(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極と負極とをセパレータを挟んで積層または巻回した構造を有する発電要素と、前記正極に接続された正極集電体と、前記負極に接続された負極集電体と、非水電解液と、前記発電要素と前記正極集電体と前記負極集電体と前記非水電解液とを収容する電池ケースとを備え、
前記正極集電体または前記負極集電体は、請求項1〜9のいずれか1つに記載の電池用集電体であることを特徴とするリチウムイオン電池。
正極と負極とをセパレータを挟んで積層または巻回した構造を有する発電要素と、前記正極に接続された正極集電体と、前記負極に接続された負極集電体と、非水電解液と、前記発電要素と前記正極集電体と前記負極集電体と前記非水電解液とを収容する電池ケースとを備え、
前記電池ケースは、前記発電要素を収容するための容器と蓋部材とを備え、
前記正極集電体は、前記蓋部材に固定された板状の基部と、前記正極集電体の基部から延びる足部とを有し、
前記正極集電体の足部は、前記正極と接続する接続部と、前記正極集電体の基部と接続部との間に設けられた屈曲部とを含み、
前記正極集電体の基部と屈曲部との間に緩衝部が設けられ、
前記正極集電体の基部と緩衝部は、同一面内に位置し、
前記負極集電体は、前記蓋部材に固定された板状の基部と、前記負極集電体の基部から延びる足部とを有し、
前記負極集電体の足部は、前記負極と接続する接続部と、前記負極集電体の基部と接続部との間に設けられた屈曲部とを含み、
前記負極集電体の基部と屈曲部との間に緩衝部が設けられ、
前記負極集電体の基部と緩衝部は、同一面内に位置し、
前記正極集電体の基部及び前記負極集電体の基部は、前記発電要素の上側に配置され、
前記正極集電体の接続部及び前記負極集電体の接続部は、前記発電要素の側部に配置され、前記発電要素を挟むように設けられたリチウムイオン電池。
前記発電要素は、正極と負極が対向する異なる端部においてそれぞれ集電されており、一端部で前記正極集電体の接続部と、他端部で前記負極集電体の接続部と接続されている請求項10又は11に記載のリチウムイオン電池。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電池用集電体は、板状の基部と、前記基部から延びる足部とを有し、前記足部は、正極または負極を接続する接続部と、前記基部と前記接続部との間に設けられた屈曲部とからなり、前記基部と前記屈曲部との間に緩衝部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明のリチウムイオン電池は、正極と負極とをセパレータを挟んで積層または巻回した構造を有する発電要素と、前記正極に接続された正極集電体と、前記負極に接続された負極集電体と、非水電解液と、前記発電要素と前記正極集電体と前記負極集電体と前記非水電解液とを収容する電池ケースとを備え、前記正極集電体または前記負極集電体は、前記電池ケースに固定された板状の基部と、前記基部から延びる足部とを有し、前記足部は、正極または負極に接続される接続部と、前記基部と前記接続部との間に設けられた屈曲部とを有し、前記基部と前記屈曲部との間に緩衝部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明のリチウムイオン電池において、前記正極集電体または前記負極集電体は、金属板を加工することにより一体に形成されたことが好ましい。
このような構成によれば、リチウムイオン電池の部品数を減らすことができ、製造コストを低減することができる。また、基部と足部との間に抵抗要因となりうる接続部分がないため、導電抵抗を低減することもできる。
本発明のリチウムイオン電池において、前記緩衝部は、基部または屈曲部に接して設けることが好ましい。
このような構成によれば、屈曲部にかかる振動応力を確実に緩衝部に分散することができる。
本発明のリチウムイオン電池において、前記緩衝部は、前記基部に切欠き部を設けることにより形成され、前記切欠き部は、前記基部の蓋部材側の面に平行な方向に設けることが好ましい。また、前記切欠き部は、基部(緩衝部なし)の足部の付け根の少なくとも一方の側部に接するように設けることが好ましい。
このような構成によれば、従来足部の屈曲部に集中していた振動応力を緩衝部に分散することができる。
【0011】
本発明のリチウムイオン電池において、前記屈曲部は、45度以上110度以下の角度で屈曲した部分であることが好ましい。
このような構成によれば、発電要素を集電体とつなぐ電極の電極接続部23を発電要素の上部ではなく、側部に設けることが可能となる。
本発明のリチウムイオン電池において、前記接続部は、コの字形の断面またはN字形の断面を有することが好ましい。
