(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057223
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】半導体ドリフト検出器及び対応する動作方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20161226BHJP
H01L 31/08 20060101ALI20161226BHJP
G01T 1/24 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
H01J37/244
H01L31/00 A
G01T1/24
【請求項の数】26
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-515100(P2014-515100)
(86)(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公表番号】特表2014-527256(P2014-527256A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】EP2012002566
(87)【国際公開番号】WO2012171664
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年6月11日
(31)【優先権主張番号】102011104489.6
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513307704
【氏名又は名称】ピーエヌディテクター ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PNDETECTOR GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】513307715
【氏名又は名称】ピーエヌセンサー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PNSENSOR GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ, ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ゾルタウ, ハイケ
(72)【発明者】
【氏名】ニクラエ, エイドリアン
【審査官】
鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−165570(JP,A)
【文献】
特開2011−187501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/244
G01T 1/20
G01T 1/24
H01L 31/00 −31/02
H01L 31/0232
H01L 31/0248
H01L 31/0264
H01L 31/08
H01L 31/10
H01L 31/107 −31/108
H01L 31/111
H01L 31/18
H01L 51/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)半導体基板(HS)であって、入射放射によって当該半導体基板(HS)内で信号電荷担体が動作中に生成される、すなわち、
a1)X線蛍光放射の形で、測定されるエネルギーを有する単一の入射光子(h・f)、イオン若しくは電子を通して生成される、及び/又は
a2)後方散乱電子(Θ)の形で、一定の信号電荷担体電流を有する複数の入射電子(Θ)、イオン若しくは他のイオン化放射を通して生成される、半導体基板(HS)と、
b)前記信号電荷担体に応じて、前記入射放射の測定となる電気的出力信号を生成するための読み出し陽極(A)と、
c)前記半導体基板(HS)内に収集された前記信号電荷担体を消去するためのクリアコンタクト部(RC)と、を備える、放射を検出するための半導体ドリフト検出器において、
d)当該半導体ドリフト検出器が、第1の動作モードにおいて又は第2の動作モードにおいて任意に動作され得ること、
e)前記第1の動作モードにおける当該半導体ドリフト検出器が、前記入射光子(h・f)、電子又は他のイオン化粒子の前記エネルギーを測定すること、及び、
f)前記第2の動作モードにおける当該半導体ドリフト検出器が、前記信号電荷担体電流を測定すること、を特徴する、半導体ドリフト検出器。
【請求項2】
前記入射光子によって生成された信号電荷担体及び/又は前記電子によって生成された信号電荷担体を前記クリアコンタクト部(RC)に消散するために前記読み出し陽極(A)を前記クリアコンタクト部(RC)と接続する前記半導体基板(HS)の中に集積されたリセットトランジスタ(RT)によって特徴付けられ、前記リセットトランジスタ(RT)は、前記信号電荷担体電流の前記測定及び前記入射光子のエネルギーの前記測定を可能にする、請求項1に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項3】
a)前記リセットトランジスタ(RT)が、特定のチャネル長と特定のチャネル幅とを持つ導体チャネルを有すること、
b)前記導体チャネルの前記チャネル長が、前記導体チャネルの前記チャネル幅よりも大きいこと、及び/又は
c)前記チャネル長が、10μmよりも大きいこと、並びに/或いは
d)前記リセットトランジスタ(RT)がゲート(RG)を有し、前記リセットトランジスタ(RT)の前記導体チャネルが、前記リセットトランジスタ(RT)の前記ゲート(RG)にゲート電圧を印加することによって調節可能である電気的抵抗を有すること、を特徴とする、請求項2に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項4】
