【文献】
平成21年度 近未来バリューチェーン整備グループ 初版,日本,財団法人日本情報処理開発協会,2010年 7月31日,第1版,第46-55頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の輸送業務支援システム100を含むネットワーク構成図である。
図1に示す輸送業務支援システム100は、配達先在宅状況の情報を機微情報として適切に取り扱いつつ、宅配業務の効率向上やコスト低減を可能とするコンピュータシステムである。こうした輸送業務支援システム100は、具体的には、小売業者や個人など荷物の配達依頼者からのオーダーに応じて輸送業務を行う輸送業者、または輸送業者に対して情報提供を行うサービス業者が運用するサーバ装置を想定できる。本実施形態の輸送業務支援システム100は、ネットワーク10を介して、輸送業者が運用する輸送業者装置200、配達先の施設20に備わる分電盤25および水道メータ35と通信可能に接続されている。
【0014】
ここで、上述の荷物の配達先としては電力の需要家を想定する。配達先である需要家の施設20では、電力事業者が提供する系統電源21から分電盤25にて給電を受け、この分電盤25から配電する電力で各箇所の電気設備26を稼動させる一般的な受電及び配電の構成が備わっている。施設20内の電気設備26で消費された電力の量すなわち消費電力量は、分電盤25に備わる電力量計27により計測されている。分電盤25は通信機能を具備し、ネットワーク10を介して、上述の輸送業務支援システム100と通信可能に結ばれており、電力量計27により計測された消費電力量のデータを所定時間毎に送信している。こうした分電盤25は、いわゆるHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)の一部を構成するものである。
【0015】
また、上述の施設20には、当然ながら水道施設が備わっており、水道事業者の給水系統30から給水を受け、この給水を施設内配管31に配水し、その使用後の水を排水する一般的な給排水の構成が備わる。施設20内で使用された水の量すなわち消費水道量は、施設20に設置された水道メータ35により計測されている。水道メータ35は通信機能を具備し、ネットワーク10を介して、上述の輸送業務支援システム100と通信可能に結ばれており、水道メータ35により計測された消費水道量のデータを所定時間毎に送信している。
【0016】
なお、上述の輸送業者装置200はコンピュータ装置であり、輸送業務支援システム100が提供する輸送支援情報を受信して、これをディスプレイ等の出力装置に出力する機能を有している。またこの輸送業者装置200は、好ましくは、各日において荷物を配達する予定の配達先に関する情報を、輸送業務支援システム100に対して送信する機能も有している。ここで輸送業者装置200が輸送業務支援システム100に送信する情報は、荷物の配達先の住所情報および連絡先情報を含んでいる。連絡先情報としては、配達先の施設20に備わる上述の分電盤25等のネットワークアドレスや、施設20のユーザが保持するスマートフォン、携帯端末などのメールアドレスを想定できる。
【0017】
こうした輸送業者装置200は、輸送業者が管理する各輸送車両に備わる装置と、各車両の装置を管理するサーバ装置の少なくともいずれかを想定出来る。輸送業者装置200が各輸送車両に備わる装置である場合、輸送業務支援システム100から、輸送車両に備わる装置への情報配信手法としては、例えば、従来から利用されている、車両基地の通信装置から各車両の通信装置に向けた無線による同報配信等の技術を採用すればよい。つまりこの場合、輸送業務支援システム100が輸送業者の車両基地に設置され、各輸送車両に向けた輸送支援情報の無線配信の処理を担うことになる。いずれにしても輸送支援情報の配信手法について限定しない。
−−−ハードウェア構成−−−
【0018】
続いて、輸送業務支援システム100および輸送業者装置200の各ハードウェア構成について説明する。まず、輸送業務支援システム100のハードウェア構成は以下の如くとなる。
図2は本実施形態における輸送業務支援システム100のハードウェア構成例を示す図である。輸送業務支援システム100は、ハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される記憶装置101、RAMなど揮発性記憶素子で構成されるメモリ103、記憶装置101に保持されるプログラム102をメモリ103に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPUなどの演算装置104、ネットワーク10と接続し他装置との通信処理を担う通信装置105、を備える。
