特許第6056656号(P6056656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056656
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】内装部品の真空成形型
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/34 20060101AFI20161226BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20161226BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20161226BHJP
【FI】
   B29C51/34
   B29C51/12
   B29L9:00
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-110107(P2013-110107)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-226887(P2014-226887A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】山下 義久
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−066975(JP,A)
【文献】 実開昭61−056009(JP,U)
【文献】 特開2011−183603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00−51/46
B29C 39/26−39/34
B29C 43/36−43/42
B29C 45/26−45/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンダーカット部を有する基材を載置する下型と、前記基材表面に表皮材を押圧しながら真空吸引して賦形する上型と、前記上型の下端に摺動可能に支持されて前記アンダーカット部に進退するスライド部材と、前記上型の後端に装着され前記スライド部材を前後方向へ進退させる駆動装置とを備え、前記アンダーカット部表面に前記表皮材を被覆する内装部品の真空成形型であって、
前記駆動装置は、先端部が前記上型の後端から突出する方向に作動する駆動部と、上端が前記先端部に係合され、下端が前記スライド部材の後端に係合され、中間部が前記上型の後端に軸支された連結アームとを備えたこと
前記上型の下端には、前記スライド部材の上端と摺接して、前記スライド部材の前後方向への移動を案内する案内部材が固定されていること、
上端で前記スライド部材を前後方向に案内するとともに、下端で前記表皮材の周縁部を押圧する板部材である固定板が、前記案内部材に支持されていることを特徴とする内装部品の真空成形型。
【請求項2】
請求項1に記載された内装部品の真空成形型において、
前記スライド部材の後端には、切り欠き部を形成し、前記切り欠き部に前記連結アームの下端を係合させたことを特徴とする内装部品の真空成形型。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された内装部品の真空成形型において、
前記駆動部を、前記上型の後端に埋没させたことを特徴とする内装部品の真空成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーカット部を有する基材の表面に、表皮材を真空成形によって被覆する内装部品の真空成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図7に示すように、基材KZのアンダーカット部KZuにスライド部材103を進退させて表皮材HZを被覆する内装部品NBの真空成形型100が知られている。
上記真空成形型100には、予め射出成形された基材KZを載置する下型101と、基材表面に表皮材HZを押圧しながら真空吸引して賦形する上型102と、上型下端に摺動可能に支持されて基材KZのアンダーカット部KZuに表皮材HZを押圧しながら真空吸引して賦形するスライド部材103と、上型102の後端に固定され、スライド部材103を進退させる駆動装置104とを備えている。なお、表皮材チャック装置105は、表皮材HZの前後方向両端を保持し、基材上に被せてから開放する表皮材搬送装置である。
【0003】
この真空成形型100において、駆動装置104は、シリンダーロッド104aがスライド部材103の上端に固定されたブラケット103aに連結された構造(いわゆる、「片持ち構造」)となっている。そのため、図8に示すように、駆動装置104のシリンダーロッド104aが矢印Vの方向に移動すると、スライド部材103に偏芯荷重が働いて、スライド部材103は矢印Wの方向に回動したり、捻じれたりする傾向にある。特に、表皮材HZの歩留まりを向上させるため、表皮材チャック装置105の待機位置Pを基材KZのアンダーカット部KZuに近接させようとすると、スライド部材103における矢印V方向の厚さを減少させる必要があるので、スライド部材103は矢印Wの方向により一層回動、捻じれ等しやすくなる。
