特許第6056280号(P6056280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6056280-シロキサンガス除去材 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056280
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】シロキサンガス除去材
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20161226BHJP
   C07C 63/38 20060101ALI20161226BHJP
   C07C 63/333 20060101ALI20161226BHJP
   C10L 3/10 20060101ALI20161226BHJP
   C07F 3/06 20060101ALN20161226BHJP
   C07F 5/06 20060101ALN20161226BHJP
   C07F 7/04 20060101ALN20161226BHJP
【FI】
   B01J20/22 A
   C07C63/38
   C07C63/333
   C10L3/10
   !C07F3/06
   !C07F5/06 D
   !C07F7/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-191345(P2012-191345)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-46260(P2014-46260A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年8月4日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構『グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発』「副生ガス高効率分離・精製プロセス基盤技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西口 靖子
(72)【発明者】
【氏名】西谷 祐介
(72)【発明者】
【氏名】増森 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 真申
【審査官】 福永 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−056946(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/105521(WO,A1)
【文献】 特開2012−017268(JP,A)
【文献】 特開2008−208110(JP,A)
【文献】 特開2005−061597(JP,A)
【文献】 特表2011−520592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属及び有機配位子から構成される多孔性金属錯体を用いたシロキサンガス除去材であ
って、前記多孔性金属錯体が、Alと2,6−ナフタレンジカルボン酸、Siと4,4’−ビフェニルジカルボン酸、Znとテレフタル酸と3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビピラゾレート、の組み合わせで構成され、水分吸着率が、温度30℃、相対湿度60%の条件において10.0wt%以下、かつ相対圧1.0における窒素吸着量が、温度77Kの条件下、350ml(STP)/g以上、かつMP法から得られる、細孔径8Å以上の 細孔容積が0.04cm3/g以上であることを特徴とするシロキサンガス除去材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサンガス除去材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油代替エネルギーとして、廃棄物や下水処理後のスラッジ、汚泥から発生する消化ガス(例えば、メタン)が広く利用されている。しかしながら、これらのガスには、様々な不具合を引き起こす原因となっている微量の不純物が含まれている。中でもシロキサン化合物は、発電の際の燃焼により酸化ケイ素となり、これがガスエンジンやタービン、配管等に析出し、装置や部品の耐久性低下を引き起こしたり、触媒を劣化させたりする要因となっている。
【0003】
また一方で、シロキサン化合物は、半導体や液晶工場でも問題とされている化合物である。クリーンルームに使用されているシリコン系シール材などからシロキサンガスが発生するとされており、例えば、これがシリコンウェハーに付着するとその特性を変えてしまうなど、生産性の低下を引き起こす原因となっている。
【0004】
このような背景から、シロキサンガスを選択的に、かつ効率よく分離除去できる技術の確立が望まれている。シロキサンガスとしては、主に環状シロキサン、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)やデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)などが挙げられる。