【0019】
なお、記憶装置101内には、本実施形態の輸送業務支援システム100として必要な機能を実装する為のプログラム102と、使用量データベース125、在宅情報データベース126、配達先情報データベース127、輸送支援情報データベース128、および道路情報データベース129が少なくとも記憶されている。いずれのデータベースについても、その構成の詳細については後述する。
【0020】
また、輸送業者装置200のハードウェア構成は以下の通りである。
図3は本実施形態における輸送業者装置200のハードウェア構成例を示す図である。輸送業者装置200は、ハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される記憶装置201、RAMなど揮発性記憶素子で構成されるメモリ203、記憶装置201に保持されるプログラム202をメモリ203に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPUなどの演算装置204、輸送業務を担当する担当者(例:輸送業務の管理者や輸送車両のドライバー)のキー入力や音声入力を受け付ける入力装置205、処理データの表示を行うディスプレイ等の表示装置206、および、ネットワーク10と接続し上述の輸送業務支援システム100との通信処理を担う通信装置207、を備える。
−−−機能例−−−
【0021】
続いて、本実施形態の輸送業務支援システム100が備える機能について説明する。以下に説明する機能は、輸送業務支援システム100が備えるプログラムを実行することで実装される機能と言える。
【0022】
この場合、輸送業務支援システム100は、記憶装置101の在宅情報データベース126で保持する在宅情報を、当該配達先の地域別に集計して、各地域において在宅予定である配達先の割合を算定し、当該算定した地域別の在宅割合の情報である輸送支援情報を、上述の輸送業者装置200など所定装置に出力する機能を備えている。当該機能は、上述の在宅情報を当該配達先の地域別および時間帯別に集計して、各地域の各時間帯において在宅予定である配達先の割合を算定し、当該算定した各地域の各時間帯における在宅割合の情報を輸送支援情報として出力すると好適である。
【0023】
また、輸送業務支援システム100は、例えば在宅情報データベース126の在宅情報として、荷物の指定配達時間の情報を更に保持しているとしてもよい。この場合、上述の在宅割合を算定する機能において、在宅情報データベース126の在宅情報および指定配達時間の情報を当該配達先の地域別および時間帯別に集計して、各地域において在宅予定である配達先の割合を算定するものとする。
【0024】
また、輸送業務支援システム100は、各地域における各道路の長さと時間帯別の必要通過時間の各情報を少なくとも含む道路情報を格納した、道路情報データベース129を記憶装置101にて更に備えているとすれば好適である。この場合、輸送業務支援システム100は、地域別の各配達先を結ぶ各道路の長さを、道路情報データベース129の道路情報に基づき算定し、当該道路長に対し、当該道路情報が当該道路に関して示す時間帯別の必要通過時間を除算することで、各地域の各時間帯における平均配達速度係数を算定し、当該算定した平均配達速度係数を在宅割合に乗算することで各地域の各時間帯における配達効率指数を算定し、当該配達効率指数の情報を輸送支援情報として出力する機能を更に備えている。
【0025】
また、輸送業務支援システム100は、上述の輸送支援情報を最適化問題の所定アルゴリズムに適用して、再配達確率最小となる配達実行順序を地域間で特定し、当該特定した配達実行順序の情報を輸送業者装置200など所定装置に出力する機能を更に備えている。
【0026】
また、輸送業務支援システム100は、荷物の各配達先の連絡先情報を格納した配達先情報データベース127を更に保持すると好適である。この場合、輸送業務支援システム100は、上述の輸送支援情報に基づき、在宅割合が所定の上限基準を上回った地域および時間帯を特定し、当該地域の各配達先の連絡先情報が示す分電盤25など所定装置に宛て、当該時間帯と異なる他時間帯に在宅することを推奨する情報を、通信装置105を介して送信する処理と、上述の輸送支援情報に基づき、在宅割合が所定の下限基準を下回った地域および時間帯を特定し、当該地域の各配達先の連絡先情報が示す分電盤25など所定装置に宛て、当該時間帯に在宅することを推奨する情報を、通信装置105を介して送信する処理と、の少なくともいずれかの処理を実行する機能を更に備えている。
【0027】