このように、駆動装置104の片持ち構造では、スライド部材103が回動、捻じれ等することによって、アンダーカット部KZuにおける表皮材HZの成形不良や、スライド部材103の摺動不良による設備停止を生じやすい問題があった。
【0004】
例えば、特許文献1には、上記片持ち構造ではなく、スライド部材を背面から押出す構造の技術として、上下方向に駆動するシリンダーロッドに傾斜面を有する作動コアを連結し、作動コアの傾斜面がスライド部材を前後方向に進退させる技術が開示されている。この技術によれば、スライド部材を背面から押出すので、回動、捻じれ等するおそれを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−300996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された作動コアは、スライド部材の背面に設けるので、スライド部材の背面方向への駆動装置及び上型のサイズが増加する。スライド部材の背面方向への駆動装置及び上型のサイズが増加すれば、表皮材チャック装置105の待機位置Pを基材KZのアンダーカット部KZuに近接させることができないので、表皮材の歩留まりが低下する問題があった。
また、特許文献1によれば、作動コアが上下動しながらスライド部材と傾斜面で摺接する型構造であるので、作動コア及びスライド部材、並びにそれらを支持する上型における各型構造が複雑化する。各型構造が複雑化することによって、設備故障が増大するとともに、真空成形型の製作費用も増大する問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、基材のアンダーカット部にスライド部材を進退させて表皮材を被覆した内装部品の真空成形型において、表皮材の歩留まりを向上できるとともに、スライド部材の安定したスライド動作をコンパクトかつ低コストに実現できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る内装部品の真空成形型は、次のような構成を有している。
(1)アンダーカット部を有する基材を載置する下型と、前記基材表面に表皮材を押圧しながら真空吸引して賦形する上型と、前記上型の下端に摺動可能に支持されて前記アンダーカット部に進退するスライド部材と、前記上型の後端に装着され前記スライド部材を進退させる駆動装置とを備え、前記アンダーカット部表面に前記表皮材を被覆する内装部品の真空成形型であって、
前記駆動装置は、先端部が前記上型の後端から突出する方向に作動する駆動部と、上端が前記先端部に係合され、下端が前記スライド部材の後端に係合され、中間部が前記上型の後端に軸支された連結アームとを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明においては、駆動装置は、先端部が上型の後端から突出する方向に作動する駆動部と、上端が先端部に係合され、下端がスライド部材の後端に係合され、中間部が上型の後端に軸支された連結アームとを備えたので、駆動部が作動すると、連結アームの上端が先端部に押されて上型の外方に移動し、連結アームの下端がその反対方向である上型の内方に移動する。連結アームの下端が上型の内方に移動するので、スライド部材をアンダーカット部に向かって前進させることができる。そのため、駆動部の駆動力を、連結アームを介して梃子の原理を用いてスライド部材の後端(背面)に伝達することができる。駆動部の駆動力は、梃子の原理を用いてスライド部材の後端(背面)に伝達されるので、スライド部材に偏芯荷重として作用せず、スライド部材は、回動、捻じれ等せずに安定してスライド動作を行うことができる。
【0010】
また、駆動部の駆動力は梃子の原理を用いてスライド部材に伝達されるので、先端部の駆動ストロークを増幅してスライド部材に伝達することができる。そのため、駆動部の容量を小型化しても、スライド部材に必要な成形ストロークを付与することができる。駆動部の容量を小型化できるので、駆動装置をコンパクト化でき、表皮材チャック装置の待機位置を駆動装置に干渉することなく基材のアンダーカット部に近接させることができる。そして、近接させる分だけ、表皮材の歩留まりを向上することができる。また、駆動装置は、梃子の原理を用いた簡単な構造であるので、その製作費用も低減させることができる。
よって、本発明によれば、表皮材の歩留まりを向上できるとともに、スライド部材の安定したスライド動作をコンパクトかつ低コストに実現できる。
【0011】
(2)(1)に記載された内装部品の真空成形型において、
前記スライド部材の後端には、切り欠き部を形成し、前記切り欠き部に前記連結アームの下端を係合させたことを特徴とする。
【0012】
本発明においては、スライド部材の後端には、切り欠き部を形成し、切り欠き部に連結アームの下端を係合させたので、スライド部材における強度を保持しつつ、切り欠き部後方の空間に表皮材チャック装置を待機させて、表皮材の歩留まりを一層向上できるとともに、スライド部材の安定したスライド動作をよりコンパクトかつ低コストに実現できる。
