特許第6057117号(P6057117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057117
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】壁面設置型のリモコン
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20161226BHJP
   F24H 1/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   H04Q9/00 371A
   H04Q9/00 301Z
   F24H1/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-104060(P2012-104060)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-232809(P2013-232809A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】横関 光久
【審査官】 石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−125056(JP,A)
【文献】 特開平07−264275(JP,A)
【文献】 特開2003−287270(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/113932(WO,A1)
【文献】 特表2006−503429(JP,A)
【文献】 特開2010−050420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
1/18−1/20
H03J 9/00−9/06
H04Q 9/00−9/16
H05K 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に向けて突出した係止用突起を有し、かつ所望の壁面に固定して取り付けられるベース部材と、
内部に回路基板を収容しているとともに、前記回路基板の後方に位置する後壁部には係止用孔部が設けられており、かつこの係止用孔部に対してその後方から前記係止用突起が係入されることにより前記ベース部材に支持されるリモコン本体と、
を備えている、壁面設置型のリモコンであって、
前記リモコン本体の後壁部のうち、前記係止用孔部の周囲から前方に向けて突出し、かつ前記係止用孔部の前方領域の周囲を囲む先端開口状の第1の筒状突出部を、さらに備えており、
この第1の筒状突出部の先端は、前記回路基板またはこの回路基板とは別に前記リモコン本体内に設けられている壁部に当接または接近し、前記第1の筒状突出部の先端開口部は、前記回路基板または前記壁部によって塞がれており、
前記回路基板に配線コードを接続するための端子部が、前記回路基板の後面部に設けられ、
前記リモコン本体の後壁部には、前記端子部を後方に露出させて前記配線コードを前記リモコン本体の外部に引き出すための端子用開口部と、この端子用開口部の周囲から前方に向けて突出し、かつ前記端子用開口部の前方領域の周囲を囲む先端開口状の第3の筒状突出部と、前記後壁部の後面部に形成され、かつ前記配線コードの一部を進入可能とする配線コード配索用凹部と、がさらに設けられており、
前記配線コード配索用凹部の一部の領域が、前記端子用開口部として形成されており、
前記第3の筒状突出部の先端は、前記回路基板に当接または接近し、前記第3の筒状突出部の先端開口部は、前記回路基板によって塞がれていることを特徴とする、壁面設置型のリモコン。
【請求項2】
請求項1に記載の壁面設置型のリモコンであって、
前記リモコン本体の後壁部には、前記係止用孔部に前記係止用突起が係入された際にこの係入状態が解除されることを防止するように前記ベース部材に係合させるための係合部を形成する係合部形成用の孔部が設けられているとともに、
この係合部形成用の孔部の周囲から前方に向けて突出し、かつ前記係合部形成用の孔部の前方領域の周囲を囲む先端開口状の第2の筒状突出部がさらに設けられており、
この第2の筒状突出部の先端は、前記回路基板またはこの回路基板とは別に前記リモコン本体内に設けられている壁部に当接または接近し、前記第2の筒状突出部の先端開口部は、前記回路基板または前記壁部によって塞がれている、壁面設置型のリモコン。
