特許第6056378号(P6056378)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6056378-ポリオレフィン系フィルム 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056378
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20161226BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20161226BHJP
   C09J 125/04 20060101ALI20161226BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20161226BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   C09J7/02 Z
   C09J125/04
   C09J201/00
   B32B27/32 102
   B32B27/00 M
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-239505(P2012-239505)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2013-116626(P2013-116626A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2015年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2011-238934(P2011-238934)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 茂知
(72)【発明者】
【氏名】大木 祐和
(72)【発明者】
【氏名】多賀 敦
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−042757(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/096350(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/096351(WO,A1)
【文献】 特開2012−87164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
B32B 27/00
C09J 7/02
C09J 125/04
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型層を構成する樹脂がプロピレンとエチレンのブロック共重合体と炭素数4以上のα−オレフィン(共)重合体を少なくとも含み、炭素数4以上のα−オレフィン(共)重合体の配合量が離型層を構成する樹脂成分中5重量%以上35重量%未満であり、ポリプロピレン系樹脂からなる基材層の片面にスチレン系エラストマーを含む粘着層を、反対面に離形層を共押出により積層してなり、離型層の表面粗さ(SRa)が0.25μm以上0.45μm以下であることを特徴とするポリオレフィン系フィルム。
【請求項2】
前記炭素数4以上のα−オレフィン(共)重合体が4−メチルペンテン−1系(共)重合体である請求項1に記載のポリオレフィン系フィルム。
【請求項3】
粘着層がスチレン系エラストマー及び粘着付与剤を含む請求項1あるいは2に記載のポリオレフィン系フィルム。
【請求項4】
粘着層がスチレン系エラストマー、粘着付与剤、及びポリオレフィン系樹脂を含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系フィルムに関する。本発明のポリオレフィン系フィルムは、光学用途に用いられているプリズムシート等の部材、合成樹脂板(例えば、建築資材用)、ステンレス板(例えば、建築資材用)、アルミ板、化粧合板、鋼板、ガラス板、家電製品、精密機械等に使用することができる。また、前記ポリオレフィン系フィルムは、製造時の自動車ボディーの表面を保護するため、物品を積み重ねたり、保管したり、輸送したり、製造工程で搬送する際の傷付きから保護するため、ならびに、物品を二次加工する(例えば、曲げ加工やプレス加工)際の傷付きから保護するために好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来から、被覆体の表面保護を目的とした粘着フィルムは、建築資材や電気、電子製品、自動車等の加工、保管、輸送時に用いられており、このような粘着フィルムは、良好な粘着性を有するとともに、使用後は、各表面を粘着剤で汚染することなく容易に引き剥がすことができなければならない。
【0003】
上記した被覆体は近年、その多様化が進み、被覆面が平滑なものだけでなく表面凹凸を有するものも多数見受けられる。表面凹凸を有する被覆体としては、例えば光学部材に用いられているプリズムシートのプリズム型のレンズ部等が挙げられる。プリズムシートのような表面凹凸を有する被覆体に対して、使用上充分な粘着力を発現させるためには、接触面積が小さくても粘着力が得られるように粘着層の粘着力を高くする等が考えられる。
【0004】
