(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のクローラ走行装置は、従動輪と複数の遊転輪の軸受け部へ各別に設けたニップルから
給油作業を行わなければならない。
【0006】
そこで、本発明は、クローラ走行装置を構成する従動輪と複数の遊転輪の軸受け部へ一度の
給油作業でグリースの充填が行えるようにして、組立やメンテナンス作業の効率化を図ることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
請求項1に記載の発明は、駆動スプロケット
15と複数の遊転輪19A,19B,19C及び従動輪17,18にクローラベルト4を巻き掛けたクローラ走行装置において、トラックフレーム16に軸支した遊転輪19A,19B,19Cと固定従動輪18の各軸受63A,63B,63C,68に
給油する
給油パイプ5を設け、この
給油パイプ5に設けた単一のニップル6から一括して各軸受63A,63B,63C,68に
給油を行えるようにすると共に、メイン
給油パイプ5aから遊転輪19A,19B,19Cの各軸受63A,63B,63Cへ分岐する分岐
給油パイプ5b,5c,5dを遊転輪19A,19B,19Cの椀状凹部19Aa,19Ba,19Ca内に配置
する構成とし、
前記メイン給油パイプ5aから遊転輪19A,19B,19Cの各軸受63A,63B,63Cへ分岐する分岐給油パイプ5b,5c,5dをメイン給油パイプ5aから前傾姿勢にしたことを特徴とするクローラ走行装
置とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
前記遊転輪19A,19B,19Cを支持するトラックフレーム16の底部にメイン給油パイプ5aを設けたことを特徴とする請求項1に記載のクローラ走行装
置とする。
【0010】
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明で、固定従動輪18と複数の遊転輪19A,19B,19Cの軸受63A,63B,63C,68への
給油作業が単一のニップル6から
給油パイプ5を通じて一括して行えるので、組立時及びメンテナンス時に作業を迅速に行える。
さらに、メイン
給油パイプ5aから遊転輪19A,19B,19Cの各軸受63A,63B,63Cへ分岐する分岐
給油パイプ5b,5c,5dを遊転輪19A,19B,19Cの椀状凹部19Aa,19Ba,19Ca内に配置することで、クローラ走行装置3の走行に伴う泥水の流れが遊転輪19A,19B,19Cの椀状凹部19Aa,19Ba,19Caで遮られて分岐
給油パイプ5b,5c,5dが破損しないようになる。
【0012】
また、メイン
給油パイプ5aから遊転輪19A,19B,19Cの各軸受63A,63B,63Cへ分岐する分岐
給油パイプ5b,5c,5d,5eがメイン
給油パイプ5aから前傾姿勢にしていることで、前から流れる泥水が椀状部19Aa,19Ba,19Ca内に流れ込んでも、分岐
給油パイプ5b,5c,5d,5eが曲がったり破損したりしない。
【0013】
請求項
2に記載の発明で、請求項
1に記載の効果に加えて、トラックフレーム16がメイン
給油パイプ5aの上側を覆うようになって、泥水の上側からの流れを受けず、破損し難い。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に示すトラクタを参照しながら説明する。なお、本明細書においてトラクタの前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後という。
【0016】
トラクタ10は、車両前部のボンネット11内部にエンジン12を内装し、このエンジン12を搭載したメインフレーム20からクラッチハウジング、ミッションケース13等を一体的に連結する構成となっている。そして前記ミッションケース13の後部には、後述するクローラ駆動軸15a,15aを内装するリヤアクスルハウジング14を設け、このリヤアクスルハウジング14の左右側方にクローラ走行装置3を設け、ボンネット11下部に前輪9を設ける構成となっている。クローラ走行装置3は、フェンダFで覆われている。
【0017】
クローラ走行装置3は、前記スプロケット軸15aの先端に取り付けた駆動スプロケット15と、前記ミッションケース13の下部に連結フレーム66で取り付けるトラックフレーム16の前側に設けるテンション従動輪17と後端に設ける固定従動輪18、及びテンション従動輪17と固定従動輪18の間に略等間隔でトラックフレーム16に軸支する遊転輪19A,19B,19Cと、これら駆動スプロケット15とテンション従動輪17と固定従動輪18と遊転輪19A,19B,19Cに亘って架け回すクローラベルト4で構成されている。
【0018】
