(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057246
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】スキー靴及びスキー靴用中敷き部材
(51)【国際特許分類】
A43B 5/04 20060101AFI20161226BHJP
A43B 17/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
A43B5/04 Q
A43B17/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-18443(P2012-18443)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-154055(P2013-154055A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡野 晋滋
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102004063876(DE,A1)
【文献】
米国特許第4074446(US,A)
【文献】
特開昭62−127002(JP,A)
【文献】
特開昭55−125801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00−23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側シェルと該外側シェルの内部に装着されたインナーブーツとを備えたスキー靴であって、
前記外側シェルの内部底面と前記インナーブーツとの間に介挿される介挿部材と、当該スキー靴の前後方向に伸長しており、前記介挿部材における前記外側シェルの前記内部底面に対向する面から該内部底面に向かって突出している凸部材とを備え、
前記介挿部材は、前記外側シェルの前記内部底面と前記インナーブーツとの間に介挿された中敷き部材であり、該中敷き部材の底面は、つま先部、土踏まず部、踵部の3つの平面からなり、かつ前記土踏まず部が、前記つま先部及び前記踵部に対して前記外側シェルの内部底面から離れる方向に段差をなしており、
前記凸部材は、前記3つの平面にそれぞれ設けられ、前記スキー靴の前後方向に断続的に伸長する3つの畝状部であることを特徴とするスキー靴。
【請求項2】
前記凸部材の前記対向する面から突出する高さが、0.5〜2.0mmであることを特徴とする請求項1に記載のスキー靴。
【請求項3】
前記凸部材は、楔形の軸断面を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のスキー靴。
【請求項4】
前記凸部材は、略半円形の軸断面を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のスキー靴。
【請求項5】
前記凸部材は、前記対向する面から脱着可能に構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスキー靴。
【請求項6】
外側シェルと該外側シェルの内部に装着されたインナーブーツとを備えたスキー靴に用いられる中敷き部材であって、
前記外側シェルの内部底面と前記インナーブーツとの間に介挿され、当該スキー靴の前後方向に伸長しており、前記外側シェルの前記内部底面に対向する面から該内部底面に向かって突出している凸部材を備え、
前記中敷き部材の底面は、つま先部、土踏まず部、踵部の3つの平面からなり、かつ前記土踏まず部が、前記つま先部及び前記踵部に対して前記外側シェルの内部底面から離れる方向に段差をなしており、
前記凸部材は、前記3つの平面にそれぞれ設けられ、前記スキー靴の前後方向に断続的に伸長する3つの畝状部であることを特徴とするスキー靴用中敷き部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキー競技等に用いられるスキー靴及びこのスキー靴に用いられる中敷き部材に関する。
【背景技術】
【0002】
アルペンスキー競技やスラローム競技等のスキー競技のスキーヤが着用するスキー靴は、多くの場合、スキー板に固定される外側シェルと、その内部に挿入され、足の形態にフィットする柔軟なインナーブーツとを備える。外側シェルとインナーブーツとの間には、フットベッド等と呼ばれる中敷き部材が介挿されている。中敷き部材は、スキーヤの体重を受け、外側シェルを介してスキーに体重をかける働きを持つ。中敷き部材はその形状により、つま先側又は踵側に体重をかけやすくしてスキーの操作を容易にすることができる。
