(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1又は複数のバーナによって形成されたバーナ群を複数有し、さらに送風機と、少なくとも2つのバーナ群のそれぞれに対応するように設けられた燃料弁とを備え、要求される熱量の大きさに応じて、燃料弁の開閉状態を切り換えて燃焼領域に相当する燃焼段数を切り換える段数切換制御の実施が可能であり、要求される熱量が変更されて、段数切換制御によって燃料弁が開成された場合には、当該燃料弁に対応した燃焼領域のバーナ群は、所定の熱量で燃焼する緩点火動作を行い、その後、前記変更された要求熱量に応じた燃焼動作の実施を可能とする燃焼装置であって、
緩点火動作では、燃焼段数ごとに設定された所定の熱量に応じた燃焼制御が行われるものであり、緩点火動作の最中に、目標とする熱量が新たな要求熱量に変更されて、当該新たな要求熱量に応じた燃焼段数が、当該変更前の目標とする要求熱量に応じた燃焼段数よりも小さいことが確認された場合には、当該新たな要求熱量に応じた燃焼段数に応じた緩点火動作が実施されることを特徴とする燃焼装置。
緩点火動作には、送風機の回転数を所定の回転数に移行させる移行期間があり、当該移行期間中に、目標とする熱量が新たな要求熱量に変更されて、当該新たな要求熱量に応じた燃焼段数が、前記変更前の要求熱量に応じた燃焼段数よりも小さいことが確認された場合に、当該新たな要求熱量に応じた燃焼段数に応じた緩点火動作が実施されることを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の給湯装置においては、このような制御をもってしても、燃焼装置の運転中に、需要者等がカラン等を操作し、設定温度や出湯量が短い期間に幾度となく変更されると、予期せぬ高温の湯が出湯されてしまう場合があった。また、この現象は、燃焼領域が複数に区分され、各燃焼領域へ供給される燃料を開閉弁で制限することを可能とした機能(燃焼段数の切換制御)を備えた燃焼装置において顕著であった。
以下に、それについて説明する。
【0007】
ここで、燃焼段数の切換制御(以下、単に段数切換制御という)について付言しておくと、この段数切換制御は、出湯量(又は入水量)の増減や設定温度の変化によって、燃焼量(要求燃焼量)が増減された場合に、開閉弁の開閉状態を制御して燃焼領域の拡張あるいは減縮を行い、前記増減した要求燃焼量に応じた燃焼量に制御するものである。すなわち、段数切換制御は、燃焼させる領域の数(主に燃焼面積の大小)やその組み合わせを変化させて、変更された要求燃焼量に応じた燃焼段数に切り換える制御である。
【0008】
より詳細には、段数切換制御では、現在の要求燃焼量を増大あるいは減少する場合において、現在の要求燃焼量に応じた燃焼段数から、新たな要求燃焼量(目標燃焼量)に応じた燃焼段数に切り換えられる。例えば、
図11に示すように、現在の要求燃焼量から燃焼量を増大(減少)させるべく、現在非燃焼状態の燃焼領域Bを燃焼させる場合においては、隣接する燃焼領域A、B間で火移りが行われ(
図11(a)〜(b))、前記非燃焼状態の燃焼領域Bに点火される。またこのとき、燃焼量の増大あるいは減少に関わらず、目標燃焼量によっては、
図11(c)に示すように、既に燃焼状態であった燃焼領域Aの火が消され、非燃焼状態に制御される場合もある。
なお、燃焼量を減少する場合に限っては、
図12に示すように、単にいずれかの燃焼領域Cの火を消すだけの場合があり、その場合は、隣接する燃焼領域A〜C間における火移りは行われない。
【0009】
そして、段数切換制御によって、燃焼面積の拡張又は減縮が行われ、新たな燃焼領域が点火された場合には、安全的観点から、緩点火動作が実施される(
図11(b))。すなわち、緩点火動作は、目標燃焼量に基づいた燃焼動作を実施するための準備動作であり、確実且つ安全な点火を目的としたものである。そして、緩点火動作では、通常、燃焼段数ごとに予め設定された固定燃焼量で燃焼される。より詳細には、緩点火動作においては、当該燃焼段数における燃焼量の制御範囲内の1点で燃焼が行われる。
【0010】
