(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1光源から出力された光の光路を第1試料光路と第1参照光路とに分割し、前記第1試料光路を通過する第1信号光で試料の所定領域をスキャンし、前記第1試料光路を経由した第1信号光と前記第1参照光路を経由した第1参照光とを干渉させて第1干渉光を生成し、生成された第1干渉光を検出する第1干渉光学系と、
第1干渉光の検出結果に基づいて、前記第1試料光路と前記第1参照光路との間の光路長差を変更する光路長差制御部と、
前記光路長差制御部による光路長差の変更量を示す変更量情報を取得する変更量情報取得部と、
第2光源から出力された光の光路を第2試料光路と第2参照光路とに分割し、前記第2試料光路を通過する第2信号光で前記所定領域をスキャンし、前記第2試料光路を経由した第2信号光と前記第2参照光路を経由した第2参照光とを干渉させて第2干渉光を生成し、生成された第2干渉光を検出する第2干渉光学系と、
第2干渉光の検出結果に基づいて前記所定領域の断層情報を取得する断層情報取得部と、
前記変更量情報取得部により取得された変更量情報と、前記断層情報取得部により取得された断層情報とに基づいて、前記所定領域における屈折率分布を取得する屈折率分布取得部と
を有する光学特性計測装置。
第1光源から出力された光を第1信号光と第1参照光とに分割し、第1信号光で試料の所定領域をスキャンし、前記試料を経由した第1信号光と第1参照光とを干渉させて第1干渉光を生成し、生成された第1干渉光を検出する第1検出ステップと、
第1干渉光の検出結果に基づいて、第1信号光の光路と第1参照光の光路との間の光路長差を変更する光路長差制御ステップと、
前記光路長差制御ステップによる光路長差の変更量を示す変更量情報を取得する変更量情報取得ステップと、
第2光源から出力された光を第2信号光と第2参照光とに分割し、第2信号光で前記所定領域をスキャンし、前記試料を経由した第2信号光と第2参照光とを干渉させて第2干渉光を生成し、生成された第2干渉光を検出する第2検出ステップと、
第2干渉光の検出結果に基づいて前記所定領域の断層情報を取得する断層情報取得ステップと、
前記変更量情報取得ステップで取得された変更量情報と、前記断層情報取得ステップで取得された断層情報とに基づいて、前記所定領域における屈折率分布を取得する屈折率分布取得ステップと
を含む光学特性計測方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
光学特性計測装置および光学特性計測方法の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。実施形態は、層構造を有する任意の試料の光学特性を取得するために用いられる。試料の例としては、前述した細胞シートだけでなく、光導波路構造を有する光波長多重フィルタなどがある。
【0016】
実施形態は、特許文献1等に示す位相差計測技術と、特許文献2等に示すOCT技術とを組み合わせることにより、試料の異常検出の確度向上を図るものである。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
【0017】
(位相差計測技術の概要)
実施形態に用いられる位相差計測技術の概要を説明する。計測される位相差は、低屈折率領域を通過した光と、高屈折率領域を通過した光との位相差である。低屈折率領域の屈折率をn
L、高屈折率領域の屈折率をn
H、試料の厚みをt、光の波長をλとすると、位相差Δφは次式で得られる:Δφ=2πt(n
H−n
L)/λ。ここで、高屈折率領域を通過する光の光路長(光学的距離)を位相差Δφに相当する分だけ変更すれば、双方の光の間の位相差が0となる。よって、光路長の変更量を検出することで、位相差Δφを取得することができる。さらに、試料の厚みtが既知であれば、上記式に基づいて屈折率差Δn=n
H−n
Lが得られる。
【0018】
この位相差計測技術は、この原理を利用して、光路長が一定の光路(第1参照光路)を経由する光(第1参照光)と、試料の光学特性が光路長に影響を与える光路(第1試料光路)を経由する光(第1信号光)との干渉光を検出することにより、試料の光学特性を示す情報を取得するものである。この情報としては、第1参照光(第1参照光路)を基準とした光路長差の分布、位相差の分布、屈折率差の分布などがある(これら分布は等価である)。
【0019】
(OCT技術の概要)
実施形態に用いられるOCT技術の概要を説明する。OCTは、試料を経由した信号光(第2信号光)を参照光(第2参照光)と干渉させて得られる干渉光を検出することで、第2信号光が経由した試料の部位の断層情報を取得する光計測技術である。実施形態において適用可能なOCTの方式は任意である。OCTの方式には、スウェプトソース方式、スペクトラルドメイン方式、タイムドメイン方式などがある。
【0020】
スウェプトソース方式では、波長掃引光源を用いて出力光の波長を高速で掃引しつつ各計測点(Aライン)を計測し、それにより得られる一連の干渉光を検出する。そして、この検出結果に信号処理を施すことで、Aラインの断層情報が取得される。この断層情報は、Aラインにおける反射強度分布を示す。複数のAラインについて取得された断層情報を配列させることにより、2次元または3次元の断層情報(断層像データ)が形成される。
【0021】
スペクトラルドメイン方式では、スーパールミネセントダイオード(SLD)などの広帯域光源と、分光器とが用いられる。広帯域光源から出力された広帯域光はAラインに照射され、Aラインの様々な深度からの反射光の混合光を分光器で検出する。それにより得られたスペクトルに信号処理を施すことで、Aラインにおける反射強度分布を示す断層情報が取得される。複数のAラインについて取得された断層情報を配列させることにより、2次元または3次元の断層情報(断層像データ)が形成される。
【0022】
タイムドメイン方式では、広帯域光源と、第2参照光の光路(第2参照光路)の光路長を変調する光路長変調部とが用いられる。光路長変調部は、たとえば、第2参照光路に設けられたミラーと、このミラーを光軸方向に移動させる駆動機構(圧電素子など)とを含む。この方式では、第2参照光路の光路長を変調して干渉深度を変化させつつAラインの一点一点を広帯域光で計測し、その反射強度を検出する。それにより得られた複数の反射強度情報を深度方向に配列させることで、Aラインの断層情報が得られる。さらに、複数のAラインについて取得された断層情報を配列させることにより、2次元または3次元の断層情報(断層像データ)が形成される。
【0023】
〈第1の実施形態〉
図1に示す光学特性計測装置1は、第1干渉光学系10と、第2干渉光学系30とを有する。第1干渉光学系10は位相差計測に用いられ、第2干渉光学系30はOCT計測に用いられる。
