(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸着パッド群は、全ての前記吸着ブロックが前記水平位置基準点に最も接近した状態である基準状態において、前記水平位置基準点に対して点対称な位置、及び前記水平位置基準点を通り水平方向に沿った水平位置基準線に対して線対称な位置の少なくとも何れか一方を満足する状態で配置された前記吸着パッドによって形成される請求項3に記載の物品移載装置。
前記制御装置は、各吸着パッドに吸引力を生じさせた際の負圧に基づいて前記対象物品に対する各吸着パッドの吸着状態であるパッド別吸着状態を個別に判定し、前記パッド別吸着状態に基づいて前記対象物品に対する各吸着ブロックの吸着状態であるブロック別吸着状態を個別に判定し、前記ブロック別吸着状態に基づいて前記対象物品に対する前記吸着ユニットの吸着状態である総吸着状態を判定する請求項1から4の何れか一項に記載の物品移載装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景に鑑みて、寸法が異なる多くの種類の物品に適切に対応し、当該物品を吸着把持して移載することが可能な物品移載装置の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みた本発明に係る物品移載装置は、1つの好適な
態様として、
移載対象の物品である対象物品の上面を吸着して当該対象物品を吊り下げて移載先に移動させる物品移載装置であって、
少なくとも1つの吸着パッドを有する吸着ブロックを複数備えると共に、水平方向に沿って前記吸着ブロックの少なくとも1つが移動可能に構成された吸着ユニットと、
前記対象物品の少なくとも前記上面の大きさに応じて前記吸着ブロックを移動させる制御装置と、を備え
、
前記吸着ブロックのそれぞれは、吸着力の異なる少なくとも2種類の前記吸着パッドを備えて構成され、
全ての前記吸着ブロックは、前記吸着ユニットにおいて予め規定された水平位置基準点を基準として、水平方向に沿って互いに接近及び離間可能に構成されている。
【0007】
この構成によれば、吸着ユニットの対象物品に対向する側の面において、吸着ユニットの外縁を結んで形成される平面内の面積が、対象物品の上面の大きさに応じて可変となる。従って、寸法が異なる多くの種類の物品を対象物品として適切に対応し、対象物品を吸着把持して移載することが可能となる。
また、上述したように、前記吸着ブロックのそれぞれは、吸着力の異なる少なくとも2種類の前記吸着パッドを備えて構成され、全ての前記吸着ブロックが、前記吸着ユニットにおいて予め規定された水平位置基準点を基準として、水平方向に沿って互いに接近及び離間可能に構成されている。水平位置基準点を基準として吸着ブロックが移動することで、容易に、精度良く制御装置による吸着ブロックの制御が可能となる。さらに、吸着力の異なる少なくとも2種類の吸着パッドを備えることによって、対象物品の重さに応じた吸着力を適切に設定することが可能となる。
【0008】
また、上記課題に鑑みた本発明に係る物品移載装置は、1つの好適な態様として、移載対象の物品である対象物品の上面を吸着して当該対象物品を吊り下げて移載先に移動させる物品移載装置であって、
少なくとも1つの吸着パッドを有する吸着ブロックを複数備えると共に、水平方向に沿って前記吸着ブロックの少なくとも1つが移動可能に構成された吸着ユニットと、
前記対象物品の少なくとも前記上面の大きさに応じて前記吸着ブロックを移動させる制御装置と、を備え、
前記複数の吸着ブロックのそれぞれは、複数の前記吸着パッドを備えて構成され
、
前記制御装置は、各吸着パッドに吸引力を生じさせた際の負圧に基づいて前記対象物品に対する各吸着パッドの吸着状態であるパッド別吸着状態を個別に判定し、前記パッド別吸着状態に基づいて前記対象物品に対する各吸着ブロックの吸着状態であるブロック別吸着状態を個別に判定し、前記ブロック別吸着状態に基づいて前記対象物品に対する前記吸着ユニットの吸着状態である総吸着状態を判定する。
この構成によれば、吸着ユニットの対象物品に対向する側の面において、吸着ユニットの外縁を結んで形成される平面内の面積が、対象物品の上面の大きさに応じて可変となる。従って、寸法が異なる多くの種類の物品を対象物品として適切に対応し、対象物品を吸着把持して移載することが可能となる。また、吸着ブロックの個数よりも多くの吸着パッドを吸着ユニットに設けることができるので、充分な吸着力を備えることができる。また、例えば吸着パッドの稼働/非稼働を切り替えることで、対象物品の重さに応じた吸着力をバランス良く設定することも可能となる。
また、吸着ユニットの吸引力が不足している場合、対象物品を吊り下げることができなかったり、吊り下げた後に移載先へと運んでいる途上に落下させたりする可能がある。従って、吊下げる前に吸引ユニットの吸引力を取得して、移載に充分であるか否かを判定することが好ましい。この際、より確実性を考慮して判定が行われると好適である。
【0009】
また、上記課題に鑑みた本発明に係る物品移載装置は、1つの好適な態様として、移載対象の物品である対象物品の上面を吸着して当該対象物品を吊り下げて移載先に移動させる物品移載装置であって、