このような構成によれば、発電要素に無理な変形を強いることなく、多数の電極を集電体につなぐことができ、リチウムイオン電池に含まれる正極および負極の数を多くすることができる。このことにより、リチウムイオン電池のエネルギー容量を大きくすることができる。
【0012】
本発明のリチウムイオン電池において、前記発電要素は、正極と負極が対向する異なる端部においてそれぞれ集電されており、一端部で前記正極集電体の前記接続部と、他端部で前記負極集電体の前記接続部と接続されることが好ましい。
このような構成によれば、正負極の集電体に短絡電流が流れることを抑制することができる。
【0013】
本発明のリチウムイオン電池において、前記緩衝部は、前記接続部が振動した際、前記屈曲部にかかる振動応力を緩衝部に分散できるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、リチウムイオン電池に振動が加えられた際に足部が破断することを抑制することができる。
本発明のリチウムイオン電池において、熱収縮させたシュリンクチューブをさらに備え、前記シュリンクチューブは、前記正極集電体と前記負極集電体と前記発電要素とを一体に束ねることが好ましい。
このような構成によれば、発電要素の膨らみやズレを抑えることができ、発電要素に含まれる正極や負極がばらばらになることを防止することができる。
【0014】
本発明のリチウムイオン電池において、前記セパレータは、つづら折りされた形状を有し、前記正極および前記負極は、前記セパレータの各谷溝に配置され、かつ、前記セパレータを介して交互に配置されることが好ましい。
このような構成によれば、短絡電流が流れることを防止することができる。また、リチウムイオン電池が複数の正極と複数の負極を有することができ、リチウムイオン電池のエネルギー容量を大きくすることができる。
本発明のリチウムイオン電池において、前記電池ケースは、開口を有する容器と前記開口を塞ぐ蓋部材とを備え、前記正極集電体および前記負極集電体は、前記蓋部材に固定されたことが好ましい。
このような構成によれば、正極集電体、負極集電体および発電要素を蓋部材に固定した状態で容器内に挿入することができ、製造コストを低減することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0015】
リチウムイオン電池の構成
図1は本実施形態のリチウムイオン電池の概略上面図であり、
図2は本実施形態のリチウムイオン電池の概略側面図であり、
図3は
図1の点線A−Aにおけるリチウムイオン電池の概略断面図である。また、
図4は
図1の点線B−Bにおけるリチウムイオン電池の概略断面図であり、
図5は
図2の一点鎖線C−Cにおけるリチウムイオン電池の概略断面図である。
図6は、本実施形態のリチウムイオン電池に含まれる発電要素の構成を説明する説明図であり、
図7(a)は本実施形態のリチウムイオン電池に含まれる正極の概略平面図であり、
図7(b)は
図7(a)の点線D−Dにおける正極の概略断面図である。
図8(a)は本実施形態のリチウムイオン電池に含まれる負極の概略平面図であり、
図8(b)は
図8(a)の点線E−Eにおける負極の概略断面図である。
図9(a)は、本実施形態のリチウムイオン電池に含まれる正極集電体または負極集電体の概略上面図であり、
図9(b)はその概略側面図であり、
図9(c)は
図9(a)の一点鎖線F−Fにおける集電体の概略断面図である。なお、
図9は、集電体7を蓋部材2に固定する前の状態の図であり、
図9に示した集電体7に含まれる突起部31は、蓋部材2に固定される際のかしめ加工により変形する。
図10は、本実施形態のリチウムイオン電池に含まれる正極集電体または負極集電体の概略斜視図である。
【0016】
本実施形態のリチウムイオン電池20は、正極21と負極22とをセパレータ24を挟んで積層した構造を有する発電要素12と、正極21に接続された正極集電体3と、負極22に接続された負極集電体4と、非水電解液5と、発電要素12と正極集電体3と負極集電体4と非水電解液5とを収容する電池ケース17とを備え、正極集電体3または負極集電体4は、電池ケース17に固定された板状の基部32と、基部32から延びる足部33とを有し、足部33は、正極21または負極22に接続されている接続部37と、基部32に隣接して設けられる緩衝部35と、緩衝部35と接続部37との間に設けられた屈曲部36とを有することを特徴とする。
以下、本実施形態のリチウムイオン電池20について説明する。
【0017】
1.電池ケース
電池ケース17は、発電要素12を収容するための容器1を備える。また、電池ケース17は、蓋部材2を備えてもよい。
容器1は、内部に発電要素12、正極集電体3(集電体7)、負極集電体4(集電体7)および非水電解液5を収容することができ、蓋部材2と接合することができる。
