特許第6056530号(P6056530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6056530ノイズフィルタ内蔵型ジョイントコネクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056530
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】ノイズフィルタ内蔵型ジョイントコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/7197 20110101AFI20161226BHJP
   H01R 31/08 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   H01R13/7197
   H01R31/08 Q
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-27978(P2013-27978)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-157730(P2014-157730A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 武史
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−287644(JP,A)
【文献】 特開平07−263085(JP,A)
【文献】 特開平03−187170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/7197
H01R 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズフィルタ用電気素子を内蔵するジョイントコネクタであって、
第1室と第2室とを備えたコネクタハウジングと、
前記第1室内に突出した状態で並列する複数本のタブ部と前記第2室内に突出する接続部とを有する複数のジョイント端子片とを備え、
前記ノイズフィルタ用電気素子は、前記第2室内に収容され、かつ前記ジョイント端子片の前記接続部に接続されるとともに、前記ジョイント端子片に一体に形成され、前記第2室内に延出する支持部にて支持されており、
前記支持部の延出端部が、前記第2室の壁面に差し込まれていることを特徴とするノイズフィルタ内蔵型ジョイントコネクタ。
【請求項2】
前記各ジョイント端子片は、それぞれキャリアから連結片にて切り離し可能に連結され、かつ前記支持部は前記連結片であることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタ内蔵型ジョイントコネクタ。
【請求項3】
前記ノイズフィルタ用電気素子はアルミ電解コンデンサであり、同コンデンサはその一側の端面に形成された引き出し面から一対のリード線が引き出される一方、前記コンデンサは前記支持部に対し前記引き出し面が前記支持部の延出方向を向いた姿勢で支持され、前記両リード線は前記引き出し面から折り返されてその先端部が前記接続部と接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のノイズフィルタ内蔵型ジョイントコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノイズフィルタ内蔵型ジョイントコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等に搭載された複数の電子機器から導出された複数の電線を一括して接続するコネクタとしてジョイントコネクタと呼ばれる形式が知られている。その中には、ノイズフィルタ用素子としてのコンデンサを収容したものも種々開発されている。一例として、下記特許文献1を挙げることができる。
ここには、ハウジング内に複数のバスバー片と、そのうちの二つのバスバー片間に各リード線を介して接続されるコンデンサを組み込んだ構成のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−287644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の構成では、コンデンサに対する支持について十分な配慮がなされておらず、コンデンサ自体は中空に浮いた状態となっていて、ハウジングやバスバー片による支持を受けていない。したがって、自動車等からの走行時の振動を受けると、リード線とバスバー片との接続信頼性が低下することが懸念された。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ノイズフィルタ用電気素子を安定的に支持することができるジョイントコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のノイズフィルタ内蔵型ジョイントコネクタは、ノイズフィルタ用電気素子を内蔵するジョイントコネクタであって、
第1室と第2室とを備えたコネクタハウジングと、
第1室内に突出した状態で並列する複数本のタブ部と第2室内に突出する接続部とを有する複数のジョイント端子片とを備え、
ノイズフィルタ用電気素子は、第2室内に収容され、かつジョイント端子片の接続部に接続されるとともに、ジョイント端子片に一体に形成され第2室内に延出する支持部にて支持されており、
