能な手段を使用する。先に述べたように、平衡時の希釈ファクタDFは、1+F
D/F
Sで表される。しかし、この点について、これら二つの実施態様の流体工学設計は著しく相違している。
【0109】
図6Aに示す第二実施態様では、二つの入力流量F
DとF
Sで平衡して、流量F
1で混合チャンバMCを出る流体は、もはやセンサを通過しない。そうではなくて、この混合チャンバMCから出る流体は、CPU/制御器54から発する制御信号D6によって駆動されるドレーン弁V3を随意に通過して、配管58と配管18を通してドレーンに直接流れる。センサは、混合チャンバMCの内部流体内容物から、多量の希釈された試料懸濁液を直接「捕獲」する。配管の湾曲部分64を含む蠕動式ポンプ62として模式的に示した別個の送達手段を使用して、希釈された試料懸濁液を配管60を通して混合チャンバMCから引き出して、配管部分66を通してSPOS式センサ16に、所望の流量F2で連続的に送る。この希釈された試料懸濁液は、次に、CPU/制御器54が発する制御信号F6によって駆動されるドレーン弁V4を随意に通過し、配管68と配管70によってドレーンに流れる。
【0110】
この明らかに小さな設計変更が、
図6Aに示す希釈システムの作動に有意な変化をもたらす。この場合、混合流希釈工程は、希釈された試料懸濁液がSPOS式センサを通過する機能から「切り離されている」。その結果、流量F
1とF
2は同じである必要はない。したがって、この場合、混合チャンバMCの希釈ファクタDFのみならず滞留時間τにも影響する注入流量F
DとF
Sの選択とは完全に独立して、センサの特性と要件に基づいて、F
2の最適値を選択することができる。
【0111】
容易にわかるように、流量F
1とF
2を切り離した結果は重要である。混合チャンバMCに入り、次いで出る全流体流量に対して比較的大きな値を達成するため、センサの流動の要件に関係なくF
DとF
Sに対して比較的大きな値を選ぶことができる。DFの値は、先に述べたように、やはりF
S(またはF
D)を変えることによって調節される。しかし、V/F
1によって与えられる混合チャンバMCの滞留時間τを比較的短くすることができる。この結果は、今度は、希釈システムの応答時間を短くするという価値ある結果をもたらす。すなわち、自動制御システムによってDF値を(例えば、F
Sを変えて)調節した後、混合チャンバMC内が定常状態の平衡とほぼ固定した粒子濃度に到達するためにシステムが必要とする時間が短くなり、信頼性が高く再現性のあるPSAの測定を実施することができる。
【0112】
原理的に、混合チャンバの容積Vを減らす必要なしで、混合チャンバに入って出る流体の流量を単に増やすことによって、比較的短い滞留時間τを達成することができる。F
DとF
Sの両者が、
図5に示す第一実施態様(混合チャンバの流体出力は直接センサを通過する)の設計と同じ設計を利用して、F
DとF
Sが持っている値を超えて、同じ率(same factor)で「スケールアップ」される限り、得られるDFの値は同じままである。しかし、希釈システムは、より迅速に、すなわち、F
DとF
Sを増大するのに使用したのと同じ率で、平衡に達する。
【0113】
数値例は、有用である。
図5に示す第一実施態様では、試料注入流量F
S≒0.01ml/秒を必要とする場合、V=25ml、F
D=1ml/秒およびDF=100を選択できる。混合チャンバMC(およびセンサ16)に入って出る流体の得られる流量はF=1.01ml/秒であり、そして滞留時間τは、V/F≒25/1.01≒24.8秒に等しい。
図6Aに示す第二実施態様の場合、混合チャンバの容積は同じままで、注入される流体の流量を10倍スケールアップしたと想定して出発できる。この想定によって、F
D≒10ml/秒およびF
S≒0.1ml/秒になる。混合チャンバMCを通過する流量の得られる値は、F
1≒10.1ml/秒になり、そして滞留時間τは、V/F
1≒25/10.1≒2.48秒になり1/10に減少する。一方、DFの値は、同じ(100)である。F
DとF
Sの値がさらに増加すると、DFは変わらないままで、τが対応して減少する。
【0114】
図6Aに示すこの第二実施態様に基づいた自動希釈システムの作動は、
図5に示す第一実施態様について先に述べたのとほぼ同じである。A/D(アナログ/ディジタル)変換器とMCA(マルチチャンネル分析器)の電子回路52ならびに付属CPU(中央処理装置))/制御器54によって適切に処理されたSPOSセンサ16の出力は、粒子計数率(粒子数/秒)の値を与える。これは、流量F
2の既知の値とともに、測定可能な全粒度の範囲についての、またはその選択されたセグメントにわたる対応する粒子濃度(粒子数/ml)を与える。SPOSセンサ16の合致濃度限度および関心のある特定の粒度の用途に対する「最適」濃度(先に考察した)に基づいて、上記情報を使用してリアルタイムの制御信号A6を生成することができ、その信号A6を使用して、試料送達手段56を制御して、混合チャンバMCへの濃厚試料懸濁液の注入流量F
Sを調節できる。
【0115】
先に説明したように、適切に高い流量F
DとF
Sを利用することによって混合チャンバの滞留時間τが有意に短くなるため、希釈システムは、平衡を、比較的迅速に、理想的にはわずか数秒間で達成できる。その結果、制御システムは、簡単な順次行う方式でDFの最適値を達成するように設計することができる。例えば、センサの合致限度より実質的に低い最終粒子濃度が得られるように保証された、ある任意に高い希釈ファクタDFで(例えば、比較的小さい値のF
Sを使用して)出発することができる。平衡を達成するのに必要な時間は、比較的短いであろう。したがって、達成された粒子計算率または粒子濃度に基づいて、DFの値を適当な係数で(典型的には、F
Sを増大することによって)減らして、所望の最終濃度に到達することができる。最終濃度を「微調整(fine tune)」するためのDFの追加の変更は、希釈チャンバの滞留時間が短ければ、迅速に達成できる。
【0116】
あるいは、先に考察した最終平衡粒子濃度C
0/DFの迅速推定法を、
図5に示す第一実施態様と関連させて採用し続けることができる。すなわち、CPU/制御器54は、数式7に記載されているように、R
MAX(0)と呼ばれているC(t)のtに対する初期増加率を自動的に測定するように配置構成することができる。次に、C
0/DFの値を、希釈工程が開始されてから短時間の後に、数式8に記載されているように、R
MAX(0)から迅速に推定することができる。このアクションによって、システムは、典型的に、濃厚試料懸濁液の流量F
Sを、CPU/制御器54が発する制御信号A6によって適切に調節することによって、希釈ファクタDFの値を迅速に変えることができる。
【0117】
試料送達手段56は、ある量の濃厚試料懸濁液22を容器20から捕獲して、配管24を通して引き出し、配管10を通して混合チャンバMC内に注入するいくつかの手段のいずれか一つであればよい。これらの手段としては、可変速式歯車ポンプ、可変出力式蠕動形ポンプ、プログラム式シリンジポンプ(例えば、
図5に示す第一実施態様に使用されている類似のポンプSP)、可変出力式流体計量ポンプ(ダイヤフラム型を含む)、または濃厚試料流体を適当な(場合によっては大きな)範囲の流量にわたって送達することができて、CPU/制御器54が発する適切な制御信号A6によって制御することができる他の装置がある。
【0118】
希釈された試料の送達手段62は、
図6Aには、蠕動形可変出力ポンプとして示してある。しかし、濃厚試料送達手段の場合のように、この送達手段は、先に述べたものを含めて、いくつかの可能な別の装置のうちのいずれか一つでもよい。唯一の要件は、上記送達手段の出力流量が、適切に安定していて、かつ所望の値のF
2(典型的には固定の、しかし必ずしも固定でなくてよい)に調節可能でなければならないということである。
【0119】
ポンプ/送達手段62は、
図6Bに示すように、SPOSセンサ16のドレーン側に随意に配置をかえてもよいことは分かるであろう。その結果、希釈された試料懸濁液は、センサ16を通って、押し出されるのではなくて引き出されるので、汚染もしくは損傷するとか、または、さもなければSPOSセンサ16を通過して分析される前にそのPSDが変わってしまう可能性が、低下する。
【0120】
また、
図6Aのセンサ16および
図6Bの送達手段62それぞれの出力側に示すドレーン弁V4は、利用される、希釈された試料の送達手段62のタイプによって必要であるかまたは有であるかにかかわらず任意のものであることにも留意すべきである。また、混合チャンバMCの主要流体流の出力をドレーンに接続するドレーン弁V3の使用も任意の使用である。
【0121】
図6Aに示す第二実施態様が有意な欠点を伴う可能性があることも認識しておくべきである。一旦所望のDF値が達成されると、
図5に示す第一実施態様の必要量と比べてより大量の希釈流体と濃厚試料懸濁液が、それらの注入流量の増加の比率と等しい比率で、与えられた希釈およびPSA測定の期間、必ず消費される。試料懸濁液の場合、このことは、特にDF値が高いとき、ごく少量の試料懸濁液しか使用されないので、典型的に重要でない。一方、比較的大量の新鮮な希釈流体が必要であるが、流体の種類およびそのコストと利用度と廃棄の要件によっては、有意な不利益をもたらす。