前記半導体基板(HS)の中に集積された読み出しトランジスタ(AT)であって、ソース(FS)、ゲート(FG)及びドレイン(FD)を備える読み出しトランジスタ(AT)によって特徴付けられ、前記読み出しトランジスタ(AT)の前記ゲート(FG)は、前記読み出し陽極(A)と電気的に導通するように接続される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項5】
a)当該半導体ドリフト検出器が、前記読み出し陽極(A)を環状に囲むドリフトリング(DR1、DR2)であって、前記信号電荷担体を前記読み出し陽極(A)までドリフトさせる電気的ドリフト電界を前記半導体基板(HS)内に生成するドリフトリング(DR1、DR2)を少なくとも有すること、
b)最も内側のドリフトリング(DR1)が、内側から外側に通るスロット(SL)によって少なくとも部分的に遮断されること、
c)前記リセットトランジスタ(RT)が、前記最も内側のドリフトリング(DR1)の前記スロット(SL)内に配置され、前記リセットトランジスタ(RT)の前記導体チャネルは前記スロット(SL)に沿って通ること、
d)前記スロット(SL)が放射状に通ること、
e)前記最も内側のドリフトリング(DR1)内の前記スロット(SL)が、前記内側から前記外側に通り抜けること、又は前記ドリフトリング内で終わること、及び、
f)前記クリアコンタクト部(RC)が、前記最も内側のドリフトリング(DR1)の前記外側上に配置されること、を特徴とする、請求項3に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項6】
a)前記ドリフトリング(DR1)が第1のドーピング種類(p)でドープされること、及び、
b)前記最も内側のドリフトリング(DR1)の前記スロット(SL)内における前記半導体基板(HS)の下に前記第1のドーピング種類(p)の深いドーピング注入(Rdp)が設けられていること、を特徴とする、請求項5に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項7】
a)前記読み出し陽極(A)が、前記第1のドーピング種類(p)とは反対である第2のドーピング種類(n)によってドープされると共に、前記リセットトランジスタ(RT)の前記導体チャネルが、前記第2のドーピング種類の深いドーピング注入(n)を有すること、又は
b)前記リセットトランジスタ(RT)が、エンハンスメント型トランジスタとして形成されること、又は
c)前記リセットトランジスタ(RT)が、デプレッション型トランジスタとして形成されること、又は
d)前記リセットトランジスタ(RT)が、JFETとして形成されること、を特徴とする、請求項6に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項8】
a)前記入射光子、イオン若しくは電子をフィルタリングするフィルタが設けられること、
b)前記フィルタが、特定の電子エネルギーレベルを下回る最大範囲で前記入射電子(Θ)をフィルタリングで除去するが、前記入射光子(h・f)を通過させること、を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項9】
a)前記フィルタが、当該半導体ドリフト検出器に直接取り付けられること、又は
b)前記フィルタが、当該半導体ドリフト検出器から空間的に離れて配置されること、を特徴とする、請求項8に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項10】
前記入射放射の前記検出のための複数の検出器セル(Z)によって特徴付けられ、前記検出器セル(Z)が、互いに空間的に分離され、前記入射光子、イオン若しくは電子に従う信号電荷担体を独立して蓄積する、請求項1〜9いずれか一項に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項11】
a)個々の前記検出器セル(Z)が、別個の読み出し電子機器をそれぞれ有すること、又は
b)個々の前記検出器セル(Z)が、前記検出器セル(Z)を並列に読み出す共通読み出し電子機器(AE)を有すること、を特徴とする、請求項10に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項12】
a)前記検出器セル(Z)が、それぞれ六角形であること、及び/又は
b)前記検出器セル(Z)が、同じ半導体基板上に共に配置されること、を特徴とする、請求項10又は11に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項13】
a)前記共通読み出し電子機器(AE)が、ソース、ドレイン、ゲート、及び前記ソースと前記ドレインとの間の導体チャネルを有する読み出しトランジスタを前記検出器セル(Z)のそれぞれのために有すること、及び
b)前記検出器セル(Z)の前記読み出しトランジスタが、それらのソースと、また互いとそれぞれ接続されること、並びに/或いは
c)前記検出器セル(Z)の前記読み出しトランジスタが、それらのドレインと、また互いとそれぞれ接続されること、を特徴とする、請求項11又は12に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項14】
a)個々の前記検出器セルが、それぞれの前記検出器セル内に収集された前記信号電荷担体を消去するためのクリアコンタクト部をそれぞれ有すること、及び、
b)前記検出器セルの前記読み出しトランジスタが、それらのクリアコンタクト部と、また互いとそれぞれ電気的に接続されること、を特徴とする、請求項13に記載の半導体ドリフト検出器。
【請求項15】
a)請求項2に記載の半導体ドリフト検出器と、
b)前記リセットトランジスタ(RT)の前記クリアコンタクト部(RC)経由で前記半導体ドリフト検出器の中にフィードバックされるフィードバック信号を生成する外部フィードバック回路と、を備える、検出器アセンブリ。