【0003】
特許文献1には、フットベッドの一部材を選択可能としたスキーブーツのアウターソール用フットベッドが開示されている。このフットベッドは、好みの厚さ及び硬さを自由に選択できるフットベッドを提供しようとするものである。
【0004】
特許文献2には、外側シェル内に敷かれた底敷きが、使用者の足裏に対応した一定の形状に成形加工された硬質部材からなるスキーブーツが開示されている。このスキーブーツは、常に足が靴になじみ履き心地が向上するとともにスキー板からの反力や斜面の感触が足に伝わり、使用感や操作性が向上したスキーブーツを提供しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−253302号公報
【特許文献2】実用新案登録第2602578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したごとき従来の技術によると、特許文献1に記載のフットベッドは好みの厚さ及び硬さを自由に選択できることで使用感を良好とし、特許文献2に記載のスキーブーツは形状が足裏に対応することで使用感や操作性を良好とするもので、いずれもスキー競技等で直接的に記録を増大させることは目的としていない。
【0007】
ところで、スキー競技では、ターンの回転半径を小さくすることで滑降タイムを短縮することができる。回転半径を小さくするためには、スキーヤがターンの際に体を大きく傾かせる、すなわち体軸の内傾角度(滑走面との垂直方向に対する体軸の傾く角度)を大きくすることが有効である。
【0008】
ここで、内傾角度は、スキー板上での足部、下腿部と足関節と踝の挙動に依存することから、本発明者らはスキーと靴の相互の回転角度によって、スキーヤがこの内傾角度を大きくすることを容易にできることに着目した。そこで、スキー靴の構造によって内傾角度を大きくする、すなわち滑降タイムを短縮することができるスキー靴の構造を得ることができると予測し、足部運動についてさらに解析した。
【0009】
例えば、スキー靴の外側シェルの横幅の寸法をスキーヤの脚部に比して大きくすると、スキーヤの脚部が外側シェル内で大きく傾斜することが可能であるため、容易に内傾角度を大きくすることが可能である。しかしながら、ブーツの寸法を大きくするとスキー靴のバランス保持性能が低下してしまい、外側シェルが脚部にフィットすることによる操作性も失われる。その結果、操作性や安全性というスキー靴本来の目的が失われてしまう。そこで本発明者らは、バランス保持性能を維持したまま内傾角を向上することができるスキー靴の構造について、さらに試行錯誤を重ねた。
【0010】
本発明はこのような背景に基づきなされたものであり、その目的は、スキー靴の有するバランス保持性能を有しつつ、内傾角を大きくし滑降タイムを短縮することができるスキー靴及びそのスキー靴に用いるスキー靴中敷き部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、外側シェルとその外側シェルの内部に装着されたインナーブーツとを備えたスキー靴であって、外側シェルの内部底面とインナーブーツとの間に介挿される介挿部材と、このスキー靴の前後方向に伸長しており、介挿部材における外側シェルの内部底面に対向する面から内部底面に向かって突出している凸部材とを備えている。
【0012】
外側シェルの内側底面とインナーブーツの間に、凸部材がインナーブーツの前後方向に沿って備えられているので、外側シェル内において、インナーブーツを凸部材を基点としてインナーブーツの幅方向に傾けることができる。スキー板に対して固着された外側シェルに対してインナーブーツが幅方向に傾斜することができるので、スキー板に対してスキーヤの脚部が傾斜することができる。そのため、滑走面に対してスキーヤの傾斜する内傾角を大きくすることができる。従って、スキー靴のバランス保持性能を有しつつ、内傾角を大きくし滑降タイムを短縮することができるスキー靴となる。
【0013】
介挿部材は、外側シェルの内部底面とインナーブーツとの間に介挿された中敷き部材であることが好ましい。スキー靴底部中敷き部材は底面に設けられた凸部によって外側シェルの内部底面に対して傾斜が可能で、スキー靴底部中敷き部材の上にインナーブーツが載置されるので、外側シェルに対してインナーブーツが幅方向に傾斜することができる。
【0014】
