(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、絶縁形DC−DCコンバータに具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図3に示すように、絶縁形DC−DCコンバータ10は、フォワード形DC−DCコンバータであって、トランス11を備えている。トランス11は1次側巻線11aと2次側巻線11bを備えている。絶縁形DC−DCコンバータ10は自動車用であり、車両に搭載される。絶縁形DC−DCコンバータ10は、例えば、300ボルトを入力して12ボルトに降圧して出力する。
【0014】
1次側巻線11aの一方の端子は入力端子と接続され、入力端子はバッテリ12の正極端子と接続される。1次側巻線11aの他方の端子は1次側スイッチング素子14を介して接地されている。1次側スイッチング素子14としてパワーMOSFETが用いられている。
【0015】
入力端子とトランス11の1次側巻線11aとの間には平滑コンデンサ13の正極が接続され、平滑コンデンサ13の負極は接地されている。平滑コンデンサ13には電解コンデンサが使用される。平滑コンデンサ13によりトランス11の1次側電圧が平滑される。
【0016】
トランス11の2次側巻線11bの一端はダイオード16およびコイル18の直列回路を介して出力端子と接続されている。ダイオード16は、アノードが2次側巻線11b側、カソードが出力端子側となっている。トランス11の2次側巻線11bの他端は出力端子と接続されている。また、コンデンサ19が、コイル18と出力端子との間と、トランス11の2次側巻線11bの他端と出力端子との間に接続されている。トランス11の2次側巻線11bの他端とダイオード16のカソードとの間にはダイオード17が設けられている。ダイオード17は、アノードがトランス11の2次側巻線11b側、カソードがダイオード16のカソード側となっている。
【0017】
1次側スイッチング素子14のゲート端子に制御IC15が接続されている。制御IC15から1次側スイッチング素子14のゲート端子にパルス信号が出力され、このパルス信号により1次側スイッチング素子14がスイッチングされる。1次側スイッチング素子14がオンしているときに1次側の電源からエネルギーを2次側へ供給する。1次側スイッチング素子14がオフしているときにコイル18に溜め込んだエネルギーを出力へ放出する。詳しくは、直流電圧が平滑コンデンサ13を通してトランス11の1次側巻線11aに供給され、制御IC15により、1次側スイッチング素子14がオン/オフ制御され、このオン/オフ動作における、1次側スイッチング素子14のオン期間において1次側巻線11aに1次電流が流れ、トランス11の起電力で2次電流が流れる。1次側スイッチング素子14がオフしているときにコイル18の電流がコイル18の逆起電力でダイオードD17経由で出力に流れる。
【0018】
制御IC15には検出回路20が接続され、検出回路20により出力電圧Voutが検出される。検出回路20による出力電圧Voutの測定結果が制御IC15に送られる。制御IC15は検出回路20による出力電圧Voutの測定結果をフィードバック信号として出力電圧Voutが所望の一定値となるように1次側スイッチング素子14のデューティを制御する。
【0019】
第1の基板21に、トランス11の1次側巻線11a、平滑コンデンサ13、1次側スイッチング素子14、制御IC15、検出回路20が搭載されている。また、第2の基板22に、トランス11の2次側巻線11b、ダイオード16,17、コイル18、コンデンサ19が搭載されている。
【0020】
以下、トランス11を中心とした具体的構造について説明する。
図1,2および
図4に示すように、第1の基板50(
図3の第1の基板21に相当)と、第2の基板60(
図3の第2の基板22に相当)と、第1の基板50と第2の基板60との間に介在された絶縁シート70と、を備える。第1の基板50と第2の基板60とは重ねた状態で配されている。第1の基板50には、1次側巻線52(
図3の1次側巻線11aに相当)および1次側スイッチング素子53(
図3の1次側スイッチング素子14に相当)が実装されている。
図9,10に示すように、第2の基板60には、金属板(銅板)のパターンによる2次側巻線62(
図3の2次側巻線11bに相当)が実装されている。
【0021】
