特許第6057281号(P6057281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057281
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】単結晶製造装置及び単結晶製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/34 20060101AFI20161226BHJP
   C30B 15/30 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   C30B15/34
   C30B15/30
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-206727(P2012-206727)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-62005(P2014-62005A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 智子
(72)【発明者】
【氏名】島村 清史
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ビジョラ エンカルナシオン アントニア
【審査官】 塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−322892(JP,A)
【文献】 特開昭57−123893(JP,A)
【文献】 特開2006−312571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶の材料となる融液を上面部に保持する金型と、前記上面部に保持された融液に種結晶を接触させながら移動させる移動手段とを備えた単結晶製造装置であって、
前記移動手段に設けられ、前記種結晶を保持する保持部材と、
前記移動手段に設けられ、前記種結晶と当接し、前記種結晶の位置を規定するガイド部材と、を更に有し、
前記ガイド部材は、前記種結晶の基準面と平行なガイド基準部を有し、前記ガイド基準部は前記金型の前記上面部の一辺と平行である、
ことを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項2】
前記移動手段に前記ガイド部材を固定する固定部材を更に有する、請求項1に記載の単結晶製造装置。
【請求項3】
前記ガイド部材に前記種結晶を固定するためのバネ部材を更に有する、請求項1又は2に記載の単結晶製造装置。
【請求項4】
単結晶の材料となる融液を上面部に保持する金型と、種結晶を移動するための移動手段とを備えた単結晶製造装置における単結晶製造方法であって、
前記移動手段に設けられた保持部材によって前記種結晶を保持し、
前記移動手段に設けられ、前記種結晶の基準面と平行なガイド基準部を有するガイド部材を、前記種結晶の基準面と当接させ、
前記ガイド基準部を前記金型の前記上面部の一辺と平行となるように設定し、
前記移動手段によって、前記上面部に保持された融液に前記種結晶を接触させながら移動させる、
ステップを有することを特徴とする単結晶製造方法。
【請求項5】
前記移動手段によって、前記ガイド部材は前記種結晶と同時に引き上げられる、請求項4に記載の単結晶製造方法。
【請求項6】
前記移動手段に前記ガイド部材を固定する固定部材を更に有する、請求項4又は5に記載の単結晶製造方法。
【請求項7】
前記ガイド部材に前記種結晶を固定するためのバネ部材を更に有する、請求項4〜6の何れか一項に記載の単結晶製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶製造装置及び単結晶製造方法に関し、特に、EFG(Edge-defined Film-fed Growth)法において利用可能な単結晶製造装置及び単結晶製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EFG法により単結晶を製造する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の単結晶製造装置では、原料が充填されたルツボと、ルツボ内に立設されてスリットを有する金型(ダイ)と、ルツボの開口部を除くルツボの上面を閉塞する蓋を有している。
【0003】
特許文献1に記載の単結晶製造装置では、種結晶保持具に保持された種結晶を、毛細管現象によって金型の上面部に溜まった原料融液に接触させて、引き上げることにより、単結晶を成長させている。
【0004】
