【実施例】
【0019】
以下に、インストルメントパネルにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例のインストルメントパネル1は、
図1、
図2に示すごとく、自動車の車室内の前部座席の前方に位置するダッシュボードに設けられる。インストルメントパネル1は、樹脂基材部2、エアバッグドアリテーナ3、表皮部4及び発泡性樹脂充填部5を備えている。樹脂基材部2は、助手席側に位置するエアバッグ用開口穴21が設けられた上面部22と、上面部22から下方に曲面状に折り返して、室内後方側L1に向けて凸状に湾曲する湾曲部23とを有する。
【0020】
エアバッグドアリテーナ3は、エアバッグ用開口穴21を閉塞するドア部31と、ドア部31の裏側面から突出して設けられたリブ32とを有する。表皮部4は、樹脂基材部2に対する室内側に配置され、室内側の表面を形成する部分となる。発泡性樹脂充填部5は、表皮部4と樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3とを接合して一体化する部分となる。
湾曲部23の裏側面201には、リブ32が形成された自動車の左右方向Wの範囲内でリブ32と湾曲部23との間に形成されるアンダーカット空間Sにおいて、湾曲部23の裏側面201を補強する補強部24が設けられている。
【0021】
以下に、本例のインストルメントパネル1につき、
図1〜
図4を参照して詳説する。
図1に示すごとく、本例のインストルメントパネル1は、助手席の前方にエアバッグ装置6を備える自動車に用いられる。そして、助手席の前方に設けられるエアバッグ装置6の展開を案内するエアバッグドアリテーナ3の周辺の構造に工夫をしている。
ここで、
図1は、インストルメントパネル1におけるエアバッグドアリテーナ3の配置箇所を自動車の前後方向Lに切断して、自動車の左右方向Wから見た状態で示す。同図において、自動車における上方を矢印H1で示す。
【0022】
樹脂基材部2は、インストルメントパネル1の基材となる熱可塑性樹脂によって形成されている。樹脂基材部2の上面部22は、前方側に位置する上面前方部分221と、上面前方部分221の後端部から下方へ下がった段差部222と、段差部222から後方側に向けて形成された上面後方部分223とを有している。湾曲部23は上面後方部分223の後端部から形成されている。エアバッグ用開口穴21は、上面後方部分223の助手席側の位置において、略四角形状の開口として形成されている。
【0023】
表皮部4は、パウダースラッシュ成形法等により、樹脂基材部2よりも厚みが薄い熱可塑性樹脂によって形成されている。
発泡性樹脂充填部5は、発泡性樹脂材料としての、発泡剤を含む樹脂材料を発泡成形して形成されている。発泡性樹脂充填部5は、樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3と表皮部4との間に配置されている。発泡性樹脂充填部は、樹脂基材部2の厚みよりも厚く形成されている。
【0024】
図1に示すごとく、湾曲部23は、上面後方部分223に繋がる曲面状の屈曲部231と、屈曲部231に繋がり、アンダーカット空間Sの開口側から奥側へ向かうほど、エアバッグドアリテーナ3のリブ32との間の間隔を拡大させる平板状の折返し端部232とを有している。
エアバッグドアリテーナ3のドア部31は、樹脂基材部2のエアバッグ用開口穴21の周縁部の上面に重なって、エアバッグ用開口穴21を閉塞する。また、ドア部31は、エアバッグ装置6が展開するときに破断されて、ドア部31を開口させるための開口用破断部311を有している。エアバッグドアリテーナ3のリブ32は、ドア部31の裏側面から環形状を有して突出している。また、リブ32は、略四角形状のエアバッグ用開口穴21の形状に沿って、略四角環形状を有して突出している。
【0025】
図2は、樹脂基材部2の裏側面201からエアバッグドアリテーナ3及び補強部24の周辺を見た状態を示す。
同図に示すごとく、略四角環形状のリブ32は、自動車の左右方向Wに略平行に設けられた前方リブ321及び後方リブ322と、前方リブ321と後方リブ322とを繋ぐよう自動車の前後方向Lに略平行に設けられた一対の側方リブ323とからなる。アンダーカット空間Sは、樹脂基材部2の湾曲部23と後方リブ322との間の空間として形成される。
