(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パッシベーション層には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの何れかからなり、前記第3層上に積層された第4層と、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの何れかからなり、前記第4層上に積層された第5層とが積層構成中に更に含まれ、
前記パッシベーション層に開設された前記孔には、内壁に沿って導電層が形成されており、
前記導電層は、前記パッシベーション層に開設された前記孔を介して、その一部が前記ゲート電極または前記ソース電極または前記ドレイン電極に電気的に接続されており、一部が前記第4層と前記第5層との間に介挿されている
請求項1または請求項2記載の薄膜トランジスタ装置。
前記第1準備膜を成膜する過程では、プラズマCVD法またはスパッタリング法により前記第1準備膜を成膜した後、ドライエア、あるいは酸素雰囲気中でアニール処理を施す
請求項14記載の薄膜トランジスタ装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本発明の態様]
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ装置(以下、「TFT装置」と記載する。)は、(i)基板と、(ii)ゲート電極と、(iii)ソース電極およびドレイン電極と、(iv)チャネル層と、(v)パッシベーション層とを備える。
【0017】
(ii)ゲート電極は、基板の上方に形成されている。
【0018】
(iii)ソース電極およびドレイン電極は、基板の上方であって、ゲート電極に対して間隔をあけ、且つ、互いの間に間隔をあけて設けられている。
【0019】
(iv)チャネル層は、ゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に挿設されている。
【0020】
(v)パッシベーション層は、ゲート電極、およびソース電極、およびドレイン電極、およびチャネル層の上方を覆うように設けられ、一部に層厚方向に挿通する孔が開設されてなる。
【0021】
ここで、チャネル層は、酸化物半導体材料からなる。また、パッシベーション層は、基板の側から第1層、第2層、および第3層を含む積層構成を有する。そして、パッシベーション層の第1層は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの何れかからなり、パッシベーション層の第2層は、アルミニウムの化合物(酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム)からなり、パッシベーション層の第3層は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの何れかからなる。
【0022】
上記態様に係るTFT装置では、チャネル層を酸化物半導体から形成することにより、大きな電子移動度を有し、優れた電気特性を有する。このため、温度の高低に依存せず、高い電子移動度が期待できる。
【0023】
また、パッシベーション層が第1層、第2層、および第3層を含む積層構成を有する。このうち、第2層がアルミニウムの化合物からなる層であるため、水分および水素の侵入を抑制(バリア)し、チャネル層の保護を図ることができる。
【0024】
また、本態様に係るTFT装置では、パッシベーション層を少なくとも上記3層を含む積層構成としているので、パッシベーション層への孔(コンタクト孔)の開設にあたり、歩留まりの低下を招き難い。即ち、パッシベーション層の第1層および第3層への孔の開設にはドライエッチング法を採用し、第2層への孔の開設にはウェットエッチング法を採用することができる。このとき、第1から第3の各層の下地となる層に対するエッチング選択比が大きく、オーバーエッチングをかけて各層のエッチングを完全に完了した状態でその下層のエッチングを開始することができる。
【0025】
従って、上記構成を採用することにより、酸化物半導体からなるチャネル層の劣化を抑制しながら、高い歩留まりでの生産が可能である。
【0026】
また、本発明の別態様に係るTFT装置は、上記態様において、 パッシベーション層の第1層が、ゲート電極またはソース電極またはドレイン電極の何れかの電極に接している。
【0027】
また、本発明の別態様に係るTFT装置は、上記態様において、 パッシベーション層の積層構成中に第4層が更に含まれている。パッシベーション層の第4層は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの何れかからなり、第3層上に積層されている。この構成において、パッシベーション層に開設された孔には内壁に沿って導電層が形成されており、導電層は、パッシベーション層に開設された孔を介して、その一部が上記何れかの電極(ゲート電極またはソース電極またはドレイン電極)に電気的に接続されている。
【0028】
また、本発明の別態様に係るTFT装置は、上記態様において、パッシベーション層の第3層および第4層は、ともに窒化シリコンからなり、第4層の窒化シリコンの密度が第3層の窒化シリコンの密度よりも低い。このように、第3層および第4層をともに窒化シリコンから形成することにより、防湿性の向上を図ることができる。さらに、第4層の窒化シリコンの密度を第3層の窒化シリコンの密度よりも低くすることにより、孔(コンタクト孔)のテーパ化を容易にすることができる。
【0029】
また、本発明の別態様に係るTFT装置は、上記態様において、ソース電極およびドレイン電極の少なくとも一方は、銅またはその合金材料を含み、パッシベーション層の第4層が、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなるとともに、その層厚が200[nm]以上であり、パッシベーション層の第3層が、酸化シリコンからなるとともに、その層厚が100[nm]以上である。この態様のように、第3層と第4層の各層厚を規定することにより、ソース電極およびドレイン電極と、パッシベーション層の上に形成される電極との間の耐圧をTFT装置として問題のないレベルとすることができる。
【0030】
また、本発明の別態様に係るTFT装置は、上記態様において、パッシベーション層には第3層上に順に積層された第4層および第5層を備える。第4層は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの何れかからなり、第5層も、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの何れかからなる。そして、パッシベーション層に開設された孔(コンタクト孔)には、内壁に沿って導電層が形成されており、導電層は、パッシベーション層に開設された孔(コンタクト孔)を介して、その一部がゲート電極またはソース電極またはドレイン電極に電気的に接続されており、一部が第4層と前記第5層との間に介挿されている。このように、パッシベーション層が第4層および第5層を含む構成とすれば、さらに防湿性の向上を図ることができる。
【0031】
また、本発明の別態様に係るTFT装置では、上記態様において、パッシベーション層の第1層が、ゲート電極またはソース電極またはドレイン電極の何れかの電極に対して、間に層間絶縁層を介して形成されている。
【0032】
また、本発明の別態様に係るTFT装置では、層間絶縁層に、パッシベーション層に開設された孔(コンタクト孔)に対して連通する孔が開設されており、層間絶縁層に開設された孔には内壁に沿って導電層が形成されており、導電層は、層間絶縁層に開設された孔を介して、その一部が上記何れかの電極に電気的に接続されており、一部が層間絶縁層と第1層との間に介挿されている。
【0033】
また、本発明の別態様に係るTFT装置では、上記態様において、パッシベーション層の第2層が、酸化アルミニウムからなる。このように、酸化アルミニウムからなる第2層は、水分および水素の侵入をバリアし、チャネル層を保護する優れたバリア性を備える。これにより、チャネル層の劣化が抑えられる。
【0034】
また、本発明の別態様に係るTFT装置では、上記態様において、パッシベーション層の第1層が酸化シリコンからなる。
【0035】
また、本発明の別態様に係るTFT装置では、パッシベーション層の層厚が1000nm以下、より好ましくは600[nm]以下である。このように、パッシベーション層の層厚を1000[nm]以下(より好ましくは600[nm]以下)とすることにより、生産効率の低下を抑えることができる。
【0036】
また、本発明の別態様に係るTFT装置では、ソース電極およびドレイン電極の少なくとも一方、銅またはその合金材料を含み(多層構造も含む)、パッシベーション層の第1層が、酸化シリコンからなるとともに、その層厚が200[nm]以上である。この態様のように、第1層の層厚を200[nm]以上とすることにより、パッシベーション層に開設された孔(コンタクト孔)を望む内壁に沿って形成された導電層(TFT装置の上部電極(ソース電極またはドレイン電極に接続された電極))に鬆が入ることを抑制することができる。よって、電気的な信頼性を高く維持することができる。
【0037】
本発明の一態様に係る表示装置は、上記の何れかの態様に係るTFT装置を備えることを特徴とする。これにより、当該態様に係る表示装置では、上記効果を奏することができる。
【0038】
また、本発明の別態様に係る表示装置では、基板の表面に沿って形成された複数の発光部を有し、複数の発光部の各々は、アノードおよびカソードと、アノードとカソードとの間に介挿された有機発光層とを有する。このように有機EL表示装置にも本発明の上記態様に係るTFT装置を適用することができる。
【0039】
なお、基板については、ガラスなどの材料を用いたものに限らず、樹脂などの材料を用いたフレキシブル基板を採用することもできる。
【0040】
本発明の一態様に係るTFT装置の製造方法は、(i)から(iv)の過程を経てTFT装置を製造する。
【0041】
(i) 基板の上方にゲート電極を形成する。
【0042】
(ii) ゲート電極の上方にチャネル層を形成する。
【0043】
(iii) チャネル層上に、互いの間に間隔をあけた状態でソース電極およびドレイン電極を形成する。
【0044】
(iv) チャネル層、およびゲート電極、およびソース電極、およびドレイン電極の上方を覆い、一部に層厚方向に挿通する孔が開設されてなるパッシベーション層を形成する。
【0045】
上記(ii)のチャネル層を形成する過程では、酸化物半導体材料を用いてチャネル層を形成する。
【0046】
上記(iv)のパッシベーション層を形成する過程では、
(iv−1) 酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの何れかの材料を用い、チャネル層、およびゲート電極、およびソース電極、およびドレイン電極の上方を覆う第1準備膜を成膜する。
