(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056639
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】端子、端子付き電線および端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/02 20060101AFI20161226BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
H01R4/02 C
H01R43/02 A
H01R43/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-97430(P2013-97430)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-220061(P2014-220061A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 賢次
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 高信
(72)【発明者】
【氏名】太田 智也
(72)【発明者】
【氏名】玉川 達男
【審査官】
関 信之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−025932(JP,A)
【文献】
特開2011−159461(JP,A)
【文献】
特開2009−026677(JP,A)
【文献】
特開2012−221831(JP,A)
【文献】
特表2009−512124(JP,A)
【文献】
実開昭59−085580(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
H01R 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の太さ寸法が相違する複数の電線を横並びにして接続する接続部を有する端子であって、
前記接続部は、第1接続領域と第2接続領域とを含み、前記第1接続領域が前記第2接続領域よりも高い段差状をなしている端子。
【請求項2】
導体の太さ寸法が相違する複数の電線と、前記複数の電線を横並びにして接続する接続部を有する端子と、を有する端子付き電線であって、
前記接続部は、第1接続領域と第2接続領域とを含み、前記第1接続領域が前記第2接続領域よりも高い段差状をなしている端子付き電線。
【請求項3】
前記接続部における高い位置に接続される電線は、前記接続部における低い位置に接続される電線よりも前記導体の太さ寸法が小さい請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
前記導体の太さ寸法が相違する複数の電線は、超音波溶接により前記接続部に接続されている請求項2または請求項3に記載の端子付き電線。
【請求項5】
導体の太さ寸法が相違する複数の電線と、前記複数の電線を横並びにして接続する接続部を有する端子と、を有する端子付き電線の製造方法であって、
前記接続部は段差状をなし、
前記接続部における高い位置に、前記接続部における低い位置に配置される電線よりも前記導体の太さ寸法が小さい電線を配置して溶接する溶接工程を実行する端子付き電線の製造方法。
【請求項6】
前記溶接工程を、全ての前記電線について同時に超音波溶接を行うことにより実行する請求項5に記載の端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子、端子付き電線および端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の配線においては、一つの端子に二本以上の電線を接続してなる端子付き電線を用いることがある。このような端子付き電線としては例えば特許文献1に記載のものなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−192638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、板状の端子の表面と裏面にそれぞれ1本ずつ電線が接続された端子付き電線が提案されている。
【0005】
ところで、一つの端子に複数の太い電線を接続する場合、一本ずつ電線を端子に超音波溶接すると、超音波溶接の振動により、先に接続された電線の接続状態に悪影響が及ぶことがある。
【0006】
このような問題を避けるには、複数の電線を横並びに配置して一度に溶接を行うことが考えられる。しかしながら、導体の太さ寸法が相違する電線を複数本接続すると、導体の太さ寸法が大きい方の電線に超音波が集中して、導体の太さ寸法が小さい電線の接続が不完全になる傾向がある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、複数の太さ寸法の相違する電線を均等に接続可能な端子および端子付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するものとして本発明は導体の太さ寸法が相違する複数の電線を横並びにして接続する接続部を有する端子であって、前記接続部は、