また、緩点火動作では、カラン等の操作によって変更される情報(設定温度や出湯量等)が一切更新されることがない。つまり、緩点火動作では、その最中に、いくらカラン等を操作しても、緩点火動作に突入するきっかけとなった目標燃焼量を基準とした燃焼制御が実施される。このため、緩点火動作のきっかけとなった目標燃焼量に応じた燃焼段数と、緩点火動作の最中において変更された目標燃焼量に応じた燃焼段数とが相違してしまう場合があった。その結果、緩点火動作の基準とされた燃焼段数による燃焼量が、実際に要する燃焼量よりも過剰となってしまう場合があり、出湯温度が意図せず高温になってしまうおそれがあった。
【0011】
そこで、本発明では、従来の問題点に鑑み、緩点火動作の最中に、需要者等がカラン等を操作して、設定温度や出湯量を短い期間に幾度となく変更したとしても、予期せぬ高温の湯が出湯されてしまうおそれがない燃焼装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するべく提供される請求項1に記載の発明は、1又は複数のバーナによって形成されたバーナ群を複数有し、さらに送風機と、少なくとも2つのバーナ群のそれぞれに対応するように設けられた燃料弁とを備え、要求される熱量の大きさに応じて、燃料弁の開閉状態を切り換えて燃焼領域に相当する燃焼段数を切り換える段数切換制御の実施が可能であり、要求される熱量が変更されて、段数切換制御によって燃料弁が開成された場合には、当該燃料弁に対応した燃焼領域のバーナ群は、所定の熱量で燃焼する緩点火動作を行い、その後、前記変更された要求熱量に応じた燃焼動作の実施を可能とする燃焼装置であって、緩点火動作では、燃焼段数ごとに設定された所定の熱量に応じた燃焼制御が行われるものであり、緩点火動作の最中に、目標とする熱量が新たな要求熱量に変更されて、当該新たな要求熱量に応じた燃焼段数が、当該変更前の目標とする要求熱量に応じた燃焼段数よりも小さいことが確認された場合には、当該新たな要求熱量に応じた燃焼段数に応じた緩点火動作が実施されることを特徴とする燃焼装置である。
【0013】
本発明の燃焼装置は、燃料弁の開閉状態を切り換えて、燃焼領域に相当する燃焼段数の切り換えを可能とした段数切換制御の実施を可能とした基本構成を備えている。すなわち、本発明の燃焼装置は、現在燃焼中の燃焼領域における火炎の大きさを変化させるだけでなく、現在燃焼中の燃焼領域に加えて新たな燃焼領域を燃焼(燃焼領域の拡張)させたり、逆に現在の燃焼領域に替えてより小さな燃焼領域で燃焼又は現在の燃焼領域の一部を非燃焼状態(燃焼領域の減縮)にさせたりして、要求される熱量(目標熱量ともいう)に応じた燃焼状態に変化させることが可能である。さらに、本発明の燃焼装置は、燃焼段数の切換によって、新たな燃焼領域を燃焼させる場合においては、安全等の観点から、緩点火動作の実施が可能となっている。
【0014】
ここで、緩点火動作は、先にも説明したように、目標とする熱量に基づいた燃焼動作を実施するための準備動作であり、主に新たに燃焼させる燃焼領域への着火を確実且つ安全にすることを目的としている。そして、従来、緩点火動作は、当該動作への移行のきっかけとなった要求熱量(以下、移行時目標熱量ともいう)を基準に、燃焼段数が決定され、その燃焼段数に付与された所定の熱量で燃焼制御が実施されていた。つまり、従来では、緩点火動作の最中に、いくら要求熱量を変更するための情報(設定温度や出湯量等)が変更されたとしても、当該情報は一切更新されず、移行時目標熱量に基づいた燃焼制御が行われていた。そのため、従来の燃焼装置が給湯装置に採用された場合、先にも説明したように、実際に出湯される湯量に対して、燃焼量が過剰となる場合があり、出湯温度が意図せず高温となってしまう場合があった。
【0015】
そこで、請求項1に記載の発明は、緩点火動作において、要求熱量が変更された場合であって、特定の条件が満たされた場合にのみ、移行時目標熱量を新たな目標熱量に変更可能な構成とされている。より詳細には、緩点火動作中に、要求熱量が変更され、その変更された要求熱量(目標熱量)に応じた燃焼段数が、変更前の要求熱量(目標熱量)に応じた燃焼段数よりも小さい場合に、緩点火動作の目標熱量として、変更された要求熱量の燃焼段数を採用することとした。つまり、本発明では、従来のように、移行時目標熱量に応じた燃焼段数を頑なに採用しておくことはなく、変更前の要求熱量であれ、最新の要求熱量であれ、変更前後における要求熱量のうちの最下限の要求熱量に応じた燃焼段数を基準に、緩点火動作の実施が可能である。そのため、本発明の燃焼装置であれば、給湯装置に採用したとしても、従来のように、出湯される湯量に対して、燃焼量が過剰となることがなく、出湯温度が意図せず高温となってしまうおそれがない。つまり、需要者等がカラン等を操作して、設定温度や出湯量を短い期間に幾度となく変更したとしても、従来のような不具合は起き得ない。