凸部材は、スキー靴の前後方向に断続的に伸長する複数の畝状部であることが好ましい。畝状部は外側シェルの内部底面に対して傾斜するための軸として作用し、外側シェルに対してインナーブーツが幅方向に傾斜することができる。畝状部が複数なので、中敷き部材の底部に段差がある場合に段差に応じて凸部材を設置できる。
【0015】
凸部材は、スキー靴の前後方向に連続的に伸長する単一の畝状部であることが好ましい。中敷き部材の底部に段差がない場合や凹凸が少ない場合に、長い寸法の連続した凸部材を設置でき、凸部材に重量が大きい寸法に分散され磨耗、破損しにくい。
【0016】
凸部材は楔形の軸断面を有していることが好ましい。内傾角が大きくなる速度、すなわち内傾角速度が大きくなり、滑降タイムを短縮することができるスキー靴となる。
【0017】
凸部材は略半円形の軸断面を有していることも好ましい。半円形とすることによって、凸部材は外側シェルとの接線が幅方向に移動することができるため、ターン動作の切り替え期に外足から内足への移行がスムーズになり、とくに高速系種目に有効となる。
【0018】
凸部材の対向する面から突出する高さが、0.5〜5.0mmであることが好ましい。内傾角速度をある程度の範囲に確保することができ、滑降タイムを短縮することができるスキー靴となる。
【0019】
凸部材は対向する面から脱着可能に構成されていることが好ましい。凸部を交換することにより、競技種目に応じて上述の突出する高さや形状を交換し、内傾角速度を調整できる。凸部材の素材や構造を変更することにより、耐久性や弾力性を変更することができる。さらに、メンテナンスも可能となる。
【0020】
本発明のスキー靴底部中敷き部材は、外側シェルとその外側シェルの内部に装着されたインナーブーツとを備えたスキー靴に用いられる中敷き部材であって、外側シェルの内部底面とインナーブーツとの間に介挿され、このスキー靴の前後方向に伸長しており、外側シェルの内部底面に対向する面から内部底面に向かって突出している凸部材を備えている。既存のスキー靴に適用し、外側シェルとインナーブーツの間に介挿することにより、既存のスキー靴について滑降タイムを短縮することができるスキー靴とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、外側シェルの内側底面とインナーブーツの間に、凸部材がインナーブーツの前後方向に沿って備えられているので、外側シェル内において、インナーブーツを凸部材を基点としてインナーブーツの幅方向に傾けることができる。スキー板に対して固着された外側シェルに対してインナーブーツが幅方向に傾斜することができるので、スキー板に対してスキーヤの脚部が傾斜することができる。そのため、滑走面に対してスキーヤの傾斜する内傾角を大きくすることができる。従って、スキー靴のバランス保持性能を有しつつ、内傾角を大きくし滑降タイムを短縮することができるスキー靴となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るスキー靴を示す概略図である。
【
図2】
図1のスキー靴のスキー靴底部中敷き部材を示す(A)正面図、(B)平面図、(C)底面図、及び(D)左側面図である。
【
図3】
図1のスキー靴の作用を示す左側面一部断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るスキー靴のスキー靴底部中敷き部材を示す左側面図である。
【
図5】踝の幅、内傾角速度及び足部5の傾きの角度dの関係を示すグラフである。
【
図6】凸部材の高さと内傾角速度の関係を示すグラフである。
【
図7】足関節へのトルクの有無による凸部材の高さと内傾角速度の関係を示すグラフである。
【
図8】屋外滑降実験の滑降タイムを示すグラフである。
【
図9】凸部材の形状による滑降タイムを示すグラフである。
【
図10】凸部材の形状による内傾角速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るスキー靴1は、
図1に示すように、外側シェル2とその内部に装着されたインナーブーツ3を備え、外側シェル2とインナーブーツ3間に介挿された介挿部材10を備えて概略構成される。介挿部材10は、凸部材4を備えてなる。
【0024】
外側シェル2はスキー板に対して固着することを目的とし、硬質の構成素材からなる。外側シェル2は図に示した例では上下部をそれぞれロワシェル及びアッパーシェルに分割されているが、この他にリアシェルやフレックスタン等のシェルを有していてもよい。
【0025】
インナーブーツ3は使用者(スキーヤ)の足が入るものであり、外側シェル2及びスキーヤの足部5(
