特許第6055962号(P6055962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャサリン キャドレルの特許一覧

特許6055962骨肉インプラント合成部材およびその製造方法
<>
  • 特許6055962-骨肉インプラント合成部材およびその製造方法 図000003
  • 特許6055962-骨肉インプラント合成部材およびその製造方法 図000004
  • 特許6055962-骨肉インプラント合成部材およびその製造方法 図000005
  • 特許6055962-骨肉インプラント合成部材およびその製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055962
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】骨肉インプラント合成部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/00 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
   A61L27/00 M
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-519430(P2014-519430)
(86)(22)【出願日】2011年7月13日
(65)【公表番号】特表2014-518142(P2014-518142A)
(43)【公表日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2011062011
(87)【国際公開番号】WO2012007535
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】514011343
【氏名又は名称】キャサリン キャドレル
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャンピエール クグリック
【審査官】 星 功介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−245775(JP,A)
【文献】 特表平09−505345(JP,A)
【文献】 特開2009−178281(JP,A)
【文献】 特開2010−095613(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1593670(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0010632(US,A1)
【文献】 特開2009−034302(JP,A)
【文献】 特開2011−078624(JP,A)
【文献】 特開2009−178392(JP,A)
【文献】 特開2010−116662(JP,A)
【文献】 特開2009−160412(JP,A)
【文献】 特開2010−253195(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02915088(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材(100)は、射出形成され、繊維質がその中に均一に分散することで強化される生体内骨肉インプラントであり、以下の物質(material)である:
ポリエーテルエーテルケトンから成る熱可塑性有機バインダー(熱可塑性ポリマー)(210);と
ポリ(アミド−イミド)から成る繊維質を含むファイバーチャージ(帯電繊維)(330、220);と
− カルシウムとリン酸塩とから形成される電荷成分
とから構成されており、
前記ファイバーチャージ(帯電繊維)(330、220)の表面層は、活性された表面層を含むとともに厚みが2000ナノメートルに等しいか、または、それ以上であり、活性された表面層の繊維質は、該部材の全体または一部にわたり基質内のバインダー(210)から剥離露出していることを特徴とする骨肉インプラント合成部材
【請求項2】
前記ファイバーチャージ(帯電繊維)は、マイクロファイバーから構成されることを特徴とする請求項1記載の骨肉インプラント合成部材
【請求項3】
前記カルシウム系化合物(カルシウムとリン酸塩)の電荷成分は、六角形のβ構造からなるリン酸三カルシウムCa3(PO4)2から構成されていることを特徴とする請求項記載の骨肉インプラント合成部材
【請求項4】
前記部材は、ゼオライト電荷を含むことを特徴とする請求項1記載の骨肉インプラント合成部材
【請求項5】
骨肉インプラント合成部材(a part)の製造方法は、以下の工程からなり:
a)押出成形と造粒形成(granulation)による、ポリエーテルエーテルケトンポリマーと、ポリ(アミド−イミド)ファイバーチャージ(帯電繊維)と、カルシウムとリン酸塩とから形成される電荷成分と、が混合された粒状体を形成する工程;と、
b)前記工程(a)で得られた粒状体を、噴射(注入)温度(injection temperature)がガラス質繊維温度と同等かまたはそれ以上の温度で、適切な形状からなるキャビティを有する金型へ注入することによる部材の成形工程;と、
c)前記工程(b)で得られたブランク(形成された未処理のインプラント合成部材)を、該部材表面の繊維質を剥離するために超音波酸洗槽へ適切な時間だけ浸漬(submitting)する工程:
とからなることを特徴とする骨肉インプラント合成部材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療または獣医学において使用される歯科インプラント、プロテーゼ、または、骨補填剤のような、骨組織へのインプラント用の部材に関するものであり、該部材は、特殊な形成工程と組み合わせ、結合、併用することによって、インプラントが施される骨組織(受容組織)のオッセオインテグレーション(チタンと骨の直接的一体化)を促進させる素材から構成されるものである。
【背景技術】
【0002】
生体適合性ポリマーからなる異なるインプラントが従来技術として知られており、その形成工程は、受容組織による細胞定着を誘導する微小孔からなる表面組織の生成を許容し、該インプラントのオッセオインテグレーションを促進するものである。
【0003】
これらの従来のインプラントは非常に満足のいく結果をもたらすが、そのメカニズムによって得られたオッセオインテグレーション層の厚みは、表面微小孔の深さに対応(一致)するものであり、約1000ナノメーター(1μm)となっている。しかしながら、少なくとも1μmから10μmの範囲の、より大きな厚みのある組織とインプラントの相互浸透が好ましいと一般的に認められており、インプラントとその受容組織の弾性特性が異なる時には更なる厚みとなることが望ましいとされている。繊維質でインプラントが強化されているときや、より詳細には、形成過程の皮質に、インプラントに相当する弾性率がまだない場合のオッセオインテグレーション工程の開始時には、特に、このような増大された相互浸透が求められていた。
【0004】
その上、微小孔表面組織を射出成形のようなコスト効率の良いインプラント製造工程を用いて作るのは困難であるか又は不可能とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、インプラント、および、インプラントと受容骨組織の間の相互浸透の深さを増大させる方法でインプラントを製造するコスト効率の良い製造方法を提案するものであり、これにより、これらの先行技術の欠点を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その目的のために、本発明は、射出形成され、繊維質がその中に均一に分散することで強化される生体内骨肉インプラントであり、以下の物質から構成される生体内インプラントに適合する部材を開示するものである:
ポリエーテルエーテルケトンから成る熱可塑性有機バインダー(熱可塑性ポリマー);および
ポリ(アミド−イミド)から成る繊維質を含むファイバーチャージ(帯電繊維);および
−カルシウムとリン酸塩とから形成される電荷成分
ここでは、ファイバーチャージ(帯電繊維)(330、220)の表面層は、活性された表面層を含むとともに厚みが2000ナノメートルに等しいか、または、それ以上であり、活性された表面層の繊維質は、該部材の全体または一部にわたり基質内のバインダー(210)から剥離露出している。
【0007】
繊維質とは、厚さ比10以上の長さのマイクロファイバー、ナノファイバー、または、ナノチューブを意味する。マイクロファイバーは、マイクロメーターまたはミクロンの厚さの繊維質であり、すなわち、実質的な厚さは10-6メーターから10-5メーターの範囲からなる。ナノファイバーとナノチューブは、ナノメーターの厚さの繊維質であり、すなわち、実質的な厚さは10-9メーターから10-8メーターの範囲からなる。
【0008】
剥離した表面の繊維質は、繊維質の層の中で、導管(通路)として作用し、毛細管現象によって有機液体を運ぶ隙間の形成を可能にすることにより、表面からの細胞定着を促進させている。繊維質自体の性質もまた、吸収作用により有機液体の輸送に有利に働き、効果を促進させることを可能にしている。
【0009】
本発明は、以下に説明する効果的な実施例によって実施する事が可能であり、個々的に、又は、技術的に作動可能なものの組み合わせによることも考えられる。
【0010】