【0016】
本発明の燃焼装置は、緩点火動作には、送風機の回転数を所定の回転数に移行させる移行期間があり、当該移行期間中に、目標とする熱量が新たな要求熱量に変更されて、当該新たな要求熱量に応じた燃焼段数が、前記変更前の要求熱量に応じた燃焼段数よりも小さいことが確認された場合に、当該新たな要求熱量に応じた燃焼段数に応じた緩点火動作が実施されることが推奨される。(請求項2)
【0017】
請求項3に記載の発明は、緩点火動作には、送風機の回転数が概ね所定の回転数に移行した安定期間があり、前記移行期間中に、目標とする熱量が複数回変更され、当該移行期間突入前の要求熱量に応じた燃焼段数と、当該移行期間終了直前の要求熱量に応じた燃焼段数が一致する場合は、安定期間に突入することなく緩点火動作を終了し、前記移行期間突入前の要求熱量に応じた燃焼段数を基準に燃焼動作が実施されることを特徴とする請求項2に記載の燃焼装置である。
【0018】
かかる構成によれば、緩点火動作の移行期間中に、目標とする熱量が複数回変更されたにも関わらず、移行期間終了直前の要求熱量に応じた燃焼段数が、移行期間突入前の要求熱量に応じた燃焼段数と相違なければ、安定期間に突入することなく緩点火動作を終了し、移行期間突入直後の要求熱量に応じた燃焼段数に応じた燃焼動作が実施される。その結果、不要な段数切換制御の実施によって、燃焼制御が不安定に陥ってしまうことが防止される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の燃焼装置は、段数切換制御の際に実施される緩点火動作において、目標とする要求熱量を変更可能な構成とされている。そして、緩点火動作においては、目標熱量が幾度となく変更された場合であっても、その変更された要求熱量のうちの下限値の要求熱量に応じた燃焼段数が採用されて、当該燃焼段数に応じた緩点火動作の燃焼が実施されるため、出湯される湯量に対して、燃焼量が過剰となることがなく、出湯温度が意図せず高温となってしまうおそれがない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態に係る燃焼装置1について説明する。
本実施形態の燃焼装置1は、給湯器として使用されるものであり、図示しない給水源から供給される水を加熱する給湯運転の実施が可能な構成である。つまり、本実施形態の燃焼装置1は、その基本構造は公知のそれと同様である。
そこで、まず燃焼装置1の基本構造について説明する。
【0022】
燃焼装置1は、
図1に示すように、供給される燃料ガスを燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼部3と、燃焼部3に空気を供給する送風機5と、燃焼ガスの熱エネルギーを回収する熱交換部6とを備え、さらに、燃焼部3に燃料ガスを供給するための燃料供給系統7と、カラン等の給湯端末60に湯を導く給湯系統8と、熱交換部6で発生したドレンを中和して外部に排水するためのドレン排水系統10が設けられている。
また、燃焼装置1には、各種機器からの信号を受信したり、各種機器の動作を制御する制御装置20が備えられている。
【0023】
燃焼部3は、複数のバーナ11が備えられ、所定数のバーナ11が群をなした複数(本実施形態では3つ)のバーナ群21に区分されている。具体的には、燃焼部3は、2本のバーナ11で構成された第1バーナ群21aと、3本のバーナ11で構成された第2バーナ群21bと、7本のバーナ11で構成された第3バーナ群21cを有し、真ん中に配した第1バーナ群21aを基準に、その右側に第2バーナ群21bを配し、左側に第3バーナ群21cを配した構成である。そして、各バーナ群21a〜21cには、火炎が形成される燃焼領域A〜Cが設けられている。すなわち、真ん中のバーナ群21aには、燃焼領域Aが設けられ、その右側のバーナ群21bには、燃焼領域Bが設けられ、左側のバーナ群21cには、燃焼領域Cが設けられている。