【0122】
次に、混合流希釈法の滞留時間もしくは応答時間τを減らす、すなわち、混合チャンバの流体容積Vを減らす、上記第二の方法を検討することは有用である。この方法は、
図7Aに模式図で示すこの発明の第三実施態様の基礎となっている。
【0123】
第三実施態様では、「混合チャンバ」がかなりの流体容積(典型的には、≧10ml)を有する別個の撹拌される容器から撹拌部材を全く必要としない有効容積が非常に小さい(典型的には、1〜3ml、またはこれより小さい)「スタティック」ミキサSMに発展している。この周知の装置は、個々に到達する流体流の流れを分裂させる方式で、管またはパイプ内の流体流の経路を切断するように配列された静止部材の渦巻き状ネットワークで構成されていて、個々の流れのカオス的流れを誘発して、確実に、これらの流れは徹底的に混合されてから、その流体混合物が該スタティックミキサを出る。スタティックミキサを出た得られる希釈された試料懸濁液は、均一であること、すなわちその懸濁液を通して粒子濃度が均一なことが理想的である。流体混合工程の滞留時間τは、センサを通過する希釈された試料懸濁液の全流量F(F
D+F
Sに等しい)を変える必要なしに、ごく短い時間、実際に1〜3秒またはこれより短い時間まで短くすることができる。
【0124】
新鮮な希釈剤流体は、前の二つの実施態様に記載したのと同じ方式で、送達手段/ポンプ30によって、希釈システムのスタティックミキサSMに送達される。希釈剤流体は、典型的には直径がスタティックミキサSMの直径と類似している主配管84を流れる。濃厚試料懸濁液22は、
図7Aに示す配管の湾曲部分を含んだモータドライブ74とポンプヘッド76を含む蠕動式ポンプとして示した試料送達手段74/76によって、配管72を通して容器20から捕獲される。その試料懸濁液は、配管77を流れ、次に適切な注入装置82、例えば細いチューブ、オリフィスまたは中空針によって、スタティックミキサSMの上流の主流動管84、配管86およびセンサ16に注入される。希釈ファクタDFは、先に述べたように、典型的には、固定流量F
Dで配管84を流れる希釈剤流体の流れの中に注入される濃厚試料懸濁液の流量F
Sを変えることによって、調節される。平衡に到達した後に達成されるDFの値は、前の実施態様の場合と同様に、F
D/F
S比によって決定される。濃縮試料懸濁液の注入流量F
Sは、CPU/制御器54が発して試料送達ポンプ76の駆動手段(例えば電動機)74に加えられる適当な制御信号A7で、送達ポンプ74/76の出力流量を変えることによって調節される。
【0125】
図7Aに示すシステムのその外の部材は、最初の二つの実施態様に利用される部材に実質的に類似している。ドレーン弁V6は、随意の弁であるが、配管88を通してSPOSセンサ16から出る希釈された試料懸濁液流を配管90を通してドレーンに導くのに使用され、そしてCPU制御器54が発する制御信号C7によって駆動される。CPU/制御器54が発する制御信号D7によって駆動される試料バイパス弁V5を用いて、配管72、76および77に入っている未使用の濃厚試料懸濁液を配管78と80を通してドレーンに方向転換させるか、または、随意であるが、希釈工程とPSAの測定が完了した後、試料ソース22に戻す。このような作用は、新しい試料の捕獲と希釈に備えてシステムを洗い流すときに有用である。最初の二つの実施態様の場合と同様に、
図7Aに示した蠕動式ポンプ74/76は、濃厚試料懸濁液をインゼクタ管/オリフィス82に送達するのに有効であると見なされるいくつもの他の手段のうちのいずれか一つ(例えば
図5に示すシリンジポンプSP)で置き換えることができる。
【0126】
この第三実施態様に基づいた自動希釈システムの全作動は、第一実施態様について先に詳細に述べたのと実質的に同じようである。しかし、有効容積が非常に小さいスタティックミキサSMを使用することによって得られるこの実施態様の挙動は、最初の二つの実施態様で利用されている大容積の通常の撹拌される混合チャンバと比べて、重要な定量上の差がある。その差は、希釈工程の平衡に達する速度である。定着時間(settling time)または応答時間τの定量上の改良は、この第三実施態様の挙動の定量的差が原因である。すでに指摘されているように、混合「チャンバ」の有効「容積」は、この実施態様において第一と第二の実施態様に採用されている一層伝統的な希釈法を使用して得られる有効容積に比べて著しく減少した。この第三実施態様に利用されている有効混合容積の実際の大きさは実際に測定することが困難である。しかし、非常に重要なことはシステムに対するその主な作用である。すなわち、希釈機の滞留時間τの有意なおそらくは強烈な低下である。したがって、スタッティックミキサSMを出てSPOSセンサ16に入る流体流の粒子濃度が試料流体または希釈剤流体の注入流量が制御システムによって変えられた後、不可欠の定常状態の平衡に到達するのにごく短い時間、典型的には数秒間もしくはそれ未満しか必要でない。最終試料希釈ファクタDFは、事実上、ほとんど瞬間的に調節できる。
【0127】
応答時間は、原理上、このような小さい混合容積を有効に使用することによって有意に減らすことができるので、異なる種類の制御システム、すなわち、従来の「負帰還」式によく類似しているシステムを設計し、利用できる。濃厚試料懸濁液の注入流量F
Sが変化すると、ほぼ瞬間的に新しい安定した値の希釈ファクタDFに換算される。したがって、DFの最終の最適値は、出発試料懸濁液が最初に希釈剤流の流れに注入された後、殆ど直ちに(すなわち、ほんの数秒後)、システムが決定して実施できる。
【0128】
実際に、このことは「最適」粒子濃度がこの第三実施態様に基づいた自動希釈システムによって、各種の簡単な制御「アルゴリズム」を使用して達成することができることを意味する。例えば、上記自動希釈システムは、DFの比較的大きな「トライアル」な値、すなわち、最終粒子濃度が、対象の特定の用途によって(または、単にセンサの合致限度によって)決まるかまたは確立される「最適」濃度より十分に低いことを保証するように設計された値を使用して、出発試料懸濁液の希釈を開始するようにプログラムすることができる。試料懸濁液を流動システムに最初に注入してからわずか数秒後、希釈工程が最終平衡に到達した。
【0129】
次に、制御システムは、より大きい所望の粒子濃度に到達するため、現行の出発DF値をいかなる比率で低下させるべきかを容易に決定することができる。次いで、試料注入流量F
Sをそれに従って(すなわち、DFの所望の低下とほぼ同じ比率で)増加させることができる。さらに、追加の数秒が経過した後、希釈工程は、新しいより大きい定常状態の粒子濃度(粒子濃度および試料注入流量F
Sから決定された)で、再び平衡に到達した。この濃度が所望の値により近づくように「微調整」をする必要がある場合、試料の注入流量F
Sを適当な小さい比率で増減することができる。F
Sのこの変更は勿論、CPU/制御器54からの適当な制御信号A7を試料送達手段74/76に送信することによって達成される。
【0130】
希釈工程中、時間が経過するにつれて、センサを通過する希釈された試料懸濁液の粒子濃度を、同じ方式で定期的に調節して、例えば試料が不安定なことからもたらされる「一次」粒子の時間依存性の凝集が原因の出発試料の粒子濃度の変化を修正することができる。この場合、試料中の最大粒子の濃度は時間の経過とともに増大するので、おそらく時間の経過とともに希釈ファクタDFを増大する必要がある。この性能は、希釈工程を制御するため「負帰還」を有効に利用する優れた例を提供し、試料調製中、懸濁液および分散液の粒度分布を長期間「オンライン」監視するのに特に有用である。
【0131】
試料懸濁液の注入流量F
Sの変化に対する希釈システムのこの迅速な、事実上リアルタイムの応答によって、先に述べたような、最終平衡濃度C
0/DFを推定して、DFの値を「早く」修正するため、粒子濃度の初期変化率R
MAX(0)を決定する必要が、今やなくなっている。むしろ、最終粒子濃度は、今や原理上非常に短い時間で得ることができ、最適の「望ましい」濃度は、DFの値を(F
Sを調節することによって)適当に改変することによって、迅速にかつ簡単に達成することができる。
【0132】
図7Aに示す模式図からわかるように、この第三の実施態様を実施するのに必要な部材の数は、最初の二つの実施態様に必要な部材の数より少ない。しかし、
図7Aに示す計画には、少なくとも二つの起こりうる欠点があることを認識することは有用である。第一に、その設計そのものによってスタティックミキサはより大きく重い粒子をトラップ(trap)したりまたは分離したりしやすく、該ミキサから出る懸濁液に内在しているPSDが変化し、そしておそらくミキサがつまる。したがって、第三実施態様で行われる方法は、比較的微細な粒子、理想的なのは、懸濁液中でコロイドであって比較的安定な、沈降する傾向がほとんどない粒子の懸濁液に使用されるときが最も有効である。ゆっくり移動する流体流中で容易に沈降する傾向があるより大きい粒子は、スタティックミキサの設計と利用される流体流量によっては、スタティックミキサと両立しないことが多い。