【0013】
すなわち、スライド部材の後端(背面)に切り欠き部を形成すると、スライド部材が切り欠き部で撓み、スライド部材における強度が低下する。しかし、切り欠き部に連結アームの下端を係合させたので、駆動部の駆動力が切り欠き部に直接作用することができる。そのため、スライド部材における強度低下を、駆動部の駆動力によって押圧することで補完することができる。したがって、スライド部材の強度を低下させることなく、切り欠き部を形成することができる。その結果、切り欠き部の後方にできた空間に表皮材チャック装置を待機させることによって、基材のアンダーカット部にさらに接近させることができ、表皮材の歩留まりをより一層向上することができる。この場合においても、スライド部材における強度低下を、駆動部の駆動力によって補完するので、スライド部材の安定したスライド動作を維持することができる。
【0014】
なお、駆動部の作動方向は、スライド部材の進退方向と略平行であり、連結アームは、上下方向において上型の後端に略平行に配設されていることが好ましい。これによって、駆動装置を上型の後端に沿ってよりコンパクトに配設することができる。そのため、表皮材チャック装置の待機位置を駆動装置に干渉することなく基材のアンダーカット部に、より一層接近させることができる。その結果、表皮材の歩留まりをより一層向上することができる。
【0015】
(3)(1)又は(2)に記載された内装部品の真空成形型において、
前記駆動部を、前記上型の後端に埋没させたことを特徴とする。
【0016】
本発明においては、駆動部を、上型の後端に埋没させたので、上型の後端から駆動部の先端部が突出する量を一層少なくさせることができる。そのため、駆動装置をより一層コンパクト化でき、表皮材チャック装置の待機位置を基材のアンダーカット部により一層近接させることができる。その結果、表皮材の歩留まりをより一層向上することができる。
なお、駆動部は、油圧で作動する油圧シリンダーであることが好ましい。油圧シリンダーであれば、より一層コンパクトなサイズで上型の後端に埋没させることが容易となるからである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基材のアンダーカット部にスライド部材を進退させて表皮材を被覆した内装部品の真空成形型において、表皮材の歩留まりを向上できるとともに、スライド部材の安定したスライド動作をコンパクトかつ低コストに実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る内装部品の真空成形型における模式的斜視図である。
図2図1に示す真空成形型の部分断面図である。
図3図1に示す真空成形型において、表皮材を基材表面に被せた時の部分断面図である。
図4図1に示す真空成形型において、上型が閉じる直前の部分断面図である。
図5図1に示す真空成形型において、上型が閉じた時の部分断面図である。
図6図1に示す真空成形型において、スライド部材が前進した時の部分断面図である。
図7】従来の内装部品の真空成形型の模式的断面図である。
図8図7に示す真空成形型の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る実施形態である内装部品の真空成形型について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る真空成形型の全体構造を説明し、その後、本実施形態に係る真空成形型を用いた内装部品の真空成形方法について、説明する。
【0020】
<真空成形型の全体構造>
まず、本実施形態に係る真空成形型の全体構造を、図1図2を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態に係る内装部品の真空成形型における模式的斜視図を示す。図2に、図1に示す真空成形型の部分断面図を示す。
【0021】
図1図2に示すように、本実施形態に係る真空成形型10は、上端が断面凸状に形成された下型1と、下端が断面凹状に形成された上型2と、長尺状のスライド部材3と、上型2の後端に固定され、スライド部材3を前後方向へ進退させる駆動装置4と、スライド部材3の下端が摺接する固定板6とを備えている。ここで、矢印X方向が前後方向を示し、矢印Y方向が左右方向を示し、矢印Z方向が上下方向を示す。なお、表皮材HZを保持し、開放する表皮材チャック装置5が、スライド部材3及び固定板6の後方に待機している。また、本真空成形型10は、図示しない公知の型昇降装置に締結され、また、図示しない公知の真空吸引装置と接続されているが、ここでは必要な場合を除き説明を割愛する。
【0022】