ところで、種結晶と金型との位置関係で、製造される単結晶の成長する結晶方向が規定され、結晶方向が単結晶の性能に影響を与えることから、種結晶と金型との位置合わせは慎重に行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−312571号公報(13−15頁、図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、種結晶が金型に対して小さい場合には、目視で種結晶と金型の位置合わせを行うことは難しかった。また、種結晶の位置を微調整できるような制御機構は大掛かりであるため、高価であってコストがかかるという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、簡単な構成で、種結晶と金型との位置合わせを可能とする単結晶製造装置及び単結晶製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、EFG法を利用した場合において、種結晶と金型との位置決めが容易にでき、品質の高い単結晶を成長させることを可能とする単結晶製造装置及び単結晶製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る単結晶製造装置は、単結晶の材料となる融液を上面部に保持する金型と、上面部に保持された融液に種結晶を接触させながら移動させる移動手段とを備え、種結晶と当接し且つ種結晶の位置を規定するガイド部材を更に備え、ガイド部材は種結晶の基準面と平行なガイド基準部を有し、ガイド基準部は金型の前記上面部の一辺と平行であることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る単結晶製造装置では、移動手段にガイド部材を固定する固定部材を更に有することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る単結晶製造装置では、種結晶にガイド部材を固定するためのバネ部材を更に有することが好ましい。
【0012】
本発明に係る単結晶製造方法は、単結晶の材料となる融液を上面部に保持する金型と、種結晶を移動するための移動手段とを備えた単結晶製造装置において、種結晶の基準面と平行なガイド基準部を有するガイド部材を種結晶の基準面と当接させ、ガイド基準部を金型の上面部の一辺と平行となるように設定し、移動手段によって上面部に保持された融液に種結晶を接触させながら移動させるステップを有することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係る単結晶製造方法では、移動手段によってガイド部材は種結晶と同時に引き上げられることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係る単結晶製造方法では、移動手段にガイド部材を固定する固定部材を更に有することが好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係る単結晶製造方法では、種結晶にガイド部材を固定するためのバネ部材を更に有することが好ましい。
【0016】
本発明に係る単結晶製造装置及び単結晶製造方法では、種結晶自体と金型との位置合わせを行うのではなく、種結晶に固定されたガイド部材の第1基準部と金型に設定された第2基準部との位置合わせを行うので、種結晶を金型に対して正確に位置決めすることが可能となった。
【0017】
また、本発明に係る単結晶製造装置及び単結晶製造方法では、種結晶に固定されたガイド部材は、種結晶を保持するホルダに取り付けられるために、装置を改良する必要もなく、安価に、種結晶と金型との位置決め精度を高めることが可能となった。
【0018】
さらに、本発明に係る単結晶製造装置及び単結晶製造方法では、種結晶の基準面と平行となる基準辺を少なくとも1辺有するガイド部材を有しているので、ガイド部材の基準辺と金型とを所望の方位に合わせることが可能となった。これによって、種結晶を金型に対して間接的に所望の結晶方位に容易且つ正確に位置決めすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は単結晶製造装置1の上面図であり、(b)は単結晶製造装置1の概略断面図であり、(c)はガイド部材の先端部形状を示す図である。
図2図1に示す単結晶製造装置1の一部分の斜視図である。
図3】EFG法による単結晶の製造方法の一例を示すフロー図である。
図4】ガイド部材の種結晶50への他の固定方法を説明するための図である。
図5】種結晶から成長させた単結晶を模式化して示した図である。
図6】種結晶と金型がずれて位置決めされた場合を模式化して示した図である。
図7】更に他のガイド部材を示す図である。