【0133】
第二に、本願に記載の目的を達成するためにスタティックミキサを有効に使用するには、流体の流量、実際には希釈流体の流量が、F
D>>F
Sの場合、混合装置内で有効な混合を起こすのに十分に高いということが前提条件である。このことはスタティックミキサの大きさと設計に左右される。しかし、多くの既存のSPOS式センサの典型的に望ましい流量が50〜100ml/分とすると、上記想定は特に非常に微細なコロイド粒子の懸濁液に対して有効なことが多い。さもないと、有効な混合を達成するのに有意に高い流体流量が必要になる。この問題の一つの可能な解決策は、第二実施態様に利用されている方法を採用することである。すなわち、F
DとF
Sの両者を実質的に増大して、混合流体の流量Fを、スタティックミキサによる有効な混合を達成するのに十分高くする方法を採用することである。この新しい流量は、SPOSセンサが最適に作動するにはおそらく高すぎるので、スタティックミキサからの出力を、流量が異なる二つの流体流に分割する(例えば、配管の異なる断面積に基づいて)。出力流の高流量の部分をドレーンに導き、一方希釈された出力流の低流量の部分を測定のためSPOSセンサを通過させる。
第四実施態様の説明を始める前に、先に考察された自動希釈計画の小さいが潜在的に有用な変形を検討することは有用である。この「改変された」第三実施態様に対して動機付けがなされたのは、何種類かの粒子懸濁液の場合、試料懸濁液を、試料送達手段すなわちポンプなどの送達装置と直接接触させることを避けることが望ましいことが分かっているからである。これは、粒子がポンプ機構を通過するとき粒子を損傷する(例えば、破損する)ことまたは内在する粒度分布を別の方式で変化させる(例えば、凝集の促進で)ことを避けるためである。あるいは、濃厚試料懸濁液がポンプと接触しないようにして、粒子がポンプ機構の固体表面に付着するために行う時間がかかって問題があるポンプの洗浄を避けることが望ましい。
【0134】
図7Bに示す改変システムは、
図7Aで採用したのと同じ濃厚試料懸濁液の基本的希釈法を利用する。先に述べたように、試料懸濁液は、(典型的には、固定の)F
Dで流れる希釈剤流体の流れに、調節可能な流量F
Sで注入される。スタティックミキサSMは、これら二つの流体流を効率的に混合して、平衡時の希釈ファクタDF=1+F
D/F
Sで、希釈された試料懸濁液のほぼ均一な流れを生成し、その均一な流れはSPOSセンサ16を通過する。しかし、
図7Bに示す計画は、一つの点で、すなわち出発濃厚試料懸濁液の捕獲された部分が、該懸濁液を試料インゼクタポート82に送達するのに使用される機械的送達手段から物理的に分離されている点で、
図7Aに示す計画と異なっている。
【0135】
適当な長さの配管79または適当な容積と形態の他の適切な容器が、試料の「捕獲貯槽」として働き、続いて希釈剤流体の流れ84に注入すべきある量の濃縮試料懸濁液を保持することができる。CPU/制御器54が発する制御信号D7’とE7それぞれによって駆動される二つの三方弁V7とV8を使用して上記タスクを達成する。弁V7とV8がポジション「1」に切換えられると、流体は、各弁のポート「C」と「1」の間を流れることができる。逆に、V7とV8がポジション「2」に切換えられると、流体は各弁のポート「C」と「2」の間を流れることができる。
【0136】
希釈工程を開始するとき、弁V7とV8は、CPU/制御器54が発するこれら弁それぞれの制御信号D7’とE7によって、ポジション「1」に切換えられ、この考察のために小さな正圧下にあると想定される外部ソース(
図7Bに示していない)からの濃厚試料懸濁液を、配管78’、弁V7、「捕獲貯槽」(配管)79、弁V8および最後に配管80’を流れさせる。次に、その試料懸濁液は、ドレーンに廃棄するかまたはその元のソースに戻して再循環することができる。CPU/制御器54の指令のもとに、弁V7とV8の両者がポジション「2」に切り換えられて、捕獲貯槽79を新鮮な試料懸濁液の流れに対して閉鎖する。これら二つの弁の間の配管79の全長内に入っている試料懸濁液は、試料インゼクタポート82によって、流れている希釈剤流体が入っている管84中注入するのに利用できる。
【0137】
CPU/制御器54が発する適当な制御信号A7が、
図7Bに蠕動式ポンプとして示されている送達手段74/76に加えられ、該ポンプに、希釈剤流体22を容器20から配管72を通して引き出して、配管77を通して押し出すように命令する。配管77’を通してポンプ輸送される流体(場合によっては、ある量の残留空気が加わることがある)は、試料懸濁液とポンプ機構を互いに接触させることを必要とせずに、「流体送達体」として働いて、配管79内に入っている試料懸濁液を、弁V8から配管81へ押し出すことができる。配管81に残っている前の自動希釈サイクル由来の残留試料懸濁液が、配管81から、注入管/オリフィス82を通して、主希釈剤流管84中に(配管81が有する容積によって適切な時間遅延の後)放出された後、新鮮な濃厚試料懸濁液が、注入管/オリフィス82に到達して、管84内を流れる希釈剤流体の流れの中に注入され始める。
【0138】
希釈工程のこの時点で、
図7Bに示すシステムは、
図7Aで前に説明したのと同じ方式で機能する。適切な時間(例えば、約3τ、なおτは、有効容積が非常に小さいスタティックミキサの場合、典型的に2〜3秒またはそれより短い)が経過した後、スタティックミキサSMを出てSPOSセンサ16に入る希釈された試料懸濁液は、ほぼ一定の濃度に到達した。次に、この濃度は、管79中に捕獲された前記濃厚試料懸濁液の「後」に送達される希釈剤流体の流量を、制御可能な送達手段74/76で変えて、希釈ファクタDFを適当に変えることによって迅速に調節することができる。濃厚試料懸濁液の得られる流量F
Sは、手段74/76によって送達される希釈剤流体の流量と必ず等しい。手段74/76および捕獲貯槽79(すなわち、比較的長くて細い配管)の設計からの希釈剤流体の流量が一般に比較的小さいとすると、送達手段74/76によって供給された希釈剤流体と、配管79に入っている濃厚試料懸濁液との混合度は比較的低いはずである。試料懸濁液の配管79を流れる移動は「プラグ流れ」の状態に似ているはずである。しずれにしろ、注入管/オリフィス82に最も近い試料懸濁液の部分は、装置が適正に設計されたと想定して、送達手段74/76で供給される希釈剤流体によって、無視できる希釈を経験するはずである。
【0139】
試料の希釈およびPSAの測定が完了した後、弁V8は、制御信号E7によって、再びポジション「1」に切り換えられる。このアクションによって、手段74/76によって送達される希釈剤流体が、捕獲貯槽79にまだ残っている試料懸濁液を、弁V8と配管80を通して押し出してドレーンに放出する(または、元のソースに戻す)ことができる。また、このアクションは、配管79を希釈剤流体で洗い流して、次の希釈/測定のサイクルが始まる際に新鮮な濃厚試料懸濁液が到着するのに備えるのにも役立つ。弁V8と注入管/オリフィス82の間の配管81の中に残っている試料懸濁液は、データ獲得を開始できるまで適切な時間待って、前の試料の後の配管81内の空間を、新鮮な試料懸濁液で占めさせることによって、管84内の希釈剤液中に注入して次の希釈サイクルの開始時には無視される。
【0140】
この発明の第四実施態様の簡略化模式図を
図8に示す。前の三つの実施態様と異なり、この計画は、二段階の希釈機構を利用し、二つの混合チャンバと、希釈剤流体を送達しそして試料懸濁液(元のまたは予備希釈された試料懸濁液)を注入する二組の手段とを備えている。出発濃厚試料を希釈するこのより複雑な方法は、前の諸実施態様を越える二つの有意な利点を提供する。
【0141】
第一に、この二段階の計画は、一段階の希釈計画を利用して高い信頼性と再現性で他の方法で得ることができる値よりはるかに大きい値の希釈ファクタDFを達成できる。予備希釈された試料懸濁液を第二混合チャンバMC2に供給する第一混合チャンバMC1を使用することによって、
図8に示す設計は、比較的小さいDF値(すなわち、10〜100またはこれより小さい)から非常に大きいDF値(すなわち、10,000以上)までの範囲のDF値を達成できる。希釈ファクタのダイナミックレンジがこのように増大することは、組成、濃度および粒度分布が広範囲に異なる試料懸濁液に適用する場合、非常に有用であろう。
【0142】
この二段階の実施態様には、別の可能性がある有意な利点がある。
図8に示す設計は、懸濁された流体中で迅速に沈降しがちな大きくおよび/または高密度の粒子の有意な集団を含有する試料の希釈を容易にする。一般に、このような試料は、前の三つの実施態様で利用された典型的な送達手段を使用して、比較的低い流量F
Sで混合チャンバに効率的に注入できない。しかし、このような「難しい」試料は、
図8に示す、この第四実施態様で採用される方法を用いて比較的容易に処理できる。
【0143】
