特許第6056051号(P6056051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6056051インストルメントパネル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056051
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】インストルメントパネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/215 20110101AFI20161226BHJP
   B60K 37/00 20060101ALI20161226BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20161226BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20161226BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20161226BHJP
   B29L 31/58 20060101ALN20161226BHJP
【FI】
   B60R21/215
   B60K37/00 G
   B60K37/00 B
   B60K37/00 J
   B29C39/10
   B60R21/205
   B29K105:04
   B29L31:58
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-86782(P2013-86782)
(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公開番号】特開2014-210467(P2014-210467A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 秀雄
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−031777(JP,A)
【文献】 特開平11−198751(JP,A)
【文献】 特開2000−280848(JP,A)
【文献】 特開2009−227168(JP,A)
【文献】 特開2010−241241(JP,A)
【文献】 特開2011−020653(JP,A)
【文献】 特開2000−071921(JP,A)
【文献】 特開2005−212695(JP,A)
【文献】 特開2002−220018(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0214399(US,A1)
【文献】 特開2002−104125(JP,A)
【文献】 特開2010−208160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
B29C 39/10
B60K 37/00
B29K 105/04
B29L 31/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のダッシュボードに設けられるインストルメントパネルであって、
該インストルメントパネルは、助手席側に位置するエアバッグ用開口穴が設けられた上面部、及び該上面部から下方に曲面状に折り返して、室内後方側に向けて凸状に湾曲する湾曲部を有する樹脂基材部と、
上記エアバッグ用開口穴を閉塞するドア部、及び該ドア部の裏側面から突出して設けられたリブを有するエアバッグドアリテーナと、
上記樹脂基材部に対する室内側に配置される表皮部と、
該表皮部と上記樹脂基材部及び上記エアバッグドアリテーナとを接合して一体化するための発泡性樹脂充填部と、を備えており、
上記湾曲部の裏側面には、上記リブが形成された自動車の左右方向の範囲内で該リブと上記湾曲部との間に形成されるアンダーカット空間において、該湾曲部の裏側面を補強する補強部が設けられており、
上記湾曲部は、上記上面部に繋がる曲面状の屈曲部と、該屈曲部に繋がり、上記アンダーカット空間の開口側から奥側へ向かうほど上記リブとの間の間隔を拡大させる平板状の折返し端部とを有しており、
上記補強部は、上記屈曲部の裏側面の一部に設けられており、
上記アンダーカット空間の開口部から、上記折返し端部の裏側面に沿って上記アンダーカット空間の奥側を見たときに、上記補強部の一部が視認できる位置にあるとともに、上記補強部の残部が、上記リブによって視認できない位置にあることを特徴とするインストルメントパネル。
