(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電解イオン水は、清掃業界や飲食業界、産廃業界といった各種業界で利用されている。利用される業界によって要求される電解イオン水のpH値が異なるため、pH値の異なる電解イオン水を生成できる方法や装置が望まれている。特許文献2によれば、電解イオン水生成時の陰極水や陽極水の循環時間或いは直流電流の総量を可変制御することによって、強アルカリ性水の生成が可能である。
【0006】
本発明の解決課題は、同じ電解イオン水生成装置(一つの電解イオン水生成装置)を使用して、pH値の高い(アルカリ濃度の濃い)電解イオン水を生成する方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[電解イオン水生成方法の原理]
本発明の電解イオン水生成方法は基準となるpH値(以下「基準pH値」という。)の電解イオン水生成装置を使用して、基準pH値よりもpH値の高い電解イオン水を生成する方法であり、原水の貯留量或いは供給量を減少させ、それ以外のイオン水生成条件、例えば、陰極水や陽極水の循環時間或いは直流電流等を、基準pH値のイオン水を生成する場合の条件と変えることなく(ほとんど変えることなく、を含む:以下、発明の詳細な説明、請求の範囲において同じ)、pH値の高い電解イオン水を生成できるようにした方法である。
【0008】
[電解イオン水生成方法1]
本発明の電解イオン水生成方法の一つは、原水タンクに原水を貯留して基準pH値(本発明ではpH12.5を基準pH値という。)の電解イオン水を生成することのできる貯留式電解イオン水生成装置を使用して、基準pH値よりもpH値の高い電解イオン水を生成する方法であり、貯留式電解イオン水生成装置の原水タンクに、基準pH値の電解イオン水を生成する場合よりも少ない量の原水を貯留し、原水量以外の他の生成条件を前記貯留式電解イオン水生成装置で基準pH値の電解イオン水を生成するときと同じ生成条件に設定し、原水タンク内に貯留された原水を電解槽の陽イオン交換膜で仕切られた陰極室に送って当該陰極室から前記原水タンクに戻して循環させ、電解イオン水生成装置の電解液タンクに貯留された電解液を前記電解槽の陽極室に循環させ、電解槽の陰極室の陰極板と陽極室の陽極板に電圧を印加して前記電解液を電気分解し、電気分解によって生じた陽イオンを、陰極室を循環する前記原水と還元させることにより当該原水を電解イオン水にし、原水タンク内の原水が所定pH値になるまで前記原水の循環、電解液の循環を繰り返して、原水タンク内に貯留された原水を所定pH値の電解イオン水に生成する、ことを特徴とする貯留式電解イオン水生成方法である。
【0009】
[電解イオン水生成方法2]
本発明の電解イオン水生成方法の他の一つは、原水タンクに原水を供給しながら基準pH値の電解イオン水を生成し、生成された電解イオン水を原水タンクから排出しながら電解イオン水を連続生成する流動式電解イオン水生成装置を使用して、基準pH値よりもpH値の高い電解イオン水を生成する方法であり、前記流動式電解イオン水生成装置の原水タンクに基準pH値の電解イオン水を生成する場合よりも少ない量の原水を供給し、原水量以外の他の生成条件を前記流動式電解イオン水生成装置で基準pH値の電解イオン水を生成するときと同じ生成条件に設定し、原水タンクに供給される原水を電解槽の陽イオン交換膜で仕切られた陰極室に送って当該陰極室から前記原水タンクに戻して循環させ、電解イオン水生成装置の電解液タンクに貯留された電解液を陽イオン交換膜で仕切られた陽極室に循環させ、電解槽の陰極室の陰極板と陽極室の陽極板に電圧を印加して前記電解液を電気分解し、電気分解によって生じた陽イオンを、陰極室を循環する前記原水と還元させることにより当該原水を電解イオン水にし、所定pH値になった原水タンク内の電解イオン水を、前記原水タンクへの原水供給量分ずつ当該原水タンクから排出しながら所定pH値の電解イオン水を生成する、ことを特徴とする流動式電解イオン水生成方法である。
【0010】