【請求項3】
請求項2に記載の壁面設置型のリモコンであって、
前記ベース部材に対する前記係合部の係合動作は、前記係止用孔部に前記係止用突起を係入させた後に前記リモコン本体を前記ベース部材に対して所定方向にスライドさせることにより行なわれる構成とされており、
前記リモコン本体の後壁部には、前記係止用孔部に前記係止用突起を係入させる操作が行なわれたときに前記ベース部材から力を受けて弾性変形し、かつその後に前記スライドが行なわれて前記係合部が前記ベース部材に係合した際に弾性復元を生じることにより前記ベース部材に衝突して衝突音を発生させる衝突音発生用の弾性変形可能部が設けられている、壁面設置型のリモコン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば給湯装置用のリモコンなど、台所やその他の場所の壁面に設置されて用いられる壁面設置型のリモコンに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置用のリモコンを台所の壁面に設置する場合には、たとえば金属板を加工して形成されたベース部材を台所の壁面に固定させて取り付けた上で、このベース部材の前面側にリモコン本体を取り付ける手段がよく採用される。この場合、リモコン本体の取り付け作業性を良好にするための一手段として、ベース部材には、前方に向けて突出した係止用突起を設ける一方、リモコン本体の後壁部には、貫通孔状の係止用孔部を設ける手段がある(たとえば、特許文献1を参照)。
このような構成によれば、リモコン本体の係止用孔部に、ベース部材の係止用突起を係入させることによって、リモコン本体をベース部材に掛止させることができる。したがって、リモコン本体を手で支持したまま、このリモコン本体をベース部材にネジ止めするような必要を無くし、リモコン本体の取り付け作業の容易化を図ることが可能である。
【0003】
しかしながら、従来においては、次に述べるように、改善すべき点があった。
【0004】
すなわち、ベース部材の係止用突起は、たとえば側面視L字状に屈曲した形態とされている場合が多く、この係止用突起を係止用孔部に係入させた状態では、係止用孔部の全体は塞がらず、その一部が開口したままとなるのが通例である。このため、リモコンを所望の壁面に設置した状態においては、前記した係止用孔部の開口部分からリモコン本体内に虫などが進入する虞がある。このような虫などの進入は、リモコン本体内を衛生の良好な状態に維持して各部の保護を図る観点からすると好ましいものではなく、適切に防止することが望まれる。
なお、前記したような虫などの進入を防止するための手段としては、リモコン本体に設けられる係止用突起を貫通孔状に形成することに代えて、非貫通孔状の凹部として形成することが考えられる。しかしながら、係止用突起を適切に係止させ得る形態をもつ非貫通孔状の凹部を樹脂成形しようとする場合、樹脂成形用の金型の抜きが難しく、その成形に苦慮することとなる(この点は、後述する図11の説明も参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−125056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、リモコン本体の後壁部に設けられた係止用孔部を介してリモコン本体内に虫が進入するといった虞を、製造の容易な簡易な手段によって適切に防止することが可能な壁面設置型のリモコンを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される壁面設置型のリモコンは、前方に向けて突出した係止用突起を有し、かつ所望の壁面に固定して取り付けられるベース部材と、内部に回路基板を収容しているとともに、前記回路基板の後方に位置する後壁部には係止用孔部が設けられており、かつこの係止用孔部に対してその後方から前記係止用突起が係入されることにより前記ベース部材に支持されるリモコン本体と、を備えている、壁面設置型のリモコンであって、前記リモコン本体の後壁部のうち、前記係止用孔部の周囲から前方に向けて突出し、かつ前記係止用孔部の前方領域の周囲を囲む先端開口状の第1の筒状突出部を、さらに備えており、この第1の筒状突出部の先端は、前記回路基板またはこの回路基板とは別に前記リモコン本体内に設けられている壁部に当接または接近し、前記第1の筒状突出部の先端開口部は、前記回路基板または