図8】更に他のガイド部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照し単結晶製造装置及び単結晶製造方法について説明する。しかしながら、本発明が、図面又は以下に記載される実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
【0021】
図1(a)は単結晶製造装置1の上面図であり、図1(b)は単結晶製造装置1の概略断面図であり、図1(c)はガイド部材の先端部形状を示す図である。図2は、図1に示す単結晶製造装置1の一部分の斜視図である。
【0022】
単結晶製造装置1は、耐火物外枠10、耐火物外枠10の上部に配置された耐火物上蓋11、耐火物外枠10内に配置されたルツボ20、ルツボ20内に配置された金型30、金型30に対して種結晶50を上下動させるための移動機構40等から構成される。
【0023】
耐火物外枠10及び耐火物上蓋11は、耐火煉瓦等から構成され、ルツボ20の周囲を覆っている。ルツボ20を加熱するための加熱部材(ヒータ等;不図示)は、耐火物の周囲に配置されている。また、耐火物外枠10及び耐火物上蓋11は、加熱されたルツボ20の急激な温度変化を抑制するための保温性を有することが好ましい。耐火物上蓋11には、開口部12が設けられており、移動機構40を上下動させることができるように構成されている。
【0024】
ルツボ20は、利用する融液を受容しうる耐熱性を有した金属材料から構成されており、所定の大きさの金型30がその内部に配置できるような形状を有している。
【0025】
金型30は、融液を毛細管現象を利用して上昇させるためのスリット31を中間部に有して構成されている。金型30には、金型から成長する単結晶の所定の表面(例えば(100)面)の目印となる側面32が設定される。また、金型30の側面32とスリット31とは平行に配置されている。なお、金型30の上面部30aには、毛細管現象で上昇した融液と接触するように種結晶50が位置決めされる。さらに、金型30の幅はW2mm(例えば、20mm)、横はt2mm(例えば、10mm)に設定されている。
【0026】
移動機構40には、種結晶50を保持するためのホルダ41、種結晶50で利用する基準面51(例えば(100)面)を、目印である金型30の側面32(金型基準面)と合わせるためのガイド部材42、ガイド部材42をホルダ41に固定するためのガイド固定部材43、シャフト45等が配置されている。ガイド固定部材43の一端はガイド部材42の一部に固定されており、ガイド固定部材43の他端は、シャフト45に設けられた貫通穴46を貫通して、ホルダ41に固定されている。なお、金型30の基準面は、側面32以外に設定することも可能である。
【0027】
図1(c)に示すように、ガイド部材42の形状は、種結晶50を容易に固定できるようなコの字状の形状をしており、幅はW1mm(例えば、20mm)、横はt1mm(例えば、10mm)である。図1及び図2では、W1=W2及びt1=t2に設定したが、0<W2≦W1、及び、0<t2≦t1となるように設定することが好ましい。また、耐火物上蓋11に設けられた開口部12の形状は円形で、直径D(例えば25mm)は、ガイド部材42が付属した移動機構40がちょうど上下動できるような大きさに設定されている。
【0028】
図1(c)に示すように、ガイド部材42は、種結晶50の基準面51(例えば、(100面))と当接するための第1のガイド基準部42−1と、金型30の側面32(金型基準面)と位置合わせを行うための第2のガイド基準部42−2を有している。種結晶50の基準面51を第1のガイド基準部42−1に対して当接させることによって、種結晶50の基準面51と第2のガイド基準部42−2の位置関係とが規定されるように構成されている。図1(c)の場合では、種結晶50の基準面51と第2のガイド基準部42−2とは平行に設定されている。
【0029】
図3は、EFG法による単結晶の製造方法の一例を示すフロー図である。
【0030】
最初に、種結晶50をホルダ41に取り付け(S10)、ガイド部材42を種結晶50に固定する(S11)。この際に、ガイド部材42の第1のガイド基準部42−1を種結晶50の基準面51(例えば、(100面))に当接するようにして、種結晶50の基準面51とガイド部材42の第2のガイド基準部42−2との位置関係が規定している。
【0031】
図4は、ガイド部材の種結晶50への他の固定方法を説明するための図である。
【0032】
図4(a)は、種結晶50の1つの基準面51(例えば、(100面))を利用する場合を示している。この場合、他のガイド部材80の第1のガイド基準部80−1に対して種結晶50の1つの基準面51を当接することによって、種結晶50の1つの基準面51と第2のガイド基準部80−2とが平行になるように規定されている。
