特許第6056370号(P6056370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056370
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20161226BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20161226BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   C02F1/44 A
   B01D61/58
   B01D61/12
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-232865(P2012-232865)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2014-83480(P2014-83480A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隼人
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−237988(JP,A)
【文献】 特開2012−170841(JP,A)
【文献】 特開昭61−054297(JP,A)
【文献】 特開2001−293471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/12
B01D 61/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給水から第1透過水を製造する第1膜分離装置と、
供給水を前記第1膜分離装置に向けて吐出する第1ポンプと、
前記第1膜分離装置で製造された第1透過水の圧力を検出圧力値として出力する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段から出力された検出圧力値が予め設定された目標圧力値となるように、前記第1ポンプを駆動する第1制御部と、
前記第1膜分離装置で製造された第1透過水から第2透過水を製造する第2膜分離装置と、
第1透過水を前記第2膜分離装置に向けて吐出する第2ポンプと、
前記第2膜分離装置で製造された第2透過水の流量を検出流量値として出力する流量検出手段と、
前記流量検出手段から出力された検出流量値が予め設定された目標流量値となるように、前記第2ポンプを駆動する第2制御部と、
を備える水処理システム。
【請求項2】
入力された指令信号に対応する駆動周波数を前記第1ポンプに出力する第1インバータと、入力された指令信号に対応する駆動周波数を前記第2ポンプに出力する第2インバータと、を備え、
前記第1ポンプは、前記第1インバータから入力された駆動周波数に応じて駆動され、前記第2ポンプは、前記第2インバータから入力された駆動周波数に応じて駆動され、
前記第1制御部は、前記圧力検出手段から出力された検出圧力値が予め設定された目標圧力値となるように前記第1ポンプの駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する指令信号を前記第1インバータに出力するように構成され、前記第2制御部は、前記流量検出手段から出力された検出流量値が予め設定された目標流量値となるように前記第2ポンプの駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する指令信号を前記第2インバータに出力するように構成される、
請求項1に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給水から透過水と濃縮水とを製造する膜分離装置を備えた水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程、電子部品や医療器具の洗浄等においては、不純物を含まない高純度の純水が使用される。この種の純水は、一般に、地下水や水道水等の原水(以下、「供給水」ともいう)を、膜分離装置としての逆浸透膜モジュール(以下、「RO膜モジュール」ともいう)で逆浸透膜処理することにより製造される。
【0003】
従来、供給水をRO膜モジュール及び電気式脱イオン装置により処理して純水を製造する水処理システムが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。また、供給水を直列に接続された2つのRO膜モジュールにより処理して純水を製造する水処理システムも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−259376号公報
【特許文献2】特開2006−255650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した2つのRO膜モジュールにより純水を製造する水処理システムにおいて、前段のRO膜モジュールの上流側に加圧ポンプを設け、この加圧ポンプから2つのRO膜モジュールに向けて水を圧送することにより、2つのRO膜モジュールに水を流通させる構成が考えられる。しかし、1つの加圧ポンプで水を圧送する場合、加圧ポンプの運転圧力が高圧(2MPa程度)となるため、それぞれのRO膜モジュールに耐圧性が必要となり、コストが増加する。