粘着層の粘着力を高くするには、樹脂として高い粘着力を示すスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等を主成分として使用することで可能であるが、粘着層の粘着力を高くすると、フィルムをロール状態で保管し、その後フィルムを繰出す際に、ブロッキングが生じ、フィルムが部分的に伸長したり、変形する等の問題が生じる。
【0005】
上記の対策として、炭素数4以上のα−オレフィン共重合体を離型層に使用することでフィルムを繰出す際のブロッキングの改善が試みられている(例えば特許文献1等参照)。しかし、炭素数4以上のα−オレフィン共重合体を50重量%以上含む離型層をポリプロピレン系樹脂からなる基材層の片面にTダイ等を用いてポリプロピレン系樹脂を押出す一般的な温度で共押出製膜により積層しようとすると、離型層の製膜性が悪くなるといった不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−42757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、被覆体に対して強い粘着力を示し様々な被覆体に使用可能でありながら、粘着フィルムをロール状態で保管し、その後フィルムを繰出す際にも、フィルムが部分的に伸長したり、変形する等の問題が起き難く、フィルムの加工適性に優れる自己粘着性表面保護フィルムを提供することにある。すなわち、本発明は、表面荒れの転写が生じず、かつ粘着性を抑制することなく、良好な剥離性及び製膜性を有するポリオレフィン系フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、離型層に使用する樹脂の配合比や表面粗さを所定の範囲とすることで上記の課題を解決できることを見出し、本発明に到達したものである。即ち、本発明は離型層を構成する樹脂がプロピレンとエチレンのブロック共重合体と炭素数4以上のα−オレフィン(共)重合体を少なくとも含み、炭素数4以上のα−オレフィン(共)重合体の配合量が離型層を構成する樹脂成分中5重量%以上35重量%未満であり、ポリプロピレン系樹脂からなる基材層の片面に粘着層を、反対面に離形層を共押出により積層してなり、離型層の表面粗さ(SRa)が0.20μm以上0.50μm以下であることを特徴とするポリオレフィン系フィルムに係るものである。
【0009】
この場合において、前記炭素数4以上のα−オレフィン共重合体が4−メチルペンテン−1系(共)重合体であることが好適である。
【0010】
また、この場合において、前記ポリプロピレン系樹脂のMFRが(230℃、2.16Kgf)が1.0〜15g/10分であることが好適である。
【0011】
さらにまた、この場合において前記粘着層にスチレン系エラストマーを少なくとも使用し、そのスチレン系エラストマーのMFR(230℃、2.16Kgf)が0.5〜20g/10分であることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるポリオレフィン系フィルムは、被覆体に対して強い粘着力を示し様々な被覆体に使用可能でありながら、粘着フィルムをロール状態で保管し、その後フィルムを繰出す際にも、フィルムが部分的に伸長したり、変形する等の問題が起き難く、フィルムの加工適性に優れるという利点を有する。すなわち、本発明によれば、表面荒れの転写が生じず、かつ粘着性を抑制することなく、良好な剥離性及び製膜性を有するポリオレフィン系フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のポリオレフィン系フィルム(粘着フィルム)の実施の形態を説明する。
【0014】
(基材層)
本発明のポリオレフィン系フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層を必要とし、ここで用いるポリプロピレン系樹脂としては、結晶性ポリプロピレン、プロピレンと少量のα−オレフィンとのランダム共重合、ブロック共重合体等を挙げることができ、さらに詳しくは、結晶性ポリプロピレン樹脂として、通常の押出成形などで使用するn−へプタン不溶性のアイソタクチックのプロピレン単独重合体又はプロピレンを60重量%以上含有するプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができ、このプロピレン単独重合体あるいはプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体を、単独又は混合して使用することができる。基材層にはプロピレン単位が50重量%以上含まれていることが好ましく、さらには60重量%以上含まれていることが好ましい。プロピレンが50重量%未満であると、フィルムに腰感がなくなり、取り扱いが困難になることがある。
ここで、n−ヘプタン不溶性とは、ポリプロピレンの結晶性を指標すると同時に安全性を示すものであり、本発明では、昭和57年2月厚生省告示第20号によるn−ヘプタン不溶性(25℃、60分抽出した際の溶出分が150ppm以下〔使用温度が100℃を超えるものは30ppm以下〕)に適合するものを使用することが好ましい態様である。
【0015】
プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体のα−オレフィン共重合成分としては、炭素数が2〜8のα−オレフィン、例えば、エチレンあるいは1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのC4以上のα−オレフィンが好ましい。ここで共重合体とは、プロピレンに上記に例示されるα−オレフィンを1種又は2種以上重合して得られたランダム又はブロック共重合体であることが好ましい。使用するポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16Kgf)は、1.0〜15g/10分の範囲が好ましく、2.0〜10.0g/10分の範囲がより好ましい。また、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体を2種以上混合して使用することもできる。またさらに、本発明で得られたフィルムを製品加工する際に出た屑フィルムを回収原料として再造粒し、基材層に添加することもできる。回収原料を使用することにより、生産コストを抑えることが可能である。
【0016】
(粘着層)
本発明のポリオレフィン系フィルムの粘着層は、公知の粘着剤であれば使用することが可能であるが、スチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマーであることが好ましい。特に高い粘着力を発現させるためにはスチレン系エラストマーが好適に用いることができる。また、粘着力のコントロールのために必要に応じポリオレフィン系樹脂、粘着付与樹脂、軟化剤を混合することもできる。
【0017】
スチレン系エラストマーは、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン共重合体−スチレン、スチレン−エチレン/プロピレン共重合体−スチレン等のA−B−A型ブロックポリマー、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、スチレン−エチレン/ブチレン共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン共重合体等のA−B型ブロックポリマー、スチレン−ブタジエンラバー等のスチレン系ランダム共重合体およびそれらの水素添加物を挙げることができる。
使用するスチレン系エラストマーのメルトフローレート(MFR:230℃、2.16Kgf)は、0.5〜20g/10分の範囲が好ましく、2.0〜15.0g/10分の範囲がより好ましく、3〜10g/10分の範囲がさらに好ましく、4〜7g/10分の範囲が特に好ましい。
【0018】
スチレン系エラストマーは、粘着層(粘着層を構成する樹脂成分)中好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、さらにより好ましくは75重量%以上、好ましくは100重量%以下、より好ましくは99重量%以下、さらに好ましくは98重量%以下、さらにより好ましくは97重量%以下である。
【0019】
スチレン系エラストマー中のスチレン成分は5重量%以上30重量%以下であることが望ましい。5重量%未満であるとレジン作製時の造粒が困難となり、30重量%を超えると粘着力が低下し、必要とする粘着力を得ることが難しくなる。なお、スチレン系エラストマー中のスチレン成分が好ましくは10重量%以上25重量%以下、より好ましくは10重量%以上20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上15重量%以下である。また、スチレン系エラストマー中のスチレン成分以外の成分は、エチレン、ブチレン等の成分から構成されることが好ましく、スチレン成分以外の成分量は、スチレン系エラストマー中好ましくは70〜95重量%、より好ましくは75〜90重量%、さらに好ましくは80〜90重量%、さらにより好ましくは85〜90重量%である。
【0020】
オレフィン系エラストマーは、炭素数2〜20のα−オレフィン重合体または共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体などを挙げることができる。使用するオレフィン系エラストマーのメルトフローレート(MFR:230℃、2.16Kgf)は、0.5〜20g/10分の範囲が好ましく、2.0〜10.0g/10分の範囲がより好ましい。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂は特に限定されず、結晶性ポリプロピレン、プロピレンと少量のα−オレフィンとの共重合体、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと少量のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、ポリスチレン等が挙げられる。中でもポリプロピレン系樹脂は基材層がポリプロピレン系樹脂で構成されるため、溶融粘度等の関係からも好適に用いることができる。使用するポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16Kgf)は、1.0〜100.0g/10分の範囲が好ましく、2.0〜30.0g/10分の範囲がより好ましく、2〜10g/10分の範囲がさらに好ましく、2〜7g/10分の範囲が特に好ましい。
【0022】
粘着層中のポリオレフィン系樹脂の配合量は25重量%以下が好ましい。ポリオレフィン系樹脂の配合量が25重量%を超えると使用する樹脂によっては粘着力が低下し充分な粘着力が得られない。ポリオレフィン系樹脂の配合量は5重量%以上が好ましい。5重量%未満であると離型層に対する粘着力が強くなりすぎ離型層の選択の幅がせまくなることがある。ポリオレフィン系樹脂の配合量はより好ましくは6重量%以上、20重量%以下であり、さらに好ましくは6重量%以上、15重量以下である。
