特許第6057245号(P6057245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057245
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   B60L 11/18 20060101AFI20161226BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20161226BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20161226BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   B60L11/18 C
   H02J7/00 P
   B60R16/03 V
   B60H1/22 611C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-289408(P2011-289408)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2012-231659(P2012-231659A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2014年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-91420(P2011-91420)
(32)【優先日】2011年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510083946
【氏名又は名称】安東 弘光
(73)【特許権者】
【識別番号】504293528
【氏名又は名称】イマジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】安東 弘光
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕二
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−059918(JP,A)
【文献】 特開平10−077834(JP,A)
【文献】 特開2007−022452(JP,A)
【文献】 特開昭55−093952(JP,A)
【文献】 特開2009−281254(JP,A)
【文献】 特開2012−210128(JP,A)
【文献】 特開2011−149314(JP,A)
【文献】 特開2010−175048(JP,A)
【文献】 特開2009−262748(JP,A)
【文献】 特開2000−055572(JP,A)
【文献】 特開2011−031672(JP,A)
【文献】 実開昭63−006962(JP,U)
【文献】 特開昭61−169313(JP,A)
【文献】 特開2008−103108(JP,A)
【文献】 特開2009−303316(JP,A)
【文献】 特開2010−259308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
B60H 1/22
B60R 16/03
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給源から供給される電力により充電されるバッテリーと、
前記バッテリーから供給される電力により駆動力を発生させる駆動源とを備え、
前記駆動力により移動する移動体であって、
前記バッテリーを充電するために外部の充電設備を当該移動体の接続端子に接続した際に供給される電力を利用して、温熱及び冷熱の少なくとも一方の熱を生成する熱生成部と、
前記熱生成部で生成された熱を蓄熱材に蓄える蓄熱部と、
当該移動体の室内空間に連通する利用側ダクトに設けられ、前記室内空間へ供給される空気が流れる空気通路を形成する利用側熱供給部材と、
前記蓄熱材に蓄えられた熱が伝達されるように設けられ、前記利用側熱供給部材に当接して、伝達された熱を熱伝導により前記利用側熱供給部材へ供給する熱伝達部材とを備えていることを特徴とする移動体。
【請求項2】
前記熱伝達部材の一端は、前記蓄熱材に埋設されていることを特徴とする、請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記蓄熱材を収容する断熱容器と、
前記断熱容器に連通し、前記蓄熱材から放出された熱が流入する熱流入容器とを備え、
前記熱伝達部材の一端側は、前記熱流入容器内に露出していることを特徴とする、請求項1に記載の移動体。