【0033】
図4(b)は、種結晶50の他の基準面52(例えば、(110面))を利用する場合を示している。この場合、更に他のガイド部材81の第1のガイド基準部81−1に対して、種結晶50の角部を当接するようにして、種結晶50の他の基準面52と第2のガイド基準部81−2とが平行になるように規定されている。図4(b)の場合、種結晶50は、図4(a)の状態からちょうと45度回転した状態となっている。
【0034】
ガイド部材の形状は、コの字状(ガイド部材42;図1(c)参照)、ロの字状(ガイド部材80;図4(a)参照)、種結晶が挿入可能な穴形状(ガイド部材81;図4(b)参照)等様々であってよい。また、利用する種結晶の基準面に応じて、種結晶とガイド部材の第2のガイド基準部との位置関係も様々に規定することが可能である。
【0035】
また、ガイド部材は、ルツボ20の近傍に配置されることから、ガイド部材の材質は耐熱性に優れ、高温下でも変形や破損が生じないものによって構成されている。具体的には、ガイド部材は、白金、白金−ロジウム、イリジウム等の金属板、又は、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスから構成される。
【0036】
次に、ルツボ20内に金型30を配置し、単結晶の原材料を充填する(S12)。
【0037】
次に、ガイド部材42の第2ガイド基準部42−2と、金型30の側面32(金型基準面)とを利用して、目視で、第2ガイド基準部42−2と金型30の側面32(金型基準面)の位置が一致するように、移動機構40の位置を固定し、不図示のヒータによって加熱する(S13)。材料は加熱されることによって溶解し、溶液は、金型30のスリット31に侵入して、毛細管現象によってスリット31内を上昇し、金型30の上面部30aに溜まり、保持される。なお、種結晶50と金型30との位置決めは、移動機構40を上部で固定しているネジの締め具(不図示)を調整したり、金型30が固定されているルツボ20の位置を調整したりすることにより行われる。
【0038】
次に、移動機構40を操作して、種結晶50を降下させ、金型30の上部に保持されている融液に、種結晶50の先端を接触させる(S14)。種結晶50と接触した融液の接触部分では温度が低下して、単結晶が形成される。
【0039】
次に、移動機構40を操作して、種結晶50を連続的に引き上げる(S15)。種結晶50を引き上げる上昇速度は、製造する単結晶に応じて適宜選択することができる。種結晶50が徐々に引き上げられることによって、種結晶50を中心に単結晶が金型30の長手方向に拡張しながら結晶成長する。最終的には、金型30の幅W2よりわずかに小さいサイズまで拡張し、その後は、ほぼ同じ幅で成長していく。
【0040】
単結晶が所望の大きさに成長した後に、移動機構40を操作して、引き上げ速度を上げるか、もしくは更に温度を上昇させて、単結晶と金型30の上面部30aに保持されている融液と単結晶とを切り離す(S16)。単結晶の温度降下後に、単結晶を所定の大きさに切断して(S17)、一連のプロセスを終了する。
【0041】
図5は、種結晶から成長させた単結晶を模式化して示した図である。
【0042】
図5(a)は、種結晶50から成長した単結晶90を示した図である。図5(a)において、矢印aは金型30の上面部30aからの鉛直方向を示しており、矢印bは金型30の横t2方向を示しており、矢印cは金型30の幅W2方向を示している。図5の例は、矢印aの方向に結晶を引き上げ、デバイスとするために切り出したものである。
【0043】
図5(b)は、金型30の融液と切り離された単結晶の中央部分をウエハ92として更にカットした状態を示している。上述した様に、ガイド部材42の第2のガイド基準部42−2と、金型30の側面32(金型基準面)との位置合わせが容易に行えるため、種結晶50で利用したい基準面51と単結晶90で成長させたい基準面91との関係を正確に位置合わせすることが可能となった。したがって、単結晶90からカットしたウエハ92の性能を良好に保つことが可能となった。
【0044】
図6は、種結晶と金型がずれて位置決めされた場合を模式化して示した図である。
【0045】
図6では、図3のS14において、種結晶50が、金型30の側面32(金型基準面)からθだけ傾いて接触した場合を示している。即ち、矢印aを軸として、この軸の回りに角度θだけ回転ずれが起こった状態を示している。このように、種結晶50がθだけ傾いた場合、種結晶50から成長する単結晶の結晶方向もずれることとなり、製造される単結晶の性能が劣化するおそれがある。
【0046】