【0047】
(iv−2) アルミニウムの化合物(酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム)を用い、第1準備膜上に第2準備膜を成膜する。
【0048】
(iv−3) 酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの何れかの材料を用い、第2準備膜上に第3準備膜を成膜する。
【0049】
(iv−4) 第3準備膜におけるパッシベーション層の孔(コンタクト孔)に相当する箇所に対し、ドライエッチング法を用いて当該第3準備膜を膜厚方向に挿通する孔を開設し、一部に孔が開設されてなる第3層を形成する。
【0050】
(iv−5) 第3層の孔の底部から露出する第2準備膜の表面に対し、ウェットエッチング法を用いて当該第2準備膜を膜厚方向に挿通する孔を開設し、一部に孔が開設されてなる第2層を形成する。
【0051】
(iv−6) 第2層の孔の底部から露出する第1準備膜の表面に対し、ドライエッチング法を用いて当該第1準備膜を膜厚方向に挿通する孔を開設し、一部に孔が開設されてなる第1層を形成する。
【0052】
上記態様に係るTFT装置の製造方法では、上記(ii)において、チャネル層を酸化物半導体から形成するので、大きな電子移動度を有し、優れた電気特性を有する。このため、温度の高低に依存せず、高い電子移動度が期待できるTFT装置を製造することが可能となる。
【0053】
また、上記(iv−1)から(iv−6)により、第1層、第2層、および第3層を含む積層構成を以ってパッシベーション層を形成する。このうち、第2準備膜をアルミニウムの化合物からなる層で形成するため、パッシベーション層における第2層により、水分および水素の侵入を抑制(バリア)し、チャネル層の保護を図ることができる。
【0054】
また、本態様に係るTFT装置の製造方法では、パッシベーション層の第1準備膜および第3準備膜への孔の開設にはドライエッチング法を採用し、第2準備膜への孔の開設にはウェットエッチング法を採用する((iv−4)から(iv−6))。このとき、第1準備膜から第3準備膜の各膜の下地となる膜に対するエッチング選択比が大きく、オーバーエッチングをかけて各膜のエッチングを完全に完了した状態でその下膜のエッチングを開始することができる。
【0055】
従って、上記方法を採用することにより、酸化物半導体からなるチャネル層の劣化を抑制しながら、高い歩留まりでの生産が可能である。
【0056】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、上記態様の(iv−1)において、プラズマCVD法またはスパッタリング法により第1準備膜を成膜した後、ドライエア、あるいは酸素雰囲気中でアニール処理を施す。第1準備膜の成膜に際して、チャネル層が形成された基板は、真空下におかれる。このため、チャネル層における酸化物半導体の酸素が欠損し、低抵抗化してしまう。
【0057】
これに対して、本態様に係る製造方法では、第1準備膜の成膜後に、ドライエア、あるいは酸素雰囲気下でアニール処理を施すことにより、高抵抗状態を維持することができる。
【0058】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、上記態様の第2準備膜を成膜する際において、酸化アルミニウムからなる第2準備膜を成膜する。
【0059】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、上記(iv−2)において、10[nm]以上100[nm]以下の範囲内の膜厚で第2準備膜を成膜する。10[nm]未満であると、水分および水素のバリア性が不足するおそれがあり、逆に、100[nm]よりも厚いと加工時間が長くなり、生産効率の低下を招く。
【0060】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、上記態様の(iv)において、1000[nm]以下、より好ましくは600[nm]以下の層厚でパッシベーション層を形成する。このように、パッシベーション層の層厚を1000[nm]以下(より好ましくは600[nm]以下)とすることにより、バリア性に優れたパッシベーション層を高い生産効率で形成することができる。
【0061】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、(iii)において、銅またはその合金を用い、ソース電極およびドレイン電極の少なくとも一方を形成し、パッシベーション層の第3準備膜を形成した後に300[℃]以下の温度でアニール処理を施す。これにより、チャネル層の高抵抗状態が維持され、また、Cu系材料を用い形成されるソース電極およびドレイン電極の少なくとも一方の変形を抑制することができる。
【0062】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、(iv−1)において、230[℃]以下の温度で酸化シリコンからなる第1準備膜を成膜する。このような低温成膜(230[℃]以下での成膜)を実行することにより、成膜時における下層のCu系材料からなる電極および配線が表面あれを生じ難くなり、第1層との高い密着性の確保、および優れた電極間コンタクト特性の維持を図ることができる。
【0063】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、(iv−1)において、SiH
4とN
2Oとの混合ガスであって、Ar希釈を行わないガスを用い、SiH
4の流量を、SiH
4/(SiH
4+N2O)<1.1[%]の条件を満足する流量とする。このように成膜時におけるSiH
4流量を絞ることにより、成膜時におけるチャネル層への水素(H)によるダメージを抑制することができる。
【0064】
また、Ar希釈を行わないこととしているので、Arによるチャネル層へのダメージも防止することができる。
【0065】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、(iv−1)において、200[nm]以上の膜厚で第1準備膜を成膜する。このような膜厚で第1準備膜を成膜することにより、パッシベーション層に開設された孔(コンタクト孔)を望む内壁に沿って形成された導電層(TFT装置のソース電極またはドレイン電極に接続された電極)へ鬆が入ることを抑制できる。よって、電気的信頼性の確保という観点から優れる。
【0066】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、(iv−1)において、600[nm]以下の膜厚で第1準備膜を成膜する。第1準備膜の膜厚については、チャネル層に対する第2層の固定電荷の影響を少なくできるというメリットはあるが、600[nm]を超える場合には、エッチングなどの時間増大という問題が生じる。よって、600[nm]とすることでタクトタイムの増加も抑制することができ、製造コストという観点から優位である。
【0067】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、(iv−2)の後であって、(iv−3)の前に、第2準備膜および第3準備膜の双方に接し、酸化シリコンからなる第4準備膜を成膜し((iv−7)とする。)、(iv−3)において、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる第3準備膜を成膜し、(iv−7)において、100[nm]以上の膜厚で第4準備膜を成膜し、(iv−3)において、200[nm]以上の膜厚で第3準備膜を成膜する。このような膜厚で第3準備膜と第4準備膜とを成膜することにより、ソース電極およびドレイン電極と、パッシベーション層の上に形成される電極または配線との間の耐圧を、TFT装置として実用上で優れたレベルに維持することが可能となる。
【0068】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、(iv−3)および(iv−7)において、290℃以上300℃未満の温度で成膜を実行する。このような温度での成膜を行うことにより、ソース電極およびドレイン電極に対するパッシベーション層の密着性を高く維持することができ、また、コンタクト孔周辺などでのパッシベーション層などの“膜浮き”を生じ難い。また、Cu系材料からなるソース電極およびドレイン電極の少なくとも一方のマイグレーションを抑制し、それら電極の変形を抑制することができる。よって、ソース電極およびドレイン電極と、パッシベーション層の上に形成される電極または配線との間の電気的な短絡の発生を抑制することができる。
【0069】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、(iv−3)において、SiH/NH≦0.10の関係を満たす窒化シリコンからなる第3準備膜を成膜する。このような構成を採用することにより、SiNから遊離した水素(H)によるチャネル層へのダメージ(還元)を抑制することができ、高い電気的特性を維持することができる。
【0070】
また、本発明の別態様に係るTFT装置の製造方法では、(iv−3)において、応力の絶対値が150[MPa]以下となるように、窒化シリコンからなる第3準備膜を成膜する。これにより基板の変形(反り)を抑制することができ、ローラコンベヤを備える既存生産設備を用いながら、高い生産性を維持することができる。
【0071】
[実施の形態1]
1.表示装置1の全体構成
以下では、本発明の実施の形態1に係る表示装置1の全体構成について、
図1を用い説明する。
【0072】
図1に示すように、本実施の形態に係る表示装置1は、表示パネル10と、これに接続された駆動制御回路部20とを有し構成されている。
【0073】
表示パネル10は、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)パネルであって、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状に配列され構成されている。駆動制御回路部20は、4つの駆動回路21〜24と制御回路25とにより構成されている。
【0074】
なお、表示装置1において、表示パネル10に対する駆動制御回路部20の各回路の配置形態については、
図1に示した形態に限定されない。
【0075】
2.表示パネル10における回路構成
表示パネル10における各サブピクセル10aの回路構成について、
図2を用い説明する。
【0076】
図2に示すように、本実施の形態に係る表示パネル10では、各サブピクセル10aが2つのトランジスタ素子部Tr
1,Tr
2と一つの容量C、および発光部としてのEL素子部ELとを有し構成されている。2つのトランジスタ素子部Tr
1,Tr
2のうちの一方のトランジスタ素子部Tr
1は、駆動トランジスタ素子部であり、他方のトランジスタ素子部Tr
2は、スイッチングトランジスタ素子部である。
【0077】
スイッチングトランジスタ素子部Tr
2のゲート電極G