【0005】
一般に、ガス除去材としては、多孔性材料が使用される。選択性を上げるために細孔分布の狭い多孔性材料を用いたり、高吸着容量を得るため比表面積の大きなものを利用したりする。多孔性材料には、活性炭やゼオライト、活性炭素繊維、近年注目される金属イオンと有機配位子から形成される多孔性金属錯体(Porous Coordination Polymers、或いは、Metal Organic Frameworksとも称される)等がある。
【0006】
このような多孔性材料を用いたシロキサンガス除去材としては、活性炭(特許文献1)や活性炭素繊維(特許文献2)が知られている。しかし活性炭や活性炭素繊維は、その製造過程において、約600〜1000℃の高温で処理するため、膨大なエネルギーを消費すること、また、一般的には製造時の重量収率が半分以下で、大量の二酸化炭素を排出することから、環境負荷の高い材料となっており、環境に優しい材料が望まれている。
【0007】
多孔性金属錯体は、金属と有機配位子を溶液中、約−10℃〜200℃、120時間以下で反応させることにより製造でき、高収率で得られる。中には、室温で数分間の攪拌のみで製造できるものもある。活性炭や活性炭素繊維と比較すると、製造に必要なエネルギーや二酸化炭素排出量を低減させることができることから、環境負荷の低い材料として期待される材料である。
【0008】
しかしながら、多孔性金属錯体の多くは、水蒸気(非特許文献1)やメタン、水素、二酸化炭素などのガス(非特許文献2)やメタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなどの有機溶媒(非特許文献3)などの吸着材として検討されているのみで、シロキサンガス除去材として使用されている例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−177737号公報
【特許文献2】特開2008−55318号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】S.Kaskelら(他3名)、Chem.Commun.,p2462−2464(2008)
【非特許文献2】S.Kaskelら(他5名)、Microporous and Mesoporous Materials,122,p93−98(2009)
【非特許文献3】X.−M.Chenら(他2名)、Inorganic Chemistry,47,p1346−1351(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況の下、本発明では高いガス除去性能を有し、環境負荷を低減できるシロキサンガス除去材の提供を本発明の課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、設計性に優れた多孔性金属錯体が、水分存在下でも高いシロキサンガス除去性能を有することを見出した。特に、水分吸着率が、温度30℃、相対湿度60%の条件において10.0wt%以下、かつ相対圧1.0における窒素吸着量が、温度77Kの条件下、350ml(STP)/g以上、かつMP法から得られる、細孔径8Å以上の細孔容積が0.04cm/g以上の特徴を有する多孔性金属錯体は、より優れたシロキサンガス除去性能を有し、かつ長時間使用しても、優れたシロキサンガス除去性能が維持されることを見出した。さらに、多孔性金属錯体は、金属と有機配位子を溶液中、約−10℃〜200℃で加熱することにより製造できるため、多孔性金属錯体を用いることで環境へ大きな負荷をかけることなく優れたシロキサンガス除去材が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.金属及び有機配位子から構成される多孔性金属錯体を用いたシロキサンガス除去材であって、前記多孔性金属錯体の水分吸着率が、温度30℃、相対湿度60%の条件において10.0wt%以下、かつ相対圧1.0における窒素吸着量が、温度77Kの条件下、350ml(STP)/g以上、かつMP法から得られる、細孔径8Å以上の 細孔容積が0.04cm/g以上であることを特徴とするシロキサンガス除去材。
2.周期表の第2族および第7〜第14族元素から選ばれる少なくとも一種の金属と、二座以上で配位可能なカルボン酸化合物又は二座以上で配位可能な複素環式五員環化合物から選ばれる少なくとも一種の有機配位子とから構成される多孔性金属錯体である1.に記載のシロキサンガス除去材。
3.前記金属がAl、Si、Znから選ばれる少なくとも一種の金属であり、かつ前記有機配位子が2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビピラゾレートから選ばれる少なくとも一種の有機配位子である、2.に記載のシロキサンガス除去材。