図3)の形にフィットした形状と構造を有する。インナーブーツ3は軟質である程度弾力性を有する素材で構成されている。この素材の軟質と弾力性は後述する介挿部材10の作用に関連するほか、外側シェル2及びスキーヤの足部5にフィットし、足部5に対する衝撃を吸収し、また足部5を固定しすぎず履き心地と安全性を高める作用を有する。
【0026】
介挿部材10は、インナーブーツ3の底面と外側シェル2との間に挿入される。
図2(A)(B)に示した例では、介挿部材10は、スキー靴用にいわゆるフットベッドとして用いられている一般的な形状と構造の中敷き部材を選択している。介挿部材10は、中敷き部材本体10aと凸部材4aからなる。
【0027】
中敷き部材本体10aの構成素材は、スチレン、アクリル、ステンレススチール、チタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、EPM等のゴム等又はこれらを複合した素材などを用いることができ、必要とされる強度及び弾力性にあわせ適宜選択される。図に示した例では、スチレン系の樹脂を主な構成素材とする。
【0028】
凸部材4の構成素材は、中敷き部材本体10aと同じ部材又は必要とされる強度及び弾力性にあわせ適宜選択される。
【0029】
凸部材4は、介挿部材10における外側シェル2の内部底面に対向する面、すなわちこの実施形態では中敷き部材本体10aの底面に設けられている。底面に設けられることにより、凸部材4は、外側シェル2の内部底面に向かって突出するようになっている。凸部材4は、中敷き部材本体10aの底面に畝状に設けられている。畝状とは、平面から一定の軸断面を有して突出しながら伸張する形状で、軸断面には楔型、半円形、台形その他の形状がある。図に示した例では、中敷き部材本体10aはつま先部、土踏まず部、踵部の3つの平面からなり段差をなしているが、それぞれの平面に合計3つの畝として設けられている。なお、この形態に限らず、これらの複数が繋がった畝でもよい。畝以外に、長辺方向にもっと短いもの、例えば半球状や短い台形状などのものが1または2以上設けられていてもよい。凸部材4は、中敷き部材本体10aの底面の前後方向に沿って伸張し、幅方向においてはこの底面の略中心線となるように設けられていることが望ましい。
【0030】
凸部材4は、楔形の縦断面を有している。楔形とは、凸部材4の底面の幅が最も広く突出端に向かうに従って狭くなる、三角形や台形などの形状である。図に示した例ではほぼ三角形が選択されている。
【0031】
凸部材4は、凸部材4が外側シェル2に対向する面、図に示した例では介挿部材10の底面10bから、インナーブーツ3の底面に向かって突出する高さhが0.5〜5.0mmであることが望ましい。この値が小さすぎると凸部材4による内傾角を大きくする効果が得られず、値が大きすぎるとインナーブーツ3が外側シェル2内で不安定となり、操作しにくくなる。さらに、最も内傾角速度を大きくすることを考えると1.0〜3.0mmが最も望ましい。
【0032】
次に、このスキー靴1の作用について説明する。スキーヤがスキー靴1を履いている状態では、
図3(A)に示すように、外側シェル2の底部に介挿部材10が敷かれ、その介挿部材10を介して外側シェル2内にインナーブーツ3が収納され、そのインナーブーツ3にはスキーヤの足部5が収納される。スキーヤがスキーをターンさせていない状態では、スキー靴1においてスキーヤの足部5の軸6は外側シェル2に対して傾かず、略垂直になっている。
【0033】
スキーヤがスキーをターンさせようとして、足部5を側方向に傾かせようとしている状態では、
図3(B)に示すように、介挿部材10は、凸部材4を介して載置されているので、凸部材4を支点として外側シェル2の底部に対して傾斜することが可能である。インナーブーツ3は軟質で弾力性を有するので、足部5の外側シェル2内での傾きに応じて変形し、従って介挿部材10、インナーブーツ3及び足部5は外側シェル2内で側方向に傾くことができる。このときの足部5の軸6Aの外側シェル2に対する傾きの角度dが、スキーヤの雪面に対する内傾角度に加わることで内傾角度を大きくすることができる。
【0034】
(第2の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る介挿部材11は、
図4に示すように幅方向での断面形状が半円形状である凸部材41を備える。その他の構成については第1の実施形態と同様である。
【0035】
この実施形態では、凸部材41は外側シェル2の底面に対して滑るなどで、この底面の幅方向に移動することが容易となっている。凸部材41と外側シェル2との接線が幅方向に移動することができるため、ターン動作の切り替え期に外足から内足への移行がスムーズになり、とくに高速系種目に有効となる。