本発明の電解イオン水生成方法では、前記貯留式であっても流動式であっても、基準pH値の電解イオン水を生成する場合の原水の貯留量又は供給量(以下「基準原水量」という。)と、基準pH値よりもpH値の高い強アルカリイオン水を生成する場合に必要な原水の貯留量又は供給量(以下「少量原水量」という。)との関係は次の式に基づいて求めることができる。この式は、pHからアルカリ濃度を求める式であり、この式により求めた[OH
−](mol/L)、KOH濃度(%)、アルカリ濃度比、原水タンクへの原水貯留量又は供給量の各数値は表1のようになる。
【0011】
(式)
pH=14+log[OH
−]
【0012】
基準pH12.5のとき、式より、
12.5=14+log[OH
−]
[OH
−]=10
12.5−14
=0.0316mol/L
KOH分子量 56.1g/molであることから、
KOH濃度=0.0316mol/L × 56.1g/mol
=1.772g/L
=0.1772%
となる。
【0013】
同様にして、pH13.0、pH13.1のときについても求めた。
pH13.0のとき、式より、
13.0=14+log[OH
−]
[OH
−]=10
13.0−14
=0.1000mol/L
KOH分子量 56.1g/molであることから、
KOH濃度=0.1000mol/L×56.1g/mol
=5.610g/L
=0.5610%
となる。
【0014】
pH13.1のとき、式より、
13.1=14+log[OH
−]
[OH
−]=10
13.1−14
=0.1259mol/L
KOH分子量 56.1g/molであることから、
KOH濃度=0.1259mol/L×56.1g/mol
=7.063g/L
=0.7063%
となる。
【0015】
pH12.5のときのアルカリ濃度比を1としたとき、pH13.0のときのアルカリ濃度比は、pH13.0のときの[OH
−]=0.1000mol/LとpH12.5のときの[OH
−]=0.0316mol/Lより、0.1000/0.0316=3.1645≒3.16となる(表1)。
【0016】
前記と同様に、pH13.1のときのアルカリ濃度比は、pH13.1のときの[OH
−]=0.1259mol/LとpH12.5のときの[OH
−]=0.0316mol/Lより、0.1259/0.0316=3.9841≒3.98となる(表1)。
【0017】
pH12.5のとき、アルカリ濃度比を1、原水タンク1に貯留又は供給される原水量を20Lとしたとき、pH13.0のときはアルカリ濃度比が3.16であることから、原水タンク1に貯留又は供給される原水量は20/3.16=6.3291≒6.3Lとなる(表1)。
【0018】
前記と同様に、pH13.1のときはアルカリ濃度比が3.98であることから、原水タンク1に貯留又は供給される原水量は20/3.98=5.0251≒5.0Lとなる(表1)。
【0019】
【表1】
【0020】
表1のとおり、基準pH値12.5の電解イオン水を生成するときの基準原水量が20リットル(L)の場合、pH値13.0の電解イオン水を生成するときの少量原水量は6.3L、pH値13.1の電解イオン水を生成するときの少量原水量は5Lにするとよいことがわかる。
【0021】
[電解イオン水生成装置1]
本発明の電解イオン水生成装置の一つは、原水タンクに原水を貯留し、貯留した原水を電解槽に供給して原水タンクに戻して循環させ、その循環中に基準pH値の電解イオン水を生成することのできる貯留式電解イオン水生成装置であり、原水を貯留する原水タンクと、電解液を貯留する電解液タンクと、陽イオン交換膜で仕切られた陰極室と陽極室を備えた電解槽と、前記陰極室に設けられた陰極板と陽極室に設けられた陽極板と、前記陰極板及び陽極板に電圧を印加する電源と、原水タンクに貯留された原水を前記陰極室に送って原水タンクに戻す原水循環ポンプと、電解液タンクに貯留された電解液を陽極室に送って電解液タンクに戻す電解液循環ポンプと、前記原水タンクに貯留する原水量を制御可能な原水量制御手段を備え、前記原水量制御手段は原水タンク内の原水量を検知できるものであり、原水タンク内の原水貯留量が基準pH値の電解イオン水を生成するのに必要な量に対して次式で求められる量を検知することができ、
式 pH=14+log[OH
−]
前記原水量制御手段は、原水タンク内に前記式に基づいて算出された原水量が貯留されたことを検知して、原水タンクへの原水供給を自動停止できる、電解イオン水生成装置である。
【0022】