【0024】
なお、
図1には、主として、第1干渉光学系10の光路と第2干渉光学系30の光路との組み合わせ形態が示されており、幾つかの光学部材は省略されている。たとえば、第1干渉光学系10には、図示しない波長板やレンズが設けられている。また、第2干渉光学系30には、図示しないアッテネータや偏波コントローラ、レンズなどが設けられている。また、第1干渉光学系10や第2干渉光学系30は、光ファイバを用いたファイバ光学系として構成されていてもよい。
【0025】
光学特性計測装置1は、ステージ2に載置された試料Sの光学特性を計測する。なお、試料Sはステージ2に直接に載置されていてもよいし、試料Sが格納されたケースがステージ2に載置されていてもよい。後者の例として、細胞シートが格納されたペトリ皿をステージ2に載置することができる。
【0026】
駆動部3は、第1試料光路SP1の光軸に対して実質的に直交する方向にステージ2を移動させる。この実施形態の駆動部3は、第1試料光路SP1の光軸に対して実質的に直交する面内の任意方向に移動させることができる。それにより、試料Sと第1信号光とを相対的に2次元的に移動させることができる。
【0027】
この実施形態では、第1干渉光学系10と第2干渉光学系30とが対物レンズ14を共有しているので、駆動部3は、第1試料光路SP1の光軸および第2試料光路SP2の光軸に対して実質的に直交する方向にステージ2を移動させるように構成されている。このような構成により、試料Sの所定領域を第1信号光および第2信号光でスキャンすることができる。なお、駆動部3は、第1試料光路SP1等の光軸方向にもステージ2を移動可能とされていてもよい。
【0028】
駆動部3は、たとえば、ステージ2の移動可能方向に沿うレールと、ステージ2を移動させるための駆動力を出力するアクチュエータとを含む。駆動部3は、演算制御部80による制御を受けて動作する。
【0029】
(第1干渉光学系10)
第1干渉光学系10の機能について説明する。第1干渉光学系10は、第1光源11から出力された光の光路を、第1試料光路SP1と、第1参照光路RP1とに分割する。続いて、第1干渉光学系10は、第1試料光路SP1を通過する第1信号光により、試料Sの所定領域をスキャンする。さらに、第1干渉光学系10は、第1試料光路SP1を経由した第1信号光と、第1参照光路RP1を経由した第1参照光とを干渉させて、第1干渉光を生成する。そして、第1干渉光学系10は、生成された第1干渉光を検出する。このような機能を実現するための構成例を以下に説明する。
【0030】
第1光源11としては、たとえば、コヒーレントなレーザ光源が用いられる。第1光源11から出力された光の光路は、ビームスプリッタ12により第1試料光路SP1と第1参照光路RP1とに分割される。ビームスプリッタ12は、たとえばハーフミラーである。
【0031】
ビームスプリッタ12を透過して第1試料光路SP1に導かれた光(第1信号光)は、たとえばダイクロイックミラーからなるビームスプリッタ13により反射される。さらに、第1信号光は、対物レンズ14を介して試料Sに照射される。試料Sおよびステージ2を透過した第1信号光は、対物レンズ15を経由し、さらに反射ミラー16、17および18を経由してビームスプリッタ19に到達する。ビームスプリッタ19は、たとえばハーフミラーである。
【0032】
一方、ビームスプリッタ12により反射された光(第1参照光)は、第1参照光路RP1を介してビームスプリッタ19に到達する。
【0033】
第1試料光路SP1を経由した第1信号光と、第1参照光路RP1を経由した第1参照光は、ビームスプリッタ19によって干渉する。それにより得られる干渉光(第1干渉光)は、第1検出部20によって検出される。第1検出部20は、第1干渉光の強度を示す検出信号を出力する。第1検出部20としては、たとえば、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管、フォトダイオード、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなどが用いられる。
【0034】
(光路長差制御部50)
光路長差制御部50は、第1検出部20による第1干渉光の検出結果に基づいて、第1試料光路SP1と第1参照光路RP1との間の光路長差を変更する。光路長差制御部50は、反射ミラー16、17および18、並びにビームスプリッタ19を一体的に移動させることにより、第1試料光路SP1の光路長を変更する。以下、光路長差制御部50により移動される反射ミラー16、17および18、並びにビームスプリッタ19をまとめて「移動対象」と呼ぶことがある。光路長差制御部50は、第1検出部20からの検出信号を処理する信号処理機能(電子回路、プロセッサ等)と、この信号処理機能による処理結果に基づいて移動対象を移動させる機能(アクチュエータ等)とを有する。
【0035】
この実施形態では、第1試料光路SP1の光路長を変更することで光路長差を変更しているが、第1参照光路RP1の光路長を変更する構成や、双方の光路長を変更する構成を適用することも可能である。
【0036】
光路長差制御部50は、第1検出部20により検出される第1干渉光の強度が所定値となるように光路長差の変更を行う。そのために、光路長差制御部50は、特許文献1と同様のフィードバック制御を実行する。このフィードバック制御は次のように実行される。光路長差制御部50は、第1検出部20からの検出信号と所定の定電圧との差分を取得し、ローパスフィルタを介して移動対象を一体的に移動させる。その場合、光路長差制御部50は、差分回路、ローパスフィルタおよび駆動機構を有する。駆動機構としては、たとえば圧電素子が用いられる。このフィードバック制御は、第1信号光と第1参照光との位相差が常に所定量になるように行われる。このようなフィードバック制御を行うことにより、第1信号光による試料Sのスキャンにおいて、試料Sを介する第1試料光路SP1の光路長が実質的に一定となる。
【0037】
(変更量情報取得部60)
変更量情報取得部60は、光路長差制御部50による光路長差の変更量を示す変更量情報を取得する。変更量情報は、光路長差の変更量自体には限られず、それと等価な情報であればよい。この実施形態では、変更量情報取得部60は、第1試料光路SP1の光路長の変更量を示す変更量情報を取得するようになっている。光路長差制御部50が上記構成を有する場合、変更量情報取得部60は、第1試料光路SP1の光路長の変更量を示す変更量情報として、光路長差制御部50の圧電素子に対する印加電圧を検出する。
【0038】