【0006】
また、上記水処理システムにおいて、2つのRO膜モジュールの間に中間タンクを設けると共に、2つのRO膜モジュールにそれぞれ加圧ポンプを設ける構成も考えられる。中間タンクを設けることにより、前段のRO膜モジュールと後段のRO膜モジュールにおいて、それぞれ独立に流量を制御することができる。しかし、この水処理システムでは、2つの加圧ポンプのほかに中間タンクが必要となるため、コストが増加すると共に、中間タンクを設置するスペースが必要となる。
【0007】
また、上記水処理システムにおいて、運転圧力が中圧(1MPa程度)の加圧ポンプを、2つのRO膜モジュールにそれぞれ設ける構成も考えられる。しかし、この水処理システムでは、前段のRO膜モジュールにおける膜面のファウリングや水温による管路抵抗の変化等により、後段のRO膜モジュールへ供給される水の流量が変動し、後段の加圧ポンプの入口圧力が不安定となるため、後段のRO膜モジュールにおいて安定した流量の透過水を製造することが難しい。
【0008】
従って、本発明は、前段の膜分離装置と後段の膜分離装置との間に中間タンクを用いることなしに、後段の膜分離装置において安定した流量の透過水を製造できる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、供給水から第1透過水を製造する第1膜分離装置と、供給水を前記第1膜分離装置に向けて吐出する第1ポンプと、前記第1膜分離装置で製造された第1透過水の圧力を検出圧力値として出力する圧力検出手段と、前記圧力検出手段から出力された検出圧力値が予め設定された目標圧力値となるように、前記第1ポンプを駆動する第1制御部と、前記第1膜分離装置で製造された第1透過水から第2透過水を製造する第2膜分離装置と、第1透過水を前記第2膜分離装置に向けて吐出する第2ポンプと、前記第2膜分離装置で製造された第2透過水の流量を検出流量値として出力する流量検出手段と、前記流量検出手段から出力された検出流量値が予め設定された目標流量値となるように、前記第2ポンプを駆動する第2制御部と、を備える水処理システムに関する。
【0010】
また、水処理システム1は、入力された指令信号に対応する駆動周波数を前記第1ポンプに出力する第1インバータと、入力された指令信号に対応する駆動周波数を前記第2ポンプに出力する第2インバータと、を備え、前記第1ポンプは、前記第1インバータから入力された駆動周波数に応じて駆動され、前記第2ポンプは、前記第2インバータから入力された駆動周波数に応じて駆動され、前記第1制御部は、前記圧力検出手段から出力された検出圧力値が予め設定された目標圧力値となるように前記第1ポンプの駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する指令信号を前記第1インバータに出力するように構成され、前記第2制御部は、前記流量検出手段から出力された検出流量値が予め設定された目標流量値となるように前記第2ポンプの駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する指令信号を前記第2インバータに出力するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前段の膜分離装置と後段の膜分離装置との間に中間タンクを用いることなしに、後段の膜分離装置において安定した流量の透過水を製造できる水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。
図2】第1制御部10において圧力フィードバック制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図3】第2制御部20において流量フィードバック制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る水処理システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施形態の水処理システム1は、例えば、水道水や地下水等の淡水から純水を製造する純水製造システムに適用される。図1は、本実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。図2は、第1制御部10において圧力フィードバック制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図3は、第2制御部20において流量フィードバック制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る水処理システム1は、第1ポンプとしての第1加圧ポンプ2と、第1インバータ3と、第1膜分離装置としての第1RO膜モジュール4と、圧力検出手段としての圧力センサ5と、第1制御部10と、第1排水弁11〜第3排水弁13と、を備える。
【0015】
また、水処理システム1は、第2ポンプとしての第2加圧ポンプ6と、第2インバータ7と、第2膜分離装置としての第2RO膜モジュール8と、流量検出手段としての流量センサ9と、第2制御部20と、第4排水弁21〜第6排水弁23と、を備える。
【0016】
