(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1は、耐磨耗に優れた給電子を用いることで、ワイヤと給電子との摩擦による摩耗を低減させることを目的としているものの、ワイヤと給電子との摩擦がある以上、依然として、ワイヤ、及び/又は給電子に摩耗が発生する。
【0007】
そのため、例えば、ワイヤと給電子との摩擦によりワイヤが摩耗すると、ワイヤ径が縮小し、ワイヤが断線してしまう場合がある。ワイヤが断線してしまった場合は、新しいワイヤに張り替えなければならないため、放電加工が中断されてしまう。
【0008】
また、例えば、ワイヤと給電子との摩擦により給電子が摩耗すると、ワイヤと給電子との接触が途切れてしまう場合があり、そのような場合には、ワイヤへの電圧印加が途切れてしまう。ワイヤへの電圧印加が途切れてしまうと、ワイヤと被加工物との間での放電も途切れてしまい、ワイヤと被加工物とが直接接触する場合がある。このとき、ワイヤはローラにより走行しているため、ワイヤと被加工物とが直接接触してしまうと、ワイヤが断線してしまい、結果として、放電加工が中断されてしまう。
【0009】
このように、給電子からワイヤに安定して電圧を印加するために、給電子の摩耗等を考慮し、給電子をワイヤに安定的に接触させるための機構が必要となる。
【0010】
そこで、例えば、バネを用いて、給電子をワイヤに押しあてることも考えられるが、放電加工機では、放電加工の際に脱イオン水を用いており、その脱イオン水により生じるさびや、経年劣化等により、バネが固く固まってしまい、給電子をワイヤに安定的に接触させることが出来ないおそれがある。
【0011】
そのため、給電子をワイヤに押しあてるために、バネを用いたとしても、給電子に係るメンテナンスを行わなければならず、給電子に係るメンテナンスを大幅に軽減することは難しい。
【0012】
本発明は、給電子の接触によるワイヤへの電圧印加を安定して行わせると共に、給電子に係るメンテナンス作業を軽減させるための仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ワイヤに電圧を供給するための給電子を装着する給電ユニットであって、前記給電子を装着するシャフトと、
前記シャフトが内部に設けられ、前記シャフトに装着される前記給電子が当該内部から外部に移動可能な口が設けられたブロックと、前記ブロックの内部に設けられた、ガス供給装置からガスが供給される
第1のガス室と、
前記ブロックの内部に設けられた、ガス供給装置からガスが供給される第2のガス室と、を備え、前記シャフトは
、ガス供給装置からのガスの供給による前記
第1のガス室内の圧力で、前記シャフトに装着された前記給電子を
、前記口を介して前記ワイヤに押し当て
、前記第2のガス室は、ガス供給装置からガスが前記第2のガス室に供給されることにより、前記第2のガス室に供給されるガスを、前記口に設けられた前記給電子と前記ブロックとの隙間から、前記ブロックの外部に排出するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、
ガス供給装置から第
2のガス室に供給するガスの流量を調整するための流量調整機構を更に備え、前記流量調整機構は、前記
第1のガス室内の圧力よりも前記第
2のガス室内の圧力の方が低くなるように
、ガス供給装置から前記第
2のガス室に供給されるガスの流量を調整することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の前記
シャフトは、ガス供給装置からのガスの供給による前記第1のガス室内の圧力で、前記シャフトに装着された前記給電子を、前記口を介して複数の前記ワイヤに押し当てることを特徴する。
【0019】
また、本発明は、
上述の給電ユニットを備えることを特徴とするワイヤ放電加工装置を特徴とする。
【0020】
また、本発明は、ワイヤに電圧を供給するための給電子を装着するシャフトと、
前記シャフトが内部に設けられ、前記シャフトに装着される前記給電子が当該内部から外部に移動可能な口が設けられたブロックと、前記ブロックの内部に設けられた、ガス供給装置からガスが供給される
第1のガス室と、
前記ブロックの内部に設けられた、ガス供給装置からガスが供給される第2のガス室と、を備えた給電ユニットによる給電方法であって、前記シャフトは