前記原水量制御手段がフロートスイッチであり、フロートスイッチは原水タンク内の少なくとも下段と上段の二以上の箇所に設けられ、上段のフロートスイッチは基準pH値の電解イオン水を生成する場合の水位に設定され、下段のフロートスイッチは生成所望pH値の電解イオン水を生成する場合の水位に設定され、基準pH値の電解イオン水を生成する場合は、下段のフロートスイッチは原水が到達しても作動しない不作動に設定し、上段のフロートスイッチだけが作動するように設定して、原水タンクに貯留される原水が上段のフロートスイッチまで到達すると、原水タンクへの原水の供給が自動的に停止し、生成所望pH値の電解イオン水を生成する場合は、下段のフロートスイッチは原水が到達すると作動するように設定して、原水タンクに貯留される原水量が下段のフロートスイッチに到達すると原水タンクへの供給が自動的に停止するようにした、電解イオン水生成装置である。
【0023】
[電解イオン水生成装置2]
本発明の電解イオン水生成装置の他の一つは、原水タンクに原水を供給しながら基準pH値の電解イオン水を生成することのできる流動式電解イオン水生成装置であり、原水を供給する原水タンクと、電解液を貯留する電解液タンクと、陽イオン交換膜で仕切られた陰極室と陽極室を備えた電解槽と、前記陰極室に設けられた陰極板と陽極室に設けられた陽極板と、前記陰極板及び陽極板に電圧を印加する電源と、原水タンクに供給される原水を前記陰極室に送って原水タンクに戻す原水循環ポンプと、電解液タンク内の電解液を陽極室に送って電解液タンクに戻す電解液循環ポンプと、電解イオン水生成中に原水タンクから電解イオン水を排出させる出口と、前記原水タンクに供給する原水量を制御可能な原水量制御手段を備え、原水量制御手段は原水供給路であり、原水供給路は基準pH値の電解イオン水を生成する場合に原水タンクに供給する時間当たりの供給量に対して、前記式に基づいて求められる供給量(時間当たり)に設定されており、前記式で求められる量の原水を原水タンクに供給しながら、且つ、生成される電解イオン水を原水タンクから排出しながら、電解イオン水を生成できるようにした、電解イオン水生成装置である。
【0024】
前記電解イオン水生成装置では、原水供給路を二以上備え、そのうち少なくとも一本の原水供給路は、単位時間当たりの原水供給量が基準pH値の電解イオン水を生成する場合に必要な供給量であり、他の原水供給路の供給量は、単位時間当たりの原水供給量が基準pH値の電解イオン水を生成する場合に必要な供給量に対して前記式で求められる量に設定した電解イオン水生成装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電解イオン水生成方法は次の効果を有する。
(1)同じ電解イオン水生成装置を使用して、原水タンクに貯留又は供給する原水量を基準pH値の電解イオン水生成時よりも少なくし、他の生成条件は変えることなく、pH値の高い電解イオン水(強電解イオン水)を生成することができるため、生成するpH値に合わせて生成条件の異なる電解イオン水生成装置を各種用意する必要がなく、導入コストが低減でき、設置スペースを広く用意する必要もなく、ランニングコストも低減できる。
(2)強電解イオン水を生成して、それを希釈することで、基準pH値以下のpH値の弱電解イオン水を大量に生成することができるため、弱電解イオン水の生産性が向上する。
【0026】
本発明の電解イオン水生成装置は次の効果を有する。
原水量制御手段を備えているので、原水タンクに供給される原水量を、原水量制御手段で制御するだけで、一つの電解イオン水生成装置で基準pH値の電解イオン水と、それよりもpH値の高い電解イオン水を生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(貯留式の電解イオン水生成方法の実施形態)
本発明の貯留式の電解イオン水生成方法の一例を、
図1の電解イオン水生成装置を使用して生成する場合を一例として説明する。
【0029】
図1の電解イオン水生成装置は貯留式であり、電解イオン水生成タンク(原水タンク:pH調整タンク)1とその外側に同心円状に配置された、電解液が貯留される電解液タンク2と、電解槽6と、直流電源Eと、原水量制御手段7を備えている。電解槽6は陽イオン交換膜5で陰極室3と陽極室4に仕切られている。