図10に示すように、1ターンの2次側巻線62は、「Ω」字状にパターニングされている。2次側巻線62に直線部65が一体的に形成され、直線部65は2次側巻線62の円環部の外周面から接線方向に直線的に延びている。
図4の1次側巻線52の引き出し線52cが
図10に示すように2次側巻線62の外形から離して第1の基板50に接続されており、これにより2次側巻線62と重ならないようになっている。また、
図4に示すように、1次側巻線52の引き出し線52cが第1の基板50に埋め込まれている。
【0022】
図4に示すように、第2の基板60は、金属板のパターン(62)の形成面とは反対の面(上面)に、放熱部材としてのアルミケース30に接続される金属板63が設けられている。金属板63が放熱経路となる。第1の基板50および第2の基板60にはコア40,41が通る貫通孔50a,60aが形成され、貫通孔50a,60aには絶縁性円筒材80が嵌め込まれている。絶縁性円筒材80は樹脂成形品よりなる。絶縁性円筒材80には鍔部81が一体形成され、鍔部81は絶縁性円筒材80の外周面から外径側に突設している。鍔部81は第1の基板50の上面に位置する。
【0023】
このようにして、トランスでは1次側巻線52と2次側巻線62を別々の基板(50,60)に実装し、トランス組み付けの時に重ねる構造としている。つまり、1次側スイッチング素子53、即ち、1次側パワー回路を搭載した絶縁基板51に1次側巻線52を実装するとともに、2次側巻線62を絶縁基板61に接着状態にてプレスして接合している。
【0024】
下側コア40は、長方形の板状をなしている。下側コア40は、突出部分のないI形状コアである。上側コア41は、長方形の板状をなし、水平方向に延設された本体部41aと、本体部41aの一方の面(下面)の中央部から突出する中央磁脚41bと、本体部41aの一方の面(下面)の端部から突設する両側磁脚41c,41dとからなる。中央磁脚41bは円柱状をなし、両側磁脚41c,41dは角柱状をなしている。
【0025】
図4に示すように、アルミケース30の上面にはコア嵌合凹部30aが形成されている。コア嵌合凹部30aに下側コア40が嵌め込まれる。
図1,4に示すように、下側コア40の上に上側コア41が配置され、下側コア40の上面と上側コア41の中央磁脚41bとが突き合わされる。また、下側コア40の上面と上側コア41の両側磁脚41c,41dとが突き合わされる。
【0026】
絶縁性円筒材80は上側コア41の中央磁脚41bに嵌め込まれる。
アルミケース30の上に第1の基板50が配置されている。第1の基板50の絶縁基板51には円形の貫通孔50aが形成され、貫通孔50aに絶縁性円筒材80が嵌っている。
【0027】
第1の基板50は、絶縁基板51に1次側スイッチング素子53のリードが貫通する状態ではんだ付けされている。箱型をなす1次側スイッチング素子53は上面に金属製押え板101が配置されている。金属製押え板101の一端部を貫通するねじSc4をアルミケース30に螺入することにより金属製押え板101の他端部により1次側スイッチング素子53がアルミケース30に押圧および支持されている。
【0028】
図4,13,14に示すように、第1の基板50の絶縁基板51の上面に上側巻回部52aが配置され、上側巻回部52aは、金属の断面円形の線材を渦巻状に成形したものである。この線材の表面は樹脂の絶縁材で被覆されており、絶縁が確保されている。上側巻回部52aは貫通孔50aの周囲に延設されている。
【0029】
上側巻回部52aの両端が引き出し線52c,52dであり、引き出し線52c,52dは、絶縁基板51を貫通している。絶縁基板51の下面には、
図15,16に示すように半円弧状の導体パターン52bが形成されている。これにより半ターン分の巻線が構成されている。導体パターン52bの一端と上側巻回部52aの一端の引き出し線52dとがはんだ付けされ、電気的に接続されている。また、導体パターン52bの他端が1次側巻線の引き出し部となっている。これにより、所定のターン数を有する1次側巻線52が構成されている。
【0030】
はんだ付けされた1次側スイッチング素子53と1次側巻線52とが絶縁基板51に形成した導体パターン(図示略)により電気的に接続されている。これにより、1次側スイッチング素子53と1次側巻線52をつなぐコネクタや接続端子が不要となる。
【0031】