変更量情報取得部60による変更量情報の取得は、第1信号光による試料Sのスキャン、および、光路長差制御部50によるフィードバック制御と並行して実行される。この統合的な制御は演算制御部80により行われる。それにより、変更量情報取得部60は、光路長差の変更量の時系列変化を示す変更量情報を取得する。変更量情報は、演算制御部80に送られる。圧電素子に対する印加電圧を検出する上記例の場合、変更量情報には、この印加電圧のスキャンに伴う時系列変化、つまりスキャンされた複数の計測点に対応する印加電圧の値が含まれる。
【0039】
(第2干渉光学系30)
第2干渉光学系30の機能について説明する。第2干渉光学系30は、第2光源31から出力された光の光路を、第2試料光路SP2と、第2参照光路RP2とに分割する。続いて、第2干渉光学系30は、第2試料光路SP2を通過する第2信号光により、試料Sの所定領域をスキャンする。さらに、第2干渉光学系30は、第2試料光路SP2を経由した第2信号光と、第2参照光路RP2を経由した第2参照光とを干渉させて、第2干渉光を生成する。そして、第2干渉光学系30は、生成された第2干渉光を検出する。このような機能を実現するための構成例を以下に説明する。
【0040】
第2光源31としては、OCTの方式に応じた光源が用いられる。たとえば、スウェプトソース方式の場合には波長掃引光源が用いられ、スペクトラルドメイン方式やタイムドメイン方式の場合には広帯域光源が用いられる。第2光源31から出力された光の光路は、ビームスプリッタ32により第2試料光路SP2と第2参照光路RP2とに分割される。ビームスプリッタ32は、たとえばハーフミラーである。
【0041】
ビームスプリッタ32を透過して第2試料光路SP2に導かれた光(第2信号光)は、反射ミラー33により反射され、ビームスプリッタ34を透過し、ビームスプリッタ13を透過する。ここで、ビームスプリッタ13は、第1光源11の出力波長を反射し、かつ第2光源31の出力波長を透過させるダイクロイックミラーである。このビームスプリッタ13により、第1試料光路SP1と第2試料光路SP2とが合成される。
【0042】
さらに、第2信号光は、対物レンズ14を介して試料Sに照射される。第2信号光は、試料Sの様々な深度にて散乱・反射される。試料Sによる第2信号光の後方散乱光(同じく第2信号光と呼ぶ)は、対物レンズ14を経由し、ビームスプリッタ13を透過し、ビームスプリッタ34に反射され、反射ミラー35に反射され、ビームスプリッタ39に到達する。ビームスプリッタ32からビームスプリッタ39までの当該経路が第2試料光路SP2に相当する。
【0043】
一方、ビームスプリッタ32により反射された光(第2参照光)は、第2参照光路RP2に配置された反射ミラー36、37および38を介してビームスプリッタ39に到達する。なお、OCTの原理にしたがい、第2試料光路SP2の光路長と第2参照光路RP2の光路長とがほぼ同じになるように、第2干渉光学系30は設計される。
【0044】
第2試料光路SP2を経由した第2信号光と、第2参照光路RP2を経由した第2参照光は、ビームスプリッタ39によって干渉する。それにより得られる干渉光(第2干渉光)は、第2検出部40によって検出される。第2検出部40は、OCT方式に応じた構成を有する。たとえばスウェプトソース方式やタイムドメイン方式ではフォトディテクタやバランスドフォトディテクタが用いられ、スペクトラルドメイン方式では分光器が用いられる。
【0045】
(断層情報取得部70)
断層情報取得部70は、第2検出部40による第2干渉光の検出結果に基づいて、試料Sの所定領域の断層情報を取得する。試料Sの所定領域とは、第2信号光によってスキャンされた試料Sの領域である。断層情報取得部70は、OCT方式に応じた前述の処理を実行することで、第2干渉光の検出結果から断層情報を生成する。断層情報は、演算制御部80に送られる。
【0046】
(演算制御部80)
演算制御部80は、各種の演算処理や制御処理を実行する。たとえば、演算制御部80は、光学特性計測装置1の各部を制御する。また、演算制御部80は、屈折率分布取得部としての機能を有し、以下に説明する演算処理を実行する。
【0047】
演算制御部80は、変更量情報取得部60により取得された変更量情報と、断層情報取得部70により取得された断層情報とに基づいて、試料Sの所定領域における屈折率分布を取得する。試料Sの所定領域とは、位相差計測でスキャンされた領域と、OCT計測でスキャンされた領域との共通領域の全体または一部である。この実施形態では、たとえば、位相差計測とOCT計測で同じ領域をスキャンすることができる。このスキャンは、同時にまたは異なるタイミングで実行される。
【0048】
屈折率分布を取得する処理の例を説明する。演算制御部80は、第1信号光および第2信号光の双方のスキャンが行われた試料Sの各計測点について、以下の処理を実行する。なお、この実施形態では、ステージ2の移動により双方のスキャンが実行されるので、双方の計測における計測点の対応付けを自然に行うことが可能である。すなわち、双方のスキャンを同時に行う場合には、実質的に同時に検出された第1干渉光および第2干渉光が同一の計測点(Aライン)の情報を含むものであるから、これら干渉光に基づく変更量情報および断層情報を対応付けることができる。また、双方のスキャンが異なるタイミングで行われる場合には、双方のスキャンにおいてステージ2の位置情報と取得された情報(変更量情報、断層情報)とを関連付けておき、位置情報が(実質的に)同一である変更量情報と断層情報とを対応付けることができる。
【0049】
演算制御部80は、双方のスキャンの各計測点について、次の3段階の処理を行う。
(1)変更量情報取得部60により取得された変更量情報に基づいて、各計測点における試料Sの厚み方向の光学的距離情報を算出する。
(2)断層情報取得部70により取得された断層情報に基づいて、各計測点における試料Sの厚み方向の空間的距離情報を算出する。
(3)(1)で算出された光学的距離情報を、(2)で算出された空間的距離情報で除算することにより、各計測点における試料Sの屈折率を取得する。
【0050】
第1段階の処理について説明する。変更量情報には、前述のように、光路長差の変更量の時系列変化を示す情報が含まれる。たとえば、上記例のように圧電素子に対する印加電圧を検出する場合、変更量情報には、この印加電圧のスキャンに伴う時系列変化、つまり複数の計測点に対応する印加電圧の値が含まれる。演算制御部80は、各計測点に対応する印加電圧の値を、光路長の値に変換する。この処理は、あらかじめ取得された圧電素子の特性(印加電圧と変位との関係)に基づいて、各計測点の印加電圧に対応する変位を求めることにより実行される。求められた変位は、その計測点における試料Sの厚み方向の光学的距離を示す情報である。この情報が光学的距離情報として用いられる。なお、光学的距離とは、空間的距離に媒質の屈折率を乗算して得られる距離である。