【0030】
図1では、原水タンク1‐陰極室3の入口3a‐陰極室3の出口3b‐原水タンク1の原水循環経路が形成されて、原水タンク1内の貯留原水が原水循環ポンプP1により前記原水循環経路を循環できるようにしてある。また、電解液タンク2‐前記陽極室4の入口4a‐陽極室の出口4b‐電解液タンク2の電解液循環経路が形成されて、電解液循環ポンプP2により前記電解液循環経路を循環できるようにしてある。
【0031】
原水量制御手段7は、原水タンク1内の原水貯留量が基準pH値の電解イオン水を生成する場合に必要な貯留量(基準原水量)に対して前記式で求められる量(少量原水量)を検知することができ、当該量が検知されると原水タンクへの原水供給が自動停止するようにするものである。
図1では、原水量制御手段7として原水タンク1内に、上段のフロートスイッチF2と下段のフロートスイッチF1を設け、上段のフロートスイッチF2は基準pH値の電解イオン水を生成する場合の水位に設定し、下段のフロートスイッチF1は生成所望pH値の電解イオン水を生成する場合の水位に設定してある。原水量制御手段7としてのスイッチはフロートスイッチ以外のもの、例えば、流量計とか他のものであってもよく、それらを原水供給路12や原水タンク1に設けることもできる。
【0032】
図1では、基準pH値の電解イオン水を生成する場合は下段のフロートスイッチF1を貯留原水が到達しても作動しない(不動作)ように設定しておき、上段のフロートスイッチF2だけを作動に設定することにより、原水タンクに貯留される原水が上段のフロートスイッチF2に到達する(基準pH値の電解イオン水の生成に必要な量になる)と原水タンク1への原水の供給が自動的に停止し、生成所望pH値の電解イオン水を生成する場合は下段のフロートスイッチF1を作動に設定することにより、原水タンク1に貯留される原水量が下段のフロートスイッチF1に到達する(生成所望pH値の電解イオン水の生成に必要な量になる)と、原水タンク1への供給が自動的に停止するようにしてある。
【0033】
強アルカリイオン水を生成する場合は、原水タンク1に貯留する原水量を、当該電解イオン水生成装置で基準pH値の電解イオン水を生成する場合の原水量よりも少なくする。この場合の原水量は前記式により算出する。一例として、基準pH12.5の電解イオン水の生成に必要な原水量(原水タンク1に貯留されて電解槽6の陰極室3を循環する原水量)を20Lとした場合、pH13.1の電解イオン水を生成する場合は、原水量を20Lよりも少ない5Lにする。この場合、原水量以外の電解イオン水生成条件、例えば、原水の循環速度、電解液の循環速度、電源電圧(電流)、電解液濃度、原水及び電解水の循環繰り返し時間等々は、
図1の電解イオン水生成装置で基準pH値の電解イオン水を生成する場合と同じにする。
【0034】
前記条件の下で、直流電源Eから前記陰極室3の陰極板と陽極室4の陽極板に電圧を印加し、原水を原水循環ポンプP1により、原水タンク1‐陰極室3の入口3a‐陰極室3の出口3b‐原水タンク1と循環(1生成サイクル)させ、電解液タンク2内の電解液を電解液循環ポンプP2により、電解液タンク2‐陽極室4の入口4a‐陽極室4の出口4b‐電解液タンク2と繰り返し循環させる。このとき、電解液タンク2内の電解液が電気分解され、電気分解により陽極室4に生成される陽イオンが陽イオン交換膜5を介して陰極室3内の原水に還元されて原水が電解イオン水になる(生成される)。この場合、原水の循環時間、電解液の循環時間等を予め設定しておき、設定された時間中、前記生成を繰り返して電解イオン水を生成する。生成された電解イオン水は原水タンクに貯留してpH値を高める(調整する)。
【0035】
前記数値例はあくまでも一例であり、実用化に際しては、基準pHの電解イオン水の生成に必要な原水量(基準原水量)に対して、前記式により算出される原水量にする。その一例は前記表1のとおりである。
【0036】
(流動式の電解イオン水生成方法の実施形態1)
図2の電解イオン水生成装置は流動式であり、基本的構成は