容器1の材料は、内部に発電要素12、正極集電体3、負極集電体4および非水電解液5を収容しても大きく変形しない材料であれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレス等の金属材料、該金属材料にニッケル、スズ、クロム、亜鉛等をメッキしたものや、硬質プラスチックなどである。
容器1の形状は、角型でも円筒形でも良い。
容器1は、発電要素12を容器1の内部に挿入するための開口を有する。また、この開口は、蓋部材2により塞がれる。このことにより、容器1の内部に発電要素12を収容することができる。
【0018】
蓋部材2は、容器1の発電要素12を挿入するための開口を塞ぐ。また、容器1と蓋部材2は、例えばレーザ溶接、抵抗溶接、超音波溶接、接着剤などにより接合され、容器1を密閉する。蓋部材2には、正極集電体3および負極集電体4を固定することができる。また、正極集電体3および負極集電体4には、発電要素12を接続することができる。このことにより、蓋部材2と正極集電体3と負極集電体4と発電要素12とを一体化することができる。この一体化された正極集電体3と負極集電体4と発電要素12を容器1中に挿入し、容器1の開口を蓋部材2で塞ぐことにより、正極集電体3および負極集電体4に接続された発電要素12を電池ケース17中に収容することができる。なお、非水電解液5は、容器1の開口を蓋部材2で塞いだ後に電池ケース17内に注入することができる。
【0019】
2.発電要素、非水電解液
発電要素12は、電池ケース17内部に充填された非水電解液5と共に電池反応をする。この電池反応によりリチウムイオン電池20は、放電、充電をすることができる。発電要素12は、セパレータ24と、セパレータ24を介して配置された正極21および負極22を備える。発電要素12は、例えば、
図6のように、つづら折りされたセパレータ24と、セパレータ24の各谷溝に配置され、かつ、セパレータ24を介して交互に配置された正極21および負極22とを備えることができる。ここでは、上記構造を示したが、通常使われているセパレータ24と、セパレータ24を介して配置された正極21および負極22を巻いた巻回タイプや、セパレータ24を介して配置された正極21および負極22を重ね合わせた積層タイプでもよい。
なお、1つの発電要素12に含まれる正極21または負極22の積層数は、例えば、7層以上20層以下である。
【0020】
セパレータ24は、シート状であり、正極21と負極22との間に配置される。セパレータ24は、正極21と負極22との間に短絡電流が流れることを防止することができ、電解質が透過可能なものであれば特に限定されないが、例えばポリオレフィンの微多孔性フィルムとすることができる。
【0021】
正極21は、正極集電シート27と正極集電シート27の両面上にそれぞれ設けられた正極活物質層25と備える。正極21は、例えば、
図7(a)(b)のように形成することができ、方形の正極集電シート27の両面に正極活物質層25を形成することにより形成することができる。そして、正極21は、正極集電体3に接続するための電極接続部23を有することができ、
図7(a)の電極接続部23は、正極21の端部の正極集電シート27の両面上に正極活物質層25を形成しないことで設けることができる。また、図面においては、正極21の幅方向(点線D−Dと平行な方向)の両端部に集電体に接続するための接続部以外の正極活物質層の未形成部(集電シート27が見えている部分)が表されているが、この未形成部は設けなくてもよい。さらに、正極集電シート27の1つの端部に、例えば、この端部から外部へ突出した凸状の耳部を形成し、該耳部に正極活物質層25を形成しないことで電極接続部23を設けることもできる。
【0022】
正極集電シート27は、電気伝導性を有し、表面上に正極活物質層25を備えることができれば、特に限定されないが、例えば、金属箔である。好ましくはアルミニウム箔である。
正極活物質層25は、正極活物質に導電剤、結着剤などを添加し、塗布法などにより正極集電シート27の上に形成することができる。正極活物質は、例えば、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
xCo
1-xO
2(x=0.01〜0.99)、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiCo
xMn
yNi
zO
2(x+y+z=1)又はオリビン型のLiFePO
4やLi
xFe
1-yM
yPO
4(但し、0.05≦x≦1.2、0≦y≦0.8であり、MはMn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nbのうち少なくとも1種以上である)などが一種単独もしくは複数種を混合して使用することができる。
【0023】
負極22は、負極集電シート28と負極集電シート28の両面上にそれぞれ設けられた負極活物質層26と備える。負極22は、例えば、