また、輸送業務支援システム100は、荷物の各配達先における電気、水道、およびガスのうち1または複数の使用量の情報を、当該配達先の施設20に備わる分電盤25や水道メータ35などの所定装置、または使用量の管理事業者(例:電気事業者、水道事業者)の所定装置から通信装置105を介して取得し、これを記憶装置101の使用量データベース125に格納すると共に、当該取得した使用量の情報を、所定の在宅確率推定用アルゴリズムに適用して、各配達先の在宅確率を推定し、当該在宅確率を在宅情報として記憶装置101の在宅情報データベース126に格納する機能を更に備えている。
−−−データ構造例−−−
【0028】
次に、本実施形態の輸送業務支援システム100が用いるデータベース類におけるデータ構造例について説明する。
図4は本実施形態の輸送業務支援システム100が保持する使用量データベース125の構成例を示す図である。この使用量データベース125は、荷物の各配達先の施設20における電気、水道、およびガスのうち1または複数の使用量の情報を格納するデータベースである。具体的には、所定エリアに所在する各施設20を一意に示す施設IDをキーとして、使用物、使用量、および対象期間といった各値を対応付けたレコードの集合体となっている。
【0029】
なお、この使用量データベース125における施設IDの値は、例えば当該施設20の住所情報を構成する、市、町、丁目、番地、建物名、部屋番号など、行政区画の粒度毎の情報にそれぞれハッシュ関数など適宜な一方向関数を適用して、各粒度の情報に関して得られる出力値(桁数は予め決まっている)を順に連結させた値などを想定できる(以下同様)。この場合の施設IDの値は、先頭から3桁目までが市、4桁目から7桁目までが町、8桁目から10桁目までが丁目、といったデータ構造を備えることになる。
【0030】
図5は本実施形態の輸送業務支援システム100が保持する在宅情報データベース126の構成例を示す図である。この在宅情報データベース126は、荷物の各配達先における時間帯別の在宅確率を格納したデータベースである。具体的には、配達先の施設20を一意に示す施設IDをキーとして、各時間帯における当該施設の構成員等の在宅確率、および指定配達時間といった各値を対応付けたレコードの集合体となっている。
【0031】
図6は本実施形態の輸送業務支援システム100が保持する配達先情報データベース127の構成例を示す図である。この配達先情報データベース127は、配達先の施設20に備わる分電盤25や或いは施設20の構成員らが所持する携帯端末など所定装置のアドレスを格納したデータベースである。具体的には、配達先の施設20を一意に示す施設IDをキーとして、連絡対象機器、およびネットワークアドレスといった各値を対応付けたレコードの集合体となっている。
【0032】
図7は本実施形態の輸送業務支援システム100が保持する輸送支援情報データベース128の構成例を示す図である。この輸送支援情報データベース128は、輸送支援情報である、各地域の各時間帯における在宅確率および配達効率指数の各情報を格納するデータベースである。具体的には、地域を一意に示す地域IDをキーとして、時間帯、当該時間帯における当該地域の在宅確率および配達効率指数、といった各値を対応付けたレコードの集合体となっている。
【0033】
なお、この輸送支援情報データベース128における地域IDの値は、例えば上述の施設IDの値のうち、所定の行政区画の粒度までに対応した桁の値を想定できる(以下同様)。例えば、施設IDの値のうち、行政区画の市から丁目までの粒度に対応した、先頭から14桁目までの値を地域IDとする構成が該当する。
【0034】
図8は本実施形態の輸送業務支援システム100が保持する道路情報データベース129の構成例を示す図である。この道路情報データベース129は、各地域における各道路の長さと時間帯別の必要通過時間の各情報を格納するデータベースである。具体的には、地域を一意に示す地域IDをキーとして、当該地域に含まれる各道路の道路ID、道路長、および、時間帯別の必要通過時間といった各値を対応付けたレコードの集合体となっている。
−−−フロー例1−−−
【0035】
以下、本実施形態における輸送業務支援システム100の動作例について図に基づき説明する。
図9は、本実施形態における輸送業務支援方法のフロー例1を示す図である。以下で説明する各種動作は、輸送業務支援システム100がそのメモリに読み出して実行する各プログラムによって実現される。そして、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0036】