【0023】
粘着付与樹脂は、例えば脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、ロジン樹脂等を挙げることができ、中でも脂環族炭化水素樹脂(例えば石油樹脂)が好ましい。粘着付与樹脂の分子量は特に制限されず適宣に設定できるが、分子量が小さくなると粘着層からの被着体への物質移行や重剥離化等の原因となるおそれがあり、一方、分子量が大きくなると接着力の向上効果に乏しくなる傾向があることから、粘着付与樹脂の数平均分子量は1000〜10万程度が好ましい。粘着層中の粘着付与樹脂の配合量は好ましくは5重量%以上30重量%以下の範囲である。粘着付与樹脂の配合量が30重量%を超えると、粘着付与樹脂の分子量が低いため溶融粘度が極端に低くなり、Tダイ等を用いた共押出製膜を行う際にポリプロピレン系樹脂を主成分とした基材層との積層が困難となることがある。また、粘着層中の粘着付与樹脂の配合量が5重量%未満であると粘着層の粘着力変化に寄与しない虞がある。粘着付与樹脂の配合量はより好ましくは6重量%以上、25重量%以下であり、さらに好ましくは6重量%以上、20重量%以下、さらにより好ましくは6重量%以上、15重量%以下、特に好ましくは6重量%以上、10重量%以下である。
【0024】
軟化剤としては、例えば、低分子量のジエン系ポリマー、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエンやそれらの誘導体、ポリブテン等を挙げることができる。軟化剤の分子量は特に制限されず適宣に設定できるが、分子量が小さくなると粘着層からの被着体への物質移行や重剥離化等の原因となるおそれがあり、一方、分子量が大きくなると接着力の向上効果に乏しくなる傾向があることから、軟化剤の数平均分子量は1000〜10万程度が好ましい。
【0025】
また、粘着層に使用する粘着付与樹脂や軟化剤は、種類によっては液体や粉体であり、押出時に押出機を汚す物もある。このような問題は粘着付与樹脂や軟化剤をポリオレフィン系樹脂とマスターバッチ化して使用することで改善されるため、粘着付与樹脂や軟化剤をポリオレフィン系樹脂とマスターバッチ化して使用するほうが好ましい。
【0026】
本発明のポリオレフィン系フィルムの粘着力は23℃において、アクリル板に対し200〜900cN/25mmの範囲であることが、様々な被覆体に使用することを考慮すると好ましい。粘着力が200cN/25mm未満であると被覆体によっては保護する際にめくれ等が生じ、保護フィルムとしての機能を担えない。一方、粘着力が900cN/25mmを超えるとプリズムシートからフィルムを剥離する際にスムーズに剥離できない恐れがある。粘着力は粘着層の樹脂組成や厚みなどを変更することにより、適宜設定することが可能である。粘着力は、より好ましくは300cN/25mm以上、900cN/25mm以下、さら好ましくは400cN/25mm以上、800cN/25mm以下である。
【0027】
本発明のポリオレフィン系フィルムは、公知の添加剤を必要に応じて含有させたりすることができる。例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃改良剤などを含有させたりしても良い。但し、粘着層表面の低分子量物質を1mg/m未満にすることが好ましい。
ここで、粘着層表面の低分子量物質の測定は、次の手順にて実施した。粘着層表面をエタノール等の粘着層を構成する樹脂を侵食しない有機溶剤を用いて洗浄後、その洗浄液から有機溶剤をエバポレーター等で除去した後、その残渣を秤量して求めた数値を洗浄した粘着層表面の表面積で割り、求めた。ここで、残渣が1mg/m以上存在すると粘着層表面と被着体表面の間に異物が存在する事となり、接触面積を減らし、ファンデルワールス力を低下させる原因となる為、粘着力が低下し好ましくない。添加剤を添加する場合は、高分子型等の添加剤を選択したり、添加量及び添加方法を検討するなどして、粘着層への移行、転写がない様にすることが必要である。
【0028】
(離型層)
本発明のポリオレフィン系フィルムは、基材層の片面に積層された粘着層とは反対面に離型層を形成するが、そうすることよってフィルム同士を重ねてもフィルム同士のブロッキングが少なく、特にフィルムをロール状態で保管し、その後フィルムを繰出す際にも、フィルムが部分的に伸長したり、変形する等の問題が起き難く、フィルムの加工適性に優れる。フィルム同士を重ねてもフィルム同士のブロッキングが発生しないようにするには、離型層に表面凹凸を形成させ、粘着層との接触面積を小さくすることが有効である。
【0029】
上記のような表面凹凸を形成するために、プロピレン−エチレンブロック共重合体を好適に用いることができる。表面荒れはプロピレン−エチレンブロック共重合体中のエチレン−プロピレンゴムの分子量を大きくするかエチレンの量を増やすことで大きくすることができる。また、プロピレン−エチレンブロック共重合体に非相溶な樹脂を混合することによって表面荒れをより大きくすることができる。さらに押出工程において、樹脂にかかるせん断速度を下げたり、滞留時間を長くすることによっても表面荒れをより大きくすることができる。一方、プロピレン−エチレンブロック共重合体にホモポリプロピレン樹脂を混合して表面荒れを小さくすることもできる。
【0030】