、ガス供給装置からのガスの供給による前記
第1のガス室内の圧力で、前記シャフトに装着された前記給電子を
、前記口を介して前記ワイヤに押し当てることにより、前記ワイヤに電圧を供給
し、前記第2のガス室は、ガス供給装置からガスが前記第2のガス室に供給されることにより、前記第2のガス室に供給されるガスを、前記口に設けられた前記給電子と前記ブロックとの隙間から、前記ブロックの外部に排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、給電子の接触によるワイヤへの電圧印加を安定して行わせると共に、給電子に係るメンテナンス作業を軽減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を好適な実施形態に従って詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係るマルチワイヤ放電加工装置1を前方から見た外観図である。尚、
図1に示す各機構の構成は一例であり、目的や用途に応じて様々な構成例があることは言うまでもない。
【0025】
マルチワイヤ放電加工装置1は、電源ユニット14と電線(電圧印加線)を介して接続されており、電源ユニット14から供給される電力により作動する。
【0026】
マルチワイヤ放電加工装置1は、
図1に示すように、マルチワイヤ放電加工装置1の土台として機能するブロック15と、ブロック15の上部の中に設置されている、ブロック2と、ワーク送り装置3と、接着部4と、シリコンインゴット5と、加工液漕6と、メインローラ8と、ワイヤ7と、メインローラ9と、給電ユニット10と、給電子11を備えている。
【0027】
図2は、
図1に示す点線16枠内の拡大図である。
【0028】
ブロック2は、ワーク送り装置3と接合されている。また、ワーク送り装置3は、シリコンインゴット5(ワーク)と接着部4により接着(接合)されている。
【0029】
本実施例では、加工材料(ワーク)として、シリコンインゴット5を例に説明する。
【0030】
接着部4は、ワーク送り装置3と、シリコンインゴット5(ワーク)とを接着(接合)するためのものであれば何でもよく、例えば、電導性の接着剤が用いられる。
【0031】
ワーク送り装置3は、接着部4により接着(接合)されているシリコンインゴット5を上下方向に移動する機構を備えた装置であり、ワーク送り装置3が下方向に移動することにより、シリコンインゴット5をワイヤ7に近づけることが可能となる。
【0032】
加工液漕6は、加工液を溜めるための容器である。加工液は、例えば、抵抗値が高い脱イオン水である。ワイヤ7と、シリコンインゴット5との間に、加工液を設けられることにより、ワイヤ7と、シリコンインゴット5との間で放電が起き、シリコンインゴット5を削ることが可能となる。
【0033】
メインローラ8、9には、ワイヤ7を取り付けるための溝が複数列形成されており、その溝にワイヤ7が取り付けられている。そして、メインローラ8、9が右又は左回転することにより、ワイヤ7が走行する。
【0034】
また、
図2に示すように、ワイヤ7は、メインローラ8、9に取り付けられ、メインローラ8、9の上側、及び下側にワイヤ列を形成している。
【0035】
また、ワイヤ7は、伝導体であり、電源ユニット14から電圧が供給された給電ユニット10の給電子11と、ワイヤ7とが接触することにより、当該供給された電圧が給電子11からワイヤ7に印加される。(給電子11がワイヤ7に電圧を印加している。)
【0036】
そして、ワイヤ7と、シリコンインゴット5との間で放電が起き、シリコンインゴット5を削り(放電加工を行い)、薄板状のシリコン(シリコンウエハ)を作成することが可能となる。
【0037】
また、
図2に示すように、給電ユニット10、及び/又は給電子11は、メインローラ8、9との間に設けられた下側のワイヤを押し下げる位置に設けられている。
【0038】
図3は、ワイヤ7と、給電子11との関係を示す図である。
【0039】
図3に示すように、ワイヤ7は、複数のワイヤ(マルチワイヤ)から構成されており、複数のワイヤに対して、1つの給電子11が接触するように給電子11が設けられている。
【0040】
次に、
