【実施例】
【0029】
図1はエッチング試験で用いたエッチング装置の概略系統図である。反応チャンバー1には試料7を支持するためのステージ5が具備されている。ステージ5にはステージの温度を調整可能なステージ温度調整器6が具備されている。反応チャンバー1にはガス導入の為のガス配管41及びガス排気の為のガス配管42が接続されている。インターハロゲン供給系21、F
2供給系22、希釈ガス供給系23は、それぞれバルブ31、バルブ32、バルブ33を介してガス配管41に接続されている。真空ポンプ8はガス排気の為、バルブ33を介してガス配管42に接続されている。反応チャンバー1内部の圧力は反応チャンバー1付設の圧力計(図中省略)の指示値を基に、バルブ33により制御される。
【0030】
図2は本試験に用いる試料7の断面の模式図である。試料7は、20mm角(基板表面積4cm
2)で板厚が0.1mmの形状のシリコン基板11上に窒化ケイ素膜12が30nm成膜され、更に、その上に酸化シリコン膜9とポリシリコン膜10がそれぞれ30nmの厚みで交互に計16層成膜されている積層膜に所定の直径Dの孔13を窒化ケイ素膜12まで基板面垂直方向に形成したものである。孔13はシリコン基板面上に縦横400nm間隔で均等に形成されている。
【0031】
次にエッチング操作方法について説明する。ステージ5上に試料7を設置し、反応チャンバー1及びガス配管41、42を10Pa未満まで真空置換後、ステージ5の温度を所定値に設定する。ステージ5の温度が所定値に達したことを確認後、バルブ31,32,33を開放し、インターハロゲン供給系21、F
2供給系22、希釈ガス供給系23よりそれぞれ所定流量のガスを供給することにより、ガス配管41よりエッチングガスを反応チャンバー1に導入する。また、エッチングガスに含有されるインターハロゲン、F
2、希釈ガスの流量比と反応チャンバー1内部の圧力を所定の値に設定することにより、エッチングガスに含有されるインターハロゲン、F
2、希釈ガスがそれぞれ目的の分圧となるようにした。この場合、エッチングガス総流量、各分圧、及び試料7の基板表面積より、該基板のエッチング対象面の単位面積当りの、エッチングガス中に含まれるF原子を含むガス成分の総流量を、F
2に換算して算出される。
【0032】
エッチングガスを導入してから所定時間(エッチング時間)経過後、エッチングガスの導入を停止し、反応チャンバー1内部を真空置換後、試料7を取り出して孔の断面形状をSEM観察した。
【0033】
本試験における、シリコンのエッチング形態について、同一孔内の16層の壁面の各ポリシリコン層のエッチング深さtを断面SEM観察により測定し、そのエッチング深さtの平均値t
Aおよび標準偏差σを求め、σ/t
Aを求めることにより、孔の深さ方向に対するエッチング深さの均一性を評価した。
【0034】
ポリシリコン層のエッチング深さtは、孔13の側面中にあるポリシリコン層のエッチング後の状態を断面で模式的に表している
図3に示されている。ポリシリコン層は、上下を酸化シリコン膜9に挟まれてポリシリコン膜10が積層されて形成されており、エッチングにより孔13の側面のポリシリコン層の部分が凹状となる。このとき、孔の側面のエッチングされていない面である酸化シリコン膜9の層の面(エッチングされる前のポリシリコン膜10の層の面と同じ位置に相当)と、凹んだポリシリコン膜10の層の面との距離が、エッチング深さtである。
【0035】
[実施例1〜32]
本実施例におけるエッチング条件と、その結果を表1に示す。
【0036】
実施例1〜5では、基板温度を20℃とし、インターハロゲンとしてClF
3、希釈ガスとしてN
2を用い、F
2の分圧を10Paに固定した条件として、ClF
3とN
2の分圧及びエッチング時間を表1に記載の値に変化させてエッチング試験を行った。試料の孔13の直径Dは100nmであり、エッチングガスの総流量は5000sccmである。
【0037】
その結果、実施例間で平均エッチング深さt
Aは異なるが、σ/t
Aはいずれも20%以内と、エッチング深さの均一性は良好であった。
【0038】
実施例6〜9では、基板温度を20℃とし、インターハロゲンとしてClF
3、希釈ガスとしてN
2を用い、ClF
3の分圧を10Paに固定した条件として、F
2とN
2の分圧及びエッチング時間を表1に記載の値に変化させてエッチング試験を行った。試料の孔13の直径Dは100nmであり、エッチングガスの総流量は5000sccmである。
【0039】
実施例10〜14では、インターハロゲンとしてClF
3、希釈ガスとしてN
2を用い、ClF
3とF
2の分圧をそれぞれ10Pa、N
2の分圧を980Pa、エッチングガスの全圧を1000Paに固定した条件として、基板温度及びエッチング時間を表1に記載の値に変化させてエッチング試験を行った。試料の孔13の直径Dは100nmであり、エッチングガスの総流量は5000sccmである。
【0040】
実施例15〜19では、基板温度を20℃、エッチング時間を3minとし、インターハロゲンとしてBrF