効果的(好都合)に、熱可塑性バインダーはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなり、生物学的適合性が特性として知られている。
【0011】
さらに効果的には、ファイバーチャージ(帯電繊維)は、芳香族ポリアミドのポリマーで作られた繊維質からなり、高い機械的特性と優れた生物学的適合特性とが融合されているものである。
【0012】
より詳細には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の射出成形温度に近いガラス質遷移温度を備えたポリ(アミド−イミド)ファイバーは、入射注入中の変形が容易であることにより、それが比較的長い場合であっても、インプラントにおける繊維質の均質分布が可能となる。
【0013】
表面の剥離による繊維質の導管(通路)効果は、少なくとも2μmの厚さの層にすることにより得ることが出来るので、換言すれば、プラスチック射出成形から得られるインプラントで剥離効果のない表面の微小孔から成るものより著しく良いものが得られる。
【0014】
効果的(好都合)に、インプラントを形成する物質(material)は、繊維質に加え、カルシウムとリン酸塩からなる電荷成分を含む。これらの吸収性のある化合物がオッセオインテグレーションと治癒に有利に働くことになる。
【0015】
効果的(好都合)に、カルシウム系化合物の電荷成分は、六角形のβ構造からなるリン酸三カルシウムCa3(PO4)2から構成されている。これらのリン酸三カルシウムの化合物は、射出成形の工程中に吸収性のある不定比カルシウム・アパタイト結晶に変形する。
【0016】
効果的(好都合)に、インプラント可能な部材を形成する物質(material)は、ゼオライト電荷も含むことが可能である。ゼオライトは、インプラント環境および、その環境におけるイオン結合において静電気接続を促進する。そのような電荷は、さらに、物質(material)を放射線不透過性にすることを促進する。
【0017】
効果的(好都合)に、ファイバーチャージ(帯電繊維)は、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4)から成る。これらの繊維質が部材の表面に存在することにより、インプラント環境における間質液の吸収が促進され、その結果、その部材の表面が細胞定着する。
【0018】
本発明は、このようなインプラントを製造する方法にも関するものであり、その方法は以下の工程からなる:
a)押出成形と造粒形成(granulation)による、ポリエーテルエーテルケトンポリマーと、ポリ(アミド−イミド)ファイバーチャージ(帯電繊維)と、カルシウムとリン酸塩とから形成される電荷成分と、が混合された粒状体を形成する工程;
b)前記工程(ステップ)(a)で得られた粒状体を、噴射(注入)温度(injection temperature)がガラス質繊維温度と同等かまたはそれ以上の温度で、適切な形状からなるキャビティを有する金型へ注入することによる部材の成形;
c)前記工程(ステップ)(b)で得られたブランク(形成された未処理のインプラント合成部材)を、該部材表面の繊維質を剥離するために超音波酸洗槽へ適切な時間だけ浸漬(submitting)する。
【0019】
プラスチック射出成形法は、成形作業の最終工程で仕上がりの寸法となったこの種のインプラントを、多量にコスト効率良く生産することを可能にする。また更に、金型内に入り込む物質(material)の流れによって繊維質を方向付ける(direct)ことが可能であるため、これにより、インプラントの形状が複雑な場合であっても、最適な補強効果を得る事ができる。
【0020】
槽内の化学的効果と超音波の機械的効果とを組み合わせた物理・化学的処理により、射出成形法に関連するいかなる汚染も除去し、望ましい伝導効果を得ることが出来る繊維質の剥離を表面に作るために、インプラントの表面の酸い/洗浄を同時にすることを可能にしている。
【0021】
繊維質に加えて、カルシウムとリン酸塩の化合物で構成された部材(a part)を得るために、本発明は更に、粒状体または化合物を製造する方法に関連する、以下の工程から成るものである:
− ポリマー・バインダーをパウダー状の化合物と混合し、押出成形および造粒形成(granulation)により、第一粒状体または第一化合物を作成する;そして
− 射出成形工程で使用できる粒状体が形成されるように、第二の押出成形と造粒形成(granulation)工程の間に、当該第一粒状体を繊維質と混合する。
− 効果的(好都合)に、第一粒状体が成形されている間にゼオライトチャージを導入することもまた可能である。
【0022】