図8(a)(b)のように形成することができ、方形の負極集電シート28の両面に負極活物質層26を形成することにより形成することができる。そして、負極22は、負極集電体4に接続するための電極接続部23を有することができ、
図8(a)の電極接続部23は、負極22の端部の負極集電シート27の両面上に負極活物質層26を形成しないことで設けることができる。また、負極集電シート28の1つの端部に前述の正極21と同様な耳部を形成し、該耳部に負極活物質層26を形成しないことで電極接続部23を設けることもできる。また、前述の正極21と同様に、幅方向の両端部の負極活物質層26の未形成部(集電シート28が見えている部分)もなくてもよい。
【0024】
負極集電シート28は、電気伝導性を有し、表面上に負極活物質層26を備えることができれば、特に限定されないが、例えば、金属箔である。好ましくは銅箔である。
負極活物質層26は、負極活物質に導電剤、結着剤などを添加し、塗布法などにより負極集電シート28の上に形成することができる。負極活物質は、例えば、リチウム二次電池の場合、グラファイト、部分黒鉛化した炭素、LiTiO
4、Sn合金等が一種単独もしくは複数種を混合して使用することができる。
【0025】
非水電解液は、溶媒としてカーボネート類、ラクトン類、エーテル類、エステル類などを使用することができ、これら溶媒の2種類以上を混合して用いることもできる。これらの中では特に環状カーボネートと鎖状カーボネートを混合して用いることが好ましい。非水電解液は、例えば、電解質としてのLiCF
3SO
3、LiAsF
6、LiClO
4、LiBF
4、LiPF
6、LiBOB、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)等のリチウム塩溶質を有機溶媒に溶解した溶液である。また、必要に応じてVC(ビニレンカーボネート)、PS(プロパンスルトン)、VEC(ビニルエチルカーボネート)、PRS(プロペンスルトン)、難燃剤等の添加剤を単独または複数種を混合して配合してもよい。
【0026】
3.電池用集電体(正極集電体、負極集電体)
正極集電体3は、発電要素12に含まれる正極21と外部接続端子8aとを電気的に接続する部材である。
負極集電体4は、発電要素12に含まれる負極22と外部接続端子8bとを電気的に接続する部材である。
集電体7(正極集電体3または負極集電体4)は、電池ケース17に固定された板状の基部32(
図9(a)、
図11、
図12の点線で囲まれた部分)と、基部32から延びる板状の足部33と、基部32と足部33との間に設けられた緩衝部35とを有する。また、集電体7は、基部32から突出し蓋部材2に設けられた開口を貫通する突出部31を有することもできる。足部33は、基部32の端が延長するように基部32から突出していてもよい。また、足部33は、棒状であっても、板状であってもよい。
ここで、足部33とは、基部32から突出した部分であり、屈曲部36と屈曲部36を介して基部32から延出している部分である。また、板状とは、比較的薄い厚さを有する形状であり、加工により曲げられたり穴が形成されたりしもよい。
【0027】
図11(a)、
図12(a
)は、それぞれ本実施形態のリチウムイオン電池20に含まれる集電体7の概略上面図であり、
図9(a)の概略上面図に対応する。また、
図11(b)は、
図11(a)に示した集電体7が有する接続部37の概略断面図であり、
図12(b)は、
図12(a)に示した集電体7が有する接続部37の概略断面図で
ある。
集電体7は、例えば、
図9〜
12のような形状を有することができる。
集電体7が有する基部32は、電池ケース17に固定される部分である。基部32は、板状であり、蓋部材2側の上面とその裏面である下面とを有する。基部32の上面から突出部31が突出している。突出部31は、例えば金属板を絞り加工することにより形成することができる。突出部31は後述のように蓋部材2の開口などを貫通させた後、端部がかしめ工具により加工される。
【0028】
正極集電体3、負極集電体4の材料は特に限定されないが、例えば、正極集電体3は、例えばアルミニウムとすることができ、負極集電体4は、例えば銅とすることができる。
正極集電体3、負極集電体4の製造方法は、特に限定されないが、例えば、金属板をプレス加工することにより製造することができる。金属板は、例えば1.5mm以上2.5mm以下の厚さを有するものを使用することができる。
【0029】
正極集電体3の基部32および負極集電体4の基部32は、蓋部材2に固定することができる。集電体基部32を蓋部材2に固定する方法は、正極集電体3または負極集電体4を外部配線に接続することができるように固定できれば特に限定されないが、例えば、
図3の断面図のように固定することができる。
図3に示したリチウムイオン電池20では、