【請求項16】
時間分解電子電流測定のための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の半導体ドリフト検出器の使用。
【請求項17】
電子トラップと組み合わせた、請求項1〜14のいずれか一項に記載の半導体ドリフト検出器の使用。
【請求項18】
前記蛍光放射の測定のための及び前記後方散乱電子(Θ)の測定のための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の半導体ドリフト検出器を備える電子顕微鏡。
【請求項19】
a)半導体基板(HS)であって、入射放射によって当該半導体基板(HS)内で動作信号電荷担体が生成される、すなわち、
a1)X線蛍光放射の形で、特定の光子エネルギーを有する入射光子(h・f)を通して生成される、及び/又は
a2)後方散乱電子(Θ)の形で、特定の信号電荷担体電流を有する入射電子(Θ)を通して生成される、半導体基板(HS)と、
b)前記信号電荷担体に応じて、前記入射放射の測定となる電気的出力信号を生成するための読み出し陽極(A)と、
c)前記半導体基板(HS)内に収集された前記信号電荷担体を消去するためのクリアコンタクト部(RC)と、を備える半導体ドリフト検出器のための動作方法において、
d)前記半導体ドリフト検出器が、第1の動作モードにおいて又は第2の動作モードにおいて任意に動作されること、
e)前記第1の動作モードにおける前記半導体ドリフト検出器が、前記入射光子(h・f)の前記光子エネルギーを測定すること、
f)前記第2の動作モードにおける前記半導体ドリフト検出器が、前記信号電荷担体電流を測定すること、を特徴とする、動作方法。
【請求項20】
以下のステップ、
a)前記クリアコンタクト部(RC)を前記読み出し陽極(A)と接続する前記半導体基板(HS)の中に集積されたリセットトランジスタ(RT)であって、閾値範囲内で動作されるリセットトランジスタ(RT)経由で、前記入射光子によって生成された信号電荷担体及び/又は前記電子によって生成された信号電荷担体を前記クリアコンタクト部(RC)に運ぶこと、及び、
b)前記入射電子(Θ)の前記信号電荷担体電流の測定として、前記リセットトランジスタ(RT)の導体チャネルにわたる電圧降下の測定をすること、並びに/或いは
c)前記入射光子(h・f)の前記光子エネルギーの測定として、前記リセットトランジスタ(RT)の前記導体チャネルにわたる前記電圧降下の時間変化の測定をすること、によって特徴付けられた、請求項19に記載の動作方法。
【請求項21】
a)ソース(FS)、ゲート(FG)及びドレイン(FD)を備える読み出しトランジスタ(AT)が、前記半導体基板(HS)の中に集積され、前記読み出しトランジスタ(AG)は、前記読み出し陽極(A)と電気的に導通するように接続されること、及び、
b)前記読み出しトランジスタ(AT)が、ソースフォロワとして動作され、低インピーダンスで前記読み出し陽極(A)の電位を外側に伝達すること、を特徴とする、請求項19又は20に記載の動作方法。
【請求項22】
消去するために前記リセットトランジスタ(RT)のゲート(RG)に印加される電圧が、前記読み出し陽極(A)を前記クリアコンタクト部(RC)の電位までもたらし、次いで、前記放射によって生成された信号電荷担体の前記測定のために前記リセットトランジスタ(RT)を再度ロックするために、パルス化されることを特徴とする、請求項20に記載の動作方法。
【請求項23】
前記読み出し陽極(A)の電位が、電荷信号が存在しない場合に固定電位に設定されるように、前記リセットトランジスタ(RT)の前記ゲート(RG)及び前記クリアコンタクト部(RC)は、固定された電位に置かれることを特徴とする、請求項22に記載の動作方法。
【請求項24】
以下のステップ、
a)前記入射電子(Θ)の前記信号電荷担体電流の測定として前記読み出し陽極(A)の前記電位を測定すること、及び/又は
b)前記入射光子(h・f)の前記光子エネルギーの測定として前記読み出し陽極(A)の前記電位の電位跳ね上がりを測定すること、によって特徴付けられる、請求項21に記載の動作方法。
【請求項25】
a)ソース(FS)、ゲート(FG)及びドレイン(FD)を備える読み出しトランジスタ(AT)が、前記半導体基板(HS)の中に集積され、前記読み出しトランジスタ(AG)は、前記読み出し陽極(A)と電気的に導通するように接続されること、及び、
b)前記読み出しトランジスタ(AT)が、ソースフォロワとして動作され、低インピーダンスで前記読み出し陽極(A)の電位を外側に伝達すること、
c)外部電子機器が、限られた動作範囲内で前記読み出しトランジスタ(AT)の1つの出力信号だけを取り扱い得ること、及び、
d)測定される前記信号電荷担体が、動作中、一定の最大値を超えないこと、及び、
e)制御可能な抵抗として働く前記リセットトランジスタ(RT)にわたる前記電圧降下が、前記読み出しトランジスタ(AT)の前記出力信号が前記信号電荷担体の前記最大値においてでさえも前記外部電子機器の前記動作範囲を超えることをもたらさないように、前記リセットトランジスタ(RT)の前記ゲート(RG)が制御されること、を特徴とする、請求項22に記載の動作方法。
【請求項26】
a)前記外部電子機器が、限られた動作範囲内で前記読み出しトランジスタ(AT)の1つの出力信号だけを取り扱い得ること、及び、
b)測定される前記信号電荷担体が、動作中、一定の最小値に達すること、及び、