第一混合チャンバMC1を使用して、「第一段階」、すなわち、出発濃厚試料懸濁液の予備希釈を行う。その出発試料は、CPU/制御器54が発する制御信号E8によって電気式または空気圧式で駆動される「試料注入弁」V9を使用して、混合チャンバM1に都合よく導入される。弁V9がその「オフ」状態(付勢されていない)のとき、試料捕獲ループ120が、試料入力配管118と試料出力配管122に直列に接続される。また、希釈剤流体入力配管125は、出力配管123に接続される。弁V9が制御信号E8によって「オン」状態(付勢されている)に切換えられると、試料捕獲ループ120は、配管125および123に直列に位置し、
図8に示す状態になっている。このアクションによって、希釈剤流体が、捕獲ループ120の中に入っている試料懸濁液を弁V9から押し出して、配管123を通して混合チャンバMC1に入れる。混合チャンバMC1は、所望の場合、試料懸濁液を手動で導入できる追加のポート100を備えている。
【0144】
上述のように、弁V9の主な機能は、一定の予め定められた容積の試料懸濁液を外部ソースから「捕獲」し、続けて、指令にしたがって、予備希釈チャンバMC1に入れられる希釈剤液体の流れと直列に「挿入」することができることである。しかし、この機能は、
図7Bに示すように、配管79の全長で接続された二つの三方弁V7とV8によって提供することもでき、これらの弁と配管は捕獲ループ120の機能を果たす。しかし、
図7Bに示す弁V7とV8のような二つの三方弁ではなくて、
図8に示すV9のような単一の「六方」弁を使用すると二つの利点がある。第一に、単一の部材を使用することによって明らかに簡潔になり、単一の制御信号しか必要でない。第二に、一層重要なことであるが、V9のような六方注入弁を使用して、その弁の「オフ」状態による「短絡」を提供することによって、追加の性能が付与される。これによって、試料懸濁液が捕獲ループ120を満たしているかどうかにかかわらず、所望により、希釈剤流体を配管125から配管123に直接流入させることができる。
【0145】
希釈工程を開始する前に、混合チャンバMC1は、新鮮な希釈流体で満たされねばならない。第一「放出」弁V1を、CPU/制御器54が発する制御信号C8によて開く。さらに、三方弁V12が、やはりCPU/制御器54が発する制御信号F8によって、ポジション「1」(ポート「C」と「1」が接続される)に切り換えられる。希釈剤送達手段/ポンプ128が、CPU/制御器54が発する制御信号B8によって付勢されて、新鮮な希釈剤流体を、容器110から配管126を通して引き出し、次いで、弁V12と配管125を通しそして弁V9および配管120と123を通して混合チャンバMC1中に、所望の流量F
D1で押し出す。混合チャンバM1中への希釈剤の流れは、混合チャンバMC1から弁V1と配管108を通して残留空気を放出しかつ混合チャンバMC1の完全な洗流しができるように所望の流量F
D1で十分長時間維持され、その結果MC1内の汚染粒子の濃度が許容可能な低レベルまで低下する。次に、弁V1を制御信号C8によって閉じ、弁V12を制御信号F8によってポジション「2」に戻し、次いで希釈剤発送手段/ポンプ128も制御信号B8で停止させて、新鮮な希釈剤流体の混合チャンバM1への流れをとめる。
【0146】
同様に、希釈工程を開始する前、一般に、第二混合チャンバMC2は、新鮮な希釈剤流体で洗い流し、洗浄し次いで満たす必要がある。これは、第二「放出」弁V11を、CPU/制御器54が発する制御信号G8によって開き、弁V12をポジション「2」のまつにしておき、そして希釈剤流体送達手段/ポンプ128を、制御信号B8によって、所望の流量F
D2で付勢することによって達成される。次に新鮮な希釈剤流体を、送達手段/ポンプ128によって、弁V12(ポート「C」と「2」)と配管130を通して押し出して、混合チャンバMC2に入れる。残留しているトラップされた空気と過剰の希釈剤流体は、混合チャンバMC2から、配管138、弁V11および配管140を通ってドレーンへ流れる。混合チャンバMC2中への希釈剤流体の流れは、チャンバM2の適切な洗流し/洗浄を確実に行うのに十分に長時間維持される。
【0147】
混合チャンバMC2、実際には、混合チャンバMC1とMC2の両方を、試料希釈工程を開始する前に、新鮮な希釈剤流体で洗い流し、洗浄し次いで満たすことができる、より簡単な別の方法があることに注目すべきである。弁V11を開く代わりに、制御信号C8を使用して、単にV1を開いてもよい。すると、希釈剤液体が、送達手段128によって、弁V12と配管130を通して、混合チャンバMC2中にポンプ輸送される。過剰の液体は、混合チャンバMC2を出て、上方に流れて(
図8に示すように)、混合チャンバMC1の中に入る。混合チャンバM1中の過剰流体は、次に混合チャンバMC1を出て、弁V1と配管108を通ってドレーンに流れる。この方法を利用すると、両混合チャンバを同時に、新鮮な希釈剤流体で洗い流し、洗浄し、次いで満たすことができ、弁V11と出力配管138が必要でなくなる。
【0148】
希釈工程を開始する前に、容積が△V
S(この△V
Sは、適当な大きさと長さの一本の配管を使用して、所望の値に予め選択することができる)の試料捕獲ループ120を、濃縮試料懸濁液で満たさねばならない。GPU/制御器54が発する制御信号D8によって駆動される弁V10が開かれる。このアクションによって、
図8には図示していない外部ソースから得られかつ正圧下にあると想定される濃厚試料懸濁液が、入力配管118を通して弁V9に流入し、試料捕獲ループ120を通過し、弁V9から逆行し、出力配管122と弁V10を通過し、次いで配管124を通ってドレーンへ出て行く(または、随意に元の試料ソースまたは他の容器に戻る)。次に、配管120内の濃厚試料懸濁液を「捕獲する」ため、制御信号D8によって駆動される弁V10を閉じる。
【0149】
ここで、試料希釈工程を開始することができる。第一に、「放出」弁V1を制御信号C8によって開き、次いで、弁V12を制御信号F8によってポジション「1」に切り換える。新鮮な希釈剤流体を、希釈剤送達ポンプ128によって、制御信号B8で所望の値に調節された出力流量F
D1で、配管126を通して容器110から引き出す。その希釈剤流体は、弁V12と入力配管125を通過して弁V9に入り、次に試料捕獲ループ120を通過してその前方の捕獲された試料懸濁液を押し出し、出力配管123を通って弁V9から逆行して第一混合チャンバMC1に入る。このアクションは、捕獲ループ120に入っている量の試料懸濁液を、混合チャンバMC1に送達する働きをする。次に、弁V12を制御信号F8によって切り換えて、ポジション「2」に戻す。希釈剤流体は、試料懸濁液の容積ΔV
S全体を押し出すのに丁度十分な時間であってそれより長くない時間、流さなければならない。このように、容積ΔV
Sの試料は、混合チャンバMC1内に最初滞留している希釈剤流体の等しい容積の分量だけを置換する(その滞留希釈剤流体は、弁V1を通して出す)。混合チャンバMC1内の予備希釈された試料懸濁液は、
図8に示すような巻き線104と付属回路手段と磁気撹拌バー102を備えた電磁撹拌機を使用するか、または代わりに機械的撹拌機構を使用して、混合される。
【0150】
ちょうどこの時点に、混合チャンバMC1には予備希釈された試料懸濁液が入っており、ここで「第一」希釈ファクタDF1が、近似的に式V
1/ΔV
S(式中、V
1は混合チャンバMC1中に入っている流体の容積である)で表される(V
1は、混合チャンバMC1が、試料注入の時点で、希釈剤流体で一部分しか満たされていない場合、混合チャンバMC1の物理的内部容積より小さい)。用語「近似的に」は、上記のように使用する場合、DF1が上記理論値に正確には等しくないということを意味する。なぜならば、混合チャンバMC1が最初試料注入の時点に、新鮮な希釈剤流体で満たされた場合、注入される試料懸濁液の小部分が、典型的に弁V1を通してドレーンに失われるからである。次に、混合チャンバMC1内に滞留している予備希釈された試料懸濁液は、混合チャンバMC2と試料/希釈剤/注入/送達のための付属手段によって行われる希釈工程の第二段階の「試料」のソースとして使用される。希釈システムの第二段階は、
図5に示す第一実施態様の単一段階希釈システムによく似ている。
【0151】
図8にプログラムシリンジポンプ96として示されている可変出力流体送達装置(第一実施態様に関連して
図5に示してあるシリンジポンプSPに類似している)は、CPU/制御器54が発する制御信号A8によって命令されて、一定量の希釈剤流体92を配管94と入力ポートP1を通して捕獲してシリンジを満たす。次に、制御信号A8によって、シリンジポンプ96は、希釈剤流体を出力ポートP2と配管98を通して、制御された(そして調節可能な)流量F
D3で、混合チャンバMC1中に放出する。希釈剤流体は、非圧縮性なので、このアクションによって、混合チャンバMC1内に滞留している予備希釈された(希釈ファクタDF1によって)試料懸濁液は、同じ流量F
D3(
図8にF
1として示す。F
1=F
