(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなターボ圧縮機では、デミスターに到達する潤滑油量が多く、デミスターで完全に潤滑油を捕捉することができず、ハウジングの外部に潤滑油が排出されてしまう可能性があった。
潤滑油がハウジングの外部に排出されると、油が徐々になくなる現象(油上がり)が発生すると共に、例えばターボ圧縮機に接続された凝縮器や蒸発器等に溜まり、これら熱交換器の性能の低下につながってしまう。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、潤滑油の排出を効果的に抑制することができるターボ圧縮機及びターボ冷凍機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、回転駆動するインペラを備える圧縮段と、潤滑油を収容すると共に前記インペラに回転駆動力を伝達するギヤ部材を収容する第1空間及び該第1空間よりも雰囲気圧が低くなる第2空間及び該第2空間と前記圧縮段の吸気側とを連通させる隙間を備える筐体と、前記第1空間から前記第2空間に向かってガスを流通させるための均圧管と、前記第2空間において前記ガスに含まれる前記潤滑油を分離する油分離装置と、を有する、ターボ圧縮機を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第2空間において油分離装置を設けることによって、潤滑油を収容する第1空間から均圧管を介して流入してくるガスが、筐体の隙間から圧縮段の吸気側に漏出する前に、そのガスに含まれる潤滑油を分離することができる。このため、筐体の外部に潤滑油が排出されないようにすることができる。
【0008】
また、本発明においては、前記油分離装置は、前記隙間を囲って設けられ、前記ガスの吸い込み口が形成されたカバー部材と、前記吸い込み口から吸い込まれた前記ガスに含まれる前記潤滑油を捕捉するデミスターと、を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、カバー部材で筐体の隙間を囲って、均圧管を介して流入してくるガスが直接隙間から漏出しないようにし、カバー部材の吸い込み口にデミスターを設け、デミスターを通って潤滑油を取り除いた後にガスを隙間から漏出させるようにすることができる。
【0009】
また、本発明においては、前記第2空間は、環形状を有しており、前記吸い込み口は、前記第2空間において、前記均圧管の連通開口に対し前記環形状の中心を挟んだ反対側に配置されている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、均圧管の連通開口に対してカバー部材の吸い込み口が反対側にあるため、均圧管を介して流入してくるガスが吸い込み口に到達するまでの流通経路を長くすることができる。このように、第2空間におけるガスの流通経路をなるべく遠回りにすることで、その流通過程においてもガスに含まれる潤滑油が取り除かれるようにすることができる。
【0010】
また、本発明においては、前記吸い込み口は、前記第2空間において、前記均圧管の連通開口に対して反対向きに配置されている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、均圧管の連通開口に対してカバー部材の吸い込み口が反対向きとなっているため、均圧管を介して流入してくるガスが吸い込み口に到達する際に流れ方向が急激に曲がって逆方向となる。このように、第2空間に流れ込むガスの流れ方向を急激に曲げることで、吸い込み口に到達する際においてもガスに含まれる潤滑油が取り除かれるようにすることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記吸い込み口は、前記第2空間において、下方を向いて配置されている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、デミスターで捕捉した潤滑油を自重によって下方を向いた吸い込み口からカバー部材の外に滴下することができる。このため、カバー部材の中に捕捉した潤滑油が溜まることを防止することができる。
【0012】