図9に示したような集電体7の突起部31を蓋部材2の開口および外部接続端子8の開口に挿入し、突起部31をかしめ加工することにより集電体7と蓋部材2と外部接続端子8とを一体化させている。リチウムイオン電池20がこのような構成を有することにより、集電体7が外部接続端子8に電気的に接続した状態で集電体7を蓋部材2に固定することができる。このことのより、外部接続端子8a、8bを介して、リチウムイオン電池20の充放電を行うことができる。
【0030】
また、
図3に示したリチウムイオン電池20では、蓋部材2の内側と集電体7との間に内部絶縁部材11を設け、蓋部材2の外側と外部接続端子8との間に外部絶縁部材10を設けている。また、蓋部材2の開口と突起部31との間にはパッキン13を設けている。リチウムイオン電池20がこのような構成を有することにより、蓋部材2にリーク電流が流れることを防止することができる。また、蓋部材2の開口から電解液5が漏れ出すことを防止することができる。
【0031】
また、
図3に示したリチウムイオン電池20では、内部絶縁部材11、外部絶縁部材10、パッキン13も、集電体7と蓋部材2と外部接続端子8と共に一体化されている。
なお、集電体7は、内部絶縁部材11と咬合する形状を有しており、内部絶縁部材11は蓋部材2と咬合する形状を有しており、蓋部材2は外部絶縁部材10と咬合する形状を有しており、外部絶縁部材10は外部接続端子8と咬合する形状を有している。このため、ねじ部6a、6bや外部接続端子8に力が加わったとしても、集電体7、内部絶縁部材11、外部絶縁部材10、外部接続端子8は、突起部31を軸として蓋部材2に対して回転することを防止できる。
【0032】
咬合する方法は、特に限定されないが、例えば、
図9のように集電体7が凸部51を有し、凸部51が内部絶縁部材11の凹部と咬合することができる。また、
図9のように集電体7が開口45を有し、開口45に内部絶縁部材11の凸部が挿入されることにより交合することができる。このように集電体7と内部絶縁部材11は咬合することができる。内部絶縁部材11と蓋部材2も、蓋部材2と外部絶縁部材10も、外部絶縁部材10と外部接続端子8も、同様に凸部、凹部、開口などを有することにより咬合することができる。
【0033】
基部32は、突出部31と、内部絶縁部材11に咬合する凸部51、開口45、凹部などとにより蓋部材2に固定される。このため、基部32が板状であることにより、電池ケース内で集電体7が占める領域を小さくすることができ、発電要素12を大きくすることができる。このことにより、リチウムイオン電池20のエネルギー容量を大きくすることができる。
また、基部32の上面は、蓋部材2の内面の10%以上40%以下の面積を有することができる。このことにより、集電体7を蓋部材2にしっかり固定することができる。
【0034】
集電体7の足部33は、基部32の端が延長するように基部32から突出した形状であり、棒状であっても、板状であってもよい。足部33は、一枚の金属板を加工して集電体7と同時に設けてもよく、基部32に別の金属板を接合することにより形成してもよい。
足部33は、1つの基部32に対して少なくとも1つ形成されていればよく、複数形成されてもよい。また、足部33は、途中で分岐してもよい。
足部33は、電極(正極21または負極22)が接続する接続部37と、基部32と接続部37との間に設けられた屈曲部36とを有する。また、基部32と屈曲部36との間に緩衝部35が設けられる。
【0035】
正極集電体3が有する接続部37には正極21の電極接続部23が接続され、負極集電体4が有する接続部37には負極22の電極接続部23が接続される。接続部37を有することにより、正極集電体3と正極21または負極集電体4と負極22の接触面積を広くすることができ、導電抵抗を小さくすることができる。
また、接続部37を有することで、発電要素の極板を曲げることなく集電体7に接続でき、発電要素に無理な力が加わることを防ぐことができる。
さらに、正極集電体3が有する接続部37および負極集電体4が有する接続部37は、発電要素12の両側端に発電要素12を挟むように設けることができる。発電要素12の1つの端部で正極集電体3の接続部37と正極21の電極接続部23とが接続することができ、発電要素12の前記端部の反対側の端部で負極集電体4の接続部37と負極22の電極接続部23とが接続することができる。このような構成より、正負極の集電体に短絡電流が流れることを抑制することができる。
【0036】
また、接続部37に電極接続部23を接続する方法は、例えば、超音波溶接、スポット溶接、レーザ溶接などにより接続することができる。
また、正極集電体3が有する接続部37に複数の正極21の電極接続部23を接続し、負極集電体4が有する接続部37に複数の負極22の電極接続部23を接続することができる。この場合、複数の電極接続部23を重ねて集電体7の電極接続部23に接続することができる。
【0037】
集電体7の接続部37は、