D3)で出力配管132を通って出て、混合チャンバMC2に入る。希釈工程のこの段階では、弁V13が、CPU/制御器54の発する制御信号H8によって開かれたと想定する。
【0152】
希釈工程中、混合チャンバMC1に、連続ベースで入る新鮮な希釈剤流体によって、混合チャンバMC1を出て混合チャンバMC2に入る流体の粒子濃度は、時間の経過とともにさらに希釈される。この粒子濃度は、時間の経過とともに指数関数的に減衰し、その減衰の時定数τはV
1/F
D3に等しい。しかし流量F
D3は典型的には小さく、チャンバM1の容積V
1は比較的大きく、そして全希釈/測定時間は比較的短いので、時間の経過とともに混合チャンバMC1を出て混合チャンバMC2に入る試料懸濁液のこの追加の希釈度は無視できることが多い。
【0153】
弁V12をポジション「2」のままにしておいて、ポート「C」と「2」を接続する。新鮮な希釈流体110がCPU/制御器54の発する制御信号B8によって調節される出力流量F
D2で、希釈剤送達手段128によって、配管126を通して引き出されて、配管129、弁12および配管130を通して押し出される。その希釈剤流体は、連続して混合チャンバMC2に流入し、その流体/粒子内容物は、
図8に示すような巻線136と付属回路手段と磁気撹拌バー134を備えた電磁撹拌機、または代わりに適切な機械式撹拌機構によって連続的に撹拌される。
【0154】
混合チャンバMC2内が混合工程中平衡に到達したとき(先に述べたように、平衡時の応答時間または滞留時間τはV
2/F2に等しく、式中V
2は混合チャンバMC2内の流体容積であり、そしてF2=F
D2+F
D3である)、流量F2=F
D2+F
D3で混合チャンバM2を出てSPOSセンサ16を通過する試料懸濁液は、混合チャンバMC1内に滞留している予備希釈された試料懸濁液に比べて、さらに希釈されている。第「二」の希釈ファクタDF2は全流量F
D2+F
D3/予備希釈された試料の流量F
D3の比率によって表される。したがって、この二段階自動希釈システムによって達成される全希釈ファクタDFは、
(数9) DF=DF1×DF2=(V
1/ΔV
S)(1+F
D2/F
D3)
で近似的に表される。
【0155】
他の実施態様について先に述べたのと同様に、第二段階の希釈剤流体の流量F
D2は、通常SPOSセンサが最適の作動をするために推奨される値で一定に保持される(典型的には、25〜200ml/分の範囲内)。したがって、この二段階装置による出発試料懸濁液の全希釈度DFは、希釈剤流体の混合チャンバMC1内への注入流量F
D3を、プログラム式シリンジポンプSP装置などの可変出力希釈送達手段96で変えることによって、典型的に調節される。前に定義し考察したように、SPOSセンサを通過する希釈された試料懸濁液の「最適」粒子濃度を達成するため、上記流量は、CPU/制御器54が発する制御信号A8を利用して自動的に制御される。
【0156】
上記装置の第一段階で達成される希釈ファクタDF1は、全希釈ファクタDFの値に対して下限を実効的に設定するので、最終的に望ましい最終の希釈ファクタDFより大きくない、典型的には、10〜100の範囲内のDF1の値を利用することが便利である。例えば、混合チャンバMC1の容積V
1が50mlに等しい場合、ΔV
Sは5ml(DF1=10)と0.5ml(DF1=100)の間で変動する。希釈剤流体送達手段96によって提供されるF
D3の利用可能な範囲によって、DFの値は、しかるべく調節することができる。例えば、第二段階の希釈流体の流量F
D2を60ml/分すなわち1ml/秒にし、第一段階の希釈流体の注入流量F
D3を0.1〜0.001ml/秒にすることができる。DF1=10の場合、最終希釈ファクタDFは、110〜10,010の範囲内である。DF1=100の場合、DFは1,100から100,100まで変動する。
【0157】
次に、上記二段階自動希釈工程の変形を検討することは、有用である。自動混合流希釈を実施する前に最初の予備希釈段階を利用することは、粒子濃度と粒度分布が広範囲に変化する試料に対処するという大きな利点がある。第四実施態様に採用された計画の唯一可能性がある有意な欠点は、第二混合チャンバM2の容積V
2が典型的に比較的大きいと考えられると、第二段階が平衡に達するのに必要な時間である。したがって、
図8に示す通常の撹拌される混合チャンバMC2を、
図7Aと7Bそれぞれに示す第三実施態様とその変形に利用されているスタティックミキサSMで代替することを検討することは、有用である。
【0158】
第三と第四の実施態様の最も有用な特徴を組み合わすことが、
図9に模式的に示す第五の好ましい実施態様の基礎になっている。
図9に示す第5実施態様の第一予備希釈段階の流体工学システムの設計は、
図8に示す第四実施態様に採用された設計を改変したものである。
図9では、試料捕獲弁V9が
図8に示す希釈剤送達手段128(および弁V12)と予備希釈チャンバMC1の間ではなくて、予備希釈される試料の「送達」手段96と予備希釈チャンバMC1の間に配置されている。流体工学設計のこの変更は、以下に考察するように少なくとも二つの点で有利であろう。
【0159】
図9に示す第5実施態様には、
図8に示す実施態様からの第一混合チャンバMC1、付属回路手段付きの巻線104と磁気撹拌バー102を備えた電磁撹拌機、濃厚試料捕獲ループ120、試料懸濁液供給パイプ118、希釈剤源110と92(全く同一にすることも随意)、希釈剤送達手段96と128、弁V1、V9、V10およびV12、ならびに
図8の実施態様の上位説明に記載されている配管に類似している(が全ての点で同一ではない)付属配管が組み入れられている。
図9に示す実施態様には、
図7Aに示す実施態様からの、
図7Aの流動管84に対応する流動管85,スタティックミキサSM、配管86、SPOSセンサ16,配管88、弁V6およびドレーンに至る配管90が組み入れられている。
図9において、予備希釈された試料懸濁液は、予備希釈チャンバMC1から、
図7Aに示す配管77に対応する配管133と注入ノズル82を通してSPOSセンサ16の上流の配管85中に送られる。前の実施態様の全てと同様に、SPOSセンサ16が、制御信号A9〜G9を発するCPU/制御器54と連通しているAD/MCA52(アナログ/ディジタル変換器とマルチチャンネル分析器)に、ライン51で検出された信号波形を提供する。これらの部材とサブシステムの作動は、
図7Aと8の実施態様の上記説明に関連して十分詳細に説明したので、
図9の実施態様の作動を完全に説明する必要はない。しかし、
図9における主要部材の配列は、
図8と比べて変えたので、
図9の好ましいシステムの作動は要約する必要がある。
【0160】
先に述べたように、CPU/制御器54が発する制御信号E9によって駆動される自動試料注入弁V9を使って試料捕獲ループ120内の予め定められた容積ΔV
Sの多量の濃厚試料懸濁液を、外部ソースから配管118を通して捕獲する。捕獲ループ120に充填中、弁V9がその「オフ」状態にあり、そして弁V10が開に切り換えられているとき、試料懸濁液が辿る流体経路は、すでに説明した。しかし、
図9に示すシステムの第一予備希釈段階の設計と作動は、
図8に示す第四実施態様に利用されている計画の設計と作動と比べると有意な差があるので証明する必要がある。
【0161】
図9において、試料「送達」手段96を用いて、希釈剤液体を予備希釈チャンバMC1中に注入し、予備希釈された試料懸濁液を、制御可能な流量F
D3でチャンバMC1から出して、流量F
D1で流れる希釈剤液体とスタティックミキサSM内で混合して、
図8の第四実施態様に関連して説明したように、試料懸濁液の第二希釈を達成する。しかし、
図9に示すシステムは、
図8に示すシステムと異なり、弁V9と、したがって試料捕獲ループ120を、試料「送達」手段96と予備希釈チャンバMC1の間の流体経路に配置している。
【0162】
この設計変更の結果、希釈剤流体手段/ポンプ128ではなくて試料「送達」手段96を利用して、容積△V
Sの濃厚試料懸濁液を捕獲ループ120から予備希釈チャンバMC1中に押し出す。
図9に示す第五実施態様で利用されている流体工学の設計のこの変形によって、自動希釈システムの全性能が改良される。第一に、最も重要なことは、この新しい計画によって、捕獲された容積△V
Sの濃厚試料懸濁液を、予備希釈チャンバMC1中に、一層高い正確さと再現性で注入できることであり、これは、適当な混合容器(すなわち、
図8に示す攪拌される混合チャンバMC2および
図9に示すスタティックミキサSM)内で、予備希釈された試料懸濁液と混合するため、希釈剤流体を管85中に連続的に送達する、
図8と9で利用されている希釈剤流体送達手段128のようなより一般的な送達ポンプを使用する場合より、
図8と9の両方に利用されているプログラム式シリンジポンプSPのようなより正確で制御可能な送達手段が使用されるからである。シリンジポンプSPは、一般に、弁V9と試料捕獲ループ120を通過する希釈剤流体の流れをより正確に制御できるので、捕獲された試料懸濁液の全容積△V