前記支持部の延出端部が、前記第2室の壁面に差し込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノイズフィルタ用電気素子がジョイント端子片に一体に形成された支持部によって支持されるため、ノイズフィルタ用電気素子を安定的に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例におけるジョイントコネクタの平断面図
図2】同じく側断面図
図3】上下段のジョイント端子片を示す斜視図
図4】下段側のジョイント端子片がキャリアに連列されている状態を示す斜視図
図5】コンデンサの支持状態を拡大して示す正断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0010】
(1)本発明のノイズフィルタ内蔵型ジョイントコネクタは、各ジョイント端子片が、それぞれキャリアから連結片にて切り離し可能に連結され、かつ支持部は前記連結片である構成とすることが好ましい。
このような構成によれば、支持部を既存の連結片を利用して構成することができるため、ノイズフィルタ用電気素子を支持するための専用の支持部を設ける必要がない。
【0011】
(2)ノイズフィルタ用電気素子はアルミ電解コンデンサであり、同コンデンサはその一側の端面に形成された引き出し面から一対のリード線が引き出される一方、コンデンサは支持部に対し引き出し面が支持部の延出方向を向いた姿勢で支持され、両リード線は引き出し面から折り返されてその先端部が接続部と接続されている構成としてもよい。
このような構成とは逆に、アルミ電解コンデンサの設置方向に関しリード線が引き出される引き出し面の向きを支持部の延出方向とは反対向きにすると、万一、リード線が引き出される部分から電解液の漏れが生じると、タブ部に近いことから短絡が懸念されるため、その対策が必要となる。しかし、アルミ電解コンデンサの引き出し面の向きを支持部の延出方向に沿わせれば、万一、電解液の漏れが生じても、リード線を伝ってタブ部に至るまでの距離は十分に長く確保できるため、短絡の虞は殆どない。
【0012】
次に、本発明のノイズフィルタ内蔵型ジョイントコネクタを具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
<実施例1>
本実施例に係るジョイントコネクタのコネクタハウジング1は合成樹脂製であり、本体部2と蓋部3との2体構成となっている。本体部2には前方へ開口する角筒状のフード部(第1室)4が一体に形成されている。本体部2においてフード部4の後部側にはコンデンサ収容室(第2室)5が形成されており、コンデンサ収容室5内にはノイズフィルタ用電気素子としてのコンデンサ6が収容されている。コンデンサ収容室5は上面側と後面側がそれぞれ開放しており、これら開放面は蓋部3によって閉止されるようになっている。フード部4とコンデンサ収容室5とは仕切り壁7によって仕切られている。コンデンサ収容室5内の底面には凸部19が形成されるとともに、この凸部19の上面には差し込み溝15が凹み形成されている。
【0013】
蓋部3は、コンデンサ収容室5の上面側を閉止する上面壁3Aとこの上面壁3Aの後縁から下方へ屈曲に延出してコンデンサ収容室5の後面側を閉止する後面壁3Bとから構成されている。蓋部3には図示しないロック手段が備えられ、このロック手段は蓋部3がコンデンサ収容室5の開放面を閉止した状態で本体部2に係止することができる。
次に、ジョイント端子片UJ,LJについて説明すると、本実施例では2つのジョイント端子片UJ,LJを有しており、これらはコネクタハウジング1に対し上下に並んで組み付けられている。両ジョイント端子片UJ,LJは、図3に示すように、導電性の金属板をプレスにて打ち抜いて形成したものであり、基板部8の前縁に複数のタブ部9を櫛歯状に突出させた構成となっている。両ジョイント端子片UJ,LJは仕切り壁7に対し後方から圧入することによって組み付けられている。具体的には、仕切り壁7には両ジョイント端子片UJ,LJの基板部8が圧入される上下一対の保持溝10が形成されている。上下の保持溝10は仕切り壁7の後面側に開口し幅方向に長いスリット状に形成されており、その前面壁10Aには各タブ部9が挿通可能なタブ挿通孔11が貫通して形成されている。このことによって、フード部4内には複数のタブ部9が上下二段にかつ幅方向に並列した状態で突出している。
【0014】
上段側に配されるジョイント端子片(以下、上段側ジョイント端子片UJと言う。)において、基板部8の後縁であって一方の端部(図示右端部)寄りには後方へ向けて接続部12が一体に延出している。下段側に配されるジョイント端子片(以下、下段側ジョイント端子片LJと言う。)における接続部12は、基板部8の後縁であって図示左端部寄りの部位に設けられている。下段側ジョイント端子片LJの接続部12は図2図3に示すように、上方へ向けてクランク状に屈曲している。上下のジョイント端子片UJ,LJがコネクタハウジング1に組み付けられた状態では、下端側ジョイント端子片LJにおける接続部12の先端部の上面の高さは上段側ジョイント端子片UJの接続部12の上面とほぼ面一をなすようにしてある。また、下段側ジョイント端子片LJにおける基板部8の後縁であって幅方向の中央部にはコンデンサ6を支持するための支持部13が後方へ向けて一体に延出している。
【0015】
下段側ジョイント端子片LJは、図4に示すように、キャリア14に複数個が一定ピッチ間隔で連結された状態から、それぞれキャリア14との連結を断ち切ることによって切り出されて使用される。上記した支持部13はキャリア14との連結を行う部分でもあり、支持部13の先端部には幅狭部13Aが形成されてキャリア14との連結を断ち易くしている。図2に示すように、支持部13の先端側は下方へ屈曲している。幅狭部13Aは凸部19の差し込み溝15へ突っ込まれ、支持部13を水平状態に支持する。
