【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、独立特許請求項による主題および方法によって達成される。主題および本方法の有利な実施形態および修正形態は、従属請求項に記載されており、以下の説明および図面においてさらに論じる。
【0011】
少なくとも一実施形態によると、エピタキシ基板は、核形成層を備えている。エピタキシ基板(いわゆる擬似基板と称されることもあり、特に、少なくとも核形成層が上に配置された基板を備えている)は、窒化物化合物半導体材料の半導体積層体の成長基板として使用される。基板(例えば、サファイア、シリコン、またはSiCを含んでいる、またはこれらの材料からなることができる)は、特に、核形成層の成長基板として使用され、核形成層は基板の上に直接形成される。したがって、特に、本明細書に記載されているエピタキシ基板の基板は、いわゆる非ネイティブ基板(窒化物化合物半導体材料を含んでいない)とすることができる。核形成層は、例えばオプトエレクトロニクス半導体チップを製造する目的で、窒化物化合物半導体材料の半導体積層体をエピタキシ法(例えばMOVPEまたはMBE(分子線エピタキシ))によって上に成長させることのできる表面を提供する。
【0012】
「GaN系材料」、「(In,Al,Ga)N系化合物半導体材料」、「窒化物化合物半導体材料」などの用語は、特に、III−V族化合物半導体材料系の材料In
xAl
yGa
1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)(すなわち例えばGaN、AlN、AlGaN、InGaN、AlInGaN)を含む材料を包含する。
【0013】
核形成層は、少なくとも1層の第1の層を備えており、この第1の層は、アルミニウム酸窒化物(AlON)であり、カラム構造を有する。AlONからなる、核形成層の第1の層は、基板の上に直接形成されている。カラム構造は、特に、核形成層の第1の層が、基板から離れる方向に延びるカラムを備えているように形成することができる。カラム構造のカラムは、さらなる層(特に、窒化物化合物半導体材料からなる半導体層)を高い結晶品質で上に形成することのできる結晶表面を提供することができる。
【0014】
窒化物化合物半導体材料のためのエピタキシ基板の製造方法においては、基板を形成する。さらなる方法ステップにおいて、AlONからなる少なくとも1層の第1の層を備えた核形成層を、基板の表面の上に直接形成する。
【0015】
以下に説明されている特徴および実施形態は、エピタキシ基板と、エピタキシ基板の製造方法とに等しくあてはまる。
【0016】
別の実施形態によると、核形成層、および特に、AlONからなる第1の層は、700℃以上1000℃以下の温度で形成される。約1000℃の上限温度は、臨界限界を表しており、なぜなら、1000℃を超える温度で形成される半導体層はもはや核形成層として形成されないためである。800℃以上の温度が好ましい。さらには、900℃以下の温度が特に適している。特に、825℃以上、かつ/または、875℃以下の温度、すなわち例えば850℃を中心として±25℃の範囲内の温度が特に好ましい。カラム構造を有しAlONからなる、核形成層の少なくとも1層の第1の層は、記載した温度において、好ましくはMOVPEによって、特に好ましくはスパッタリングによって、堆積させることができる。この代替方法として、MBE、ハイドライド気相成長法(HVPE)、化学蒸着法(CVD)、または原子層堆積法(ALD)も可能である。
【0017】
(Al,In,Ga)Nからなる公知の核形成層(低い温度で堆積され、いわゆる低温核形成層)の場合とは異なり、本明細書に記載されている方法においては、核形成層は大幅に高い温度で形成される。本明細書に記載されている核形成層では、上述した長時間の温度ランピング(temperature ramp)(制御するのが難しいが、低温核形成層を形成する前および後のさまざまな方法ステップにおける温度領域が異なるため必要である)を回避することができる。例えば、本明細書に記載されている方法においては、核形成層、および特に、カラム構造を有しAlONからなる少なくとも1層の第1の層を堆積させるときの温度と、核形成層の上にさらなる層を堆積させるときの温度との差を、200℃未満、好ましくは150℃未満とすることができる。
【0018】
核形成層を形成する目的で、特に、AlONからなる少なくとも1層の第1の層を形成する目的で、例えば、O