少なくとも1つの吸着パッドを有する吸着ブロックを複数備えると共に、水平方向に沿って前記吸着ブロックの少なくとも1つが移動可能に構成された吸着ユニットと、
前記対象物品の少なくとも前記上面の大きさに応じて前記吸着ブロックを移動させる制御装置と、を備え、
全ての前記吸着ブロック
は、前記吸着ユニットにおいて予め規定された水平位置基準点を基準として、水平方向に沿って互いに接近及び離間可能に構成され
、
互いに異なる前記吸着ブロックに備えられた2つ以上の前記吸着パッドにより吸着パッド群が形成され、
前記制御装置は、吸引力を生じさせる稼働状態と吸引力を生じさせない非稼働状態とを、前記上面の大きさに応じて前記吸着パッド群ごとに切り替える。
この構成によれば、吸着ユニットの対象物品に対向する側の面において、吸着ユニットの外縁を結んで形成される平面内の面積が、対象物品の上面の大きさに応じて可変となる。従って、寸法が異なる多くの種類の物品を対象物品として適切に対応し、対象物品を吸着把持して移載することが可能となる。また、水平位置基準点を基準として吸着ブロックが移動することで、容易に、精度良く制御装置による吸着ブロックの制御が可能となる。
また、吸着パッドの稼働/非稼働を切り替える場合、各吸着パッドの稼働/非稼働を個別に制御すると、制御対象が多くなる。特に、1つの吸着ブロックに複数の吸着パッドが備えられている場合には、制御対象は、吸着ブロックの倍以上となり、制御装置の負荷が増大する。従って、複数の吸着パッドを集めてグループ化し、当該グループに属する吸着パッドの稼働/非稼働を一括制御すると、制御装置の負荷を抑制できて好適である。
また、上記課題に鑑みた本発明に係る物品移載装置は、1つの好適な態様として、移載対象の物品である対象物品の上面を吸着して当該対象物品を吊り下げて移載先に移動させる物品移載装置であって、
少なくとも1つの吸着パッドを有する吸着ブロックを複数備えると共に、水平方向に沿って前記吸着ブロックの少なくとも1つが移動可能に構成された吸着ユニットと、
前記対象物品の少なくとも前記上面の大きさに応じて前記吸着ブロックを移動させる制御装置と、を備え、
全ての前記吸着ブロックは、前記吸着ユニットにおいて予め規定された水平位置基準点を基準として、水平方向に沿って互いに接近及び離間可能に構成され、
前記制御装置は、各吸着パッドに吸引力を生じさせた際の負圧に基づいて前記対象物品に対する各吸着パッドの吸着状態であるパッド別吸着状態を個別に判定し、前記パッド別吸着状態に基づいて前記対象物品に対する各吸着ブロックの吸着状態であるブロック別吸着状態を個別に判定し、前記ブロック別吸着状態に基づいて前記対象物品に対する前記吸着ユニットの吸着状態である総吸着状態を判定する。
この構成によれば、吸着ユニットの対象物品に対向する側の面において、吸着ユニットの外縁を結んで形成される平面内の面積が、対象物品の上面の大きさに応じて可変となる。従って、寸法が異なる多くの種類の物品を対象物品として適切に対応し、対象物品を吸着把持して移載することが可能となる。また、水平位置基準点を基準として吸着ブロックが移動することで、容易に、精度良く制御装置による吸着ブロックの制御が可能となる。また、吸着ユニットの吸引力が不足している場合、対象物品を吊り下げることができなかったり、吊り下げた後に移載先へと運んでいる途上に落下させたりする可能がある。従って、吊下げる前に吸引ユニットの吸引力を取得して、移載に充分であるか否かを判定することが好ましい。この際、より確実性を考慮して判定が行われると好適である。
【0010】
また、本発明に係る物品移載装置
が、少なくとも1つの吸着パッドを有する吸着ブロックを複数備えると共に、水平方向に沿って前記吸着ブロックの少なくとも1つが移動可能に構成された吸着ユニットと、前記対象物品の少なくとも前記上面の大きさに応じて前記吸着ブロックを移動させる制御装置と、を備え、前記吸着ブロックのそれぞれが、吸着力の異なる少なくとも2種類の前記吸着パッドを備えて構成され、全ての前記吸着ブロック
が、前記吸着ユニットにおいて予め規定された水平位置基準点を基準として、水平方向に沿って互いに接近及び離間可能に構成され
ている場合に、各吸着ブロックにおいて、前記水平位置基準点に近い側に相対的に吸着力の低い前記吸着パッドが配置されていると好適である。上述したように、水平位置基準点を基準として吸着ブロックが移動することで、容易に、精度良く制御装置による吸着ブロックの制御が可能となる。また、吸着ブロックの個数よりも多くの吸着パッドを吸着ユニットに設けることとなるので、充分な吸着力を備えることができる。また、例えば吸着パッドの稼働/非稼働を切り替えることで、対象物品の重さに応じた吸着力をバランス良く設定することも可能となる。さらに、吸着力の異なる少なくとも2種類の吸着パッドを備えることによって、対象物品の重さに応じた吸着力を適切に設定することが可能となる。また、水平位置基準点に近い側に相対的に吸着力の低い吸着パッドが配置され、遠い側に相対的に吸着力の高い吸着パッドが配置されることにより、対象物品の外縁付近は吸着力の高い吸着パッドにより把持される。これにより、吸着ユニット全体の吸引力が同程度であっても把持の信頼性が向上する。