【0036】
(その他の実施形態)
他の実施形態として、インナーブーツ底面からフットベッド底面に対して凸部材を配置する場合やフットベッド底面、あるいはインナーブーツ底面に一体成型する形態もある。さらに、フットベッド底面、またはインナーブーツ底面、あるいは両方そのものが三角形や半円形の断面形状を有するといった構成を選択することができる。これらの場合も、第1又は第2の実施形態と同様の作用及び効果が期待される。
【実施例】
【0037】
(内傾角速度と足部角度の関係)
3次元剛体シミュレーションツールODE(Open Dynamics Engine)を用いて、胴体0.494L,大腿部0.23L,下腿部0.276Lの長さに設定したスキーヤについて簡略化モデルを構築し、足部のうち最も幅が広い踝の幅、内傾角速度及び足部5の傾きの角度d(足部角度)の関係を解析した。結果を
図5に示す。踝幅が大きくなると、回転角速度は足部5の傾きの角度dと共に減少しており、回転角速度は角度dによって決定されることが考えられる。
【0038】
(凸部材のパーツ高さによる内傾角速度への影響)
凸部材4の高さhによる内傾角速度への影響を検討するために、
図1及び2に示した第1の実施形態の介挿部材10を備えたスキー靴1を用いて、高さhを0〜5mmの間で1mm刻みに設計し、前述のODEツールによるシミュレーションを行った。結果を
図6に示す。
【0039】
図6の結果より、内傾角速度は高さhが0.5mmあれば最大値(rad/s=0.795)の95%以上となり、5.0mmでもそれ以上が確保されることがわかる。内傾角速度は高さhが2mmで最大値となり3mm以上から減少し、この範囲が最適であることがわかる。
【0040】
また、足関節にトルクを与えた、すなわちスラローム競技などで素早いエッジの切り替えが要求される場面で、スキーヤが切り替えに必要な関節トルクを能動的に発揮する場合をシミュレートした結果を
図7に示す。
【0041】
図7の結果より、足関節にトルクを与えていない場合は内傾角速度は高さhが1.5mmで最大値となり、与えた場合は2mmで最大となっている。この結果から、トルクの有無すなわち足関節の運動によって高さhの最大値は変化することがわかる。そのため、個々のスキーヤや競技の条件によって、パーツ高さhを調整することで滑降タイムの短縮が得られる。よって、介挿部材10は、凸部材4を例えば高さhを0.5〜1.0mm刻みに数種類準備し、交換可能な構造とすることが特に有効である。
【0042】
(滑降実験)
図1及び2に示したスキー靴1(パーツ有り)と、凸部材4を備えない他は同様に構成したスキー靴(パーツ無し)について、被験者A〜Eの5人について屋外滑降実験を行った。滑降タイムの結果を表1、グラフ化したものを
図8に示す。最大内傾角速度を測定したものを表2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
これらの結果から、凸部材4を備えるスキー靴1は内傾角速度が向上し、滑降タイムが短縮されていることが示された。
【0046】
(凸部材の断面形状による効果の検証)
図2のスキー靴1で凸部材4の幅方向の断面形状を
図2に示すような楔型(パーツ形状:三角形)及び
図4に示すような半円形(パーツ形状:半円)にした他は同様に構成したスキー靴について滑走実験を行い、滑降タイムの結果をグラフ化したものを
図9に示す。最大内傾角速度の結果をグラフ化したものを
図10に示す。
【0047】
パーツの断面形状において、楔型の断面形状にしたものは半円形状よりも滑降タイムが短縮され、内傾角速度が向上している。実際の競技においては、ターン時に大きな内傾角速度が重要とされるスラローム競技では特に、断面形状を楔型にすることが有効と考えられる。一方で、半円形の場合、外側シェル2の底部との接線が幅方向に移動するため、ターン動作の切り替え期に外足から内足への移行がスムーズになるため、とくにスーパー大回転やダウンヒル競技などの高速系種目に有効となる。
【0048】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明はスキー競技のスポーツレコードの改善に直接的に使用できることから、ノルディックスポーツに関連した産業に対して広く寄与するものである。
【符号の説明】
【0050】
1 スキー靴
2 外側シェル
3 インナーブーツ
4 凸部材
5 足部
6、6A 軸
10、11 介挿部材
10a 中敷き部材本体
10b 底面
d 回転角度
h 高さ