ここではまず、荷物の配達先である各施設20に人が所在する確からしさ、すなわち在宅確率の推定を輸送業務支援システム100が行う場合のフローについて説明する。勿論、他装置が実行した在宅確率推定の結果を輸送業務支援システム100が取得し、記憶装置101の在宅情報データベース126に保持する構成の場合、当該フローは不要となる。
【0037】
まず当該フローにおける輸送業務支援システム100は、例えば輸送業者のサーバ装置(例:輸送業者が受注した輸送依頼の管理を行うサーバ装置など)から、明日など所定未来に実行予定の輸送業務に関する情報を、ネットワーク10経由で取得する(s100)。或いは、輸送業者から提供された、当該情報を格納した記録媒体の読み取り動作を行って取得するとしてもよい。こうして取得した情報には、各荷物の配達先である施設20の住所情報とが少なくとも含まれている。
【0038】
次に輸送業務支援システム100は、例えば、上述のステップs100で得た各配達先の住所情報を、ハッシュ関数など適宜な一方向関数に適用して施設IDを生成し、この施設IDを含むレコードを在宅情報データベース126で生成、登録する(s101)。ここで示す施設IDの具体的な生成手法例については既に述べた通りである。
【0039】
一方向関数によって施設IDを生成する構成とすることで、施設IDから住所情報を推定する事態を回避出来る。また輸送業務支援システム100は、上述の施設IDの生成に伴い、ステップs100で受信している情報を消去する。この時点で、輸送業務支援システム100は、施設IDのみを保持する状態となる。
【0040】
なお、上述の輸送業者装置200が、上述のハッシュ関数等と同一の関数を有して施設IDの生成処理を予め実行しており、実行予定の輸送業務に関する情報に施設IDを含めて送信してくる場合、当該ステップs101での施設ID生成は不要である。
【0041】
続いて輸送業務支援システム100は、上述のステップs101で登録した施設IDをキーに、使用量データベース125にて検索を実行し、当該施設に関して格納されている使用量の情報を抽出する(s102)。ここで抽出出来る使用量の情報は、既に述べたように、電気、水道、およびガスのうち1または複数の使用量の情報であり、或る日の各時間帯における使用量を示すものとなる。
【0042】
次に輸送業務支援システム100は、上述で抽出した使用量の情報のうち、当該輸送業務の実行予定時期に対応した時期(例:○月○日、夏期の平日、など)に関するものを選択し、当該選択した使用量の情報を、所定の在宅確率推定用アルゴリズムに適用して、各配達先たる各施設20の、輸送業務の実行予定時期での各時間帯の在宅確率を推定する(s103)。
【0043】
上述の在宅確率の推定手法自体は、既存技術を適宜に採用すればよいが、好ましくは、電気使用量に基づく在宅確率の推定結果に、水道使用量に基づく在宅確率の推定結果をマージしたものを最終的な在宅確率とすると更に好適である。
【0044】
続いて輸送業務支援システム100は、上述のステップs103で推定した、各配達先たる各施設20の、輸送業務の実行予定時期での在宅確率を、在宅情報として、在宅情報データベース126における該当施設IDのレコードに格納し(s104)、当該フローを終了する。
【0045】
なお、ここまでのフローで説明は省略しているが、輸送業務支援システム100は、荷物の各配達先たる施設20における電気、水道、およびガスのうち1または複数の使用量の情報を、当該配達先の施設20に備わる分電盤25や水道メータ35などの所定装置、または使用量の管理事業者(例:電気事業者、水道事業者)の所定装置から通信装置105を介して一定時間ごとに取得し、これを記憶装置101の使用量データベース125に格納しているものとする。
−−−フロー例2−−−
【0046】
続いて、輸送支援情報の生成、出力について説明する。
図10は、本実施形態における輸送業務支援方法のフロー例2を示す図である。
【0047】
この場合、輸送業務支援システム100は、記憶装置101の在宅情報データベース126で保持するレコード(これは、明日など所定未来に実行予定の輸送業務に関するものである)を読み取り、当該レコードが含む施設IDの情報を抽出する(s200)。
【0048】
次に輸送業務支援システム100は、ステップs200で抽出した各レコードの施設IDのうち、先頭から所定桁目までの値を地域IDとして読み取る(s201)。既に述べたように、本実施形態での施設IDは、当該施設20の住所情報を構成する、市、町、丁目、番地、建物名、部屋番号など、行政区画の粒度毎の情報にそれぞれハッシュ関数など適宜な一方向関数を適用して、各粒度の情報に関して得られる出力値(桁数は予め決まっている)を順に連結させた値を想定している。従って、施設IDの値のうち、先頭から所定桁目までの値は、住所情報の全てではなく、例えば「○○市○○町1丁目」、といった地域を示すものとなる。