【0011】
ところで、吸着パッドの稼働/非稼働を切り替える場合、各吸着パッドの稼働/非稼働を個別に制御すると、制御対象が多くなる。特に、1つの吸着ブロックに複数の吸着パッドが備えられている場合には、制御対象は、吸着ブロックの倍以上となり、制御装置の負荷が増大する。従って、複数の吸着パッドを集めてグループ化し、当該グループに属する吸着パッドの稼働/非稼働を一括制御すると、制御装置の負荷を抑制できて好適である。1つの態様として、本発明に係る物品移載装置は、互いに異なる前記吸着ブロックに備えられた2つ以上の前記吸着パッドにより吸着パッド群が形成され、前記制御装置が、吸引力を生じさせる稼働状態と吸引力を生じさせない非稼働状態とを、前記上面の大きさに応じて前記吸着パッド群ごとに切り替えるとよい。
【0012】
ここで、本発明に係る物品移載装置における前記吸着パッド群は、全ての前記吸着ブロックが前記水平位置基準点に最も接近した状態である基準状態において、前記水平位置基準点に対して点対称な位置、及び前記水平位置基準点を通り水平方向に沿った水平位置基準線に対して線対称な位置の少なくとも何れか一方を満足する状態で配置された前記吸着パッドによって形成されると好適である。吸着パッド群を形成する吸着パッドがバランス良く配置されることにより、安定した把持が可能となる。
【0013】
ところで、吸着ユニットの吸引力が不足している場合、対象物品を吊り下げることができなかったり、吊り下げた後に移載先へと運んでいる途上に落下させたりする可能がある。従って、吊下げる前に吸引ユニットの吸引力を取得して、移載に充分であるか否かを判定することが好ましい。この際、より確実性を考慮して判定が行われると好適である。1つの態様として、本発明に係る物品移載装置は、前記制御装置が、各吸着パッドに吸引力を生じさせた際の負圧に基づいて前記対象物品に対する各吸着パッドの吸着状態であるパッド別吸着状態を個別に判定し、前記パッド別吸着状態に基づいて前記対象物品に対する各吸着ブロックの吸着状態であるブロック別吸着状態を個別に判定し、前記ブロック別吸着状態に基づいて前記対象物品に対する前記吸着ユニットの吸着状態である総吸着状態を判定すると好適である。
【0014】
ここで、本発明に係る物品移載装置は、前記制御装置が、前記総吸着状態に基づいて前記対象物品を吊り下げて移載先に移動させる移動速度を設定すると好適である。移載の際には、対象物品に慣性力(遠心力など)が作用する。従って、吸着ユニットの吸引力は、対象物品の重さと慣性力とを合わせた力に対応できる必要がある。当然ながら、慣性力は対象物品を吊り下げて移載先に移動させる移動速度が速いほど強くなる。従って、吸着ユニットの吸引力に余裕がない場合でも、慣性力が大きくならない条件下であれば、移載を行うことができる。例えば、吸着状態が充分ではない場合でも、移動速度を低下させることによって安全に移載を行うことができる可能性がある。従って、総吸着状態に基づいて移動速度が設定されると好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、
図1に示すように、物品移載装置9は、移載ロボット10と制御装置7とを備えて構成されている。移載ロボット10は、基台11とアーム12とを備えて構成されている。基台11は、アーム12を支持しており、アーム12は水平面に対して直交する回転軸(旋回軸)を中心として、不図示の旋回用アクチュエータによって水平方向に旋回可能に構成されている。また、アーム12は、旋回軸に沿って鉛直方向に伸びる本体部13と、本体部13からほぼ直角に突出して水平方向に伸びるハンド部14とを備えて構成されている。本体部13は、不図示の昇降用アクチュエータによって鉛直方向に昇降可能に構成されている。旋回用アクチュエータ及び昇降用アクチュエータは、制御装置7によって駆動制御される。
【0017】
アーム12のハンド部14の先端には吸着パッド1を有する吸着ユニット5が備えられている。旋回用アクチュエータと昇降用アクチュエータとによって、ハンド部14の先端に設けられた吸着ユニット5を3次元空間に設定された可動範囲内の任意の位置に移動させることができる。吸着ユニット5は、ハンド部14から鉛直方向に沿って下方に吊り下がる形態でハンド部14の先端に設置されている。そして、吸着ユニット5は、ハンド部14の先端において鉛直方向に沿った軸を回動軸として不図示の回動用アクチュエータによって回動可能に構成されている。即ち、3次元空間に設定された可動範囲内に配置された移載対象の物品(対象物品2)の向きに応じて、吸着ユニット5の姿勢を合わせることができるように構成されている。回動用アクチュエータの駆動制御も制御装置7によって実行される。
【0018】
制御装置7は、マイクロコンピュータなどの論理演算プロセッサを中核として構成され、制御装置7の有する各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現される。