【請求項4】
前記利用側熱供給部材は、前記利用側ダクトの一部を構成していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の移動体。
【請求項5】
前記利用側熱供給部材は、前記熱伝達部材が当接する箇所以外が断熱材で被覆されていることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1つに記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーから供給された電力により生成される駆動力によって移動する移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、バッテリーから供給された電力により駆動力(又は、推進力)を得る移動体(例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車)が知られている。例えば特許文献1には、空調装置を搭載した電気自動車が記載されている。空調装置は、バッテリーの電気エネルギーにより運転される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−111360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の移動体では、空調装置の運転等の電気利用に伴い、バッテリーの充電量が減少し、1回の充電で移動できる移動距離が短くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、バッテリーから供給された電力により生成される駆動力によって移動する移動体において、移動距離の短縮を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、電力供給源から供給される電力により充電されるバッテリーと、前記バッテリーから供給される電力により駆動力を発生させる駆動源とを備え、前記駆動力により移動する移動体を対象とする。この移動体は、前記バッテリーを充電する際に、温熱及び冷熱の少なくとも一方の熱を生成する熱生成部と、前記熱生成部で生成された熱を蓄える蓄熱部と、前記蓄熱部に蓄えられた熱を利用側へ伝達させる熱伝達部とを備えている。
【0007】
第1の発明では、バッテリーを充電する際に生成された温熱又は冷熱が、蓄熱部に蓄えられる。そして、蓄熱部に蓄えられた温熱又は冷熱が、熱伝達部を介して利用側へ伝達される。第1の発明では、移動体で利用する温熱又は冷熱の一部が、蓄熱部に蓄えられる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記熱生成部が、前記バッテリーを充電する際に、前記電力供給源から供給された電力の一部を利用して、温熱及び冷熱の少なくとも一方の熱を生成する。
【0009】
第3の発明は、第1の発明において、前記熱生成部が、前記バッテリーを充電する際に、該バッテリーから供給された電力を利用して、温熱及び冷熱の少なくとも一方の熱を生成する。
【0010】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、当該移動体の室内空間に連通する利用側ダクトを通じて、温度調節した空気を供給する空調装置と、前記蓄熱部に蓄えられた熱が前記熱伝達部を介して供給され、供給された熱を前記空調装置が前記室内空間へ供給する空気へ供給する利用側熱供給部材とを備えている。
【0011】
第5の発明は、第4の発明において、前記利用側熱供給部材が、前記利用側ダクトの一部を構成している。
【0012】
第6の発明は、第4又は第5の発明において、前記熱伝達部が、前記利用側熱供給部材に当接する熱伝達部材を有し、該熱伝達部材における熱伝導を利用して、前記蓄熱部に蓄えられた熱を前記利用側熱供給部材へ伝達させる。
【0013】
第7の発明は、第6の発明において、前記利用側熱供給部材では、前記熱伝達部から伝達された熱が、該利用側熱供給部材における熱伝導を利用して、前記熱伝達部材の当接箇所から、該利用側熱供給部材を通過する空気に接触する面へ伝達される。
【0014】
第8の発明は、第1乃至第7の何れか1つの発明において、前記蓄熱部は、前記熱生成部で生成された熱を化学蓄熱材に蓄え、前記熱生成部は、前記バッテリーを充電する際に、電気ヒータにより温熱を生成する。
【0015】
第9の発明は、第1乃至第8の何れか1つの発明において、前記電力供給源は、外部の電源であり、当該移動体の停止中に、前記バッテリーの充電と前記蓄熱部への蓄熱が行われる。
【0016】