【0024】
また、第1バーナ群21aの直上には、着火手段(本実施形態ではイグナイタ)22が配され、第1バーナ群21aと第2バーナ群21bの境界付近の直上には、火炎の有無を検知する火炎検知手段(本実施形態ではフレームロッド)23が配されている。すなわち、本実施形態の燃焼装置1は、着火手段22に通電して火花を散らせば、第1バーナ群21aの燃焼領域Aに点火することができ、また火炎検知手段23が通電の有無を検知することで火炎の有無を検知できる構成である。
【0025】
送風機5は、公知のそれと同様であり、図示しないモータと羽根車を有し、燃焼部3における燃焼状態に応じて回転数を変化させて、送風量及び送風圧を調整できるものである。
【0026】
熱交換部6は、給湯系統8の一部を形成するものであり、湯水が流通する通水管25を有する。そして、この熱交換部6は、燃焼部3で生成された燃焼ガスが通過する排気ガス流路26の中途に配される。すなわち、熱交換部6は、通水管25を流れる湯水と、排気ガス流路26を流れる燃焼ガスとを熱交換させて、通水管25内の湯水を昇温させるものである。
【0027】
燃料供給系統7は、
図1に示すように、図示しない燃料供給源から供給される燃料ガスを燃焼部3に導く気体用の経路であり、燃料供給管35を備えている。そして、燃料供給管35には、その中途に元ガス電磁弁36と、ガス比例弁37と、複数(本実施形態ではバーナ群21の数と同数)の電磁弁(燃料弁)38a〜38cとが設けられている。より詳細には、燃料供給管35は、主配管40と、主配管40から分岐した3つの分岐配管41a〜41cを有し、主配管40に元ガス電磁弁36とガス比例弁37が設けられ、主配管40と分岐配管41a〜41cとの境界部分に電磁弁38a〜38cが設けられている。すなわち、燃料供給系統7は、各バーナ群21a〜21cに供給する燃料ガスを、電磁弁38a〜38cの開閉制御によって制限できる構成である。換言すれば、燃焼装置1は、電磁弁38a〜38cによって、各燃焼領域A〜Cを独立的に燃焼制御することが可能である。
【0028】
給湯系統8は、
図1に示すように、図示しない給水源から供給される水を給湯端末60に導く液体用の経路であり、熱交換部6の前後に設けられた入水管43及び出湯管45と、熱交換部6をバイパスするバイパス管46とを有する。すなわち、給湯系統8は、入水管43を流通する水を熱交換部6に導入し、熱交換部6で昇温させて湯を生成し、その湯を出湯管45においてバイパス管46を通過した水と混合して、所望の設定温度の湯を給湯端末60から出湯することができる流路である。
なお、入水管43には、入水量を検知する入水側流量センサ51と、入水温度を検知する入水側温度センサ52とが設けられ、出湯管45には、出湯温度を検知する出湯側温度センサ53と、出湯量の調整が可能な出湯側流量調整弁55が設けられている。
【0029】
次に、本実施形態の燃焼装置1における給湯運転について説明する。
給湯運転は、需要者が給湯端末60を操作する等した場合に発生する給湯要求に応じて、所望の設定温度の湯を給湯端末60から出湯させることができる運転モードである。具体的に説明すると、給湯端末60が操作されると、まず、図示しない給水源から入水管43に水が供給される。このとき、入水側流量センサ51によって、入水管43を通過する入水量が検知される。そして、入水側流量センサ51によって、入水管43を通過する水が一定量以上、つまり燃焼部3において燃焼させることが可能な最低限の流量(MOQ)以上であることが確認されると(給湯要求有り)、燃焼部3における燃焼動作が実施され、昇温した湯が給湯端末60から吐き出される。
【0030】
より詳細には、燃焼動作では、要求された熱量に応じた燃焼量となるように、従来公知のFF制御とFB制御によって燃焼が制御される。すなわち、燃焼装置1は、給湯要求を確認すると、まず、入水管43で検知された入水温度及び単位時間当たりの入水量に基づいて、予め設定された設定温度まで加熱するのに必要な燃焼量(FF目標燃焼量)を演算する。そして、前記FF目標燃焼量となるように、燃料ガスの供給量(ガス二次圧)及び送風量等を制御して燃焼動作を実施する(FF制御)。すなわち、燃焼初期においては、入水量と入水温度に基づいた、FF制御によって燃焼量が制御される。
【0031】