また、本発明においては、前記第2空間において分離した前記潤滑油を前記第1空間に返送する油返送装置を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第2空間においてガスから分離した潤滑油を第1空間に返送することで、第1空間における潤滑油の液面が下がることを防止することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記油返送装置は、エジェクターを有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第2空間においてガスから分離した潤滑油をエジェクターによって第1空間に返送することができる。
【0014】
また、本発明においては、圧縮された冷媒を液化する凝縮器と、前記凝縮器によって前記液化された冷媒を蒸発させて冷却対象物を冷却する蒸発器と、前記蒸発器によって前記蒸発された冷媒を圧縮して前記凝縮器に供給するターボ圧縮機と、を有するターボ冷凍機であって、前記ターボ圧縮機として、先に記載のターボ圧縮機を有する、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、潤滑油の排出を効果的に抑制することができるターボ圧縮機及びターボ冷凍機が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態におけるターボ冷凍機1の系統図である。
本実施形態のターボ冷凍機1は、例えばフロンを冷媒として、空調用の冷水を冷却対象物とするものである。ターボ冷凍機1は、
図1に示すように、凝縮器2と、エコノマイザ3と、蒸発器4と、ターボ圧縮機5と、を備えている。
【0019】
凝縮器2は、流路R1を介してターボ圧縮機5のガス吐出管5aと接続されている。凝縮器2には、ターボ圧縮機5によって圧縮された冷媒(圧縮冷媒ガスX1)が流路R1を通って供給されるようになっている。凝縮器2は、この圧縮冷媒ガスX1を液化するものである。凝縮器2は、冷却水が流通する伝熱管2aを備え、圧縮冷媒ガスX1と冷却水と間の熱交換によって、圧縮冷媒ガスX1を冷却するようになっている。
【0020】
圧縮冷媒ガスX1は、冷却水との間の熱交換によって冷却され、液化し、冷媒液X2となって凝縮器2の底部に溜まる。凝縮器2の底部は、流路R2を介してエコノマイザ3と接続されている。流路R2には、冷媒液X2を減圧するための膨張弁6が設けられている。エコノマイザ3には、膨張弁6によって減圧された冷媒液X2が流路R2を通って供給されるようになっている。エコノマイザ3は、減圧された冷媒液X2を一時的に貯留し、冷媒を液相と気相とに分離するものである。
【0021】
エコノマイザ3の頂部は、流路R3を介してターボ圧縮機5のエコノマイザ連結管5bと接続されている。ターボ圧縮機5には、エコノマイザ3によって分離した冷媒の気相成分X3が、蒸発器4及び第1圧縮段11を経ることなく、流路R3を通って第2圧縮段12に供給され、効率を高めるようになっている。一方、エコノマイザ3の底部は、流路R4を介して蒸発器4と接続されている。流路R4には、冷媒液X2をさらに減圧するための膨張弁7が設けられている。
【0022】
蒸発器4には、膨張弁7によってさらに減圧された冷媒液X2が流路R4を通って供給されるようになっている。蒸発器4は、冷媒液X2を蒸発させてその気化熱によって冷水を冷却するものである。蒸発器4は、冷水が流通する伝熱管4aを備え、冷媒液X2と冷水と間の熱交換によって、冷水を冷却すると共に冷媒液X2を蒸発させるようになっている。冷媒液X2は、冷水との間の熱交換によって熱を奪って蒸発し、冷媒ガスX4となる。
【0023】
蒸発器4の頂部は、流路R5を介してターボ圧縮機5のガス吸入管5cと接続されている。ターボ圧縮機5には、蒸発器4において蒸発した冷媒ガスX4が流路R5を通って供給されるようになっている。ターボ圧縮機5は、蒸発した冷媒ガスX4を圧縮し、圧縮冷媒ガスX1として凝縮器2に供給するものである。ターボ圧縮機5は、冷媒ガスX4を圧縮する第1圧縮段11と、一段階圧縮された冷媒をさらに圧縮する第2圧縮段12と、を具備する2段圧縮機である。
【0024】
第1圧縮段11にはインペラ13が設けられ、第2圧縮段12にはインペラ14が設けられており、それらが回転軸15で接続されている。ターボ圧縮機5は、電動機10によってインペラ13,14を回転駆動させて冷媒を圧縮するようになっている。インペラ13,14は、ラジアルインペラであり、軸方向で吸気した冷媒を半径方向に導出する不図示の3次元的ねじれを含むブレードを有する。
【0025】