2と混合されるN
2もしくはH
2またはその両方をベースとするガス源を使用することができる。さらには、蒸気圧飽和器(vapor pressure saturator)(バブラー)、すなわちいわゆるH
2Oバブラーを通じてキャリアガスに加えられるH
2Oを使用することも可能である。さらには、例えば、アルミニウムをベースとし酸素を含む有機金属ガス源、例えば、ジエチルアルミニウムエトキシド、またはジエチルアルミニウムエトキシドとトリメチルアルミニウムの混合物を使用することも可能である。核形成層、特に少なくとも1層の第1の層を成長させる方法において供給される酸素含有ガスの量を制御することによって、AlONからなる少なくとも1層の第1の層における酸素濃度を制御することができる。
【0019】
さらには、例えば、核形成層が上に形成される基板の表面を酸素によって終端する(terminated)ことも可能である。この目的のため、例えば、基板を、O
2プラズマ中で調整することができる。このように基板表面を酸素によって終端することにより、AlN核形成層を作製するために従来使用されているガス源によってもAlONが成長する。特に、サファイア基板をO
2プラズマによって調整することができ、なぜなら、サファイア表面を酸素によって終端することにより、特にサファイアとAlNの界面にAlONを成長させることができるためである。さらには、例えば原子層堆積法によって基板の上にアルミニウム酸化物を堆積させることも可能であり、これによってもAlONの形成が促進される。
【0020】
酸素を供給するための上述した酸素源または方法は、互いに組み合わせることもでき、例えば、酸素による表面の調整と、酸素を含むガスの供給を組み合わせることができる。酸素によって基板表面を調整する、基板の表面の上にアルミニウム酸化物を堆積させる、酸素または酸素を含むガスの供給量を制御する、のうちの少なくとも1つを行うことによって、AlONからなる少なくとも1層の第1の層における酸素含有量を制御することが可能である。
【0021】
別の実施形態によると、AlONからなる少なくとも1層の第1の層のカラム構造は、0.1%以上30%以下の酸素含有量を有する。酸素濃度は、成長方向に変化する、またはカラムごとに変化してよいが、つねに指定した範囲内であることが好ましい。核形成層の少なくとも1層の第1の層の酸素含有量は、核形成層の少なくとも1層の第1の層のカラム構造において基板からの距離が大きくなるにつれて減少するように制御されることが好ましい。核形成層、特に、AlONからなる第1の層における酸素濃度は、例えば、二次イオン質量分析法(SIMS)によって測定することができる。
【0022】
AlONからなる少なくとも1層の第1の層は、擬似連続的なAlON層が形成されるように密集したカラム構造のカラムを有することができる。言い換えれば、このことは、基板の側の面に少なくとも1層の第1の層を連続的に形成することができ、基板とは反対側の面に、基板から離れる方向に延びるカラムを備えていることができることを意味する。基板の側の面は、例えば連続的な層(すなわち、隙間のない、または実質的に隙間のない層)として形成することができる。さらには、基板の側の、AlONからなる少なくとも1層の第1の層の面が、隙間(例えば含有空気)を備えていることも可能である。AlONからなる少なくとも1層の第1の層が連続的であるかまたは少なくとも擬似連続的である場合、基板の側の面において個々のカラムは結晶粒界のみによって互いに隔てられていることが好ましい。したがって、個々のカラムは、少なくとも1層の第1の層が個々の島の形で成長し始めて、これらの島が基板表面に沿って互いの方に成長して互いに接触する一方で、基板から離れる方向に延びるカラムが形成されることによって生じる。
【0023】
AlONからなる少なくとも1層の第1の層のカラムは、一般には10
9cm
−2を超える欠陥密度を有する。結晶欠陥は、主として刃状転位(edge dislocations)によって形成されるが、小さい割合のらせん転位も発生しうる。一般には、本明細書に記載されている核形成層における結晶欠陥のタイプは、1:5以上1:100以下の比率で、らせん転位と刃状転位とに分けられる。公知の核形成層と比較すると、本明細書に記載されている核形成層、および特に、AlONからなる少なくとも1層の第1の層においては、結晶欠陥におけるらせん転位の割合を、刃状転位と比較して極めて低く維持することができる。これは有利であり、特にその理由として、らせん転位とは異なり、刃状転位は、例えば核形成層の上に形成されるSiN層によって排除することができ、すなわち刃状転位は以降の半導体層の中まで侵入しない。このようなSiN層は、従来、多数の開口部(これらの開口部においては下層がシード表面として機能する)が形成されている連続的な層として形成される。