4.前記多孔性金属錯体が、Alと2,6−ナフタレンジカルボン酸、Siと4,4’−ビフェニルジカルボン酸、Znとテレフタル酸と3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビピラゾレート、の組み合わせで構成される、いずれかの多孔性金属錯体である1.〜3.のいずれかに記載のシロキサンガス除去材。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシロキサンガス除去材は、水分吸着率が、温度30℃、相対湿度60%の条件において10.0wt%以下、かつ相対圧1.0における窒素吸着量が、温度77Kの条件下、350ml(STP)/g以上、かつMP法から得られる、細孔径8Å以上の細孔容積が0.04cm/g以上の多孔性金属錯体であるため、優れたシロキサンガス除去性能を有し、かつ長時間使用した場合であっても、この優れたシロキサンガス除去性能が維持される。また、設計の自由度の高い 多孔性金属錯体を用いることから、所望の性質を有するシロキサンガス除去材を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例及び比較例で行われたシロキサンD4ガス流通系吸着試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のシロキサンガス除去材とは、シロキサンガスを含む被処理ガスと接触させて、前記シロキサンガスを吸着により除去するための除去材をさし、本発明のシロキサンガス除去材は多孔性金属錯体で構成されている。高吸着容量を得るため、また除去材製造時の環境負荷を低減させることができるため、多孔性金属錯体を使用することが好ましく、この多孔性金属錯体は、金属及び有機配位子から構成されることが望ましい。多孔性金属錯体としては、周期表の第2族および第7〜第14族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、二座以上で配位可能なカルボン酸化合物または二座以上で配位可能な複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の有機配位子とから構成される、いずれかの多孔性金属錯体が好ましい。中でもシロキサンガス除去性能が高いことから、Siと4,4’−ビフェニルジカルボン酸、Alと2,6−ナフタレンジカルボン酸、Znとテレフタル酸と3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビピラゾレート、の組み合わせで構成される、いずれかの多孔性金属錯体を使用することがより好ましい。
【0017】
多孔性金属錯体の金属としては、周期表第2族、第7〜第14族に分類される金属の使用が好ましい。中でも、Mg、Ca、Sr、Baの第2族元素;Mn、Reの第7族元素;Fe、Ru、Osの第8族元素;Co、Rh、Irの第9族元素;Ni、Pd、Ptの第10族元素;Cu、Ag、Auの第11族元素;Zn、Cd、Hgの第12族元素;Al、Ga、In、Tlの第13族元素;B、Si、Ge、Sn、Pbの第14族元素が好ましく、さらに好ましくは第12族〜第14族の元素であり、中でも本発明にはZn、Al、Siの使用が最適である。
【0018】
また有機配位子としては、二座以上で配位可能なカルボン酸及びその誘導体、または二座以上で配位可能な複素環式五員環化合物及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の有機配位子の 使用が望ましい。二座以上で配位可能なカルボン酸及びその誘導体としては、例えば、p−テルフェニル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸〔別名称:5,5’−(1,4−フェニレン)ビスイソフタル酸〕、1,2,4,5−テトラキス(4−カルボキシフェニル)ベンゼン等のテトラカルボン酸及びその誘導体;ビフェニル−3,4’,5−トリカルボン酸、1,3,5−トリス(4’−カルボキシ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)ベンゼン、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸等のトリカルボン酸及びその誘導体;テレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ジアミノテレフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、フマル酸、マロン酸、アジピン酸等のジカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。また二座以上で配位可能な複素環式五員環化合物及びその誘導体としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類及びその誘導体;4,4’−ビピラゾレート、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビピラゾレート、1,3,5−トリス(1H−1,2−ピラゾール−4−イル)ベンゼン等のピラゾール類及びその誘導体;1,3,5−トリス(1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)ベンゼン等のトリアゾール類及びその誘導体;5,5’−ビステトラゾール、5,5’−アゾビス−1H−テトラゾール、1,3,5−トリス(2H−テトラゾール−5−イル)ベンゼン等のテトラゾール類等が好ましく使用できる。中でも本発明には、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビピラゾレートの使用が好ましい。