【請求項2】
請求項に記載のインストルメントパネルにおいて、上記補強部は、上記湾曲部の裏側面において上記リブが形成された自動車の左右方向の範囲内において、適宜間隔を空けて左右方向に並ぶよう複数箇所に設けられていることを特徴とするインストルメントパネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインストルメントパネルにおいて、上記補強部は、上記樹脂基材部に一体成形されていることを特徴とするインストルメントパネル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインストルメントパネルにおいて、上記補強部は、上記樹脂基材部の裏側面に一体成形された台座部と、該台座部に対して取り付けられた補強ブラケットとによって構成されていることを特徴とするインストルメントパネル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のインストルメントパネルを製造する方法であって、
上記表皮部の表側面と対面する成形面を有する表皮側成形型と、上記樹脂基材部の裏側面と対面する成形面を有し、上記アンダーカット空間に配置されて上記湾曲部の裏側面及び上記補強部を受けるための突出部を有する基材側成形型と、上記エアバッグドアリテーナの裏側面と対面する成形面を有し、上記リブの形成方向に沿ってスライド可能なスライド成形型とを用い、
上記表皮側成形型と上記基材側成形型及び上記スライド成形型とを組み合わせて形成される空間内に、上記表皮部、上記樹脂基材部及び上記エアバッグドアリテーナを配置する配置工程と、
上記表皮側成形型の成形面によって上記表皮部の表側面を受け、上記基材側成形型の成形面によって上記樹脂基材部の裏側面を受け、上記スライド成形型によって上記エアバッグドアリテーナの裏側面を受け、上記突出部によって上記湾曲部の裏側面及び上記補強部を受けた状態で、上記表皮部と上記樹脂基材部及び上記エアバッグドアリテーナとの間に形成される隙間に、上記発泡性樹脂充填部を構成するための発泡性樹脂材料を充填する充填工程と、
上記スライド成形型を上記エアバッグドアリテーナの裏側面から離型させた後、上記突出部を上記アンダーカット空間の開口部から抜き出すよう上記基材側成形型を上記樹脂基材部の裏側面から離型させ、かつ、上記表皮側成形型を上記表皮部の表側面から離型させて、上記発泡性樹脂材料が固化して形成される上記発泡性樹脂充填部によって上記表皮部と上記樹脂基材部及び上記エアバッグドアリテーナとが一体化されたインストルメントパネルを取り出す取出工程と、を行うことを特徴とするインストルメントパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のダッシュボードに設けられるインストルメントパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の室内の前部座席の前には、計器類、スイッチ類等が配置されるインストルメントパネルが設けられている。インストルメントパネルは、背面側に配置される樹脂基材部と室内側に配置される表皮部とを、発泡性樹脂充填部によって接合して形成される。また、インストルメントパネルの助手席側に位置には、エアバッグ展開時に開口するエアバッグドアリテーナが設けられる。
エアバッグドアリテーナの裏側面には、エアバッグの展開を案内するリブが設けられる。そして、表皮部と樹脂基材部及びエアバッグドアリテーナとの間に、発泡性樹脂充填部を構成する発泡性樹脂材料を充填している。
【0003】
このようなインストルメントパネルを製造する方法としては、例えば、特許文献1の表皮付き発泡成形部材のシール構造に開示されたパウダースラッシュ成形法等がある。特許文献1においては、表皮シール部の裏面に変形抑制部を形成し、発泡成形型を型閉めする際に、変形抑制部によって表皮シール部の変形を許容範囲内に規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−342916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インストルメントパネルの室内後方側の部分は、成形時において、エアバッグドアリテーナのリブとの間に、成形後の成形品を容易に離型するために、いわゆるアンダーカット空間が形成されない形状にしている。そのため、インストルメントパネルの室内後方側の部分の意匠形状には制約があった。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、室内後方側の部分に湾曲部を有する意匠形状のインストルメントパネルを容易に成形することができるインストルメントパネル及びその製造方法を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、自動車のダッシュボードに設けられるインストルメントパネルであって、