プロピレン−エチレンブロック共重合体に非相溶な樹脂としては4−メチルペンテン−1系(共)重合体等の炭素数4以上のα−オレフィン(共)重合体を好適に用いることができる。その他にも低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと少量のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリスチレン、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。特に4−メチルペンテン−1系(共)重合体はマット状に表面を荒らすだけでなく、フィルム表面の表面自由エネルギーが下がることでさらに剥離性の向上が見込める。
なお、ホモプロピレンやランダムポリプロピレンに上記の非相溶な樹脂を添加することで表面の凹凸を達成することもできるが、プロピレン−エチレンブロック共重合体を用いる場合には、生産機台の変更や製膜時の溶融混練条件により凹凸状態が変わりにくく、安定した生産が可能である。
【0031】
離型層(離型層を構成する樹脂成分)中の炭素数4以上のα−オレフィン(共)重合体の配合量は、5重量%以上35重量%以下の範囲である。炭素数4以上のα−オレフィン(共)重合体の配合量が35重量%を超えると離型層をポリプロピレン系樹脂からなる基材層の片面にTダイ等を用いてポリプロピレン系樹脂を押出す一般的な温度で共押出製膜により積層しようとすると、離型層の製膜性が悪くなる。炭素数4以上のα−オレフィン(共)重合体の配合量が5重量%未満であると離型層の剥離力改善に寄与しない。炭素数4以上のα−オレフィン(共)重合体の配合量は好ましくは7重量%以上、33重量%以下である。また、炭素数4以上のα−オレフィン(共)重合体の分子量は、分子量が小さくなると離型層から粘着層への物質移行等の原因となるおそれがあることから、粘着付与樹脂の数平均分子量は1万〜100万程度が好ましい。
【0032】
離型層におけるプロピレン−エチレンブロック共重合体と4−メチルペンテン−1系(共)重合体の重量比(プロピレン−エチレンブロック共重合体/4−メチルペンテン−1系(共)重合体)は、好ましくは95/5〜65/35、より好ましくは93/7〜67/33である。
【0033】
本発明における粘着層の樹脂組成を鑑みると、離型層表面の平均表面粗さSRaを0.20μm以上、0.50μm以下とするのが好ましい。そうすることで耐ブロッキング性と被着体の保護性能を向上させることができる。離形層の表面粗さを0.20μmより低くするとフィルムをロール形態とした際のフィルムの繰出し性が悪くなる。離形層の表面粗さを0.50μmよりも高くすると、離形層の表面凹凸が粘着層の表面に転写し、粘着力が著しく低下する場合がある。
このとき、離形層の表面凹凸は、表面の平均表面粗さSRaで0.25μm以上、0.45μm以下となる様な表面にすることがより好ましい。
【0034】
このような表面粗さを有する離型層を積層したフィルムのヘイズは20%以上、80%以下となることが好ましい。保護フィルムとして被覆体に貼り付けてあることをわかり易くするためにはフィルムのヘイズは30%以上であることがより好ましく、また製膜時に異物を異物検知器で発見しやすくするためにはヘイズは70%以下であることがより好ましい。
【0035】
本発明のポリオレフィン系フィルムの粘着面の離型面に対する剥離力は23℃において、200cN/25mm以下の範囲であることが、粘着フィルムをロール形態とした際のフィルムの繰出し性の点から好ましい。剥離力が200cN/25mmを超えると粘着フィルムをロール形態とした際のフィルムの繰出しにフィルムが部分的に伸長したり、変形する等の問題が生じる。剥離力は離型層中の炭素数4以上のα−オレフィン共重合体の添加量や表面粗さを変更することで、適宜設定することができる。
なお、ポリオレフィン系フィルムの粘着面の離型面に対する剥離力の下限は現実的な値として1cN/25mm程度、さらには5cN/25mm程度である。
【0036】
本発明におけるポリオレフィン系フィルムの粘着層の厚さは、1μm以上、30μm未満であることが好ましい。粘着層の厚さが1μm未満であると、共押出による安定製膜が困難となり、30μm以上であると、コストの面で不利なフィルムとなる。
このとき、粘着力を大きくする場合は、その粘性を考慮し、厚みを大きくするのが好ましい。粘着層の厚みを大きくすることにより、被着体との接触面積が大きくなりやすい。粘着層の厚さは、2μm以上、20μm以下であることが好ましく、さらに3μm以上、15μm以下が好ましく、特に4μm以上、8μm以下が好ましい。
【0037】
本発明のポリオレフィン系フィルムの基材層の厚さは、5μm以上、100μm未満であることが好ましく、10μm以上、75μm未満であることがより好ましく、15μm以上、40μm未満であることがさらに好ましい。基材層の厚さが5μm未満であると、腰感が弱くなり、保護フィルムとして被覆体に貼り付けた際にシワ等が入りやすく、粘着力が十分に得られないという問題があり、100μm以上であるとコストの面で不利なフィルムとなる。
【0038】
本発明におけるポリオレフィン系フィルムの離型層の厚さは、1μm以上、30μm未満であることが好ましい。離型層の厚さが1μm未満であると、共押出による安定製膜が困難となり、30μm以上であると、コストの面で不利なフィルムとなる。
このとき、離型層の厚さは、2μm以上、20μm以下であることが好ましく、さらに3μm以上、15μm以下が好ましく、特に4μm以上、8μm以下が好ましい。
【0039】