Sを、無視できる「アンダシュート(undershoot)」と無視できる「オーバシュート(overshoot)」で、予備希釈チャンバMC1に入れることができ、そしてある量の希釈剤流体が予備希釈チャンバMC1中へ意図的ではなく注入される。
【0163】
図9に示す第五実施態様の予備希釈段階で使用される改変流体工学的設計に伴う第二の利点がある。試料捕獲と予備希釈の工程が完了した後、第二段階の連続希釈工程が開始されるが、この第二段階の連続希釈工程は、
図8の第四実施態様に関連して記載したように、新鮮希釈剤を予備希釈チャンバMC1に、制御可能な流量F
D3で連続的に注入する必要がある。
図9に示す新しい計画の場合、希釈剤流体は、同じ装置、すなわち、先に述べたように濃厚試料懸濁液を予備希釈チャンバMC1中に「送達」するのに使用された送達手段96によって送達される。その結果、希釈剤流体は、予備希釈チャンバMC1へ向かう経路の弁V9、試料捕獲ループ120および配管125と123を通して連続ベースで流される。このアクションによって、最初の予備希釈工程中、上記流体経路内に残された(すなわち、表面に付着して)濃厚試料懸濁液の残留量(少量であると推定できる)を、予備希釈チャンバMC1中に洗い出す有用な目的が達成される。
【0164】
捕獲された試料が予備希釈チャンバMC1内に注入される前に、チャンバMC1は、
図8に示す第四実施態様に記載されているように新鮮な希釈剤流体で、洗い流して満たす。CPU/制御器54が発する信号B9で制御される送達手段128で供給される新鮮な希釈剤流体は、弁V12(状態「1」)を通してポンプ輸送されて、配管127を通して、予備希釈チャンバMC1中に直接進む。過剰の流体は、弁V1(制御信号C9によって開に切り換えられている)と配管108を通してチャンバMC1から出てドレーンに至る。希釈剤流体による予備希釈チャンバMC1の適当な洗い流し/洗浄を確実に行うのに十分な時間が経過した後、当該流体工学システムの残りの部分を任意に洗い流して洗浄して、バックグランドの汚染粒子の濃度を許容可能な低いレベルまで低下させることができる。予備希釈チャンバの出口ポート133、配管135およびインゼクタ/オリフィス82からなる、予備希釈された試料懸濁液の流動経路は、CPU/制御器54が発する制御信号C9によって弁V1を閉じ、そしてCPU/制御器54が発する制御信号G9によってセンサドレーン弁V6を開いて、洗い流される。したがって、新鮮な希釈剤が、チャンバMC1の洗い流し/洗浄に関連して先に述べたように、予備希釈チャンバMC1内に、流し込まれ、次に、チャンバMC1から配管133と135およびインゼクタ/オリフィス82を通して主流動管85に流し込まれ、スタティックミキサSMとセンサ16を通過し、次いで、配管88、弁V6および配管90を通してドレーンに排出される。インゼクタ/オリフィス82と弁V12を継続する主流動管85からなる当該流体工学システムの残りの部分は、弁V12を制御信号F9によって状態「2」に切り換えて、希釈剤流体を送達手段128によって供給して管85、スタティックミキサSM、センサ16、配管88、弁V6および配管90を流動させてドレーンに至らせることによって、新鮮な希釈剤流体で洗い流すことができる。
【0165】
これらの洗流し/洗浄の操作中、発送手段128を制御する信号B9によって決定される希釈剤流体の流量F
D1は、これらの操作を完了するのに必要な時間を短くするため、センサに対して適当でかつPSAの測定を実施するのに利用される「通常」の流量を越えて、典型的に著しく増大される。同時に、当該流体工学システムに残っている粒子の濃度は、粒子計数率(測定可能な全粒度の範囲内、または代わりに所望によりその一部について)を監視し、次いで、その情報を、既知の希釈剤の流量F
D1を使用して等価の濃度に換算することによって求めることができる(続いて、PSAを測定中、F
D1を、前記センサにとって適当なその「通常の」値まで低下させることが通常望ましい)。
【0166】
システムを十分に洗い流し/洗浄した後、自動試料希釈を開始することができる。弁V9に連結されたループ120によって先に捕獲された容積△V
Sの濃厚試料懸濁液を、試料「送達」手段96で供給される希釈剤流体を使用して、予備希釈チャンバMC1中に導入する。このステップが完了した後、チャンバMC1には、希釈ファクタDF1=V
1/△V
Sの予備希釈された試料懸濁液が入っている。この予備希釈された試料懸濁液は、このとき、送達手段128によって(制御信号F9で状態「2」に切り換えられた弁V12を通して)供給される流量F
D1の希釈剤流体を運ぶ流動管85中に、(出口ポート133、配管135およびインゼクタ/オリフィス82を通して)注入できる状態になっている。
図8に示す第四実施態様に関連して述べたように、試料「送達」手段96を使用して、新鮮な希釈剤流体92を、調節可能な流量F
D3でチャンバMC1中に(配管94、98、125および123を通して)送達して、等しい量の予備希釈された試料懸濁液を、予備希釈チャンバMC1から出させ、次いで、同じ流量で、管85内の希釈剤流体の流れの中に(出口ポート133、配管135およびインゼクタ/オリフィス82を満たした後)注入させ、次に、スタティックミキサSM中に注入させる。これら二つの流体は、スタティック混合手段SM内で混合されて、理想的には、スタティックミキサSMを出て、センサ16を流量F=F
D1+F
D3で流れる流れに均一な粒子濃度を与える。
【0167】
スタティックミキサSM内の混合工程が不可欠な平衡に到達した後、すなわち、約3τが経過した後、ここに、τは、スタティックミキサSMの「セトリング(settling)」時間または滞留時間(典型的には、数秒間以下)であるが、第二段階の工程で得られる追加の希釈度が、DF2=F/F
D3=1+F
D1/F
D3によって表される。この希釈システムの挙動を、
図8に示すシステムの挙動と比較した場合の本質的な差は、原理上、第二希釈段階の応答時間τを、
図8に示す攪拌される混合チャンバMC2の容積より有効容積がはるかに小さいスタティックミキサSMを使用することによって、はるかに短くすることができるということである。その上に、上記装置は単純化されて、追加の攪拌部材と関連部品は必要でない。
【0168】
出発試料懸濁液の性質および「最適」粒子濃度を予め決定するために確立された基準によって、自動制御システムは、予備希釈チャンバMC1に送達される希釈剤流体の流量F
D3を、
図8に示す第四実施態様に関連して前に記載したように適当な制御信号A9を使用して試料送達手段96によって増減させて、第二段階の希釈ファクタDF2を増減させる。十分な時間(すなわち、2τ〜3τ)が経過して粒子濃度が不可欠の平衡に到達した後、PSDを、粒子直径の望ましい出発しきい値を使用して、通常の方式で得ることができる。許容可能な統計的確かさの試験結果を得るため十分なデータが集められたとき、送達手段96は、制御信号A9によって命令されて、希釈剤流体の予備希釈チャンバMC1への送達を停止する。次に、当該流体工学システム全体は先に述べた方式で洗い流すことができる。
【0169】
この発明の第五実施態様の変形を、
図10に模式的に示す。出発濃厚試料を希釈するのに使用する各種の手段は、上記
図9に見られる手段と同一である。制御信号E9によって駆動される試料捕獲弁V9を使用して、濃厚試料懸濁液の既知容積△V
Sを、試料捕獲ループ200内に捕獲する。次に、この量の試料を、予備希釈チャンバMC1内に入っている容積V
1の新鮮希釈剤中に注入して、元の試料懸濁液の粒子濃度を、予備希釈ファクタDF1で低下させる。なお、そのDF1は、
図9に示す第五実施態様の場合と同様に、V
1/△V
Sにほぼ等しい。
【0170】
可変出力式のプログラマブルシリンジポンプとして
図10に示す試料「送達」手段96は、制御信号A9によって命令されて、新鮮希釈剤流体を、ソース92からチャンバM1中に、制御された流量F
D3で送達する。このアクションによって、チャンバMC1に滞留している予備希釈された試料懸濁液が、配管133と135を通して同じ流量F
D3で出て、注入ノズル/オリフィス82を通して主流動管85に注入される。一方、新鮮希釈剤が、信号B9によって制御される流量F
D1で送達手段128によって管85を通して流される。なお、その流量F
D1は、一般に一定であるが必ずしも一定ではない。希釈剤流体と予備希釈された試料懸濁液は、スタティックミキサ内で混ぜ合わされ、ランダムに混合されて、ミキサSMを流量F
D1+F
D3で出る流体は理想的には粒子濃度が均一である。混合流工程で達成されるチャンバMC1内に入っている予備希釈された懸濁液の追加の希釈度は、
図9の第五実施態様について先に述べたように、DF2=(F
D1+F
D3)/F
D3=1+F
D1/F
D3で表される。
【0171】
先に説明したように、少量の希釈剤流体を、送達手段96によって予備希釈チャンバMC1に連続して添加すると(比較的低い流量であるが)、チャンバMC1に入っている予備希釈された試料懸濁液は、さらに希釈され、時間の経過とともに連続して少しずつ希釈度が増大する。この追加の希釈は、指数時間従属性であり、チャンバMC1を出る流体内の粒子濃度は、先に述べたように、またNicoli他の米国特許第4,794,806号に一層詳細に記載されているように、指数計数exp(−V