【0051】
第2段階の処理について説明する。第2段階の処理は、以下に説明する原理に基づく演算を含む。断層情報は、各測定点における反射強度分布(Aラインプロファイル)を示す。Aラインプロファイルの例を
図2に示す。横軸は深度を示し、縦軸は信号強度(つまり反射強度)を示す。横軸において、所定の基準深度を0としている。基準深度は、試料Sよりも上方(対物レンズ14側)に設定される。Aラインプロファイルのピークα1は試料Sの上面に相当し、ピークα2は下面に相当する。ピークα1とピークα2との間の範囲が試料Sにおける反射強度分布に相当する。
【0052】
基準深度と試料Sの上面(ピークα1)との間の空間には、空気や水などの媒質が存在する。この媒質の屈折率は既知である。よって、基準深度と試料Sの上面との間の空間的距離Luを求めることが可能である。
【0053】
また、基準深度と試料Sの下面(ピークα2)との間の空間的距離Lbは既知であるとする。たとえば試料Sがステージ2に直接に載置されている場合、試料Sの下面とステージ2の上面とが接しているので、基準深度とステージ2の上面との間の空間的距離、つまり基準深度と試料Sの下面との間の空間的距離Lbを事前に取得することが可能である。また、試料Sがケースに格納されている場合、試料Sはケースの載置面上に配置される。よって、基準深度とステージ2の上面との間の空間的距離と、ケースの下端面と載置面との間の空間的距離とに基づいて、基準深度とケースの載置面との間の空間的距離、つまり基準深度と試料Sの下面との間の空間的距離Lbを事前に取得することが可能である。
【0054】
このように、基準深度と試料Sの上面との間の空間的距離Luと、基準深度と試料Sの下面との間の空間的距離Lbが既知であるから、空間的距離Lbから空間的距離Luを減算することで、この計測点における試料Sの厚み方向の空間的距離Lcが得られる:Lc=Lb−Lu。この空間的距離Lcは、この計測点における試料Sの厚みを示す。
【0055】
以上のようにして、複数の計測点に対応する複数の空間的距離Lc(厚み)が得られる。光学的距離についても同様である。複数の計測点には、スキャンに応じた順序が付されている。その順序に応じて複数の計測点を符号P(i)(i=1〜N)で示す。複数の計測点P(i)に対応するAラインプロファイル(空間的距離)と光路長差変更量A(光学的距離)との関係を
図3に示す。
【0056】
計測点P(i)(i=2〜N)における光路長差変更量A(i)は、計測点P(i−1)から計測点P(i)へのスキャンの移行に対応する光路長差の変更量を示す。一方、計測点P(i−1)から計測点P(i)へのスキャンの移行に対応する空間的距離は、計測点P(i)における空間的距離Lb(i)と、計測点P(i−1)における空間的距離Lb(i−1)との差分ΔLb(i)である:ΔLb(i)=Lb(i)−Lb(i−1)。光学的距離情報は、複数の計測点P(i)に対応する複数の光路長差変更量A(i)を含む。空間的距離情報は、複数の計測点P(i)に対応する複数の差分空間的距離ΔLb(i)を含む。
【0057】
第3段階の処理について説明する。演算制御部80は、第1段階の処理で算出された光学的距離情報を、第2段階で算出された空間的距離情報で除算することにより、各計測点P(i)における試料Sの屈折率を取得する。具体的には、演算制御部80は、各計測点P(i)について、光路長差変更量A(i)を差分空間的距離ΔLb(i)で除算することにより、この計測点P(i)における試料Sの屈折率n(i)を求める。それにより、複数の計測点P(i)における屈折率分布n(i)、つまりスキャンされた領域における屈折率分布n(i)が得られる。
【0058】
演算制御部80は、このようにして得られた情報に基づいて、試料Sの異常の検出を行う。この異常検出処理は、光路長差変更量A(i)、空間的距離Lb(i)、差分空間的距離ΔLb(i)、屈折率分布n(i)などに基づいて実行される。すなわち、この異常検出処理は、試料Sの内部構造を示す情報と、光学特性を示す情報とに基づいて実行される。
【0059】
具体例として、演算制御部80は、まず、あらかじめ設定された閾値に基づいて、屈折率n(i)が異常値を示す計測点P(i)を特定する。次に、演算制御部80は、各計測点P(i)について、構造的な特徴(形態的な特徴)が存在するか判定する。構造的な特徴の例として次のものがある:空間的距離Lb(i)が異常であるか(つまり厚みが異常であるか);差分空間的距離ΔLb(i)、ΔLb(i+1)等が異常であるか(つまり厚みが急激に変化していないか);OCT画像から検出できる異常があるか(特定層の厚みや形状に異常があるかなど)。そして、演算制御部80は、屈折率n(i)から特定された異常と、構造的な特徴とに基づいて、試料Sの異常部位を特定する。
【0060】
(ユーザインターフェイス90)
ユーザインターフェイス90は、図示しない表示部および操作部を有する。表示部は、演算制御部80による制御を受けて各種情報を表示する。表示される情報としては、上記異常判定の結果、位相差計測やOCT計測により取得された情報、OCT計測により取得された情報に基づく断層像、試料Sに関する情報などがある。操作部は、光学特性計測装置1の操作、各種情報の入力などに用いられる。
【0061】
(作用・効果)
光学特性計測装置1の作用および効果について説明する。
【0062】
光学特性計測装置1は、第1干渉光学系10と、光路長差制御部50と、変更量情報取得部60と、第2干渉光学系30と、断層情報取得部70と、演算制御部80とを有する。第1干渉光学系10、光路長差制御部50および変更量情報取得部60は、試料Sの位相差計測を行う。第2干渉光学系30および断層情報取得部70は、試料SのOCT計測を行う。
【0063】
第1干渉光学系10は次の作用を有する:第1光源11から出力された光の光路を、第1試料光路SP1と第1参照光路とに分割する;第1試料光路SP1を通過する第1信号光で、試料Sの所定領域をスキャンする;第1試料光路SP1を経由した第1信号光と、第1参照光路RP1を経由した第1参照光とを干渉させて、第1干渉光を生成する;生成された第1干渉光を検出する。
【0064】
光路長差制御部50は、第1干渉光学系10により得られた第1干渉光の検出結果に基づいて、第1試料光路SP1と第1参照光路RP1との間の光路長差を変更する。
【0065】
変更量情報取得部60は、光路長差制御部50による光路長差の変更量を示す変更量情報を取得する。
【0066】