2は、走査ラインVscnに接続され、ソース電極S
2は、データラインVdatに接続されている。スイッチングトランジスタ素子部Tr
2のドレイン電極D
2は、駆動トランジスタ素子部Tr
1のゲート電極G
1に接続されている。
【0078】
駆動トランジスタ素子部Tr
1のドレイン電極D
1は、電源ラインVaに接続されており、ソース電極S
1は、EL素子部ELのアノードに接続されている。EL素子部ELにおけるカソードは、接地ラインVcatに接続されている。
【0079】
なお、容量Cは、スイッチングトランジスタ素子部Tr
2のドレイン電極D
2および駆動トランジスタ素子部Tr
1のゲート電極G
1と、電源ラインVaとを結ぶように設けられている。
【0080】
表示パネル10においては、
図2に示すような回路構成を有するサブピクセル10aが、例えば、マトリクス状に設けられており、隣接する複数のサブピクセル10a(例えば、赤色(R)と緑色(G)と青色(B)の発光色の3つのサブピクセル10a)により一のピクセルを構成している。
【0081】
3.表示パネル10の構成
表示パネル10の構成について、
図3の模式断面図を用い説明する。
【0082】
本実施の形態に係る表示パネル10は、トップエミッション型の有機EL表示パネルであって、Z軸方向下方にTFT装置が構成され、その上にEL素子部が構成されている。
【0083】
(1)TFT装置
図3に示すように、基板100上には、ゲート電極101,102が互いに間隔をあけて形成され、ゲート電極101,102および基板100の表面を被覆するように、ゲート絶縁層103が形成されている。ゲート絶縁層103上には、ゲート電極101,102のそれぞれに対応してチャネル層104,105が形成されている。そして、チャネル層104,105およびゲート絶縁層103の表面を被覆するように、チャネル保護層106が形成されている。
【0084】
チャネル保護層106上には、ゲート電極101およびチャネル層104に対応して、ソース電極107およびドレイン電極108が互いに間隔をあけて形成され、同様に、ゲート電極102およびチャネル層105に対応して、ソース電極110およびドレイン電極109が互いに間隔をあけて形成されている。
【0085】
各ソース電極107,110および各ドレイン電極108,109の下部には、チャネル保護層106を挿通してソース下部電極111,115およびドレイン下部電極112,114が設けられている。ソース下部電極111およびドレイン下部電極112は、Z軸方向下部において、チャネル層104に接触し、ソース下部電極114およびドレイン下部電極115は、Z軸方向下部において、チャネル層105に接触している。
【0086】
また、ドレイン電極108とゲート電極102とは、ゲート絶縁層103およびチャネル保護層106を挿通して設けられたコンタクトプラグ113により接続されている。
【0087】
なお、ゲート電極101が
図2のゲート電極G
2に対応し、ソース電極107が
図2のソース電極S
2に対応し、ドレイン電極108が
図2のドレイン電極D
2に対応している。同様に、ゲート電極102が
図2のゲート電極G
1に対応し、ソース電極110が
図2のソース電極S
1に対応し、ドレイン電極109が
図2のドレイン電極D
1に対応している。よって、
図3におけるY軸方向左側にスイッチングトランジスタ素子部Tr
2が形成され、それよりもY軸方向右側に駆動トランジスタ素子部Tr
1が形成されている。ただし、各トランジスタ素子部Tr
1,Tr
2の配置形態については、これに限定されるものではない。
【0088】
ソース電極107,110およびドレイン電極108,109およびチャネル保護層106の上を被覆するように、パッシベーション層116が形成されている。パッシベーション層116には、ソース電極110の上方の一部にコンタクト孔が開設され、当該コンタクト孔の側壁に沿うように上部電極117が設けられている。
【0089】
上部電極117は、Z軸方向下部において、ソース電極110に接続され、上部の一部がパッシベーション層116の上に乗り上げた状態となっている。
【0090】
パッシベーション層116上には、層間絶縁層118が堆積されている。
【0091】
(2)EL素子部
層間絶縁層118上には、サブピクセル単位でアノード119が設けられている。アノード119は、層間絶縁層118における上部電極117の上方に開設されたコンタクト孔を通して、上部電極117に接続されている。
【0092】
アノード119上には、ホール注入層120が形成され、ホール注入層120の端縁を被覆するようにバンク121が形成されている。バンク121の囲繞により、各サブピクセル10aに対応する開口が形成されている。
【0093】
バンク121により規定された開口内には、Z軸方向下側から順に、ホール輸送層122、発光層123、および電子輸送層124が形成されている。ホール輸送層122は、Z軸方向下部において、ホール注入層120に接触している。
【0094】
電子輸送層124上およびバンク121上を被覆するように、カソード125および封止層126が順に積層形成されている。カソード125については、表示パネル10全体に連続した状態で形成され、ピクセル単位あるいは数ピクセル単位でバスバー配線に接続されている(図示を省略)。
【0095】
封止層126のZ軸方向上方には、Z軸方向下側の主面にカラーフィルタ層128および遮光層129が形成された基板130が配されており、接合層127により接合されている。
【0096】
(3)各部の構成材料
図3に示す各部の構成材料について、一例を示す。
【0097】
(i)基板100,130
基板100,130の構成材料としては、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素基などの半導体基板、プラスチック基板等を採用することができる。
【0098】
プラスチック基板としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルベンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、プリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、変形ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
【0099】
(ii)ゲート電極101,102
ゲート電極101,102としては、例えば、銅(Cu)とモリブデン(Mo)との積層体(Cu:200[nm]+Mo:20[nm])を採用している。ただし、ゲート電極101,102の構成については、これに限定されず、例えば、Cu、Cu/Wなどを採用することもできるし、次のような材料を採用することも可能である。
【0100】
それ以外に採用することが可能な材料としては、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、銀(Ag)、金(Au)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、ネオジム(Nd)などの金属もしくはそれらの合金、または、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ガリウムなどの導電性金属酸化物もしくは酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、酸化ガリウム亜鉛(GZO)などの導電性金属複合酸化物、または、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性高分子もしくはそれらに、塩酸、硫酸、スルホン酸などの酸、六フッ化リン、五フッ化ヒ素、塩化鉄などのルイス酸、ヨウ素などのハロゲン原子、ナトリウム、カリウムなどの金属原子などのドーパントを添加したもの、もしくは、カーボンブラックや金属粒子を分散した導電性の複合材料などが挙げられる。また、金属微粒子とグラファイトのような導電性粒子を含むポリマー混合物を用いてもよい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0101】
(iii)ゲート絶縁層103
ゲート絶縁層103としては、例えば、酸化シリコン(SiO)と窒化シリコン(SiN)との積層体(SiO:80[nm]+SiN:70[nm])を採用している。ただし、ゲート絶縁層103の構成は、これに限定されるものではなく、 ゲート絶縁層の構成材料としては、例えば、電気絶縁性を有する材料であれば、公知の有機材料や無機材料のいずれも用いることができる。
【0102】
有機材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂などを用い形成することができる。
【0103】
また、無機材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化コバルトなどの金属酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化セリウム、窒化亜鉛、窒化コバルト、窒化チタン、窒化タンタルなどの金属窒化物、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウムチタン酸鉛などの金属複合酸化物が挙げられる。これらは、1 種または2 種以上組み合わせて用いることができる。
【0104】
さらに、表面処理剤(ODTS OTS HMDS βPTS)などでその表面を処理したものも含まれる。
【0105】
(iv)チャネル層104,105
チャネル層104,105としては、アモルファス酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)からなる層厚が50[nm]の層を採用している。チャネル層104,105の構成材料は、これに限定されるものではなく、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)から選択される少なくとも一種を含む酸化物半導体を採用することができる。
【0106】
また、チャネル層104,105の層厚については、20[nm]〜200[nm]の範囲とすることができ、チャネル層104とチャネル層105とで互いに層厚が異なるように設定することもできる。
【0107】
(v)チャネル保護層106
チャネル保護層106としては、酸化シリコン(SiO)からなる層厚が130[nm]の層を採用している。チャネル保護層106の構成材料は、これに限定されるものではなく、例えば、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)、あるいは酸化アルミニウム(AlOx)を用いることができる。また、上記のような材料を用いた層を複数積層することで構成することもできる。
【0108】
また、チャネル保護層106の層厚については、50[nm]〜500[nm]の範囲とすることができる。
【0109】