ファイバーチャージ(帯電繊維)は、5%〜15%の混合物の質量率の範囲が効果的(好都合)である。その比率により、最終部材は大幅に補強(強化)される結果となり、同時に注入法を使用して製造することが可能となり、また、バインダーがカルシウムおよび/またはゼオライトを含む化合物により帯電しているか否かにかかわらず、射出と造粒形成(granulation)または合成(compounding)によっても、繊維質とポリマーバインダーを混合することが可能となる。
【0023】
本発明は、プラスチック射出成形により繊維強化インプラントを製造するための造粒形成(granulate)または化合物(compound)に関するものであり、造粒形成(granulate)の組成は以下のとおりである:
− ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリマー・バインダー、
− カルシウムとゼオライトをの電荷を含む化合物質量率10%〜20%、
− 5%〜15%のファイバーチャージ(帯電繊維)。
このタイプの粒状体は、本発明に係るプラスチック射出成形による製造の工程(ステップ)(b)において、直接使用することが可能である
【0024】
本発明にかかる造粒形成(granulate)の第一の実施例では、ファイバーチャージ(帯電繊維)はポリ(アミド−イミド)から構成された繊維質からなり、ガラス体遷移温度はPEEKの注入温度と同等か、またはそれ以下である。
【0025】
本発明にかかる造粒形成(granulate)の第二の実施例では、ファイバーチャージ(帯電繊維)はケイ酸カルシウム(Ca2SiO4)の繊維からなる。
【0026】
続いて酸洗いされ、効果的(好都合)に、受容環境においてオッセオインテグレーションを促進させる表面をその上に形成する。
【0027】
効果的(好都合)に、槽に続く酸洗いは、以下に詳述する工程(順序)によって実施される。
− 超音波にさらして鉄を含んでいる粒子を除外減少させるために溶液槽に浸漬する。
− 超音波にさらされるバインダー溶剤に浸漬させるが、繊維質に関しては不活性である。
【0028】
第一の槽は、射出成形機や射出成形金型から、金属粒子の付着した表面の汚染を除去することを可能にする。単にバインダーを溶解することにより、第二の槽は、超音波の複合作用により、表面における繊維質と母材(基質matrix)に分離(電荷の)または剥離を創出することを可能にする。酸は、表面にあるカルシウムまたはゼオライトを含む化合物の繊維質および/または電荷を減少させる効果もあるので、槽の順番は重要となる。第一の酸による攻撃反応により、それに続く溶剤の反応で、これらの化合物が再び表面に出現する。
【0029】
効果的(好都合)な実施例によれば、更に具体的に実施例で好ましくは、インプラントを構成する物質は、繊維質と、PEEK母材(基質matrix)のカルシウムを含む化合物とゼオライトの電荷とからなり、酸洗い工程は、以下に示す槽における浸漬により構成される。
− 塩酸浸漬工程
− アセトン浸漬工程
− 過酸化水素浸漬工程
【0030】
水の槽ですすぎ洗いして分けられ、そのすすぎ槽もまた超音波にさらされる。最後の過酸化水素槽は、特に、本発明によるインプラント可能部がケイ酸カルシウムファイバー(繊維)を含んでいる場合、その部材の表面に出現する繊維質の表面にシリカ(ケイ酸SiO2)層を形成することを可能にする。湿気を吸収することにより、該シリカ層がインプラント表面の有機溶剤の誘導を促進させる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の要旨を、望ましい実施例の内容によって詳述するが、図1〜4に示されるものに限定されるものではない:

図1】本発明の実施例に係る骨内歯科インプラントの正面図である;−
図2図1で示されたA−A断面図のY部分の詳細である;−
図3図2で示されたインプラントの表面のA−A断面のZ部分の詳細を表す図であり、3A〜3Eは、本発明の実施例に係る前記骨内のインプラントの製造およびインプラント埋め込み段階を示す図である;−
図4】本発明の実施例に係るインプラントの製造およびインプラント埋め込みの各段階を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、複雑形状のインプラント(100)の一例であり、プラスチック射出成形法を用いてコスト効率よく製造することができる。この実施例は、本発明の出願に係る歯科インプラントの製造を表すものであり、これに限定されるものではない。該歯科用インプラントは、コア積層(core build-up)のような上部構造を収容するように設計された上部(101)と、骨組織に埋め込まれるように設計された下部(110)とされる部分とから成る。
【0033】