第1接続領域と第2接続領域とを含み、前記第1接続領域が前記第2接続領域よりも高い段差状をなしている端子である。
【0009】
また、本発明は、導体の太さ寸法が相違する複数の電線と、前記複数の電線を横並びにして接続する接続部を有する端子と、を有する端子付き電線であって、前記接続部は、
第1接続領域と第2接続領域とを含み、前記第1接続領域が前記第2接続領域よりも高い段差状をなしている端子付き電線である。
【0010】
さらに、本発明は、導体の太さ寸法が相違する複数の電線と、前記複数の電線を横並びにして接続する接続部を有する端子と、を有する端子付き電線の製造方法であって、前記接続部は段差状をなし、前記接続部における高い位置に、前記接続部における低い位置に配置される電線よりも前記導体の太さ寸法が小さい電線を配置して溶接する溶接工程を実行する端子付き電線の製造方法である。
【0011】
本発明において、端子の接続部は段差状をなしているので、接続部における高い位置に、接続部における低い位置に配置される電線よりも導体の太さ寸法が小さい端子を配置すると、接続部における低い位置に導体の太さ寸法が大きい端子が配され、導体の太さ寸法の小さい電線と、導体の太さ寸法の大きい電線との溶接面(端子側とは反対側の面)における段差が小さくなり、均等に溶接をおこなうことができる。
【0012】
したがって、本発明によれば、平板状の接続部を有する端子に導体の太さ寸法が相違する複数の電線を並べて溶接を行うときよりも電線間の圧縮率(溶接後の導体の断面積/溶接前の導体の断面積)の差を小さくすることができる。その結果、本発明によれば複数の太さ寸法の相違する電線を均等に接続可能な端子および端子付き電線を提供することができる。
【0013】
本発明は以下の構成とするのが好ましい。
本発明の端子付き電線において、導体の太さ寸法が相違する複数の電線は、超音波溶接により接続部に接続されている。
本発明の端子付き電線の製造方法において、全ての前記電線について同時に超音波溶接を行うことにより実行する。
上記のような構成とすると、簡易かつ低コストな方法で複数の電線の接続作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の太さ寸法の相違する電線を均等に接続可能な端子および端子付き電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図9】他の実施形態で説明する端子付き電線の断面図
【
図10】他の実施形態で説明する端子付き電線の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を
図1ないし
図8によって説明する。
実施形態1の端子付き電線10は、
図1に示すように、複数(本実施形態では2本)の電線11,12と、複数の電線11,12の端末11A,12Aが横並びに接続された端子20とからなる。以下の説明において、上下方向については、
図2を基準とし、前後方向については、
図2の左方を後方、右方を前方として説明する。
【0017】
各電線11,12は、
図1に示すように、導体13,14の周囲が合成樹脂の絶縁被覆15で覆われている。電線11,12の端末11A,12Aにおいては、絶縁被覆15が剥ぎ取られ導体13,14が露出している。
【0018】
導体13,14は、多数(複数)の金属素線が撚り合わされた撚り線である。導体13,14の(金属素線)は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属材料からなる。各電線11,12の断面形状は略円形状である(
図7を参照)。
【0019】
2本の電線11,12は導体13,14の太さ寸法が相違する。2本の電線11,12のうち、導体13の太さ寸法が大きいほうの電線11を第1電線11とし、第1電線11よりも導体14の太さ寸法が小さい電線12を第2電線12とする。
【0020】
端子20は銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属からなる板材により構成されている。なお、端子20を構成する金属板材の表面は、必要に応じて、メッキ処理が施されていてもよい。
【0021】
端子20は、相手側の端子(図示せず)と接続される平板状の端子接続部21と、端子接続部21の後方に連なり電線11,12が接続される電線接続部24(接続部の一例)とからなる。端子接続部21の略中央部には、相手側の端子を接続する端子接続孔22が設けられている。
【0022】
さて、端子20の電線接続部24は、
図3〜
図5に示すように、段差状をなしている。本実施形態において、段差状の電線接続部24は平板状の端子接続部21から後方に連なる部分を段差状に加工することにより形成されている。
【0023】
電線接続部24の、
図4に示す左側の領域(第1接続領域25)は、端子接続部21と同じ高さであるが、電線接続部24の
図4に示す右側の領域(第2接続領域26)は、第1接続領域25との間に設けられた段差部27を経て、第1接続領域25よりも高く形成されている(
図3を参照)。第1接続領域25および第2接続領域26は、電線接続部24の長手方向(各電線11,12の長手方向)に延びて形成されている(
図4及び
図6を参照)。
【0024】
