(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は本発明の発泡シースケーブルの一実施形態の断面の一部分を模式的に示す図であり、
図2は、
図1の比較例となる図(表層部では発泡セルが疎らになっている状態)である。
【0017】
図1において、引用符号1は、本発明の発泡シースケーブルを示している。発泡シースケーブル1は、絶縁電線2と、この絶縁電線2に被覆される発泡シース3とを備えて構成されている。発泡シースケーブル1は、十分な引張強度を確保しつつ、発泡シース3の皮剥き作業における施工性を向上させ、また、良好な発泡シース3の表面の外観を有するものとなっている。まず、上記各構成について説明する。
【0018】
絶縁電線2は、導体4と、導体4に押出成形される絶縁体5とを備えて構成されている。絶縁電線2は、公知のものが用いられている。
【0019】
発泡シース3は、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂製であって、絶縁電線2の上に押出成形することによって形成されている(発泡シース3の材質は一例であるものとする。公知の被覆材料から適宜選択したものを用い、これを発泡させるものとする。具体的な一例は後述する。)。発泡シース3の内部には、その全体にわたり、大小多数の発泡セル8が分散している。発泡セル8は、発泡シース3の材料を発泡剤によって発泡させることによって生じた気泡からなる断面略円形の空間である。発泡シース3は、発泡シース3の表面9側となる表層部6と、表層部6よりも絶縁体5側となる層、すなわち、表層部6よりも内側となる層7とに分けることができる。
【0020】
発泡シース3において、表層部6と、表層部6よりも内側となる層7とでは、発泡セル8のセル径と、発泡セル8の単位面積当たりの個数と、発泡セル8同士の間隔が異なっている。表層部6よりも内側となる層7のうち、表層部6側となる層を中層部、絶縁体5側となる層を深層部としたとき、発泡シース3は、深層部から、発泡シース3の厚み方向に中層部へ、更に表層部6へと向かって、発泡セル8のセル径を小さく形成するとともに、発泡セル8の単位面積当たりの個数を多くし且つ発泡セル8同士の間隔を小さく形成する。
【0021】
発泡セル8の単位面積当たりの個数を0.04mm
2当たりの個数とし、発泡シース3の厚みを1.35mm〜1.5mmとし、表層部6を発泡シース8の表面9から発泡シース8の厚み方向に0.2〜0.4mmまでの層と定義したとき、表層部6では、発泡セル8のセル径が0.06mm〜0.01mm、発泡セル8の単位面積当たりの個数が6〜20個であり、表層部6よりも内側となる層7では、発泡セル8のセル径が0.15mm〜0.06mm、発泡セル8の単位面積当たりの個数が1〜6個である(上記単位面積の数値、発泡シース3と表層部6の厚みの数値、発泡セル8のセル径の数値、及び発泡セル8の単位面積当たりの個数は一例であるものとする。)。
【0022】
また、発泡セル8の表層部6と、表層部6よりも内側となる層7との発泡率の差は、深層部と、表層部6との発泡率の差の0〜±6%である(上記表層部6と、表層部6よりも内側となる層7との発泡率の差は、深層部と、表層部6との発泡率の差の0〜±3%であると、より好ましい。)。なお、ここでいう発泡率とは、発泡シース8の材料の発泡前の密度に対する発泡後の密度の減少率(%)を示すものである。
【0023】
次に、上記構成及び構造に基づきながら、本発明の発泡シースケーブル1の製造方法について説明する。
本発明の発泡シースケーブル1を製造するにあたっては、ポリ塩化ビニル樹脂に対して、可塑剤、安定剤及び充填材を配合してなるポリ塩化ビニル樹脂組成物に発泡剤を配合した発泡シース材料を用いて発泡シース3を形成することができる。ポリ塩化ビニル樹脂に対する可塑剤、安定剤及び充填材の配合量は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤50〜85重量部、安定剤2〜6重量部、充填材30〜80重量部とする。発泡シース材料の配合にあたっては、ポリ塩化ビニル樹脂に代えて、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン―a―オレフィン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―アクリル酸メチル共重合体などのポリオレフィン系樹脂に可塑剤、安定剤及び充填材を配合してなるポリオレフィン系樹脂組成物を好適に用いることもできる。可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)などを好適に用いることができる。安定剤としては、カルシウム―亜鉛系、鉛系、バリウム―亜鉛系などを好適に用いることができる。充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカなどを好適に用いることができる。発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、炭酸水素ナトリウム、4,4´―オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)などを好適に用いることができる。
【0024】
そして、発泡剤を有したマスターバッチを予め製造し、このマスターバッチを発泡シース3の押出時に上記構成の発泡シース材料に配合することで目的の発泡を得ることができる。
【0025】
さらに、押出後のケーブルを冷却水に浸漬することにより冷却する。この冷却は、第一冷却から第三冷却までの三段階の水温に分けて行う。まず、第一冷却の段階の水温は50℃〜80℃とする。次に、第二冷却の段階の水温は30℃〜50℃とする。そして、第三冷却の段階は常温(約10℃〜20℃)とする。これにより、本発明において、発泡セル8のセル径と単位面積当たりの発泡セル8の個数をコントロールすることが可能となる。
【0026】
次に、表1に基づいて、本発明の実施例と比較例との比較について説明する。ここでは、実施例1〜12、比較例1〜3を例に挙げて説明するものとする。
【0028】
まず、表1に基づいて、本発明の実施例1〜12について説明する。実施例1〜12は、本発明の発泡シースケーブルである。実施例1〜12における発泡シースケーブルの構成は、先に説明した発泡シースケーブル1と同じであるので説明を省略する。
【0029】
表1の実施例1は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤85重量部、安定剤6重量部、充填材30重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を80℃、第二冷却の冷却水の水温を30℃とした場合である。実施例1における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.15mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が1個である。
【0030】
表1の実施例2は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤85重量部、安定剤6重量部、充填材30重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を80℃、第二冷却の冷却水の水温を40℃とした場合である。実施例2における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が1個である。
【0031】