前記壁部によって塞がれており、前記回路基板に配線コードを接続するための端子部が、前記回路基板の後面部に設けられ、前記リモコン本体の後壁部には、前記端子部を後方に露出させて前記配線コードを前記リモコン本体の外部に引き出すための端子用開口部と、この端子用開口部の周囲から前方に向けて突出し、かつ前記端子用開口部の前方領域の周囲を囲む先端開口状の第3の筒状突出部と、前記後壁部の後面部に形成され、かつ前記配線コードの一部を進入可能とする配線コード配索用凹部と、がさらに設けられており、前記配線コード配索用凹部の一部の領域が、前記端子用開口部として形成されており、前記第3の筒状突出部の先端は、前記回路基板に当接または接近し、前記第3の筒状突出部の先端開口部は、前記回路基板によって塞がれていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
まず、リモコン本体の係止用孔部の前方領域を囲むように設けられた第1の筒状突出部の先端開口部が、回路基板または所定の壁部によって塞がれているため、仮に虫などが係止用孔部に進入しても、第1の筒状突出部内からリモコン本体内の他の領域に向けてそれ以上進行することは適切に防止される。したがって、リモコン本体内を衛生に保ち、適切に保護することができる。
また、本発明によれば、第1の筒状突出部の先端開口部は回路基板または所定の壁部を利用して塞がれており、第1の筒状突出部自体は、先端開口状である。このような形態であれば、第1の筒状突出部や係止用孔部の樹脂成形時における型抜きが困難になるといった不具合はなく、係止用孔部については係止用突起を適切に係止させ得る形態としつつ、第1の筒状突出部を容易に成形することが可能となる。第1の筒状突出部を先端非開口状に形成しようとすると、その成形に苦慮することとなるが、本発明によれば、そのような不具合を解消し、製造の容易化ならびにコストの低減化を図ることもできる。
さらに、前記構成によれば、リモコン本体の後壁部に設けられた端子用開口部からリモコン本体内に虫などが進入することも適切に防止することが可能である。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記リモコン本体の後壁部には、前記係止用孔部に前記係止用突起が係入された際にこの係入状態が解除されることを防止するように前記ベース部材に係合させるための係合部を形成する係合部形成用の孔部が設けられているとともに、この係合部形成用の孔部の周囲から前方に向けて突出し、かつ前記係合部形成用の孔部の前方領域の周囲を囲む先端開口状の第2の筒状突出部がさらに設けられており、この第2の筒状突出部の先端は、前記回路基板またはこの回路基板とは別に前記リモコン本体内に設けられている壁部に当接または接近し、前記第2の筒状突出部の先端開口部は、前記回路基板または前記壁部によって塞がれている。
【0011】
このような構成によれば、リモコン本体の後壁部に設けられた係合部形成用の孔部からリモコン本体内に虫などが進入することも適切に防止することができる。もちろん、係合部をベース部材に係合させることにより、ベース部材に対するリモコン本体の取り付け状態を安定させることができる効果も得られる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記ベース部材に対する前記係合部の係合動作は、前記係止用孔部に前記係止用突起を係入させた後に前記リモコン本体を前記ベース部材に対して所定方向にスライドさせることにより行なわれる構成とされており、前記リモコン本体の後壁部には、前記係止用孔部に前記係止用突起を係入させる操作が行なわれたときに前記ベース部材から力を受けて弾性変形し、かつその後に前記スライドが行なわれて前記係合部が前記ベース部材に係合した際に弾性復元を生じることにより前記ベース部材に衝突して衝突音を発生させる衝突音発生用の弾性変形可能部が設けられている。
【0013】
このような構成によれば、リモコン本体をベース部材に取り付ける際には、作業者が所定の衝突音を確認することによって、係合部がベース部材に係合したことを適切に察知することが可能となる。係合部はリモコン本体の後壁部に設けられており、この係合部がベース部材に係合しているか否かは直接目視することが難しいものの、前記した衝突音が発生したか否かによって係合部がベース部材に係合したか否かを的確に判断することが可能