c)制御可能な抵抗として働く前記リセットトランジスタ(RT)にわたる前記電圧降下が、前記読み出しトランジスタ(AT)の前記出力信号が前記信号電荷担体の前記最小値においてでさえも前記外部電子機器の前記動作範囲に達っしないことをもたらさないように、前記リセットトランジスタ(RT)の前記ゲート(RG)が制御されること、を特徴とする、請求項25記載の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射の検出のための半導体ドリフト検出器と、対応する動作方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射検出のためにいわゆる半導体ドリフト検出器を使用することが先行技術から知られている。ここで、検出される放射は、弱くドープされた空乏層形半導体基板内に信号電子を生成し、いくつかの円形の同心円状に配置された電極がその半導体基板の表面上に配置され、それらの電極はその半導体基板内にドリフト電界を生成し、放射によって生成された信号電子は、その基板を通して、信号電子と、それ故に吸収された放射とを検出する中央に配置された読み出し素子までドリフトする。
【0003】
ここで、読み出し素子は、集積型SSJFET(SSJFET:
single
sided
junction
field
effect
transistor)トランジスタから成り得る(V.RadekaらのIEEE Electron Device Lett.,vol.10,pp.91,1989を参照のこと)。
【0004】
これらの従来の半導体ドリフト検出器は、放射によって生成された信号電荷を迅速に及び非常に正確に測定することを可能にする。一方では、これは、電荷収集陽極の小さな容量に起因する。他方では、半導体ドリフト検出器の中への読み出しトランジスタの集積に起因して、外部電子機器への接続ケーブルが必要ではなく、その結果、そのような接続ケーブルと通常関連付けられる寄生容量が排除されることも有利である。
【0005】
そのような半導体ドリフト検出器は、何年もの間、X線放射の助けを借りて分光学的研究のために使用されている。例えば、そのような半導体ドリフト検出器は、蛍光放射を測定するために電子顕微鏡内で使用され、その蛍光放射の分光学的組成は、研究試料の項目分析を可能にする。ここで、場合によっては、半導体ドリフト検出器内で光子によって生成された信号電荷担体を捕捉することのみならず、半導体ドリフト検出器内で入射電子によって生成されたイオン化を測定することもまた望ましい。これは、電荷の束(package)に到達する単一の光子によって生成された電荷ではなくて、連続的に入ってくる陽極電流が測定される場合に、基本的には可能である。
【0006】
しかしながら、従来の半導体ドリフト検出器は、実質的な制約下に限って、入射光子の光子エネルギーと、入射電子によって生成される信号電荷担体電流との両方を測定することが可能である。
【0007】
その上、先行技術に関して、参照が、独国特許出願公開第102007017640B3号、米国特許出願公開第2008/0217543A1号、米国特許第7514687B2号、独国特許出願公開第102009024928A1号、米国特許第7238949B2号、独国特許出願公開第102009026946A1号、独国特許出願公開第102008014578B3号、米国特許第7193216B2号、及びNICULAE,Aらの「Optimized readout methods of silicon drift detectors for high‐resolution X‐ray spectroscopy」,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 568(2006),336-342になされる。
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明の目的は、それに応じて上記従来の半導体ドリフト検出器を向上させることにある。
【0009】
この問題は、独立請求項に従って、発明に係る半導体ドリフト検出器及び対応する動作方法によって解決される。
【0010】
本発明に係る半導体ドリフト検出器は、上記した従来の半導体ドリフト検出器に一部対応し、半導体基板を有するものであり、その半導体基板内において、動作中、信号電荷担体が入射放射によって生成され、次いで、その信号電荷担体は、入射放射の測定として測定される。一方では、信号電荷担体は、ここで、特定の光子エネルギーで入射光子(例えば、X線光子)によって生成され得、入射放射は、例えばX線蛍光放射であり得る。しかしながら、他方では、信号電荷担体はまた、複数の入射電子(例えば、後方散乱電子)によって生成され得、入射電子は、一定の信号電荷担体電流を作り出すか形成する。
【0011】
更に、本発明に係る半導体ドリフト検出器は、入射放射の測定を形づくる、放射によって生成された信号電荷担体に応じて電気的出力信号を生成するために読み出し陽極を有する。
【0012】
更に、本発明に係る半導体ドリフト検出器は、半導体基板内に収集された信号電荷担体を消去するためのクリアコンタクト部を有し、そのクリアコンタクト部は、それ自体が従来の半導体ドリフト検出器から既に知られている。
【0013】
本発明に係る半導体ドリフト検出器は、半導体ドリフト検出器が第1の動作モードにおいて又は第2の動作モードにおいて任意に動作され得るという点で、最初に記載した半導体ドリフト検出器とは異なる。
【0014】
第1の動作モードでは、半導体ドリフト検出器は、個々の入射光子の光子エネルギー、電子若しくはイオン、或いはより一般的には、イオン化放射量子又は粒子の電子若しくはイオンを測定する。
【0015】
第2の動作モードでは、半導体ドリフト検出器は、対照的に、複数の入射電子を通して生成された信号電荷担体電流を測定する。
【0016】
それ故、本発明に係る半導体ドリフト検出器は、従来の半導体ドリフト検出器とは対照的に、入射光子のエネルギーを判断するのに適するとともに、複数の入射電子によって生成された信号電荷担体電流の測定にも適する。
【0017】
本発明の好適な実施形態では、リセットトランジスタが、この趣旨で半導体基板の中に集積され、その半導体基板は、光子によって生成された信号電荷担体及び/又は電子によって生成された信号電荷担体をクリアコンタクト部に消散するために、読み出し陽極をクリアコンタクト部と接続させ、そのことは、信号電荷担体電流の測定と光子エネルギーの測定とを可能にする。