図2の模式的なブロックに示すように、制御装置7は、移動制御部60及び吸着制御部70を有して構成されている。上述した旋回用アクチュエータ、昇降用アクチュエータ、回動用アクチュエータの駆動制御は、それぞれ移動制御部60の旋回制御部61、昇降制御部62、回動制御部63によって実行される。
【0019】
移動制御部60は、制御装置7よりも上位のコントローラなどから取得する移載情報F1に基づいて、移載ロボット10を駆動制御する。具体的には、吸着ユニット5が移載元へ到達するように移載ロボット10を制御し、移載元において吸着ユニット5が対象物品2を把持した後(吸着した後)、吸着ユニット5が移載先へ到達するように移載ロボット10を制御する。移載情報F1は、例えば、移載元の3次元座標データ、移載先の3次元座標データ、移載する対象物品2の個数などである。
図1に示した例では、パレットPに積載された対象物品2のそれぞれの上面の位置が移載元であり、ベルトコンベヤMの指定された位置が移載先である。尚、ここでは3次元座標データを例示したが、水平方向に沿った2次元平面の座標データを用いることも可能である。その場合には、例えば画像認識など、センサ19による検出結果を用いた演算等によって高さ方向の座標データを取得すると好適である。
【0020】
吸着制御部70は、吸着ユニット5に設置された吸着パッド1に吸引力を生じさせる稼働状態と、吸引力を生じさせない非稼働状態とを切り替える制御など、吸着ユニット5によって対象物品2を把持する(吸着する)制御を実行する機能部である。吸着制御部70は、制御装置7よりも上位のコントローラや、対象物品2に備えられた不図示の情報タグなどから取得する物品情報F2に基づいて、吸着ユニット5を制御する。物品情報F2は、例えば、対象物品2の寸法情報(対象物品2が直方体状の場合は縦・横・高さの長さ情報)、対象物品2の重量情報、対象物品2の重心や重心の水平面への投影点の座標データなどである。以下、本実施形態においては、対象物品2が直方体状である場合を例として説明する。縦の長さ“La”及び横の長さ“Wa”は、対象物品2が積載される状態において、水平面に投影された長方形の2辺の長さである。また、高さ“Ha”は、対象物品2が積載される状態において、鉛直方向の長さである。
【0021】
図2に示すように、吸着制御部70は、パッドパターン設定部71、スライド量設定部72、スライド制御部73、吸着制御部74、吸着状態判定部75を備えて構成されている。本実施形態に係る物品移載装置9は、特に吸着ユニット5の構成に特徴を有する。従って、各機能部の詳細については、吸着ユニット5の詳細な説明に合わせて後述する。
【0022】
物品移載装置9は、移載対象の物品である対象物品2の上面を吸着して当該対象物品2を吊り下げて移載先に移動させる。上述したように、物品移載装置9を構成する移載ロボット10は、対象物品2の上面を吸着して吊り下げる(把持する)吸着ユニット5を備えて構成されている。
図3は、吸着ユニット5を、吸着される対象物品2の側から見た面(対物品面)を模式的に示している。つまり、垂直方向に沿った方向から見た吸着ユニット5の下面側(対象物品2に対する対向面側)を模式的に表している。吸着ユニット5は、少なくとも1つの吸着パッド1を有する吸着ブロック3を複数備えて構成されている。また、これらの吸着ブロック3の少なくとも1つは、水平方向に沿って移動可能に構成されている。吸着ブロック3は、不図示のスライドアクチュエータによって水平方向に移動する。制御装置7は、対象物品2の少なくとも上面の大きさに応じて吸着ブロック3を移動させる。つまり、スライドアクチュエータは、制御装置7によって駆動制御される。
【0023】
図4は、
図3のように4つの吸着ブロック3を有して構成された吸着ユニット5において吸着ブロック3が移動することによって変化する有効面積を例示している。
図4に示す例においては、全ての(ここでは4つの)吸着ブロック3が、吸着ユニット5において予め規定された水平位置基準点Qを基準として、水平方向に沿って互いに接近及び離間可能に構成されている。
図4において一点鎖線で示す吸着ユニット5は、全ての吸着ブロック3(第1吸着ブロック31、第2吸着ブロック32、第3吸着ブロック33、第4吸着ブロック34)が、水平位置基準点Qに最も接近した状態である基準状態(最近接状態)を示している。この基準状態は、上面の面積が最も狭い対象物品2を吸着する場合に適用される。
【0024】
図4において実線で示す吸着ユニット5は、全ての吸着ブロック3(31,32,33,34)が、水平位置基準点Qから最も離間した状態である最大離間状態を示している。この最大離間状態の際、吸着ユニット5の有効面積は最も広くなる。尚、有効面積とは、吸着ユニット5において最も外縁側の各吸着ブロック3の外縁を結んで得られる長方形状の面積である。最大離間状態は、上面の面積が最も広い対象物品2を吸着する場合に適用される。
【0025】
制御装置7は、対象物品2の上面の大きさに応じて、より詳しくは、対象物品2の縦の長さ“La”及び横の長さ“Wa”に応じて、吸着ブロック3を縦方向“L”、横方向“W”に沿った方向に移動させて対象物品2に応じて吸着ブロック3の配置を設定する。
【0026】
また、本実施形態においては、