下型1は、アンダーカット部KZuを有する基材KZを載置する型部材であって、上端に基材KZが当接する基材受け面12を、適宜備えている。また、下型1の上端には、基材KZのアンダーカット部端末KZu1が当接する位置に隣接して、表皮材HZの周縁部HZ1を押圧するシワ押え面11が形成されている。シワ押え面11は、スライド部材3に対応して左右方向(長手方向)に延設されている。下型1の下端13は、型昇降装置に締結されている。なお、基材KZは、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂で、表皮材HZは、上下で2層構造をなし、基材KZに接着される第1層は、ポリプロピレンフォーム(PPF)であり、第1層の上に形成される第2層は、オレフィン系エラストマ(TPO)であることが好ましい。
【0023】
上型2は、基材表面KZjに表皮材HZを押圧しながら真空吸引して賦形する型部材であって、下端に表皮材表面を賦形する賦形面22を備えている。上型2には、賦形面22から表皮材HZを真空吸引するため、ポーラス状の電鋳材を用い、適宜吸引孔(図示せず)が形成されている。吸引孔は、真空吸引装置と接続されている。上型2の下端21には、スライド部材3の上端34と摺接して、スライド部材3の前後方向への移動を案内する案内部材23が固定されている。上型2の上端24は、型昇降装置に締結されている。上型2は、型昇降装置の昇降動作によって、型開き位置から型閉じ位置まで上下動する。
【0024】
スライド部材3は、基材KZのアンダーカット部KZu表面に表皮材HZを押圧しながら真空吸引して賦形する型部材であって、前端にアンダーカット部KZuの表皮材を賦形するアンダーカット賦形面33を備えている。スライド部材3には、アンダーカット賦形面33から表皮材HZを真空吸引するため、ポーラス状の電鋳材を用い、適宜吸引孔(図示せず)が形成されている。吸引孔は、真空吸引装置と接続されている。スライド部材3において、アンダーカット賦形面33と対向する後端(背面)には、前方に凹む切り欠き部31と、後方に突出する突出部32とが形成されている。切り欠き部31は、平面視で後方に開放されたコ字状端面を有している。切り欠き部31は、スライド部材3の左右方向(長手方向)に複数個(図1では、3個)形成されている。各切り欠き部31は、それぞれ左右方向(長手方向)の長さが同一で、同一の凹み量Lを有している。突出部32は、切り欠き部31同士の間と、スライド部材3の左右端とに形成されている。突出部32の上端は、案内部材23が摺接している。スライド部材3の進退方向は、図2では略水平方向であるが、アンダーカット部KZuの形状によって、斜め上方又は斜め下方にすることもできる。
【0025】
駆動装置4は、上型2の後端25に装着され、スライド部材3を前後方向へ進退させる装置であって、シリンダー部41と、駆動ロッド部42と、連結アーム43と、支持部44と、スライド連結部45とを備えている。ここで、シリンダー部41は、請求項の「駆動部」に該当し、駆動ロッド部42は、請求項の「先端部」に該当する。駆動装置4は、スライド部材3の左右対称な位置に2個に装着されている。シリンダー部41の後端から、駆動ロッド部42が進退する。駆動ロッド部42の頭部には、周方向にリング溝421が形成されている。スライド連結部45は、筒状体をなし、前端がスライド部材3の切り欠き部31に固定されている。スライド連結部45の胴体部には、周方向にリング溝451が形成されている。連結アーム43は、上端下端にそれぞれU溝を有する板状体であって、上端431のU溝が駆動ロッド部42のリング溝421に係合され、下端432のU溝がスライド連結部45のリング溝451に係合されている。連結アーム43の中間部には、軸孔が形成され、その軸孔には支持部44の軸ピン441が貫通している。シリンダー部41が作動して駆動ロッド部42が矢印A方向に進退することによって、連結アーム43が矢印Bの方向に回動し、スライド部材3が矢印Cの方向に進退する。このとき、スライド部材3は、必要な成形ストロークMだけ移動して、アンダーカット部KZuを被覆する表皮材HZを賦形する。
【0026】
なお、連結アーム43は、矢印Bの方向に回動するが、上下方向において上型2の後端25と略平行に配設されている。また、シリンダー部41は、後端を露出して上型後端25内に埋没されている。そのため、駆動装置4における上型2後方への突出量が少なく抑えられ、駆動装置4は、コンパクトに装着されている。
また、シリンダー部41は、油圧で作動する油圧シリンダーである。シリンダー部41は、2組の駆動装置4にそれぞれ設けられているが、共通のシリンダー部を両者の中間部に設けることもできる。また、シリンダー部をモータ駆動部等の他の駆動源に置き換えることも可能である。
【0027】
固定板6は、上端62でスライド部材3を前後方向に案内するとともに、下端61で表皮材HZの周縁部HZ1を押圧する板部材である。固定板6の前端63にて、基材KZのアンダーカット部端末KZu1の表皮材HZを賦形する。固定板6の後端64は、スライド部材3の切り欠き部31及び突出部32の後端形状と、平面視で同一の形状に形成されている。なお、固定板6は、上型2に固定された案内部材23から垂下する吊りピン(図示せず)によって、適宜支持されている。
【0028】