該インストルメントパネルは、助手席側に位置するエアバッグ用開口穴が設けられた上面部、及び該上面部から下方に曲面状に折り返して、室内後方側に向けて凸状に湾曲する湾曲部を有する樹脂基材部と、
上記エアバッグ用開口穴を閉塞するドア部、及び該ドア部の裏側面から突出して設けられたリブを有するエアバッグドアリテーナと、
上記樹脂基材部に対する室内側に配置される表皮部と、
該表皮部と上記樹脂基材部及び上記エアバッグドアリテーナとを接合して一体化するための発泡性樹脂充填部と、を備えており、
上記湾曲部の裏側面には、上記リブが形成された自動車の左右方向の範囲内で該リブと上記湾曲部との間に形成されるアンダーカット空間において、該湾曲部の裏側面を補強する補強部が設けられており、
上記湾曲部は、上記上面部に繋がる曲面状の屈曲部と、該屈曲部に繋がり、上記アンダーカット空間の開口側から奥側へ向かうほど上記リブとの間の間隔を拡大させる平板状の折返し端部とを有しており、
上記補強部は、上記屈曲部の裏側面の一部に設けられており、
上記アンダーカット空間の開口部から、上記折返し端部の裏側面に沿って上記アンダーカット空間の奥側を見たときに、上記補強部の一部が視認できる位置にあるとともに、上記補強部の残部が、上記リブによって視認できない位置にあることを特徴とするインストルメントパネルにある(請求項1)。
【0008】
本発明の他の態様は、上記インストルメントパネルを製造する方法であって、
上記表皮部の表側面と対面する成形面を有する表皮側成形型と、上記樹脂基材部の裏側面と対面する成形面を有し、上記アンダーカット空間に配置されて上記湾曲部の裏側面及び上記補強部を受けるための突出部を有する基材側成形型と、上記エアバッグドアリテーナの裏側面と対面する成形面を有し、上記リブの形成方向に沿ってスライド可能なスライド成形型とを用い、
上記表皮側成形型と上記基材側成形型及び上記スライド成形型とを組み合わせて形成される空間内に、上記表皮部、上記樹脂基材部及び上記エアバッグドアリテーナを配置する配置工程と、
上記表皮側成形型の成形面によって上記表皮部の表側面を受け、上記基材側成形型の成形面によって上記樹脂基材部の裏側面を受け、上記スライド成形型によって上記エアバッグドアリテーナの裏側面を受け、上記突出部によって上記湾曲部の裏側面及び上記補強部を受けた状態で、上記表皮部と上記樹脂基材部及び上記エアバッグドアリテーナとの間に形成される隙間に、上記発泡性樹脂充填部を構成するための発泡性樹脂材料を充填する充填工程と、
上記スライド成形型を上記エアバッグドアリテーナの裏側面から離型させた後、上記突出部を上記アンダーカット空間の開口部から抜き出すよう上記基材側成形型を上記樹脂基材部の裏側面から離型させ、かつ、上記表皮側成形型を上記表皮部の表側面から離型させて、上記発泡性樹脂材料が固化して形成される上記発泡性樹脂充填部によって上記表皮部と上記樹脂基材部及び上記エアバッグドアリテーナとが一体化されたインストルメントパネルを取り出す取出工程と、を行うことを特徴とするインストルメントパネルの製造方法にある(請求項)。
【発明の効果】
【0009】
上記インストルメントパネルにおいては、樹脂基材部に、上面部から下方に曲面状に折り返して、室内後方側に向けて凸状に湾曲する湾曲部を設けている。また、エアバッグドアリテーナのリブと湾曲部との間には、開口側よりも奥側の幅が大きくなったアンダーカット空間が形成されている。そして、アンダーカット空間が形成される場合であっても、インストルメントパネルの成形を容易に行うことができる工夫をしている。
具体的には、樹脂基材部における湾曲部の裏側面には、湾曲部の裏側面を補強する補強部が設けられている。この補強部は、リブが形成された左右方向の範囲内でリブと湾曲部との間に形成されるアンダーカット空間に設けられている。
【0010】
そして、表皮部と樹脂基材部及びエアバッグドアリテーナとを、発泡性樹脂充填部によって一体化する樹脂の発泡成形を行う際には、樹脂基材部の湾曲部に加わる圧力を補強部によって受けることができる。そのため、湾曲部の形成によってアンダーカット空間を有するインストルメントパネルの成形を容易に行うことができる。これにより、室内後方側の部分に湾曲部を有する意匠形状のインストルメントパネルを容易に成形することができる。