また、水処理システム1は、供給水ラインL1と、第1透過水ラインL2と、第2透過水ラインL3と、第1濃縮水ラインL4と、第2濃縮水ラインL5と、第1濃縮水排水ラインL11と、第2濃縮水排水ラインL12と、第3濃縮水排水ラインL13と、第4濃縮水排水ラインL21と、第5濃縮水排水ラインL22と、第6濃縮水排水ラインL23と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、図1では、電気的な接続の経路を破線で示す。
【0017】
供給水ラインL1は、供給水W1を第1RO膜モジュール4に供給するラインである。供給水ラインL1の上流側の端部は、供給水W1の供給源(不図示)に接続されている。供給水ラインL1の下流側の端部は、第1RO膜モジュール4の一次側入口ポートに接続されている。
【0018】
第1加圧ポンプ2は、供給源から供給された供給水W1を吸入し、第1RO膜モジュール4に向けて吐出する装置である。第1加圧ポンプ2は、供給水ラインL1に設けられている。第1加圧ポンプ2は、第1インバータ3(後述)と電気的に接続されている。第1加圧ポンプ2には、第1インバータ3から周波数が変換された駆動電力が供給される。第1加圧ポンプ2は、入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。
【0019】
第1インバータ3は、第1加圧ポンプ2に周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。第1インバータ3は、第1制御部10と電気的に接続されている。第1インバータ3には、第1制御部10から電流値信号が入力される。第1インバータ3は、入力された電流値信号に対応する駆動周波数を第1加圧ポンプ2に出力する。
【0020】
第1RO膜モジュール4は、第1加圧ポンプ2から吐出された供給水W1を、溶存塩類が除去された第1透過水W2と、溶存塩類が濃縮された第1濃縮水W3とに膜分離処理する設備である。第1RO膜モジュール4は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。第1RO膜モジュール4は、これらRO膜エレメントにより供給水W1を膜分離処理し、第1透過水W2及び第1濃縮水W3を製造する。
【0021】
第1RO膜モジュール4の一次側入口ポートは、供給水ラインL1を介して第1加圧ポンプ2の下流側に接続されている。第1RO膜モジュール4の二次側ポートには、第1透過水ラインL2の上流側の端部が接続されている。第1RO膜モジュール4で製造された第1透過水W2は、第1透過水ラインL2を介して第2RO膜モジュール8に送出される。また、第1RO膜モジュール4の一次側出口ポートには、第1濃縮水ラインL4の上流側の端部が接続されている。第1RO膜モジュール4で製造された第1濃縮水W3は、第1濃縮水ラインL4を介して、第1RO膜モジュール4の外に排出される。
【0022】
第1透過水ラインL2は、第1RO膜モジュール4で製造された第1透過水W2を第2RO膜モジュール8へ送出するラインである。第1透過水ラインL2の上流側の端部は、第1RO膜モジュール8の二次側ポートに接続されている。第1透過水ラインL2の下流側の端部は、第2RO膜モジュール8の一次側入口ポートに接続されている。
【0023】
圧力センサ5は、第1RO膜モジュール4の下流側において、第1透過水W2の圧力を検出する機器である。圧力センサ5は、接続部J1において、第1透過水ラインL2に接続されている。圧力センサ5は、第1制御部10と電気的に接続されている。圧力センサ5で検出された第1透過水W2の圧力(以下、「検出圧力値」ともいう)は、第1制御部10へ検出信号として送信される。
【0024】
第1制御部10は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。第1制御部10は、圧力センサ5の検出圧力値が予め設定された目標圧力値となるように、第1加圧ポンプ2を駆動するための第1駆動周波数を演算し、当該第1駆動周波数の演算値に対応する電流値信号を第1インバータ3に出力する(以下、「圧力フィードバック制御」ともいう)。第1制御部10による圧力フィードバック制御については後述する。
【0025】
第1濃縮水ラインL4は、第1RO膜モジュール4から第1濃縮水W3を送出するラインである。第1濃縮水ラインL4の上流側の端部は、第1RO膜モジュール4の一次側出口ポートに接続されている。また、第1濃縮水ラインL4の下流側は、分岐部J2及びJ3において、第1濃縮水排水ラインL11、第2濃縮水排水ラインL12及び第3濃縮水排水ラインL13に分岐している。
【0026】
第1濃縮水排水ラインL11、第2濃縮水排水ラインL12及び第3濃縮水排水ラインL13には、それぞれ第1排水弁11、第2排水弁12及び第3排水弁13が設けられている。第1排水弁11〜第3排水弁13は、第1濃縮水排水ラインL11〜第3濃縮水排水ラインL13から系外へ排出される第1濃縮水W3の排水流量を調節する弁である。第1排水弁11〜第3排水弁13における弁体の開閉を制御して、第1濃縮水W3の排水流量を調節することにより、第1RO膜モジュール4で製造される第1透過水W2の回収率を所望の値に設定することができる。
【0027】
第1排水弁11〜第3排水弁13は、それぞれ第1制御部10と電気的に接続されている。第1排水弁11〜第3排水弁13における弁体の開閉は、第1制御部10から送信される駆動信号により制御される。
【0028】