図3に示すように複数の吸着ブロック3のそれぞれが、複数の吸着パッド1を備えて構成されている。また、本実施形態では、各吸着ブロック3は、吸着力の異なる少なくとも2種類の吸着パッド1(1H,1L)を備えて構成されている。具体的には、3つのハイパワー吸着パッド1Hと、2つのローパワー吸着パッド1Lとの5つの吸着パッド1を備えて1つの吸着ブロック3が構成されている。
図1に示すように、水平位置基準点Qに近い側にローパワー吸着パッド1Lが配置され、水平位置基準点Qから遠い側にハイパワー吸着パッド1Hが配置されている。つまり、水平位置基準点Qに近い側に相対的に吸着力の低い吸着パッド1が配置されている。これにより、対象物品2の外縁側に相対的に吸着力の高い吸着パッド1が配置されることになる。
【0027】
また、本実施形態では、第1吸着ブロック31の吸着パッド1と、第3吸着ブロック33の吸着パッド1とが、水平位置基準点Qを対称点として点対称の関係を満たすように配置されている。同様に、第2吸着ブロック32の吸着パッド1と、第4吸着ブロック34の吸着パッド1とが、水平位置基準点Qを対称点として点対称の関係を満たすように配置されている。或いは、第1吸着ブロック31の吸着パッド1と、第2吸着ブロック32の吸着パッド1とが、水平位置基準点Qを通り水平方向に沿った水平位置基準線“S1(S)”を対称軸として線対称の関係を満たすように配置されている。同様に、第1吸着ブロック31の吸着パッド1と、第4吸着ブロック34の吸着パッド1とは、水平位置基準点Qを通り水平方向に沿った水平位置基準線“S2(S)”を対称軸として線対称の関係を満たすように配置されている。隣合う吸着ブロック3は同様に線対称の関係を満足するが、その他の組み合わせについては、明らかであるから例示は省略する。
【0028】
上述したように、制御装置7は、対象物品2の上面の縦の長さ“La”及び横の長さ“Wa”に応じて、吸着ブロック3を縦方向“L”、横方向“W”に沿った方向に移動させて対象物品2に応じて吸着ブロック3の配置を設定する。この設定は、制御装置7に格納された不図示のパッドパターンマップ(パッドパターンテーブル)に基づいて行われる。
図5及び
図6は、パッドパターンマップの仕様の一例を示している。
図5は、5種類のパッドパターン(P1,P2,P3,P4,P5)を示しており、
図6は、対象物品2の上面の縦の長さ“La”及び横の長さ“Wa”と、各パッドパターンとの関係を示している。
【0029】
図5に示すように、第1パッドパターンP1は、第1吸着ブロック31のローパワー吸着パッド1L(A1)、第2吸着ブロック32のローパワー吸着パッド1L(A2)、第3吸着ブロック33のローパワー吸着パッド1L(A3)、第4吸着ブロック34のローパワー吸着パッド1L(A4)により構成されるパッドパターンである。即ち、第1パッドパターンP1は、“A”系統の4つのローパワー吸着パッド1Lにより構成されるパッドパターンである。以下、同様であるので簡略化して説明する。
【0030】
第2パッドパターンP2は、第1パッドパターンP1に加え、“B”系統のローパワー吸着パッド1Lにより構成されるパッドパターンである。即ち、第2パッドパターンP2は、“A”系統及び“B”系統の8つのローパワー吸着パッド1Lにより構成されるパッドパターンである。
【0031】
第3パッドパターンP3は、第2パッドパターンP2に加え、“C”系統のハイパワー吸着パッド1Hにより構成されるパッドパターンである。即ち、第3パッドパターンP3は、“A”系統及び“B”系統の8つのローパワー吸着パッド1L、及び“C”系統の4つのハイパワー吸着パッド1Hの合計12の吸着パッド1により構成されるパッドパターンである。
【0032】
第4パッドパターンP4は、第2パッドパターンP2に加え、“D”系統のハイパワー吸着パッド1Hにより構成されるパッドパターンである。即ち、第4パッドパターンP4は、“A”系統及び“B”系統の8つのローパワー吸着パッド1L、及び“D”系統の4つのハイパワー吸着パッド1Hの合計12の吸着パッド1により構成されるパッドパターンである。或いは、第4パッドパターンP4は、“C”系統に代えて“D”系統を用いる点において第3パッドパターンP3と異なるパッドパターンである。
【0033】
第5パッドパターンP5は、第3パッドパターンP3に加え、“D”系統及び“E”系統のハイパワー吸着パッド1Hにより構成されるパッドパターンである。或いは、第5パッドパターンP5は、第4パッドパターンP4に加え、“C”系統及び“E”系統のハイパワー吸着パッド1Hにより構成されるパッドパターンである。即ち、第5パッドパターンP5は、“A”系統及び“B”系統の8つのローパワー吸着パッド1L、及び“C”系統、“D”系統、及び“E”系統の12のハイパワー吸着パッド1Hの合計20の吸着パッド1(全ての吸着パッド1)により構成されるパッドパターンである。
【0034】
各パッドパターンは、