第2干渉光学系30は次の作用を有する;第2光源31から出力された光の光路を、第2試料光路SP2と第2参照光路RP2とに分割する;第2試料光路SP2を通過する第2信号光で、試料Sの所定領域をスキャンする;第2試料光路SP2を経由した第2信号光と、第2参照光路RP2を経由した第2参照光とを干渉させて、第2干渉光を生成する;生成された第2干渉光を検出する。
【0067】
断層情報取得部70は、第2干渉光学系30により得られた第2干渉光の検出結果に基づいて、試料Sの所定領域の断層情報を取得する。
【0068】
演算制御部80は、変更量情報取得部60により取得された変更量情報と、断層情報取得部70により取得された断層情報とに基づいて、試料Sの所定領域における屈折率分布を取得する。この処理を行う演算制御部80は「屈折率分布取得部」に相当する。
【0069】
この実施形態において、屈折率分布取得部としての演算制御部80は、次の処理を実行するように構成されている。第1信号光および第2信号光のスキャンにより計測が行われる各計測点について、演算制御部80は、変更量情報取得部60により取得された変更量情報に基づき、この計測点における試料Sの厚み方向の光学的距離を算出する。さらに、演算制御部80は、断層情報取得部70により取得された断層情報に基づき、この計測点における試料Sの厚み方向の空間的距離を算出する。さらに、演算制御部80は、上記光学的距離を上記空間的距離で除算することにより、この計測点における試料Sの屈折率を取得する。
【0070】
この実施形態において、第1干渉光学系10および第2干渉光学系30は、次のように構成されている。第1試料光路SP1と第2試料光路SP2は、合成部材(ビームスプリッタ13)によって合成される。さらに、合成部材(ビームスプリッタ13)と試料Sとの間には、対物レンズ14が設けられる。そして、第1干渉光学系10は、対物レンズ14を介して第1信号光を試料Sに照射し、第2干渉光学系30は、対物レンズ14を介して第2信号光を試料Sに照射するように構成される。すなわち、第1干渉光学系10と第2干渉光学系30は、対物レンズ14を共有していてもよい。
【0071】
この実施形態の光学特性計測装置1は、載置部(ステージ2)と、駆動部3とを有する。載置部(ステージ2)には試料Sが載置される。駆動部3は、第1試料光路SP1の光軸および第2試料光路SP2の光軸に対して実質的に直交する方向に載置部(ステージ2)を移動させることにより、第1信号光および第2信号光で試料Sをスキャンする。
【0072】
この実施形態において、OCT計測の方式は任意である。スウェプトソース方式の場合、第2光源31は波長掃引光源であり、断層情報取得部70は、波長掃引光源による波長の掃引に伴い第2干渉光学系30により得られた第2干渉光の検出結果に基づいて断層情報を取得する。スペクトラルドメイン方式の場合、第2光源31は広帯域光源であり、第2干渉光学系30は、第2干渉光のスペクトルを検出する分光器(第2検出部40)を含み、断層情報取得部70は、分光器(第2検出部40)によるスペクトルの検出結果に基づいて断層情報を取得する。タイムドメイン方式の場合、第2光源31は広帯域光源であり、第2干渉光学系30は、第2参照光路RP2の光路長を変調する光路長変調部を含み、断層情報取得部70は、第2参照光路RP2の光路長の変調に伴い第2干渉光学系30により得られた第2干渉光の検出結果に基づいて断層情報を取得する。光路長変調部は、たとえば、反射ミラー36、37を一体的に移動させる圧電素子を含む。この圧電素子に対する電圧印加は演算制御部80が行う。
【0073】
このような光学特性計測装置1によれば、試料Sの光学特性計測(屈折率計測、位相差分布計測)および構造計測(OCT計測)の双方の結果に基づいて、試料Sの異常検出を高い確度で行うことができる。たとえば試料Sが細胞シートである場合、従来の位相差計測技術では、検出された異常が、細胞の変異に起因する光学特性の異常によるものか、或いは試料Sの構造(厚みの変化など)によるものか判別できなかったが、この実施形態によればこの判別を行うことが可能である。
【0074】
〈第2の実施形態〉
図4に示す光学特性計測装置100は、第1の実施形態と同様の第1干渉光学系10および第2干渉光学系30を有する。第1の実施形態との相違は、第2干渉光学系30にガルバノスキャナ41が設けられていることである。なお、光路長差制御部50、変更量情報取得部60、断層情報取得部70、演算制御部80およびユーザインターフェイス90については、第1の実施形態と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0075】
ガルバノスキャナ41は、第2試料光路SP2に設けられ、試料Sに向かう第2信号光を偏向することで試料Sのスキャンを行う。ガルバノスキャナ41は偏向光学系の一例である。ガルバノスキャナ41は、1つまたは2つの反射ミラーと、各反射ミラーの向きを変更する駆動機構とを含む。駆動機構は、演算制御部80の制御を受けて動作する。
【0076】
第1干渉光学系10による位相差計測のスキャンは、駆動部3によるステージ2の移動によって実行され、第2干渉光学系30によるOCT計測のスキャンは、ガルバノスキャナ41によって実行される。つまり、この実施形態では、2つの計測のスキャンが独立に実行される。
【0077】
この実施形態の光学特性計測装置100によれば、第1の実施形態と同様に、試料Sの光学特性計測および構造計測の双方の結果に基づいて、試料Sの異常検出を高い確度で行うことが可能である。
【0078】
偏向光学系はガルバノスキャナには限定されない。たとえばポリゴンミラー等の光学デバイスを偏向光学系として用いることができる。
【0079】
第1干渉光学系10に偏向光学系を設けることも可能である。この偏向光学系は、第1試料光路SP1に設けられ、試料Sに向かう第1信号光を偏向することで試料Sのスキャンを行う。第1干渉光学系10と第2干渉光学系30の双方に偏向光学系が設けられる場合、ステージ2を移動させるための駆動部3は不要である。また、第1信号光および/または第2信号光のスキャンを、駆動部3と偏向光学系の双方を連動制御して行うように構成することも可能である。
【0080】
〈第3の実施形態〉
図5に示す光学特性計測装置200は、第1の実施形態と同様の第1干渉光学系10および第2干渉光学系30を有する。第1の実施形態との相違は、第2参照光路RP2の光路長を変更する光路長変更部が第2干渉光学系30に設けられていることである。なお、光路長差制御部50、変更量情報取得部60、断層情報取得部70、演算制御部80およびユーザインターフェイス90については、第1の実施形態と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0081】
光路長変更部は、たとえば、反射ミラー37および38を、