【0049】
続いて輸送業務支援システム100は、ステップs201で読み取った地域IDの値をキーに、ステップs200で読み取った各レコードをグルーピングする(s202)。このグルーピングにより、地域別のレコード群を生成出来る。
【0050】
次に輸送業務支援システム100は、上述のグルーピングで得た地域別のレコード群から、各レコードが含む時間帯別の在宅確率の情報と、含まれる場合には荷物の指定配達時間の情報を抽出し、在宅確率に関して、地域別および時間帯別に集計することで、各地域の各時間帯において在宅予定である配達先の割合を算定する(s203)。
【0051】
例えば、
図11に示すように、「A」〜「F」の各地域の配達先として、所定数の施設20が存在していたとする。また、各地域における配達先の施設総数は、「A」地域では「6」、「B」地域は「10」、「C」地域は「6」、「D」地域は「2」、「E」地域は「12」、「F」地域は「2」、であったとする。また、「9:00」〜「10:00」の時間帯において、在宅可能性が高い施設20の数は、「A」地域では「3」、「B」地域は「5」、「C」地域は「2」、「D」地域は「2」、「E」地域は「2」、「F」地域は「2」、であったとする。なお、この「9:00」〜「10:00」の時間帯において在宅可能性が高い施設20には、荷物の指定配達時間が「9:00」〜「10:00」であった施設20の数も含まれている。
【0052】
こうした場合、輸送業務支援システム100は、各地域における「9:00」〜「10:00」の時間帯の在宅割合として、在宅可能性が高い施設数/配達先の施設総数、をそれぞれ算定する。例えば、「9:00」〜「10:00」の時間帯における在宅割合を、「A」地域に関しては「3/6=0.5」、「B」地域に関しては「5/10=0.5」、「C」地域に関しては「2/6=0.3」、「D」地域に関しては「2/2=1.0」、「E」地域に関しては「2/4=0.5」、「F」地域に関しては「2/2=1.0」、などと算定する。
【0053】
また、輸送業務支援システム100は、上述のステップs203で算定した各地域の各時間帯における在宅割合の情報を、輸送支援情報として、記憶装置101の輸送支援情報データベース128に格納する(s204)。
【0054】
また、輸送業務支援システム100は、輸送業者装置200からの要求を受けた場合、或いは予め定めた所定時期の到来をクロック機能等で検知した場合、輸送支援情報データベース128から、各地域の各時間帯における在宅割合の情報を読み出し、これをネットワーク10経由で輸送業者装置200に送信する(s205)。
【0055】
なお、輸送業務支援システム100は、上述の輸送支援情報を最適化問題の所定アルゴリズムに適用して、再配達確率最小となる配達実行順序を地域間で特定し、当該特定した配達実行順序の情報(
図12参照)を輸送業者装置200に送信するとしてもよい。こうした経路問題に関するアルゴリズムについては既存技術を採用すれば良い。
−−−フロー例3−−−
【0056】
続いて、上述の在宅割合の情報を更に活用する処理について説明する。
図13は、本実施形態における輸送業務支援方法のフロー例3を示す図である。
【0057】
この場合、輸送業務支援システム100は、上述のフロー例2までで得ている、地域別の各配達先の施設20に関して、各施設20の間を結ぶ各道路の長さ情報を、道路情報データベース129の道路情報から検索し、当該検索で得た各道路の長さ情報(例:D地域における配達先であるe施設とf施設の間がg道路とh道路で結ばれており、g道路の長さは1km、h道路の長さは1.2km、など)に基づき、当該地域の各施設間を結ぶ道路長を算定する(s300)。上述の例の場合、D地域の配達先であるe施設とf施設の間の道路長は、「1+1.2=2.2km」などと算定できる。
【0058】
次に輸送業務支援システム100は、上述のステップs300で算定した道路長を構成する各道路の時間帯別の必要通過時間を、道路情報データベース129から抽出する(s301)。例えば、上述のD地域のe施設とf施設の間を結ぶ「2.2km」の道路長を構成する道路のうち、g道路について、例えば「9:00」〜「10:00」の時間帯における必要通過時間を「0.2時間」、また、h道路について、例えば「9:00」〜「10:00」の時間帯における必要通過時間を「0.1時間」、などと抽出する。
【0059】
続いて輸送業務支援システム100は、ステップs300で得た道路長を、ステップs301で得た必要通過時間で除算することで、各地域の各時間帯における平均配達速度係数を算定する(s302)。
