【実施例】
【0037】
以下、本発明を
参考例及び実施例により詳細に説明する。
【0038】
[
参考例1〜9及び比較例1〜2]
ポリエチレン(PE)の原料として化粧品のチューブ、ポリプロピレン(PP)の原料としてCDケース、ポリエチレンテレフタレート(PET)の原料としてペットボトル、ポリカーボネート(PC)の原料として自動販売機の取り出し口、ポリ塩化ビニル(PVC)の原料として水道の塩ビ管、ポリスチレン(PS)の原料としてテレビの外枠、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)の原料として自動車の部品(エンジニアリングプラスチックのバリ)を使用して、各廃プラスチック原料を径3〜8mmに粉砕し、プラスチック成分が表1に示す割合となるように配合して、粉砕廃プラッスチック配合物80kgを得た。これを20分間混合して均一な混合物を得た。該混合物をスクリュー部温度が260〜280℃に設定された押出機(東伸工業株式会社製、型式BV5-5139)のホッパーに投入し、57rpmのスクリュー回転数で混練して配合物を得ると共に、150kg/時間の速度で押出成形してペレットを得た。このペレットを用いて厚さ約3.0cmの板状体に成形した。
【0039】
この板状成形物から長さ180cm、幅9cm、厚さ約3.0cmの
参考例1〜9(No.1−9)及び比較例1(No.C-1)の試験片を作成した。なお、比較例2(No.C-2)のペレットからは一体の形状となった板状成形物は得られなかった。10個の試験片No.1〜9及びNo.C-1について、下記の測定条件で放射線遮蔽効果を測定した。
【0040】
<測定装置>
品名:シンチレーションサーベイメータ
規格:ALOKA γ SURVEY METER TCS-171
(Cs134およびCs137由来のγ線の検出に用いた)
<試料>
放射線量約5万Bq/kgの汚染土壌:200 g
(汚染防止のため、上記土壌をビニール袋に入れた上、プラスチックの容器に入れて使用した。)
<測定方法>
(1)試料がない状況での線量を測定した(バックグラウンド測定)。
(2)検出器から線源までの距離が10cmの時の線量*を、遮蔽体を設置せず測定した。
(3)検出器から線源までの距離が10cmの時の線量*を、汚染土壌の入った該プラスチック容器の前に遮蔽体(各試験片、厚さ約3.0cm)を設置して測定した。
【0041】
【表1】
【0042】
**遮蔽率は以下の式を用いて求めた。
遮蔽率(%)=(a−b
x)/a×100 (1)
ここで、
a:遮蔽体なしでの線量。
b
x:x枚の遮蔽体での線量。
ここでの線量には、バックグラウンドの線量を引いた値をあてはめた。
【0043】
***半価層(x
1/2)、即ち、放射線量が半分になる遮蔽体の厚さ(cm)、は以下の式を用いて求めた。
x
1/2 = (ln 2)/μ=d×(log 1/2)/log t (2)
ここで、
x
1/2:半価層(cm)
μ:質量減弱係数(cm
2/g)
d:遮蔽体の厚さ(cm)
t:γ線の透過率=(100-遮蔽率)/100
【0044】
参考として、鉛、鉄及び水の半価層(cm)を下記の表2に示す(放射線概論 柴田徳思編 第7版)。
【0045】
【表2】
【0046】
各遮蔽体(試験片)の放射線遮蔽率の測定結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
上記表3の結果から、遮蔽体No.1−9の放射線遮蔽率を比較したところ、No.4(16.2 %)とNo.6(16.5 %)が比較的高い遮蔽率であることがわかった。同種の遮蔽体の中でも厚さや密度の違いが見られ、試験に用いる遮蔽体やその枚数などを変えるとやや遮蔽率が変わるものがあった。
【0049】
[実施例
1〜2]