(vi)ソース電極107,110、ドレイン電極108,109
ソース電極107,110、ドレイン電極108,109としては、銅マンガン(CuMn)と銅(Cu)とモリブデン(Mo)の積層体(CuMn:20[nm]+Cu:300[nm]+Mo:20[nm])を採用している。
【0110】
なお、ソース電極107,110、ドレイン電極108,109の層厚については、100[nm]〜500[nm]の範囲とすることができる。
【0111】
また、ソース下部電極111,115およびドレイン下部電極112,114についても、同様の材料を用い構成することができる。さらに、ソース電極107とソース下部電極111、ドレイン電極108とドレイン下部電極112、ドレイン電極109とドレイン下部電極114、ソース電極110とソース下部電極115とを、それぞれ一体形成することもできる。
【0112】
(vii)パッシベーション層116
本実施の形態に係る表示パネル10では、下部絶縁層1161、バリア層1162、および上部絶縁層1163がZ軸方向下側から順に積層されてなる積層構成を有する。
【0113】
下部絶縁層1161は、酸化シリコン(SiO)からなる層厚が100[nm]の層である。
【0114】
バリア層1162は、酸化アルミニウム(AlOx)からなる層厚が25[nm]の層である。
【0115】
上部絶縁層1163は、窒化シリコン(SiN)からなる層厚が360[nm]の層である。
【0116】
図3に示すように、バリア層1162は、下部絶縁層1161と上部絶縁層1163との間に介挿され、下部絶縁層1161は、ソース電極111,115およびドレイン電極112,114に接触している。
【0117】
ここで、酸化シリコンからなる下部絶縁層1161は、上記材料からなるソース電極107,110およびドレイン電極108,109との密着性に優れ、層中における水素の含有量が少ないことが望ましい。
【0118】
バリア層1162は、水分および水素の侵入を抑制し、酸化物半導体(IGZOなど)からなるチャネル層104,105の劣化を抑制する機能を有する。水分および水素の侵入を抑制するという機能を付与するために、バリア層1162の層密度については、2.80g/cm
3以上であることが望ましい。即ち、バリア層1162の層密度が2.80g/cm
3未満になると、水分および水素の侵入を抑制する機能が急激に低下し、チャネル層104,105の劣化(シート抵抗値の低下)が顕著になる。
【0119】
また、バリア層1162の層密度については、3.25g/cm
3以下とすることが望ましい。これは、上部電極117を形成するためのコンタクト孔を形成する際に、バリア層1162に対してはウェットエッチング法を用いるのであるが、層密度が3.25g/cm
3を超える範囲では、エッチングレートがきわめて小さく、生産効率という観点から3.25g/cm
3以下とすることが望ましい。
【0120】
なお、下部絶縁層1161については、上記材料の他、窒化シリコン(SiN)や酸窒化シリコン(SiON)を用いることができ、上部絶縁層1163については、上記材料の他、酸化シリコン(SiO)や酸窒化シリコン(SiON)を用いることもできる。
【0121】
また、パッシベーション層116の層厚に関しては、200[nm]〜1000[nm]の範囲とすることができ、600[nm]以下とすることが望ましい。
【0122】
(viii)上部電極117
上部電極117としては、銅(Cu)と酸化インジウムスズ(ITO)との積層体(Cu:300[nm]+ITO:70[nm])を採用している。なお、上部電極117の構成に用いる材料としては、これに限定されるものではなく、導電性を有する材料から適宜選択することが可能である。
【0123】
(ix)層間絶縁層118
層間絶縁層118は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル系樹脂材料などの有機化合物を用い形成されている。
【0124】
(x)アノード119
アノード119は、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含む金属材料から構成されている。トップエミッション型の本実施の形態に係る表示パネル10の場合には、その表面部が高い反射性を有することが好ましい。
【0125】
なお、アノード119については、上記のような金属材料からなる単層構造だけではなく、金属層と透明導電層との積層体を採用することもできる。透明導電層の構成材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いることができる。
【0126】
(xi)ホール注入層120
ホール注入層120は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。なお、
図3に示す本実施の形態に係る表示パネル10では、金属酸化物からなるホール注入層120を構成することを想定しているが、この場合には、PEDOTなどの導電性ポリマー材料を用いる場合に比べて、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層108に対しホールを注入する機能を有し、大きな仕事関数を有する。
【0127】
ここで、ホール注入層120を遷移金属の酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。特に、酸化タングステン(WO
X)を用いることが、ホールを安定的に注入し、且つ、ホールの生成を補助するという機能を有するという観点から望ましい。
【0128】
(xii)バンク121
バンク121は、樹脂等の有機材料を用い形成されており絶縁性を有する。バンク121の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。バンク121は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。さらに、バンク121は、製造工程中において、エッチング処理、ベーク処理など施されることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。また、表面に撥水性をもたせるために、表面をフッ素処理することもできる。
【0129】
なお、バンク121を親液性の材料を用い形成した場合には、バンク121の表面と発光層123の表面との親液性/撥液性の差異が小さくなり、発光層123を形成するために有機物質を含んだインクを、バンク121が規定する開口部内に選択的に保持させることが困難となってしまうためである。
【0130】
さらに、バンク121の構造については、
図3に示すような一層構造だけでなく、二層以上の多層構造を採用することもできる。この場合には、層毎に上記材料を組み合わせることもできるし、層毎に無機材料と有機材料とを用いることもできる。
【0131】
(xiii)ホール輸送層122
ホール輸送層122は、親水基を備えない高分子化合物を用い形成されている。例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどを用いることができる。
【0132】
(xiv)発光層123
発光層123は、上述のように、ホールと電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。発光層123の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用い製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
【0133】
具体的には、例えば、特許公開公報(日本国・特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0134】
(xv) 電子輸送層124
電子輸送層124は、カソード125から注入された電子を発光層123へ輸送する機能を有し、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。
【0135】
(xvi) カソード125
カソード125は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)若しくは酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用い形成される。本実施の形態のように、トップエミッション型の本実施の形態に係る表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが必要となる。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
【0136】
(xvii)封止層126
封止層126は、発光層123などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0137】
封止層126は、トップエミッション型である本実施の形態に係る表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが必要となる。
【0138】
4.表示パネル10の製造方法
表示パネル10の製造方法について、
図4から
図7を用い説明する。
【0139】
(1)ゲート電極101,102の形成
図4(a)に示すように、基板100のZ軸方向上側の表面100aに、互いに間隔をあけたゲート電極101,102を形成する。ゲート電極101,102の形成は、具体的に次のように行うことができる。
【0140】
先ず、基板100の表面100aに対して、メタルスパッタリング法を用いてCuからなる金属薄膜とMoからなる金属薄膜とを順に積層形成し、その上にホトリソグラフィー法を用いてレジストパターンを形成する。
【0141】
次に、ウェットエッチングを実施した後、レジストパターンを除去する。これにより、ゲート電極101,102の形成がなされる。
【0142】
(2)ゲート絶縁層1030およびチャネル層104,105の形成
図4(b)に示すように、ゲート電極101,102および基板100の表面を被覆するように、ゲート絶縁層1030を形成し、ゲート絶縁層1030の表面1030aに互いに間隔をあけたチャネル層104,105を形成する。
【0143】
ゲート絶縁層1030の形成は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法あるいはスパッタリング法を用い、SiOからなる層とSiNからなる層とを順に積層形成することでなされる。ゲート絶縁層1030の成膜条件は、例えば、成膜温度が300[℃]〜400[℃]である。
【0144】
また、チャネル層104,105の形成は、スパッタリング法を用い、酸化物半導体膜を形成し、ホトリソグラフィー法およびウェットエッチング法を用いてパターニングすることでなされる。
【0145】
(3)チャネル保護層1060の形成
図4(c)に示すように、チャネル層104,105およびゲート絶縁層1030の表面1030aを被覆するように、チャネル保護層1060を積層形成する。