ガス吸入管5cには、第1圧縮段11の吸入量を調節するためのインレットガイドベーン16が設けられている。インレットガイドベーン16は、冷媒ガスX4の流れ方向からの見かけ上の面積が変更可能なように回転可能とされている。インペラ13,14の周りには、それぞれディフューザ流路が設けられており、半径方向に導出した冷媒を、当該流路において圧縮・昇圧し、また、さらにその周りに設けられたスクロール流路によって次の圧縮段に供給することができるようになっている。インペラ14の周りには、出口絞り弁17が設けられており、ガス吐出管5aからの吐出量を制御できるようになっている。
【0026】
ターボ圧縮機5は、密閉型の筐体20を備える。筐体20は、圧縮流路空間S1と、第1の軸受収容空間S2と、モーター収容空間S3と、ギヤユニット収容空間(第1空間)S4と、第2の軸受収容空間S5と、インレットガイドベーン駆動機構収容空間(第2空間)S6(以下、IGV空間S6と称する。
図1において不図示、後述する
図2参照)に区画されている。圧縮流路空間S1には、インペラ13,14が設けられている。インペラ13,14を接続する回転軸15は、圧縮流路空間S1、第1の軸受収容空間S2、ギヤユニット収容空間S4に挿通して設けられている。第1の軸受収容空間S2には、回転軸15を支持する軸受21が設けられている。
【0027】
モーター収容空間S3には、ステータ22と、ロータ23と、ロータ23に接続された回転軸24と、が設けられている。この回転軸24は、モーター収容空間S3、ギヤユニット収容空間S4、第2の軸受収容空間S5に挿通して設けられている。第2の軸受収容空間S5には、回転軸24の反負荷側を支持する軸受31が設けられている。ギヤユニット収容空間S4には、ギヤユニット25と、軸受26,27と、オイルタンク28と、が設けられている。
【0028】
ギヤユニット25は、回転軸24に固定される大径歯車(ギヤ部材)29と、回転軸15に固定されると共に大径歯車29と噛み合う小径歯車30と、を有する。ギヤユニット25は、回転軸24の回転数に対して回転軸15の回転数が増加(増速)するように、回転駆動力を伝達するものである。軸受26は、回転軸24を支持するものである。軸受27は、回転軸15を支持するものである。オイルタンク28は、軸受21,26,27,31等の各摺動部位に供給される潤滑油を貯溜するものである。
【0029】
このような筐体20には、圧縮流路空間S1と第1の軸受収容空間S2との間において、回転軸15の周囲をシールするシール部32,33が設けられている。また、筐体20には、圧縮流路空間S1とギヤユニット収容空間S4との間において、回転軸15の周囲をシールするシール部34が設けられている。また、筐体20には、ギヤユニット収容空間S4とモーター収容空間S3との間において、回転軸24の周囲をシールするシール部35が設けられている。また、筐体20には、モーター収容空間S3と第2の軸受収容空間S5との間において、回転軸24の周囲をシールするシール部36が設けられている。
【0030】
モーター収容空間S3は、流路R6を介して凝縮器2と接続されている。モーター収容空間S3には、凝縮器2から冷媒液X2が流路R6を通って供給されるようになっている。モーター収容空間S3に供給された冷媒液X2は、ステータ22の周りを流通し、ステータ22及びその周囲との間の熱交換によって、モーター収容空間S3を冷却する。モーター収容空間S3は、流路R6を介して蒸発器4と接続されている。蒸発器4には、モーター収容空間S3において熱を奪った冷媒液X2が流路R7を通って供給されるようになっている。
【0031】
オイルタンク28は、給油ポンプ37を有する。給油ポンプ37は、例えば流路R8を介して第2の軸受収容空間S5と接続されている。第2の軸受収容空間S5には、オイルタンク28から潤滑油が流路R8を通って供給されるようになっている。第2の軸受収容空間S5に供給された潤滑油は、軸受31に供給され、回転軸24の摺動部位の潤滑性の確保と共に摺動部位の発熱を抑制(冷却)する。第2の軸受収容空間S5は、流路R9を介してオイルタンク28と接続されている。オイルタンク28には、第2の軸受収容空間S5に供給された潤滑油が流路R9を通って帰還してくるようになっている。
【0032】
ここで、モーター収容空間S3に供給された冷媒液X2の一部が蒸発して、モーター収容空間S3の雰囲気圧が高くなり、例えばシール部35からギヤユニット収容空間S4に漏れ出した場合には、ギヤユニット収容空間S4の雰囲気圧が高くなってしまう。ギヤユニット収容空間S4には流路R9等を介して各摺動部位から潤滑油が帰還してくるオイルタンク28が設けられているため、このように雰囲気圧が高くなると、オイルタンク28に戻る潤滑油が少なくなってしまう。
このため、ターボ圧縮機5は、