第2加圧ポンプ6は、第1RO膜モジュール4から送出された第1透過水W2を吸入し、第2RO膜モジュール8に向けて吐出する装置である。第2加圧ポンプ6は、第2インバータ7(後述)と電気的に接続されている。第2加圧ポンプ6には、第2インバータ7から周波数が変換された駆動電力が供給される。第2加圧ポンプ6は、入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。
【0029】
第2インバータ7は、第2加圧ポンプ6に周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。第2インバータ7は、第2制御部20と電気的に接続されている。第2インバータ7には、第2制御部20から電流値信号が入力される。第2インバータ7は、入力された電流値信号に対応する駆動周波数を第2加圧ポンプ6に出力する。
【0030】
第2RO膜モジュール8は、第2加圧ポンプ6から吐出された第1透過水W2を、溶存塩類が除去された第2透過水W4と、溶存塩類が濃縮された第2濃縮水W5とに膜分離処理する設備である。第2RO膜モジュール8は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。第2RO膜モジュール8は、これらRO膜エレメントにより第1透過水W2を膜分離処理し、第2透過水W4及び第2濃縮水W5を製造する。
【0031】
第2RO膜モジュール8の一次側入口ポートは、第1透過水ラインL2を介して第1RO膜モジュール4の下流側に接続されている。第2RO膜モジュール8の二次側ポートには、第2透過水ラインL3の上流側の端部が接続されている。第1RO膜モジュール4で製造された第1透過水W2は、第1透過水ラインL2を介して第2RO膜モジュール8に送出される。また、第2RO膜モジュール8の一次側出口ポートには、第2濃縮水ラインL5の上流側の端部が接続されている。第2RO膜モジュール8で製造された第2濃縮水W5は、第2濃縮水ラインL5を介して、第2RO膜モジュール8の外に排出される。
【0032】
第2透過水ラインL3は、第2RO膜モジュール8で製造された第2透過水W4を需要先へ送出するラインである。第2透過水ラインL3の上流側の端部は、第2RO膜モジュール8の二次側ポートに接続されている。第2透過水ラインL3の下流側の端部は、需要先の装置等(不図示)に接続されている。
【0033】
流量センサ9は、第2透過水ラインL3を流通する第2透過水W4の流量を検出する機器である。流量センサ9は、接続部J4において、第2透過水ラインL3に接続されている。流量センサ9は、第2制御部20と電気的に接続されている。流量センサ9で検出された第2透過水W4の流量(以下、「検出流量値」ともいう)は、第2制御部20へ検出信号として送信される。
【0034】
第2制御部20は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。第2制御部20は、流量センサ9の検出流量値が予め設定された目標流量値となるように、第2加圧ポンプ6を駆動するための第2駆動周波数を演算し、当該第2駆動周波数の演算値に対応する電流値信号を第2インバータ7に出力する(以下、「流量フィードバック制御」ともいう)。第2制御部20による流量フィードバック制御については後述する。
【0035】
第2濃縮水ラインL5は、第2RO膜モジュール8から第2濃縮水W5を送出するラインである。第2濃縮水ラインL5の上流側の端部は、第2RO膜モジュール8の一次側出口ポートに接続されている。また、第2濃縮水ラインL5の下流側は、分岐部J5及びJ6において、第4濃縮水排水ラインL21、第5濃縮水排水ラインL22及び第6濃縮水排水ラインL23に分岐している。
【0036】
第4濃縮水排水ラインL21、第5濃縮水排水ラインL22及び第6濃縮水排水ラインL23には、それぞれ第4排水弁21、第5排水弁22及び第6排水弁23が設けられている。第4排水弁21〜第6排水弁23は、第4濃縮水排水ラインL21〜第6濃縮水排水ラインL23から系外へ排出される第2濃縮水W5の排水流量を調節する弁である。第4排水弁21〜第6排水弁23における弁体の開閉を制御して、第2濃縮水W5の排水流量を調節することにより、第2RO膜モジュール8で製造される第2透過水W4の回収率を所望の値に設定することができる。
【0037】
第4排水弁21〜第6排水弁23は、それぞれ第2制御部20と電気的に接続されている。第4排水弁21〜第6排水弁23における弁体の開閉は、第2制御部20から送信される駆動信号により制御される。
【0038】
次に、第1制御部10による圧力フィードバック制御を、図2を参照して説明する。図2に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
【0039】
図2に示すステップST101において、第1制御部10は、供給水W1の目標圧力値P´を取得する。この目標圧力値P´は、例えば、システムの管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介して第1制御部10のメモリに入力した設定値である。
【0040】