となる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る壁面設置型のリモコンの斜視図である。
図2図1に示す壁面設置型のリモコンの分解正面斜視図である。
図3図1に示す壁面設置型のリモコンの分解背面斜視図である。
図4】(a)〜(c)は、図1に示す壁面設置型のリモコンの壁面への取り付け動作手順を示す要部断面図であり、(c)は、図1のIV−IV断面図に相当する。
図5図1のV−V断面図である。
図6】本発明の他の例を示す要部断面図である。
図7】(a)は、本発明の他の例を示す分解背面斜視図であり、(b)は、(a)の要部拡大図であり、(c)は、(b)のVII−VII断面図である。
図8】(a)は、図7に示すリモコンの取り付け途中状態を示す背面斜視図であり、(b)は、(a)の要部拡大図であり、(c)は、(b)のVIIIc−VIIIc断面図であり、(d)は、図7に示すリモコンの取り付け完了状態を示す背面斜視図であり、(e)は、(d)の要部拡大図であり、(f)は、(e)のVIIIf−VIIIf断面図である。
図9】(a)は、本発明の他の例を示す背面斜視図であり、(b)は、(a)の要部拡大図である。
図10】(a),(c)は、本発明の他の例を示す背面斜視図であり、(b)は、(a)の矢視Xb要部背面図であり、(d)は、(c)の矢視Xd要部背面図である。
図11】仮想の対比例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1図5は、本発明が適用された壁面設置型のリモコンの一例を示している。
本実施形態の壁面設置型のリモコンA1(以下「リモコンA1」と適宜略称する)は、給湯装置用のリモコンであり、図1に示すように、たとえば台所の壁面90に取り付けられて使用される。リモコンA1は、図2によく表われているように、壁面90に固定して取り付けられるベース部材6と、リモコン本体5とを備えている。リモコン本体5は、回路基板1を収容するケース2に、化粧カバー3およびリアケースカバー4が組み付けられた構成である。
【0020】
回路基板1は、給湯装置の運転条件の設定処理などを実行するデータ処理回路を構成する複数の電気・電子部品が基板本体に実装されたものである。この回路基板1の前部には、たとえば液晶表示器を用いたディスプレイ10や、操作スイッチ用のコンタクトスイッチ機構部(図示略)などが搭載されている。
【0021】
ケース2、化粧カバー3、およびリアケースカバー4は、いずれも樹脂製である。ケース2は、背面開口状であり、回路基板1はケース2の背面開口部22からケース2内に収容されて取り付けられる。ケース2には、ディスプレイ10の表示部10aを目視可能とする透明窓部20や、複数の操作スイッチ21が設けられている。化粧カバー3は、枠状または背面開口のケース状であり、ケース2の前面部および側面部を適宜覆うようにケース2にその正面側から外嵌装着される。この化粧カバー3には、ケース2の透明窓部20や複数の操作スイッチ21を外部に露顕または露出させるための開口部30が設けられている。この化粧カバー3には、前記した操作スイッチ21とは別の操作スイッチ31を設けた構成とすることも可能である。
【0022】
リアケースカバー4は、回路基板1よりも後方に位置してケース2の背面開口部22を塞ぐようにケース2に嵌合装着される部材であり、正面視矩形の略板状である。リモコン本体5が組み立てられた状態においては、このリアケースカバー4の主要部である板状部分がリモコン本体5の後壁部40である。この後壁部40には、第1ないし第3の筒状突出部41〜43などが設けられているが、この点については後述する。
【0023】
ベース部材6は、金属板にプレス加工などを施して構成されたものであり、貫通孔60a,60bに挿通されるネジ体98を利用して壁面90に固定される。このベース部材6には、このベース部材6の左右両側縁部から前方に向けて突出した側面視略L字状の複数(たとえば4つ)の係止用突起65が設けられている。
【0024】
図3によく表われているように、後壁部40には、複数の係止用突起65に対応する複数の係止用孔部45、一対の係合部48を形成するための一対の孔部46(本発明でいう「係合部形成用の孔部」の一例に相当し、図7図9により拡大した状態で図示)、および端子用開口部47が設けられている。
【0025】