そして、燃焼初期の時期が経過して、FF制御によって加熱された湯の温度(出湯温度)が検知されるようになれば、FF制御に加えて、出湯管45で検知された出湯温度を加味して、水の加熱に必要な燃焼量(FB目標燃焼量)を新たに演算する。すなわち、燃焼初期の時期が過ぎれば、前記FB目標燃焼量となるように、燃料ガスの供給及び送風量等が制御された燃焼動作が実施される。
【0032】
このように、給湯運転では、その動作が開始されてから終了するまでの間、FF制御やFB制御によって適切な燃焼量に適宜変更されながら燃焼動作が実施されて、所望の設定温度の湯が給湯端末60を介して需要者に供給される。
【0033】
続いて、給湯運転時における燃焼部3の基本的機能について説明する。
本実施形態の燃焼装置1は、前記したように、3つのバーナ群21a〜21cによって構成された燃焼部3を備えている。そして、各バーナ群21a〜21cは、それぞれに対応するように分岐配管41a〜41cが配されている。また、各分岐配管41a〜41cのそれぞれには、導入される燃料ガスを制限するべく、電磁弁38a〜38cが配されている。
【0034】
すなわち、本実施形態の燃焼装置1は、ガス比例弁37の開度調整だけでなく、電磁弁38a〜38cの開閉状態の切り換え(燃焼段数の切換制御)によっても、燃焼量の制御が可能となっている。つまり、燃焼段数の切換制御(以下、単に段数切換制御ともいう)を実施することによって、燃焼領域の拡張又は減縮が可能である。そして、本実施形態では、切り換え可能な3つの燃焼領域A〜Cが用意されている。そして、その燃焼領域A〜Cを組み合わせて、5段階の燃焼能力の段数(以下、単に燃焼段数ともいう)に切り換えることが可能である。
なお、各燃焼段数は、燃焼能力の小さい側から、燃焼領域Aのみを燃焼する燃焼段数1と、燃焼領域Bのみを燃焼する燃焼段数2と、燃焼領域A及び燃焼領域Bを燃焼する燃焼段数3と、燃焼領域A及び燃焼領域Cを燃焼する燃焼段数4と、燃焼領域A、燃焼領域B、及び、燃焼領域Cを燃焼する燃焼段数5である。
【0035】
ここで、各燃焼段数1〜5について説明しておく。
まず、給湯運転の実施を待機した状態、つまり全ての燃焼領域A〜Cが非燃焼の状態において、需要者等が給湯端末60を操作して、目標燃焼量に応じた各燃焼段数1〜5に移行する場合について説明する。
【0036】
(燃焼段数1)
燃焼段数1では、
図2に示すように、燃焼領域Aが設けられたバーナ群21aを用いて燃焼動作を実施する。すなわち、目標燃焼量が演算され、燃焼段数1で燃焼制御することが決定すると、バーナ群21aに対応する電磁弁38aを開成し、着火手段22(
図1)によってバーナ群21aに属するバーナ11に点火される。このとき、ガス比例弁37は、燃焼段数1の緩点火動作に対応した開度(燃焼段数ごとに設定された固定開度)に調整される。すなわち、バーナ群21aに供給される燃料ガスの流量(ガス二次圧)は、燃焼段数1におけるガス二次圧の制御範囲内で定められる。そして、緩点火動作が終了すれば、ガス比例弁37の開度を実際の目標燃焼量に基づいた開度に調整して、燃焼領域Aのみで通常の燃焼制御を行う。
なお、燃焼段数1では、燃焼領域Bに対応した電磁弁38bと、燃焼領域Cに対応した電磁弁38cは閉止された状態が維持される。
【0037】
(燃焼段数2)
燃焼段数2では、
図3に示すように、燃焼領域Bが設けられたバーナ群21bで燃焼動作を実施する。本実施形態では、目標燃焼量が演算され、燃焼段数2で燃焼制御することが決定すると、まずバーナ群21aに対応する電磁弁38aを開成し、着火手段22(
図1)によってバーナ群21aに属するバーナ11に点火される。このとき、ガス比例弁37は、燃焼段数2の緩点火動作に対応した固定開度に調整される。すなわち、バーナ群21aにおけるガス二次圧は、燃焼段数2におけるガス二次圧の制御範囲内で定められる。そして、燃焼領域Aが燃焼した状態で、バーナ群21bに対応する電磁弁38bを開成する。すると、燃焼領域Bには、燃焼領域Aの火炎が火種となって火移りが起こり、当該燃焼領域Bにおける緩点火動作が開始される。そして、火移りによって、燃焼領域Bに完全に火炎が形成された状態になれば、燃焼領域Aに対応した電磁弁38aを閉止すると同時に、ガス比例弁37の開度を実際の目標燃焼量に基づいた開度に調整して、燃焼領域Bのみで通常の燃焼制御を行う。