参考例1〜9と同様にして、プラスチック成分が表4に示す割合となるように配合した粉砕廃プラッスチック配合物80kgを20分間混合して均一な混合物を得た。該混合物をスクリュー部温度が260〜280℃に設定された押出機(東伸工業株式会社製、型式BV5-5139)のホッパーに投入し、57rpmのスクリュー回転数で混練して配合物を得ると共に、150kg/時間の速度で押出成形してペレットを得た。このペレットを用い厚さ約3.3cmの板状体に成形した。
【0050】
この板状成形物から長さ180cm、幅9cm、厚さ約3.3cmの実施例
1〜2(
遮蔽体No.10−11)の試験片(遮蔽体)を作成した。
【0051】
【表4】
【0052】
試験片(遮蔽体)No.10〜11について、
参考例1〜9と同じ測定装置及び同じ試料(汚染土壌200g)を用いて、各試験片の放射線遮蔽効果を以下の測定方法で測定した。
<測定方法>
従来通りの測定法、及び鉛遮蔽を行う測定法の両方の測定法で行った。両測定法において、
(1)試料がない環境の線量率*を測定(BG測定)。
(2)検出器から試料までの距離が10cmのときの空間線量率*を測定。測定値からBG値を引いた値をaとする。
(3)線源の前に遮蔽体を1枚設置し測定。測定値からBGを引いた値をb
1とする。
(4)遮蔽体2枚を設置し、測定(b
2)。
(5)測定値から遮蔽率**と半価層***をそれぞれ算出。
*2分間での平均線量率を3回測定し、平均した値をその条件での線量率とした。
単位はμGy/h 。
**遮蔽率は以下の式を用いて求めた。
遮蔽率(%)=(a−b
x)/a×100 (1)
ここで、
a:遮蔽体なしでの空間線量率。
b
x:遮蔽体x枚での空間線量率。
***半価層(x
1/2)は以下の式を用いて求めた。
x
1/2 = (ln 2)/μ=d×(log 1/2)/log t (2)
ここで、
x
1/2:半価層(cm)
μ:質量減弱係数(cm
2/g)
d:遮蔽体の厚さ(cm)
t:γ線の透過率=(100-遮蔽率)/100
【0053】
参考として、鉛、鉄及びコンクリートの半価層(cm)と1/10価層(放射線量が1/10になる遮蔽体の厚さ(cm))(放射線管理の実際、丸善)を下記の表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
試験片No.10-11の放射線遮蔽測定結果を表6〜7に示す。
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
鉛遮蔽を行う測定法は、汚染土壌の入ったプラスチック容器の前方以外を鉛板で遮蔽して、環境放射線の影響を可能な限り減じた方法であるが、鉛遮蔽測定法の方が、誤差が小さい。
【0059】
コンクリートの密度はほぼ2であり、本発明の成形物の密度の約2倍である。従って、本発明の成形物(遮蔽体)は、半価層が
60Coを用いて測定して約14cm以下、
137Csを用いて測定して約18cm以下であれば、重量換算でコンクリ―トに匹敵する遮蔽率を有することになる。
【0060】
[実施例
3]
参考例1〜9と同様にして、プラスチック成分が表8に示す割合となるように配合した粉砕廃プラッスチック配合物80kgを20分間混合して均一な混合物を得た。該混合物をスクリュー部温度が260〜280℃に設定された押出機(東伸工業株式会社製、型式BV5-5139)のホッパーに投入し、80rpmのスクリュー回転数で混練して配合物を得ると共に、150kg/時間の速度で押出成形してペレットを得た。このペレットを用い厚さ約3.3cmの板状体に成形した。
【0061】
この板状成形物から長さ180cm、幅9cm、厚さ約3.3cmの実施例
3(No.12)の試験片(遮蔽体)を作成した。
【0062】
【表8】
【0063】
試験片(遮蔽体)No.12について、
参考例1〜9と同じ測定装置及び同じ試料(汚染土壌200g)を用いて、試験片の放射線遮蔽効果を、実施例
1〜2の鉛遮蔽を行う測定方法を用いて測定した。測定方法、並びに遮蔽率及び半価層の算出式は、実施例