図2に示す構成を備えている。
【0033】
図2は、本発明の実施形態におけるターボ圧縮機5の断面構成図である。
ターボ圧縮機5は、
図2に示すように、ギヤユニット収容空間S4とIGV収容空間S6とを連通させる均圧管40を有する。IGV収容空間S6には、インレットガイドベーン16の駆動機構16aが設けられている。IGV収容空間S6は、第1圧縮段11及びガス吸入管5cの周りに環状に設けられている。IGV収容空間S6は、筐体20に形成された隙間Gを介して第1圧縮段11の上流側のガス吸入管5cにおける圧縮流路空間S1と連通している。
【0034】
隙間Gによって連通する圧縮流路空間S1は、第1圧縮段11の吸気側であってインペラ13が回転駆動されると負圧状態になるところであり、密閉型の筐体20において最も雰囲気圧が低くなる部分である。IGV収容空間S6は、隙間Gを介して圧縮流路空間S1に連通することで雰囲気圧が低くなっている。均圧管40は、このIGV収容空間S6とギヤユニット収容空間S4との間を接続することによって、ギヤユニット収容空間S4からIGV収容空間S6に向かってギヤユニット収容空間S4のガスを流通させ、ギヤユニット収容空間S4の雰囲気圧を低下させるようになっている。
【0035】
ギヤユニット収容空間S4では、ギヤユニット25の特にインペラ13,14に回転駆動力を伝達する大径歯車29によって、潤滑油が掻き上げられ、油滴や油煙が発生している。ギヤユニット収容空間S4には、当該ガスに含まれる潤滑油を分離する第1の油分離装置41が設けられている。第1の油分離装置41は、大径歯車29の上方に配置され、筐体20にボルト等の固定手段によって固定されている。第1の油分離装置41は、吸引ダクト42を有している。吸引ダクト42は、均圧管40と連通する連通口43を有する。連通口43には、逆止弁44が設けられている。
【0036】
逆止弁44は、IGV収容空間S6からギヤユニット収容空間S4に向かってIGV収容空間S6のガスが逆流しないようにするためのものである。ターボ圧縮機5の運転停止の際には、凝縮器2からターボ圧縮機5に冷媒が逆流し、圧縮流路空間S1、IGV収容空間S6の雰囲気圧がギヤユニット収容空間S4よりも低くなる場合がある。この場合に、逆止弁44は、当該ガスの逆流を防止することができるようになっている。この吸引ダクト42の中には、不図示のデミスターが設けられており、吸引したガスに含まれる潤滑油を捕捉し、捕捉した潤滑油を吸引口42aから下方のオイルタンク28に戻すようになっている。
【0037】
このような第1の油分離装置41によって大径歯車29の回転によって掻き上げられた潤滑油が捕捉され、ギヤユニット収容空間S4の外部に潤滑油が排出されることが防止される。しかしながら、ギヤユニット収容空間S4においてガスに混入される潤滑油の量が多いと、第1の油分離装置41によって十分に捕捉できない場合がある。この潤滑油が、均圧管40における気流に乗ってIGV収容空間S6に排出されてしまうと、IGV収容空間S6から圧縮流路空間S1に導入され、凝縮器2や蒸発器4等に溜まることで、油上がりが発生する。そこで、IGV収容空間S6には、当該ガスに含まれる潤滑油を分離する第2の油分離装置(油分離装置)50が設けられている。
【0038】
図3は、本発明の実施形態における第2の油分離装置50の構成を示す正面側及び背面側の斜視図である。
第2の油分離装置50は、IGV収容空間S6においてガスに含まれる潤滑油を分離するものである。第2の油分離装置50は、カバー部材51と、デミスター52と、を有する。カバー部材51は、
図2に示すように、IGV収容空間S6と圧縮流路空間S1とを連通させる隙間Gを囲うことで、均圧管40を介して流入してくるガスが直接隙間Gから漏出しないようにする構成となっている。
【0039】
カバー部材51は、
図3(b)に示すように、円板状の底部51aと、円筒状の胴部51bと、を有している。底部51aは、中央部に形成された開口53を有する。開口53は、隙間Gに連通しており、吸い込んだガスの流出口となっている。底部51aは、取付穴54を有する。取付穴54は、開口53の周りに複数(本実施形態では4箇所)設けられている。取付穴54には、固定手段としてのボルト55(
図2参照)が挿通されるようになっている。ボルト55は、
図2に示すように、カバー部材51の底部51aを筐体20に押し付けて固定することで、開口53の周りをシールするようになっている。
【0040】
胴部51bは、