ステップST102において、第1制御部10は、内部のタイマ(不図示)による計時tが制御周期である100msに達したか否かを判定する。このステップST102において、第1制御部10により、タイマによる計時が100msに達した(YES)と判定された場合に、処理はステップST103へ移行する。また、ステップST102において、第1制御部10により、タイマによる計時が100msに達していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST102へ戻る。
【0041】
ステップST103(ステップST102:YES判定)において、第1制御部10は、圧力センサ5で検出された供給水W1の検出圧力値Pを取得する。
【0042】
ステップST104において、第1制御部10は、ステップST103で取得した検出圧力値(フィードバック値)PとステップST101で取得した目標圧力値P´との偏差がゼロとなるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより操作量Uを演算する。なお、速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期(100ms)毎に操作量の変化分を演算し、これを前回の操作量に加算することで今回の操作量を決定する。
【0043】
ステップST105において、第1制御部10は、操作量U、目標圧力値P´及び第1加圧ポンプ2の最大駆動周波数(50Hz又は60Hzの設定値)に基づいて、第1加圧ポンプ2の駆動周波数Fを演算する。
【0044】
ステップST106において、第1制御部10は、駆動周波数Fの演算値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。
【0045】
ステップST107において、第1制御部10は、変換した電流値信号を第1インバータ3に出力する。なお、ステップST107において、第1制御部10が電流値信号を第1インバータ3へ出力すると、第1インバータ3は、入力された電流値信号に対応する周波数に変換された駆動電力を第1加圧ポンプ2に供給する。その結果、第1加圧ポンプ2は、第1インバータ3から入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
【0046】
次に、第2制御部20による流量フィードバック制御を、図3を参照して説明する。図3に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
【0047】
図3に示すステップST201において、第2制御部20は、第2透過水W4の目標流量値Q´を取得する。この目標流量値Q´は、例えば、システムの管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介して第2制御部20のメモリに入力した設定値である。
【0048】
ステップST202において、第2制御部20は、内部のタイマ(不図示)による計時tが制御周期である100msに達したか否かを判定する。このステップST202において、第2制御部20により、タイマによる計時が100msに達した(YES)と判定された場合に、処理はステップST203へ移行する。また、ステップST202において、第2制御部20により、タイマによる計時が100msに達していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST202へ戻る。
【0049】
ステップST203(ステップST202:YES判定)において、第2制御部20は、流量センサ9で検出された第2透過水W4の検出流量値Qを取得する。
【0050】
ステップST204において、第2制御部20は、ステップST203で取得した検出流量値(フィードバック値)Q´とステップST201で取得した目標流量値Qとの偏差がゼロとなるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより操作量Uを演算する。なお、速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期(100ms)毎に操作量の変化分を演算し、これを前回の操作量に加算することで今回の操作量を決定する。
【0051】
ステップST205において、第2制御部20は、操作量U、目標流量値Q´及び第2加圧ポンプ6の最大駆動周波数(50Hz又は60Hzの設定値)に基づいて、第2加圧ポンプ6の駆動周波数Fを演算する。
【0052】
ステップST206において、第2制御部20は、駆動周波数Fの演算値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。
【0053】
ステップST207において、第2制御部20は、変換した電流値信号を第2インバータ7に出力する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST201へリターンする)。
【0054】
なお、ステップST207において、第2制御部20が電流値信号を第2インバータ7へ出力すると、第2インバータ7は、入力された電流値信号に対応する周波数に変換された駆動電力を第2加圧ポンプ6に供給する。その結果、第2加圧ポンプ6は、第2インバータ7から入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。
【0055】
上述した本実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