【0011】
上記インストルメントパネルの製造方法においては、表皮側成形型、突出部を有する基材側成形型、及びリブの形成方向に沿ってスライド可能なスライド成形型を用いることにより、アンダーカット空間を有するインストルメントパネルの成形を容易にしている。
そして、充填工程においては、突出部によって湾曲部の裏側面及び補強部を受けた状態で、表皮部と樹脂基材部及びエアバッグドアリテーナとを組み合わせて形成される空間内に、発泡性樹脂材料を充填する。このとき、樹脂基材部における湾曲部の裏側面に設けられた補強部によって湾曲部を支え、発泡性樹脂材料が発泡する際に加わる圧力によって湾曲部が変形しないようにすることができる。
【0012】
その後、取出工程においては、スライド成形型をエアバッグドアリテーナの裏側面から離型させた後に、基材側成形型を樹脂基材部の裏側面から離型させることにより、突出部をアンダーカット空間の開口部から容易に抜き出すことができる。これにより、成形後のインストルメントパネルを、各成形型から容易に取り出すことができる。
このように、樹脂基材部における湾曲部の裏側面に補強部を設けたことにより、湾曲部の形成によってアンダーカット空間を有するインストルメントパネルの成形を容易に行うことができる。
これにより、室内後方側の部分に湾曲部を有する意匠形状のインストルメントパネルを容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1にかかる、インストルメントパネルにおけるエアバッグドアリテーナの配置箇所を自動車の前後方向に切断して、自動車の左右方向から見た状態で示す断面図。
図2】実施例1にかかる、樹脂基材部の裏側面からエアバッグドアリテーナ及び補強部の周辺を見た状態を示す斜視図。
図3】実施例1にかかる、表皮側成形型と基材側成形型及びスライド成形型とを組み合わせて形成される空間内に、表皮部、樹脂基材部及びエアバッグドアリテーナを配置した状態を示す断面図。
図4】実施例1にかかる、表皮部と樹脂基材部及びエアバッグドアリテーナとの間に形成される隙間に、発泡性樹脂充填部を発泡成形した状態を示す断面図。
図5】実施例2にかかる、インストルメントパネルにおけるエアバッグドアリテーナの配置箇所を自動車の前後方向に切断して、自動車の左右方向から見た状態で示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述したインストルメントパネル及びその製造方法における好ましい実施の形態につき説明する。
上記インストルメントパネルにおいては、上記湾曲部は、上記上面部に繋がる曲面状の屈曲部と、該屈曲部に繋がり、上記アンダーカット空間の開口側から奥側へ向かうほど上記リブとの間の間隔を拡大させる折返し端部とを有しており、上記補強部は、上記屈曲部の裏側面の一部に設けられている。
これにより、表皮部と樹脂基材部及びエアバッグドアリテーナとを、発泡性樹脂充填部によって一体化する樹脂の発泡成形を行う際に、アンダーカット空間の開口側から奥側に成形型の一部を挿入し、この成形型の一部によって、成形時の圧力から屈曲部の裏側面を直接支えることができる。
【0015】
また、上記補強部は、上記表皮部と上記樹脂基材部及び上記エアバッグドアリテーナとを、上記発泡性樹脂充填部によって一体化する樹脂の発泡成形を行う際に、裏側面から成形型の一部によって支持される支持部を有していてもよい。
この場合には、成形型の一部によって補強部における支持部を支持することにより、樹脂基材部の湾曲部が変形しないようにすることができる。
【0016】
また、上記補強部は、上記湾曲部の裏側面において上記リブが形成された自動車の左右方向の範囲内において、適宜間隔を空けて左右方向に並ぶよう複数箇所に設けられていてもよい(請求項)。
この場合には、補強部を複数箇所に分散して設けることにより、樹脂基材部における湾曲部の必要に応じた強度を確保することが容易になる。
【0017】
また、上記補強部は、上記樹脂基材部に一体成形されていてもよい(請求項)。
この場合には、樹脂基材部を成形する際に補強部を容易に形成することができる。
【0018】
また、上記補強部は、上記樹脂基材部の裏側面に一体成形された台座部と、該台座部に対して取り付けられた補強ブラケットとによって構成されていてもよい(請求項)。