係止用孔部45は、係止用突起65を係入させるための部位であり、上下方向に延びたスリット状である。この係止用孔部45は、図4(a),(b)に示すように、係止用突起65をその後方から水平方向に進入させることが可能な上下幅に形成されている。図4(b)に示す状態において、リモコン本体5を下降させると、同図(c)に示すように、係止用突起65の先端部を係止用孔部45の上縁部に係止させることが可能である。図3に示すように、係止用孔部45は、好ましくは、下部よりも上部の方が狭幅に形成されており、係止用孔部45の上縁部に係止用突起65を係止させた際には、リモコン本体5の左右水平方向において係止用孔部45に大きな隙間(がたつき)が生じないように構成されている。加えて、リモコン本体5の前後方向にもがたつきが生じないように構成されている。ただし、図4(c)に示すように、係止用孔部45の下部側の一部は開口したままとなる。この開口部分は、虫などの進入路となる可能性がある。
【0026】
図2および図4によく表われているように、後壁部40には、複数の第1の筒状突出部41が設けられている。この第1の筒状突出部41は、係止用孔部45の周囲から前方に向けて突出し、係止用孔部45の前方領域の周囲を囲む略角筒状である。この第1の筒状突出部41は、先端開口部41aを有するが、この先端開口部41aは、第1の筒状突出部41の先端が回路基板1の後面部に当接していることによって回路基板1により塞がれている。このことにより、係止用孔部45に仮に虫が進入したとしても、リモコン本体5内にそれ以上進入することを防止することが可能となる。第1の筒状突出部41は、回路基板1の左右両側縁近傍のうち、部品実装領域を避けた箇所に当接している。
【0027】
後壁部40に設けられた一対の係合部48は、リモコン本体5の前後方向に弾性変形可能であって、後方に向けて突出した凸部48aを有している。係合部48は、図4(b)
に示すように、リモコン本体5の係止用孔部45に係止用突起65が係入される際には、矢印N1に示すように、ベース部材6によって前方に押圧される。次いで、図4(c)に示すように、リモコン本体5が下方にスライドされ、凸部48aがベース部材6の下縁部61の下側に位置すると、その時点で係合部48の下部は弾性復元力によって後方に変位し、凸部48aがベース部材6の下縁部61に係合するようになっている。このような係合を生じると、リモコン本体5をベース部材6に相対させて上昇移動させることが困難となり、係止用突起65が係止用孔部45の上縁部に係止した状態を適切に維持させることが可能となる。
【0028】
係合部48は、後壁部40に正面視U字状または略コ字状の孔部46を設けることにより形成されているが、この孔部46からリモコン本体5内への虫などの進入を防止するための手段として、第2の筒状突出部42が設けられている(図4では、第1および第2の筒状突出部41,42を便宜上同一断面上に示しており、第2の筒状突出部42については下部側のみが示されている。この点は、後述の図6も同様)。第2の筒状突出部42は、孔部46の周囲から前方に向けて突出し、孔部46の前方領域の周囲を囲む先端開口の角筒状である。この第2の筒状突出部42の先端も、第1の筒状突出部41と同様に回路基板1の後面部に当接しており、その先端開口部42aは回路基板1によって塞がれている。第2の筒状突出部42は、回路基板1の下縁近傍のうち、部品実装領域を避けた箇所に当接している。
【0029】
図5に示すように、端子用開口部47は、回路基板1の後面部に設けられた端子部15を後壁部40の後側に露出させるための部位である。端子部15に接続された配線コードCは、ベース部材6の開口部64、および壁部9に設けられた開口部91に通されて、給湯装置に接続される。なお、図3に示すように、端子用開口部47は、後壁部40に設けられた配線コード配索用凹部40aの一部に設けられている。本実施形態では、端子用開口部47からリモコン本体5内に虫などが進入することも防止されており、そのための手段として、図5に示すように、第3の筒状突出部43が設けられている。この第3の筒状突出部43は、端子用開口部47の周囲から前方に向けて突出し、端子用開口部47の前方領域の周囲を囲む先端開口の角筒状である。この第3の筒状突出部43の先端も、第1および第2の筒状突出部41,42と同様に回路基板1の後面部に当接しており、その先端開口部43aは回路基板1によって塞がれている。
【0030】