図4,11,12に示すように、第1の基板50の上には絶縁シート70が配置されている。絶縁シート70で上から1次側巻線52の引き出し線52c(
図14参照)を含めた上側巻回部52aを覆っている。絶縁シート70には円形の貫通孔70aが形成され、貫通孔70aに絶縁性円筒材80が嵌っている。
【0032】
図4,5,6に示すように、絶縁シート70の上に第2の基板60が配置されている。
図7,8に示すように、第2の基板60の絶縁基板61には円形の貫通孔60aが形成され、貫通孔60aに絶縁性円筒材80が嵌っている。
【0033】
第2の基板60の絶縁基板61は、絶縁基板61を貫通するねじSc3をアルミケース30に螺入することによりアルミケース30に支持されている。
図9,10に示すように、絶縁基板61の下面に2次側巻線62が接合され、「Ω」字状にパターニングされた2次側巻線62が貫通孔60aの周囲に延設されている。
【0034】
また、
図5,6に示すように、絶縁基板61の上面には、下面の金属板(62,65)に対応するように金属板63,66,67が接合されている。これは、プレス時に絶縁基板61の下面側だけ金属板(銅板)があると撓んでしまい金属板の接着性能が劣るためであり、絶縁基板61の上下両面に金属板を配した状態でプレスにて接着することにより接着性が確保できる。金属板63は2次側巻線62の円環部に対応する部位63aと、直線部65に対応する部位63bを有する。金属板66,67は、2次側巻線62の直線部に対応しており、直線的に延びている。
【0035】
図4に示すように、第2の基板60の上に、金属板63と同様な形状の絶縁シート90が配置され、絶縁シート90および金属板63を貫通するねじSc2をアルミケース30に螺入することにより絶縁シート90および金属板63がアルミケース30に支持されている。
【0036】
図1,2,4に示すように、絶縁シート90の上には上側コア41が配置されている。上側コア41の上面に金属製押え板100が配置されている。金属製押え板100の一端部を貫通するねじSc1をアルミケース30に螺入することにより金属製押え板100の他端部によりコア40,41等がアルミケース30に押圧および支持されている。
【0037】
なお、アルミケース30と下側コア40、アルミケース30と第1の基板50、および、アルミケース30と金属板63とは図示しないシートにて絶縁されるとともに放熱可能となっている。
【0038】
次に、組み付け工程について説明する。
図4に示すようにアルミケース30を用意する。アルミケース30の上面には下側コア40が嵌るコア嵌合凹部30aが形成されている。そして、
図13,14に示すように、アルミケース30のコア嵌合凹部30aに下側コア40を嵌め込む。また、下側コア40の上に第1の基板50を配置する。さらに、第1の基板50の貫通孔50aに絶縁性円筒材80を嵌め込む。
【0039】
さらに、ねじSc4をアルミケース30に螺入して1次側スイッチング素子53を固定する。第1の基板50の上面には断面円形の金属の線材を渦巻状に成形した上側巻回部52aが配置されるとともに上側巻回部52aの両端の引き出し線52c,52dが絶縁基板51を貫通している。
【0040】
このとき、上側巻回部52a(線材)の両端の引き出し線52c,52dが絶縁基板51を貫通して固定されているので、線材が浮くことが防止できる。また、絶縁基板51の下面には
図15,16に示すように半円弧状の導体パターン52bが形成され、導体パターン52bの一端と上側巻回部52aの引き出し線52dとが電気的に接続されている。これにより、所定のターン数を有する1次側巻線52が構成されている。また、第1の基板50には1次側スイッチング素子53が実装され、1次側スイッチング素子53と1次側巻線52とが絶縁基板51に形成した導体パターン(図示略)により電気的に接続されている。
【0041】
引き続き、
図11,12に示すように、絶縁性円筒材80に絶縁シート70の貫通孔70aを嵌め込む。
さらに、
図5,6に示すように、絶縁性円筒材80に第2の基板60の貫通孔60aを嵌め込み、ねじSc3をアルミケース30に螺入して第2の基板60を固定する。この第2の基板60においては、
図7,8に示す絶縁基板61の下面に
図9,10に示すように2次側巻線62、即ち、パターニングした金属板が接合されている。また、
図5,6に示すように、絶縁基板61の上面には金属板63,66,67が接合されている。
【0042】