EFG法では、始めから、目的の方位及び形状を持った単結晶を成長させることができるため、成長後の切断加工等の後処理を簡略化できるところにメリットがある。しかしながら、種結晶の方位が目的とする方位からずれてしまうと、修正するために余計切断加工等が必要となり、コストがかかってしまう。
【0047】
例えば、EFG法を用いて、La3Ta0.5Ga5.3Al0.2O14 (LTGA)単結晶を成長させて、弾性表面波(SAW)デバイスとして利用する場合、θ=0(ずれ無し)では、表面波速度2720m/s及び周波数315MHzである。しかしながら、θ=10°では、表面波速度2660m/s及び周波数308MHzとなり、θ=20°では、表面波速度2520m/s及び周波数292MHzとなる。上記の表面波速度は、超音波をサンプルに照射して、反射してくる波形から計算する手法(LFB−UMC手法)を用いた。また、上記の周波数は、サンプルで櫛歯電極を構成させ、インピーダンスアナライザを利用して、周波数=表面波速度/櫛歯電極の間隔(=8.64μm)から求めた。
【0048】
また、EFG法を用いて、Pb(Zr,Ti)3 (PZT)単結晶を成長させて、圧電デバイスとして利用する場合、θ=0(ずれ無し)では、圧電定数395pC/N及び出力100%(目標値)である。しかしながら、θ=10°では、圧電定数387pC/N及び出力98%(θ=0の場合の出力を100%とした場合)となり、θ=20°では、圧電定数364pC/N及び出力92%(θ=0の場合の出力を100%とした場合)。なお、上記の圧電定数は、矢印aを軸として、この軸の回りに角度θだけ回転ずれが起こった場合に、矢印c方向の圧電定数を示している(図5参照)。また、圧電定数は、サンプルで所定の寸法の電極を形成し、共振−反共振法(JEITA EM−4501規格参照)によって測定した。
【0049】
図7は、更に他のガイド部材を示す図である。
【0050】
図7に示す更に他のガイド部材100は、ガイド板101と、バネ板102及び103を含んで構成されている。ガイド板101には、第1のガイド基準部101−1、第2のガイド基準部101−2、及び開口部101−3を有している。2枚のバネ板102及び103は、ガイド板101の両側端部に固定されている。
【0051】
開口部101−3から種結晶50の先端が突出するようにしてから、種結晶50で利用する基準面を第1のガイド基準部101−1に当接させ、2枚のバネ板102及び103で種結晶50を挟み込むようにして、ガイド板101を種結晶50に固定する。ユーザは、第2のガイド基準部101−2及び金型30の側面32(金型基準面)を利用して位置合わせを行うことによって、種結晶50の基準面と金型30の側面32(金型基準面)とを正確に位置決めすることが可能となる。
【0052】
図8は、更に他のガイド部材を示す図である。
【0053】
図8に示す更に他のガイド部材110は、第1板部材111、第2板部材112、及び結合部材113から構成されている。第1板部材111は、第1のガイド基準部111−1、第2のガイド基準部111−2、及び第1バネ部材111−3を有している。第2板部材112は、第2バネ部材112−3を有している。第1板部材111及び第2板部材112を移動機構40において、結合部材113(例えば、ボルトとナット)で結合すると、第1バネ部材111−3及び第2バネ部材112−3が種結晶50を固定するように構成されている。
【0054】
図8に示すガイド部材110では、種結晶50に第1のガイド基準部111−1を当接させるのではなく、移動機構40の一部を第1のガイド基準部111−1に当接させて、移動機構40の所定の面と、第2のガイド基準部111−2との位置関係を規定されている。ここでは、種結晶50の基準面と移動機構40の所定の面との位置関係を予め定めておくことによって、簡易的に、第2のガイド基準部と種結晶50の基準面との位置関係を規定させている。
【0055】
したがって、ユーザは、第2のガイド基準部111−2及び金型30の側面32(金型基準面)を利用して位置合わせを行うことによって、種結晶50の基準面と金型30の側面32(金型基準面)とを簡易的に位置決めすることが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 単結晶製造装置
20 ルツボ
30 金型
30a 上面部
32 側面(金型基準面)
40 移動機構
41 ホルダ
42、80、81、100、110 ガイド部材
42−1、80−1、81−1、101−1、111−1 第1のガイド基準部
42−2、80−2、81−2、101−2、111−2 第2のガイド基準部
45 シャフト
50 種結晶
51 種結晶の基準面
90 単結晶
91 単結晶の基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8