本発明のポリオレフィン系フィルムは、上記樹脂成分を含む基材層、粘着層、離型層の各層から構成され、各層は、本発明の効果を奏する限り、1層または2層以上であってもよい。各層を構成する樹脂は、例えば単軸、二軸の押出し機等を用いて溶融状態のまま、フィードブロック型のTダイに送出され、積層押出しされて少なくとも3層のポリオレフィン系フィルムとしてもよい。各層の押出し機の温度は、各層を溶融状態にするために、適宜各層に使用される成分の成形温度を考慮して適宜調節してもよく、例えば200℃〜260℃の範囲で調節してもよい。Tダイの温度は、上記温度と同様であってもよい。Tダイからキャスティングロールへの引き取り速度は、各層が好適な厚みとなるような速度であればよく、例えば10m/min〜50m/min、好ましくは10m/min〜30m/minである。
【0040】
本発明のポリオレフィン系フィルムはロールの形態とするのが取り扱いの上で好適である。フィルムロールの幅および巻長の上限は特に制限されるものではないが、取扱いのしやすさから、一般的には幅1.5m以下、巻長はフィルム厚み30μmの場合に6000m以下が好ましい。また、巻取りコアとしては、通常、3インチ、6インチ、8インチ等のプラスチックコアや金属製コアを使用することができる。また、加工の適性から長さ200m以上、幅450mm以上の寸法で巻き取ったフィルムロールであることが好ましい。
【0041】
本発明のポリオレフィン系フィルムは、光学用途に用いられているプリズムシート等の部材、合成樹脂板(例えば、建築資材用)、ステンレス鋼板(例えば、建築資材用)、アルミ板、化粧合板、鋼板、ガラス板、家電製品、精密機械等に使用することができる。また、本発明のポリオレフィン系フィルムは製造時の自動車ボディーの表面を保護するため、物品を積み重ねたり、保管したり、輸送したり、製造工程で搬送する際の傷付きから保護するため、ならびに、物品を二次加工する(例えば、曲げ加工やプレス加工)際の傷付きから保護する場合に用いることができる。
【0042】
本願は、2011年10月31日に出願された日本国特許出願第2011−238934号に基づく優先権の利益を主張するものである。2011年10月31日に出願された日本国特許出願第2011−238934号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0043】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない限り下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0044】
(1)粘着性の評価
JIS−Z−0237(2000)粘着テープ・粘着シート試験方法に準拠して下記の方法にて測定した。
被着体として、アクリル板(三菱レイヨン(株)製:アクリライト(登録商標)3mm厚)50mm×150mmを準備し、試験片として、フィルム製造時の巻き取り方向に150mm、それとは直交する方向に25mmの試験片を切り出し、質量2000gのゴムロール(ローラ表面のスプリング硬さ80Hs、厚さ6mmのゴム層で被覆された、幅45mm、直径(ゴム層を含む)95mmのもの)を用いて、被着体と試験片を5mm/秒の速さで、1往復させて圧着した。圧着後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で30分放置したものを(株)島津製作所製「オートグラフ(登録商標)」(AGS−J)を用いて、300mm/分の速度で180度剥離した際の抵抗値を粘着力[cN/25mm]とした。180度剥離とは、剥離時の抵抗値を測定する際のアクリル板とフィルムの剥離角度を180度に保持することを意味する。
測定の際は測定試料のつかみ代として厚み190μm、サイズ25mm×170mmのポリエステルシートを準備し、粘着フィルムとアクリル板を圧着した測定試料の粘着フィルム側の端に、のり代15mmの幅でセロハンテープにて貼り付けて、測定の際のつかみ代とした。測定試料の模式図を図1に示す。測定は一つのサンプルに関して3回実施し、その平均値をそのサンプルの粘着力とした。
【0045】
(2)耐ブロッキング性の評価
アクリル板(三菱レイヨン(株)製:アクリライト(登録商標)3mm厚)50mm×150mm全面に両面接着テープ(日東電工(株)製:No.535A)を貼付け、両面接着テープの他面に試験片の粘着面が来るように150mm(フィルム製造時の巻き取り方向)×50mm(フィルム製造時の巻き取り方向とは直交方向)の試験片を貼付けた。
新たに試験片として、フィルム製造時の巻き取り方向に150mm、それとは直交する方向に25mmの試験片を切り出し、その粘着面とアクリル板に両面接着テープを介し貼付けた試験片の離型面を重ね合わせた後、質量2000gのゴムロール(ローラ表面のスプリング硬さ80Hs、厚さ6mmのゴム層で被覆された、幅45mm、直径(ゴム層を含む)95mmのもの)を用いて、離型面と試験片を5mm/秒の速さで、1往復させて圧着した。圧着後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で30分放置したものを(株)島津製作所製「オートグラフ(登録商標)」(AGS−J)を用いて、300mm/分の速度で180度剥離した際の抵抗値を剥離力[cN/25mm]とした。
測定の際は測定試料のつかみ代として厚み190μm、サイズ25mm×170mmのポリエステルシートを準備し、150mm×25mmの試験片の端に、のり代15mmの幅でセロハンテープにて貼り付けて、測定の際のつかみ代とした。測定は一つのサンプルに関して3回実施し、その平均値をそのサンプルの剥離力とした。