この場合には、補強ブラケットを取り付けることによって、樹脂基材部における湾曲部に、必要に応じた強度を容易に確保することができる。
【実施例】
【0019】
以下に、インストルメントパネルにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例のインストルメントパネル1は、図1図2に示すごとく、自動車の車室内の前部座席の前方に位置するダッシュボードに設けられる。インストルメントパネル1は、樹脂基材部2、エアバッグドアリテーナ3、表皮部4及び発泡性樹脂充填部5を備えている。樹脂基材部2は、助手席側に位置するエアバッグ用開口穴21が設けられた上面部22と、上面部22から下方に曲面状に折り返して、室内後方側L1に向けて凸状に湾曲する湾曲部23とを有する。
【0020】
エアバッグドアリテーナ3は、エアバッグ用開口穴21を閉塞するドア部31と、ドア部31の裏側面から突出して設けられたリブ32とを有する。表皮部4は、樹脂基材部2に対する室内側に配置され、室内側の表面を形成する部分となる。発泡性樹脂充填部5は、表皮部4と樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3とを接合して一体化する部分となる。
湾曲部23の裏側面201には、リブ32が形成された自動車の左右方向Wの範囲内でリブ32と湾曲部23との間に形成されるアンダーカット空間Sにおいて、湾曲部23の裏側面201を補強する補強部24が設けられている。
【0021】
以下に、本例のインストルメントパネル1につき、図1図4を参照して詳説する。
図1に示すごとく、本例のインストルメントパネル1は、助手席の前方にエアバッグ装置6を備える自動車に用いられる。そして、助手席の前方に設けられるエアバッグ装置6の展開を案内するエアバッグドアリテーナ3の周辺の構造に工夫をしている。
ここで、図1は、インストルメントパネル1におけるエアバッグドアリテーナ3の配置箇所を自動車の前後方向Lに切断して、自動車の左右方向Wから見た状態で示す。同図において、自動車における上方を矢印H1で示す。
【0022】
樹脂基材部2は、インストルメントパネル1の基材となる熱可塑性樹脂によって形成されている。樹脂基材部2の上面部22は、前方側に位置する上面前方部分221と、上面前方部分221の後端部から下方へ下がった段差部222と、段差部222から後方側に向けて形成された上面後方部分223とを有している。湾曲部23は上面後方部分223の後端部から形成されている。エアバッグ用開口穴21は、上面後方部分223の助手席側の位置において、略四角形状の開口として形成されている。
【0023】
表皮部4は、パウダースラッシュ成形法等により、樹脂基材部2よりも厚みが薄い熱可塑性樹脂によって形成されている。
発泡性樹脂充填部5は、発泡性樹脂材料としての、発泡剤を含む樹脂材料を発泡成形して形成されている。発泡性樹脂充填部5は、樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3と表皮部4との間に配置されている。発泡性樹脂充填部は、樹脂基材部2の厚みよりも厚く形成されている。
【0024】
図1に示すごとく、湾曲部23は、上面後方部分223に繋がる曲面状の屈曲部231と、屈曲部231に繋がり、アンダーカット空間Sの開口側から奥側へ向かうほど、エアバッグドアリテーナ3のリブ32との間の間隔を拡大させる平板状の折返し端部232とを有している。
エアバッグドアリテーナ3のドア部31は、樹脂基材部2のエアバッグ用開口穴21の周縁部の上面に重なって、エアバッグ用開口穴21を閉塞する。また、ドア部31は、エアバッグ装置6が展開するときに破断されて、ドア部31を開口させるための開口用破断部311を有している。エアバッグドアリテーナ3のリブ32は、ドア部31の裏側面から環形状を有して突出している。また、リブ32は、略四角形状のエアバッグ用開口穴21の形状に沿って、略四角環形状を有して突出している。
【0025】
図2は、樹脂基材部2の裏側面201からエアバッグドアリテーナ3及び補強部24の周辺を見た状態を示す。
同図に示すごとく、略四角環形状のリブ32は、自動車の左右方向Wに略平行に設けられた前方リブ321及び後方リブ322と、前方リブ321と後方リブ322とを繋ぐよう自動車の前後方向Lに略平行に設けられた一対の側方リブ323とからなる。アンダーカット空間Sは、樹脂基材部2の湾曲部23と後方リブ322との間の空間として形成される。