第10の発明は、第1乃至第8の何れか1つの発明において、前記電力供給源を構成し、前記バッテリーへ電力を供給する発電機と、前記発電機を駆動させるエンジンとを備えている。
【0017】
第11の発明は、第10の発明において、前記バッテリーを充電する際に、前記エンジンの排熱により前記蓄熱部を加熱する。
【0018】
第12の発明は、第1又は第2の発明において、前記蓄熱部に蓄えられた温熱は、前記エンジンの潤滑油の加熱に利用される。
【0019】
第13の発明は、第1又は第2の発明において、前記蓄熱部に蓄えられた温熱は、前記エンジンの始動時にエンジン冷却水の加熱に利用される。
【0020】
第14の発明は、第1又は第2の発明において、前記蓄熱部に蓄えられた温熱は、前記エンジンの始動時にエンジンの吸入空気の加熱に利用される。
【0021】
第15の発明は、第1又は第2の発明において、前記蓄熱部に蓄えられた温熱は、前記エンジンに供給される燃料の改質に利用される。
【0022】
第16の発明は、第1又は第2の発明において、前記蓄熱部に蓄えられた温熱は、前記エンジンから排出された排気ガスを浄化する触媒の加熱に利用される。
【0023】
第17の発明は、第1又は第2の発明において、前記蓄熱部に蓄えられた温熱は、当該移動体に積もった雪を融かすのに利用される。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、移動体で利用する温熱又は冷熱の一部が、蓄熱部に蓄えられる。そのため、バッテリーに蓄えられた電力によって移動体で利用する熱を全て生成する場合に比べて、バッテリーの充電量が減りにくくなる。従って、熱利用に伴う移動体の移動距離の短縮を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態に係る自動車の概略構成図である。
図2図2は、実施形態における蓄熱部と熱伝達部の概略構成図である。
図3図3は、実施形態の変形例に係る自動車の概略構成図である。
図4図4は、実施形態の変形例における蓄熱部と熱伝達部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0027】
本実施形態は、本発明に係る移動体10により構成された自動車10である。本実施形態の自動車10は、図1に示すように、プラグイン式の電気自動車である。自動車10は、モータ11とバッテリー12とを備えている。自動車10の運転時には、バッテリー12から出力される電力が、インバータ16で交流に変換されて、モータ11へ供給される。モータ11では、インバータ16からの電力によりロータが回転する。ロータの回転力は、駆動力として車輪15に与えられ、その駆動力により自動車10が移動する。
−蓄熱部−
【0028】
本実施形態の自動車10は、バッテリー12を充電する際に、温熱を生成する熱生成部49と、その熱生成部49で生成された温熱を蓄える蓄熱部50と、その蓄熱部50に蓄えられた熱を利用側へ伝達させる熱伝達部51とを備えている。
【0029】
熱生成部49は、抵抗加熱式の電気ヒータであり、電力により電熱線60を発熱させる。なお、熱生成部49は、他方式の加熱装置(例えば、ペルチェ効果を利用した加熱装置、誘導加熱式の加熱装置、電磁波を利用した加熱装置)であってもよい。
【0030】
蓄熱部50は、熱生成部49で生成された温熱を蓄熱材20(例えば、化学蓄熱材)に蓄えるように構成されている。蓄熱部50は、蓄熱材20と、蓄熱材20を収容する断熱容器21とを備えている。蓄熱材20は、例えば、金属酸化物−水蒸気系の化学蓄熱材20である。蓄熱材20は、熱生成部49により加熱されると、吸熱反応(脱水反応)を起こし、例えば、水酸化マグネシウム(MgOH)から酸化マグネシウム(MgO)へ変化する。蓄熱材20は、酸化マグネシウムの状態で蓄熱されている。酸化マグネシウムは、作動液(水)に接触すると、発熱反応を起こし、水酸化マグネシウムに戻る。
【0031】
化学蓄熱材20は、断熱材を用いて構成された断熱容器21に収容されている。化学蓄熱材20は、断熱しなくても蓄熱可能であるが、発熱反応時に利用側以外に熱が逃げることを防ぐために、断熱容器21に収容している。なお、断熱容器21内では、熱生成部49の電熱線60が化学蓄熱材20に埋設されている。
【0032】
断熱容器21は、第1配管54及び第2配管57を介して、凝縮側容器52に連通している。第1配管54には、開閉弁55が設けられている。第2配管57には、ポンプ58が設けられている。ポンプ58は、バッテリー12からの電力により駆動される。第2配管57の断熱容器21側には噴射ノズル59が設けられている。
【0033】