【0146】
チャネル保護層1060の形成は、プラズマCVD法あるいはスパッタリング法を用い、SiOからなる層を積層形成し、成膜後にドライエアまたは酸素雰囲気下で、成膜温度以上の温度でアニール処理を実行することでなされる。チャネル保護層1060の成膜は、300[℃]以下の成膜温度で実施する。
【0147】
なお、アニール処理は、チャネル層104,105中の酸素欠陥を修復し、半導体特性を維持するためになされる。
【0148】
(4)ソース電極107,110およびドレイン電極108,109の形成
図4(c)、(d)に示すように、チャネル保護層1060の表面1060aに、ソース電極107,110およびドレイン電極108,109を形成する。また、ソース電極107,110およびドレイン電極107,110に各々に対応してソース下部電極111,115およびドレイン下部電極112,114およびコンタクトプラグ113を形成する。
【0149】
先ず、チャネル保護層1060の該当部分にコンタクト孔をあける。コンタクト孔の形成は、ホトリソグラフィー法を用いパターン形成した後、ドライエッチング法を用いエッチングを実行することでなされる。
【0150】
次に、スパッタリング法を用い、CuMnからなる金属薄膜と、Cuからなる金属薄膜と、Moからなる金属薄膜とを順に積層する。そして、ホトリソグラフィー法およびウェットエッチング法を用い、ソース電極107,110およびドレイン電極108,109をパターニング形成する。
【0151】
なお、チャネル保護層106へのソース下部電極111,115およびドレイン下部電極112,114およびコンタクトプラグ113については、金属薄膜の成膜に先行して形成しておいてもよいし、金属薄膜の成膜の際に形成することとしてもよい。
【0152】
(5)下部絶縁層11610およびバリア層11620および上部絶縁層11630の形成
図5(a)に示すように、ソース電極107,108およびドレイン電極108,109およびチャネル保護層106を被覆するように、下部絶縁層11610と、バリア層11620と、上部絶縁層11630とを順に積層形成する。
【0153】
下部絶縁層11610の形成は、プラズマCVD法あるいはスパッタリング法を用いて成膜した後、ドライエアあるいは酸素雰囲気下でアニール処理を行うことでなされる。チャネル層104,105については、成膜の際に真空下に置かれることにより酸素が欠損して低抵抗化するが、成膜後にアニール処理を施すことによりチャネル層104,105の高抵抗状態への回復がなされる。
【0154】
バリア層11620の形成は、CVD法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、あるいはスパッタリング法を用い成膜することでなされる。なお、バリア層11620の層厚については、100[nm]以下とすることが望ましい。これは、層厚が厚すぎると加工時間が長くなってしまうためである。
【0155】
上部絶縁層11630の形成は、プラズマCVD法あるいはスパッタリング法を用いなされる。
【0156】
(6)パッシベーション層116へのコンタクト孔116aの開設
図5(b)に示すように、パッシベーション層116におけるソース電極110上の箇所に、コンタクト孔116aを開設する。コンタクト孔116aは、その底部にソース電極110の表面110aが露出するように形成される。コンタクト孔116aの開設は、次のように実行される。
【0157】
図7(a)に示すように、ドライエッチング法を用い、上部絶縁層1163に孔1163aを開設する。孔1163aにおいては、その底部にバリア層11620の表面11620aが露出する。ドライエッチング条件は、例えば、次のような条件とすることができる。
【0158】
CF
4/O
2=1080/120[sccm]
Pressure=30[mTorr]
ICP/Bias=3000/3000[W]
次に、
図7(b)に示すように、ウェットエッチング法を用い、バリア層1162に孔1162aを開設する。孔1162aにおいては、その底部に下部絶縁層11610の表面11610aが露出する。ウェットエッチングは、PAN(リン酸/酢酸/硝酸)系エッチャントを用いた。
【0159】
次に、
図7(c)に示すように、ドライエッチング法を用い、下部絶縁層1161に孔を開設して、コンタクト孔116aを完成させる。上述のように、コンタクト孔116aにおいては、その底部にソース電極110の表面110aが露出する。ドライエッチング条件は、例えば、次のような条件とすることができる。
【0160】
CF
4/O
2=1080/120[sccm]
Pressure=30[Pa]
ICP/Bias=3000/3000[W]
以上のようにして、パッシベーション層116へのコンタクト孔116aの開設がなされる。
【0161】
(7)上部電極117および層間絶縁層118の形成
図5(c)に示すように、パッシベーション層116に開設されたコンタクト孔116aの内壁に沿って上部電極117を形成する。上部電極117の上部は、その一部が上部絶縁層1163上に配される。そして、上部電極117およびパッシベーション層116を被覆するように、層間絶縁層1180を積層形成する。
【0162】
上部電極117の形成は、スパッタリング法を用い、金属膜を成膜した後、ホトリソグラフィー法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることがなされる。
【0163】
また、層間絶縁層1180の形成は、上記有機材料を塗布し、表面を平坦化することによりなされる。
【0164】
(8)アノード119の形成
図5(d)に示すように、層間絶縁層1180における上部電極117上にコンタクト孔を開設し、アノード119を形成する。
【0165】
アノード119の形成は、スパッタリング法あるいは真空蒸着法などを用い金属膜を形成した後、ホトリソグラフィー法およびエッチング法を用いパターニングすることでなされる。なお、アノード119は、上部電極117と電気的に接続された状態となる。
【0166】
(9)ホール注入層120およびバンク121の形成
図6(a)に示すように、アノード119上に対して、ホール注入層120を形成し、その縁部を覆うようにバンク121を形成する。バンク121は、各サブピクセルを規定する開口121aを囲繞し、その底部にホール注入層120の表面120aが露出するように設けられる。
【0167】
ホール注入層120は、スパッタリング法を用い酸化金属(例えば、酸化タングステン)からなる膜を形成した後、ホトリソグラフィー法およびエッチング法を用い各サブピクセル単位にパターニングすることで形成される。
【0168】
バンク121の形成は、先ず、ホール注入層120上に、スピンコート法などを用い、バンク121の構成材料(例えば、感光性樹脂材料)からなる膜を積層形成する。そして、樹脂膜をパターニングして開口121aを開設する。開口部121aの形成は、樹脂膜の上方にマスクを配して露光し、その後で現像することによりなされる。
【0169】
(10)ホール輸送層122、発光層123、および電子輸送層124の形成
図6(b)に示すように、バンク121で規定された各開口部121a内に、ホール注入層120側から順に、ホール輸送層122、発光層123、および電子輸送層124を積層形成する。
【0170】
ホール輸送層122の形成は、印刷法を用い、構成材料を含むインクをバンク121により規定される開口部121a内に塗布した後、焼成することによりなされる。同様に、発光層123についても、印刷法を用い、構成材料を含むインクをホール輸送層122の上に塗布した後、焼成することにより形成される。
【0171】
(11)カソード125および封止層126の形成
図6(b)、(c)に示すように、電子輸送層123およびバンク121の頂部121bを被覆するように、カソード125および封止層126を順に積層形成する。
【0172】
カソード125および封止層126は、スパッタリング法などを用い形成できる。
【0173】
この後、カラーフィルタ−層1128などが形成された基板130を、接合層127を間に介挿して張り合わせ表示パネル10が完成する。
【0174】
5.効果
本実施の形態に係る表示パネル10が備えるTFT装置では、チャネル層104,105が酸化物半導体(IGZO)から形成されているので、大きな電子移動度を有し、優れた電気特性を有する。このため、温度の高低に依存せず、高い電子移動度が期待できる。
【0175】
また、表示パネル10が備えるTFT装置では、パッシベーション層116が第1層としての下部絶縁層1161、第2層としてのバリア層1162、および第3層としての上部絶縁層1163からなる積層構成を有する。このうち、バリア層1162が酸化アルミニウムからなる層であるため、水分および水素の侵入を抑制(バリア)し、IGZOからなるチャネル層104,105の保護(劣化抑制)を図ることができる。
【0176】
また、本実施の形態に係る表示パネル10が備えるTFT装置では、パッシベーション層116を少なくともバリア層1162の上下を下部絶縁層1161および上部絶縁層1163で挟んでなる積層構成としているので、パッシベーション層116へのコンタクト孔116aの開設にあたり、歩留まりの低下を招き難い。即ち、パッシベーション層116の下部絶縁層1161および上部絶縁層1163への孔の開設にはドライエッチング法を採用し、バリア層1162への孔の開設にはウェットエッチング法を採用することができる(
図7(a)、(b)、(c)を参照)。このとき、各層1161〜1163の各々のエッチングの際に、下地となる層に対するエッチング選択比が大きく、オーバーエッチングをかけて各層1161〜1163のエッチングを完全に完了した状態でその下層のエッチングを開始することができる。
【0177】
従って、上記構成を採用することにより、IGZOからなるチャネル層104,105の劣化を抑制しながら、高い歩留まりでの生産が可能である。
【0178】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係る表示パネル30の構成について、
図8を用い説明する。
図8では、表示パネル30の一部構成だけを抜き出して図示しており、図示を省略している部分の構成については、上記実施の形態1に係る表示パネル10と同一構成を採用している。また、
図8においても、上記実施の形態1に係る表示パネル10と同一構成の部位については、同一の符号を付している。
【0179】
図8に示すように、本実施の形態に係る表示パネル30では、ソース電極107,110およびドレイン電極108,109およびチャネル保護層106を被覆するように、層間絶縁層331が形成されており、パッシベーション層316は、その上に形成されている。ソース電極110に接続される上部電極317は、層間絶縁層331に開設されたコンタクト孔の内壁に沿って形成されており、上部の一部が層間絶縁層331とパッシベーション層316との間の境界部分に介挿されている。
【0180】