図4を用いて、給電ユニット10、給電子11について説明する。
【0041】
図4は、
図2に示す給電ユニット10、給電子11の詳細な構成を示す図である。
【0042】
給電ユニット10は、
図4に示すように、ブロック810、管812、管815を備えている。本実施例において、給電ユニット10には、消耗品である給電子11を含まないこととする。また、給電ユニット10の、より詳細な構成については、
図5を用いて、後で説明する。
【0043】
本実施例では、給電子を押し出すものとしてバネやゴム等の弾性体ではなく、管812を通して供給されたエアの圧力を利用している。
【0044】
エアコンプレッサ813から送られたエアが流量調整弁を通り導通して接続されている管815を通りエア室A2に送られる。これにより、給電子11と給電ユニット10との間の隙間から加工液が、給電ユニット10内に入ってくることを防止することができるようになる。
【0045】
エアコンプレッサ813は、本発明のガス供給装置の適用例である。エアコンプレッサ813からガス(本実施例ではエアを例に説明する)がエア室A1、及びエア室A2に供給される。
【0046】
次に、
図5を用いて、給電ユニット10の詳細な構成について説明する。
【0047】
図5は、
図2に示す給電ユニット10の詳細な構成を示す図(左側の図)と、シャフト903と給電子11とを取り外した図(右側の図)を示す図である。
【0048】
給電ユニット10は、
図5に示すように、
図4で説明した各構成に加え、ブロック908(902)、ねじ907、ブロック906、ブロック905、シャフト903を備えている。
【0049】
ブロック905は、ブロック906と接合されており、ブロック906は、ブロック908(902)と接合されており、給電ユニット10内部のエア室A2と導通している管815を備えており、ブロック908の内部には、給電ユニット10内部のエア室A1に導通している管812を備えている。
【0050】
エア室A1は、本発明の第1のガス室の適用例である。
【0051】
また、ブロック908(902)は、ブロック810(901)と接合されている。
【0052】
ブロック810、ブロック908、ブロック906、ブロック905の内部の空間に、シャフト903を有し、シャフト903は、ねじ907により給電子11と締結され、給電子11と接着されている。
【0053】
シャフト903は、伝導体であり、電源ユニット14から供給される電圧が電圧印加線805を介して供給される。そして、電圧印加線805から供給された電圧は、シャフト903を通して、給電子11に印加され、給電子11とワイヤ7とが接触することで、給電子11からワイヤ7に印加される。
【0054】
シャフト903は、ブロック810、908、906の内側に設けられている。
【0055】
シャフト903は、ワイヤ7に電圧を供給するための給電子11を装着可能である。
【0056】
図5に示すように、エア室A1に管812からエアが供給され常時一定の圧力がかかっている状態となっている。また、エア室A2にエアコンプレッサから管815を通して供給される間の流量調整弁によって調整されたエアの圧力によって給電子を押しつける力を調整している。
【0057】
そのため、給電子11を下から上に向かって押すと、エア室A1に供給されたエアの圧力を受けながら給電子11を上方向に移動させることができる。また、給電子11を下から上に向かって押すことを止めると、エア室A2に供給されるエアの圧力を受けながら、エア室A1に供給されるエアの圧力により給電子11が下方向に移動する。
【0058】
すなわち、給電子11は、ワイヤ7により下から上に向かって押されると共に、エア室A1に供給されるエアの圧力によりワイヤ7の方向へ押し出され、給電子11はワイヤ7に押し付けられることとなる。
【0059】
図4、
図5に示すように、シャフト903は、エア室A1(第1のガス室)にエアコンプレッサ813(ガス供給装置)からガスが供給されることにより、エア室A1(第1のガス室)がシャフト903をワイヤ7の方向に押し出すように構成されている。
【0060】
すなわち、ブロック906とシャフト903の凸部とが接触して、エア室A1(第1のガス室)を構成している。これにより、エア室A1(第1のガス室)を構成することができ、エア室A1(第1のガス室)にエアコンプレッサ813(ガス供給装置)からガスが供給されることにより、エア室A1(第1のガス室)がシャフト903をワイヤ7の方向に押し出すことが出来るようになっている。