後壁部40には、ネジ体98との干渉を回避するための凹部49a,49bも設けられている。これらの凹部49a,49bは、係止用孔部45とは異なり、係止用突起65を係止可能とするような構造とされている必要はなく、ネジ体98の頭部が単に進入し得るように形成されていればよい。したがって、これら凹部49a,49bについては、非貫通孔状であるものの、その成形に苦慮するといった不具合はない。
【0031】
次に、前記したリモコンA1の作用について説明する。
【0032】
まず、ベース部材6に対するリモコン本体5の取り付け手順は、図4を参照して説明したように、リモコン本体5の各係止用孔部45にベース部材6の係止用突起65を係入させた後に、リモコン本体5をスライド下降させるだけでよい。この操作により、リモコン本体5をベース部材6に掛止させることができる。また、係合部48がベース部材6の下縁部61に係合することによってリモコン本体5の上昇が阻止されるために、ベース部材6に対するリモコン本体5の掛止取付け状態が不用意に解除されないようにすることもできる。
【0033】
図4(c)に示したリモコンA1の取り付け状態においては、各係止用孔部45の下部が係止用突起65によって塞がれておらず、開口状態にあるために、この部分から第1の
筒状突出部41内に、たとえば虫が進入する可能性がある。これに対し、第1の筒状突出部41は、既述したように、その先端開口部41aが回路基板1によって塞がれた状態にあるために、第1の筒状突出部41に進入した虫がそれ以上リモコン本体5内に進行することは適切に防止される。勿論、虫以外のダスト類などの進入も防止することができる。リモコン本体5の後壁部40には、係止用孔部45以外の孔部として、孔部46および端子用開口部47も設けられているが、やはりこれらに対応して設けられた第2および第3の筒状突出部42,43の先端開口部42a,43aは、回路基板1によって塞がれているために、これらの部分からリモコン本体5内に虫などが不当に進入することも防止される。このようなことから、リモコン本体5内を衛生の良好な状態に維持し、適切に保護することができる。
【0034】
第1ないし第3の筒状突出部41〜43の先端開口部41a〜43aを閉塞するための手段として、回路基板1が利用されており、それ専用の部材を別途用いる必要はない。したがって、その構成は合理的であり、構造の複雑化なども適切に回避することができる。また、第1ないし第3の筒状突出部41〜43は、いずれも先端開口状に形成すればよいために、その成形も容易である。
図11には、本発明との対比例(仮想の対比例)を示している。この対比例では、第1の筒状突出部41Aが先端に壁部410を有する非開口状の凹状部として形成されている。しかしながら、このような構成によれば、第1の筒状突出部41Aを形成しつつ、係止用孔部45の上縁部に係止用突起65を係止させるための下向き凸部45aをさらに形成することは容易ではない(樹脂成形用の金型の抜きが困難)。これに対し、本実施形態のように、第1の筒状突出部41を先端開口状とすれば、そのような不具合はなく、樹脂成形の容易化を図り、製造コストを廉価にすることもできる。
【0035】
図6図10は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素については、前記実施形態と同一の符号を付し、重複説明は省略する。
【0036】
図6に示すリモコンA2においては、ケース2にその側壁から内側に突出する壁部25が設けられており、リモコン本体5のたとえば下部寄りに位置する第1の筒状突出部41の先端が壁部25の後面に当接し、この壁部25によって第1の筒状突出部41の先端開口部41aが塞がれている。第2の筒状突出部42も同様であり、その先端開口部42aは壁部25によって塞がれている。
【0037】
本実施形態のように、第1および第2の筒状突出部41,42の先端開口部41a,42aを、ケース2に設けられた壁部25を利用して塞いだ場合であっても、リモコン本体5内への虫などの進入を適切に防止することが可能である。本実施形態から理解されるように、本発明では、第1および第2の筒状突出部の先端開口部を塞ぐための手段として、回路基板に代えて、リモコン本体内に別途設けられた壁部を用いてもよい。第1および第2の筒状突出部41,42を後壁部40の外周縁寄りの位置に偏らせて設ければ、壁部25についてもリモコン本体5の外周縁寄りの位置に偏らせて設ければよいこととなり、壁部25の小サイズ化を図る上で好ましいものとなる。
【0038】