図1に示すごとく、アンダーカット空間Sの開口部S1は、エアバッグドアリテーナ3における後方リブ322の先端部と、樹脂基材部2における折返し端部232との間に形成されている。アンダーカット空間Sは、後方リブ322と折返し端部232との間の間隔が、開口側から奥側に行くに連れて袋状に広がって形成されている。
【0026】
補強部24は、屈曲部231の裏側面201において上面後方部分223に近い側に形成されているとともに、屈曲部231の裏側面201において折返し端部232に近い側には形成されていない。補強部24は、表皮部4と樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3とを、発泡性樹脂充填部5によって一体化する樹脂の発泡成形を行う際に、補強部24の裏側面202から、後述する基材側成形型72における突出部721によって支持される支持部241を有している。
そして、アンダーカット空間Sの開口部S1から、平板状の折返し端部232の裏側面201に沿ってアンダーカット空間Sの奥側(
図1の矢印Aの方向)を見たときに、屈曲部231の裏側面201における補強部24の支持部241が視認できる位置にあるとともに、補強部24の残りの部分242は、後方リブ322によってほとんど見えなくなる位置にある。
【0027】
図2に示すごとく、補強部24は、湾曲部23の裏側面201において後方リブ322が形成された左右方向Wの範囲内において、適宜間隔を空けて左右方向Wに並ぶよう複数箇所に設けられている。補強部24は、樹脂基材部2に一体成形されている。また、複数箇所に設けられた各補強部24は、前後方向Lに延びる板形状に形成されている。
【0028】
本例のインストルメントパネル1を製造するに当たっては、表皮側成形型71、基材側成形型72及びスライド成形型73を用いる。
また、本例の製造方法においては、パウダースラッシュ成形法、発泡成形法等により、各成形型71,72,73内に配置した、樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3と表皮部4とを接合してインストルメントパネル1を成形する。樹脂基材部2、エアバッグドアリテーナ3及び表皮部4は、樹脂の成形を行って予め製造しておく。
【0029】
図3に示すごとく、表皮側成形型71は、表皮部4の表側面と対面する成形面を有している。この成形面は、表皮部4の形状に沿った形状に形成されている。基材側成形型72は、樹脂基材部2の裏側面201と対面する成形面を有している。この成形面は、樹脂基材部2の形状に沿った形状に形成されている。基材側成形型72は、アンダーカット空間Sに配置されて湾曲部23の裏側面201及び補強部24を受ける突出部721を有している。突出部721は、エアバッグドアリテーナ3の後方リブ322における先端部と、樹脂基材部2の湾曲部23における折返し端部232との間の開口部S1から、アンダーカット空間Sに挿入される。そして、突出部721の先端部は、湾曲部23における屈曲部231の裏側面201を受ける(内側から押さえる)とともに、補強部24の支持部241の裏側面202を受ける(内側から押さえる)形状に形成されている。
【0030】
スライド成形型73は、エアバッグドアリテーナ3のドア部31の裏側面と対面する成形面を有している。この成形面は、エアバッグドアリテーナ3における略四角環形状のリブ32内にスライドして、ドア部31の裏側面を受ける(内側から押さえる)形状に形成されている。スライド成形型73は、略四角環形状を形成する前方リブ321、後方リブ322及び一対の側方リブ323の形成方向に沿ってスライド可能である。
【0031】
発泡性樹脂充填部5の発泡成形を行うに当たっては、
図3に示すごとく、配置工程として、表皮側成形型71と基材側成形型72及びスライド成形型73とを組み合わせて形成される空間70内に、表皮部4、樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3を配置する。この配置を行うときには、基材側成形型72の成形面に樹脂基材部2を配置し、樹脂基材部2のエアバッグ用開口穴21にエアバッグドアリテーナ3を配置する。そして、エアバッグドアリテーナ3の略四角環形状のリブ32内にスライド成形型73を挿入して配置する。また、基材側成形型72に配置された樹脂基材部2に対して表皮部4を配置し、基材側成形型72及びスライド成形型73に対して、表皮側成形型71を合わせる。