表1の実施例3は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤85重量部、安定剤6重量部、充填材30重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を80℃、第二冷却の冷却水の水温を50℃とした場合である。実施例3における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個である。
【0032】
表1の実施例4は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤85重量部、安定剤6重量部、充填材80重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を80℃、第二冷却の冷却水の水温を30℃とした場合である。実施例4における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が12個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.15mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が1個である。
【0033】
表1の実施例5は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤85重量部、安定剤6重量部、充填材80重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を80℃、第二冷却の冷却水の水温を40℃とした場合である。実施例5における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が12個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が1個である。
【0034】
表1の実施例6は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤85重量部、安定剤6重量部、充填材80重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を80℃、第二冷却の冷却水の水温を50℃とした場合である。実施例6における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が12個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個である。
【0035】
表1の実施例7は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤50重量部、安定剤2重量部、充填材30重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を50℃、第二冷却の冷却水の水温を30℃とした場合である。実施例7における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.01mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.15mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が1個である。
【0036】
表1の実施例8は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤50重量部、安定剤2重量部、充填材30重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を50℃、第二冷却の冷却水の水温を40℃とした場合である。実施例8における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.01mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が1個である。
【0037】
表1の実施例9は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤50重量部、安定剤2重量部、充填材30重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を50℃、第二冷却の冷却水の水温を50℃とした場合である。実施例9における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.01mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個である。
【0038】
表1の実施例10は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤50重量部、安定剤2重量部、充填材80重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を50℃、第二冷却の冷却水の水温を30℃とした場合である。実施例10における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.01mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が20個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.15mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が1個である。
【0039】
表1の実施例11は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤50重量部、安定剤2重量部、充填材80重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を50℃、第二冷却の冷却水の水温を40℃とした場合である。実施例11における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.01mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が20個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が1個である。
【0040】
表1の実施例12は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤50重量部、安定剤2重量部、充填材80重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を50℃、第二冷却の冷却水の水温を50℃とした場合である。実施例12における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.01mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が20個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個である。
【0041】
続いて、表1に基づいて、比較例1〜3について説明する。比較例1〜3は、
図2において比較例として示す発泡シースケーブル11である。
【0042】