1〜2に記載の測定方法、並びにそれぞれ式(1)及び(2)の通りである。
【0064】
【表9】
【0065】
[実施例
4]
参考例1〜9と同様にして、プラスチック成分が表10に示す割合となるように配合した粉砕廃プラッスチック配合物80kgを20分間混合して均一な混合物を得た。該混合物をスクリュー部温度が260〜280℃に設定された押出機(東伸工業株式会社製、型式BV5-5139)のホッパーに投入し、80rpmのスクリュー回転数で混練して配合物を得ると共に、150kg/時間の速度で押出成形してペレットを得た。このペレットを用い約3.3cmの遮蔽板に成形した。
【0066】
【表10】
【0067】
試料として、
(a)飯舘村の汚染土壌(200g)
(b)
60Co放射線源
を用いた。
試料(a),(b)について、
参考例1〜9と同じ測定装置を用いて、遮蔽板No.13の放射線遮蔽効果を下記の測定方法で測定した。但し、試料(b)の場合は、遮蔽板が8枚までの測定を行った。
【0068】
<測定方法>
(1)試料がない環境の線量率*を測定(BG測定)。
(2)検出器から試料までの距離が36cmのときの空間線量率*を測定。測定値からBG値を引いた値をaとする。
(3)線源の前に遮蔽体を1枚設置し測定。測定値からBGを引いた値をb
1とする。
(4)2枚から10枚まで遮蔽体の枚数を増やし、それぞれ線量率を測定(b
2 - b
10)。
(5)測定値から遮蔽率**と半価層***をそれぞれ算出。
*2分間での平均線量率を3回測定し、平均した値をその条件での線量率とした。
単位はμGy/h 。
遮蔽率及び半価層の算出式は実施例
1〜2に記載のそれぞれ式(1)及び(2)の通りである。
試料(a)の測定結果を表11と
図1に、試料(b)の測定結果を表12と
図2に示す。
【0069】
【表11】
【0070】
【表12】
【0071】
上記表11〜12の結果及び
図1〜2のグラフから、遮蔽体厚さが約33cmまでは、半価層(cm)の値がほぼ一定であることが分かる。
【0072】
遮蔽板No.13と同じ組成(PP:0、PE:40.0重量%、PET:30.0重量%及びPPS:30.0重量%)の平板について、以下の耐光試験及び3点曲げ試験を行った。
<試料>
実施例
4で得たペレット(PP:0、PE:40.0重量%、PET:30.0重量%及びPPS:30.0重量%)から、下記表13に示す寸法の5個の平板状試験片No.1〜5(長さ:147mm、厚さ及び幅は表13に示す通り)を取り出し、耐光試験及び3点曲げ試験に供した。
【0073】
【表13】
【0074】
<耐光試験及び3点曲げ試験の条件>
光源60W/m
2、降雨16分/2時間、気温63度、湿度50%の条件に試験片No.1〜5を0〜240時間光暴露した。
<光暴露装置>
スーパーキセノンウェザーメーターSX75(スガ試験株式会社製)
製造番号 WXYD1042
<曲げ試験の測定装置>
AUTOGRAPH AG−kN (株式会社 島津製作所製)
機械番号 20096882
<曲げ試験の測定方法>
2つの支点間(径4mm、長さ50mm、2つの支点間距離100mm、鉄製)に平板の試験片を載せ、該試験片の2つの支点の中央(各支点の中心から50mm)に相当する位置を、押し治具(径10mm、長さ50mm、鉄製)で10mm/分の押し速度で押して、曲げ試験を行った。
即ち、0時間、48時間、144時間、240時間経過の各時点において、各試験片の寸法、最大荷重、撓み量を測定した。曲げ応力σ(=曲げ強さ)は下記の計算式に従って算出した。
σ=3PL/2Wh
2
ここで、P:最大荷重(N)、L=下部支点間距離(mm)、W=試験片幅(mm)、h=試験片厚さ(mm)。
【0075】
試験片1〜5は、240時間の耐光試験後も外観上変化がなかった。
3点曲げ試験の結果を表14に示す。
【0076】
【表14】