【0024】
別の実施形態によると、カラムそれぞれは、5nm以上200nm以下の直径を有する。カラムは、10nm以上、特に好ましくは20nm以上の直径を有することが好ましい。さらには、カラムは、100nm以下、特に好ましくは50nm以下の直径を有することが好ましい。特に、直径は、20nm以上50nm以下とすることができる。さらに、カラムは、0.5nm以上50nm以下の高さを有する。この場合、カラムの高さは、AlONからなる少なくとも1層の第1の層の高さ全体の一部のみを構成していることが好ましく、第1の層の高さ全体は、例えば、1nm以上200nm以下とすることができる。AlONからなる少なくとも1層の第1の層の高さ全体は、好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上とすることができる。さらに、AlONからなる少なくとも1層の第1の層の高さ全体は、好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下とすることができる。特に、高さ全体は、10nm以上50nm以下とすることができる。特に、カラムは、基板からの距離が大きくなるにつれて次第に細くなることができる。個々のカラムの寸法(すなわちカラムの高さもしくは直径またはその両方)は、成長方向に変化する、もしくは、カラムごとに変化する、またはその両方であってよい。
【0025】
高解像度のX線回折による核形成層の特性評価においては、カラム構造を有しAlONからなる少なくとも1層の層における結晶欠陥の高い密度と、特定の欠陥のタイプと、カラムの配置構造との組合せによって、例えば非特許文献1に記載されているように、当業者に公知であるXRDロッキングカーブまたはオメガ走査において、いわゆる相関ピークの形成につながる。AlON系の層において相関ピークが検出されることは、対象のAlON層が本発明の意味におけるカラム構造を有することを明らかに示している。
【0026】
別の実施形態によると、核形成層は、AlONからなる第1の層の上に少なくとも1層の第2の層を備えている。少なくとも1層の第2の層は、AlN系またはGaN系の材料を含んでいることが好ましい。特に、少なくとも1層の第2の層は、AlONからなる少なくとも1層の第1の層のカラム構造に第2の層が続いているように、または、第2の層が第1の層のカラム構造を覆っているように、第1の層を覆うことができる。さらには、複数のさらなる層を、複数の第2の層の形で、少なくとも1層の第1の層の上に形成することも可能である。複数の第2の層は、同じ材料または異なる材料を含んでいることができ、交互に堆積させる、もしくは反復的に数回堆積させる、またはその両方とすることができる。AlONからなる少なくとも1層の第1の層と、少なくとも1層の第2の層または多数の第2の層との積層体は、全体として、窒化物化合物半導体材料系のさらなる半導体層を成長させるためのエピタキシ基板の核形成層として使用される。少なくとも1層の第2の層または複数の第2の層の堆積は、カラム構造を有しAlONからなる少なくとも1層の第1の層の堆積と同じ工程において実行することができる。この代替方法として、少なくとも1層の第2の層または複数の第2の層を、1つまたは複数の個別の工程において堆積させることができる。少なくとも1層の第2の層または複数の第2の層の堆積技術は、カラム構造を有しAlONからなる少なくとも1層の第1の層の場合と同じ堆積技術、または異なる堆積技術とすることができる。好ましくはAlNまたはGaN系の材料からなる少なくとも1層の第2の層は、AlONからなる少なくとも1層の上にスパッタリングによって形成されることが好ましい。
【0027】
別の実施形態によると、核形成層を作製した直後に、その上にさらなる層を形成し、このときアニーリングステップは必要ない。このさらなる層は、例えば、エピタキシ基板の上に成長させる、窒化物化合物半導体材料の半導体積層体の層、バッファ層、またはSiN層とすることができる。逆に、公知の低温核形成層の場合には、核形成層の再結晶を達成する目的で、核形成層を形成した直後にアニーリングステップが必要である。従来技術においては、再結晶によってのみ、さらなる半導体層を成長させるための適切な表面(すなわち適切な結晶面)を形成することができるが、本明細書に記載されている核形成層の場合、このことは必要ではない。