図1の電解イオン水生成装置と同じであり、異なるのは、原水タンク1と電解液タンク2を別々に設けたこと、原水タンク1に貯留する原水量制御手段7として二つの原水供給路8、9を設けたことである。夫々の原水供給路8、9の時間当たりの供給量は異なる量に設定してある。一例として、原水供給路8は時間当たり5L/h(pH13.1)の原水を供給でき、原水供給路9は時間当たり20L/h(pH12.5:基準pH値)の原水を供給できるようにしてある。夫々の原水供給路8、9には電磁バルブ10、11を設けて自動的に開閉されるようにしてある。
【0037】
図2の電解イオン水生成装置を使用してpH12.5の電解イオン水を生成する場合は、原水供給路9から20L/hの原水を原水タンク1に供給し続けるが、pH13.1の電解イオン水を生成する場合は原水供給路8から5L/hの原水を原水タンク1に供給し続ける。この場合、電解イオン水生成の他の条件は当該電解イオン水生成装置で基準pH値の電解イオン水を生成する場合と同じ条件にする。
【0038】
前記条件下において、原水供給路8から原水タンク1に原水が供給されると、ポンプP1、P2が運転を開始して、原水タンク1内の原水が、原水タンク1‐陰極室3の入口3a‐陰極室3の出口3b‐原水タンク1と循環(1生成サイクル)し、電解液タンク2内の電解液が、電解液循環ポンプP2により電解液タンク2‐陽極室4の入口4a‐陽極室4の出口4b‐電解液タンク2と循環(1生成サイクル)して電解イオン水が生成される。この場合も原水の循環時間、電解液の循環時間等を予め設定しておき、設定された時間中、前記循環が行われてpH13.1の電解イオン水が生成されて原水タンク1に戻されるようにする。この間、原水が原水供給路8から供給され続けて、原水が原水タンク1内の出口1aまで到達する(5Lになる)とタンク内の電解イオン水はその出口1aから外部に排出されながら、電解イオン水が連続的に(流動式で)生成される。
【0039】
基準pH値12.5の電解イオン水を生成する場合は、原水供給量と電解イオン水の生成量は同じ(20L)であるから、生成された電解イオン水は前記生成サイクルが1循環(1生成サイクル)すると原水タンク1の出口1aから排出されるが、pH値13.1の電解イオン水を生成する場合は、供給量(5L)は生成量(20L)の1/4であるから、生成サイクルが4循環(4生成サイクル)してはじめてpH値13.1の電解イオン水が20L生成され、その後に原水タンク1の出口1aから排出される。その後は、原水が原水供給路8から供給され続け、原水タンク1内の電解イオン水が前記出口1aから外部に排出されながら電解イオン水が連続的に(流動式で)生成される。
【0040】
図2の電解イオン水生成装置では、必要な場合は、原水タンク1に供給される原水(
図2では軟水)を電解液タンク2にも供給(補充)することができる。
【0041】
(流動式の電解イオン水生成方法の実施形態2)
図3の電解イオン水生成装置も原理は
図2の場合と同じであり、異なるのは電解液タンク2を電解槽6の陽極室4に直結して、電解液が常に陽極室4に接するようにしたことである。
【0042】
図3の電解イオン水生成装置を使用して電解イオン水を生成するには、
図2の場合と同様に、原水タンク1内に基準原水量よりも少量の原水を連続的に供給しながら電解イオン水を生成する。この場合も、原水供給量を少量にする以外は、他の生成条件は基準pH値の電解イオン水生成時と同じ条件にする。これら条件下において、原水タンク1内の原水を原水循環ポンプP1により、原水タンク1‐陰極室3の入口3a‐陰極室3の出口3b‐原水タンク1と循環させ、電解液タンク2内の電解液が、陽極室4‐電解液タンク2と繰り返し循環すると、それら循環が所定時間継続して原水が電解イオン水を生成する。この場合も、
図2の場合と同様に、基準pH値12.5の電解イオン水を生成する場合は供給量と生成量は同じ(20L)であるから、前記生成サイクルが一循環すると生成された電解イオン水は出口1aから排出されるが、pH値13.1の電解イオン水を生成する場合は、供給量(5L)は生成量(20L)の1/4であるから、生成サイクルが4循環してはじめてpH値13.1の電解イオン水が20L生成され、その後に出口1aから排出される。出口1aから排出された後は、原水が原水供給路8から供給され続け、原水タンク1内の電解イオン水が出口1aから外部に排出されながら電解イオン水が連続的に(流動式で)生成される。
【0043】