【0061】
また、ブロック810とシャフト903との間の面(スライド面A)により、シャフト903が、上下動する際に、左右にずれることを防ぎ、さらに、ブロック906、及びブロック905と給電子11との間の面(スライド面B)により、シャフト903が、上下動する際に、左右にずれることを防ぐことができる。
【0062】
このように、スライド面A、及び、スライド面Bにより、シャフト903、及び給電子11が、上下動する際に、ずれることを防ぎ、ワイヤ7と給電子11とを安定して接触させることができる。
【0063】
すなわち、ブロック901、801は、スライド面Aで、シャフト903を支持するべくブロック901、801とシャフト903とが接触するように構成されており、また、ブロック905は、スライド面Bで、シャフト903を支持するべくブロック905と給電子11とが接触するような構造に構成されている。
【0064】
エア室A1に供給されるエアの圧力により、シャフト903を、ワイヤ7の方向に、押し出すことにより、シャフト903に装着可能な給電子11をワイヤ7に接触させ、給電子11から電圧をワイヤ7に供給する。そして、ワイヤ7と、被加工物としてのシリコンインゴット5との間で放電加工を行い、シリコンインゴット5をスライス(加工)して、加工物としてのシリコンウエハを形成させる。
【0065】
ブロック810は、シャフト903と接触し(スライド面A)、シャフト903が押し出される方向に支持するための第1のスライド部を備えている。
【0066】
また、ブロック905は、給電子11と接触し(スライド面B)、給電子11が押し出される方向に支持するための第2のスライド部を備えている。
【0067】
また、
図5の右側に、シャフト903と給電子11とを取り外した図を示す。
【0068】
シャフト903は、
図5に示すように、ねじ穴909を備えている。ねじ穴909に付いていたねじ907を取り外すことで、すなわち、給電子11の窪み910にはまっていたねじ907と取り外すことで、シャフト903と給電子11とを取り外すことができる。このように、シャフト903と給電子11は、着脱可能に構成されている。
【0069】
また、給電子11が、上下に移動可能であるため、スライド面Bの隙間に加工水が入り込み、給電ユニット10内に加工水が入り込む可能性がある。
【0070】
そのため、エアコンプレッサ813から管815介して送られてくるエアを、エア室A2に流すことで、スライド面Bの隙間から、当該エアが給電ユニット10の外に排出され、スライド面Bの隙間から給電ユニット10内に加工水(脱イオン水)が入り込むことを低減させることが可能となる。
【0071】
給電ユニット10は、エアコンプレッサ813と導通可能な管812、管815を備えており、エアコンプレッサ813から空気の気体が管812を通して給電ユニット10内のエア室A1に導入される。
【0072】
給電ユニット10は、エアコンプレッサ813(ガス供給装置)からガスが供給されるエア室A2(第2のガス室)を備えており、エア室A2(第2のガス室)は、エアコンプレッサ813(ガス供給装置)からガスがエア室A2(第2のガス室)に供給されることにより、当該エア室A2(第2のガス室)に供給されるガスを、シャフトに着脱可能な給電子とブロック905との隙間から排出するような構造で構成されている。
【0073】
エアコンプレッサ813から空気の気体が管815を通してエア室A2導入される。ワイヤ方向に給電子11を押しつけるためには、エア室A1よりエア室A2の方を低い圧力とならければならず、そのため、流量調整弁814を設け、エア室A2に供給されるエア流量を調整し、エア圧を調整する。
【0074】
すなわち、流量調整弁814は、エア室A2内がエア室A1内よりも低い気圧(圧力)になるように、エアコンプレッサ813からエア室A2に導入されるエアの流量を調整する。
【0075】
流量調整弁814は、本発明の流量調整機構の適用例である。
【0076】
流量調整弁814は、エアコンプレッサ813(ガス供給装置)からエア室A2(第2のガス室)に供給するガスの流量を調整する。