図6に示すように、対象物品2の上面の縦の長さ“La”及び横の長さ“Wa”によって規定された各寸法領域(R1,R2,R3,R4,R5)に割り当てられている。第1パッドパターンP1は第1寸法領域R1に割り当てられ、第2パッドパターンP2は第2寸法領域R2に割り当てられ、第3パッドパターンP3は第3寸法領域R3に割り当てられ、第4パッドパターンP4は第4寸法領域R4に割り当てられ、第5パッドパターンP5は第5寸法領域R5に割り当てられる。尚、第1寸法領域R1に割り当てられる第1パッドパターンP1は、対象物品2の上面と吸着ユニット5の下面(有効面積)とが、鉛直方向に沿った方向から見て充分に重複していない場合、つまり、対象物品2の上面と吸着ユニット5の下面とがずれている場合でも吸着(把持)を行わせる場合に適用されるパッドパターンである(ずらし処理)。
【0035】
このように、各パッドパターンにより、稼働しない吸着パッド1が出現する。例えば、“A”系統の吸着パッド1は全てのパッドパターンにおいて稼働するが、“E”系統の吸着パッド1は、第5パッドパターンP5でのみ稼働する。各吸着パッド1の稼働又は非稼働を個別に制御するとすれば、20個の制御指令を発しなければならないなど、制御形態が複雑化する。しかし、“A”から“E”の系統ごとに、当該系統に属する全ての吸着パッド1の稼働又は非稼働を一括制御すれば、5個の制御命令で足り、制御形態を簡素化することができる。即ち、互いに異なる吸着ブロック3に備えられた2つ以上の吸着パッド1により吸着パッド群が形成されると好適である。
【0036】
本実施形態では、例えば、“A”から“E”の系統をそれぞれ構成する4つずつの吸着パッド1により、5つの吸着パッド群が構成される。本実施形態では、制御装置7は、吸引力を生じさせる稼働状態と吸引力を生じさせない非稼働状態とを、上面の大きさに応じて(パッドパターンに応じて)吸着パッド群ごとに切り替える。上述したように、本実施形態では、各吸着ブロック3に配置される吸着パッド1は、他の吸着ブロック3に配置される吸着パッド1と点対称或いは線対称の関係を満足している。異なる吸着ブロック3に配置された吸着パッド1を組み合わせて形成された“A”から“E”の各系統に含まれる吸着パッド1は、互いに点対称或いは線対称の関係を満足している。換言すれば、各系統に含まれる吸着パッド1は、水平位置基準点Qを中心として1つの円上に存在する。従って、系統ごとに(吸着パッド群ごとに)吸着パッド1の稼働/非稼働を制御してもバランスのよい吸着力を生じさせることができる。
【0037】
尚、各吸着パッド群は、吸着ブロック3と同数(ここでは“4”)の吸着パッド1により構成される必要はない。例えば、水平位置基準点Qに対して互いに点対称の関係にある2つの吸着パッド1によって吸着パッド群が構成されてもよい。或いは、水平位置基準点Qを通り水平方向に沿った水平位置基準線Sに対して互いに線対称の関係にある2つの吸着パッド1によって吸着パッド群が構成されてもよい。当然ながら、そのような点対称の関係及び線対称の関係を満足する3つ以上の吸着パッド1によって吸着パッド群が構成されてもよい。即ち、吸着パッド群は、全ての吸着ブロック3が水平位置基準点Qに最も接近した状態である基準状態において、水平位置基準点Qに対して点対称な位置、及び水平位置基準点Qを通り水平方向に沿った水平位置基準線Sに対して線対称な位置の少なくとも何れか一方を満足する状態で配置された吸着パッド1によって形成されると好適である。
【0038】
ところで、各吸着パッド1が吸引する対象物品2の表面は、様々な状態である可能性がある。例えば、対象物品2が段ボール箱であり、当該段ボール箱に開封用のミシン目等が施されるような場合、当該ミシン目により吸着パッド1と対象物品2の表面との気密性が損なわれる可能性がある。このようなミシン目は、吸着パッド群を構成する吸着パッド1の配置に応じて設けられてはいないから、吸着パッド群を構成する吸着パッド1の中でも、気密性が異なり、各吸着パッド1による吸引力が異なる可能性がある。従って、吸着パッド1の吸引力(負圧)を測定するセンサ(例えば真空スイッチ)は、各吸着パッド1に設けられていると好適である。
【0039】
制御装置7の吸着状態判定部75は、各吸着パッド1に吸引力を生じさせた際の負圧に基づいて対象物品2に対する各吸着パッド1の吸着状態であるパッド別吸着状態を個別に判定する。さらに、吸着状態判定部75は、これらパッド別吸着状態に基づいて対象物品2に対する各吸着ブロック3の吸着状態であるブロック別吸着状態を個別に判定する。そして、これらブロック別吸着状態に基づいて対象物品2に対する吸着ユニット5の吸着状態である総吸着状態を判定する。
【0040】
図7は、吸着状態判定部75による判定手順を数値を用いて例示したものである。本実施形態においては、圧力センサ15として真空スイッチを利用した例を示している。真空スイッチは、負圧が“−60[Pa]”以下の場合、及び“−50[Pa]”以下の場合に、何れの条件を満たしているかを識別可能な状態でオン状態となる。吸着状態判定部75は、真空スイッチの状態に基づいて各吸着パッド1の吸着状態を個別に判定する。
【0041】