本実施の形態においても、パッシベーション層316は、Z軸方向下側から順に、下部絶縁層3161、バリア層3162、および上部絶縁層3163が積層されてなる積層構成を有し、バリア層3162がアルミニウムの化合物からなる層(例えば、酸化アルミニウムからなる層)で構成されている。また、下部絶縁層3161および上部絶縁層3163は、それぞれ酸化シリコン、窒化シリコン、あるいは酸窒化シリコンからなる。
【0181】
パッシベーション層316の上には、層間絶縁層318を介してアノード319が形成されている。アノード319は、層間絶縁層318およびパッシベーション層316に開設されたコンタクト孔を介して上部電極317に電気的に接続されている。
【0182】
本実施の形態に係る表示パネル30が備えるTFT装置でも、チャネル層104,105が酸化物半導体(IGZO)から形成されているので、大きな電子移動度を有し、優れた電気特性を有する。このため、温度の高低に依存せず、高い電子移動度が期待できる。
【0183】
また、表示パネル30が備えるTFT装置でも、パッシベーション層316が、酸化アルミニウムなどのアルミニウムの化合物からなるバリア層3162を有するため、水分および水素の侵入を抑制(バリア)し、IGZOからなるチャネル層104,105の保護(劣化抑制)を図ることができる。
【0184】
また、本実施の形態に係る表示パネル30が備えるTFT装置でも、パッシベーション層316を上記同様の積層構成としているので、パッシベーション層316へのコンタクト孔の開設にあたり、歩留まりの低下を招き難い。
【0185】
従って、上記構成を採用することにより、IGZOからなるチャネル層104,105の劣化を抑制しながら、高い歩留まりでの生産が可能である。
【0186】
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3に係る表示パネル50の構成について、
図9を用い説明する。
図9においても、表示パネル50の一部構成だけを抜き出して図示しており、図示を省略している部分の構成については、上記実施の形態1に係る表示パネル10と同一構成を採用している。また、
図9においても、上記実施の形態1に係る表示パネル10と同一構成の部位については、同一の符号を付している。
【0187】
図9に示すように、本実施の形態に係る表示パネル50では、ソース電極107,110およびドレイン電極108,109およびチャネル保護層106を被覆するように形成されたパッシベーション層516が、5層構成を有している。具体的には、Z軸方向下側から順に、SiOからなる下部絶縁層5161、アルミニウムの化合物(例えば、AlOx)からなるバリア層5162、SiOからなる上部絶縁層5163、SiNからなる上部絶縁層5164、およびSiNからなる上部絶縁層5165の積層構成を有する。
【0188】
上部電極517は、下部絶縁層5161、バリア層5162、上部絶縁層5163、および上部絶縁層5164に開設されたコンタクト孔の内壁に沿って形成され、上部の一部が上部絶縁層5164と上部絶縁層5165との間に界面部分に介挿されている。
【0189】
パッシベーション層516上には、層間絶縁層518を介してアノード519が形成されており、アノード519は、層間絶縁層518および上部絶縁層5165に開設されたコンタクト孔を通り上部電極517に電気的に接続されている。
【0190】
本実施の形態に係るTFT装置の構成では、上記実施の形態1,2と同様の効果を得ることができるとともに、更になる防湿性の向上を図ることができる。即ち、上部電極517の上にもSiNからなる上部絶縁層5165を積層することで、一層の防湿性向上を図ることができる。
【0191】
[実施の形態4]
本発明の実施の形態4に係る表示パネル70の構成について、
図10を用い説明する。
図10においても、表示パネル70の一部構成だけを抜き出して図示しており、図示を省略している部分の構成については、上記実施の形態1に係る表示パネル10と同一構成を採用している。また、
図10においても、上記実施の形態1に係る表示パネル10と同一構成の部位については、同一の符号を付している。
【0192】
図10に示すように、本実施の形態に係る表示パネル70では、ソース電極107,110およびドレイン電極108,109およびチャネル保護層106を被覆するように形成されたパッシベーション層716が、4層構成を有している。具体的には、Z軸方向下側から順に、SiOからなる下部絶縁層7161、アルミニウムの化合物(例えば、AlOx)からなるバリア層7162、SiNからなる上部絶縁層7163、SiNからなる上部絶縁層7164の積層構成を有する。
【0193】
本実施の形態に係るTFT装置では、上部絶縁層7164の密度が、上部絶縁層7163の密度よりも低くなっており、これによりコンタクト孔の開設に際してのテーパ化が容易となっている。
【0194】
上部電極717は、下部絶縁層7161、バリア層7162、上部絶縁層7163に開設されたコンタクト孔を望む内壁に沿って形成され、上部の一部が上部絶縁層7164と層間絶縁層718との間に界面部分に介挿されている。
【0195】
パッシベーション層716上には、層間絶縁層718を介してアノード719が形成されており、アノード719と上部電極717との接続形態については、上記同様である。
【0196】
本実施の形態に係るTFT装置の構成では、上記実施の形態1,2,3と同様の効果を得ることができる。
【0197】
[実施の形態5]
1.構成
本発明の実施の形態5に係る表示パネル80の構成について、
図11を用い説明する。
図11においても、表示パネル80の一部構成だけを抜き出して図示しており、図示を省略している部分の構成については、上記実施の形態1に係る表示パネル10と同一構成を採用している。また、
図11においても、上記実施の形態1に係る表示パネル10と同一構成の部位については、同一の符号を付している。
【0198】
図11に示すように、本実施の形態に係る表示パネル80では、上記実施の形態1〜4に対して、各電極802,809,810,814,815,817の構成材料が異なっている。具体的には、ゲート電極802は、基板100の側(Z軸方向下側)から、モリブデン(Mo)と銅(Cu)とが順に積層された積層構造を有する。
【0199】
ソース電極810、ドレイン電極809、ソース下部電極815、およびドレイン下部電極814は、それぞれが基板100の側(Z軸方向下側)から、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、およびマンガン−銅(CuMn)が順に積層されてなる積層構造を有する。
【0200】
また、上部電極817は、基板100の側(Z軸方向下側)から、酸化インジウムスズ(ITO)、モリブデン(Mo)、および銅(Cu)が順に積層されてなる積層構造を有する。即ち、本実施の形態に係る表示パネル80では、TFT層における電極および配線が、Cu系材料を用い形成されている。これは、電気抵抗の低いCu系材料を電極および配線の材料として用いることにより、パネルの大型化によって配線帳が増大した場合にも、電圧パルスの伝搬遅れを抑制することができ、画像表示ムラの抑制を可能とするためである。なお、配線抵抗に関しては、次の文献を参考とすることができる。
【0201】
(参考文献) 「P-33:Cu−Mn Electrodes for a-Si TFT and Its Electrical Characteristics」、Juniichi Koike等、SID Symposium Digest of Technical Paper Volume 41、Issue 1、pages 1343−1346.May 2010、
各電極802,809,810,817の構成材料および層厚の一例を示しておく。
・ゲート電極802 Cu/Mo=200[nm]/20[nm]
・ソース電極810・ドレイン電極809 CuMn/Cu/Mo=20[nm]/300[ nm]/20[nm]
・上部電極817 Cu/Mo/ITO=300[nm]/30[nm]/70[nm]
次に、本実施の形態に係る表示パネル80では、TFT層におけるパッシベーション層816が、基板100の側(Z軸方向下側)から、下部絶縁層8161、バリア層8162、および上部絶縁層8163が順に積層された積層構造を有する。下部絶縁層8161は酸化シリコン(SiO)からなり、バリア層8162は酸化アルミニウム(AlOx)からなる。また、上部絶縁層8163は、基板100の側(Z軸方向下側)から、酸化シリコン(SiO)および窒化シリコン(SiN)が順に積層された積層構造を有する。
2.パッシベーション層816を構成する各層8161〜8163の層厚およびプロセス条件
上記のように、本実施の形態に係る表示パネル80においては、TFT層における各電極802,809,810,814,815,817についてCu系材料を用い構成するのであるが、このためにTFT層におけるパッシベーション層816の下部絶縁層8161および上部絶縁層8163の層厚およびプロセス条件を規定することが必要である。以下では、構成層ごとに説明する。
(1)下部絶縁層8161
(i)層厚
下部絶縁層8161の層厚については、200[nm]以上確保することが望ましい。
【0202】
図12(a)に示すように、下部絶縁層の層厚を50[nm]とした場合にはコンタクト孔底のコーナー部分において、上部電極に鬆が入ってしまう。本発明者等の確認によると、下部絶縁層の層厚を50[nm]とした場合には、120[nm]の鬆が入った。同様に、
図12(b)に示すように、下部絶縁層の層厚を100[nm]とした場合にも、上部電極に鬆が入った。この場合の鬆の長さは、60[nm]であった。
【0203】
一方、
図12(c)に示すように、下部絶縁層の層厚を200[nm]とした場合には、上部電極に鬆が入ることはなかった。
【0204】
本発明者等は、上記のように、下部絶縁層の層厚と上部電極への鬆が入るか否かに相関があることを見出したが、そのメカニズムについて検討した。これについて、
図13を用い説明する。
【0205】
図13(a)、(b)に示すように、スパッタリング法を用い上部電極を成膜しようとするときには、矢印で示すような金属粒子の飛行経路を有する。そして、成膜をして行くとき、下部絶縁層8661におけるコンタクト孔を望む側壁8661aに対しては、コンタクト孔の深さ方向(Z軸方向)の中央部分に金属粒子が集まる。これは、側壁8661aに付着した金属粒子のマイグレーションによるものである。これより、
図13(a)に示すように、側壁8661aの中央部での金属の堆積が進み、矢印Aで指し示す側壁8661aの下部(コーナー部分)への金属粒子の飛行経路が遮られてしまう。下部絶縁層8661の層厚が薄い場合に生じる上部電極の鬆は、このように発生するものと考えられる。
【0206】
一方、
図13(b)に示すように、層厚を200[nm]以上とした下部絶縁層8161を採用する場合には、コンタクト孔を望む側壁8161aのZ軸方向高さも高くなる。このため、側壁8161aの中央部分での金属粒子の堆積が同様に進んだ場合にあっても、金属粒子の飛行経路が遮られてしまうことがない。よって、下部絶縁層8161の層厚を200[nm]以上確保した場合には、上部電極に鬆が入らないと考えられる。