【0060】
上述の場合、A地域のb施設とc施設の間を結ぶ「2.2km」の道路長に関して、g道路の「1km」を、例えば「9:00」〜「10:00」の時間帯おける必要通過時間「0.2時間」で除算して「5」km/時間、また同様に、h道路の「1.2km」を、例えば「9:00」〜「10:00」の時間帯における必要通過時間「0.1時間」で除算して「12」km/時間と、各道路の平均配達速度係数を算定する。そしてこれらを合算した「5+12=17」、を、D地域における「9:00」〜「10:00」の時間帯での平均配達速度係数とする。
【0061】
次に輸送業務支援システム100は、上述のステップs302で算定した平均配達速度係数を、当該地域の当該時間帯における在宅割合の値に乗算することで、当該地域の当該時間帯における配達効率指数を算定する(s303)。
【0062】
例えば上述のフロー例2におけるステップs203で「D」地域に関して算定した、「9:00」〜「10:00」の時間帯における在宅割合の値「1.0」と、上述のステップs302で「D」地域に関して算定した「9:00」〜「10:00」の時間帯での平均配達速度係数の値「17」を乗算し、「D」地域の「9:00」〜「10:00」の時間帯における配達効率指数を「1×17=17」と算定できる。この値が大きいほど、再配達の可能性が低く、なおかつ迅速に輸送業務を完了出来ることを示している。このことは、輸送業務用の車両が生み出す二酸化炭素など環境負荷を低減することにもつながる。
【0063】
続いて輸送業務支援システム100は、ステップs303で算定した,各地域の各時間帯における配達効率指数の情報を輸送支援情報とし、ネットワーク10を介して輸送業者装置200に送信し(s304)、当該フローを終了する。この時、輸送業務支援システム100は、配達効率指数の情報を、輸送支援情報データベース128に格納する。
【0064】
なお、輸送業務支援システム100は、上述の輸送支援情報を最適化問題の所定アルゴリズムに適用して、再配達確率最小となる配達実行順序を地域間で特定し、当該特定した配達実行順序の情報(
図12参照)を輸送業者装置200に送信するとしてもよい。こうした経路問題に関するアルゴリズムについては既存技術を採用すれば良い。
−−−フロー例4−−−
【0065】
続いて、時間帯間での在宅割合の偏在解消に貢献する処理について説明する。
図14は、本実施形態における輸送業務支援方法のフロー例4を示す図である。一般世帯において、出勤する家人とそれを送り出して家事を行う主婦が在宅する午前10時までの朝の時間帯と、夕食の支度をする主婦と帰宅する家人が在宅する午後4時〜6時の夕方の時間帯は、他の時間帯と比べて在宅確率が高い傾向が従来から指摘されている。一方、こうした状況に対応して輸送業務を行うとすれば、朝夕のラッシュ時に車両を走行させることになり、業務効率は低いものとなりやすい。
【0066】
そこで本実施形態の輸送業務支援システム100は、上述の輸送支援情報データベース128で保持する、各地域の各時間帯に関する輸送支援情報に基づき、在宅割合および在宅確率の高い施設数の少なくともいずれかが所定の上限基準を上回った地域および時間帯を特定する(s400)。上限基準とは、例えば、輸送業者の備える輸送業務能力の限界値に対応する値を想定出来る。在宅確率の高い配達先が一定数以上存在する地域において、その在宅割合が非常に高い時間帯が存在する場合、その時間帯に当該地域にて輸送業務を実行するとしても、その輸送業者の備える輸送業務能力(例:車両およびドライバーの数など)では所定時間内に業務を遂行しきれない事態が生じうる。
【0067】
例えば、或る地域の或る時間帯における在宅割合が「0.9」で、なおかつ当該地域にて当該時間帯で在宅確率の高い配達先である施設数が「30」であったとする。一方、当該輸送業務を実行する輸送業者に関して輸送業務支援システム100が予め保持している在宅割合の上限基準が「0.8」、施設数の上限基準が「20」であったとする。この場合、輸送業務支援システム100は、当該地域の当該時間帯に関して、輸送業者の備える輸送業務能力では所定時間内に業務を遂行しきれない、すなわち、在宅割合および配達先の施設総数が上限基準を上回った地域および時間帯と特定することになる。
【0068】
上述のステップs400の結果、在宅割合が所定の上限基準を上回った地域および時間帯を特定できた場合(s401:y)、輸送業務支援システム100は、当該地域の各配達先の連絡先情報を、配達先情報データベース127から抽出する(s402)。ここで抽出する連絡先情報は、施設20に備わる分電盤25か、或いは施設20の構成員が所持する携帯端末といった所定装置のアドレスである。