【0018】
リセットトランジスタは、特定のチャネル長及び一定のチャネル幅を持つ導体チャネルを有し、導体チャネルのチャネル長は、好適にはチャネルの幅よりも実質的に大きい。従って、リセットトランジスタは、好適には長チャネルトランジスタであり、その長チャネルトランジスタは、その機能の点において、印加されるゲート電圧によって制御可能である抵抗に対応する。
【0019】
例えば、チャネル長は、10μm、20μm、50μm又は100μmよりも大きくすることができる。しかしながら、本発明は、リセットトランジスタの導体チャネルのチャネル長に関して、上記の例示的な値に限定されるものではなく、基本的にはチャネル長についての他の値でも実現され得る。
【0020】
しかしながら、ここで、好適な実施形態におけるリセットトランジスタの導体チャネルは調節可能な電気的抵抗を有し、その抵抗は、以下により詳細に記載されるように、リセットトランジスタのゲートにゲート電圧を印加することによって調節可能であることが記述される必要がある。
【0021】
更に、本発明に係る半導体ドリフト検出器は、好適には、半導体基板の中に集積された読み出しトランジスタであって、ソース、ゲート及びドレインを備える読み出しトランジスタを有し、読み出しトランジスタのゲートは、電気的に導通するように読み出し陽極と接続される。読み出しトランジスタは、例えば、上記したSSJFETトランジスタとすることができ、そのSSJFETトランジスタは、それ自体が先行技術から知られているので、より詳細に記載される必要はない。しかしながら、本発明は、読み出しトランジスタの種類に関してSSJFETトランジスタに限定されるものではなく、基本的には他のトランジスタの種類でも実現され得る。
【0022】
その上、半導体ドリフト検出器は、線形又は円形の構造を任意に有し得ることが記述されるべきである。
【0023】
線形の半導体ドリフト検出器の場合、いくつかのドリフト電極が、ドリフト方向において他方の後に一方が線形的に設けられ、ドリフト電極は、半導体基板内に線形に整列されたドリフト電界を生成する。
【0024】
しかしながら、本発明に係る半導体ドリフト検出器は、好適には環状であり、従って、環状に読み出し陽極を囲う少なくとも1つのドリフトリングを有し、信号電荷担体を読み出し陽極までドリフトさせる電気的なドリフト電界を半導体基板内に生成する。そのような環状の半導体ドリフト検出器の好適な実施形態では、最も内側のドリフトリングは、内側から外側に通っているスロットによって遮断され、リセットトランジスタは、リセットトランジスタの導体チャネルがスロットに沿って通るような手法で、スロット内に配置される。
【0025】
好適には、スロットは、次いで、内側のドリフトリング内を放射状に通る。しかしながら、スロットの他のアラインメント、例えば、内側から外側へのスロットの蛇行形状経路などが、可能である。
【0026】
その上、最も内側のドリフトリングがスロットによって完全に遮断されるように、最も内側のドリフトリング内のスロットが好適には内側から外側に通り抜けることが記述されるべきである。これは、例えば、クリアコンタクト部が最も内側のドリフトリングの外側に配置される場合に有用である。しかしながら、スロットが内側から外側に最も内側のリング内を通り抜けることは、本発明の関係において絶対に必要というわけではない。むしろ、スロットは、クリアコンタクト部への信号電荷担体の伝達を可能にするためにクリアコンタクト部に達していれば十分である。
【0027】
その上、ドリフトリングは、好適には第1のドーピング種類(例えば、p型ドーピング)でドープされ、最も内側のドリフトリングのスロット内において、半導体基板の下に、第1のドーピング種類(例えば、p型ドーピング)の深いドーピング注入が設けられていることが記述されるべきである。この深いドーピングは、半導体本体とリセットトランジスタとの間にシールドを形成し、ドリフトリングの機能を生成するドリフト電界を呈する。それ故、スロットの幅に関する制限はない。極端な場合では、ドリフトリング全体が、この深いドーピングから形成され得る。
【0028】
第1のドーピング種類は、好適にはp型ドーピングであり、第2のドーピング種類は、好適にはn型ドーピングによって形成される。しかしながら、本発明の枠組み内で、第1のドーピング種類がn型ドーピングである一方、第2のドーピング種類がp型ドーピングによって形成されるように、ドーピング条件を逆にすることが可能である。
【0029】
本発明に係る半導体ドリフト検出器におけるドーピング条件に関して、読み出し陽極は、第2のドーピング種類(例えば、n型ドーピング)によって好適にドープされることと、長チャネルリセットトランジスタの導体チャネルは好適には第2のドーピング種類(例えば、n型ドーピング)の深いドーピング注入を有することも、記述されるべきである。或いは、しかしながら、本発明の枠組み内で、リセットトランジスタがエンハンスメント型トランジスタ、デプレッション型トランジスタとして、又はJFETトランジスタ(JFET:
Junction Gate
Field
Effect
Transistor)として形成されることも可能である。
【0030】
その上、本発明の枠組み内で、入射放射をフィルタリングするフィルタが設けられることも可能である。好適には、このフィルタは、特定の電子エネルギーを下回る入射電子が、大部分又は完全にフィルタリングで除去される一方で、入射光子(例えば、X線光子)が通り抜け可能であるように、設計される。これは、入射光子の光子エネルギーが測定されるべきである一方で、入射電子が問題ではないときに有利である。
【0031】
ここで、フィルタは、半導体ドリフト検出器に直接取り付けられるか、半導体ドリフト検出器の中に構造的に集積されることが可能である。或いは、フィルタは、半導体ドリフト検出器から空間的に分離された放射経路内に配置されることが可能である。