【0019】
多孔性金属錯体の水分吸着率は、温度30℃、相対湿度60%の条件において10.0wt%以下であることが望ましく、より好ましくは9.0wt%以下であり、さらに好ましくは、8.2wt%以下である。水分吸着率が低いほど、疎水性であるシロキサンガスを捕捉できるため望ましい。
【0020】
多孔性金属錯体の相対圧1.0における窒素吸着量は、温度77Kの条件下、350ml(STP)/g以上であることが望ましく、より好ましくは370ml(STP)/g以上であり、さらに好ましくは、385ml(STP)/g以上である。窒素吸着量が多ければ多いほど、吸着容量が大きくシロキサンガスを多く捕捉できるため望ましい。
【0021】
多孔性金属錯体のMP法から得られる、細孔径8Å以上の細孔容積は0.04cm/g以上であることが望ましく、より好ましくは0.09cm/g以上であり、さらに好ましくは、0.13cm/g以上である。細孔容積が大きければ大きいほど、シロキサンガスを細孔内に多量に吸着できるため望ましい。
【0022】
本発明の多孔性金属錯体は、前記の水分吸着率、窒素吸着量、細孔容積を全て満たすものが望ましい。前記の水分吸着率を満たすためには、メチル基やエチル基、フッ素基等の疎水性残基を有する配位子や芳香環を有する配位子等を用いることが好ましい。また、前記の窒素吸着量や細孔容積を満たすためには、芳香環を2つ以上有する配位子等を選択することが望ましい。これらの配位子と周期表第2族、第7〜第14族に分類される金属から選択される多孔性金属錯体により、前記の水分吸着率、窒素吸着量、細孔容積を満たすものが得られる。
【0023】
これらの多孔性金属錯体は、前記金属と前記有機配位子を溶液中、約−10℃〜200℃、120時間以下で反応させることにより製造できる。−10℃〜約170℃、100時間以下の反応で製造できることがより好ましく、−10℃〜140℃で80時間反応させることで製造できることがさらに好ましい。温度が低く反応時間が短いほど、熱エネルギーを削減できるため、望ましい。また、溶液としては、水やメタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)などが用いられ、環境負荷低減を考慮に入れると、水を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の多孔性金属錯体のシロキサンガス除去性能は、除去率90%における破過時間が50分以上であることが好ましく、より好ましくは70分以上であり、さらに好ましくは90分以上である。
【0025】
本発明により得られるガス除去材は、シロキサンガス除去性能に優れるため、消化ガス等の精製装置等にシロキサンガス除去材として充填することにより、消化ガス中のシロキサン量を簡便に低減することができる。シロキサン化合物の含有量の少ない精製ガスは、ガスエンジンやタービン等の装置や部品の耐久性低下を引き起こすことがなく、加えて、下流工程での触媒劣化を防止することができる。また、本発明のガス除去材をフィルター等に担持させることでシロキサンガス除去フィルターとしても使用可能である。シロキサンガス除去フィルターを半導体や液晶工場に設置することにより、クリーンルーム内のシロキサン量を低減することができ、生産性低下を防止することができる。すなわち本発明のシロキサンガス除去材によれば、消化ガス精製装置等のメンテナンスコストを大幅に削減することができるため、消化ガス等のバイオガスの石油代替エネルギーの利用拡大が期待される。また、半導体や液晶工場での長期の品質維持による生産性向上が期待される。さらに多孔性金属錯体を用いることで活性炭や活性炭素繊維等の代替が可能となることから、製造時のエネルギー削減にも大きな効果をもたらし、環境負荷低減に大きく寄与することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、実施例及び比較例中における分析または評価は、以下のようにして行った。
【0027】
<IR測定>
合成した多孔性金属錯体について、IR測定装置(日本分光株式会社製「FT/IR−6100」)を用いて、全反射吸収(ATR)法で測定した。
【0028】
<粉末X線回折測定>
合成した多孔性金属錯体について、粉末X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製「NEW D8 ADVANCE」)を用いて、対称反射法で測定した。測定条件を以下に示す。
1)X線源:CuKα(λ=1.5418Å)40kV 200mA
2)ゴニオメーター:縦型ゴニオメーター
3)検出器:シンチレーションカウンター
4)回折角(2θ)範囲:3〜90°
5)スキャンステップ:0.05°
6)積算時間:0.5秒/ステップ