【0069】
続いて輸送業務支援システム100は、上述のステップs402で得た連絡先情報に宛て、ステップs400で特定した当該時間帯とは異なる他の時間帯に在宅することを推奨する情報を、通信装置105を介して送信する(s403)。ここで送信する情報は、輸送業務支援システム100が記憶装置101で予め保持するメッセージである。
【0070】
他方、上述のステップs400の結果、在宅割合および在宅確率の高い施設数の少なくともいずれかが所定の上限基準を上回った地域および時間帯を特定出来なかった場合(s401:n)、または、上述のステップs402の処理実行後、輸送業務支援システム100は、輸送支援情報データベース128で保持する、各地域の各時間帯に関する輸送支援情報に基づき、在宅割合および在宅確率の高い施設数の少なくともいずれかが所定の下限基準を下回った地域および時間帯を特定する(s404)。下限基準とは、例えば、輸送業者の備える輸送業務能力からすれば、業務効率が著しく低いものとなる値を想定出来る。在宅確率が高い配達先が一定数以下しか存在しない地域において、その在宅割合が非常に低い時間帯が存在する場合、その時間帯に当該地域にて輸送業務を実行するとしても、その輸送業者の備える輸送業務能力(例:車両およびドライバーの数など)を十分に活用仕切れず、全体として業務効率が低下する事態が生じうる。
【0071】
例えば、或る地域の或る時間帯における在宅割合が「0.2」で、なおかつ当該地域の当該時間帯において在宅確率が高い配達先である施設数が「4」であったとする。一方、当該輸送業務を実行する輸送業者に関して輸送業務支援システム100が予め保持している在宅割合の下限基準が「0.3」、施設数の上限基準が「4」であったとする。この場合、輸送業務支援システム100は、当該地域の当該時間帯に関して、輸送業者の備える輸送業務能力を十分に活用しきれない、すなわち、在宅割合および在宅確率の高い施設数の少なくともいずれかが下限基準を下回った地域および時間帯と特定することになる。
【0072】
上述のステップs404の結果、在宅割合および在宅確率の高い施設数の少なくともいずれかが所定の下限基準を上回った地域および時間帯を特定できた場合(s405:y)、輸送業務支援システム100は、当該地域の各配達先の連絡先情報を、配達先情報データベース127から抽出する(s406)。
【0073】
続いて輸送業務支援システム100は、上述のステップs406で得た連絡先情報に宛て、ステップs404で特定した当該時間帯に在宅することを推奨する情報を、通信装置105を介して送信する(s407)。ここで送信する情報は、輸送業務支援システム100が記憶装置101で予め保持するメッセージである。
【0074】
他方、上述のステップs404の結果、在宅割合および在宅確率の高い施設数の少なくともいずれかが所定の下限基準を上回った地域および時間帯を特定できなかった場合(s405:n)、輸送業務支援システム100は当該フローを終了する。
【0075】
上述した一連のフローを実行した結果、施設20の構成員らが在宅時間を変化させることで、時間帯間での在宅割合の偏在解消を少しでも図り、ひいては輸送業者における業務効率を向上させることにつながりうる。
【0076】
なお、在宅時間帯の変更を推奨する情報の送信相手である、配達先の施設20について、輸送業務支援システム100が、より有意に選定するとしてもよい。例えば、輸送業務支援システム100は、在宅情報データベース126において、各施設20の在宅確率の経時変化の情報についても保持しているとする。ここで輸送業務支援システム100は、当該時間帯における在宅確率が、過去の所定期間において所定基準を超えて変動している施設20を、「在宅時間の変更を受け入れる余地がある」施設として特定し、情報の送信相手と特定する。このような処理を行うとすれば、時間帯間での在宅割合の偏在解消を更に効率的に達成可能となる。
【0077】
以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0078】
こうした本実施形態によれば、配達先在宅状況の情報を機微情報として適切に取り扱いつつ、宅配業務の効率向上やコスト低減が可能となる。
【解決手段】輸送業務支援システム100において、荷物の各配達先の在宅情報を格納した在宅情報データベース126を保持する記憶装置101と、記憶装置101の在宅情報データベース126で保持する在宅情報を当該配達先の地域別に集計して、各地域において在宅予定である配達先の割合を算定し、当該算定した地域別の在宅割合の情報である輸送支援情報を所定装置200に出力する演算装置104とを含む構成とする。