図7に示すように、第1吸着ブロック31の系統“A”の吸着パッド1(ローパワー吸着パッド1L)は、充分な負圧が出ておらず、真空スイッチはオフ状態である。従って、当該吸着パッド1のパッド別吸着状態は、“0[kgf]”と判定される。一方、第1吸着ブロック31の系統“B”の吸着パッド1(ローパワー吸着パッド1L)は、充分に負圧が出ており、真空スイッチは、負圧が“−60[Pa]”以下であることを示してオン状態となっている。従って、当該系統“B”の吸着パッド1のパッド別吸着状態は、例えば“7.6[kgf]”と判定される。尚、ローパワー吸着パッド1Lが、“−50[Pa]”以下で“−60[Pa]”に達しない範囲の負圧の場合には、パッド別吸着状態は、例えば“6.4[kgf]”と判定される(
図7の第4吸着ブロック34を参照。)。
【0042】
第1吸着ブロック31のハイパワー吸着パッド1Hは、系統“C”と系統“E”とに充分な負圧が出ておらず、パッド別吸着状態は、“0[kgf]”と判定される。一方、系統“D”の吸着パッド1は、充分に負圧が出ており、真空スイッチは、負圧が“−60[Pa]”以下であることを示してオン状態となっている。従って、当該系統“D”の吸着パッド1のパッド別吸着状態は、例えば“17.3[kgf]”と判定される。尚、ハイパワー吸着パッド1Hが、“−50[Pa]”以下で“−60[Pa]”に達しない範囲の負圧の場合には、パッド別吸着状態は、例えば“14.4[kgf]”と判定される(
図7の第4吸着ブロック34を参照。)。
【0043】
吸着状態判定部75は、これらパッド別吸着状態を合算して、ブロック別吸着状態を求める。上述した5つのパッド別吸着状態に基づき、第1吸着ブロック31のブロック別吸着状態は、“24.9[kgf]”となる。吸着状態判定部75は、同様に、第2吸着ブロック32、第3吸着ブロック33、第4吸着ブロック34のブロック別吸着状態を演算する。
図7に例示するように、第2吸着ブロック32のブロック別吸着状態は“15.2[kgf]”となり、第3吸着ブロック33のブロック別吸着状態は“32.5[kgf]”となり、第4吸着ブロック34のブロック別吸着状態は“28.4[kgf]”となる。
【0044】
次に、吸着状態判定部75は、全ての吸着ブロックのブロック別吸着状態の内、最も吸着力の小さい値を選択し、当該値が全てのブロック別吸着状態の値であると見なして、当該値に吸着ブロック数を乗じ、総吸着状態を演算する。本実施形態では、吸着ブロック数は“4”であるから、最も小さいブロック別吸着状態の値が4倍される。ここでは、第2吸着ブロックのブロック別吸着状態の値“15.2”が4倍されて、“60.8[kgf]”となる。
【0045】
制御装置7は、この総吸着状態に基づいて対象物品2を吊り下げて移載先に移動させる移動速度を設定する。より詳しくは、制御装置7は、総吸着状態と対象物品2の重量とに基づいて対象物品2を吊り下げて移載先に移動させる移動速度を設定する。具体的には、吸着状態判定部75は、総吸着状態を対象物品2の重量で除し、安全率を演算する。ここで、対象物品2の重量を“11[kgf]”とすると、安全率は、“5.53”となる。制御装置7は、この安全率に基づいて対象物品2を吊り下げて移載先に移動させる移動速度を設定する。例えば、制御装置7は、安全率が、第1安全しきい値以上の場合には、第1移動速度でアーム12を旋回させ、第1安全しきい値未満第2安全しきい値以上の場合には、第1移動速度よりも低速の第2移動速度でアーム12を旋回させ、第2安全しきい値未満の場合には吸着エラーとしてアーム12の旋回を制限する。例えば、第1安全しきい値は“8”、第2安全しきい値は“5”と設定することができる。本実施形態では、安全率が“5.53”であったので、制御装置7は、第1移動速度よりも低速の第2移動速度でアーム12を旋回させる。
【0046】
以下、
図8のフローチャートも参照して、物品移載装置9を用いた対象物品2の移載の手順を説明する。始めに、初期化処理が実行され、後述するリトライカウンタやリトライ回数を含む種々のパラメータが初期化される(#01:初期化ステップ)。次に、移載対象の対象物品2の寸法や重量などの情報を含む物品情報F2、及び移載元や移載先の座標情報などを含む移載情報F1が取得される(#03:物品情報・移載情報取得ステップ)。そして、取得された物品情報F2に基づいてパッドパターン設定部71により、吸着ユニット5のパッドパターンが決定され、当該パッドパターンに対応する吸着パッド1の駆動パラメータとして当該パッドパターンが設定される(#05:パッドパターン決定ステップ)。また、物品情報F2に基づいて、スライド量設定部72により、吸着ブロック3をW方向及びL方向にスライドさせるスライド量が決定され、スライドアクチュエータの駆動パラメータとして当該スライド量が設定される(#07:スライド量決定ステップ)。
【0047】
パッドパターン及びスライド量が定まると、スライド制御部73は、設定されたスライドアクチュエータの駆動パラメータに基づいて吸着ブロック3を移動させ、移動制御部60は、移載情報F1に基づいて設定された移載ロボット10のアクチュエータ(旋回用アクチュエータ、昇降用アクチュエータ、回動用アクチュエータ)の駆動パラメータに基づいて、移載ロボット10の移動制御を実行する(#11:掴み制御ステップ)。移載ロボット10(吸着ユニット5)が掴み位置(移載元)に達すると、吸着制御部74は、設定されたパッドパターンによって規定された吸着パッド1に負圧を生じさせるように不図示のポンプやバルブの駆動制御を実行する(#13:吸着制御ステップ)。