【0046】
(3)平均表面粗さの測定
(株)小坂研究所製の接触式三次元中心面表面粗計(型式ET−30HK)を用いて、離型層の表面の中心面平均粗さ(SRa)を次の条件で触針法により測定した。条件は下記の通りであり、3回の測定の平均値をもって値とした。
触針先端半径:0.5μm
触針圧:20mgf
カットオフ値:80μm
測定長:1000μm
測定速度:100μm/秒
測定間隔:2μm
【0047】
(4)ヘイズの測定
JIS−K−7105プラスチックの光学的特性試験方法に準拠して日本電色工業製のヘイズメーター(NDH−2000)を用いて測定した。
【0048】
(5)粘着層への離型層表面荒れの転写
KEYENCE製のデジタルマイクロスコープ(VHX−200F)を用いて倍率100倍でフィルム粘着面のデジタル画像を撮影した。離型層からの転写がそれほど起きていないものを○、ひどいものを×とした。
【0049】
(6)製膜性
フィルムを製膜する際に均一な厚みで製膜できているものを○、できていないものを×とした。
【0050】
[実施例1]
(基材層の作製)
ホモポリプロピレン樹脂(住友化学製:FLX80E4、MFR:7.5g/10min)100wt%を120mmφ単軸押出し機にて240℃で溶融押出しして基材層とした。
(粘着層の作製)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテック(登録商標)H1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)85wt%とホモポリプロピレン樹脂(住友化学製:FS2011DG3、MFR:2.5g/10min)7.5wt%と石油樹脂(荒川化学工業製:アルコン(登録商標)P125)7.5wt%を90mmφ単軸押出し機にて220℃で溶融押出しして粘着層とした。
(離型層の作製)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(日本ポリプロピレン製:BC4FC)92wt%とポリメチルペンテン(三井化学製:RT31)8wt%を90mmφ単軸押出し機にて250℃で溶融押出しして離型層とした。
(フィルムの作製)
基材層、粘着層、離型層それぞれが各押出し機にて溶融された状態のまま、245℃の3層Tダイ(フィードブロック型、リップ幅850mm、リップギャップ1mm)内で積層押出しを行った。押出したフィルムを温度30℃のキャスティングロールへ20m/min速度で引取り、冷却固化して基材層厚みが28μm、粘着層厚みが6μm、離型層厚みが6μmの3種3層未延伸フィルムを得た。
【0051】
[実施例2]
粘着層、基材層は実施例1のまま、離型層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(離型層の作製)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(日本ポリプロピレン製:BC3HF)76wt%とポリメチルペンテン(三井化学製:RT31)24wt%を90mmφ単軸押出し機にて250℃で溶融押出しして離型層とした。
【0052】
[実施例3]
基材層は実施例1のまま、粘着層、離型層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作製)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテック(登録商標)H1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)と石油樹脂(荒川化学工業製:アルコン(登録商標)P125)とホモポリプロピレン樹脂(住友化学製:FS2011DG3、MFR:2.5g/10min)を80/7.5/12.5wt%の比率で混合したものを、90mmφ単軸押出し機にて220℃で溶融押出しして粘着層とした。
(離型層の作製)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(日本ポリプロピレン製:BC3HF)92wt%とポリメチルペンテン(三井化学製:RT31)8wt%を90mmφ単軸押出し機にて250℃で溶融押出しして離型層とした。
【0053】
[実施例4]
基材層は実施例1のまま、粘着層、離型層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作製)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテック(登録商標)H1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)とホモポリプロピレン樹脂(住友化学製:FS2011DG3、MFR:2.5g/10min)を90/10wt%の比率で混合したものを、90mmφ単軸押出し機にて240℃で溶融押出しして粘着層とした。
(離型層の作製)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(日本ポリプロピレン製:BC3HF)92wt%とポリメチルペンテン(三井化学製:RT31)8wt%を90mmφ単軸押出し機にて250℃で溶融押出しして離型層とした。
【0054】
[参考例1]