【0032】
フィルタの代替案として、電子又は他の電気的荷電粒子(電子トラップ)に対して電場又は磁場によって検出器を遮蔽することも可能である。それ故、場をオン又はオフに切り換えることによって光子及び/又は電子電流のスペクトル測定のために任意に又は連続的に同じ検出器を用いることが可能である。
【0033】
信号読み出し速度の実質的な向上は、特に電子測定に適用する上記に概略した提案を用いて実現される。しかしながら、ここで、読み出し速度は、放射の入射位置に依存する信号電荷担体の異なるドリフト時間によって支配されるという問題がある。ここで、ドリフトの期間は、カバーされる距離の2乗に比例して増加することに留意されたい。それ故、単一の比較的広い感放射線性検出器表面を有する半導体ドリフト検出器の場合、放射によって生成された信号電荷担体は、読み出し速度を制限する半導体ドリフト検出器において必要とされた距離をカバーする比較的長い期間を必要とする。この問題を解決するために、半導体ドリフト検出器が入射放射の検出のために複数の検出器セルを有することが本発明の別形において提供され、検出器セルは、互いに空間的に分離され、入射放射に従って信号電荷担体を独立して収集する。
【0034】
最も簡単な場合では、個々の検出器セルは、別個の読み出し電子機器をそれぞれ有するが、読み出し作業は、検出器セルの数とともに増加する。
【0035】
従って、好適には、検出器セルを並列に読み出す共通読み出し電子機器が提供される。検出器セルの読み出しトランジスタは、それらのソース、ドレイン又はクリアコンタクト部とそれぞれ相互に接続され得る。
【0036】
この点について、検出器セルはそれぞれ六角形とすることができ、高いパック(packing)密度を可能にすることにも留意する。更に、検出器セルは、同じ半導体基板上に共に配置され得る。個々の検出器セルの読み出しトランジスタ間の接続は、このプロセスにおいてモノリシックのマルチセル半導体ドリフト検出器上で直接なされ得る。
【0037】
また、本発明は、単一の構成要素として本発明に係る上記の半導体ドリフト検出器に限定されるものではなくて、そのような半導体ドリフト検出器を有する電子顕微鏡も含み、半導体ドリフト検出器の発明的な設計は、蛍光放射の測定と後方散乱電子の測定とを可能にすることも記述されるべきである。
【0038】
更に、本発明は、上記から既に明らかであるように、発明に係る半導体ドリフト検出器のための対応する動作方法を含み、これにより、繰り返しを避けるために参照が動作方法に関して上記になされる。
【0039】
本発明の他の有利な発展は、従属請求項において特徴付けられるか、或いは、図面に基づいて発明の好適な例示的実施形態の記載と共に以下により詳細に説明される。図面は以下のように示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図2における断面線A−Aに沿って発明に係る半導体ドリフト検出器を通した断面図である。
【
図2】
図1に係る半導体ドリフト検出器の上方からの図である。
【
図3A】リセットトランジスタとしてエンハンスメント型トランジスタを用いる、
図2における断面線B−Bに沿って半導体ドリフト検出器を通した断面図である。
【
図3B】リセットトランジスタとしてデプレッション型トランジスタを用いる、
図3Aの変形である。
【
図3C】リセットトランジスタとしてJFETを用いる、
図3Aの変形である。
【
図4】電子電流の測定について発明に係る半導体ドリフト検出器の動作方法を例示するためのフローチャートである。
【
図5】連続的なリセットを用いる電荷測定について発明に係る半導体ドリフト検出器の動作方法を例示するためのフローチャートである。
【
図6】パルス状のリセットを用いる電荷測定について発明に係る半導体ドリフト検出器の動作方法を例示するためのフローチャートである。
【
図7】フィードバック回路の例示的な実施形態である。
【
図8】フィードバック回路の別の例示的な実施形態である。
【
図9】複数の六角形検出器セルを有する半導体ドリフト検出器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1、
図2及び
図3Aは、例えば電子顕微鏡などにおいて、放射検出のために使用され得る本発明に係る半導体ドリフト検出器の異なる図を示す。
【0042】
一方では、本発明に係る半導体ドリフト検出器は、電子Θの検出、例えば電子顕微鏡における後方散乱電子Θなどの検出を可能にする。
【0043】
しかしながら、他方では、発明に係る半導体ドリフト検出器はまた、例えばX線蛍光放射から生じる、入射光子h・fの光子エネルギーの測定を可能にする。
【0044】
この目的のために、本発明に係る半導体ドリフト検出器は、n型をドープされた半導体基板HSを有し、その基板内において、入射電子Θ及び入射光子h・fは信号電荷担体を生成し、次いで、その信号電荷担体は半導体ドリフト検出器によって検出される。
【0045】
放射入口側上に、半導体ドリフト検出器は、逆方向に分極されたダイオードであって、半導体基板HSの空乏化に役立つダイオードを、弱くn型をドープされた半導体基板HSと共に形成するp型をドープされたバックコンタクト部RKを有し、放射への露出によって半導体基板HS内に生成された正孔は、半導体基板HSからバックコンタクト部RK経由で吸い出され、そのことは、先行技術からそれ自体が知られている。
【0046】
しかしながら、ここで、バックコンタクト部RKは、放射を透過できるように、すなわち、入射光子h・fについてと、また入射電子Θについての両方を透過できるように形成され、その結果、両方の種類の放射が、半導体ドリフト検出器によって検出され得ることが記述されるべきである。
【0047】