3、BrF
5、IF
5、IF
7、あるいはClF
3とIF
7の混合ガスを、希釈ガスとしてN
2を用い、BrF
3、BrF
5、IF
5、IF
7、ClF
3の各分圧とF
2の分圧をそれぞれ10Paに固定した条件として、N
2の分圧を表1に記載の値に変化させてエッチング試験を行った。試料の孔13の直径Dは100nmであり、エッチングガスの総流量は5000sccmである。
【0041】
実施例20、21では、基板温度を20℃、エッチング時間を3minとし、インターハロゲンとしてClF
3を用い、ClF
3とF
2の分圧をそれぞれ10Pa、エッチングガスの全圧を4990Paに固定した条件として、希釈ガスをAr又はHeに変えてエッチング試験を行った。試料の孔13の直径Dは100nmであり、エッチングガスの総流量は5000sccmである。
【0042】
実施例22、23では、基板温度を20℃、エッチング時間を3minとし、インターハロゲンとしてClF
3を、希釈ガスとしてN
2を用い、ClF
3とF
2の分圧をそれぞれ10Pa、エッチングガスの全圧を1000Paに固定した条件として、試料の孔13の直径Dを30nm又は200nmに変えてエッチング試験を行った。エッチングガスの総流量は5000sccmである。
【0043】
実施例24〜26では、基板温度を20℃とし、インターハロゲンとしてClF
3を、希釈ガスとしてN
2を用い、ClF
3とF
2の分圧をそれぞれ10Paに固定した条件として、希釈ガスの分圧とエッチング時間を表1に記載の値に変化させてエッチング試験を行った。試料の孔13の直径Dは100nmであり、エッチングガスの総流量は5000sccmである。
【0044】
実施例27では、ClF
3の圧力を0.5Paとする以外は、実施例2と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0045】
実施例28では、F
2の圧力を0.5Paとする以外は、実施例6と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0046】
実施例29では、希釈ガスを用いずエッチング時間を1minとする以外は、実施例1と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0047】
実施例30では、希釈ガスN
2の分圧を100000Paとすることでエッチングガス中に含まれるF原子を含むガス成分の総流量のF
2換算値を0.3sccm/cm
2とし、エッチング時間を20分とする以外は実施例1と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0048】
実施例31では、エッチングガスの総流量を10000sccmとすることでエッチングガス中に含まれるF原子を含むガス成分の総流量のF
2換算値を3387.5sccm/cm
2とする以外は実施例4と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0049】
実施例32では、エッチングガスの総流量を30000sccmとすることでエッチングガス中に含まれるF原子を含むガス成分の総流量のF
2換算値を10162.5sccm/cm
2とする以外は実施例4と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0050】
その結果、いずれの実施例においてもσ/t
Aは20%以内とエッチング深さの均一性は良好であった。
【表1】
【0051】
[比較例1〜6]
本比較例におけるエッチング条件と、その結果を表2に示す。
【0052】
本比較例1では、F
2分圧を0Paとする以外は実施例1と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0053】
本比較例2では、ClF
3分圧を0Paとする以外は実施例実施例7と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0054】
本比較例3では、F
2分圧を0Paにて、更に希釈ガスを用いないこと以外は実施例3と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0055】
本比較例4では、F
2分圧を0Paとする以外は実施例3と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0056】
本比較例5では、F
2分圧を0Paとする以外は実施例5と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0057】
本比較例6では、ClF
3分圧を0Paとする以外は実施例9と同様の条件にてエッチング試験を行った。
【0058】
その結果、σ/t
Aはいずれも20%を超え、エッチング深さの均一性不良であった。
【表2】