【0032】
次いで、
図4に示すごとく、充填工程として、表皮部4と樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3との間に形成される隙間Cに、発泡性樹脂充填部5を構成するための、発泡剤を含む発泡性ウレタン50を投入する。そして、型内70において、発泡性ウレタン50が発泡し、隙間Cに充填される。
【0033】
この発泡成形を行うときには、樹脂基材部2、エアバッグドアリテーナ3及び表皮部4には、発泡性ウレタン50が発泡するときの圧力が加わる。そして、この発泡成形を行うときには、表皮側成形型71の成形面によって表皮部4の表側面を受け、基材側成形型72の成形面によって樹脂基材部2の裏側面201を受け、スライド成形型73によってエアバッグドアリテーナ3のドア部31の裏側面を受け、突出部721によって湾曲部23における屈曲部231及び折返し端部232の裏側面201と、補強部24の支持部241における裏側面202とを受ける。
充填工程においては、樹脂基材部2における湾曲部23の裏側面201に設けられた補強部24によって湾曲部23を支え、発泡性ウレタン50が発泡する際に加わる圧力によって湾曲部23が変形しないようにすることができる。
【0034】
そして、発泡性ウレタン50の発泡成形が行われた後には、発泡性ウレタン50が固化して発泡性樹脂充填部5が形成され、発泡性樹脂充填部5によって、表皮部4と樹脂基材部2及びエアバッグドアリテーナ3とが接合されて一体化されたインストルメントパネル1が成形される。
次いで、取出工程として、スライド成形型73をエアバッグドアリテーナ3の裏側面から離型させた後、突出部721をアンダーカット空間Sの開口部S1から抜き出すよう基材側成形型72を樹脂基材部2の裏側面201から離型させる。また、表皮側成形型71を表皮部4の表側面から離型させる。そして、成形されたインストルメントパネル1を取り出す。
【0035】
取出工程においては、スライド成形型73をエアバッグドアリテーナ3の裏側面から離型させた後に、基材側成形型72を樹脂基材部2の裏側面201から離型させることにより、突出部721をアンダーカット空間Sの開口部S1から容易に抜き出すことができる。これにより、成形後のインストルメントパネル1を、各成形型71,72,73から容易に取り出すことができる。
【0036】
本例のインストルメントパネル1においては、樹脂基材部2に、上面部22から下方に曲面状に折り返して、室内後方側L1に向けて凸状に湾曲する湾曲部23を設けている。また、エアバッグドアリテーナ3の後方リブ322と湾曲部23との間には、開口側よりも奥側の幅が大きくなったアンダーカット空間Sが形成されている。そして、アンダーカット空間Sが形成される場合であっても、樹脂基材部2に補強部24を形成し、突出部721を有する基材側成形型72及びスライド成形型73を用いることにより、インストルメントパネル1の成形を容易に行うことができる。
それ故、本例のインストルメントパネル1及びその製造方法によれば、室内後方側L1の部分に湾曲部23を有する意匠形状のインストルメントパネル1を容易に成形することができる。
【0037】
(実施例2)
本例は、樹脂基材部2における補強部24Aの構造が上記実施例1とは異なる例である。
図5に示すごとく、本例の補強部24Aは、樹脂基材部2の裏側面201に一体成形された台座部240と、台座部240に対して取り付けられた補強ブラケット26とによって構成されている。本例においては、台座部240とは別に成形した補強ブラケット26を用いることにより、樹脂基材部2の成形を容易にするとともに、補強部24Aの強度を容易に高めることができる。台座部240については、上記実施例1の補強部24と同様に形成することができる。
【0038】
また、補強ブラケット26は、左右方向Wに延びる長尺形状とすることもできる。この場合には、長尺形状の補強ブラケット26は、樹脂基材部2の湾曲部23における左右方向Wの複数箇所に設けられた台座部240に掛け渡して取り付けることができる。
本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。