図3(b)に示すように、底部51aの外縁に沿って一体的に接合されている。胴部51bが接合されることによって、カバー部材51は、桶形状となっている。このようなカバー部材51は、
図2に示すように、第1圧縮段11の外周に覆い被さるようにして配置されている。開口53には、第1圧縮段11の先端の一部が挿通されるように配置され、カバー部材51の内側が隙間Gと連通するようになっている。また、底部51aと逆側の胴部51bの開口端は、筐体20に対して軸方向で当接することで、筐体20によって閉塞されるようになっている。
【0041】
カバー部材51は、
図3(a)に示すように、ガスの吸い込み口56を有する。吸い込み口56は、カバー部材51の外側と内側を連通させるものである。吸い込み口56は、底部51a及び胴部51bの一部を切り欠くことで形成され、半径方向に開口している。カバー部材51の内側には、デミスター52が設けられている。デミスター52は、格子状や網状の捕捉部材からなる充填物であり、吸い込み口56に充填されている。デミスター52は、
図3(b)に示すように、取付板57に取り付けられており、吸い込み口56から上方に向けて所定長さで設けられている。
【0042】
カバー部材51の吸い込み口56は、
図2に示すように、環形状のIGV収容空間S6において、均圧管40の連通開口40aに対し、該環形状の中心を挟んだ反対側に配置されている。すなわち、均圧管40の連通開口40aは、IGV収容空間S6のリング頂部において開口している一方で、カバー部材51の吸い込み口56は、IGV収容空間S6のリング底部において開口している。このように本実施形態では、均圧管40を介して流入してくるガスが、吸い込み口56に至るまでの流通過程でなるべく遠回りするために、カバー部材51の吸い込み口56は、均圧管40の連通開口40aから最も離れた位置に配置するようにしている。
【0043】
また、カバー部材51の吸い込み口56は、IGV収容空間S6において、均圧管40の連通開口40aに対して反対向きに配置されている。すなわち、均圧管40の連通開口40aは、IGV収容空間S6のリング頂部において下向きに開口している一方で、カバー部材51の吸い込み口56は、IGV収容空間S6のリング底部において下向きに開口している。このように本実施形態では、均圧管40を介して流入してくるガスの流れ方向を、吸い込み口56に至る手前で急激に曲げるようにするために、均圧管40の連通開口40aとカバー部材51の吸い込み口56とを、非対向状態とするように配置している。
【0044】
本実施形態では、IGV収容空間S6において分離した潤滑油をギヤユニット収容空間S4に返送する油返送装置60を有する。油返送装置60は、流路R10と、エジェクター61と、を有する。流路R10は、IGV収容空間S6の底と、オイルタンク28とを接続するものである。流路R10には、潤滑油を搬送するためのエジェクター61が設けられている。エジェクター61は、流体の流動によって負圧を発生させ、IGV収容空間S6の底に溜まった潤滑油を吸い込んで搬送するものである。流体としては、各摺動部位からオイルタンク28に戻って行く潤滑油や圧縮冷媒ガスX1等を用いることができる。
【0045】
続いて、上記構成の第2の油分離装置50の作用について説明する。
【0046】
図2に示すように、ギヤユニット収容空間S4では、ギヤユニット25の特にインペラ13,14に回転駆動力を伝達する大径歯車29によって、潤滑油が掻き上げられ、油滴や油煙が発生している。ギヤユニット収容空間S4には、油滴や油煙となった潤滑油をガス分から分離する第1の油分離装置41が設けられているが、ガスに混入される潤滑油の量が多いと、第1の油分離装置41によって捕捉できなかった潤滑油が、均圧管40における気流に乗ってIGV収容空間S6に排出されてくる。
【0047】
IGV収容空間S6には、IGV収容空間S6において当該ガスに含まれる潤滑油を分離する第2の油分離装置50が設けられている。第2の油分離装置50は、ギヤユニット収容空間S4から均圧管40を介して流入してくるガスが、筐体20の隙間Gから第1圧縮段11の吸気側に漏出する前に、そのガスに含まれる潤滑油を分離するようになっている。第2の油分離装置50は、カバー部材51で筐体20の隙間Gを囲って、均圧管40を介して流入してくるガスが直接隙間Gから漏出しないようにし、カバー部材51の吸い込み口56にデミスター52を設け、デミスター52を通って潤滑油を取り除いた後にガスを隙間Gから漏出させるようになっている。
【0048】