【0028】
別の実施形態によると、エピタキシ基板は、例えばGaN系材料からなるバッファ層を、核形成層の上に備えている。バッファ層は、例えば、核形成層をオーバーモールドする役割と、核形成層とその上に形成される半導体積層体との間に中間層を形成する役割を果たすことができる。バッファ層は、特に、1000℃を超える温度で堆積させることができる。すでに上述したように、1000℃を超える温度で形成される半導体層は、もはや核形成層を形成しない。
【0029】
別の実施形態によると、エピタキシ基板は、核形成層の上に、またはオプションとして核形成層の上のバッファ層の上に、SiN層を備えている。SiN層は、例えば、インサイチュ(in−situ)法によって堆積させることができ、開口部を有するように核形成層の表面の上に形成することができ、開口部においては下層の半導体層が露出しており、さらなる半導体層のためのシード点を形成している。すでに上述したように、このようにインサイチュ法によって堆積させるSiN層によって、刃状転位(核形成層または場合によってはバッファ層に存在する)の少なくとも一部分を排除することができる。
【0030】
本明細書に記載されている方法においては、核形成層、および特に、カラム構造を有しAlONからなる少なくとも1層の第1の層の層厚さおよび温度に関するプロセスウィンドウが、低温核形成層の場合と比較して相当に改善される。この理由として、核形成層、および特に、カラム構造を有しAlONからなる少なくとも1層の第1の層を形成するときに酸素が利用可能であるためと考えられる。酸素は、特に、基板(例えばサファイア基板)の表面との相互作用につながり、したがって、基板表面の望ましくない終端を防止することができる。このようにすることで、従来のAlN核形成層やGaN核形成層に優る利点が得られる。この結果として、その後にエピタキシャル成長によって堆積させる半導体層(例えばオプトエレクトロニクス半導体チップ)の材料品質が改善される。これらの結果は再現可能であることが研究によって示された。
【0031】
別の実施形態によると、オプトエレクトロニクス半導体チップは、本明細書に記載されているエピタキシ基板を備えている。窒化物化合物半導体材料系の半導体積層体(半導体チップの動作時に光を生成する、または光を検出することのできる活性層を有する)が、エピタキシ基板の上に形成されている。半導体積層体は、特に、MOVPE法によって形成することができる。
【0032】
オプトエレクトロニクス半導体チップは、特に、発光半導体チップとして、またはフォトダイオードチップとして、形成することができる。半導体積層体は、活性領域として、例えば従来のpn接合部、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造(SQW構造)、または多重量子井戸構造(MQW)を有することができる。半導体積層体は、活性領域に加えて、さらなる機能層および機能領域、例えば、p型またはn型にドープされた電荷キャリア輸送層、ドープされていないかp型またはn型にドープされた閉じ込め層、クラッド層または導波層、障壁層、平坦化層、バッファ層、保護層、電極のうちの少なくとも1つ、およびこれらの層の組合せを備えていることができる。活性領域またはさらなる機能層および機能領域に関連する、本明細書に記載されている構造部は、特に、その構造および機能に関して当業者に公知であり、したがってここではこれ以上詳しく説明しない。
【0033】
成長工程は、特に、ウェハレベルにおいて行うことができる。言い換えれば、エピタキシ基板の基板をウェハの形において形成することができ、この上に大きな領域にわたり核形成層を形成し、その上に半導体積層体を形成する。さらなる方法ステップにおいて、エピタキシ基板および成長した半導体積層体を、個々の半導体チップに分離することができ、この場合、半導体チップの側面を分離によって形成することができる。
【0034】
さらに、分離する前に、半導体積層体をキャリア基板の上に移載することができ、少なくともエピタキシ基板の基板を薄くする、すなわち少なくとも部分的または完全に除去することができる。
【0035】
その他の利点、有利な実施形態、および修正形態は、以下に図面を参照しながら説明する例示的な実施形態において明らかになるであろう。