図3の電解イオン水生成装置でも、必要な場合は、原水タンク1に供給される原水(
図3では軟水)を電解液タンク2にも供給(補充)することができる。
【0044】
(実験例)
本件発明者の実験によれば、
図1の電解イオン水生成装置を使用する場合は、原水タンク1に貯留する原水量を、基準pH値12.5の電解イオン水を生成するのに必要な原水量(20L)の1/4の5LとすることでpH13.1の電解イオン水(強電解イオン水)を生成することができた。
図2、
図3の電解イオン水生成装置を使用する場合も同様であった。前記いずれの実験でも、原水量以外の他の条件を、当該電解イオン水生成装置で基準pH値の電解イオン水を生成する場合と同じ条件で行った。
【0045】
(貯留式の電解イオン水生成装置の実施形態:
図1)
本発明の電解イオン水生成装置の一例を、図面を参照して説明する。
図1に示す電解イオン水生成装置は、原水タンク1に貯留する原水量を制御することにより、一台の電解イオン水生成装置で基準pH値の電解イオン水と、それよりもpH値の電解イオン水とを生成可能なものである。
【0046】
図1に示す電解イオン水生成装置の基本構成は、前記電解イオン水生成方法[0029]〜[0035]で説明したとおりである。原水タンク1、電解液タンク2、電解槽6に既存の電解イオン水生成装置のそれらと同じもの、あるいは異なるものを使用することができる。
【0047】
(原水タンク)
図1では原水タンク1と電解液タンク2が一つの容器に区画配置されている。原水タンク1は原水と、陰極室3を通過して陽イオンが還元された電解イオン水とを貯留するものである。
【0048】
原水タンク1には原水供給口12が設けられ、この原水供給口12から、純水、軟水、水道水等の原水が原水タンク1に供給されるようにしてある。
【0049】
原水タンク1に貯留される原水量は、生成したい電解イオン水のpH値ごとに、予め数パターン設定してある。この実施形態では、pH12.5の電解イオン水を生成する場合の原水量として20L、pH13.1の電解イオン水を生成する場合の原水量として5Lの2パターンを設定してある。この数値は前記式に基づいて算出した値である。pH値に応じてこれ以外の原水量を設定しておくこともできる。
【0050】
原水タンク1内には原水量制御手段7を設けてある。具体的には、水位検知スイッチ(例えば、フロートスイッチ)F1、F2を上下二段に設け、一例として、下段のフロートスイッチF1を(pH13.1の電解イオン水を生成する場合の原水量:5L)、上段のフロートスイッチF2を(pH12.5の電解イオン水を生成する場合の原水量:20L)に設定してある。
【0051】
(電解液タンク)
図1に示す電解液タンク2は上面開口の筒型ケースであり、電解質水溶液を貯留するものである。電解液タンク2は原水タンク1よりも細長の円筒状であり、原水タンク1の内側に配設されている。電解液タンク2には供給口14が設けられ、そこから電解液を供給して循環させることができるようにしてある。電解液には炭酸カリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、重曹アルカリ塩水溶液等を使用することができる。
【0052】
電解液タンク2の下部にはドレイン(図示しない)を設けて、電解液タンク2内の清掃や電解液の交換といったメンテナンスに際して、電解液を外部に排出することができるようにしてある。
【0053】
電解液タンク2は電解液通路15を介して電解槽6の陽極室4に接続され、電解液タンク2に貯留されている電解液を電解液ポンプP2によって電解槽6の陽極室4に供給し、陽極室4から戻し通路16を通して電解液タンク2内に戻すことができるようにしてある。
【0054】
(電解槽)
図1の電解槽6は陽イオン交換膜5で陰極室3と陽極室4に仕切られ、陰極室3に陰極板が、陽極室4に陽極板が配置されている。陰極板には直流電源Eのマイナス側が、陽極板には直流電源Eのプラス側が接続される。
【0055】
陽イオン交換膜5は、水は通さず、陽イオンのみを通す性質の交換膜であり、既存のもの又は新規のものを使用することができる。例えば、旭硝子株式会社製の「セレミオン」(登録商標)やデュポン株式会社製の交換膜等を使用することができる。
【0056】
(