バックコンタクト部RKの反対側上に、半導体ドリフトコンタクト部は、複数の同心円状に配置されたドリフトリングDR1、DR2を有し、ドリフトリングDR1、DR2は、半導体基板HS内に電気的なドリフト電界を生成し、そのドリフト電界は、放射によって生成された信号電荷担体を最も内側のドリフトリングDR1内に配置された読み出し陽極Aまでドリフトさせる。
【0048】
更に、読み出しトランジスタATは、本発明に係る半導体ドリフト検出器の中に集積され、その読み出しトランジスタATは、中央に配置されたドレインFDと、ドレインFDの周りに環状に配置されたソースFSと、ドープされた導体チャネルKと、ソースFSとドレインFDとの間の導体チャネルKの上方に配置されたゲートFGとを有し、読み出しトランジスタATのゲートFGは、読み出し陽極Aに接続される。更に、半導体基板HSにおいて読み出しトランジスタATの下に、深いp型ドーピングdpが設けられる。それ故、読み出しトランジスタATは、読み出し陽極Aで収集される放射によって生成された信号電荷担体の関数として入射放射の測定となる、電気的出力信号を生成する。
【0049】
更に、本発明に係る半導体ドリフト検出器は、リセットトランジスタRTとクリアコンタクト部RCとを更に含み、リセットトランジスタRTは、読み出し陽極Aで収集された放射によって生成された信号電荷担体をクリアコンタクト部RCに伝達するために、読み出し陽極Aをクリアコンタクト部RCに接続する。
【0050】
リセットトランジスタRTは、ここで、長チャネルトランジスタとして形成され、内側のドリフトリングDR1内を放射状に通るスロットSL内に配置され、放射状に整列される。リセットトランジスタRTの導体チャネルの領域において、特に
図1に見ることができるように、ゲートRGの下方に埋め込まれた弱いn型ドーピングdnがある。
【0051】
更に、埋め込まれたp型ドーピングRdpは、特に
図1に見ることができるように、リセットトランジスタの下方の半導体基板HS内に位置する。
【0052】
リセットトランジスタRTは、読み出し陽極Aをクリアコンタクト部RCと接続し、その機能の点において、ゲートRGに印加されるゲート電圧によって制御可能である抵抗に対応する。
【0053】
図3A〜
図3Cは、nチャネルエンハンスメント型トランジスタとして(
図3A)、nチャネルデプレッション型トランジスタとして(
図3B)又はnチャネルJFETとして(
図3C)リセットトランジスタRTの様々な別形を示す。
【0054】
以下では、電子電流の測定に適した第1の動作モードが、次に、
図4を参照にして記載されることになり、ここで、電子電流は入射電子Θによって形成され、その入射電子は、例えば後方散乱電子Θであり得る。
【0055】
ここで及び以下(
図5及び
図6)では、教訓的な理由のために説明において読み出しトランジスタATがソースフォロワとして動作されることを仮定する。これに関連して、その読み出しトランジスタATは、信号に起因して読み出し陽極Aで生じる電圧変化を低インピーダンスで外部に伝達するために、リセットコンタクト部RCにおける固定電位のコンタクトに役立つ。もちろん、固定されたソース及びゲート電圧で読み出しトランジスタATを動作させることと、陽極電圧変化又はリセット若しくは信号電流のための測定としてドレイン電流の変化を取得することも、可能である。
【0056】
その上、信号電流全体が、陽極電位を変化させることなくリセットトランジスタRT経由で流れ出るように、適切なフィードバックを用いてリセットコンタクト部RCで電位を変化させる可能性がある。この点は、後で扱われることになる。
【0057】
ステップS1では、クリアコンタクト部RCは、ある電位に設定され、信号電流がゼロである限り、読み出し陽極Aもまたその電位に設定される。長チャネルリセットトランジスタRTのゲートRGは、調節可能な抵抗の役目をするリセットトランジスタRTの導体チャネルであって、信号電流が電圧降下をもたらすリセットトランジスタRTの導体チャネルが、適切な値、すなわち、小さな電流に対して十分大きな電圧降下を得るために十分大きい、かつ、ここでは表わされない後続の電子機器の動作範囲内にとどまるのに十分小さい値を有するように、ステップS2において制御される。
【0058】
更なるステップS3では、リセットトランジスタRTにおいて生じている信号電流によってもたらされた電圧降下が、次いで、ソースフォロワとして動作される読み出しトランジスタATによって読み出され、低インピーダンスで外部に伝達される。
【0059】
直接電流測定と比較した本発明に係る装置の本質的な利点は、読み出し電圧が信号電流をフォロワすることができる速度である。更に、それは、望ましくない結合に大きく影響されない。
【0060】
以下では、第2の動作モードが、次に、連続的なリセット(自動的なリセット)を用いる電荷測定のために使用される
図5に示されるフローチャートを参照にして記載されることになる。
【0061】
ステップS1では、クリアコンタクト部RC及びリセットトランジスタRTのゲートRGが、読み出し陽極A及びクリアコンタクト部RCが同じ電位であるときにリセットトランジスタRTがロックされるように制御される。ここで、小さな(暗)電流が読み出し陽極Aまで流れる場合、その読み出し陽極Aの電位は、リセットトランジスタRTがほとんど導通性が無くなるまで変化することになる。
【0062】
ここで、信号電荷の束が読み出し陽極Aまで来る場合、この信号電荷の束は、入ってくる信号電荷と入力ノード(陽極)のキャパシタンスとの比率の結果として生じる電圧ステップをもたらす。
【0063】
ステップS2では、陽極電位、従って、この電圧跳ね上がりは、ソースフォロワとして接続された出力トランジスタを用いて低インピーダンスで外部に伝送される。その後、リセットトランジスタRTは、より導通性があり、システムは、最初の状態までゆっくりと戻る。挙動は、ここで、リセットダイオードを用いる従来の半導体ドリフト検出器の挙動に機能的に非常に類似する。
【0064】