図5、11、13のようにコの字形の断面を有することができる。また、集電体7の接続部37は、
図12のようにN字形の断面を有することができる。このことにより、
図5のように接続部37の両側の面にそれぞれ発電要素12(電極の電極接続部23)を接続することができる。このことにより、多くの電極(正極21または負極22)を集電体7に接続することができる。発電要素12は
図6のように正極21とセパレータ24と負極22とが積層されており活物質層の積層部分と電極接続部23を重ねた部分では厚さが異なる。このため、集電体7の1つの面に重ねて接続することができる電極接続部23の数にはある程度限界がある。
【0038】
接続部37がコの字形の断面またはNの字形の断面を有することにより、電極接続部23が接続する面をある程度距離をおいて2つ設けることができる。このことにより、発電要素に無理な変形を強いることなく、多数の電極を集電体につなぐことができる。
図5に示したリチウムイオン電池では、正極集電体3が2つの足部33を有し、この2つの足部33はそれぞれコの字形の断面を有する接続部37を有するため、接続部37の4つの面にそれぞれ異なる発電要素12に含まれる正極21の電極接続部23を接続することができる。また、負極集電体4が2つの足部33を有し、この2つの足部33はそれぞれコの字形の断面を有する接続部37を有するため、接続部37の4つの面にそれぞれ異なる発電要素12に含まれる負極22の電極接続部23を接続することができる。リチウムイオン電池20がこのような構成を有することにより、積層された正極21および負極22を集電体7に多く接続することができ、リチウムイオン電池のエネルギー容量を多くすることができる。
【0039】
屈曲部36は、足部33が屈曲された部分であり、基部32と接続部37との間に設けられる。集電体12が屈曲部36を有することにより、発電要素12を集電体7とつなぐ電極の電極接続部23を発電要素の上部ではなく、側部に設けることが可能となる。そうすることで、発電要素12の上側に集電体7の基部32および外部接続端子8a、8bを配置することができ、リチウムイオン電池の上面に外部接続端子8a、8bが配置されリチウムイオン電池の充放電のために外部配線との接続が容易になる。
屈曲部36の角度は、例えば、45度以上110度以下とすることができる。また、屈曲部36にはRを持たせることが好ましく、その際の屈曲部36に設けるRの円弧半径(内側の面)は、0.01mm以上5mm以下とすることができる。
【0040】
緩衝部35は、基部32と屈曲部36との間に設けられる。基部32と隣接して設けることができる。また、緩衝部35は、足部33の付け根(基部と足部の境界部であって、基部と足部の間の点線部分)から屈曲部36までの部分である。
緩衝部35は、図
13に示した緩衝部35が設けられていない集電体107に含まれる基部132の足部133の付け根の少なくとも一方の側部に接するように切欠き部40を設けることにより形成されてもよい。切欠き部40は、基部132の蓋部材側の面に平行な方向に切欠いた部分であってもよい。緩衝部35を設けることにより、振動応力を前記屈曲部から分散することができる。
【0041】
切欠き部40は、例えば、
図14の(a)〜(f)のように足部33の付け根の一方の側部に接するように設けることができる。
図14(a)〜(f)は、それぞれ集電体7の一部の概略上面図である。切欠き部40は、
図14(a)のように基部32の角部を切欠くように設けてもよく、
図14(b)〜(f)のように基部32に様々な形で切込みを入れるように設けてもよい。
【0042】
また、緩衝部35は、足部33の第1の側面における屈曲部36の緩衝部35側の端から足部33の付け根までの長さが、足部33の第2の側面よりも2倍以上長くなるように設けられてもよい。緩衝部を大きく形成することができ、振動応力を分散することができる。
緩衝部35は例えば、
図9(a)、
図10、
図11(a)、
図12(a
)に示したような斜線部分である。基部32にこのような緩衝部35を設けることにより、リチウムイオン電池20に振動が加えられた際に集電体7が破断することを抑制することができる。以下にこのことを説明する。
【0043】
リチウムイオン電池20に振動を加え続けると、電池ケース17と発電要素12との間で振動周期にズレが生じてくると考えられる。そして、集電体7の基部32は電池ケース17に固定されているため、電池ケース17と実質的に振動周期が一致して振動するが、集電体7の足部33には発電要素12が固定されているため、発電要素12と実質的に振動周期が一致して振動すると考えられる。このため、集電体7の基部32と接続部37との間に周期のズレにより引き起こされる基部32に対する足部33の振動が起こり、この振動により大きな応力が生じると考えられる。そして、集電体7は、基部32と足部33との間に屈曲部36を有しており、振動周期のズレにより生じた応力は、屈曲部36に集中することとなる。そうすると、屈曲部36で集電体7が破断してしまうと考えられる。