図7に示すリモコンA3においては、リモコン本体5の後壁部40(リアケースカバー4の板状部分)に、衝突音発生用の一対の弾性変形可能部51が設けられている。この弾性変形可能部51は、リモコン本体5がベース部材6に対して適切に取り付けられた際に所定の音を発生させて、これを取り付け作業者に察知させるための部分である。この弾性変形可能部51は、たとえば正面視L字状であり、後壁部40に2条のL字状スリットを一連に繋げた形態をもつスリット52を設けることによって形成されている。弾性変形可能部51は、その上部が後壁部40に繋がっており、後壁部40の前後厚み方向に弾性変
形可能である。弾性変形可能部51の上部および下部には、凸部51a,51bが形成されている。図7(c)に示すように、凸部51aの高さH1は、凸部51bの高さH2よりも高くされている。
【0039】
スリット52からリモコン本体5内に虫などが進入することを防止するための手段として、後壁部40には、第4の筒状突出部44が設けられている。第4の筒状突出部44は、スリット52の周囲から前方に向けて突出し、スリット52の前方領域の周囲を囲む先端開口の筒状である。図示説明は省略するが、本実施形態とは異なり、第4の筒状突出部44については、係合部48を形成する孔部46に対応して設けられた第2の筒状突出部42と共用し、第2および第4の筒状突出部42,44が一体化(1つの筒状突出部として形成)された構成とすることもできる。第4の筒状突出部44は、回路基板1の後面部に当接し、その先端開口部44aは回路基板1によって塞がれる。
【0040】
本実施形態のリモコンA3においては、図8(a)に示すように、リモコン本体5の各係止用孔部45にベース部材6の係止用突起65を係入させた際には、同図(b),(c)に示すように、弾性変形可能部51の凸部51aがベース部材6に当接し、前方に押圧される。このため、弾性変形可能部51は前方に撓み、凸部51bとベース部材6との間には寸法L3の隙間が生じる。次いで、図8(d)に示すように、リモコン本体5をベース部材6に相対させてスライド下降させると、同図(e),(f)に示すように、係合部48がベース部材6の下縁部61に係合するのと略同じタイミングで、弾性変形可能部51の凸部51aがベース部材6の下縁部よりも下方に位置することとなって、弾性変形可能部51の下部は、その弾性復元力によって後方に振れる。すると、凸部51bがベース部材6に勢いよく衝突し、衝突音が発生する。リモコンA3を壁面90に設置する場合、係合部48とベース部材6とが適切に係合したか否は、外部からの目視によって確認することは困難である。これに対し、本実施形態によれば、弾性変形可能部51の凸部51bがベース部材6に衝突する際の衝突音を確認することによって、係合部48がベース部材6に対して適切に係合したことを察知し、リモコンA3の取付け作業をより的確に行なうことが可能となる。
【0041】
本実施形態では、弾性変形可能部51が左右一対で設けられており、これら一対の弾性変形可能部51のそれぞれによる衝突音を同時に発生させることが可能である。ただし、これに代えて、衝突音を意図的にずらして発生させるようにしてもよい。そのための一手段としては、たとえば図8(d)に示す左右一対の弾性変形可能部51の水平方向の長さL1,L2を相違させ、左側の弾性変形可能部51と右側の弾性変形可能部51とでは、撓み変形状態から弾性復元する際のストロークを相違させるといった手段を採用することができる。このような構成によれば、一対の係合部48の双方がベース部材6に適切に係合すると、その時点で凸部51bがベース部材6に衝突する音が、2回連続して聞こえることとなり、衝突音の確認がより容易となる。
【0042】
図9に示すリモコンA4においては、ベース部材6のうち、衝突音発生用の弾性変形可能部51の凸部51bが当接する部分69は、細幅状の部分68を介してベース部材6の他の部分と繋がった構成とされている。このような構成によれば、凸部51bが前記した部分69に衝突した際にこの部分69が振動し易くなるため、衝突音を大きくし、その音をより聞き易くすることができる。
【0043】
図10に示すリモコンA5においては、リモコン本体5の後壁部40に、後方に向けて突出した突起状の弾性変形可能部54が設けられ、この弾性変形可能部54がベース部材6に設けられた長孔67に進入している。弾性変形可能部54は、その軸長方向に延びるスリット54aを介して先端寄り部分が半割り状とされており、拡縮変形可能である。長孔67は、上下方向に延びているが、下部67aの幅は他の部分よりも大きくされている