図1の貯留式の電解イオン水生成装置で基準pH値の電解イオン水を生成する例)
図1の電解イオン水生成装置により基準pH値12.5の電解イオン水を生成する場合は、電解イオン水生成装置の操作部で下段のフロートスイッチF1を不作動に設定して、原水がフロートスイッチF1に到達しても作動しないようにし、上段のフロートスイッチF2を作動に設定しおく。
(1)前記状態で、原水路13(基準pH値12.5、原水量20L)を選択してから、電解イオン水生成装置の電源スイッチをONにすると、原水が原水路13から原水タンク1に供給される。
(2)原水タンク1内の水位が上段のフロートスイッチF2(pH12.5の電解イオン水を生成用、20L)に達すると、当該フロートスイッチF2が作動してポンプP1、P2が運転を開始し、原水タンク1内の原水が、原水タンク1‐陰極室3の入口3a‐陰極室3の出口3b‐原水タンク1と循環し、電解液タンク2内の電解液が、電解液循環ポンプP2により電解液タンク2‐陽極室4の入口4a‐陽極室4の出口4b‐電解液タンク2と循環して電解イオン水が生成される。
(3)予め設定してある原水循環時間、電解液循環時間中、前記循環が行われてpH12.5(基準pH値)の電解イオン水が生成され、原水タンク1に戻される。
【0057】
(
図1の貯留式の電解イオン水生成装置でpH値13.1の電解イオン水を生成する例)
図1の電解イオン水生成装置の使用例を説明する。ここでは、pH13.1の電解イオン水を生成する場合を一例とする。
【0058】
図1の電解イオン水生成装置の操作部(制御盤)で下段フロートスイッチF1を作動に設定して、原水が当該フロートスイッチF1に到達すると作動するようにしておく。
(1)電解イオン水生成装置の操作部で「pH13.1」を選択し、電解イオン水生成装置の電源スイッチをONにすると、原水が原水タンク1内に供給され、陰極板及び陽極板間に直流電流が供給され、他の電気回路に電流が供給される。
(2)原水が原水タンク1内に、「pH13.1」の電解イオン水を得るのに必要な量(5L)供給されると、下段のフロートスイッチF1が作動して、それに接続されている流量調整弁が自動的に閉じ、原水の供給が自動停止する。
(3)原水タンク1内の原水は電解槽6の陰極室3へ供給されて陰極室3を通過する。このとき、直流電源Eから電源供給されて電解液が電気分解されて発生する陽イオンが、陽イオン交換膜5を通過して陰極室3に入り、原水と還元して電解イオン水が生成される。この電解イオン水は原水タンク1内に戻る。
(4)電解液タンク2内の電解液は陽極室4へ供給され、陽極室4を通過した電解液は電解液タンク2内に戻る。
(5)原水を、原水タンク1‐陰極室3‐原水タンク1の経路で循環させ、循環を設定時間(例えば、60分間)繰り返す。この間、電解液は電解液タンク2‐陽極室4‐電解液タンク2の経路で循環し前記時間中繰り返す。この繰り返しによりpH13.1の電解イオン水が生成され、原水タンク1内に貯留される。この電解イオン水は、原水タンクから取り出す。
【0059】
(流動式の電解イオン水生成装置の実施形態1:
図2)
図2の流動式の電解イオン水生成装置は、基本構成は
図1と同じであり、異なるのは、原水タンク1と電解液タンク2を別々に設けたこと、原水タンク1に貯留する原水量制御手段7として二つの原水供給路8、9を設けたことである。夫々の原水供給路8、9の時間当たりの供給量は異なる量に設定してある。一例として、原水供給路8は時間当たり5L/h(pH13.1の電解イオン水生成時)の原水を供給できる供給路、原水供給路9は時間当たり20L/h(pH12.5:基準pH値の電解イオン水生成時)の原水を供給できるようにしてある。夫々の原水供給路8、9には電磁バルブ10、11を設けて電気的に開閉されるようにしてある。
【0060】
(
図2の流動式の電解イオン水生成装置で基準pH値の電解イオン水を生成する例)
図2の電解イオン水生成装置を使用して基準pH12.5の電解イオン水を生成する場合は次のようにする。
(1)電源スイッチをONにして電解イオン水生成装置を作動させ、陰極板と陽極板間に直流電源を印加する。
(2)
図2の電解イオン水生成装置における「pH12.5」の原水供給路9を選択して、原水供給路9から時間当たり20L/hの原水を供給し続ける。