なお、表皮材チャック装置5は、表皮材HZの前後方向両端を保持し、基材上に被せてから開放する表皮材搬送装置である。表皮材チャック装置5は、表皮材HZの前後方向両端を保持するため、上型2の前端側と後端側に配置されている。後端側に配置された表皮材チャック装置5には、複数個のクランプアーム51と各クランプアーム51を連結する本体アーム52とを備えている。前端側に配置された表皮材チャック装置5は、図示を省略しているが、後端側と同様に、複数個のクランプアーム51と各クランプアーム51を連結する連結アーム52とを備えている。
【0029】
後端側に配置された表皮材チャック装置5の各クランプアーム51は、少なくともスライド部材3が進退する成形ストロークMだけ、各切り欠き部31から離間して待機している。各クランプアーム51は、切り欠き部31に固定されたスライド連結部45及び連結アーム43と干渉しない位置P1に待機している。また、各クランプアーム51は、駆動装置4のスライド連結部45及び連結アーム43より左右方向にズレた位置に配置されている。クランプアーム51の先端には、クランプ爪511が回動可能に取り付けられている。クランプ爪511が閉じると、表皮材HZを保持し、クランプ爪511が開くと、表皮材HZを開放する。クランプ爪511の開放タイミングは、上型2の閉じ位置に応じて調節でき、表皮材HZの成形時にシワ、キレツが生じにくい最適な位置を選定する。
【0030】
<内装部品の真空成形方法>
次に、上述した真空成形型を用いて、端部にアンダーカット部を有する基材表面に表皮材を被覆する内装部品の真空成形方法を、図3図6を用いて説明する。図3に、図1に示す真空成形型において、表皮材を基材表面に被せた時の部分断面図を示す。図4に、図1に示す真空成形型において、上型が閉じる直前の部分断面図を示す。図5に、図1に示す真空成形型において、上型が閉じた時の部分断面図を示す。図6に、図1に示す真空成形型において、スライド部材が前進した時の部分断面図を示す。
【0031】
図3に示すように、はじめに下型1の基材受け面12に基材KZを載置し、表皮材HZの端末を表皮材チャック装置5(51、52)が保持して、表皮材HZを基材表面KZjに被せる。この時、表皮材HZは、所定の温度に加熱されて柔らかくなった状態である。
表皮材HZを基材表面KZjに被せた後、上型2を矢印Pの方向に下降させる。この時、上型2に支持されたスライド部材3(31)は、駆動装置4のスライド連結部45及び連結アーム43に戻されて後退位置に待機している。
【0032】
次に、図4に示すように、上型2が所定の高さまで下降したら、表皮材チャック装置5のクランプ爪511が矢印Qの方向に回動する。クランプ爪511が回動することによって、表皮材HZが開放される。表皮材HZの開放タイミングは、上型2を完全に閉じる前(例えば、閉じ位置の数cm手前)に行うように制御されている。開放された表皮材HZの周縁部HZ1は、固定板6の下端61と下型1のシワ押え面11との間の空間によって、流入方向の拘束を受けることになる。この拘束によって、表皮材HZには適正な引張力を作用させる。その結果、表皮材HZを伸び成形させつつ型内に流入することができ、表皮材HZのしわ、キレツを回避することができる。
【0033】
次に、図5に示すように、上型2を完全に閉じる。この段階では、スライド部材3は、まだ後退位置に待機している。表皮材HZの周縁部HZ1は、固定板6の下端61と下型1のシワ押え面11とによって押圧されている。固定板6の前端63は、アンダーカット部端末KZu1の表皮材HZを押圧して賦形する。続いて、図6に示すように、駆動装置4のシリンダー部41が作動して駆動ロッド部42が突出することによって、連結アーム43が回動し、スライド部材3は、矢印Rの方向に押されてアンダーカット部KZuに前進し、アンダーカット賦形面33が表皮材HZを押圧しながら真空吸引して賦形する。この時、表皮材HZの周縁部HZ1は、固定板6の下端61と下型1のシワ押え面11から引張力を受けながら、型内(矢印Sの方向)に流入する。また、表皮材HZの周縁部HZ1は、固定板6の下端61と下型1のシワ押え面11とによって挟み込まれているので、シワが発生することもない。
【0034】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る内装部品NBの真空成形型10によれば、駆動装置4は、駆動ロッド部(先端部)42が上型2の後端25から突出する方向に作動するシリンダー部(駆動部)41と、上端431が駆動ロッド部(先端部)42に係合され、下端432がスライド部材3の切り欠き部31後端に固定されたスライド連結部45に係合され、中間部が上型2の後端25に軸支された連結アーム43とを備えたので、シリンダー部(駆動部)41が作動すると、連結アーム43の上端431が駆動ロッド部(先端部)42に押されて上型2の外方に移動し、連結アーム43の下端432がその反対方向である上型2の内方に移動する。連結アーム43の下端432が上型2の内方に移動するので、スライド連結部45が固定されたスライド部材3をアンダーカット部KZuに向かって前進させることができる。そのため、シリンダー部(駆動部)41の駆動力を、連結アーム43を介して梃子の原理を用いてスライド部材3の後端(背面)に伝達することができる。