【0207】
以上より、デバイスとしての機能を保証するという観点から、下部絶縁層8161の層厚を200[nm]以上とすることが望ましい。
【0208】
なお、上部電極817への鬆の発生を抑制するという観点からは、下部絶縁層8161の層厚は200[nm]以上確保すれば、厚いほうがよいといえる。また、チャネル層104,105に対する、バリア層8162の層中、およびバリア層8162を挟んでいる層との界面に発生する固定電荷の影響を抑制するという観点からも厚いほうがよい。
【0209】
しかしながら、下部絶縁層8161の層厚を厚くしようとすると、それだけ成膜およびコンタクト孔の開設などのために時間を要することになる。よって、製造コストの低減という観点からは、下部絶縁層8161の層厚を600[nm]以下とすることが望ましい。
【0210】
(ii)成膜条件
《温度》 成膜温度については、230[℃]以下とすることが望ましい。これは、仮に230[℃]よりも高い高温成膜を行った場合には、ソース電極810およびドレイン電極809のそれぞれのCuMn中のMnが析出してしまい、ソース電極810およびドレイン電極809の表面があれるためである。そして、ソース電極810およびドレイン電極809の表面があれた場合には、下部絶縁層8161との密着性が悪化し、また、上部電極817とのコンタクト特性も悪化する。以上より、下部絶縁層8161の成膜温度は、230[℃]以下とすることが望ましい。
【0211】
《ガス》 用いるガスについては、亜酸化窒素ガス(N
2O)のアルゴンガス(Ar)での希釈を行わないことが望ましい。一般に、コスト低減のためにN
2OをArで希釈することが行われている。
【0212】
しかし、Arを採用した場合には、成膜時における高エネルギAr衝突により、Arがチャネル保護層106を貫通してチャネル層105に到達し、チャネル層105にダメージを与える。
【0213】
また、シランガス(SiH
4)の流量については、SiH
4/(SiH
4+N
2O)<1.1[%]の関係を充足するように規定することが望ましい。これは、SiH
4の流量を絞り、下部絶縁層8161中の水素(H)量、および成膜時における水素(H)によるダメージを低減するためである。
【0214】
《コンタクト孔加工》 コンタクト孔加工は、CF
4/O
2ガス系によるテーパーエッチングおよびエッチングで実行する。これについては、上記実施の形態1の記載を参照。
(2)上部絶縁層8163
(i)層厚
上述のように、本実施の形態に係るパッシベーション層816では、上部絶縁層8163が基板100の側から、SiO層とSiN層が順に積層されてなる積層構造を採用している。上部絶縁層8163におけるSiO層の層厚は、100[nm]以上であって、SiN層の層厚は、200[nm]以上であることが望ましい。これは、ソース電極810・ドレイン電極809と上部電極817間における耐圧200[V]以上を確保するという観点からである。
【0215】
本発明者等は、上部絶縁層におけるSiO層の層厚とSiN層の層厚との組み合わせについて、4種類のサンプルを作製し、ソース電極・ドレイン電極と上部電極との間での耐圧を測定した。その結果を
図14(a)〜(d)に示す。なお、本測定に用いたSiO層およびSiN層は、290[℃]の成膜温度で成膜したものである。成膜温度を変えた場合には、各層の膜質も変わるため、各層の層厚と耐圧との関係も変わることを予め断っておく。
【0216】
(a)SiN層なし
SiO層=260[nm]
(b)SiN層=100[nm]
SiO層=100[nm]
(c)SiN層=100[nm]
SiO層=200[nm]
(d)SiN層=200[nm]
SiO層=100[nm]
なお、耐圧の測定に際しては、パネル内の8か所の測定点におけるリーク電流の測定を行った。
【0217】
図14(a)に示すように、上部絶縁層をSiO層のみから構成した場合には、耐圧が40[V]以下となった。
図14(b)、(c)に示すように、上部絶縁層をSiN層とSiO層との積層構造とした場合には、それぞれの耐圧が60[V]以上、80[V]以上となった。
【0218】
一方、
図14(d)に示すように、上部絶縁層におけるSiN層の層厚を200[nm]とし、SiO層の層厚を100[nm]とした場合には、耐圧が200[V]以上となり、大型パネルを想定する場合においても十分な耐圧性能を確保することができる。
【0219】
ここで、
図15に示すように、パッシベーション層816を構成する各層8161〜8163の層厚t1〜t3は、例えば、次のように規定される。
【0220】
下部絶縁層(SiO層)8161/t
1=200[nm]
バリア層(AlOx層)8162/t
2=30[nm]
上部絶縁層(SiN層/SiO層)8163/t
3≧300[nm](SiN層の層厚が200[nm]以上で、SiO層の層厚が100[nm]以上)
上記において、下部絶縁層8161は、SiOから構成されているため、且つ、低温(<230[℃])で成膜する必要があり、これより高品質の膜を形成することができず、パッシベーション層816の耐圧に対して大きくは寄与しない。また、バリア層8162については、その層厚が30[nm]と極薄いため、同様にパッシベーション層816の耐圧には大きくは寄与しない。
【0221】
一方、
図14(d)に示すように、上部絶縁層8163のSiN層の層厚は、パッシベーション層816の耐圧に大きく寄与する。よって、パッシベーション層816における上部絶縁層8163、特にSiN層の層厚については、耐圧の確保という観点から200[nm]以上確保することが望ましい。
【0222】
(ii)成膜条件
《温度》 成膜温度については、230[℃]よりも高く、300[℃]未満であることが望ましい。これは、パッシベーション層816におけるバリア層8162と上部絶縁層8163との密着性の観点、およびソース電極810・ドレイン電極809の変形抑制の観点の両方を考慮するためである。
【0223】
先ず、バリア層8162と上部絶縁層8163との密着性についての測定結果を、
図16(a)、(b)を用い説明する。
図16(a)は、230[℃]の成膜温度の場合、
図16(b)は、290[℃]の成膜温度の場合の、それぞれにおけるバリア層8162と上部絶縁層8163との間の“膜浮”の発生の有無を示すコンタクト孔形成後における顕微鏡写真である。成膜温度以外の成膜条件は、次の通りである。
【0224】
・下部絶縁層8161:SiO=200[nm]、230[℃]成膜
・バリア層8162:AlOx=30[nm]、室温成膜
・上部絶縁層8163:SiN/SiO=200[nm]/100[nm]
・上部絶縁層8163形成後のアニール:300[℃]、1[hr.]、ドライエア雰囲気下
なお、本実施の形態では、上部絶縁層8163の形成後にアニール処理を実施する。これは、酸化シリコン、窒化シリコン、または酸窒化シリコン、あるいはそれらの積層膜で構成される膜の成膜中においては、基板が真空化におかれる。このため、酸化物半導体からなるチャネル層105の酸素が欠損し、低抵抗化するが、上部絶縁層8163の形成後にアニールを実行することにより、チャネル層105の高抵抗状態を維持できるためである。また、下層に形成された各電極802,809,810などの変形を防ぐこともできるためである。
【0225】
図16(a)に示すように、成膜温度を230[℃]とした場合には、コンタクト孔の形成後において、バリア層と上部絶縁層との間に膜浮が発生する確率が高くなる。
図16(a)におけるコンタクト孔回りの白くなった部分が膜浮を生じた個所である。
【0226】
一方、
図16(b)に示すように、成膜温度を290[℃]とした場合には、コンタクト孔の形成後においても、バリア層8162と上部絶縁層8163との間での膜浮の発生はなかった。
【0227】
なお、図では示していないが、成膜温度を230[℃]よりも高くした場合には、膜浮の発生確率は低いものとなることを確認している。特に、成膜温度を250[℃]以上とすれば、実用的に問題を生じないレベルとすることができる。
【0228】
次に、成膜温度を300[℃]以上とした場合の問題点について、
図17を用い説明する。
【0229】
図17は、300[℃]の温度で上部絶縁層を成膜した場合の、顕微鏡写真である。
図17に示すように、300[℃]の温度で成膜した場合には、ソース電極およびドレイン電極におけるCuがマイグレーションを起こして変形する(Cu変形部)。これにより、変形したCuがパッシベーション層を突き破り、その上に形成される上部電極と短絡を生じることになる。
【0230】
以上より、パッシベーション層816における上部絶縁層8163の成膜温度は、300[℃]未満とすることが望ましい。
【0231】
(iii)上部絶縁層におけるSiN層の膜質および層厚と、チャネル層105の抵抗との関係
本実施の形態では、パネルの大型化にも対応できるように、配線抵抗を低く抑えるために各電極802,809,810,814,815,817の構成材料としてCu系の材料を用いている。このようにCu系の材料を用い各電極802,809,810,814,815,817の形成を行った場合には、その中の水素(H)の拡散係数が大きいという問題がある。具体的には、300[℃]での水素(H)の拡散係数は、〜10
-6[cm
2/s]であって、同温度条件下におけるMo中の水素(H)の拡散係数〜10
-7[cm
2/s]と比べて一桁大きい。このように、電極中のCuを伝搬してチャネル層105に水素(H)が到達した場合には、チャネル層105のキャリア濃度が上昇し、抵抗を低下させることとなる。よって、トランジスタのVthをマイナス側へとシフトさせる結果を招く。このような水素(H)伝搬に関するメカニズムについては、例えば、次のような文献を参考とすることができる。
【0232】
(参考文献)「Diffusion of Hydrogen in Materials」、H.Wipf、Topics in Applied Physics、Vol.73、Springer−Verlag Berlin Heidelberg 1997
上部絶縁層におけるSiN層からは、コンタクト孔の形成の後に種々の熱処理の実行により水素(H)が脱離し拡散する。そして、拡散した水素(H)は、コンタクト孔を望む側壁に沿って形成されたCu系の電極などを伝搬してチャネル層まで到達してしまうことがある。このような水素(H)の伝搬メカニズムについて、2つの具体的を用い説明する。
【0233】
先ず、一つ目の例は、
図18(a)に示すように、パッシベーション層826が4層8261〜8264から構成され、Z軸方向上部の上部絶縁層8264がSiNからなる。パッシベーション層826に対してコンタクト孔826aを開設し、当該部分に上部電極の一部としてのITO層827を形成する。ここで、ITO層827に対しては、それよりも上層の層を積層する前の段階で結晶化工程を実行することが必要となり、当該工程で熱処理が実行されることになる。
【0234】