なお、燃焼段数2では、燃焼領域Aに対応した電磁弁38aと、燃焼領域Cに対応した電磁弁38cは閉止された状態が維持される(火移り時は除く)。
【0038】
(燃焼段数3)
燃焼段数3では、
図4に示すように、燃焼領域A、Bの双方に設けられたバーナ群21a、21bで燃焼動作を実施する。本実施形態では、目標燃焼量が演算されて、燃焼段数3で燃焼制御することが決定すると、燃焼領域Aと燃焼領域Bとの間で火移りが行われるまで、前記した燃焼段数2と同様の動作を実施する。すなわち、燃焼段数3では、燃焼領域Bに火移りが行われた後、燃焼領域Aに対応した電磁弁38aを閉止することはなく、燃焼領域Aと燃焼領域Bの双方で緩点火動作が行われた状態となる。なおこのとき、ガス比例弁37は、燃焼段数3の緩点火動作に対応した固定開度に調整されている。すなわち、バーナ群21a、21bにおけるガス二次圧は、燃焼段数3におけるガス二次圧の制御範囲内で定められる。そして、緩点火動作が終了すれば、ガス比例弁37の開度を実際の目標燃焼量に基づいた開度に調整して、燃焼領域A、Bの双方で通常の燃焼制御を行う。
なお、燃焼段数3では、燃焼領域Cに対応した電磁弁38cは閉止された状態が維持される。
【0039】
(燃焼段数4)
燃焼段数4では、
図5に示すように、燃焼領域A、Cに設けられたバーナ群21a、21cで燃焼動作を実施する。本実施形態では、目標燃焼量が演算されて、燃焼段数4で燃焼制御することが決定すると、前記した燃焼段数3と概ね同様の動作を実施する。すなわち、燃焼段数4では、燃焼領域Aと燃焼領域Cとの間で火移りを行い、燃焼領域Aと燃焼領域Cの双方で緩点火動作を行う。具体的には、燃焼領域Aに点火された後、燃焼領域Cに対応する電磁弁38cを開成し、当該燃焼領域Cに対して火移りによる点火を行う。なおこのとき、ガス比例弁37は、燃焼段数4の緩点火動作に対応した固定開度に調整されている。つまり、バーナ群21a、21cにおけるガス二次圧は、燃焼段数4におけるガス二次圧の制御範囲内で定められる。そして、緩点火動作が終了すれば、ガス比例弁37の開度を実際の目標燃焼量に基づいた開度に調整して、燃焼領域A、Cの双方で通常の燃焼制御を行う。
なお、燃焼段数4では、燃焼領域Bに対応した電磁弁38bは閉止された状態が維持される。
【0040】
(燃焼段数5)
燃焼段数5では、
図6に示すように、燃焼領域A、B、Cに設けられたバーナ群21a、21b、21cで燃焼動作を実施する。つまり、燃焼段数5では、燃焼部3に設けられた全ての燃焼領域A〜Cが燃焼制御された状態となる。すなわち、本実施形態では、目標燃焼量が演算され、燃焼段数5で燃焼制御することが決定すると、全ての燃焼領域A〜Cで緩点火動作を行い、その後、通常の燃焼制御を行う。具体的には、前記燃焼段数1〜4と同様、まず着火手段22によって、燃焼領域Aに対応するバーナ群21aのバーナ11に点火する。そして、燃焼領域Aが燃焼した状態で、燃焼領域B及び燃焼領域Cの電磁弁38b、38cを開成して、当該燃焼領域B及び燃焼領域Cに対して火移りによる点火を行う。なおこのとき、ガス比例弁37は、燃焼段数5の緩点火動作に対応した固定開度に調整されている。すなわち、バーナ群21a〜21cにおけるガス二次圧は、燃焼段数5におけるガス二次圧の制御範囲内で定められる。そして、緩点火動作が終了すれば、ガス比例弁37の開度を実際の目標燃焼量に基づいた開度に調整して、燃焼領域A〜Cの全てで通常の燃焼制御を行う。
以上が、給湯運転の実施を待機した状態から燃焼部3を作動させる場合の説明である。
【0041】
また、既に給湯運転中の状態において、需要者等が給湯端末60を操作すると、新たな目標燃焼量に変更される場合があり、その場合、新たな燃焼段数で給湯運転を継続する場合がある。すなわち、給湯運転中に目標燃焼量が変更された場合においても、燃焼能力の段数切換制御が実施される。そして、本実施形態では、この場合においても、基本的には、前記した燃焼段数1〜5のうちのいずれかと同様の燃焼動作が行われる。
【0042】