熱伝達部51は、図2に示すように、板状の熱伝達部材53を備えている。熱伝達部材53は、高熱伝導性の材料(例えば、シリコンカーバイド)を成形した部材により構成されている。熱伝達部材53の一端は、屈曲して化学蓄熱材20に埋設されている。熱伝達部材53の他端は、利用側熱供給部材45に当接している。
【0034】
利用側熱供給部材45は、図2に示すように、円筒状部材22と、その円筒状部材22内に固定された格子状部材23とを備えている。円筒状部材22及び格子状部材23は、一体化されている。円筒状部材22及び格子状部材23は、熱伝達部材53と同じ高熱伝導材料(例えば、シリコンカーバイド)により構成されている。円筒状部材22の外表面には、前記熱伝達部材53の他端が当接している。円筒状部材22の外表面は、熱伝達部材53の他端が当接する箇所以外が、断熱材(図示省略)により被覆されている。円筒状部材22は、後述する利用側ダクトの一部を構成している。円筒状部材22内における格子状部材23の各格子は、後述する利用側空気通路38になっており、自動車10の室内空間へ供給される空気が流れる。
−空調装置−
【0035】
自動車10は、室内空間を空調するための空調装置30を備えている。空調装置30は、冷媒回路31と熱源側ファン32と利用側ファン33とを備えている。冷媒回路31は、冷媒が充填されて、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うように構成されている。
【0036】
冷媒回路31には、圧縮機34、放熱器35、蒸発器36、及び減圧機構37が接続されている。蒸発器36及び放熱器35は、例えば、フィン・アンド・チューブ熱交換器により構成されている。減圧機構37は、例えば、開度を調節可能な膨張弁である。
【0037】
放熱器35は、熱源側ファン32が配置された熱源側空気通路(図示省略)に配置されている。蒸発器36は、利用側ファン33が配置された利用側空気通路38に配置されている。利用側空気通路38は、利用側ダクト5内に構成されている。なお、利用側空気通路38の入口は、室内空間に連通する状態と、室外空間に連通する状態との間で切り替え可能になっている。利用側空気通路38の出口は、室内空間に連通している。
−充電蓄熱動作−
【0038】
実施形態の自動車10では、外部の充電設備14(例えば、家庭の電源コンセント、充電スタンド)を電力供給源14とする充電蓄熱動作が行われる。自動車10を停車した状態で、充電設備14から延びる電気コードの先端のコネクタを自動車10の接続端子81に接続すると、充電設備14からの電力が、バッテリー12及び熱生成部49へ供給される。充電設備14から出力された一部の電力は、バッテリー12の充電に利用され、充電設備14から出力された残り電力は、熱生成部49における温熱の生成に利用される。
【0039】
熱生成部49は、蓄熱部50の化学蓄熱材20を加熱する。この状態では、開閉弁55が開状態に設定されている。化学蓄熱材20は、吸熱反応(脱水反応)を起こし、水酸化マグネシウム(MgOH)から酸化マグネシウム(MgO)へ変化する。蓄熱材20には、温熱が蓄えられてゆく。また、化学蓄熱材20の脱水反応により生じた水蒸気は、第1配管54を通じて凝縮側容器52に流入する。蓄熱部50への蓄熱を終了させる際には、熱生成部49(電気ヒータ)が停止されると共に、開閉弁55が閉状態に設定される。凝縮側容器52には、凝縮水が貯留される。
−利用動作−
【0040】
次に、蓄熱部50に蓄えられた温熱を利用側熱供給部材45へ伝達させる利用動作について説明する。利用動作は、自動車10の乗員が暖房のスイッチをONにした場合に開始される。スイッチのONに伴い、利用側ファン33の運転が開始される。
【0041】
利用動作では、ポンプ58の運転が行われる。そうすると、凝縮側容器52に貯留された水が、第2配管57を通じて、噴射ノズル59から断熱容器21に供給される。噴射ノズル59から噴射された水は化学蓄熱材20に接触し、化学蓄熱材20が発熱反応を起こす。なお、噴射ノズル59から水を間欠的に噴射する。
【0042】
化学蓄熱材20で発生した温熱は、熱伝達部材53における熱伝導により、利用側熱供給部材45へ供給される。利用側熱供給部材45では、熱伝達部材53を介して伝達された温熱が、熱伝達部材53の固定箇所(当接箇所)から、格子状部材23へ熱伝導により伝達される。これにより、格子状部材23を通過する空気は加熱されて室内空間へ供給される。また、化学蓄熱材20に供給された水は、化学蓄熱材20の発熱に伴い蒸発し、第1配管54を通って凝縮側容器52に流入する。
−実施形態の効果−
【0043】