図1に示すごとく、アンダーカット空間Sの開口部S1は、エアバッグドアリテーナ3における後方リブ322の先端部と、樹脂基材部2における折返し端部232との間に形成されている。アンダーカット空間Sは、後方リブ322と折返し端部232との間の間隔が、開口側から奥側に行くに連れて袋状に広がって形成されている。
【0026】
補強部24は、屈曲部231の裏側面201において上面後方部分223に近い側に形成されているとともに、屈曲部231の裏側面201において折返し端部232に近い側には形成されていない。補強部24は、表皮部4と樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3とを、発泡性樹脂充填部5によって一体化する樹脂の発泡成形を行う際に、補強部24の裏側面202から、後述する基材側成形型72における突出部721によって支持される支持部241を有している。
そして、アンダーカット空間Sの開口部S1から、平板状の折返し端部232の裏側面201に沿ってアンダーカット空間Sの奥側(図1の矢印Aの方向)を見たときに、屈曲部231の裏側面201における補強部24の支持部241が視認できる位置にあるとともに、補強部24の残りの部分242は、後方リブ322によってほとんど見えなくなる位置にある。
【0027】
図2に示すごとく、補強部24は、湾曲部23の裏側面201において後方リブ322が形成された左右方向Wの範囲内において、適宜間隔を空けて左右方向Wに並ぶよう複数箇所に設けられている。補強部24は、樹脂基材部2に一体成形されている。また、複数箇所に設けられた各補強部24は、前後方向Lに延びる板形状に形成されている。
【0028】
本例のインストルメントパネル1を製造するに当たっては、表皮側成形型71、基材側成形型72及びスライド成形型73を用いる。
また、本例の製造方法においては、パウダースラッシュ成形法、発泡成形法等により、各成形型71,72,73内に配置した、樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3と表皮部4とを接合してインストルメントパネル1を成形する。樹脂基材部2、エアバッグドアリテーナ3及び表皮部4は、樹脂の成形を行って予め製造しておく。
【0029】
図3に示すごとく、表皮側成形型71は、表皮部4の表側面と対面する成形面を有している。この成形面は、表皮部4の形状に沿った形状に形成されている。基材側成形型72は、樹脂基材部2の裏側面201と対面する成形面を有している。この成形面は、樹脂基材部2の形状に沿った形状に形成されている。基材側成形型72は、アンダーカット空間Sに配置されて湾曲部23の裏側面201及び補強部24を受ける突出部721を有している。突出部721は、エアバッグドアリテーナ3の後方リブ322における先端部と、樹脂基材部2の湾曲部23における折返し端部232との間の開口部S1から、アンダーカット空間Sに挿入される。そして、突出部721の先端部は、湾曲部23における屈曲部231の裏側面201を受ける(内側から押さえる)とともに、補強部24の支持部241の裏側面202を受ける(内側から押さえる)形状に形成されている。
【0030】
スライド成形型73は、エアバッグドアリテーナ3のドア部31の裏側面と対面する成形面を有している。この成形面は、エアバッグドアリテーナ3における略四角環形状のリブ32内にスライドして、ドア部31の裏側面を受ける(内側から押さえる)形状に形成されている。スライド成形型73は、略四角環形状を形成する前方リブ321、後方リブ322及び一対の側方リブ323の形成方向に沿ってスライド可能である。
【0031】
発泡性樹脂充填部5の発泡成形を行うに当たっては、図3に示すごとく、配置工程として、表皮側成形型71と基材側成形型72及びスライド成形型73とを組み合わせて形成される空間70内に、表皮部4、樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3を配置する。この配置を行うときには、基材側成形型72の成形面に樹脂基材部2を配置し、樹脂基材部2のエアバッグ用開口穴21にエアバッグドアリテーナ3を配置する。そして、エアバッグドアリテーナ3の略四角環形状のリブ32内にスライド成形型73を挿入して配置する。また、基材側成形型72に配置された樹脂基材部2に対して表皮部4を配置し、基材側成形型72及びスライド成形型73に対して、表皮側成形型71を合わせる。
【0032】