図1及び
図3に示すように、第1接続領域25には第1電線11が載置されるとともに、第1電線11の端末11Aにおいて露出した導体13が超音波溶接により接続されている。第2接続領域26には第2電線12が載置されるとともに、第2電線12の端末12Aにおいて露出した導体14が超音波溶接により接続されている。つまり、電線接続部24における高い位置(第2接続領域26)には、電線接続部24における低い位置(第1接続領域25)に接続される第1電線11よりも、導体の太さ寸法が小さい第2電線12が接続されていることになる。
【0025】
第1電線11の導体13の上側面と、第2電線12の導体14の上側面とは
図3に示すように、面一状をなしている。2本の電線11,12の、電線接続部24における圧縮率(100×溶接後の導体の断面積/溶接前の導体の断面積)は、80%〜110%であるのが好ましい。また、2本の電線11,12の圧縮率の差は小さいほうが好ましい。
【0026】
次に、本実施形態の端子付き電線10の製造方法について説明する。
図4に示す形状の端子20を用意し、各電線11,12の端末11A,12Aの絶縁被覆15を剥離除去して導体13,14を露出させておく。次に、
図7に示すように、端子20の電線接続部24に電線11,12を載置する。詳しくは電線接続部24の第1接続領域25に導体の太さ寸法の大きい第1電線11を載置し、第2接続領域26に導体の太さ寸法の小さい第2電線12を載置する。すると、第2接続領域26に載置した第2電線12の導体14と、第1接続領域25に載置した第1電線11の導体13の上面が揃い高さがそろう(
図7のX−X線参照)。
【0027】
各電線11,12を載置した端子20の電線接続部24を、
図8に示すように、溶接用の治具31にセットして超音波溶接により各導体13,14を端子20の電線接続部24に接続する(溶接工程)。ここで、溶接用の治具31としては
図8に示すように端子の電線接続部24に沿って配される断面形状の治具31を用い、上側に配される治具32とともに2つの導体13,14(電線11,12)を載置した端子20を挟んで、超音波溶接を行う。
【0028】
超音波溶接が終了すると、導体13の太さ寸法の相違する2本の電線11,12が横並びにして接続された
図1に示す端子付き電線10が得られる。
【0029】
次に本実施形態の作用および効果について説明する。
本実施形態において、端子20の電線接続部24は段差状をなしているので、電線接続部24における高い位置(第2接続領域26)に、導体14の太さ寸法が小さい第2電線12を配置すると電線接続部24における低い位置に導体13の太さ寸法が大きい第1電線11が配される。これにより、導体14の太さ寸法の小さい第2電線12と、導体13の太さ寸法の大きい第1電線11との溶接面(上面、端子側とは反対側の面)における段差が小さくなり高さがそろうので、均等に溶接を行うことができる。
【0030】
したがって、本実施形態によれば、平板状の電線接続部を有する端子に導体の太さ寸法が相違する複数の電線を並べて溶接を行うときよりも電線間の圧縮率(溶接後の導体の断面積/溶接前の導体の断面積)の差を小さくすることができる。その結果、本実施形態によれば導体13,14の太さ寸法の相違する複数の電線11,12を均等に接続可能な端子20および端子付き電線10を提供することができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、導体13,14の太さ寸法が相違する複数の電線11,12は、超音波溶接により電線接続部24に接続されているから、簡易かつ低コストな方法で複数の電線11,12の接続作業を行うことができる。
【0032】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、叩き出し等により段差状の接続部24を形成した例を示したが、
図9に示すように、導体14の太さ寸法の小さい電線12が接続される領域26の厚み寸法を大きく形成した端子35を用いることにより段差状の接続部36を設けてもよいし、
図10に示すように平板状の端子40を折り曲げることにより段差状の接続部41を設けてもよい。
図9および
図10に示す端子付き電線37,42は、接続部36,41の形成方法が相違するが他の構成は実施形態1の端子付き電線10と概ね同様であるので同一の構成については同じ符号を付した。
(2)上記実施形態では、電線11,12との接続部24に、2本の電線11,12の導体13,14の高さを揃えて溶接を行うことが可能な段差を形成した端子20を示したが、電線との接続部に複数の導体の中心の位置を揃えることが可能な段差を形成した端子であってもよい。
(3)上記実施形態では、超音波溶接により導体13,14と端子20とを接続する構成を示したが、溶接方法は超音波溶接に限定されず、別の溶接方法でもよい。
【符号の説明】
【0033】
10,37,42…端子付き電線
11…第1電線(電線)
11A…端末
12…第2電線(電線)
12A…端末
13,14…導体
15…絶縁被覆
20,35,40…端子
21…端子接続部
22…端子接続孔
24,36,41…電線接続部(接続部)
25…第1接続領域(低い位置)
26…第2接続領域(高い位置)
27…段差部
31…下側の治具
32…上側の治具