シリンダー部(駆動部)41の駆動力は、梃子の原理を用いてスライド部材3の後端(背面)に伝達されるので、スライド部材3に偏芯荷重として作用せず、スライド部材3は、回動、捻じれ等せずに安定してスライド動作を行うことができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、連結アーム43を介して梃子の原理を用いているので、駆動ロッド部(先端部)42の駆動ストロークを増幅してスライド部材3に伝達することができる。そのため、シリンダー部(駆動部)41の容量を小型化しても、スライド部材3に必要な成形ストロークMを付与することができる。シリンダー部(駆動部)41の容量を小型化できるので、駆動装置4をコンパクト化でき、表皮材チャック装置5の待機位置P1を駆動装置4に干渉することなく基材KZのアンダーカット部KZuに近接させることができる。そして、近接させる分だけ、表皮材KZの歩留まりを向上することができる。また、駆動装置4は、梃子の原理を用いた簡単な構造であるので、その製作費用も低減させることができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、スライド部材3の後端には、切り欠き部31を形成し、切り欠き部31に固定したスライド連結部45に連結アーム43の下端432を係合させたので、スライド部材3における強度を保持しつつ、切り欠き部31後方の空間に表皮材チャック装置5を待機させて、表皮材HZの歩留まりを一層向上できるとともに、スライド部材3の安定したスライド動作をよりコンパクトかつ低コストに実現できる。
【0037】
すなわち、スライド部材3の後端(背面)に切り欠き部31を形成すると、スライド部材3が切り欠き部31で撓み、スライド部材3における強度が低下する。しかし、切り欠き部31に固定したスライド連結部45に連結アーム43の下端432を係合させたので、シリンダー部(駆動部)41の駆動力が切り欠き部31に直接作用することができる。そのため、スライド部材3における強度低下を、シリンダー部(駆動部)41の駆動力によって押圧することで補完することができる。したがって、スライド部材3の強度を低下させることなく、切り欠き部31を形成することができる。その結果、切り欠き部31の後方にできた空間に表皮材チャック装置5のクランプアーム51を待機させることによって、基材KZのアンダーカット部KZuにさらに接近させることができ、表皮材HZの歩留まりをより一層向上することができる。この場合においても、スライド部材3における強度低下を、シリンダー部(駆動部)41の駆動力によって補完するので、スライド部材3の安定したスライド動作を維持することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、シリンダー部(駆動部)41の作動方向(矢印Aの方向)は、スライド部材3の進退方向(矢印Cの方向)と略平行であり、連結アーム43は、上下方向において上型2の後端25に略平行に配設されている。これによって、駆動装置4を上型2の後端25に沿ってよりコンパクトに配設することができる。そのため、表皮材チャック装置5の待機位置P1を駆動装置4に干渉することなく基材KZのアンダーカット部KZuに、より一層接近させることができる。その結果、表皮材HZの歩留まりをより一層向上することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、シリンダー部(駆動部)41を、上型2の後端25に埋没させたので、上型2の後端25から駆動ロッド部(先端部)42が突出する量を一層少なくさせることができる。そのため、駆動装置4をより一層コンパクト化でき、表皮材チャック装置5の待機位置P1を基材KZのアンダーカット部KZuにより一層近接させることができる。その結果、表皮材HZの歩留まりをより一層向上することができる。
なお、シリンダー部(駆動部)41は、油圧で作動する油圧シリンダーであるので、より一層コンパクトなサイズで上型2の後端25に埋没させることが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、アンダーカット部を有する基材の表面に、表皮材を真空成形によって被覆する内装部品の真空成形型として利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 下型
2 上型
3 スライド部材
4 駆動装置
5 表皮材チャック装置
6 固定板
10 真空成形型
11 シワ押え面
12 基材受け面
21 上型の下端
25 上型の後端
31 切り欠き部
32 突出部
41 シリンダー部(駆動部)
42 駆動ロッド部(先端部)
43 連結アーム
44 支持部
45 スライド連結部
431 連結アームの上端
432 連結アームの下端
KZ 基材
KZu アンダーカット部
HZ 表皮材
図1
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図3
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