テンション従動輪17は、連結フレーム66に前下方に向けて設けた四角筒状のシリンダケース61にスプリング22で押出付勢された四角筒状のピストン軸21の先端に固着した支持軸23に嵌入したテンション従動輪支持軸24に軸受28で回転可能に支持している。スプリング22の付勢力を調整する調整ボルト72のナット73をシリンダケース61の後上端に設けて、ヘアピン74で固定し、浸水し難くしている。
【0019】
なお、シリンダケース61には長穴状の点検窓61aを設けてピストン軸21の押出位置を確認できるようにしている。また、軸受28には、テンション従動輪17のボス部に設けたニップル34からグリースガンを用いてグリースを供給する。
【0020】
遊転輪19A,19B,19Cは、トラックフレーム16に固着した転輪支持軸62A,62B,62Cに軸受63A,63B,63Cで回転可能に支持し、各転輪支持軸62A,62B,62Cの軸芯に設けるグリース供給孔64A,64B,64Cから軸受63A,63B,63Cにグリースを供給する。各転輪支持軸62A,62B,62Cの軸端には排気弁65A,65B,65Cを設けている。
【0021】
遊転輪19A,19B,19Cは、クローラベルト4の中央突起5aを左右からはさむように、左右側部に鼓状に膨らんだ形状を板体で形成して、椀状凹部19Aa,19Ba,19Caとしている。
【0022】
また、固定従動輪18は、連結フレーム66の後端に固着した従動輪支持軸67に軸受68で回転可能に支持し、従動輪支持軸67の軸芯に設けたグリース供給孔69から軸受68にグリースを供給する。この従動輪支持軸67の軸端には排気弁70を設けている。
【0023】
トラックフレーム16の底面側に前後の長手方向に沿ってクローラベルト4の側部を受けるクローラガイド71と略同じ高さで給油パイプ5を固着している。この給油パイプ5は、トラックフレーム16の底面に沿うメイン給油パイプ5aと,前記転輪支持軸62A,62B,62Cのグリース供給孔64A,64B,64Cと従動輪支持軸67のグリース供給孔69に通じる分岐給油パイプ5b,5c,5d,5eと、メイン給油パイプ5aの前後略中間位置で二つの遊転輪19B,19Cの間でトラックフレーム16の側方でトラックフレーム16の略上面位置まで立ち上げた供給給油パイプ5fで構成し、供給給油パイプ5fの端部に側方へ向けてニップル6を設けて、このニップル6にグリースガンの供給口を嵌合してグリースを注入する。
【0024】
なお、遊転輪19A,19B,19Cの転輪支持軸62A,62B,62Cに給油する分岐給油パイプ5b,5c,5dは、遊転輪19A,19B,19Cの椀状凹部19Aa,19Ba,19Caに囲まれた位置でメイン
給油パイプ5aから立ち上がっていることで、泥水の流れが直接的に作用しない。
【0025】
この構成で、一個のニップル6から遊転輪19A,19B,19Cの軸受63A,63B,63Cと固定従動輪18の軸受68へ一括してグリースを供給することが出来るので、給油作業が省力化出来る。
【0026】
なお、分岐給油パイプ5b,5c,5d,5eは、メイン給油パイプ5aから前上方に向けて立ち上げることで、泥水等で破損し難くしている。
【0027】
また、ニップル6がトラックフレーム16の上面より低い位置とすることで泥水よって破損し難い。
【0028】
図6の(a)はニップル6部の断面図を示しており、
図3のS1−S1断面である。
図6(b)は遊転輪19A,19B,19C部の断面図を示しており、
図3のS2−S2断面である。遊転輪19B,19C部分については、符号S2−S2を入れていないが、遊転輪19Aと同じ状況で符号S2−S2が入ることになる。
図6(c)は固定従動輪18の断面図を示しており、
図3のS3−S3断面である。
【0029】
図6の(a)はニップル6部の断面図を示している。
図6(b)は遊転輪19A,19B,19C部の断面図を示している。
図6(c)は固定従動輪18の断面図を示している。
【0030】
トラクタ10の構成で、ミッションケース13上に設けるトラクタ10の操縦席25前方には、操舵部となるステアリングハンドル1を設け、同操縦席25側方には、後述する主及び副変速装置を切替える変速レバー26や、リフトアーム29の回動位置を操作する作業機昇降用ポジションレバー27等を設けている。
【0031】
また前記ステアリングハンドル下方のフロアには、クラッチペダル33や左右ブレーキペダル32,32等を配置している。トラクタ10の車体後部には、作業機昇降用油圧シリンダ31を備え、前記シリンダ31のピストン伸縮によりリフトアーム29,29を上下回動する構成となっている。更に、車体後部には、二点リンク機構によってロータリ作業機30等の各種作業機を連結する構成となっている。
【0032】
次に、