カバー部材51の吸い込み口56は、IGV収容空間S6において、均圧管40の連通開口40aに対し環形状の中心を挟んだ反対側に配置されている。均圧管40の連通開口40aに対してカバー部材51の吸い込み口56が反対側にあると、均圧管40を介して流入してくるガスの吸い込み口56に到達するまでの流通経路を長く確保することができる。そうすると、連通開口40aから流入してくるガスが、IGV収容空間S6をその環形状に沿って流通する過程で、当該ガスに含まれる潤滑油の少なくとも一部が、筐体20や周辺部材と接触することによって凝縮し、また、カーブによる遠心力によって取り除かれることとなる。このように、IGV収容空間S6におけるガスの流通経路をなるべく遠回りにすることで、この流通過程においてもガスに含まれる潤滑油を取り除くようにすることができる。
【0049】
また、カバー部材51の吸い込み口56は、IGV収容空間S6において、均圧管40の連通開口40aに対して反対向きに配置されている。均圧管40の連通開口40aに対してカバー部材51の吸い込み口56を反対向きとすると、均圧管40を介して流入してくるガスが、吸い込み口56に到達する際に流れ方向が急激に曲がって逆方向となる。このように、IGV収容空間S6に流れ込むガスの流れ方向を急激に曲げることで、当該ガスに含まれる潤滑油の少なくとも一部は、急激な方向転換に耐え切れずにその慣性力によってガスの流れから外側にはじかれて分離することとなる。このように、均圧管40の連通開口40aとカバー部材51の吸い込み口56とを非対向状態とする向きで配置することで、吸い込み口56に到達する際においてもガスに含まれる潤滑油を取り除くようにすることができる。
【0050】
吸い込み口56から吸い込まれたガスは、デミスター52を通過する。デミスター52は、格子状部材や網状部材等で構成されており、ガスが通過する際に、当該ガスに含まれる潤滑油を捕捉することができる。このため、隙間Gから圧縮流路空間S1を通って、筐体20の外部に潤滑油が排出されないようにすることができる。デミスター52に捕捉された潤滑油は、IGV収容空間S6の下方に向けて開口している吸い込み口56から自重により滴下し、IGV収容空間S6の底に溜まる。このように、吸い込み口56を、IGV収容空間S6において、下方を向いて配置することによって、捕捉した潤滑油がカバー部材51の内側に溜まることを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、油返送装置60が設けられており、IGV収容空間S6の底には、溜まった潤滑油を抜き出す流路R10が接続されている。IGV収容空間S6において分離した潤滑油は、エジェクター61によって流路R10を介してギヤユニット収容空間S4に返送される。このように、分離した潤滑油は、IGV収容空間S6に溜まることなく、ギヤユニット収容空間S4のオイルタンク28に戻るため、油上がりを確実に防止することができる。
【0052】
したがって、上述の本実施形態によれば、回転駆動するインペラ13,14を備える圧縮段11,12と、潤滑油を収容すると共にインペラ13,14に回転駆動力を伝達する大径歯車29を収容するギヤユニット収容空間S4及び該ギヤユニット収容空間S4よりも雰囲気圧が低くなるIGV収容空間S6及び該IGV収容空間S6と第1圧縮段11の吸気側とを連通させる隙間Gを備える筐体20と、ギヤユニット収容空間S4からIGV収容空間S6に向かってガスを流通させるための均圧管40と、IGV収容空間S6においてガスに含まれる潤滑油を分離する第2の油分離装置50と、を有する、ターボ圧縮機5を採用することによって、潤滑油の排出を効果的に抑制することができ、油上がりの発生や凝縮器2、蒸発器4における熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0053】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、油返送装置がエジェクターを備える形態について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、例えば油返送装置が電動ポンプを備える形態であってもよい。
【0055】
また、例えば、上記実施形態では、第2空間でのガスの流通経路を長くしつつ、ガスが直接隙間から漏出しないようにするためにカバー部材とデミスターとを備える形態について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、例えば均圧管の連通開口に直接にデミスターを配置して潤滑油を分離する形態であってもよい。