次いで、図4に示すごとく、充填工程として、表皮部4と樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3との間に形成される隙間Cに、発泡性樹脂充填部5を構成するための、発泡剤を含む発泡性ウレタン50を投入する。そして、型内70において、発泡性ウレタン50が発泡し、隙間Cに充填される。
【0033】
この発泡成形を行うときには、樹脂基材部2、エアバッグドアリテーナ3及び表皮部4には、発泡性ウレタン50が発泡するときの圧力が加わる。そして、この発泡成形を行うときには、表皮側成形型71の成形面によって表皮部4の表側面を受け、基材側成形型72の成形面によって樹脂基材部2の裏側面201を受け、スライド成形型73によってエアバッグドアリテーナ3のドア部31の裏側面を受け、突出部721によって湾曲部23における屈曲部231及び折返し端部232の裏側面201と、補強部24の支持部241における裏側面202とを受ける。
充填工程においては、樹脂基材部2における湾曲部23の裏側面201に設けられた補強部24によって湾曲部23を支え、発泡性ウレタン50が発泡する際に加わる圧力によって湾曲部23が変形しないようにすることができる。
【0034】
そして、発泡性ウレタン50の発泡成形が行われた後には、発泡性ウレタン50が固化して発泡性樹脂充填部5が形成され、発泡性樹脂充填部5によって、表皮部4と樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3とが接合されて一体化されたインストルメントパネル1が成形される。
次いで、取出工程として、スライド成形型73をエアバッグドアリテーナ3の裏側面から離型させた後、突出部721をアンダーカット空間Sの開口部S1から抜き出すよう基材側成形型72を樹脂基材部2の裏側面201から離型させる。また、表皮側成形型71を表皮部4の表側面から離型させる。そして、成形されたインストルメントパネル1を取り出す。
【0035】
取出工程においては、スライド成形型73をエアバッグドアリテーナ3の裏側面から離型させた後に、基材側成形型72を樹脂基材部2の裏側面201から離型させることにより、突出部721をアンダーカット空間Sの開口部S1から容易に抜き出すことができる。これにより、成形後のインストルメントパネル1を、各成形型71,72,73から容易に取り出すことができる。
【0036】
本例のインストルメントパネル1においては、樹脂基材部2に、上面部22から下方に曲面状に折り返して、室内後方側L1に向けて凸状に湾曲する湾曲部23を設けている。また、エアバッグドアリテーナ3の後方リブ322と湾曲部23との間には、開口側よりも奥側の幅が大きくなったアンダーカット空間Sが形成されている。そして、アンダーカット空間Sが形成される場合であっても、樹脂基材部2に補強部24を形成し、突出部721を有する基材側成形型72及びスライド成形型73を用いることにより、インストルメントパネル1の成形を容易に行うことができる。
それ故、本例のインストルメントパネル1及びその製造方法によれば、室内後方側L1の部分に湾曲部23を有する意匠形状のインストルメントパネル1を容易に成形することができる。
【0037】
(実施例2)
本例は、樹脂基材部2における補強部24Aの構造が上記実施例1とは異なる例である。
図5に示すごとく、本例の補強部24Aは、樹脂基材部2の裏側面201に一体成形された台座部240と、台座部240に対して取り付けられた補強ブラケット26とによって構成されている。本例においては、台座部240とは別に成形した補強ブラケット26を用いることにより、樹脂基材部2の成形を容易にするとともに、補強部24Aの強度を容易に高めることができる。台座部240については、上記実施例1の補強部24と同様に形成することができる。
【0038】
また、補強ブラケット26は、左右方向Wに延びる長尺形状とすることもできる。この場合には、長尺形状の補強ブラケット26は、樹脂基材部2の湾曲部23における左右方向Wの複数箇所に設けられた台座部240に掛け渡して取り付けることができる。
本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 インストルメントパネル
2 樹脂基材部
21 エアバッグ用開口穴
22 上面部
23 湾曲部
231 屈曲部
232 折返し端部
24,24A 補強部
240 台座部
241 支持部
26 補強ブラケット
3 エアバッグドアリテーナ
31 ドア部
32 リブ
4 表皮部
5 発泡性樹脂充填部
S アンダーカット空間
71 表皮側成形型
72 基材側成形型
721 突出部
73 スライド成形型
図1
図2
図3
図4
図5