図7に基づいてトラクタ10の動力伝達構成について説明する。前記トラクタ10のエンジン12から取り出された回転動力は、出力軸35を介してミッションケース13内の主クラッチ36、主変速装置37、副変速装置38と順に伝達され、更にデフ装置39を介して左右のブレーキ装置40、クローラスピン装置41を介して前記スプロケット軸15a、クローラベルト4へと伝達する構成となっている。
【0033】
詳細に説明すると、前記主クラッチ36は、クラッチペダル33の踏込み操作により動力伝達が入切される湿式多板形態のクラッチであり、同クラッチ36で入切された回転動力は車体後方の減速ギヤ組42を介して主変速装置37へ伝達する構成となっている。
【0034】
尚、主クラッチ36に伝動されるク動力は、前記作業機昇降用油圧シリンダ31等の各種油圧アクチュエータへ作動油を送る油圧ポンプ43へ伝動する。
【0035】
主変速装置37は、3組の前進用正転ギヤ組と1組の後進用ギヤ組を有する所謂キーシフト式の変速装置であり、変速軸44内のスライドキー45をシフタにより前後操作することで前記ギヤ組の内の一つの噛合いを通じて回転動力を副変速装置38に伝達する構成となっている。
【0036】
また、前記ギヤ組の駆動側ギヤを支持する駆動軸47後端部には、PTO入切用のスライドギヤを介してPTO伝動軸48を回転可能に設けている。
【0037】
副変速装置38は、副変速用スライドギヤ46を前後に操作することで回転動力を高低二段に切り替えるコンスタントメッシュギヤ式変速装置であり、前記回転動力をデフ装置39へ伝達する。またデフ装置39には、このデフ作用を消す所謂デフロック装置を設け、デフロック用油圧シリンダ49のピストン伸縮によりデフロックをかける構成となっている。
【0038】
ブレーキ装置40は、デフ装置39から左右それぞれ突出するデフ出力軸50の先端部にブレーキディスク51…を設け、このブレーキディスク51を圧着することで前記デフ出力軸50の回転を制動、即ちクローラベルト4にブレーキをかける構成となっている。
【0039】
そして前記ブレーキディスク51…には、ディスク圧着用のピストンを設け、このピストンを前記左右それぞれのブレーキペダル32の踏込み操作、またはブレーキ用アクチュエータとなるブレーキ用油圧シリンダ33のピストン伸縮の内作動量の大きい方の操作を優先して作動させる構成となっている。
【0040】
尚、図中では、左側ブレーキ装置の構成、符号を一部省略しているが右側ブレーキ装置と同様である。またブレーキ用アクチュエータの別形態としては、ブレーキディスク51…を直接油圧で操作する構成としても良いし、電動モータを用いる構成としても良い。
【0041】
また前記デフ出力軸50の中間部には減速ギヤ組を設け、この減速ギヤ組を介して第一クローラ駆動軸7aへ回転動力を伝達し、クローラスピン装置41へ入力する構成となっている。クローラスピン装置41は、2つの湿式多板クラッチ(正転用クラッチ52、スピン用アクチュエータとなる逆転用クラッチ53)と、この後部に設ける遊星ギヤ機構54とから構成されている。
【0042】
そして前記両クラッチ52,53を収納するハウジング内には、常時正転用クラッチ52が圧着されるようスプリングを設け、通常時は時回転動力を順に、第一クローラ駆動軸7a−(正転用クラッチ52−リングギヤ55と第一遊星ギヤ56とキャリア58と第二遊星ギヤ57の一体部品)−サンギヤ59−第二クローラ駆動軸7bと伝達され、更に減速ギヤ組、スプロケット軸15aと伝達させる。
【0043】
旋回制御では、コントローラの通電指令により、
図8に示す切換制御弁60の油室が切り替えられ、圧油が前記スプリングの付勢力に抗し逆転用クラッチ53が圧着されて、回転動力を順に、第一クローラ駆動軸7a−逆転用クラッチ53−リングギヤ55−第一遊星ギヤ56−第二遊星ギヤ57−サンギヤ59−第二クローラ駆動軸7bと伝達し、更に減速ギヤ、スプロケット軸15aと伝達させる。
【0044】
これにより、前記両クラッチ52,53のどちらか一方が圧着することで、クローラ4を正転若しくは逆転(スピン)することができる。
【0045】
また前記クラッチ52,53は、ブレーキ装置40より動力下手側に配置されているので、常にどちらか一方のクラッチが圧着する状態とてニュートラル位置が無い構成となっている。よって、例えば坂道での車両の駐車時またはクラッチに関する油路や電気系統の故障時に、車両を確実に停止することができる。
【0046】
またここでは前記左右の逆転用クラッチ53,53は、切替制御弁60により択一的に作動する構成としているので、例えば両クラッチにそれぞれ制御弁を設ける構成と比較して電気トラブル時などに両クラッチが圧着して車両が不本意に後進することを防止することができる。
【0047】
そして、それぞれ左右の第二クローラ駆動軸7bに設けた減速ギヤには、同軸の回転、即ちクローラの回転数検出手段であるクローラ回転センサ8を設けている。また、符号9aは、前輪9の伝動系である。