【0016】
本実施例のコンデンサ6はアルミ電解コンデンサが使用されており、その一端面は引き出し面16となっており、同面からは二本のリード線17A,17Bが引き出されている。コンデンサ6は図1に示すように、引き出し面16を、後方に向けた状態で支持部13上に載置されている。そして、両リード線17A,17Bは引き出し面16から略真っ直ぐ後方へ引き出された後、略U字状に折り返されている。その上で、一方のリード線17Aは上段側ジョイント端子片UJの接続部12の先端部に半田付けによって接続され、他方のリード線17Bは下段側ジョイント端子片LJの接続部12の先端部に半田付けされている。
【0017】
また、図5に示すように、前記した蓋部3の内面におけるコンデンサ6の上方の対応位置に押さえ部材18が取り付けられている。押さえ部材18の下面には、コンデンサ6の外周面の形状に適合するような凹面形状をもつ押さえ面18Aが形成され、蓋部3がコネクタハウジング1に取り付けられた状態で、押さえ部材18は押さえ面18Aにてコンデンサ6の外周面に密着し、支持部13との間にコンデンサ6を上下から挟み付けた状態で保持する。
【0018】
次に、上記のように構成された本実施例の作用効果を説明する。まず、ジョイントコネクタの組み立て作業の一例を説明すると、蓋部3を取り外した状態のコネクタハウジング1に対し、後方から両ジョイント端子片UJ,LJを対応する保持溝10内へ圧入する。このとき、両ジョイント端子片UJ,LJの各タブ部9は対応する各タブ挿通孔11へ差し込みつつ、基板部8の前縁を保持溝10内の前面壁10Aに当接させる。これにより、基板部8が保持溝10内に圧入されて保持される。こうしてコネクタハウジング1に取り付けられた両ジョイント端子片UJ,LJの接続部12は共にほぼ同一高さに保持される。
【0019】
続いて、コンデンサ6の両リード線17A、17BをU字状に折り返した状態で、かつ引き出し面16を後方へ向けつつ下段側ジョイント端子片LJの支持部13上にコンデンサ6を載置する。この際に、コンデンサ6を支持部13上に接着剤等の接着手段を用いて固定するようにしてもよい。
【0020】
最後に、蓋部3を本体部2に対し図示しないロック手段を介して装着すれば、本体部2の上面側と後面側とが閉止される。
【0021】
そして、ノイズ電流は上段側ジョイント端子片UJからリード線17A、コンデンサ6、リード線17B、下段側ジョイント端子片LJを経由することで図示しないアースに接続されて除去される。
【0022】
本実施例の効果は次の通りである。本実施例では、ノイズフィルタ用電気素子であるコンデンサ6が下段側ジョイント端子片LJに一体に形成された支持部13によって支持されるため、コンデンサ6が安定的に支持される。更に、支持部13は仕切り壁7及びコンデンサ収容室5内の底面に形成された凸部19にて両持ちで支持されるため、コンデンサ6は一層安定的に支持される。
【0023】
蓋部3の押さえ部材18と支持部13との間で挟持されているから上下のがたつきも抑制でき、さらに押さえ部材18はコンデンサ6の外周面のうち上半周分を押さえ込むようにしているから、幅方向へのがたつきも抑制できる。
【0024】
コンデンサ6はリード線17A、17Bの引き出し面16を後方へ向けて配置するようにしている。仮に、引き出し面16を前方へ向けてコンデンサ6を配置すると、万一リード線17A、17Bの付け根部分から電解液が漏れ出るような事態を生じると、電解液が伝わるリード線17A、17Bから各タブ部9までの長さが短く、短絡が懸念されるが、本実施例のような後ろ向き配置とすれば、電解液がリード線17A、17Bを伝ってタブ部9側へ到達するまでの距離が長く、短絡回避に好都合である。
【0025】
また、コンデンサ6を支持する支持部13はキャリア14との連結片をそのまま利用している。つまり、本来であれば切り落とされる部材を利用してコンデンサ6の支持を行うため、材料を有効活用することができる。
【0026】
以上、本発明によれば、ノイズフィルタ用電気素子6がジョイント端子片LJに一体に形成された支持部13によって支持されるため、ノイズフィルタ用電気素子6を安定的に支持するノイズフィルタ内蔵型ジョイントコネクタが提供可能となる。
【0027】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、両ジョイント端子片は仕切り壁7に対して圧入によって保持されるようにしたが、インサート成形によって保持されるようにしてもよい。
(2)上記実施例では、ノイズフィルタ用電気素子として、アルミ電解コンデンサを使用したが、フィルムコンデンサやセラミックコンデンサ等の他のコンデンサでもよい。
(3)上記実施例では、ノイズフィルタ用電気素子を1つ実装したが、これに限らず、2つ以上実装しても良い。
(4)上記実施例では、両ジョイント端子片とコンデンサのリード線とを半田付けにより接続したが、これに限らず、抵抗溶接やレーザー溶接を用いて接続しても良い。
(5)上記実施例では、コネクタハウジングを本体部と蓋部の2部材により構成したが、これに限らず、これらをヒンジを介して開閉可能に接続し、一体化させても良い。
【符号の説明】
【0028】
1…コネクタハウジング
4…フード部(第1室)
5…コンデンサ収容室(第2室)
6…コンデンサ(ノイズフィルタ用電気素子)
UJ,LJ…上段側、下段側ジョイント端子片(ジョイント端子片)
9…タブ部
12…接続部
13…支持部
14…キャリア
16…引き出し面
17A、B…リード線
図1
図2
図3
図4
図5