7)スリット:発散スリット=0.5°、受光スリット=0.15mm、散乱スリット=0.5°
【0029】
<水分吸着率測定>
多孔性金属錯体を120℃で12時間真空乾燥し、吸着水などを除去した。これをサンプル管に入れ重量を測定し、温度30℃、相対湿度60%に設定した恒温恒湿器(ヤマト科学株式会社製「IW222」)中、3時間静置した後の重量を測定した。水分吸着率は、下記式(i);
水分吸着率(%)={(3時間静置後の重量−3時間静置前の重量)/(3時間静置前の重量)}×100 ・・・(i)
に基づき算出した。
【0030】
<窒素吸着測定>
自動比表面積/細孔分布測定装置(日本BEL株式会社製「BELSORP−miniII」)を用いて容量法で測定を行った。測定に先立ち、多孔性金属錯体を120℃で18時間真空乾燥し、吸着水などを除去した。測定条件を以下に示す。
1)測定温度:77K
2)平衡待ち時間:300秒
【0031】
<細孔容積の算出>
細孔径8Å以上の細孔容積は、前記窒素吸着測定の結果を基に算出した。解析ソフトウェア(日本BEL株式会社製「BELMasterTM」)を用い、MP法によりマイクロ細孔分布解析を行った。数値データに基づき、細孔径8Å 以上の細孔容積を求めた。細孔直径範囲0.42〜2nmの条件で解析し、吸着時の数値データ表の結果より、全マイクロポア細孔容積(A)から細孔直径0.8nm未満のマイクロポア細孔容積を引いて、細孔直径0.8nm以上のマイクロポア細孔容積B(単位:cm/g)を算出した。
MP法は、吸着等温線の各点での接線の傾きの変化から求められる各区間の外部表面積と吸着層厚み(細孔形状を円筒形とするため細孔半径に相当)を基に細孔容積を求め、吸着層厚みに対してプロットすることにより、細孔分布を得る方法である。
【0032】
<シロキサンガス流通系吸着試験>
多孔性金属錯体100mgをカラムに充填し、試験ガスを流し、経時的にカラム出口でのガス濃度を、FID形VOC分析計(株式会社島津製作所製「VMS−1000F」を用いて検出し、シロキサンガス除去率を下記式(ii);
シロキサンガス除去率(%)={(カラム入口のシロキサンガス濃度−カラム出口のシロキサンガス濃度)/(カラム入口のシロキサンガス濃度)}×100 ・・・(ii)
に基づき算出した。なお、試料としては、120℃で12時間真空乾燥し、吸着物質を除去したものを使用した。評価条件の詳細を以下に示す。
1)測定雰囲気:25℃、50%RH空気下
2)圧力:常圧
3)試験ガス組成:シロキサンD4ガス濃度5ppm(25℃、50%RH空気希釈)
4)流量:0.5L/min
【0033】
<実施例1>
Siと4,4’−ビフェニルジカルボン酸から形成された多孔性金属錯体EOF−2を、非特許文献1に従って、THF中、−10〜25℃で合成した。得られた多孔性金属錯体について、IR測定により同定し、水分吸着率および窒素吸着測定により物性評価を行った。水分吸着率、窒素吸着量、細孔容積を表1に示す。次いで、シロキサンガス流通系吸着試験を行った。結果を図1に示す。
【0034】
<実施例2>
Alと2,6−ナフタレンジカルボン酸から形成された多孔性金属錯体DUT−4を、非特許文献2に従って、DMF中、120℃で24時間合成した。得られた多孔性金属錯体について、粉末X線回折測定により同定し、水分吸着率および窒素吸着測定により物性評価を行った。水分吸着率、窒素吸着量、細孔容積を表1に示す。次いで、シロキサンガス流通系吸着試験を行った。結果を図1に示す。
【0035】
<実施例3>
Znとテレフタル酸と3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビピラゾレートから形成された多孔性金属錯体を、非特許文献3に従って、DMF中、140℃で80時間合成した。得られた多孔性金属錯体について、粉末X線回折測定により同定し、水分吸着率および窒素吸着測定により物性評価を行った。水分吸着率、窒素吸着量、細孔容積を表1に示す。次いで、シロキサンガス流通系吸着試験を行った。結果を図1に示す。
【0036】
<比較例1>
Znと2−メチルイミダゾールから形成された多孔性金属錯体(BASF社製「Basolite(登録商標)Z1200」)について、水分吸着率および窒素吸着測定により物性評価を行った。水分吸着率、窒素吸着量、細孔容積を表1に示す。次いで、シロキサンガス流通系吸着試験を行った。結果を図1に示す。
【0037】
<比較例2>
Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸から形成された多孔性金属錯体(BASF社製「Basolite(登録商標)C300」)について、水分吸着率および窒素吸着測定により物性評価を行った。水分吸着率、窒素吸着量、細孔容積を表1に示す。次いで、シロキサンガス流通系吸着試験を行った。結果を図1に示す。
【0038】
<比較例3>
Alとテレフタル酸から形成された多孔性金属錯体(BASF社製「Basolite(登録商標)A100」)について、水分吸着率および窒素吸着測定により物性評価を行った。水分吸着率、窒素吸着量、細孔容積を表1に示す。次いで、シロキサンガス流通系吸着試験を行った。結果を図1に示す。
【0039】
【表1】
図1