図5に示す両側矢印が示す方向に移動させる駆動機構91を含んで構成される。駆動機構91は、演算制御部80の制御を受けて動作する。駆動機構91は、
図2を参照しつつ説明した基準深度を変更するために用いられる。
【0082】
細胞シートのように試料Sの厚みが不定である場合、基準深度を変更する必要が生じることがある。OCT計測においては、第2参照光路RP2の光路長と一致する第2試料光路SP2の光路長の位置において、干渉感度が最大となる。よって、OCT計測を高感度で行うには、試料Sの厚みに応じて第2試料光路SP2と第2参照光路RP2との光路長差を調整する必要がある。この実施形態では、第2参照光路RP2の光路長を変更することで、この光路長差を変更する。なお、第2試料光路SP2の光路長を変更可能な構成や、双方の光路長を変更可能な構成を適用することも可能である。
【0083】
この実施形態の光学特性計測装置200によれば、試料Sの厚みにかかわらず試料Sの異常検出を高い確度で行うことが可能である。
【0084】
〈第4の実施形態〉
上記の実施形態では、位相差計測用の光源(第1光源11)とOCT計測用の光源(第2光源31)とが別々に設けられている。この実施形態では、共通の光源を用いて位相差計測とOCT計測を行う構成について説明する。この共通の光源としては、波長掃引光源が用いられる。位相差計測においては波長掃引を行わずに所定波長の光が用いられ、OCT計測においては波長掃引が行われる。
【0085】
図6に示す光学特性計測装置300は、第1干渉光学系310および第2干渉光学系330を有する。なお、第1干渉光学系310と第2干渉光学系330は、一部の光学部材を共有している。また、光路長差制御部50、変更量情報取得部60、断層情報取得部70、演算制御部80およびユーザインターフェイス90については、第1の実施形態と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0086】
第1干渉光学系310について説明する。第1光源としての光源311から出力された光の光路は、ビームスプリッタ312により第1試料光路SP1と第1参照光路RP1とに分割される。ビームスプリッタ312は、たとえばハーフミラーである。
【0087】
ビームスプリッタ12により反射されて第1試料光路SP1に導かれた光(第1信号光)は、たとえばハーフミラーからなるビームスプリッタ313を透過し、対物レンズ314を介して試料Sに照射される。試料Sおよびステージ2を透過した第1信号光は、対物レンズ315を経由し、さらに反射ミラー316、317および318を経由してビームスプリッタ320に到達する。ビームスプリッタ320は、たとえばハーフミラーである。また、反射ミラー316、317および318、並びにビームスプリッタ320は、光路長差制御部50によって一体的に移動される。
【0088】
一方、ビームスプリッタ312を透過した光(第1参照光)は、たとえばハーフミラーからなるビームスプリッタ319により反射され、第1参照光路RP1を介してビームスプリッタ320に到達する。
【0089】
第1試料光路SP1を経由した第1信号光と、第1参照光路RP1を経由した第1参照光は、ビームスプリッタ320によって干渉する。それにより得られる干渉光(第1干渉光)は、第1検出部321によって検出される。第1検出部321は、第1干渉光の強度を示す検出信号を出力する。
【0090】
第2干渉光学系330について説明する。第2光源としての光源311から出力された光の光路は、ビームスプリッタ312により第2試料光路SP2と第2参照光路RP2とに分割される。
【0091】
ビームスプリッタ312により反射されて第2試料光路SP2に導かれた光(第2信号光)は、ビームスプリッタ313を透過し、対物レンズ314を介して試料Sに照射される。試料Sによる第2信号光の後方散乱光(同じく第2信号光と呼ぶ)は、対物レンズ314を経由し、ビームスプリッタ313に反射され、反射ミラー331に反射され、ビームスプリッタ336に到達する。
【0092】
一方、ビームスプリッタ312を透過した光(第2参照光)は、第2参照光路RP2を介してビームスプリッタ336に到達する。つまり、第2参照光は、ビームスプリッタ319を透過し、反射ミラー332、333、334および335に反射されて、ビームスプリッタ336に到達する。
【0093】
第2試料光路SP2を経由した第2信号光と、第2参照光路RP2を経由した第2参照光は、ビームスプリッタ336によって干渉する。それにより得られる干渉光(第2干渉光)は、OCT方式に応じた構成を有する第2検出部337によって検出される。
【0094】
この実施形態の光学特性計測装置300において、第1光源および前記第2光源は同一光源311である。そして、光学特性計測装置300の第1干渉光学系310および第2干渉光学系330は、同一光源311から出力された光を第1試料光路SP1と第1参照光路RP1と第2試料光路SP2と第2参照光路RP2とに分割する分割光学系を含む。この分割光学系は、ビームスプリッタ312および319を含む。
【0095】
このような構成によれば、単一の光源で双方の計測を行うことができるので、光学系の単純化を図りつつ試料Sの異常検出を高い確度で行うことが可能である。
【0096】
なお、OCT計測の方式に応じて次のような構成を適用することが可能である。スペクトラルドメイン方式やタイムドメイン方式の場合、低コヒーレントな広帯域光源が用いられるので、第2試料光路SP2と第2参照光路RP2の光路長が実質的に一致する位置でのみ干渉信号が得られる。よって、第3の実施形態で説明した光路長変更部(図示省略)を用いて第2試料光路SP2と第2参照光路RP2の光路長を一致させる処理を、計測前に行うように構成できる。
【0097】
また、スウェプトソース方式の場合、可干渉距離が長い波長掃引光源を用いるので、第1光源と第2光源の共用化は容易である。しかし、固定波長で行われる位相差計測と、波長を掃引しつつ行われるOCT計測とを、同一光源で同時に行うことは困難である。したがって、位相差計測とOCT計測とを時分割で行うといった制御が必要である。この制御は、たとえば、一の計測点について固定波長での位相差計測と掃引波長でのOCT計測とを行う動作と、ステージ2を移動させて計測点を切り替える動作とを交互に繰り返すように制御を行うことが可能である。また、複数の計測点について位相差計測(またはOCT計測)を行った後に、これら計測点についてOCT計測(または位相差計測)を行うように制御するようにしてもよい。
【0098】
〈第5の実施形態〉
この実施形態では、試料Sの上下両方向からOCT計測を行うよう構成された光学特性計測装置400について説明する。
【0099】
図7に示す光学特性計測装置400は、第1干渉光学系410と、第2干渉光学系430と、第3干渉光学系450とを有する。