更なるステップS3では、光子エネルギーが電位跳ね上がりから決定され、及び/又は電子電流が陽極電位から決定される。
【0065】
以下では、第3の動作モードが、次に、電荷測定がパルス状のリセットを用いて行われる
図6に示されるフローチャートを参照にして記載される。
【0066】
ステップS1では、クリアコンタクト部RCは、ここで、読み出し陽極Aが消去プロセスの後に有するはずである電位に等しい電位で制御される。
【0067】
ステップS2では、次いで、リセットトランジスタRTが交互に通じたりロックしたりするように、リセットトランジスタRTのゲートRGのパルス状の制御が行われ、光子によって生成された信号電荷担体は、リセットトランジスタRTの導通状態において読み出し陽極Aからクリアコンタクト部RCにそれぞれ流れ出る。
【0068】
挙動は、リセットダイオードに基づいて従来の半導体ドリフト検出器の挙動に機能的に非常に類似し、リセットトランジスタのゲートRGが、クリアコンタクト部の代わりにリセットプロセスの間にパルス化されるという点と、一定の消去電圧のために追加ポートが必要であるという点が異なる。
【0069】
その上、
図4に係る上記した動作モードにおいて、例えばX線光子の結果として生じる、電荷パルスもまた測定され得ることが、記述されるべきである。次いで、これらの電荷パルスは、電子によって生成されたより遅く変動する陽極電流によって決定されるベース上の電圧スパイクとして現れる。
【0070】
電子電流の読み出し速度における制限は、センサ及び読み出し電子機器の寄生容量によって与えられる。ドリフト検出器及びその中に集積された読み出しトランジスタATを用いることによって、主な容量は、既に非常に小さく作られている。更なる改良を実現するために、クリアコンタクト部RCが固定電位に保たれず、むしろフィードバック電極として使用され、従って、読み出し陽極Aがある(ほぼ)不変の電位にリセットされるように、それの電位が追跡されることを、確保することができる。この目的のための2つの可能な回路が、
図7及び
図8に示される。
【0071】
図7では、ソースフォロワ回路内の読み出しトランジスタATを動作させる。ソースFSの出力は、信号を反転させる差動増幅器を駆動する。V1は読み出しトランジスタATのソース電位を定義し、V2は読み出しトランジスタATのドレイン電位を定義する。OutとV3との間の分圧器R1、R2は、クリアコンタクト部RCに戻されるフィードバック電圧を低減する。従って、V3の電位は、出力電圧のペデスタルを調節するために使用され得る。電位Vrgは、長チャネルリセットトランジスタRTのゲートRGで利用可能であり、そのリセットトランジスタRTは、曲線の線形範囲において動作され、従って、ある抵抗特性を有する。それ故、それは、フィードバック抵抗器を調節する。
【0072】
図8では、共通ソース回路内の、すなわち、一定のソース電位で、読み出しトランジスタATを動作させる。V1はソース電位を定義する。電源に接続されたドレインFDは、出力電圧を与える。OutとV3との間の分圧器R1、R2は、クリアコンタクト部RCに戻ったフィードバック電圧を低減する。従って、V3という電位は、出力電圧のペデスタルを調節するために使用され得る。電位Vrgは、長チャネルリセットトランジスタRTのゲートRGで利用可能であり、そのリセットトランジスタRTは、曲線の線形範囲において動作され、従って、ある抵抗特性を有する。それ故、それは、フィードバック抵抗器を調節する。
【0073】
(外部)フィードバック回路の
図7及び
図8に示される例は、多くの可能性のうちの2つだけである。これらの回路の本質は、リセットトランジスタRTのクリアコンタクト部RCへの出力信号の本発明に係るフィードバックである。
【0074】
図9は、上記の例示的な実施形態に大部分が対応する本発明に係る半導体ドリフト検出器の簡易概略図を示し、これにより、繰り返しを避けるために参照が上記になされる。
【0075】
この例示的な実施形態の特性は、検出器表面が複数の検出器セルZに更に分割されるという事実にあり、その複数の検出器セルZは、半導体ドリフト検出器の感放射線性領域全体のほんの一部だけをそれぞれカバーする。
【0076】
個々の検出器セルZは、ここで六角形状であり、感放射線性検出器表面全体をカバーする六角形のパックを形成する。
【0077】
更に、半導体ドリフト検出器は、この例示的な実施形態では、全ての検出器セルZを並列に読み出す共通読み出し電子機器AEを有する。
【0078】
この例示的な実施形態の利点は、個々の検出器セルZ内の放射によって生成された信号電荷担体が、検出器セルZの小さな空間的広がりに起因して、短いドリフト時間を有するので、より速い読み出し速度を実現できることある。
【0079】
本発明は、上記の好適な例示的実施形態に限定されない。代わりに、発明の概念を使用し、従って、保護の範囲内に属する複数の別形及び変形が可能である。発明はまた、主題と、従属請求項が参照する請求項の特徴から独立するその従属請求項の特徴との保護を請求するものであることも、記述されるべきである。
【符号の説明】
【0080】
A 読み出し陽極
AE 読み出し電子機器
AT 読み出しトランジスタ
dn 埋め込まれたn型ドーピング
dp 深いp型ドーピング
DR1 ドリフトリング
DR2 ドリフトリング
FD 読み出しトランジスタのドレイン
FG 読み出しトランジスタのゲート
FS 読み出しトランジスタのソース
HS 半導体基板
K 導体チャネル
R1 分圧器の抵抗
R2 分圧器の抵抗
RC クリアコンタクト部
Rdp 埋め込まれたp型ドーピング
RG リセットトランジスタのゲート
RK バックコンタクト部
RT リセットトランジスタ
SL スロット
V1 ソース電位を確立するための電位
V2 ドレイン電位を確立するための電位
V3 出力電圧のペデスタルを確立するための電位
Vrg 消去トランジスタのゲートにおける電位
Out 出力
Z 検出器セル
Θ 入射電子
h・f 入射光子。