例えば、現在燃焼段数1の状態で燃焼動作が行われており、その状態から燃焼段数3に燃焼状態を移行する場合においては、着火手段22による燃焼領域Aへの点火を行わない点を除けば、前記した燃焼段数3での燃焼制御とほぼ同様の動作が実施される。すなわち、給湯運転中に目標燃焼量が変更されて、燃焼段数3への移行が決定すると、まず、ガス比例弁37の開度を燃焼段数3の緩点火動作用の固定開度に調整する。その状態で、燃焼領域Bに対応する電磁弁38bを開成して、燃焼領域Aと燃焼領域Bとの間で火移りを行い、双方の燃焼領域A、Bで緩点火動作を実施する。そして、緩点火動作が終了すれば、ガス比例弁37の開度を実際の目標燃焼量に基づいた開度に調整して、燃焼領域A、Bの双方で通常の燃焼制御を行う。
また、燃焼段数2→燃焼段数5、燃焼段数4→燃焼段数2等、いずれの状態から段数切換制御を行っても同様の動作が行われる。すなわち、給湯運転中の段数切換制御においては、重複した説明を避けるため、説明を省略し、
図7の表に示す。
【0043】
続いて、給湯運転時における燃焼部3の特徴的機能について説明する。
本実施形態の燃焼装置1では、前記したように、段数切換制御を行って、新たに燃焼領域を燃焼させる場合には、緩点火動作が実施される。この緩点火動作は、ガス比例弁37の開度を、比較的小さなガス二次圧に調整して、新たに燃焼させる燃焼領域に対して安定的に火移りが行われるようにした動作モードである。
【0044】
そして、本実施形態では、緩点火動作が、
図8のタイムチャートに示すように、移行期と安定期の二部構成である。すなわち、緩点火動作に移行すると、まず、送風機5のモータの回転数が所定数(燃焼段数ごとに設定された固定の回転数)に向けて移行する移行期(例えば0.1〜1.0秒程度の間)に突入する。このとき、同時にガス比例弁37の開度が、送風機5の回転数に追従するように調整される。そして、送風機5のモータの回転数が所定数に至り、移行期が終了すると、安定期(例えば0.6〜0.8秒程度の間)に突入する。そして、安定期においては、所定の送風量と、所定のガス二次圧に調整された状態で燃焼制御が実施される。そして、安定期が終了すると同時に、本来の目標燃焼量に応じた燃焼制御が実施される。
【0045】
また、本実施形態では、緩点火動作が、緩点火動作への突入のきっかけとなった目標燃焼量(以下、移行時燃焼量ともいう)、あるいは、移行期に変更された目標燃焼量を、安定期における制御に反映させるような制御が行われる。つまり、緩点火動作では、移行期における給湯端末60の操作によって変更される情報(設定温度や出湯量)に基づいて当該緩点火動作モードの制御のための目標燃焼量を更新することが可能である。一方で、本実施形態では、安定期における給湯端末60の操作は、当該緩点火動作モードのための目標燃焼量を更新することは一切ない。
なお、緩点火動作中においては、移行期あるいは安定期に関わらず、緩点火動作後に行われる通常の燃焼制御のために、入水温度、入水量、並びに、出湯温度等の情報そのものは検出されている。
【0046】
そして、本実施形態の燃焼装置1では、緩点火動作、特に移行期に幾度となく目標燃焼量が変更された場合であっても、従来のように意図しない高温の湯が出湯しないように、移行期において変更された目標燃焼量に応じた燃焼段数のうち、最下限の燃焼段数で、新たな緩点火動作を行う下限段数優先機能が備えられている。つまり、下限段数優先機能は、安定期における燃焼制御の基準として、移行期における最下限の燃焼段数を使用することを可能とした機能である。
以下、下限段数優先機能を加味した緩点火動作について、
図9のフローチャートに従って説明する。
【0047】
給湯運転が開始され、給湯端末60の操作によって目標燃焼量が変更されて、緩点火動作が実施されると、ステップ1からステップ2に移行する。ステップ2では、移行期において目標燃焼量が変更されたか否かが確認される。そして、ステップ2において、目標燃焼量の変更が確認されていれば、ステップ3に移行する。なお、ステップ2において、移行期における目標燃焼量の変更が確認されなければ、ステップ4に移行する。
【0048】
ステップ3では、移行期において変更された最新の目標燃焼量に応じた燃焼段数が、緩点火動作に移行する直前の燃焼段数と同一か否かが確認される。そして、ステップ3において、前記最新の目標燃焼量に応じた燃焼段数が、緩点火動作に移行する直前の燃焼段数と同一でなければ、ステップ4に移行する。
【0049】
ステップ4では、下限段数優先機能による安定期の燃焼制御が実施される。すなわち、ステップ4では、安定期に突入しており、移行期において1又は複数回変更された目標燃焼量に応じた燃焼段数のうち、最下限の燃焼段数を基準とした燃焼制御が実施される。例えば、移行期において、需要者等が、