本実施形態では、自動車10で利用する温熱の一部が、蓄熱部50に蓄えられる。そのため、バッテリー12に蓄えられた電力によって自動車10で利用する熱を全て生成する場合に比べて、バッテリー12の充電量が減りにくくなる。従って、熱利用に伴う自動車10の走行距離の短縮を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、利用側熱供給部材45が利用側空気通路38の一部を形成し、その利用側熱供給部材45に当接させる熱伝達部材53を介して、蓄熱部50からの温熱が利用側熱供給部材45へ伝達される。熱伝達部材53及び利用側熱供給部材45には、シリコンカーバイドのような高熱伝導性の材料を用いている。従って、蓄熱部50に蓄えられた温熱を簡素な構成で有効利用できる。
−実施形態の変形例−
【0045】
変形例の移動体は、図3に示すように、シリーズ式のプラグインハイブリッド自動車、若しくは、レンジエクステンダーを搭載した電気自動車である。なお、自動車10は、パラレル式のハイブリッド自動車や、スプリット式のハイブリッド自動車であってもよい。
【0046】
自動車10は、モータ11とバッテリー12とエンジン13と発電機14a(電力供給源)とを備えている。電気自動車の場合は、エンジン13と発電機14aがレンジエクステンダーを構成する。自動車10は、エンジン13から出力された回転エネルギーを発電機14aで電気エネルギーに変換してバッテリー12に充電する第1充電動作と、自動車10が減速する際の制動エネルギーをモータ11で電気エネルギーに変換してバッテリー12に充電する第2充電動作とを実行可能である。
【0047】
第1充電動作では、エンジン13の運転が行われ、エンジン13から出力された回転エネルギーにより、発電機14aのロータが回転する。発電機14aでは、ロータの回転エネルギーが電気エネルギーに変換される。発電機14aから出力された電力は、インバータ16で直流に変換されて、バッテリー12に供給される。その結果、バッテリー12の充電量が増加する。
【0048】
第2充電動作では、モータ11が、制動エネルギーを電気エネルギーへ変換する発電機として機能する。モータ11から出力された電力は、インバータ16で直流に変換されて、バッテリー12に供給される。その結果、バッテリー12の充電量が増加する。
【0049】
熱伝達部51は、図4に示すように、蓄熱部50から放出された熱が流入する熱流入容器52(凝縮側容器)と、その熱流入容器52内の熱を利用側熱供給部材45へ伝達させる熱伝達部材53とを備えている。熱流入容器52は、開閉弁55が設けられた配管54を通じて、蓄熱材20が収容された断熱容器21の内部空間に連通している。熱伝達部材53は、高熱伝導性の材料(例えば、シリコンカーバイド)を成形した部材により構成されている。
【0050】
利用側熱供給部材45は、図4に示すように、大径円筒46と、該大径円筒46の内側に配置された小径円筒47と、大径円筒46と小径円筒47に連結された固定部材48とを備えている。利用側熱供給部材45は、少なくとも小径円筒47及び固定部材48が、熱伝達部材53と同じ高熱伝導材料(例えば、シリコンカーバイド)により構成されている。利用側熱供給部材45は、利用側空気通路38を流れる空気が小径円筒47の内側を流れるように、利用側ダクト5に嵌め込まれている。小径円筒47の内側は、利用側空気通路38の一部を構成している。小径円筒47の内側は、自動車10の室内空間へ供給される空気が流れる。なお、固定部材48は、熱伝達部51の一部を構成している。
【0051】
熱伝達部材53は、例えば板状に形成されている。熱伝達部材53は、一端側が利用側熱供給部材45の大径円筒46の一端側の外周面に当接し、他端側が熱流入容器52を貫通して熱流入容器52内に露出している。
【0052】
また、空調装置30は、暖房用熱交換器39とエンジン冷却回路40とを備えている。暖房用熱交換器39は、利用側空気通路38に配置されている。エンジン冷却回路40には、冷却水が充填されている。エンジン冷却回路40には、ポンプ41が接続されている。ポンプ41の運転が行われると、エンジン冷却回路40では、暖房用熱交換器39とエンジン13との間で冷却水が循環し、エンジン13で加熱された冷却水が暖房用熱交換器39を加熱する。
【0053】
実施形態の自動車10では、第1充電動作の際に、発電機14aから出力された電力の一部を利用して、蓄熱部50に温熱が蓄えられる。具体的に、発電機14aから出力された電力の一部を利用して、熱生成部49が温熱を生成し、その温熱より化学蓄熱材20を加熱する。この状態では、開閉弁55が開状態に設定されている。化学蓄熱材20は吸熱反応を起こし、作動液が蒸発して熱流入容器52に流入する。蓄熱を終了させる際には、熱生成部49が停止されると共に、開閉弁55が閉状態に設定される。熱流入容器52には、凝縮した作動液が貯留される。