このように、下側コア40、絶縁性円筒材80により位置決めが容易な状態で2枚の基板(50,60)を重ねて配置でき、これによりトランスを容易に構成できる。また、絶縁シート70により、第1の基板50と第2の基板60とが絶縁される。
【0043】
そして、第2の基板60の上に絶縁シート90を配置してねじSc2をアルミケース30に螺入して絶縁シート90および第2の基板60の金属板63をアルミケース30に固定する。これにより金属板63とアルミケース30とが熱的に結合される。
【0044】
その後、
図1,2に示すように、絶縁シート90の上に上側コア41を配置する。このとき、上側コア41の中央磁脚41bを絶縁性円筒材80に嵌め込む。さらに、上側コア41の上に金属製押え板100を配置し、ねじSc1をアルミケース30に螺入して金属製押え板100によりコア40,41等を押さえて固定する。
【0045】
このようにして、絶縁形DC−DCコンバータにおけるトランス部分が組み立てられる。
次に、作用について説明する。
【0046】
図1,2,4において、1次側スイッチング素子53(
図3の1次側スイッチング素子14に相当)のスイッチング動作に伴いトランスの1次側巻線52、2次側巻線62に電流が流れて1次側巻線52、2次側巻線62が発熱する。1次側巻線52に発生する熱は第2の基板60の金属板63に至り、金属板63からアルミケース30に伝わり、アルミケース30から大気に逃がされる。また、2次側巻線62に発生する熱は第2の基板60の金属板63に至り、金属板63からアルミケース30に伝わり、アルミケース30から大気に逃がされる。また、金属板63は絶縁されており、2次側巻線62に電流が流れた時に金属板63には渦電流が流れない。
【0047】
さらに、基板50,60の貫通孔50a,60aには絶縁性円筒材80が嵌め込まれており、この絶縁性円筒材80により絶縁基板51の表面に沿う沿面距離について1次側巻線52からコア40,41への沿面距離を長くすることができ、これにより絶縁距離を確保している。
【0048】
このようにして、トランスの1次側巻線52、2次側巻線62の放熱性が確保されるとともに絶縁距離が確保されている。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0049】
(1)トランスの構成として、1次側巻線52および1次側スイッチング素子53が実装された第1の基板50と、金属板のパターンによる2次側巻線62が実装され、第1の基板50と重ねた状態で配された第2の基板60と、第1の基板50と第2の基板60との間に介在された絶縁シート70と、を備える。よって、1次側巻線52および1次側スイッチング素子53が実装された第1の基板50と、金属板のパターンによる2次側巻線62が実装された第2の基板60とが重ねられているので、1次側巻線52と1次側スイッチング素子53を容易に組み付けることができる。
【0050】
(2)1次側巻線52は、引き出し線52cが2次側巻線62の外形から離して第1の基板50に接続されており、2次側巻線62と重ならない。
(3)1次側巻線52は、引き出し線52cが第1の基板50に埋め込まれているので、1次側巻線52が浮きにくい。
【0051】
(4)第2の基板60は、金属板のパターン(62)の形成面とは反対の面に、アルミケース30に接続される金属板63が設けられている。よって、トランスの巻線の放熱性に優れている。
【0052】
(5)第1の基板50および第2の基板60にはコア40,41が通る貫通孔50a,60aが形成され、貫通孔50a,60aには絶縁性円筒材80が嵌め込まれている。よって、絶縁距離を確保することができる。
【0053】
(6)2枚の基板(50,60)がそれぞれ独立してアルミケース30に固定され、絶縁シート70が振動を吸収するので振動に対する耐久性に優れている。
(7)1次側巻線52を固定することができる。具体的には、第2の基板60等を第1の基板50に重ねて配置・固定したため、第1の基板50に実装されている1次側巻線52を上下から押えて固定することができる。
【0054】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・1次側スイッチング素子としてパワーMOSFET以外にも、例えばIGBT等を用いてもよい。
【0055】
・DC−DCコンバータに限ることなく他の機器のトランスに適用してもよい。