ITO層827の結晶化工程での熱処理は、例えば、250[℃]、30[min.]、ドライエア雰囲気という条件下で実行される。そして、この熱処理の実行時において、
図18(a)に示すように、上部絶縁層8264を構成するSiNから脱離した水素(H)が、ITO、ソース電極810、ソース下部電極815を伝搬して、酸化物半導体からなるチャネル層105まで拡散する。その結果、チャネル層105を構成する酸化物半導体が水素(H)により還元され、電気抵抗の低下を招く結果となる。
【0235】
次に、二つ目の例としては、
図18(b)に示すように、TFT層の上部電極837を形成し、その上を覆うように層間絶縁層838を堆積した後、層間絶縁層838にコンタクト孔838aを開設する。このコンタクト孔838aは、上部電極837とアノードとの接続を図るためのものである。ここで、上部電極837については、上記実施の形態5に係る上部電極817と同様に、Cu系の材料を含み構成されている。
【0236】
図18(b)のように、層間絶縁層838にコンタクト孔838aを開設した後に熱処理を実行することになる。熱処理の条件は、例えば、250[℃]、1[hr.]である。このように層間絶縁層838に対する熱処理(ベーク)の実行に際して、上部絶縁層8264のSiNから脱離した水素(H)が、上部電極837、ソース電極810、ソース下部電極815を伝搬して、酸化物半導体からなるチャネル層105まで拡散する。その結果、この熱処理の実行によっても、チャネル層105を構成する酸化物半導体が水素(H)により還元され、電気抵抗の低下を招く結果となる。
【0237】
以上より、上部絶縁層におけるSiN中の水素濃度(Si-H/N−Hの結合比)については、低くする必要があることが分かる。
【0238】
また、上部絶縁層の層厚を増やせば、ソース電極・ドレイン電極と上部電極との間の耐圧向上を図ることができるが、上部絶縁層中におけるトータルでの水素(H)量が増加してしまうことになるため、必要以上に層厚を厚くすることは好ましくない。
【0239】
(iv)上部絶縁層の膜質と応力
上部絶縁層を成膜した際には、圧縮方向の応力が作用する。このため、上部絶縁層の膜質とともに、基板100の変形抑制という観点からも成膜条件を規定することが望ましい。これについて、
図19および
図20を用い説明する。
【0240】
図20(a)に示すように、本確認におけるテストサンプルとして、G8.5ガラス基板(2500mm
W×2200mm
H×0.7mm
t)に対し、その中央部P
centとコーナー部P
edgeにモニター用Si基板を貼り付けたものを準備する。なお、コーナー部P
edgeは、図示を省略しているが、基板の表裏および方向を判別するためのオリエンテーションフラット(面取り部)の付近である。
【0241】
次に、このテストサンプルに対し、PECVD(Plasma−Enhanced Chemical Vapor Deposition)装置を用い窒化シリコン(SiN)の膜を成膜した。サンプル1〜3のそれぞれにおける成膜条件は、
図19(b)に示す通りである。なお、各サンプル1〜3の成膜条件については、膜厚が400[nm]となるように成膜時間を調整した。また、
図19(b)に示す各データは、次のような条件で測定および評価を行った。
【0242】
なお、
図19(b)のSiN成膜条件において、各ガスの流量については、25[℃]、100[kPa]での値である。
【0243】
(膜厚)分光エリプソンメータを用い測定した。
【0244】
(基板の応力)薄膜応力測定装置を用い、SiNが成膜された基板の反り(曲率半径)の変化量と膜厚から評価を行った。
【0245】
(SiH/NH値)SiN中のSiH、NH結合量については、FT−IR分光法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)により評価した。そして、そこからSiH/NH値を算出した。
【0246】
なお、上記SiH、NH結合量の評価については、次の文献が参考となる。
【0247】
(参考文献)J.Appl.Phys.,49(4),2473(1978)、W.A.Lanford,W.J.Rand
図19(b)のデータについて、サンプルごとに説明する。
【0248】
《サンプル1》 サンプル1は、サンプル2,3よりも成膜レートが速く、応力の平均が“0”に近い。また、水素量(SiH/NH)が多い結果となった。
【0249】
《サンプル2》 サンプル2は、成膜レートおよびSiH/NHの値がサンプル3と同等であって、SiH/NHが“0.10“以下であり、応力の平均は”0“に近い。
【0250】
《サンプル3》 サンプル3は、上述のように成膜レートおよびSiH/NHの値がサンプル2と同等である。サンプル3では、応力が圧縮方向にかかっている。
【0251】
次に、上記のような物性を有するサンプル1〜3の各上部絶縁層を備えるTFTを作製した。そして、それぞれの特性を評価し、その結果を
図20に示す。なお、TFTの作成方法については、上述のとおりである。
【0252】
(各サンプル1〜3におけるSiN膜の膜厚と閾値電圧Vthとの関係)
図20(a)の評価結果は、各サンプル1〜3を用い作製したTFTのVds=4.1[V]における電気特性(Id−Vg)の評価結果である。
【0253】
各サンプル1〜3を用い作製したTFTでは、移動度が約10[cm
2/Vs]の初期特性が得られたが、
図20(a)に示すように、閾値電圧VthにSiNの条件依存性が確認された。具体的に、サンプル1を用い作製したTFTでは、SiN膜厚が200[nm]以上の場合において、閾値電圧Vthが1[V]以下となる場合が生じることが分かった。
【0254】
これは、サンプル1のSiN膜では、膜中の水素量が多い。これより、上述のようなメカニズムによりSiNから脱離した水素(H)がCu系の電極部分を伝搬してチャネル層まで到達し、チャネル層のキャリア濃度を上昇させ低抵抗化を招く。その結果、TFTにおける閾値電圧Vthの低下が発生してしまうものと考えられる。
【0255】
一方、上述のようにSiH/NHの値が“0.10以下“であるサンプル2,3を用いたTFTでは、サンプル1を用いたTFTのような閾値電圧Vthの低下は生じなかった。これは、パッシベーション層の構成層としてAlOxからなるバリア層を備えることとしても、Cu系電極が水素(H)を透過しやすいという特性を考慮するとき、上部絶縁層を構成するSiN膜中のSiH/NHの値を“0.10以下”とすることにより低下が抑えられるということを示すものである。
【0256】
(基板の反り)
次に、SiNの成膜による応力、特に圧縮方向の応力が大きくなった場合には、基板を中央部凸の状態に反らせてしまう力が大きくなってしまう。このような形態の基板の反りは、基板搬送時における搬送不良や基板の損傷といったような原因となることが考えられる。より具体的には、例えば、リソグラフィやウェットエッチング、剥離洗浄装置などにおいてローラコンベヤを用い基板搬送を行う場合には、基板の端がローラに引っかかってしまうという不具合を生じることがある。場合によっては、基板が割れてしまうこともあり得る。
【0257】
このような評価を行うために、上部電極とアノードとの接続のためのコンタクト孔を開口した後、ホトレジスト剥離後に基板の垂れ量を測定し、その結果を
図20(b)に示す。
【0258】
なお、
図20(b)に示すデータは、基板の周縁辺から20[cm]内側に縁がくるステージに基板を載置し、水平基準から基板の端の垂れ下がり量を測定した結果である。
【0259】
図19(b)に示すように、サンプル3では、約300[MPa]の圧縮方向の応力が測定された。そして、
図20(b)に示すように、サンプル3の基板の垂れ量は、100[nm]の膜厚で4.25[mm]、200[nm]の膜厚で4.5[mm]となっており、膜厚の増大に伴い、基板の垂れ量も大きくなる傾向にある。
【0260】
一方、サンプル2,3の基板では、応力が平均で“0”に近いため、
図20(b)に示すように、SiN膜の膜厚が熱くなった場合にも基板垂れ量の増大は生じない。
【0261】
以上の結果より、基板の垂れ量の増大を抑制するためには、応力の絶対値を150[MPa]以下で規定することが望ましいい。
【0262】
[その他の事項]
上記実施の形態1,2,5では、3層構成のパッシベーション層116,316,816、上記実施の形態3では、5層構成のパッシベーション層516、上記実施の形態4では、4層構成のパッシベーション層716を採用したが、6層以上の積層構成のパッシベーション層を採用することもできる。ただし、AlOxなどからなるバリア層の上下を、SiO、SiN、あるいはSiONからなる絶縁層で挟んだ構成を備えることが必要となる。また、パッシベーション層の形成時間を考慮して、上記実施の形態1などのように層厚を1000[nm]以下(より好ましくは600[nm]以下)とすることが生産効率という観点から望ましい。
【0263】
また、上記実施の形態1〜5では、トップエミッション型のEL表示パネルを一例としたが、本発明はこれに限定を受けるものではない。例えば、ボトムエミッション型の表示パネルなどに適用することもできるし、液晶パネルや電界放出表示パネル、あるいは電子ペーパなどに適用することもできる。
【0264】
また、上記実施の形態1〜4では、一つのサブピクセル10aに対して2つのトランジスタ素子部Tr
1,Tr
2が設けられてなる構成を採用したが、本発明はこれに限定を受けるものではない。例えば、一つのサブピクセルに対して一つのトランジスタ素子部を備える構成でもよいし、三つ以上のトランジスタ素子部を備える構成でもよい。
【0265】
また、上記実施の形態5では、一つのトランジスタ素子部だけを示して説明をしたが、上記同様に、2つ以上のトランジスタ素子部が設けられてなる構成を採用することもできる。
【0266】
また、各部位の構成材料については、適宜変更することができる。例えば、パッシベーション層におけるバリア層については、AlOxに限らず、Alを含む窒化物、あるいは酸窒化物を採用することもできる。
【0267】
また、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の構成材料についても、例えば、Moからなる層と、Alからなる層との積層構成とすることや、Moからなる層と、Al−Ndからなる合金層との積層構成とすることなどもできる。
【0268】
また、上記実施の形態5では、パッシベーション層816における上部絶縁層8163として窒化シリコン(SiN)からなる層を採用したが、酸窒化シリコン(SiON)からなる層を採用することもできる。
【0269】
さらに、上記実施の形態1〜4では、EL素子部の下部にアノードが配され、TFT装置のソース電極110にアノード119,319,519,719を接続する構成を採用したが、EL素子部の下部にカソード、上部にアノードが配された構成を採用することもできる。この場合には、TFT装置におけるドレインに対して、下部に配されたカソードを接続することになる。
【0270】
さらに、各構成部位の材料には、公知の材料を適宜採用することができる。