【0054】
また、変形例では、外部の充電設備14b(例えば、家庭の電源、充電スタンド)を電力供給源14とする停止時充電動作が行われる。自動車10を停車した状態で、充電設備14bから延びる電気コードの先端のコネクタを自動車10の接続端子81に接続すると、充電設備14bからの電力が、バッテリー12及び熱生成部49へ供給される。第1充電動作と同様に、熱生成部49が蓄熱部50の化学蓄熱材を加熱することで、蓄熱部50の化学蓄熱材に温熱が蓄熱されてゆく。
【0055】
次に、蓄熱部50に蓄えられた温熱を利用側熱供給部材45へ伝達する利用運転について説明する。利用運転では、熱伝達部51の開閉弁55が開状態に設定される。そうすると、断熱容器に貯留された作動液が、蓄熱部50に流入して化学蓄熱材に接触し、化学蓄熱材が発熱反応を起こす。その結果、化学蓄熱材の発熱に伴い加熱された高温ガスが、配管54を通って、熱流入容器52に流入する。熱流入容器52内には温熱が供給される。その温熱は、熱伝達部材53を介して、利用側熱供給部材45へ供給される。
《その他の実施形態》
【0056】
前記実施形態は、以下のように構成してもよい。
【0057】
前記実施形態において、バッテリー12に充電中に、バッテリー12から出力した電力により、熱生成部49において温熱又は冷熱を生成してもよい。
【0058】
また、前記実施形態において、蓄熱部50は、化学蓄熱材22を交換可能に構成してもよい。その場合、化学蓄熱材22自体を交換できるようにしてもよいし、化学蓄熱材22を収容する容器ごと交換できるようにしてもよい。
【0059】
また、前記実施形態において、蓄熱材は、潜熱蓄熱材であってもよいし、顕熱蓄熱材であってもよい。
【0060】
また、前記実施形態において、自動車10の室内空間の暖房を熱輻射により行ってもよい。室内空間に、熱伝達部材53に当接する輻射パネルを設置する。
【0061】
また、前記実施形態において、熱生成部49が電力を利用して冷熱を生成し、その冷熱を蓄熱部50が蓄えるようにしてもよい。蓄熱部50は、潜熱蓄熱材(例えば、水)に冷熱を蓄熱する。蓄熱部50では、金属表面に薄い氷層を作って冷熱を蓄える。熱生成部49は、例えば、ペルチェ効果を利用して冷熱を生成する冷却装置である。
【0062】
また、前記実施形態において、自動車に備え付けの空調装置30が熱生成部を構成してもよい。電力供給源14(充電設備又は発電機)から出力された電力の一部は、空調装置30の運転(圧縮機34等の電力)に利用され、放熱器35から放出される温熱、又は蒸発器36から放出される冷熱が、蓄熱部50に蓄えられる。なお、蓄熱中は、蓄熱部50に冷熱又は温熱を供給する熱交換器35,36へ空気を送るファン32,33を停止してもよい。
【0063】
また、前記実施形態において、蓄熱部50に蓄えた温熱は、エンジン13の潤滑油の加熱、エンジン13の始動時にエンジン冷却水の加熱、エンジン13の始動時にエンジン13に吸入される吸入空気の加熱、エンジン13に供給される燃料の改質、あるいは、エンジン13から排出された排気ガスを浄化する触媒の加熱に利用してもよい。
【0064】
また、前記実施形態において、移動体10は、自動車以外の乗物(例えば、鉄道車両)であってもよい。
【0065】
また、前記実施形態において、蓄熱部50に蓄えられた温熱を融雪に利用してもよい。その場合、例えば自動車10の天井の内部に融雪用の利用側熱交換器を配置し、化学蓄熱材22に熱源側熱交換器を埋設する。そして、化学蓄熱材22の発熱反応中に、ポンプを利用して、利用側熱交換器と熱源側熱交換器との間で冷媒を循環させる。そうすると、熱源側熱交換器において加熱された液体が利用側熱交換器へ供給され、天井の外表面に積もる雪が融かされる。なお、ノズル等で自動車10の外表面へ化学蓄熱材22により加熱した液体を供給することにより融雪を行ってもよい。
【0066】
また、前記実施形態の変形例において、バッテリー12を充電する際のエンジン13の排熱により蓄熱材20を加熱してもよい。その場合は、エンジン13が熱生成部49を構成する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明は、バッテリーから供給された電力により生成される駆動力によって移動する移動体について有用である。
【符号の説明】
【0068】
10 自動車(移動体)
11 モータ(駆動源)
12 バッテリー
14 充電設備(電力供給源)
45 利用側熱供給部材
49 熱生成部
50 蓄熱部
51 熱伝達部
図1
図2
図3
図4