【0100】
第1干渉光学系410について説明する。第1干渉光学系410は位相差計測に用いられる。第1光源411から出力された光の光路は、ビームスプリッタ412により第1試料光路SP1と第1参照光路RP1とに分割される。ビームスプリッタ412は、たとえばハーフミラーである。
【0101】
ビームスプリッタ412を透過して第1試料光路SP1に導かれた光(第1信号光)は、たとえばダイクロイックミラーからなるビームスプリッタ413により反射される。さらに、第1信号光は、対物レンズ414を介して試料Sに照射される。試料Sおよびステージ2を透過した第1信号光は、対物レンズ415を経由し、ビームスプリッタ416を透過し、ビームスプリッタ417に到達する。ビームスプリッタ416および417は、たとえばダイクロイックミラーである。第1信号光は、ビームスプリッタ417に反射され、反射ミラー418および419を経由してビームスプリッタ420に到達する。ビームスプリッタ420は、たとえばハーフミラーである。光路長差制御部50は、ビームスプリッタ417、反射ミラー418および419、並びにビームスプリッタ420を一体的に移動させることにより、第1試料光路SP1の光路長を変更する。
【0102】
一方、ビームスプリッタ412により反射された光(第1参照光)は、第1参照光路RP1を介してビームスプリッタ420に到達する。
【0103】
第1試料光路SP1を経由した第1信号光と、第1参照光路RP1を経由した第1参照光は、ビームスプリッタ420によって干渉する。それにより得られる干渉光(第1干渉光)は、第1検出部421によって検出される。第1検出部421は、第1干渉光の強度を示す検出信号を出力する。
【0104】
第2干渉光学系430について説明する。第2干渉光学系430は、試料Sの上方(対物レンズ414側)からのOCT計測に用いられる。第2光源431から出力された光の光路は、ビームスプリッタ432により2分割される。ビームスプリッタ432は、たとえばハーフミラーである。なお、試料Sの上方からのOCT計測には、ビームスプリッタ432を透過した光が用いられる。一方、試料Sの下方からのOCT計測には、ビームスプリッタ432に反射された光が用いられる。
【0105】
ビームスプリッタ432を透過した光は、ビームスプリッタ433により第2試料光路SP2と第2参照光路RP2とに分割される。ビームスプリッタ433は、たとえばハーフミラーである。
【0106】
ビームスプリッタ433を透過して第2試料光路SP2に導かれた光(第2信号光)は、反射ミラー434により反射され、ビームスプリッタ435を透過し、ビームスプリッタ413を透過する。さらに、第2信号光は、対物レンズ414を介して試料Sに照射される。試料Sによる第2信号光の後方散乱光(同じく第2信号光と呼ぶ)は、対物レンズ414を経由し、ビームスプリッタ413を透過し、ビームスプリッタ435に反射され、反射ミラー436に反射され、ビームスプリッタ440に到達する。
【0107】
一方、ビームスプリッタ433により反射された光(第2参照光)は、第2参照光路RP2に配置された反射ミラー437、438および439を介してビームスプリッタ440に到達する。
【0108】
第2試料光路SP2を経由した第2信号光と、第2参照光路RP2を経由した第2参照光は、ビームスプリッタ440によって干渉する。それにより得られる干渉光(第2干渉光)は、第2検出部441によって検出される。第2検出部441は、OCT方式に応じた構成を有する。
【0109】
第3干渉光学系450について説明する。第3干渉光学系450は、試料Sの下方(対物レンズ415側)からのOCT計測に用いられる。第2光源431から出力されてビームスプリッタ432に反射された光の光路は、ビームスプリッタ451により第3試料光路SP3と第3参照光路RP3とに分割される。ビームスプリッタ451は、たとえばハーフミラーである。
【0110】
ビームスプリッタ451に反射されて第3試料光路SP3に導かれた光(第3信号光)は、反射ミラー452により反射され、ビームスプリッタ417および413を透過する。さらに、第3信号光は、対物レンズ415を介して試料Sに照射される。試料Sによる第3信号光の後方散乱光(同じく第3信号光と呼ぶ)は、対物レンズ415を経由し、ビームスプリッタ416に反射され、反射ミラー453に反射され、ビームスプリッタ457に到達する。
【0111】
一方、ビームスプリッタ451を透過した光(第3参照光)は、第3参照光路RP3に配置された反射ミラー454、455および456を介してビームスプリッタ457に到達する。
【0112】
第3試料光路SP3を経由した第3信号光と、第3参照光路RP3を経由した第3参照光は、ビームスプリッタ457によって干渉する。それにより得られる干渉光(第3干渉光)は、第3検出部458によって検出される。第3検出部458は、第2検出部441と同様の構成を有する。
【0113】
この実施形態の断層情報取得部70は、第2検出部441による第2干渉光の検出結果に基づいて、試料Sの所定領域の断層情報(第1断層情報)を取得し、かつ、第3検出部458による第3干渉光の検出結果に基づいて、当該所定領域の断層情報(第2断層情報)を取得する。
【0114】
この実施形態の演算制御部80(屈折率分布取得部)は、変更量情報取得部60により取得された変更量情報と、断層情報取得部70により取得された第1断層情報および第2断層情報とに基づいて、試料Sの所定領域における屈折率分布を取得する。また、演算制御部80は、取得された各種情報に基づいて試料の異常検出を行なう。
【0115】
試料Sの上下両方向からOCT計測を行なうことにより、演算制御部80は、次のような処理を行なうことが可能である。前述のように、演算制御部80は、第1断層情報に基づいて、試料Sの上面の位置を求めることができる。この処理の例を以下に説明する。
【0116】
試料Sの上面側の基準深度(第1基準深度)と、下面側の基準深度(第2基準深度)とはあらかじめ設定されているものとする。なお、第2基準深度は、試料Sの下面よりも下方に設定される。また、対物レンズ414と対物レンズ415との間の距離は、あらかじめ設定されている。第1基準深度は、たとえば対物レンズ414からの距離として、或いはステージ2に対する位置として設定される。第2基準深度についても同様に、たとえば対物レンズ415からの距離として、或いはステージ2に対する位置として設定される。
【0117】
演算制御部80は、第1断層情報に基づき、各計測点(各Aライン)について、あらかじめ設定された第1基準深度に対する試料Sの上面の位置を求める。この処理は、たとえば、対物レンズ414と第1基準深度との間の距離と、