(3)原水が原水タンク1内に貯留されると、ポンプP1、P2の運転が開始され、原水が原水流路17を通して電解槽6の陰極室3に供給されて原水タンク1に戻り(循環し)、電解液タンク2内の電解液が電解槽6の陽極室4に供給されて電解液タンク2に戻る(循環する)。原水タンク1にはその後も原水の供給が継続され、この間に、電気分解によって陽極室4内に生じたカリウムイオン(陽イオン)が陽イオン交換膜5を介して陰極室3に入り、陰極室3内の原水と還元して電解イオン水が生成される。
(4)生成された基準pH12.5の電解イオン水は帰還流路18を通じて原水タンク1内に貯留される。前記生成を設定時間繰り返すことにより原水タンク1内に基準pH12.5の電解イオン水が貯留される。
(5)基準pH値12.5の電解イオン水を生成する場合は、原水供給量と電解イオン水の生成量は同じ(20L)であるから、原水供給路9から20Lになるまで供給され続け、生成される電解イオン水も20Lになる。
(6)原水タンク1内の電解イオン水が20Lになると、原水タンク1の出口1aが解放されて、pH12.5の電解イオン水が排出される。以後、排出されながら、その分だけ、原水供給路9から原水が供給されながら(流動式で)、電解イオン水が連続生成され、原水タンク1から排出される。
【0061】
(
図2の流動式の電解イオン水生成装置でpH値13.1の電解イオン水を生成する例)
図2の流動式の電解イオン水生成装置を使用してpH13.1の電解イオン水を生成する場合は次のようにする。
(1)
図2の流動式の電解イオン水生成装置における「pH13.1」の原水供給路8を選択して、原水供給路8から時間当たり5L/hの原水を供給し続ける。
(2)原水が原水タンク1内に供給されると、ポンプP1、P2の運転が開始されて、前記使用例と同様にして電解イオン水が生成される。
(3)生成された電解イオン水は原水タンク1に排出されるが、原水タンク1の出口1aは電解イオン水が20Lになってはじめて開口して、原水タンク内の電解イオン水が排出されるようにしてある。このときの原水供給量(5L)は生成量(20L)の1/4であるから、生成サイクルが4循環してはじめてpH値13.1の電解イオン水が20L生成され、原水タンク1の出口1aから排出される。その後も、原水が原水供給路8から供給され続け、原水タンク1内の電解イオン水が出口1aから外部に排出されながら(流動しながら)電解イオン水が連続的に生成される。
【0062】
前記使用例では原水量を5Lとする以外は、他の生成条件は、基準pH値の電解イオン水を生成する場合と同じにする。
【0063】
(流動式の電解イオン水生成装置の実施形態2:
図3)
図3の流動式の電解イオン水生成装置は
図2の電解イオン水生成装置とほとんど同じであり、異なるのは、電解液タンク2が電解槽6に連結されていることである。
【0064】
(
図3の流動式電解イオン水生成装置の使用方法)
図3の流動式電解イオン水生成装置を使用した電解イオン水の生成は、
図2の電解イオン水生成装置で電解イオン水を生成する場合と同じである。
【0065】
(濾過装置)
図1〜
図3のいずれの電解イオン水生成装置においても、原水タンク1に接続された原水供給路8、9の上流側には濾過装置を設けるのが望ましい。濾過装置の一例としては、5μmメッシュのフィルタ(以下「5μフィルタ」という)と、活性炭フィルタ(以下「ACフィルタ」という)と、逆浸透膜(RO膜)フィルタ(以下「ROフィルタ」という)が使用される。これらは水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどを除去できるものである。
【0066】
原水供給路8、9の途中には純水タンクを接続し、その純水タンク内の純水を原水タンク1に供給することもできる。
【0067】
(他の実施形態)
前記した実施形態はあくまでも本発明の一例であり、他の実施形態にすることも可能である。強電解イオン水もpH値13.0、13.1に限らず、それ以上であっても、それ以下であってもよい。基準pH値も12.5よりも高くても低くてもよい。前記実施形態は強電解イオン水を生成する場合であるが、貯留又は供給する原水量を基準pH値生成時よりも多くして弱電解イオン水を生成することもできる。その場合の原水量も前記式により算出することができる。