下部(110)は、選択的に突条のような起伏とすることも可能で、収容する骨組織の中に形成される孔の位値に初期的な機械的結合を適応促進させる構成である。このような初期的結合の突条または起伏体のサイズは約1ミリメートルからなる。前記インプラントは、主に高い生体適合性を有する熱可塑性ポリマーからなり、射出成形技術を用いて実施するのに適合している。限定されない実施例として、前記ポリマーは、ポリエーテルエーテルケトンまたはVICTREX(登録商標) PEEK 150G(登録商標)の名でVICTREX(登録商標)により商業的に流通しているPEEKにより製造することができる。
【0034】
効果的(好都合)に、バインダーは、PEEKと、カルシウムとゼオライトの電荷を含む化合物から同時に構成された素材からなり、そのような素材はフランス特許FR2722694又はアメリカ特許US5872159に開示されている。
【0035】
図2である、第一の詳細断面図によれば、インプラントを構成する素材は、母材(matrix基質)(210)又はバインダーであるPEEKであり、約1μm(10-6メートル)の直径を有するカルシウム含有化合物の粒子(230)および強化繊維(220)から成る。本実施例では、強化繊維(220)はポリ(アミド−イミド)で構成されており、該繊維は、KERMEL(登録商標), 20 rue Ampere, 68027 Colmar, FranceによりKERMEL(登録商標) TECHの名称で商業的に入手可能である。本発明の一実施形態では、直径は約7μmであり、長さは約700μm(0.7mm)のマイクロファイバーが使用されている。
【0036】
このインプラントはプラスチック射出成形法を用いて得られるため、PEEKの射出温度に等しいか、またはポリマーのガラス質遷移温度よりも高いため、繊維質は射出温度において容易に変形するために、ファイバーチャージ(帯電繊維)は、効果的(好都合)な実施例では、添加成分として又は主体成分として、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4)を含んでいる(図2には表示無し)。材料は、射出温度で硬質であり、従ってその温度で変形するものではない。
【0037】
また、ケイ酸カルシウムファイバー(繊維質)のサイズは、より小さい方が望ましく、直径は約1μmであり、長さは約10μm〜50μmである。注入過程での詰まりを防止するために、すべての繊維質を含む繊維質の合計割合は、15質量%を超えてはならない。
【0038】
効果的(好都合)に、カルシウム含有化合物(230)の電荷は、β工程ではリン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)から形成されている。β工程でのリン酸三カルシウムは、低温で安定している六方晶構造を有する結晶相である。
【0039】
リン酸三カルシウム粉末に含まれる水分と、PEEKまたは可能性としてゼオライトとの組み合わせにより、化合物は以下の化学反応によって射出による成形工程中に変形を進行させる:
【0040】
3((Ca3(PO4)2)OH2)Caは、ヒドロキシアパタイトである。このアパタイトは完全に不定比であり、そのため吸収性があり、臓器移植と同様に、本発明のインプラント可能な素材(部材)としてのインテグレーション特性が付与される。
【0041】
そのため、射出中に使用されるパウダーは脱水されていない。それらは、効果的(好都合)に、再水和され、または、化学反応を促進するためにオルトリン酸(H3 PO4)を添加することができる。
【0042】
図3では、図4に示す方法もともに、さらに小さなスケールの表面観察により、この方法による実装工程および本発明のインプラント可能部材における表面形態の分析を可能としている。
【0043】
一つの実施例では、インプラントは粒状体混合を得ることを目的とした第一工程で得ることが出来る。
− 80重量%のPEEK
− 10重量%のリン酸三カルシウム(Ca3PO4
− 10重量%の二酸化チタン
全ての成分は340℃〜400℃の範囲の温度において押出で混合される。
【0044】
押出による造粒形成(granulation)では、第一粒状体が得られ、それは、10質量%のKERMEL(登録商標) TECHタイプのポリ(アミド−イミド)ファイバー(繊維質)およびケイ酸カルシウムと、同じ押出・造粒形成(granulation)方法により混合される。
【0045】
この方法により得られた第二粒状体は、インプラントのプラスチック射出成形(410)のために使用される。成形は70〜140MPaの範囲の圧力で340℃〜400℃の範囲の温度で行われ、そのなかで、金型はPEEKのガラス質遷移温度、または、約160℃の金型予熱温度以上の温度に加熱される。
【0046】