基材層は実施例1のまま、粘着層、離型層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作製)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテック(登録商標)H1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100wt%を、90mmφ単軸押出し機にて240℃で溶融押出しして粘着層とした。
(離型層の作製)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(日本ポリプロピレン製:BC4FC)68wt%とポリメチルペンテン(三井化学製:RT31)32wt%を90mmφ単軸押出し機にて250℃で溶融押出しして離型層とした。
【0055】
[比較例1]
基材層、粘着層は実施例1のまま、離型層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(離型層の作製)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(日本ポリプロピレン製:BC4FC)100wt%を90mmφ単軸押出し機にて250℃で溶融押出しして離型層とした。
【0056】
[比較例2]
基材層、粘着層は実施例1のまま、離型層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(離型層の作製)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(日本ポリプロピレン製:BC4FC)96wt%とポリメチルペンテン(三井化学製:RT31)4wt%を90mmφ単軸押出し機にて250℃で溶融押出しして離型層とした。
【0057】
[比較例3]
基材層、粘着層は実施例1のまま、離型層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得ようとしたが、厚み精度が悪く評価に耐えうるようなフィルムを得ることができなかった。
(離型層の作製)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(日本ポリプロピレン製:BC3HF)50wt%とポリメチルペンテン(三井化学製:RT31)50wt%を90mmφ単軸押出し機にて250℃で溶融押出しして離型層とした。
【0058】
[比較例4]
基材層、粘着層は実施例1のまま、離型層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(離型層の作製)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(日本ポリプロピレン製:BC3HF)75wt%とポリメチルペンテン(三井化学製:RT31)6wt%とホモポリプロピレン樹脂(住友化学製:FLX80E4、MFR:7.5g/10min)19wt%を90mmφ単軸押出し機にて250℃で溶融押出しして離型層とした。
【0059】
[比較例5]
基材層、粘着層は実施例1のまま、離型層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(離型層の作製)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(日本ポリプロピレン製:BC4FC)64wt%とポリメチルペンテン(三井化学製:RT31)16wt%と低密度ポリエチレン樹脂(宇部興産製:R300)20wt%を90mmφ単軸押出し機にて250℃で溶融押出しして離型層とした。
【0060】
上記結果を表1、2に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1から明らかなように実施例1〜4で得られたフィルムは保護フィルムとして使用した際に実用上充分な粘着力を有し、表面荒れの転写もなくフィルムをロールとして繰り出した際の剥離性も良好で、製膜性も良好であった。
【0064】
一方、比較例1及び2及び4で得られたフィルムは、フィルムをロールとして繰り出した際の剥離性が必ずしも良好とは言えなかった。比較例5で得られたフィルムは、粘着層への離型層からの表面荒れが酷かった。比較例3の製法では、製膜性が悪く評価に耐えうるフィルムを得ることができなかった。このように比較例で得られたフィルムはいずれも品質が劣り、実用性が低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のポリオレフィン系フィルムは、合成樹脂板(例えば、建築資材用)、ステンレス板(例えば、建築資材用)、アルミ板、化粧合板、鋼板、ガラス板、家電製品、精密機械等に使用することができる。また、本発明のポリオレフィン系フィルムは、製造時の自動車ボディーの表面を保護するため、物品を積み重ねたり、保管したり、輸送したり、製造工程で搬送する際の傷付きから保護するため、ならびに、物品を二次加工する(例えば、曲げ加工やプレス加工)際の傷付きから保護するためにも好適に用いることができ、産業界に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1は測定試料の模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1:上部チャック
2:ポリエステルシート
3:アクリル板
4:セロハンテープ
5:粘着フィルム
6:下部チャック
7:引っ張る方向
図1