図2に示す空間的距離Luとに基づいて行なうことができる。これにより、複数の計測点における試料Sの上面の位置が得られる。同様に、演算制御部80は、第2断層情報に基づいて、複数の計測点における試料Sの下面の位置を求める。
【0118】
対物レンズ414と対物レンズ415は同軸に配置されている。また、試料Sの上下両方向からのOCT計測は同時に実行可能である。よって、第1断層情報における複数の計測点と、第2断層情報における複数の計測点とを、一対一に対応付けることが可能である。演算制御部80は、対応する計測点における試料Sの上面位置および下面位置に基づいて、そのAラインにおける試料Sの厚みを求めることができる。それにより、OCT計測が行われた領域における試料Sの厚み分布が得られる。この処理を実行する演算制御部80は「厚み分布取得部」に相当する。演算制御部80は、変更量情報取得部60により取得された変更量情報(試料Sの光学特性を示す)と、試料Sの厚み分布(試料Sの形態・構造を示す)とに基づいて、試料Sの屈折率分布を取得することができる。
【0119】
以上のように、この実施形態の光学特性計測装置400は、次のような構成を有する。光学特性計測装置400は、第2光源431から出力された光の光路を2分割するビームスプリッタ432(分割部材)を有する。
【0120】
第2干渉光学系430は、ビームスプリッタ432により分割された一方の光路を、第2試料光路SP2と第2参照光路RP3とに分割する。
【0121】
他方の光路は、第3干渉光学系450に寄与する。第3干渉光学系450は、ビームスプリッタ432により分割された他方の光路を、第3試料光路SP3と第3参照光路RP3とに分割する。さらに、第3干渉光学系450は、第3試料光路SP3を通過する第3信号光で、第2信号光とは反対の方向から試料Sをスキャンする。そして、第3干渉光学系450は、第3試料光路SP3を経由した第3信号光と、第3参照光路RP3を経由した第3参照光とを干渉させて第3干渉光を生成し、これを検出する。
【0122】
断層情報取得部70は、第2干渉光の検出結果に基づいて試料Sの所定領域の断層情報を取得し、かつ、第3干渉光の検出結果に基づいて当該所定領域の他の断層情報を取得する。演算制御部80(屈折率分布取得部)は、光路長差制御部50により取得された変更量情報と、断層情報取得部70により取得された2つの断層情報とに基づいて、当該所定領域における屈折率分布を取得する。
【0123】
なお、屈折率分布取得部としての演算制御部80は、厚み分布取得部を含んでいてよい。厚み分布取得部は、断層情報取得部70により取得された2つの断層情報に基づいて、試料Sの所定領域における厚み分布を取得する。さらに、演算制御部80は、変更量情報と厚み分布とに基づいて屈折率分布を取得する。
【0124】
このような実施形態によれば、試料Sの上面位置および下面位置、並びに試料Sの厚みを高い確度で取得することができるので、試料Sの異常検出を高い確度で行うことが可能である。
【0125】
また、ステージ2が上下に揺動するなどして試料Sの位置が変動した場合であっても、試料Sの異常検出を高確度で行うことができる。
【0126】
また、たとえば試料Sが厚い場合には、一方からのOCT計測では試料Sの上面から下面までの断層情報が得られず、よって試料Sの厚みを算出できない。しかし、この実施形態によれば、厚い試料Sの計測を行なう場合であっても、試料Sの厚みを求めることが可能である。
【0127】
〈光学特性計測方法〉
上記実施形態に係る光学特性計測装置により、以下に説明する光学特性計測方法が実現される。
【0128】
実施形態に係る光学特性計測方法は、第1検出ステップと、光路長差制御ステップと、変更量情報取得ステップと、第2検出ステップと、断層情報取得ステップと、屈折率分布取得ステップとを含む。
【0129】
第1検出ステップは、第1光源から出力された光を第1信号光と第1参照光とに分割し、第1信号光で試料の所定領域をスキャンし、試料を経由した第1信号光と第1参照光とを干渉させて第1干渉光を生成し、生成された第1干渉光を検出することにより実行される。
【0130】
光路長差制御ステップは、第1検出ステップによる第1干渉光の検出結果に基づいて、第1信号光の光路と第1参照光の光路との間の光路長差を変更することにより実行される。
【0131】
変更量情報取得ステップは、光路長差制御ステップによる光路長差の変更量を示す変更量情報を取得することにより実行される。
【0132】
第2検出ステップは、第2光源から出力された光を第2信号光と第2参照光とに分割し、第2信号光で試料の所定領域をスキャンし、試料を経由した第2信号光と第2参照光とを干渉させて第2干渉光を生成し、生成された第2干渉光を検出することにより実行される。
【0133】
断層情報取得ステップは、第2検出ステップによる第2干渉光の検出結果に基づいて、試料の所定領域の断層情報を取得する。
【0134】
屈折率分布取得ステップは、変更量情報取得ステップで取得された変更量情報と、断層情報取得ステップで取得された断層情報とに基づいて、試料の所定領域における屈折率分布を取得する。
【0135】
この光学特性計測方法によれば、試料の光学特性計測および構造計測の双方の結果に基づいて、試料の異常検出を高い確度で行うことができる。
【0136】
実施形態に係る光学特性計測方法は、上記実施形態で説明した任意の処理を実行するように構成されていてよい。たとえば、次の事項を光学特性計測方法に適用することができる:
・屈折率分布取得ステップにおける屈折率分布の取得方法;
・ステージおよび駆動部による試料のスキャン方法;
・ガルバノスキャナによる試料のスキャン方法;
・第2干渉光学系および断層情報取得部に適用されるOCT方式;
・OCT計測において参照光路(第2参照光路)の光路長を変更する方法;
・光路長差制御ステップにおける処理方法;
・第1光源と第2光源とを同一光源にする場合の計測方法;
・試料の上下両方向からOCT計測を行なう方法。
【0137】
〈変形例〉
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
【0138】
上記実施形態で説明した構成を任意に組み合わせることが可能である。
【0139】
光路長差制御部50、変更量情報取得部60、断層情報取得部70および演算制御部80は、プロセッサおよびコンピュータプログラムにより、またはハードウェア回路によって実現される。前者の場合、上記の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。
【0140】
また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのコンピュータプログラムを送受信することも可能である。