1/F
D3)に従って時間の経過とともに低下する。先に指摘されているように、チャンバMC1を出る予備希釈された試料懸濁液のこの連続的な希釈度(通常小さいが)の効果は、上記指数関数を使用して比較的正確に計算することができ、その結果、単位時間当たりスタティックミキサSMを出てSPOSセンサ16を通して流れる元の試料物質の量に対するその効果は、定量的に求めることができる。そのような計算によって、試料に対するより正確な「物質(容積)収支」を求めることができる。すなわち、半径がd≧d
0である粒子についてPSDをSPOS方式で測定した後、測定されたPSDの与えられた一部分で表される。SPOSセンサを通過する全粒子の全容積のフラクションを求めることができる。
【0172】
図10に示す計画は、唯一の有意な点で、
図9に見られる計画と異なっている。スタティイックミキサSMを出る二重に希釈された試料懸濁液の流れは、この場合、先に述べたようにSPOS式センサ16だけを通過するのではなくて、懸濁粒子に感度のある追加の装置を通過することができる。管86を通してスタティイックミキサSMを出る希釈された懸濁液は、この発明の五つの実施態様全てについて先に述べた「通常の」方式で分岐管152とSPOSセンサ16を通して流されるか、または代わりに、分岐管152、およびSPOS法とは全く異なる技法を使用して試料懸濁液の別の種類のPSD測定を実施するため使用される適当な光散乱セル156を流れさせる。装置SMからの出力流体は、CPU/制御器54が発する制御信号G9とH9それぞれによって、弁V6を開き(典型的には、配管90を通してドレーンに至る)弁V14を閉じることによって、SPOSセンサ16と管88を通って流れさせることができる。代わりに、装置SMを出る流体は、やはり同じそれぞれの制御信号によって、弁V16を閉じて弁14を開く(典型的には、配管160を通してドレーンに行く)ことによって、散乱セル156と管158を通して流れさせることができる。
【0173】
図10に示す追加の別のSPA測定法は、光子相関分光法(PCS)としても知られている動的光散乱法(DLS)である。レーザダイオード162などのコヒーレント光源を使用してコリメートされた光ビームを提供し、その光ビームはレンズ163によって散乱セル156の中心に集中させる。前記セル内の懸濁された粒子によって散乱される光の一部が光学的素子164(例えば、適当な大きさで、散乱光の光源から離れているピンホール)と光ファイバ166によって捕獲されて、適切な検出器、例えば、光電子増倍管、すなわち「PMT」168に散乱光の信号Jとして送信される。懸濁された粒子のランダムブラウン運動または拡散によって生じた結果のPMT検出器の光電流の変動を、信号調整手段(signal conditioning means)169(前置増幅器および直流レベル弁別回路)によって適当に信号を整えた後、典型的には、プロセッサ170内のディジタル自己相関器(digital auto correlator)を用いて電子的に処理し、得られた自己相関関数は、前記懸濁された全ての粒子の全強度重み付けPSDのレプリゼンテーションK(representation K)を得るため、適当な数学的アルゴリズムでインバート(invert)される(一層物理的に意味がある容量重み付けPSDは、古典的な(ミー)光散乱理論によって提供される散乱強度と(球形)粒子の直径との関係を利用して、強度重み付けPSDから得られる)。前記レプリゼンテーションKは、CPU/制御器54、および任意に外部コンピュータにも入力として送られる。
【0174】
DLS技法を利用して得たPSDは、試料懸濁液中の全ての粒子の粒度分布の大体の「概観」を提供する。周知のDLS法は、大部分の粒子が1ミクロンより小さい「ほとんどサブミクロン」の試料のPSDの特性を決定するのに有用である。次に、SPOS法を利用して、一般に0.5μmまたは1.0μmより大きいPSDの大直径の「テール」の相補的で詳細な「クローズアップ」写真を提供する。
図4Aと4Bに関連して先に述べたように、PSDのこの外側の「テール」部分に含まれている全粒子容積画分は、安定性または最終の物理学的特性もしくは化学的特性による試料の不良挙動の発生と強い相関関係があることが多い。PSDのテール部分が、試料中の粒子全体の容積または質量のごく小さい画分にすぎないにもかかわらず、前記強い相関関係があることが多い。
図10に示す第五実施態様の変形の目的は、殆どがサブミクロンの試料の全PSDの「概観」を含み、当該システムに利用されるSPOSセンサの感度範囲の外側にある大部分(すなわち、SPOSセンサの検出可能/測定可能の最小粒子より小さい)を含む全ての粒子に対して応答するPSD測定法を、この出願に記載の自動希釈システムを使用して行うことができることである。
【0175】
周知のとおり、DLS法は「アンサンブル法」であり、この技法では、多数の粒子が、発生する「信号」すなわち与えられた散乱角における散乱光の強度に同時に寄与している(
図10には散乱角90°の例が選ばれている)。得られるPSDは、散乱光強度から得られた量、すなわち、強度自己相関関数を数学的に処理することによって得られる。この状態は、SPOS法とは際立った差がある。すなわち、SPOS法では、単一の粒子がセンサの活性検出ゾーンを通過するとき、「信号」(電圧の単一パルス)が単一の粒子を示すのに十分な程度まで試料は通常さらに希釈されなければならない。したがって、先に述べた自動希釈システムを
図10に示す別のDLSサブシステムとともに使用する方式は、SPOSセンサだけについて前に述べた操作とは異なっている。
図10に示すように、連続方式でSPOSセンサとDLS光学システムの両者に「供給」するよう設計されている二重段階自動希釈システムについて、作動の典型的なシーケンスを説明することは、有用である。
図10に示し以下に考察する結合SPOS−DLSの計画は、他の四つの実施態様に示す自動希釈システムと組み合わせて利用することもできることに注目し、理解しなければならない。
【0176】
DLS法は、一般に、希釈された試料懸濁液が静止していて流動していないことが必要である。光学的システムによって捕獲され、電子的に処理され、次いで数学的に分析されて得られる、散乱光強度の特定時間の変動は、したがって、懸濁された粒子の拡散によるランダムブラウン運動から適正にもたらされるものである。散乱光の信号は、長時間、典型的には、3〜5分間以上、集め、処理し、次いで分析しなければならず、その必要な時間は、許容可能な正確さと安定性を有するPSDの計算結果を生成するため、自己相関関数に必要な統計的正確さのレベルによって左右される。したがって、第一に、DLSサブシステムに対する適当な希釈ファクタを確立することによって、結合SPOS−DLSシステムの自動希釈工程を開始し、その結果、DLSザブシステムがSPOSサブシステムに対する別の通常異なる希釈ファクタを確立する前に、データの蓄積と処理を開始できると便利である。
【0177】
したがって、制御信号G9とH9それぞれによって弁V6を閉じたままで弁V14を開くことによって、測定シーケンスを開始することが通常好ましい。したがって、SM装置を出る希釈された試料懸濁液は、SPOSセンサ16を通過させるのではなくて、散乱セル156を通過させる。次に、自動希釈工程を、
図9に示す第五実施態様について前に述べた方式と類似の方式で開始する。もちろん、そこには重要な差がある。今回の場合、光学的な素子164と光ファイバ166が捕獲した、散乱セル156内の懸濁された粒子のアンサンブルによって生成した散乱光信号Jの平均強度を使用して、前の全ての実施態様に記載されているように、SPOSセンサ16から得られるある粒度範囲の粒子計数率または等価の粒子濃度を使用せずに、第二希釈ファクタDF2の値が正しいかどうかを、信号Kによって、自動希釈システムに報告する。
【0178】
順次自動希釈工程を開始する前に、オペレータは、最も信頼性が高くかつ正確なPSDの結果を、最短時間で達成するため、CPU/制御器54の操作ソフトウェア中の制御メニュへの入力、または適当なスイッチ、電位差計または他のハードウェア入力装置によって、DLSサブシステムが最適に作動するために達成すべき平均散乱光強度の望ましいレベルを、想定しなければならない。一方、平均散乱強度のレベルが低すぎると、自己相関関数内の許容できない高いレベルの統計的ノイズ、および懸濁化流体中の不純物やDLSサブシステム中の他のノイズ源に対する過剰感度が生じる。一方、散乱強度のレベルが高すぎると、粒子間の相互作用および/または多重散乱の作用が原因で、自己相関関数と得られる計算PSDの歪みをまねく。一般に、PMT検出器が、100〜500kHzの範囲内で生成する平均ホトパルスレート(photopulse rate)として表される平均散乱強度のレベルが選択される。
【0179】