【0044】
本発明の集電体7は、足部33の付け根部分と屈曲部36との間に緩衝部35が設けられている。屈曲部36に集中していた振動応力が、緩衝部35を設けることにより、緩衝部35も振動の際に動くことが可能であるため、基部32と接続部37との間の振動応力を屈曲部36から緩衝部35に分散することができると考えられる。このため、大きな振動応力が一箇所に集中することを抑制することができ、集電体7が破断することを抑制することができる。
【0045】
4.シュリンクチューブ
リチウムイオン電池20は、発電要素12、正極集電体3および負極集電体4を一体に束ねるシュリンクチューブ15を備えることができる。
シュリンクチューブ15は、管状の樹脂フィルムであり、発電要素12と正極集電体3と負極集電体4を一体に束ねて熱収縮させている。また、シュリンクチューブ15は発電要素12と正極集電体3と負極集電体4を覆っている。
また、シュリンクチューブ15は、熱融着させた継ぎ目を有してもよく、継ぎ目を有していないシームレスチューブであってもよい。シュリンクチューブ15を設けることにより、発電要素12の膨らみやズレを抑えることができ、発電要素12に含まれる正極21や負極22がばらばらになることを防止することができる。特に発電要素12が積層構造である場合、シュリンクチューブ15は、正極21及び負極22を固定する部品となる、つまり、シュリンクチューブ15は、発電要素12の形状維持部材としても機能している。
【0046】
シュリンクチューブ15は、正極集電体3と負極集電体4と発電要素12とを包囲することができる。このことにより、シュリンクチューブ15により正極集電体3と負極集電体4と発電要素12を一体化することができ、電池に振動が加えられた際に、正極集電体3と負極集電体4と発電要素12が別々に振動することを抑制することができる。
また、シュリンクチューブ15は、発電要素12、正極集電体3および負極集電体4に密着することができる。このことにより、正極集電体3と負極集電体4と発電要素12を一体化することができ、電池の耐振動性を向上させることができる。
【0047】
シュリンクチューブ15の材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フッ素系樹脂(FEPやPTFEなど)などの熱収縮可能な樹脂である。シュリンクチューブ15を熱収縮させることで、包み込んだ正極集電体3と負極集電体4と発電要素12とを一体に束ねて密着性を高めることができるので、リチウムイオン電池に与えられる振動による発電要素12と各集電体との接続部分への影響を抑制することができる。また、シュリンクチューブ15をシームレスとすることで熱収縮した際の融着部分とそれ以外の部分の収縮率の差による応力が無くなるため、シュリンクチューブ15が継ぎ目から裂けることを抑制することができる。このため、歩留まりも向上させることができる。なお、弾性ゴムを薄い筒状に形成したもので、正極集電体3と負極集電体4と発電要素12とを一体に束ねることも考えられるが、包囲される正極集電体3と負極集電体4と発電要素12への締めつけ力をバランスよく安定にするには熱収縮させたシュリンクチューブ15の方が望ましい。
シュリンクチューブ15を構成するフィルムの厚さは、30μm以上200μm以下とすることができる。シュリンクチューブ15の厚さを30μm以上とすることにより、シュリンクチューブ15が十分な強度を有することができ、電池を振動させてもシュリンクチューブ15が裂けることを防止することができる。また、シュリンクチューブ15の厚さを200μm以下とすることにより、シュリンクチューブ15を熱収縮させる時間を短くすることまたは熱収縮させる際の温度を低くすることができ、熱収縮させる際に加える熱が発電要素12に影響を与えることを抑制することができる。
シュリンクチューブ15を構成するフィルムの厚さは、さらに好ましくは50μm以上150μm以下である。このことにより、シュリンクチューブが十分な強度を有することができ、熱収縮させる際の発電要素への影響をさらに小さくすることができる。
【0048】
振動試験
図6に示したような発電要素を有する
図1〜5に示したようなリチウムイオン電池であって、正極集電体および負極集電体の形態を変えた3種類のリチウムイオン電池(実施例1〜3)をそれぞれ5個ずつ作製し、振動実験を行った。また、比較例として、
図6に示したような発電要素を有する
図1〜5に示したようなリチウムイオン電池であって、集電体に緩衝部を設けていない2種類のリチウムイオン電池(比較例1、2)をそれぞれ5個ずつ作製し、振動実験を行った。
シュリンクチューブの材質は、ポリエチレンとした。また、正極集電体および負極集電体の接続部の長さは8cmとした。また、正極集電体は厚さ1.5mmのアルミニウムの金属板を加工することにより作製し、負極集電体は厚さ1.5mmの銅の金属板を加工することにより作製した。