KERMEL(登録商標)タイプの繊維質のガラス質遷移温度は340℃であり、さらに、それらは噴射温度で変形可能であるため、材料の流れに追従することを可能にするとともに、押出・造粒工程中または部分的に射出成形工程中に、粒状体中に均一に分散される。
【0047】
図3Aに示した形成工程の終りの段階(410)では、インプラントの表面は、実質的に滑らかであり、カルシウムからなるいくつかの化合物の粒子(211)と僅かに出現したゼオライト(212)から形成されている。この事例では、ケイ酸カルシウムである繊維質(330)は表面近傍に存在し、前記表面に僅かに出ていることもある(possibly)。インプラントの表面もまた、射出成形機の金型とスクリューとの接触から金属介在物(340)からなっている。
【0048】
形成工程の終りの段階(410)では、インプラントは、超音波を受け、一連の化学エッチング/酸洗いにかけられる。例えば、以下の手順(protocol)では、42kHzの周波数の超音波を用いることにより、優れた実用的な結果を出している。
− HCl:30%:35分
− H2O:10分(または、すすぎ)
− C3H6O(アセトン):アセトンの沸点温度で35分
− アセトン蒸発によるインプラントの乾燥
− H2O230%:35分
− NaClO:35分
− H2O:10分(または、すすぎ)
インプラントは、その後、殺菌剤、また、超音波の下で、浸漬される:
− GIGASEPT(登録商標)12%:35分
− H2O ppi:35分
GIGASEPT(登録商標)溶液に浸漬することは任意的である
【0049】
第一工程(420)ではインプラントに酸洗いが施される。この酸洗いは、主に金属性介在物を除去することを目的としている。この酸洗工程の後、図3Bのインプラントの表面は、金属含有物を含まず、また、カルシウムを含む粒子は突出(飛出)し、その場所には対応する穴(微小孔)(311)が残される。
【0050】
すすいだ後、次の工程(430)は、インプラントのアセトン槽への浸漬と、また、超音波を施すことからなる。図3Cにおいて、工程(ステップ)(430)の終了時にはPEEKの厚さは溶解し、最初は内在していたカルシウムおよびゼオライトを含む化合物の粒子(211、212)が見えるようになる。超音波は、基質内に植込まれるインプラントの表面に出てきた繊維質(330)を剥離しやすくする。
【0051】
すすいだ後、次の工程(440)は、インプラントの過酸化水素槽への浸漬となり、超音波もまた施されることから成る。図3Dにおいて、その槽は、基本的に表面の形態を変更するものではない。一方において、インプラントの表面の酸化によりシリカ(SiO2)を形成する傾向があるケイ酸カルシウムファイバー(繊維質)の表面に影響を与える。
【0052】
効果的(好都合)に、インプラントは加圧滅菌処置のために殺菌スリーブに挿入される。その後、約2150ヘクトパスカルの圧力で、約135℃の温度で10分間の殺菌サイクルを施す。加圧滅菌器による殺菌工程は、表面酸洗いの効用に貢献し、それは、エチレンオキシドまたはガンマ線処理と関連付けられている。更に、それは表面上のカルシウム化合物の粒子の結晶化を促進する。殺菌の最終段階では、インプラントは、無菌包装でパッケージされ、骨組織内に移植されるように準備される。
【0053】
図3Eに示すように、前記インプラントの組織中への埋め込み時(450)に、繊維質がKERMELファイバーであろうと、ケイ酸カルシウムファイバー(繊維質)あろうと、血液などの有機液体は繊維質とmatrix(基質)との間剥離部分の中を毛細管現象によって流れる。
【0054】
ケイ酸カルシウムの事例では、これらの繊維質の表面上に存在するシリカは流体を吸収するため、表面下における伝導が促進される。表面上および繊維質による伝導により、その表面の下では、カルシウム系化合物(211)が、これらの有機液体と接触することとなる。これらの化合物の吸収性は、骨組織におけるインプラントの表面の結合につながる細胞の定着を促進する。
【0055】
先行技術によるインプラントの表面処理では、リン酸カルシウム化合物とPEEK matrix(基質)中の二酸化チタンだけが含まれており、厚さ約1μmの表面層が得られることになっている。同様の処理を同一形状のインプラントではあるが10%のポリ(アミド−イミド)ファイバー又はケイ酸カルシウムファイバーから成る材料を追加したもので行った場合、活性表面層の厚さが3.6μmのものを得ることが可能である。
【0056】
上記の説明で、異なる特徴や利点と、本発明が目的を達成していることが明確に解説されております。具体的には、それは射出成形で得ることが可能であると共に、補強無しで得ることが出来る少なくとも3倍の厚さのオッセオインテグレーション(チタンと骨の直接的一体化)表面を備えた強化インプラントを得ることが可能である。
図1
図2
図3
図4