したがって、自動希釈システムは、典型的に、前記光信号Jに応答する高感度PMT検出器168などの適切な検出装置のホトパルスレートの出力を監視することによって、散乱光強度の信号Jを準速続的に監視するように設計される。次に、自動希釈システムは、セル156から得られる平均散乱光強度を上下させるため、SM装置を出て散乱セル156に入る流体流の粒子濃度を、予備希釈チャンバMC1中に導入される希釈剤流体の流量F
D3を増減することによって調節して、予備希釈された試料懸濁液を、同じ流量でチャンバMC1から出して,SM装置中に流量F
D1で流入する希釈剤流体と混合して、先に述べたように、通常の方法で、1+F
D1/F
D3に等しい第二希釈ファクタDF2が得られる。典型的には、この自動希釈システムは、平均散乱光強度が、固定され予め定められた値、例えばPMTホトパルスレートの300±100kHzの許容可能な所定のパーセントの範囲内にある値に到達したとき、上記のように、予備希釈された試料注入流量F
D3の変化に続いて、ほぼ3τの適切な遅延時間(τ=V
SM/(F
D1+F
D3)、式中V
SMは、SM装置の混合有効容積である)に続いて、DF2の最終の適切な値に到達したことを認識するように設計される。
【0180】
この強度の「エンドポイント」に到達すると、PMT検出器の出力ホトパルス信号(適切な増幅器と直流レベル弁別電子回路169によって追加して予備検査される)に応答するCPU/制御器54が、同時に制御信号H9とG9のそれぞれによって、弁V14を閉じて弁V6を開くよう命令する。このアクションによって、続いてDLSを測定するのに適当な粒子濃度を有する二重に希釈された試料懸濁液の一部が、散乱セル156内に捕獲され、そして希釈された試料懸濁液の流れが、SPOSセンサ16に方向転換され、連続的にセンサ16を流れ、次いで配管90を通してドレーンに至る。
【0181】
この時点で、自動希釈システムは、前に詳細に述べたように、制御信号A9によって命令される送達手段96によって予備希釈チャンバMC1内への希釈剤流体の注入流量F
D3を調節することによって、第二希釈ファクタDF2の値をもう一度再調節し始め、その結果、SPOSセンサ16を通過する希釈された試料懸濁液の粒子濃度の最適値(または望ましい値)が達成される。粒子の計数と粒度のデータを集めてCPU/制御器54のメモリに記憶させ、次にSPOSサブシステムに対しして得られるPSDが作成されてメモリに記憶され、即時の表示もしくはその後の表示などの用途に利用される。適切な期間(オペレータが自動希釈・測定工程開始時に事前設定するかまたはDLSの試験結果の「質(quality)」の分析から決定される)が経過した後、DLSサブシステムから得られるPSDは、即時もしくはその後の表示などの用途に使うため、SPOSサブシステムから得られるPSDとは別個にまたは組み合わせてメモリに記憶させる。
【0182】
散乱セル156内の希釈された試料懸濁液から得られる散乱強度Jは、数式3で表されるSPOS法に適切な同じ関数依存性を有する混合流希釈工程が開始されてから時間の経過とともに変化すると解すべきである。この場合の差は、t依存性の粒子濃度C(t)が、J(t)で表されるt依存性散乱強度によって置き換えられていることである。
図10に示すスタティックミキサ内(または適切な場合、撹拌される混合チャンバ内)が平衡に達した(すなわちt>>τ)後の散乱強度の最終値はJ
Fで表され、このJ
Fは、SPOS法の場合の数式3の量(C
0/DF)に代わる値である。したがって、
図10に示すDLSサブシステムに対して数式3は実効的に、
(数9) J(t)=J
F[1−e
(-t/τ
)]
に置き換えられる。
【0183】
SPOS法について先に考察したのと同様に、散乱強度のR(t)とも称呼される瞬間増加率を求めることができ、そしてその値から、最終の平衡値J
Fを比較的迅速に推定できる。この場合、R(t)はJ(t)の時間に関する微分として定義される。数式9から計算すると、
(数10) R(t)=dJ(t)/dt=J
F(1/τ)e
(-t/τ
)
となる。
【0184】
先に述べたR
MAX(0)で表される最大の増加率は、やはりt+0で起こる。すなわち、
図10に示すスタティックミキサSM中に予備希釈された試料懸濁液の注入を開始した直後に起こる。この最大増加率は、
(数11) R
MAX(0)=J
F/τ=J
F(F/V)
で表される。
【0185】
次に、散乱強度の最終平衡値J
Fを、SPOSの場合の数式8の希釈された試料の最終濃度C
0/DFを得るために利用した手順と同様の手順で、R
MAX(0)から得ることができる。
(数12) J
F=τR
MAX(0)=(V/F)R
MAX(0)
前記最終推定散乱強度J
Fが、先にの述べたように、PMT手段168等の適切な検出手段に対し適当なまたは最適の値の事前に設定した範囲内に入るように、CPU/制御器54を前記J
Fを下げるかまたは増大するのに必要な数値ファクタで、先に述べたように、希釈ファクタDFを増大するかまたは下げるようにプログラムした。
【0186】
十分に希釈された試料懸濁液の場合、その散乱強度Jは、粒子濃度に比例するので、粒子濃度に関連する量として特徴付けることができると解すべきである。
【0187】
R
MAX(0)からのJ
Fの推定に関するこの同じ説明が、DLS法の代わりの下記測定法にも当てはまると解すべきである。
【0188】
試料の全PSDの特性を決定するためのDLSとは異なるが、光散乱に基づいた別の「アンサンブル」法があり、この方法は、
図10に関連して述べたように、この発明の自動希釈システムと組み合わせて利用できると解すべきである。
図10に示す光散乱計画は、90°の散乱角を利用する。しかし、この計画は一般化することができ、角度を変えられるので、動的光散乱法(DLS)の代わりに古典的な、すなわち「静的」光散乱法に適合できる。
【0189】
古典的な、すなわちミーの散乱法の場合、粒子の適切な希釈懸濁液が生成する散乱強度は、適切な角度範囲にわたって、散乱角の関数として測定される。得られる強度(拡散による変動の効果を除くため時間経過に対して平均した強度)は、一般に光波の粒子間(ミー)干渉が原因で散乱角によって変動する。角度依存性散乱強度のデータを近似粒度分布(PSD)に変換するために、適切な転換(inversion)アルゴリズムが必要である。
【0190】
図10に示す光散乱サブシステムは、古典的な光散乱を利用してPSDを測定するのに使用できるように容易に変形することができる。散乱角を組織的に変える手段を提供することが必要な全てである。例えば、光学的素子手段164と光ファイバ手段166は、ともに剛性アームに取り付けられ、そのアームは順にステッパモータ(stepper motor)のシャフトに取り付けられ、そのモータの回転軸線は、散乱セル156の中心(垂直)軸線と交差している。この場合、光学的検出素子は、CPU/制御器54が発する適当な制御信号をステッパモータに加えることによって、所望の散乱角の位置に配置することができる。
【0191】
このように変形された
図10に示すシステムは、光学的素子164と166をPMT手段168によって所望の角度の全セットにわたって測定すべく予め選択された強度にわたって自動的に「走査」するように製造することができる。各角の信号は、手段169によって適切に検査され(時間の経過とともに平滑化することを含む)、手段170によって処理され、次いで、CPU/制御器54または外部コンピュータに記憶される。処理手段170を使用し、散乱強度対角度のデータを適当なアルゴリズムで「転換(invert)」することによって、試料の近似PSDを計算することができる。
【0192】
古典的光散乱を使用してPSDを測定するため
図10に示す計画(適切に改変されている)をこのように利用する場合、先に説明した自動希釈システムは、特定の角度、典型的には、90°における平均散乱強度を角度を変えて実質的に増減させて、中位の大きさの特定の値に調節されるように、最終粒子濃度を調節することによって、ファクタDFの最適値を確立することは指摘しなければならない。上記DLSの場合と異なり、散乱セル156内の希釈された試料懸濁液は、古典的な光散乱の方法の場合、静止していても流動していてもよい。
【0193】
CPU/制御器54は、それが上記のように実施する全ての機能を提供するように適切にプログラムされると解すべきである。これらの機能には、次のような入力メニュの提供が含まれている。すなわち、使用される特定のSPOSなどのセンサの使用者による決定と装置を使用したい特定の用途に対する適当な許容可能な最小限の統計的正確さの決定、このデータからの最適の希釈ファクタの決定必要な全ての計算必要な全てのデータの記憶、および上記のような装置の全ての機能を制御するための全ての適当な制御信号の適時の生成を行う入力メニュである。さらに、これらの機能は、全体または一部を、適切にプログラムされた単一もしくは複数の外部コンピュータが提供できると解すべきである。
【0194】
この発明を、特定の実施態様ならびにこれら実施態様の変形、代わりの装置および異形に関連して説明してきたが、この発明は、これら特定の実施態様と変形に限定されず、本願の特許請求の範囲にのみ限定されると解すべきである。