【0077】
また、流量調整弁814は、エア室A1内(第1のガス室内)の圧力よりもエア室A2内(第2のガス室内)の圧力の方が低くなるように、すなわち、エア室A2内(第2のガス室内)が、エア室A1内(第1のガス室内)の圧力よりも低い所定の圧力になるように、エアコンプレッサ813(ガス供給装置)からエア室A2(第2のガス室)に供給されるガスの流量を調整する。
【0078】
また、エア室A1内と、エア室A2内とに、それぞれ、圧力センサを設け、当該圧力センサにより計測されたエア室A1内の圧力とエア室A2内の圧力とを比較して、エア室A1内よりもエア室A2内の方が、圧力が高くなっていると判定された場合には、エア室A1内よりエア室A2内の方が、圧力が低くなるように、エアコンプレッサ813からエア室A2に導入されるエアの流量を増やすように流量調整弁814を調整する(流量調整弁814を大きく開ける)。
【0079】
このようにして、エア室A2内を第1の所定の圧力、及び、エア室A1内を第2の所定の圧力になるように、流量調整弁814を調整する。第1の所定の圧力は、第2の所定の圧力よりも高い圧力になるように、流量調整弁814を調整することで、給電ユニット10内への水の流入を防ぐと共に、給電子11をワイヤ7方向に一定の圧力で押し出すことが可能となり、ワイヤへの安定した電圧の供給を可能とすることができる。
【0080】
図7は、給電ユニット10の詳細な構成と、給電ユニット10の断面Aの断面図とを示す図である。
【0081】
図7の左側に、
図5の左側に示す図(給電ユニット10の詳細な構成を示す図)と同様の図を示す。
【0082】
図7の左側に示す給電ユニット10の断面Aの断面図を、
図7の右側に示す。
【0083】
図7の右側の図のように、断面Aの中心には、シャフト903があり、その周りに、エア室A1があり、さらにその周りにブロック908(902)が設けられている。
【0084】
図6は、エアの押付けにより給電子がワイヤの方向に一番押し出されている状態を示す図(1)(左側の図)と、エアの圧力を受けながら給電子が上方向に移動した状態を示す図(2)(右側の図)である。
【0085】
図6の(1)(左側の図)は、エアの押付けにより給電子がワイヤの方向に一番押し出されている状態を示す図であり、
図6の(2)(右側の図)は、エアの圧力を受けながら給電子が上方向に移動した状態を示す図である。
【0086】
以上のように、ワイヤ7が走行中に給電子11が磨耗しても、その分だけエアの圧力により給電子が押し出され、給電子11とワイヤ7が接触している状態を長い期間、保つことが可能となる。
【0087】
さらに、長い給電子11を、調整を必要とせず取り付けることが可能でワイヤ7の走行による給電子11の磨耗が、長時間続いたとしても、給電子11の交換頻度を少なくすることが可能となる。
【0088】
以上、本実施形態のマルチワイヤ放電加工装置1(ワイヤ放電加工装置)によれば、エア室A1(第1のガス室)にエアコンプレッサ813(ガス供給装置)からガスが供給されることで、シャフト903をワイヤ7の方向に押し出してワイヤに電圧を供給するため、給電子の接触によるワイヤへの電圧印加を安定して行わせると共に、給電子に係るメンテナンス作業を軽減させることができる。
【0089】
このような給電方法により電圧が供給されたワイヤにより被加工物が放電加工されることにより加工された加工物も本発明の特徴である。
【0090】
また、ワイヤと給電子がエアの圧力により一定の接触圧を保ったまま、ワイヤに電圧が印加されることで、安定した放電現象を得ることができる。
【0091】
また、ワイヤに対し、エアが圧縮した長さ分の給電子は、ワイヤとの摩擦で磨耗が進行してもエアの圧力によりワイヤ押し当て方向に突き出てくるため、給電子の使用幅を広く取ることができ、交換頻度が減少するが出来ると共に、作業者によるワイヤと給電子の初期接触位置ばらつきが解消され、計画的な給電子補充が可能となる。
【0092】
また、例えば、給電子をワイヤに押しつけるために、バネやゴムなどの弾性体を用いることが考えられるが、使用による劣化や錆等が発生してしまうため、定期的な弾性体の交換が必要になる。そこで、本発明では、エア(ガス)による、給電子のワイヤへの押付けを行う仕組みにしているため、このようなメンテナンス作業を軽減することが可能となる。