【0049】
1.振動試験の試験方法
作製したリチウムイオン電池を振動装置のプラットフォーム(振動台)にしっかりと固定し、プラットフォームを正弦波形で振動させリチウムイオン電池の振動試験を行った。振動試験は、電池のX方向、Y方向、Z方向に対してそれぞれ振動試験サイクルを12回ずつ行った。1回の振動試験サイクルは、7Hz→200Hz→7Hzを15分で対数掃引することにより周波数を変化させながら電池を振動させた。すなわち、各方向に3時間ずつ電池を振動させた。
振動試験サイクルでは、周波数7Hz〜18Hzにおいては、ピーク加速度を1Gに維持し、周波数18Hz〜50Hzでは、振動幅を0.8mm(全振幅1.6mm)に保ち、ピーク加速度が8Gとなるまで加速度を増加させた。周波数50Hz〜200Hzでは、ピーク加速度を8Gに維持した。
【0050】
2.比較例1
比較例1では、図
13に示したような緩衝部を設けていない形状を有する正極集電体および負極集電体を用いてリチウムイオン電池を作製し、振動試験を行った。また、シュリンクチューブは、厚さ50μmのポリエチレンフィルムで発電要素、正極集電体および負極集電体を一重に巻き重なり合う部分を熱融着させ、このポリエチレンフィルムを熱収縮させることにより設けた。
振動試験後のリチウムイオン電池を分解すると、試験を行った電池すべてで、集電体の足部が屈曲部で破断したことが確認された。
比較例1で作製したリチウムイオン電池の集電体は、基部と屈曲部とが隣接しているため、振動により集電体の接続部に力が加わると接続部は、屈曲部を支点として振動すると考えられる。このため、屈曲部に振動応力が集中し金属疲労が生じたため、集電体の足部は破断したと考えられる。
【0051】
3.比較例2
比較例2では、
図13に示したような緩衝部を設けていない形状を有する正極集電体および負極集電体を用いてリチウムイオン電池を作製し、振動試験を行った。また、シュリンクチューブは、厚さ50μmのポリエチレンフィルムで発電要素、正極集電体および負極集電体を一重に巻き重なり合う部分を熱融着させ、さらに、その上から厚さ50μmのポリエチレンフィルムで発電要素、正極集電体および負極集電体を一重に巻き重なり合う部分を熱融着させ、これらのポリエチレンフィルムを熱収縮させることにより設けた。
振動試験後のリチウムイオン電池を分解すると、試験を行った電池すべてで、集電体の足部が屈曲部で破断したことが確認された。
【0052】
4.実施例1
実施例1では、
図9に示したような緩衝部を設けた形状を有する正極集電体および負極集電体を用いてリチウムイオン電池を作製し、振動試験を行った。また、シュリンクチューブは、厚さ50μmのポリエチレンフィルムで発電要素、正極集電体および負極集電体を一重に巻き重なり合う部分を熱融着させ、このポリエチレンフィルムを熱収縮させることにより設けた。
振動試験後のリチウムイオン電池を分解すると、試験を行った電池すべてで、集電体の足部が破断することもなく、ひびも入らないことが確認された。
実施例1で作製したリチウムイオン電池の集電体は、基部と屈曲部との間に緩衝部を設けているため、基部と接続部との間に生じる振動応力が分散され、集電体の足部は破断しなかったものと考えられる。
【0053】
5.実施例2
実施例2では、
図11に示したような緩衝部を設けた形状を有する正極集電体および負極集電体を用いてリチウムイオン電池を作製し、振動試験を行った。また、シュリンクチューブは、厚さ50μmのポリエチレンフィルムで発電要素、正極集電体および負極集電体を一重に巻き重なり合う部分を熱融着させ、このポリエチレンフィルムを熱収縮させることにより設けた。
振動試験後のリチウムイオン電池を分解すると、試験を行った電池すべてで、集電体の足部が破断することもなく、ひびも入らないことが確認された。
実施例2で作製したリチウムイオン電池の集電体は、基部と屈曲部との間に緩衝部を設けているため、基部と接続部との間に生じる振動応力が分散され、集電体の足部は破断しなかったものと考えられる。
【0054】
6.実施例3
実施例3では、
図12に示したような緩衝部を設けた形状を有する正極集電体および負極集電体を用いてリチウムイオン電池を作製し、振動試験を行った。また、シュリンクチューブは、厚さ50μmのポリエチレンフィルムで発電要素、正極集電体および負極集電体を一重に巻き重なり合う部分を熱融着させ、このポリエチレンフィルムを熱収縮させることにより設けた。
振動試験後のリチウムイオン電池を分解すると、試験を行った電池すべてで、集電体の足部が破断することもなく、ひびも入らないことが確認された。
実施例3で作製したリチウムイオン電池の集電体は、基部と屈曲部との間に緩衝部を設けているため、基部と接続部との間に生じる振動応力が分散され、集電体の足部は破断しなかったものと考えられる。