【0044】
本実施形態においては、図10(a)に示すように、係止用孔部45に係止用突起65を係入させた状態では、同図(b)に示すように、弾性変形可能部54が長孔67内において圧縮されている。次いで、同図(c)に示すように、リモコン本体5を下降させ、係合部48がベース部材6の下縁部61に係合すると、その時点で、同図(d)に示すように、弾性変形可能部54が長孔67の下部67aに位置し、元の自然状態に弾性復帰する。その際、この弾性変形可能部54は、ベース部材6に衝突し、衝突音が発生する。このような構成によれば、図7図9に示した実施形態とは異なり、所定の衝突音を発生させるための手段として、リモコン本体5の後壁部40には、虫などの進入経路となる虞がある貫通孔を設ける必要がなく、虫などの進入防止対策手段を簡素化することができる。
【0045】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る壁面設置型のリモコンの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0046】
本発明においては、第1の筒状突出部の先端を回路基板(またはこれに代わる壁面)に当接させる場合、たとえば弾力性を有する比較的軟質な樹脂層などを回路基板に設けておき、前記樹脂層に第1の筒状突出部の先端を当接させるようにしてもよい。このような構成によれば、第1の筒状突出部と回路基板との間に隙間を生じ難くする効果が期待できる。この点は、第2および第3の筒状突出部についても同様である。
【0047】
本発明においては、第1の筒状突出部が必ずしも回路基板(またはこれに代わる壁面)に当接していなくてもよく、それらの間に微小隙間(虫などの進入を防止し得る寸法の隙間)が形成されるようにそれらを互いに接近させた構成とすることもできる。このような構成であっても、虫などの進入を防止し、本発明の目的を達成可能であり、第1の筒状突出部の先端開口部が実質的に塞がれているため、本発明の技術的範囲に包摂される。この点は、第2および第3の筒状突出部についても同様である。
【0048】
本発明でいう係止用突起および係止用孔部の具体的な形態、数、配置などは限定されない。本発明に係るリモコンは、リモコン本体がベース部材に掛止されて支持されるが、これに加えて、他の支持手段(ネジ止め手段など)が併用されていてもよい。たとえば、リモコン本体の上部については、係止用突起と係止用孔部との係入作用によってベース部材に掛止されている一方、リモコン本体の下部については、ベース部材に対してネジ止めされて固定されているといった構成とすることも可能である。
【0049】
本発明でいうリモコン本体は、回路基板を収容するケース、化粧カバー、およびリアケースカバーを組み合わせて構成されたものに限らず、たとえば回路基板を収容する一面開口状のケースと、このケースの開口部を塞ぐカバー部材とを組み合わせただけの構成とすることもできる。したがって、リモコン本体の後壁部についても、前記したようなリアケースカバーを用いて構成されたものに限定されない。たとえば、背板部を有し、かつ前面が開口した形態のケースに回路基板を収容させた場合には、このケースの背板部をリモコン本体の後壁部とすることができる。ベース部材は、前方に向けて突出した係止用突起を少なくとも1つ有し、かつ台所やその他の所望の壁面に固定して取り付けられるものであればよく、その具体的な材質なども限定されるものではない。本発明は、給湯装置用のリモコンに限らず、壁面に取付けられるタイプのリモコンであれば、種々のリモコンに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
A1〜A5 壁面設置型のリモコン
1 回路基板
2 ケース
3 化粧カバー
4 リアケースカバー
5 リモコン本体
6 ベース部材
25 壁部(リモコン本体の)
40 後壁部(リモコン本体の)
41〜43 第1ないし第3の筒状突出部
41a〜43a 先端開口部(第1ないし第3の筒状突出部の)
45 係止用孔部
46 孔部(係合部形成用の孔部)
47 端子用開口部
48 係合部
51,54 弾性変形可能部(衝突音発生用の)
65 係止用突起
90 壁面
図1
図2
図3
図4
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図11