図10に示すように、燃焼段数4→燃焼段数3→燃焼段数5という具合に燃焼段数の切換を行った場合であれば、最下限の燃焼段数として、燃焼段数3が採用される。すなわち、この場合、安定期は、燃焼段数3に基づいた固定燃焼量で燃焼が行われる。
【0050】
そして、下限段数優先機能による燃焼制御が終了して、安定期が終了すれば(ステップ5)、ステップ6に移行し、実際の目標燃焼量に応じた燃焼段数に基づいた通常の燃焼制御が実施される。具体的には、安定期において給湯端末60が操作されていなければ(目標燃焼量が変更されていなければ)、移行期における最新の目標燃焼量(前記例によれば、燃焼段数5に対応する目標燃焼量)に基づいた燃焼制御が行われ、安定期において目標燃焼量が変更されていれば、その変更された最新の目標燃焼量に基づいた燃焼制御が行われる。そしてその後は、燃焼装置1が運転されている限り、再びステップ1に戻って、それ以降の動作が繰り返される。
【0051】
なお、ステップ6において、移行期における最新の目標燃焼量と、安定期の基準となった目標燃焼量との間に差があったり、また安定期に変更された最新の目標燃焼量と、安定期の基準となった目標燃焼量との間に差があった場合には、再び燃焼段数を変更する必要があるため、新たに緩点火動作を行い、前記同様の動作が実施された後、通常の燃焼制御が実施される。前記した例によれば、燃焼段数3(移行期における最下限燃焼段数)を基準にした緩点火動作を行った後に、燃焼段数5(移行期における最新目標燃焼量又は安定期における最新目標燃焼量)を基準にした緩点火動作を改めて行い、その後に、通常の燃焼制御に移行する。
【0052】
一方、ステップ3において、移行期において変更された最新の目標燃焼量に応じた燃焼段数が、緩点火動作に移行する直前の燃焼段数と同一の場合においては、ステップ7に移行して、以後の緩点火動作を終了する。すなわち、本実施形態では、移行期における最新の目標燃焼量に応じた燃焼段数と、緩点火動作に移行する直前の燃焼段数とが同一であれば、安定期に突入することなくステップ7に移行して、緩点火動作に移行する直前の燃焼段数で、目標燃焼量に応じた通常の燃焼制御が実施される。
【0053】
以上のように、本実施形態の燃焼装置1では、緩点火動作の移行期に幾度となく目標燃焼量が変更されたとしても、その変更された目標燃焼量に応じた燃焼段数のうち、最下限の燃焼段数を安定期における燃焼制御の基準にすることが可能である。そのため、従来のように、緩点火動作時における出湯量や設定温度の変更に起因して、意図しない高温の湯が出湯してしまうおそれがない。
【0054】
また、本実施形態の燃焼装置1は、緩点火動作の移行期に幾度となく目標燃焼量が変更された場合であって、移行期における最新の目標燃焼量に応じた燃焼段数と、緩点火動作に移行する直前の燃焼段数とが同一であれば、安定期以降の動作が省略されるため、不要な緩点火動作の実施によって、燃焼制御が不安定に陥ってしまうことが防止される。
【0055】
上記実施形態では、緩点火動作を制御するための情報が、移行期においてのみ更新される構成としたが、本発明はこれに限定されず、安定期においても更新される構成であっても構わない。
【0056】
上記実施形態では、3つの燃焼領域A〜Cに区分された燃焼部3を備えた燃焼装置1を示したが、本発明はこれに限定されず、2つ又は4つ以上の燃焼領域に区分された燃焼部を備えた燃焼装置であっても構わない。また、同様に、各燃焼領域に対応するバーナ群には、上記実施形態以外の数のバーナ11が設けられたものであっても構わない。
【0057】
上記実施形態では、全てのバーナ群21a〜21cが、いずれかの電磁弁38a〜38cによって、燃料ガスの供給が規制される構成を示したが、本発明はこれに限定されず、少なくともバーナ群21a〜21cのうちのいずれか2つが、電磁弁38によって、燃料ガスの供給が規制される構成であっても構わない。
【0058】
上記実施形態では、給湯運転のみが実施できる燃焼装置1を示したが、本発明はこれに限定されず、給湯運転に加えて、あるいは、替えて、風呂落とし込み運転や追い焚き運転、並びに、暖房運転等の実施が可能な燃焼装置であっても構わない。