【0048】
吸着制御が実行されると、
図7を参照して上述したように、吸着状態判定部75により吸着状態が判定される(#15:吸着状態判定ステップ)。ここで上述した安全率が、第2安全しきい値(例えば“5”)以上であれば、移動速度判定ステップ(#17)に移行する。一方、ステップ#15において、安全率が第2安全しきい値未満の場合には、吸着NGと判定され、リトライ処理が実行される(#50:リトライ処理実行ステップ)。
【0049】
ここで、リトライ処理について説明する。本実施形態では、リトライ処理は2サイクル行われる。ステップ#15において吸着NGと判定されると、リトライカウンタ(j;初期値“0”)が上限リトライ数(n;ここでは“2”)に達しているか否かが判定される(#51:リトライ可否判定ステップ)。ステップ#15において吸着NGと判定された回数が、上限リトライ数(n)に達している場合には、リトライによっても吸着NGが解消しないので根本的な問題があると判定して、吸着エラーとして移載処理を終了する。
【0050】
吸着NGと判定された回数が、上限リトライ数(n)に達していない場合には、リトライ制御条件を設定し(#53:リトライ制御条件設定ステップ)、リトライカウンタ(j)をインクリメントする(#55:リトライカウントステップ)。ここで、リトライ制御条件とは、例えば、吸着ユニット5を予め規定された調整量(例えば5[mm])だけ下降させる条件であり、昇降アクチュエータの駆動パラメータの調整量によって設定することができる。リトライ制御条件が設定されると、通常の移載処理と同様に、掴み制御ステップ(#11)、吸着制御ステップ(#13)、吸着状態判定ステップ(#15)が実行される。
【0051】
上述したように、吸着状態判定ステップ(#15)において安全率が第2安全しきい値(“5”)以上であれば、移動速度判定ステップ(#17)に移行する。移動速度判定ステップ(#17)において、安全率が第1安全しきい値(例えば“8”)以上であれば、高速動作条件を満たすと判定され、例えば初期化ステップ(#01)などによって設定された設定移動速度(例えば“第1移動速度”)で、移載ロボット10を卸し位置(移載先)へ移動させる制御が実行される(#21:卸し制御ステップ)。一方、移動速度判定ステップ(#17)において、安全率が第1安全しきい値未満であれば、高速動作条件を満たしていないと判定され、移動速度を設定移動速度よりも低い速度(例えば“第2移動速度”)に設定する(#19:移動速度変更ステップ)。卸し制御ステップ(#21)では、設定移動速度よりも低速で卸し制御が実行される。
【0052】
尚、卸し制御が実行されている際には、並行して吸着状態監視ステップ(#23)が実行される。具体的には、吸着状態判定ステップ(#15)、移動速度判定ステップ(#17)と同じような判定(しきい値や判定条件は異なっていてもよい)が実施され、例えば吸着状態が悪化した場合には移動速度を低速に変更する。また、全ての吸着パッド1が非吸着状態であると判定されたような場合(全ての真空スイッチ(圧力センサ15)がオフ状態となったような場合)には、移載途中で対象物品2を落下させたと判定して移載処理を終了する。当然ながら、エラー情報や、警告情報を出力するように構成されていてもよい。
【0053】
また、卸し制御が実行されている際には、並行して到着判定ステップ(#25)も実行される。対象物品2が卸し位置(移載先)に到着すると、吸着解除ステップ(#27)が実行される。つまり、吸着制御部74により、不図示のポンプやバルブを制御して、吸着が解除される。
【0054】
〔その他の実施形態〕
以下、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0055】
(1)上記の説明においては、全ての吸着ブロック3が、水平方向に沿って互いに接近及び離間する構成を例示した。しかし、
図9や
図10に例示するように、固定吸着ブロック3Fと、可動吸着ブロック3Mとを備えて吸着ユニット5が構成される形態であってもよい。
【0056】
(2)上記の説明においては、4つの吸着ブロック3が、水平方向に沿って互いに接近及び離間する構成を例示した。しかし、吸着ブロック3の個数は“4”に限定されるものではない。例えば、
図11に例示するように、8つの吸着ブロック3(可動吸着ブロック3M)により吸着ユニット5が構成されてもよい。
【0057】
(3)上記の説明においては、吸着状態判定部75が、全ての吸着ブロックのブロック別吸着状態の内、最も吸着力の小さい値を選択し、当該値が全てのブロック別吸着状態の値であると見なして、当該値に吸着ブロック数を乗じ、総吸着状態を演算する形態を例示した。しかし、最も吸着力の小さい値を選択することなく、各ブロック別吸着状態を合算して、総吸着状態を演算してもよい。
【0058】
(4)上記説明においては、対象物品2として直方体状の物品を例示したが、上面が平面状であれば直方体状に限らず、種々の形状の物品を対象物品2とすることができる。例えば、円柱状の物品を対象物品2とすることができる。