表1の比較例1は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤60重量部、安定剤4重量部、充填材60重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を100℃、第二冷却の冷却水の水温を30℃とした場合である。比較例1における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.07mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.15mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が1個である。
【0043】
表1の比較例2は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤60重量部、安定剤4重量部、充填材60重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を30℃、第二冷却の冷却水の水温を30℃とした場合である。比較例2における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.01mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が5個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.15mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が1個である。
【0044】
表1の比較例3は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤60重量部、安定剤4重量部、充填材60重量部配合してなり、シース押出後の第一冷却の冷却水の水温を80℃、第二冷却の冷却水の水温を80℃とした場合である。比較例3における発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、発泡セルのセル径と、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数を測定した場合、発泡シースの表層部では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が6個であり、中層部から深層部までの層(表層部よりも内側となる層)では、発泡セルのセル径が0.06mm、単位面積0.04mm
2当たりの発泡セルの個数が7個である。
【0045】
次に、実施例1〜12と比較例1〜3の刃入れ荷重の測定結果と、引張強さの測定結果と、発泡シースの表面外観の評価を比較する。
【0046】
表1において、刃入れ荷重は、ケーブルシース剥き治具の刃を圧縮試験機に取り付け、ケーブルに刃を押し当て切れた瞬間の荷重を測定したものであり。5N/mm以下であれば「◎」、8N/mm以下であれば「○」、8N/mmを超えると「×」と記載した。
【0047】
また、表1において、引張強さは、日本工業規格JIS K 3005 4.16の試験に準拠するものとし、10MPa以上を合格とした。
【0048】
さらに、表1において、発泡シースの表面外観の評価は、発泡シースケーブルの断面をマイクロスコープで観察し判定したものであり、ザラツキが無ければ「◎」、ややザラツキがあるが外観に艶があれば「○」、ザラツキがあり外観に艶も無ければ「×」と記載した。
【0049】
表1から、刃入れ荷重の測定結果は、実施例1〜6、及び実施例10〜12の何れも「◎」、実施例7〜9の何れも「○」であった。また、引張強さの測定結果は、実施例1〜12の何れも10MPa以上であり全て合格であった。さらに、発泡シースの表面外観の評価は、実施例1〜6の何れも「○」、実施例7〜12の何れも「◎」であった。このような結果から、実施例1〜12の何れも、刃入れ荷重が比較的小さく、十分な引張強さと、良好な発泡シースの表面外観を有していると言える。
【0050】
一方、比較例1は、刃入れ荷重が「○」であったが、引張強さは「9MPa」で不合格であった。また、発泡シースの表面外観の評価は「×」であった。また、比較例2は、引張強さは「12MPa」で合格であり、発泡シースの表面外観の評価は「◎」であったが、刃入れ荷重は「×」であった。さらに、比較例3は、刃入れ荷重は「○」、発泡シースの表面外観の評価は「○」であったが、引張強さは「9MPa」で不合格であった。
このような結果から、比較例1〜3の何れも、刃入れ荷重が比較的小さいこと、十分な引張強さを有すること、良好な発泡シースの表面外観を有すること、の全てを充足した発泡シースケーブルを得ることはできないと言える。
【0051】
次に、
図1及び
図2に基づいて、本発明の具体的な効果について説明する。
図1において、本発明の発泡シースケーブル1において、発泡シース3は、表層部6よりも内側の層7から、発泡シース3の厚み方向に表層部6へと向かって、発泡セル8のセル径が小さくなるとともに、単位面積当たりの発泡セル8の個数が多くなり且つ発泡セル8同士の間隔が小さくなる。すなわち、本発明によれば、発泡シース3は、表層部6になるほど、発泡セル8のセル径が小さくなるとともに、単位面積当たりの発泡セル8の個数が多くなり且つ発泡セル8同士の間隔が小さくなる。このような構成を有する本発明によれば、表層部6では、発泡セル8が密に存在するようになる。そうすると、ケーブルシース剥き治具として、例えばストリッパーの刃を発泡シース3に入れたときの刃に掛かる抵抗が小さくなり、刃を小さい刃入れ荷重で発泡シース3に切り込むことができる。また、表層部6よりも内側の層7では、発泡セル8が表層部6に比べて疎らに分散することになるので、発泡シース3が十分な厚みを得て強度を保持することができ、発泡シースケーブル1全体としては、所定の強度を確保できる。さらに、表層部6の発泡セル8のセル径は、表層部6よりも内側の層7における発泡セル8のセル径よりも小さくなるため、発泡シース3の表面9の凹凸が目立たなくなる。
【0052】
一方、
図2において、比較例となる発泡シースケーブル11は、表層部13よりも内側の層14から、発泡シース12の厚み方向へと向かって、発泡セル15のセル径が小さくなるとともに、単位面積当たりの発泡セル15の個数が少なくなり且つ発泡セル15同士の間隔が大きくなる。すなわち、比較例によれば、発泡シース12は、表層部13になるほど、発泡セル15のセル径が小さくなるとともに、単位面積当たりの発泡セル15の個数が少なくなり且つ発泡セル15同士の間隔が大きくなる。このような構成を有する比較例によれば、表層部13では、表面16近傍ほど、発泡セル15が疎らに分散するようになる。そうすると、表層部13が硬くなりケーブルシース剥き治具として、例えばストリッパーの刃を発泡シース12に入れたときの刃に掛かる抵抗が大きくなる。そうすると、刃を小さい刃入れ荷重で発泡シース12に切り込むことはできない。
【0053】
以上、
図1及び
図2を参照しながら説明してきたように、本発明の発泡シースケーブル1によれば、十分な引張強度を確保しつつ、発泡シース3の皮剥き作業における施工性を向上させ、また、発泡シース3の表面9の外観を良好にすることができる。
【0054】
また、本発明によれば、表層部6から深層部までの発泡率が均一となるため、発泡シースケーブル1の捩れや圧迫による発泡シース3の変形を抑制することができる。一方、従来の発泡シースケーブルの場合は、深層部だけ発泡率が高くなっているので、発泡シースの中で絶縁電線が捩れて交差してしまい、また、表層部の発泡率が高い場合は、外部からの圧迫で発泡シースの表面が凹んだりしてしまう。従って、より好適な発泡シースケーブル1を提供することができる。
【0055】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。