【0056】
本実施形態に係る水処理システム1において、第1制御部10は、前段の第1RO膜モジュール4で製造された第1透過水W2の検出圧力値に基づいて圧力フィードバック制御を実行する。また、第2制御部20は、後段のRO膜モジュール8で製造された第2透過水W4の検出流量値に基づいて流量フィードバック制御を実行する。
【0057】
これによれば、前段の第1RO膜モジュール4における膜面のファウリングや水温による管路抵抗の変化等が起こっても、後段の第2RO膜モジュール8に送出される第1透過水W2の圧力、すなわち第2加圧ポンプ6の入口圧力をほぼ目標圧力値に保つことができる。そのため、水処理システム1においては、前段のRO膜モジュール4と後段の第2RO膜モジュール8との間に中間タンクを用いることなしに、後段の第2RO膜モジュール8において、安定した流量の第2透過水W4を製造することができる。
【0058】
また、第1制御部10は、圧力フィードバック制御において、圧力センサ5から出力された検出圧力値が予め設定された目標圧力値となるように第1加圧ポンプ2の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する指令信号を第1インバータ3に出力する。また、第2制御部20は、流量フィードバック制御において、流量センサ9から出力された検出流量値が予め設定された目標流量値となるように第2加圧ポンプ6の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する指令信号を第2インバータ7に出力する。
【0059】
これによれば、第1加圧ポンプ2を、第1RO膜モジュール4の膜面や管路抵抗の状態に応じて駆動することができるため、第1透過水W2の圧力、すなわち第2加圧ポンプ6の入口圧力を安定して目標圧力値に保つことができる。また、第2加圧ポンプ6を、需要先における第2透過水W4の最大要求水量を常に確保するように駆動することができる。そのため、第2RO膜モジュール8において、より安定した流量の第2透過水W4を製造することができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0061】
例えば、本実施形態において、第1濃縮水ラインL4を流通する第1濃縮水W3の一部を、第1加圧ポンプ2よりも上流側の供給水ラインL1に還流させる濃縮水還流ラインを設けた構成としてもよい。濃縮水還流ラインを設けることにより、膜表面での流速を高めることができるため、第1RO膜モジュール4におけるファウリングの発生を抑制することができる。
【0062】
同様に、第2濃縮水ラインL5を流通する第2濃縮水W5の一部を、第2加圧ポンプ6よりも上流側の第1透過水ラインL2に還流させる濃縮水還流ラインを設けた構成としてもよい。その場合には、第2RO膜モジュール8におけるファウリングの発生を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1濃縮水排水ラインL11〜第3濃縮水排水ラインL13に、第1排水弁11〜第3排水弁13を設けた構成について説明した。これに限らず、濃縮水排水ラインを分岐せずに1本とし、このラインに比例制御バルブを設けた構成としてもよい。その場合には、第1制御部10から制御信号(例えば、4〜20mA又は0〜10Vのアナログ信号)を比例制御バルブに送信して弁開度を制御することにより、第1濃縮水W3の排水流量を調節できる。
【0064】
また、比例制御バルブを設けた構成において、濃縮水排水ラインに流量センサを設けた構成としてもよい。流量センサで検出された流量値を、第1制御部10にフィードバック値として入力する。これにより、第1濃縮水W3の排水流量をより正確に制御できる。
【0065】
上述した比例制御バルブを設ける構成は、第2RO膜モジュール8にも適用することができる。
【0066】
本実施形態では、第1制御部10から第1インバータ3への指令信号及び第2制御部20から第2インバータ7への指令信号としてそれぞれ電流値信号(4〜20mA)を出力する例について説明した。これに限らず、第1制御部10から第1インバータ3への指令信号及び第2制御部20から第2インバータ7への指令信号としてそれぞれ電圧値信号(0〜10V)を出力する構成としてもよい。
【0067】
本実施形態では、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより第1加圧ポンプ2及び第2加圧ポンプ6の駆動周波数を演算する例について説明したが、これに限らず、位置形デジタルPIDアルゴリズムにより第1加圧ポンプ2及び第2加圧ポンプ6の駆動周波数を演算する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 水処理システム
2 第1加圧ポンプ(第1ポンプ)
4 第1RO膜モジュール(第1膜分離装置)
5 圧力センサ(圧力検出手段)
6 第2加圧ポンプ(第2ポンプ)
8 第2RO膜モジュール(第2膜分離装置)
9 流量センサ(流量検出手段)
10 第1制御部
20 第2制御部
L1 供給水ライン
L2 第1透過水ライン
L3 第2透過水ライン
L4 第1濃縮水ライン
L5 第2濃縮水ライン
W1 供給水
W2 第1透過水
W3 第2透過水
W4 第1濃縮水
W5 第2濃縮水
図1
図2
図3